本明細書で使用する場合、用語「C1~C6アルキル」は、最大6個の炭素原子を有する完全飽和分枝又は非分枝炭化水素部分を指す。特に提供されない限り、これは1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子又は1~2個の炭素原子を有する炭化水素部分を指す。アルキルの代表的な例としては、限定はされないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「C1~C6アルコキシ」はアルキル-O-を指し、ここでアルキルは上記に定義される。アルコキシの代表的な例としては、限定はされないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロピルオキシ-、シクロヘキシルオキシ-などが挙げられる。典型的には、アルコキシ基は約1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子又は1~2個の炭素原子を有する。
本明細書で使用する場合、用語「ハロゲンによって任意選択で置換されているC1~C6アルキル」は、1つ以上のハロゲンによって置換されていてもよい上記に定義するとおりのC1~C6アルキルを指す。例としては、限定はされないが、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1-フルオロメチル-2-フルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル及び1-ブロモメチル-2-ブロモエチルが挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「ジ-C1~6アルキルアミノ」は、式-N(Ra)-Raの部分(式中、各Raは、同じであっても、又は異なってもよい、上記に定義するとおりのC1~6アルキルである)を指す。
本明細書で使用する場合、用語「C3~C6シクロアルキル」は、3~6個の炭素原子の飽和単環式炭化水素基を指す。シクロアルキルはまた、炭素環式環と称されることも、またその逆もあり、加えて存在する炭素原子の数に言及し得る。特に提供されない限り、シクロアルキルは、3~6個の環炭素原子又は3~4個の環炭素原子を有する環状炭化水素基を指す。例示的な単環式炭化水素基としては、限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロアリール」は、1~8個のヘテロ原子を有する5~14員単環式又は二環式又は三環式芳香環系を指す。典型的には、ヘテロアリールは、N、S又はOから選択される1~4個のヘテロ原子(hereroatom)を含む5~10員環系(例えば、5~7員単環又は8~10員二環)又は5~7員環系である。好ましくは、用語「ヘテロアリール」は5~7員の単環である。典型的なヘテロアリール基としては、2-又は3-チエニル、2-又は3-フリル、2-又は3-ピロリル、2-、4-、又は5-イミダゾリル、3-、4-、又は5-ピラゾリル、2-、4-、又は5-チアゾリル、3-、4-、又は5-イソチアゾリル、2-、4-、又は5-オキサゾリル、3-、4-、又は5-イソオキサゾリル、3-又は5-1,2,4-トリアゾリル、4-又は5-1,2,3-トリアゾリル、テトラゾリル、2-、3-、又は4-ピリジル、3-又は4-ピリダジニル、3-、4-、又は5-ピラジニル、2-ピラジニル、及び2-、4-、又は5-ピリミジニルが挙げられる。
用語「ヘテロアリール」はまた、ヘテロ芳香環が1つ以上のアリール環、脂環族環、又はヘテロシクリル環に縮合した基も指し、ここで結合基又は結合点はヘテロ芳香環上にある。非限定的な例としては、1-、2-、3-、5-、6-、7-、又は8-インドリジニル、1-、3-、4-、5-、6-、又は7-イソインドリル、2-、3-、4-、5-、6-、又は7-インドリル、2-、3-、4-、5-、6-、又は7-インダゾリル、2-、4-、5-、6-、7-、又は8-プリニル、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-、又は9-キノリジニル、2-、3-、4-、5-、6-、7-、又は8-キノリイル(quinoliyl)、1-、3-、4-、5-、6-、7-、又は8-イソキノリイル(isoquinoliyl)、1-、4-、5-、6-、7-、又は8-フタラジニル、2-、3-、4-、5-、又は6-ナフチリジニル、2-、3-、5-、6-、7-、又は8-キナゾリニル、3-、4-、5-、6-、7-、又は8-シンノリニル、2-、4-、6-、又は7-プテリジニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、又は8-4aHカルバゾリル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、又は8-カルバザオリル(carbzaolyl)、1-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、又は9-カルボリニル、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-、9-、又は10-フェナントリジニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、又は9-アクリジニル、1-、2-、4-、5-、6-、7-、8-、又は9-ペリミジニル、2-、3-、4-、5-、6-、8-、9-、又は10-フェナトロリニル(phenathrolinyl)、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-、又は9-フェナジニル、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-、9-、又は10-フェノチアジニル、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-、9-、又は10-フェノキサジニル、2-、3-、4-、5-、6-、又はl-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、又は10-ベンズイソキノリニル(benzisoqinolinyl)、2-、3-、4-、又はチエノ[2,3-b]フラニル、2-、3-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、又は11-7H-ピラジノ[2,3-c]カルバゾリル,2-、3-、5-、6-、又は7-2H-フロ[3,2-b]-ピラニル、2-、3-、4-、5-、7-、又は8-5H-ピリド[2,3-d]-o-オキサジニル、1-、3-、又は5-1H-ピラゾロ[4,3-d]-オキサゾリル、2-、4-、又は54H-イミダゾ[4,5-d]チアゾリル、3-、5-、又は8-ピラジノ[2,3-d]ピリダジニル、2-、3-、5-、又は6-イミダゾ[2,1-b]チアゾリル、1-、3-、6-、7-、8-、又は9-フロ[3,4-c]シンノリニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、8-、9-、10、又は11-4H-ピリド[2,3-c]カルバゾリル、2-、3-、6-、又は7-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアジニル、7-ベンゾ[b]チエニル、2-、4-、5-、6-、又は7-ベンズオキサゾリル、2-、4-、5-、6-、又は7-ベンズイミダゾリル、2-、4-、4-、5-、6-、又は7-ベンゾチアゾリル、1-、2-、4-、5-、6-、7-、8-、又は9-ベンズオキサピニル(benzoxapinyl)、2-、4-、5-、6-、7-、又は8-ベンズオキサジニル、1-、2-、3-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、又は11-1H-ピロロ[1,2-b][2]ベンズアザピニル(benzazapinyl)が挙げられる。典型的な縮合ヘテロアリール(heteroary)基としては、限定はされないが、2-、3-、4-、5-、6-、7-、又は8-キノリニル、1-、3-、4-、5-、6-、7-、又は8-イソキノリニル、2-、3-、4-、5-、6-、又は7-インドリル、2-、3-、4-、5-、6-、又は7-ベンゾ[b]チエニル、2-、4-、5-、6-、又は7-ベンズオキサゾリル、2-、4-、5-、6-、又は7-ベンズイミダゾリル、及び2-、4-、5-、6-、又は7-ベンゾチアゾリルが挙げられる。
置換ヘテロアリールは、1つ以上の置換基を含むヘテロアリール基である。
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロシクリル」は、飽和又は部分飽和の、好ましくは単環又は多環(多環の場合、特に二環、三環又はスピロ環)であるヘテロ環式基であって;及び3~24個、より好ましくは4~16個、最も好ましくは5~10個及び最も好ましくは5又は6個の環原子を有し;ここで1個以上、好ましくは1~4個、特に1個又は2個の環原子がヘテロ原子である(従って残りの環原子は炭素である)基を指す。結合環(すなわち分子をつなぐ環)は、好ましくは4~12個、特に5~7個の環原子を有する。用語ヘテロシクリルはヘテロアリールを除外する。ヘテロ環式基は、ヘテロ原子又は炭素原子で結び付いているものであり得る。ヘテロシクリルには、縮合環又は架橋環並びにスピロ環が含まれ得る。ヘテロ環の例としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4-ジオキサン、モルホリン、1,4-ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3-ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3-ジオキサン、1,3-ジチアン、オキサチアン、チオモルホリンなどが挙げられる。
置換ヘテロシクリルは、1~4個、例えば、1、又は2、又は3、又は4個などの置換基によって独立に置換されているヘテロシクリル基である。
本明細書で使用する場合、用語「アリール」は、環部分に6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を指す。典型的には、アリールは、6~20個の炭素原子を有する単環式、二環式又は三環式アリールである。さらに、用語「アリール」は、本明細書で使用する場合、単一の芳香環、又は共に縮合している複数の芳香環であってもよい芳香族置換基を指す。非限定的な例としては、フェニル、ナフチル又はテトラヒドロナフチルが挙げられる。
置換アリールは、ヒドロキシル、チオール、シアノ、ニトロ、C1~C4-アルキル、C1~C4-アルケニル、C1~C4-アルキニル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-チオアルキル、C1~C4-アルケニルオキシ、C1~C4-アルキニルオキシ、ハロゲン、C1~C4-アルキルカルボニル、カルボキシ、C1~C4-アルコキシカルボニル、アミノ、C1~C4-アルキルアミノ、ジ-C1~C4-アルキルアミノ、C1~C4-アルキルアミノカルボニル、ジ-C1~C4-アルキルアミノカルボニル、C1~C4-アルキルカルボニルアミノ、C1~C4-アルキルカルボニル(C1~C4-アルキル)アミノ、スルホニル、スルファモイル、アルキルスルファモイル、C1~C4-アルキルアミノスルホニルからなる群から独立に選択される1~5個(1、又は2、又は3個など)の置換基によって置換されているアリール基であり、ここで上述の炭化水素基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ残基)の各々は、ハロゲン、ヒドロキシル又はC1~C4-アルコキシ基から出現毎に独立に選択される1つ以上の残基によってさらに置換されていてもよい。
本明細書で使用する場合、用語「約」及び「実質的に」は、吸熱、吸熱ピーク、発熱、ベースラインシフト等の特徴に関して、それらの値が変わり得ることを指し示す。X線回折ピーク位置に関して、「約」又は「実質的に」は、典型的なピーク位置及び強度の変動性が考慮されることを意味する。例えば、当業者は、ピーク位置(2θ)が、典型的には0.2°ほどの幾らかの装置間変動を示し得ることを理解するであろう。場合によっては、この変動は、装置校正の違いに応じて0.2°より高くなり得る。さらに、当業者は、相対ピーク強度が装置間変動、並びに結晶化度、好ましい配向、調製された試料表面、及び当業者に公知の他の要因に起因する変動を示し得るとともに、あくまでも定性的測定と考えなければならないことを理解するであろう。DSCについては、観察される温度のばらつきは、温度変化速度並びに利用される試料調製技法及び詳細な機器に依存することになる。従って、DSC/TGAサーモグラムに関して本明細書に報告される吸熱/融点値は、±5℃だけ変わり得る(及びなおも本明細書に記載される詳細な結晶形に特有であると見なされる)。他の特徴、例えば、重量パーセント(重量%)、反応温度などの文脈で使用する場合、用語「約」は±5%の差異を指し示す。
本明細書で使用する場合、「実質的に純粋な相」は、式Iの化合物の任意の結晶形に関連して使用する場合、無水基準での化合物の重量を基準として式Iの化合物の約90、91、92、93、94、95、96、97、98、及び約99重量%より高いことを含め、また、約100重量%に等しいことも含め、約90重量%より高い相純度を有する化合物を意味する。用語「相純粋な」又は「相純度」は、本明細書では、式Iの化合物の特定の固体形態に関しての相均一性を指し、その旨が明示的に述べられない限り、必ずしも高度な化学的純度を含意するものではない。相純度は、当該技術分野において公知の方法のとおりに、例えば、外標準法、特定のスペクトルにおける相の違いに帰される線(ピーク)特徴の直接比較によるか、又は内標準法による、当該技術分野において公知の1つ以上の手法を例えば用いた定量的相分析を行うためXRPDを用いて決定し得る。しかしながら、XRPDによる相純度の定量化は非晶質材料の存在によって複雑化し得る。従って、相純度の決定に有用であり得る他の方法として、例えば、固体NMR分光法、ラマン及び/又は赤外分光法が挙げられる。当業者であれば、これらの方法及びこれらの追加的な(又は代替的な)方法を相純度の決定にどのように利用すればよいかを容易に理解するであろう。
本明細書で使用する場合、用語「塩(salt)」又は「塩(salts)」は、本発明の方法における使用のための化合物の酸付加塩又は塩基付加塩を指す。「塩」には、詳細には「薬学的に許容可能な塩」が含まれる。用語「薬学的に許容可能な塩」は、本発明の化合物の生物学的有効性及び特性を保持している塩であって、且つ典型的には生物学的に又は他の点で望ましくないものでない塩を指す。多くの場合、本発明の方法における使用のための化合物は、アミノ基及び/又はカルボキシル基又はそれと同様の基が存在するおかげで酸性塩及び/又は塩基性塩の形成能を有する。
薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸及び有機酸、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物塩/臭化水素酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、カンファースルホン酸塩、塩化物塩/塩酸塩、クロロテオフィリン酸塩(chlortheophyllonate)、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフトエ酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩及びトリフルオロ酢酸塩と形成されてもよい。
塩を誘導し得る無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。
塩を誘導し得る有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容可能な塩基付加塩は無機塩基及び有機塩基と形成されてもよい。
塩を誘導し得る無機塩基としては、例えば、アンモニウム塩及び周期表第I~XII族の金属が挙げられる。特定の実施形態において、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛、及び銅から誘導される;特に好適な塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩が挙げられる。
塩を誘導し得る有機塩基としては、例えば、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂などが挙げられる。特定の有機アミンとしては、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリネート、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リジン、メグルミン、ピペラジン及びトロメタミンが挙げられる。
本発明における使用のための薬学的に許容可能な塩は、塩基性又は酸性部分から従来の化学的方法により合成されてもよい。概して、かかる塩は、遊離酸形態のそうした化合物を化学量論量の適切な塩基(水酸化、炭酸、重炭酸Na、Ca、Mg、又はKなど)と反応させることによるか、又は遊離塩基形態のそうした化合物を化学量論量の適切な酸と反応させることにより調製し得る。かかる反応は、典型的には水中又は有機溶媒中、又はこれら2つの混液中で行われる。概して、実行可能な場合には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水性媒体の使用が望ましい。さらなる好適な塩のリストについては、例えば、「レミントン薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」,20th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,(1985);及び「薬学的塩のハンドブック:特性、選択、及び使用(Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use)」 by Stahl and Wermuth(Wiley-VCH,Weinheim,Germany,2002)を参照することができる。
本明細書に提供される式はいずれも、非標識形態の化合物並びに同位体で標識された形態の化合物を表すこともまた意図される。同位体で標識された化合物は、1個以上の原子が選択の原子質量又は質量数を有する原子に置き換えられていることを除いては、本明細書に提供される式によって描出される構造を有する。化合物(すなわち、本明細書に記載されるとおりのLTA4H阻害剤)に導入することのできる同位体の例としては、それぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18F 31P、32P、35S、36Cl、125Iなど、水素、炭素、窒素、酸素、亜リン酸、フッ素、及び塩素の同位体が挙げられる。本発明には、様々な同位体で標識された本明細書に定義するとおりの化合物、例えば、3H及び14Cなどの放射性同位体がそこに存在するもの、又は2H及び13Cなどの非放射性同位体がそこに存在するものが含まれる。かかる同位体で標識された化合物は、代謝研究(14Cによる)、反応速度論研究(例えば2H又は3Hによる)、薬物又は基質組織分布アッセイを含めた陽電子放射断層撮影法(PET)又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などの検出又はイメージング技法において、又は患者の放射線治療において有用である。詳細には、18F又は標識された化合物は、PET又はSPECT研究に特に望ましいものであり得る。同位体で標識された式(I)の化合物は、概して、当業者に公知の従来技術によるか、又は添付の実施例及び調製物に記載されるものと類似した方法により、それまで利用されていた非標識試薬に代えて適切な同位体で標識された試薬を使用して調製することができる。
さらに、より重い同位体、特に重水素(すなわち、2H又はD)による置換が、より高い代謝安定性、例えば生体内半減期の増加又は必要投薬量の減少又は治療指数の改善から得られる特定の治療上の利点をもたらし得る。このコンテクストでは重水素は式(I)の化合物の置換基と見なされることが理解される。かかる重同位体、特に重水素の濃度は同位体濃縮係数によって定義され得る。用語「同位体濃縮係数」は、本明細書で使用する場合、ある特定の同位体の同位体存在度と天然存在度との比率を意味する。本発明の化合物中の置換基が重水素と示される場合、かかる化合物は、指定される各重水素原子につき少なくとも3500(指定される各重水素原子につき52.5%の重水素取込み)、少なくとも4000(60%の重水素取込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素取込み)、少なくとも5000(75%の重水素取込み)、少なくとも5500(82.5%の重水素取込み)、少なくとも6000(90%の重水素取込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素取込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素取込み)、少なくとも6600(99%の重水素取込み)、又は少なくとも6633.3(99.5%の重水素取込み)の同位体濃縮係数を有する。
本発明の方法における使用のための薬学的に許容可能な溶媒和物には、例えば、D2O、d6-アセトン、d6-DMSOなど、結晶化溶媒が同位体で置換されていてもよいものが含まれる。
水素結合のドナー及び/又はアクセプターとしての作用能を有する基を含む本発明の方法における使用のための化合物、すなわち式(I)の化合物は、好適な共結晶形成剤との共結晶形成能を有し得る。このような共結晶は、式(I)の化合物から公知の共結晶形成手順により調製し得る。かかる手順には、粉砕、加熱、共昇華、共融解、又は結晶化条件下における溶液中での式(I)の化合物と共結晶形成剤との接触及びそれによって形成された共結晶の分離が含まれる。好適な共結晶形成剤としては、国際公開第2004/078163号パンフレットに記載されるものが挙げられる。従って本発明はさらに、本発明の方法における使用のための式(I)の化合物を含む共結晶を提供する。
本明細書で使用する場合、用語「投与すること」は、化合物、例えばLTA4H阻害剤(例えば式Iの化合物又は本明細書に記載される具体的な化合物)、又は別の薬剤に関連して、任意の経路による患者への当該化合物の送達を指して使用される。
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容可能な担体」には、当業者に公知であろうとおりのあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素など、及びこれらの組み合わせが含まれる(例えば、「レミントン薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329を参照のこと)。任意の従来の担体が活性成分と適合しない場合を除き、治療用組成物又は医薬組成物中におけるその使用が企図される。
本発明の方法における使用のための化合物の「治療有効量」という用語は、対象の生物学的又は医学的反応、例えば、酵素又はタンパク質活性の低下又は阻害を引き出し、又はHSの症状を改善し、HS病態を軽減し、HSの疾患進行を緩徐化し若しくは遅延させ、又はHSを予防するであろう前記化合物の量を指す。非限定的な一実施形態において、用語「治療有効量」は、対象に投与したとき、(1)HS病態を少なくとも部分的に軽減し、阻害し、予防し、及び/又は改善するのに有効な化合物の量を指す。別の非限定的実施形態において、用語「治療有効量」は、細胞、又は組織、又は非細胞性生物学的材料、又は培地に投与したとき、LTA4Hの活性を少なくとも部分的に低減又は阻害し;又はLTA4Hの発現を部分的又は完全に低減又は阻害するのに有効な化合物の量を指す。
本明細書で使用する場合、用語「対象」は動物を指す。典型的には、動物は哺乳類である。対象はまた、例えば、霊長類(例えば、ヒト、男性又は女性)、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚類、鳥類なども指す。特定の実施形態において、対象は霊長類である。さらに他の実施形態において、対象はヒトである。用語「対象」は、それがヒトに関する場合、「患者」と同義的に使用される。
本明細書で使用する場合、語句「患者集団」は、一群の患者を意味して使用される。本開示の方法の一部の実施形態において、LTA4H阻害剤(例えば、式Iの化合物又は国際公開第2015/092740号パンフレットに開示される化合物又は本明細書に記載される任意の化合物)は、HS患者集団の治療に使用される。
本明細書で使用する場合、語句「全身性HS治療による治療歴がない」及び「未治療」は、HSに対する全身性薬剤、例えば、メトトレキサート、シクロスポリン、又は生物学的薬剤(ウステキヌマブ及びグセルクマブなどのIL-12及びIL-23遮断剤又はインフリキシマブなどのTNF-α阻害剤、又はセクキヌマブ、イキセキズマブ及びブロダルマブなどのIL-17遮断剤など)による治療歴がないHS患者を指す。全身性薬剤(すなわち、経口的に与えられる、注射により与えられる等の薬剤)は、局所薬剤(例えば、外用薬及び光線療法)と比べると、全身性薬剤が患者への送達時に全身的な(体全体への)効果を及ぼす点で異なる。本開示の方法、レジメン、使用、キット、及び医薬組成物の一部の実施形態において、患者は全身性HS治療の投与歴がない。
本明細書で使用する場合、語句「全身性HS薬剤による治療歴がある」は、全身性薬剤を使用したHS治療を以前受けたことがある患者を意味して使用される。かかる患者には、ウステキヌマブ及びグセルクマブなどのIL-12及びIL-23遮断剤又はインフリキシマブなどのTNF-α阻害剤、又はセクキヌマブ、イキセキズマブ及びブロダルマブなどのIL-17遮断剤などの生物製剤による治療歴がある者、並びに全身性免疫抑制薬又は免疫調節薬(例えば、シクロスポリン、メトトレキサート及びシクロホスファミド)、レチノイド類(イソトレチノインなど)、ダプソーン、メトホルミン及び経口亜鉛治療を含めた全身性治療など、非生物製剤による治療歴がある者が含まれる。本開示の一部の実施形態において、患者は全身性HS薬剤の投与歴がある。一部の実施形態において、患者は全身性HS薬剤(例えば、メトトレキサート、シクロスポリン)の投与歴があるが、患者はHSに対する全身性生物学的薬物(すなわち、生体によって産生される薬物、例えば、抗体、受容体デコイ等)(例えば、セクキヌマブ、ウステキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ、TNFα阻害剤(エタネルセプト、アダリムマブ、レミケード等)の投与歴はない。この場合、患者は「生物製剤未治療」と称される。一部の実施形態において、患者は生物製剤未治療である。
本明細書で使用する場合、「選択すること」及び「選択された」は、患者に関連して、ある特定の患者が所定の基準を呈していることに基づき(そのことを理由に)その特定の患者が大集団の患者群から特別に選ばれることを意味して使用される。同様に、「選択的に治療すること」は、ある特定の疾患を有する患者に治療を提供することを指し、ここで当該の患者は、その特定の患者が所定の基準を呈していることに基づき大集団の患者群から特別に選ばれる。同様に、「選択的に投与すること」は、ある特定の患者が所定の基準を呈していることに基づき(そのことを理由に)大集団の患者群から特別に選ばれるその患者に薬物を投与することを指す。選択する、選択的に治療する、及び選択的に投与するとは、患者が大集団中の一員であることのみに基づき標準治療レジメンが送達されるのでなく、むしろ患者の個人歴(例えば、以前の治療介入、例えば生物製剤による前治療)、生物学(例えば、特定の遺伝マーカー)、及び/又は症状発現(例えば、特定の診断基準を満たさない)に基づき個別化された療法が患者に送達されることを意味する。選択することとは、本明細書で使用されるとおりの治療方法に関連して、ある特定の基準を呈している患者の偶発的な治療を指すのでなく、むしろ患者がある特定の基準を呈していることに基づき患者に治療を投与するという故意の選択を指す。従って、選択的な治療/投与は、その個人歴、疾患の症状発現、及び/又は生物学に関係なしに特定の疾患を有する全ての患者に特定の薬物を送達する標準治療/投与とは異なる。一部の実施形態において、患者は、HSを有することに基づき治療に選択される。
本明細書で使用する場合、用語「阻害する」、「阻害」又は「阻害すること」は、所与の状態、症状、若しくは障害、若しくは疾患の軽減若しくは抑制又は生物学的活性若しくはプロセスのベースライン活性の有意な低下を指す。
本明細書で使用する場合、いずれかの疾患又は障害を「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語は、一実施形態では、疾患又は障害を回復させること(すなわち疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発症又は進行を遅らせるか、又は停止させるか、又は軽減すること)を指す。別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」又は「治療」は、患者によって認識可能ではない可能性があるものを含めた少なくとも1つの物理的パラメータを緩和又は回復させることを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」又は「治療」は、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化)若しくは生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)又はこれらの両方により、疾患又は障害を調節することを指す。より具体的には、疾患HSを「治療すること」という用語は、HS患者における炎症性病変を(数又は質において又はその体積及びサイズを低下させることにおいて)治療すること、及び/又は膿瘍及び炎症性小結節を治療すること、及び/又はHS患者における瘻孔を排膿させること、及び/又は瘢痕化の量を低下させること、及び/又は瘢痕化と関連する機能的制約を緩和することを指す。疾患HSを治療することは、HSと関連する疼痛、疲労及び/又はそう痒を緩和すること、膿放出を軽減すること及び膿放出と関連する臭いを軽減すること、並びに/又はHS患者についての生活の質を向上させること及び/又は労働障害を軽減することも指す。
本明細書で使用する場合、用語「予防」は、疾患又は障害の開始又は発症又は進行を遅延させることを指す。より具体的には、疾患HSを「予防すること」という用語は、HS紅斑及び/又は新たな病変が出現することを妨げること、瘢痕化を妨げること及び瘢痕化と関連する機能的制約を妨げること、並びに/又は特にHSに関する機能的制約に対する外科的介入を妨げることを指す。
本明細書で使用する場合、対象は、こうした対象が、こうした治療から生物学的に、医学的に又は生活の質において恩恵を受ける場合、治療「を必要として」いる。
本明細書で使用する場合、本発明との関連において(特に特許請求の範囲との関連において)使用される用語「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」及び類似の用語は、本明細書に特に指示されない限り、又は文脈上明確に否定されない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。
本発明の方法における使用のための1つ又は複数の化合物の任意の不斉原子(例えば、炭素など)はラセミ型又はエナンチオ濃縮型、例えば(R)、(S)又は(R,S)配置で存在してもよい。特定の実施形態において、各不斉原子は、少なくとも50%の鏡像体過剰率、少なくとも60%の鏡像体過剰率、少なくとも70%の鏡像体過剰率、少なくとも80%の鏡像体過剰率、少なくとも90%の鏡像体過剰率、少なくとも95%の鏡像体過剰率、又は少なくとも99%の鏡像体過剰率で(R)又は(S)配置である。不飽和二重結合を有する原子の置換基は、可能な場合、シス-(Z)型又はトランス-(E)型で存在し得る。
従って、本発明の方法における使用のための化合物は、その可能な異性体、回転異性体、アトロプ異性体、互変異性体又は混合物のうちの1つの形態、例えば、その実質的に純粋な幾何(シス又はトランス)異性体、ジアステレオマー、光学異性体(対掌体)、ラセミ体又は混合物としての形態であってよい。さらに明確にすれば、用語「可能な異性体」に位置異性体は含まれないものとする。
結果として得られた任意の異性体混合物は、構成成分の物理化学的な差異に基づき、例えば、クロマトグラフィー及び/又は分別晶出によって純粋な又は実質的に純粋な幾何異性体又は光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ体へと分離することができる。
結果として得られた任意の最終産物又は中間体のラセミ体は、公知の方法、例えば、光学活性酸又は塩基で得られたそのジアステレオマー塩の分離、及び光学活性酸性又は塩基性化合物の遊離により光学的対掌体に分割することができる。詳細には、このように塩基性部分を利用すると、例えば、光学活性酸、例えば、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジ-O,O’-p-トルオイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸又は樟脳-10-スルホン酸で形成された塩の分別晶出により本発明の化合物をその光学的対掌体に分割し得る。ラセミ体生成物はまた、キラルクロマトグラフィー、例えば、キラル固定相を使用した高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分割することもできる。
さらに、本発明の方法における使用のための化合物はまた、その塩を含め、その水和物の形態で入手されてもよく、又はその結晶化に使用された他の溶媒を含んでもよい。本発明の方法における使用のための化合物は、意図的に薬学的に許容可能な溶媒(水を含む)と溶媒和物を形成し得る;従って、本発明は、溶媒和形態及び非溶媒和形態の両方での本明細書に記載されるとおりの化合物の使用を包含することが意図される。用語「溶媒和物」は、本発明の方法における使用のための化合物(その薬学的に許容可能な塩を含む)と1つ以上の溶媒分子との分子錯体を指す。かかる溶媒分子は、例えば、水、エタノールなど、被投与者に無害であることが公知の、製薬技術分野でよく使用されるものである。用語「水和物」は、溶媒分子が水である場合の錯体を指す。
本発明の方法における使用のための化合物には、その塩、水和物、溶媒和物及び多形が含まれる。
LTA4H阻害剤
一実施形態1において、本発明は、それを必要としている対象のHSを治療又は予防する方法であって、治療有効量のLTA4H阻害剤を前記対象に投与することを含む方法に関する。
実施形態1Aにおいて、本発明は、それを必要としている対象のHSを治療又は予防する方法であって、治療有効量の国際公開第2014/164658号パンフレットに記載されるとおりのLTA4H阻害剤を前記対象に投与することを含む方法に関する。
実施形態1Bにおいて、本発明は、それを必要としている対象のHSを治療又は予防する方法であって、治療有効量の
;又はその薬学的に許容可能な塩であるLTA4H阻害剤を前記対象に投与することを含む方法に関する。
実施形態1Cにおいて、本発明は、それを必要としている対象のHSを治療又は予防する方法であって、治療有効量の4-(((1S,4S)-5-(4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)ベンジル)-2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)メチル)安息香酸;又はその薬学的に許容可能な塩であるLTA4H阻害剤を前記対象に投与することを含む方法に関する。
実施形態1Dにおいて、本発明は、それを必要としている対象のHSを治療又は予防する方法であって、治療有効量のアセビルスタット(Acebilustat)、別名CTX 4430であるLTA4H阻害剤を前記対象に投与することを含む方法に関する。
実施形態2において、本発明は、それを必要としている対象のHSを治療又は予防する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩:
[式中、
R1は、OH又はNH
2であり;
Yは、O、S又はCH
2であり;
X1、X2、X3及びX4は、Nであり;又は
X1、X2、X3及びX4は、N、NH、C、CH及びOから選択され、但し、X1、X2、X3又はX4のうちの少なくとも2つはN又はNHであるものとし;
R2は、フェニルによって任意選択で置換されているC
1~C
6アルキル;C
3~C
6シクロアルキル;ハロゲン、シアノ、ハロゲンによって任意選択で置換されているC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、又はN、O及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~6員ヘテロアリール環によって任意選択で置換されているフェニル;又はN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む5~10員単環式若しくは二環式ヘテロアリールであって、ハロゲン、シアノ又はハロゲンによって任意選択で置換されているC
1~C
6アルキルによって任意選択で置換されているヘテロアリールである];又はその薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含む方法に関する。
実施形態2Aは、治療有効量の式(II)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩
(式中、可変基R1、R2及びYは、実施形態1に定義されるとおりの意味を有する)を対象に投与することを含む、実施形態2に係る方法に関する。
実施形態2Bは、治療有効量の式(III)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩
(式中、可変基R1、R2及びYは、実施形態1に定義されるとおりの意味を有する)を対象に投与することを含む、実施形態2に係る方法に関する。
実施形態2Cは、治療有効量の式(IV)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩
(式中、可変基R1、R2及びYは、実施形態1に定義されるとおりの意味を有する)を対象に投与することを含む、実施形態2の方法に関する。
実施形態2Dは、治療有効量の式(V)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩
(式中、可変基R1、R2及びYは、実施形態1に定義されるとおりの意味を有する)を対象に投与することを含む、実施形態2における方法に関する。
本発明の実施形態2Eは、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩(式中、YはOであり;及び
R2は、ハロゲン、シアノ、ハロゲンによって任意選択で置換されているC1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、又はN、O及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~6員ヘテロアリール環によって任意選択で置換されているフェニルであるか;又は
R2は、N、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む5~10員単環式又は二環式ヘテロアリールであって、ハロゲン、シアノ又はハロゲンによって任意選択で置換されているC1~C6アルキルによって任意選択で置換されているヘテロアリールである)を対象に投与することを含む、実施形態2及び2A~2Dのいずれか1つに係る方法に関する。
本発明の実施形態2Fは、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩(式中、YはCH2であり;及び
R2は、ハロゲン、シアノ、ハロゲンによって任意選択で置換されているC1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、又はN、O及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~6員ヘテロアリール環によって任意選択で置換されているフェニルであるか;又は
R2は、N、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む5~10員単環式又は二環式ヘテロアリールであって、シアノ、ハロゲン又はハロゲンによって任意選択で置換されているC1~C6アルキルによって任意選択で置換されているヘテロアリールである)を対象に投与することを含む、実施形態2及び2A~2Dのいずれか1つに係る方法に関する。
本発明の実施形態2Gは、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩(式中、YはOであり;及び
R2は、フェニルによって任意選択で置換されているC1~C6アルキル;又はC3~C6シクロアルキルである)を対象に投与することを含む、実施形態2及び2A~2Dのいずれか1つに係る方法に関する。
本発明の実施形態2Hは、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩(式中、YはCH2であり;及び
R2は、フェニルによって任意選択で置換されているC1~C6アルキル;又はC3~C6シクロアルキルである)を対象に投与することを含む、実施形態2及び2A~2Dのいずれか1つに係る方法に関する。
実施形態2Iは、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩又はその薬学的に許容可能な塩(式中、Yはフェニル部分のパラ位で結合している)を対象に投与することを含む、実施形態2及び2A~2Hのいずれか1つに係る方法に関する。
実施形態2Jは、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩(式中、Yはフェニル部分のメタ位で結合している)を対象に投与することを含む、実施形態2及び2A~2Hのいずれか1つに係る方法に関する。
実施形態2Kは、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩(式中、R1はOHである)を対象に投与することを含む、実施形態2及び2A~2Jのいずれか1つに係る方法に関する。
実施形態2Lは、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含み;ここでアミノ基が(R)配置を有する、実施形態2及び2A~2Kのいずれか1つに係る方法に関する。
実施形態2Mは、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含み;ここでアミノ基が(S)配置を有する、実施形態2及び2A~2Kのいずれか1つに係る方法に関する。
実施形態2Nは、治療有効量の式(I)の化合物及び/又はその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、実施形態2に係る方法であって、化合物が、国際公開第2015/092740号パンフレット[代理人整理番号PAT056044-WO-PCT]に開示される;すなわち化合物が、
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イルオキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(4-(オキサゾール-2-イル)-フェノキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)-ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(3-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(4-クロロフェノキシ)-フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(4-フルオロフェノキシ)-フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(3-クロロ-4-フルオロフェノキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(p-トリルオキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(S)-3-アミノ-4-(5-(3-フェノキシフェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(S)-3-アミノ-4-(5-(4-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イルオキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(S)-3-アミノ-4-(5-(4-(4-クロロフェノキシ)-フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(3-フェネトキシフェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-フェネトキシフェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(ベンジルオキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(3-(ベンジルオキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-ブトキシフェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(ペンチルオキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(3-((5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(3-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イルオキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(3-(3,5-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(S)-3-アミノ-4-(5-(4-(p-トリルオキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(4-フルオロフェノキシ)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(3-(4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ブタン酸;
(R)-3-アミノ-4-(3-(4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ブタンアミド;
(S)-3-アミノ-4-(4-(4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾール-1-イル)ブタン酸;及び
(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸
から選択される、方法に関する。
実施形態3Aにおいて、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物であって、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸である化合物;又はその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、実施形態2に係る方法に関する。
実施形態3Bにおいて、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物であって、(R)-3-アミノ-4-(5-(4-フェネトキシフェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸である化合物;又はその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、実施形態2に係る方法に関する。
実施形態3Cにおいて、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物であって、(R)-3-アミノ-4-(5-(4-(4-クロロフェノキシ)-フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸である化合物;又はその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、実施形態2に係る方法に関する。
実施形態3Dにおいて、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物であって、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-(4-クロロフェノキシ)-フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸である化合物;又はその薬学的に塩を対象に投与することを含む、実施形態2に係る方法に関する。
本発明の方法における使用のための式(I)~(V)のいずれか1つの化合物及び実施形態2、2A~2N、3及び3A~3Cのいずれか1つに係る化合物は、国際公開第2015/092740号パンフレット(これは参照により本明細書に援用される)に開示される。
実施形態3Eにおいて、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物であって、その遊離形態(すなわち非塩形態)にある(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の結晶形である化合物;又はその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、実施形態2に係る方法に関する。
実施形態3Fにおいて、本発明は、以下の特徴:
(i)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長λで測定して、2θの点で見たとき22.6±0.2°2θ、24.1±0.2°2θ及び26.3±0.2°2θに代表的なピークを含む粉末X線回折パターン;
(ii)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長λで測定して、11.3±0.2°2θ、12.8±0.2°2θ、15.2±0.2°2θ、19.7±0.2°2θ、20.0±0.2°2θ、20.3±0.2°2θ、21.0±0.2°2θ、22.6±0.2°2θ、24.1±0.2°2θ、24.4±0.2°2θ、25.1±0.2°2θ、26.3±0.2°2θ、28.5±0.2°2θ、及び30.0±0.2°2θからなる群から選択される4つ以上の2θ値を含む粉末X線回折パターン;
(iii)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長λで測定して、11.3±0.2°2θ、12.8±0.2°2θ、15.2±0.2°2θ、19.7±0.2°2θ、20.0±0.2°2θ、20.3±0.2°2θ、21.0±0.2°2θ、22.6±0.2°2θ、24.1±0.2°2θ、24.4±0.2°2θ、25.1±0.2°2θ、26.3±0.2°2θ、28.5±0.2°2θ、及び30.0±0.2°2θからなる群から選択される5つ以上の2θ値を含む粉末X線回折パターン;
(iv)図1に示される粉末X線回折スペクトルと実質的に同じX線回折スペクトル;
(v)図2に示されるものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム;及び
(vi)図3に示されるものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)ダイアグラム
のうちの少なくとも1つによって結晶形が特徴付けられる、実施形態21に係る方法に関する。
実施形態3D及び3Eの結晶形は、2018年7月31日に出願されたPCT/CN2018/000278号明細書(これは参照により本明細書に援用される)であるPAT058189-WO-PCTに開示される。
HSに対するLTA4H阻害剤の治療及び使用方法
開示されるLTA4H阻害剤(すなわち式(I)~(V)のいずれか1つの化合物及び実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)は、HS患者(例えば、ヒト患者)を治療するためインビトロ、エキソビボで使用され、又は医薬組成物中に配合されてインビボで投与されてもよい。
HSは、体の腋窩部、鼠径部、乳房下部、生殖肛門部、及び会陰部の間擦疹性の皮膚を主な病変とする慢性炎症性の瘢痕化病態である。これは反対型ざ瘡とも称される。3つの診断基準により、HSの診断が確立されている:典型的な病変(初期の第1の病変では、深在性の有痛性の小結節[口のない]腫物又は第2の病変では、膿瘍、排膿洞、つながった瘢痕及び「墓石状」開放面皰);典型的な組織分布(腋窩、鼠径部、性器、会陰及び肛門周囲領域、臀部及び乳房下部及び乳房間領域;並びに慢性化及び再発(Margesson and Danby(2014)Best Practices and Res.Clin.Ob.And Gyn 28:1013-1027)。HSの身体的な程度は、下の表2に示したHurleyの臨床ステージ分類(Hurley’s clinical staging)を使用して分類することができる。
HSは、毛包性角栓、管断裂及び第2の炎症から構成される。患者は、最初に、毛包管の詰まりを経験し、これは、時間と共に管の漏出及び真皮への水平方向の断裂をもたらす。毛包-毛嚢脂腺(FPSB)の修復に失敗した場合、毛包断片は、HS疾患経過を開始させる3つの反応を刺激する。1番目は、自然免疫系によって引き起こされる炎症反応であり、化膿及び組織破壊を引き起こし、異物反応及び広範な瘢痕化をもたらす。第2の反応は、炎症反応によって引き起こされる破壊を生き延びたFPSB単位に由来する幹細胞から生じる可能性がある、上皮で覆われた洞をもたらす。第3の、炎症細胞を含有するゲルからなる侵襲性の増殖性のゼラチン状の塊は、ほとんどの場合に生じ、上に記載した上皮で覆われた要素の前駆物質と仮定される。(Margesson及びDanby(2014)を参照されたい)。本明細書で使用する場合、表現「HS疾患進行を遅らせること」は、上に記載したHS疾患経過の様相のいずれか、特に炎症反応の進行速度を減速させることを意味する。本開示のいくつかの実施形態では、LTA4H阻害剤での治療は、HS疾患進行を遅らせる。
患者におけるHSの再発には、丘疹、膿疱又は炎症性小結節、疼痛及びそう痒、膿瘍、排膿及びこれらのあらゆる組み合わせの発達が含まれる。本明細書で使用する場合、「HS紅斑」(など)は、ベースラインに対する2ANの最小の増大を伴う、膿瘍及び炎症性小結節の数(AN)の少なくとも25%の増加と定義される。
本開示のいくつかの実施形態では、開示した方法に従うLTA4H阻害剤での治療は、HS紅斑を予防し、HS紅斑の重症度を低下させ、且つ/又はHS紅斑の頻度を低下させる。いくつかの実施形態では、HS患者の集団が、開示した方法に従って治療される場合、5%未満、10%未満、15%未満又は20%未満は、例えば最初の16週の治療中など、治療中に紅斑を経験する。
本明細書で使用する場合、表現「HS紅斑の重症度を低下させること」などは、HS紅斑の強度を軽減させること、例えば膿瘍及び/又は炎症性小結節の数及び/又はサイズを低下させること、特定の紅斑構成成分の強さを低下させること(例えば、膿瘍及び/又は炎症性小結節の数、サイズ、厚さなどを低下させること、皮膚刺激性(そう痒、疼痛)などの程度を軽減させること)及び/又は紅斑(若しくはその構成成分)が持続する時間の量を低下させることを意味する。
本明細書で使用する場合、表現「HS紅斑の頻度を低下させること」などは、HS紅斑の発生率を低下させること、例えば膿瘍及び/又は炎症性小結節の発生率を低下させることを意味する。HS紅斑の頻度を低下させることにより、患者は、より少ないHS再発を経験する。紅斑の発生率は、患者を経時的に観察して紅斑の有病率が低下したかどうかを判定することによって評価することができる。
本明細書で使用する場合、表現「HS紅斑を予防すること」は、将来的なHS紅斑及び/又は紅斑構成成分を排除することを意味する。
HS治療の有効性は、HS病態及び/又はHS臨床反応を測定する様々な公知の方法及び手段を使用して評価することができる。いくつかの例としては、例えば、Hurleyのステージ分類、重症度評価スコアリングシステム(SAHS)、Sartoriusスコア、改変Sartoriusスコア、HS医師総合評価(HS-PGA)スコア、皮膚関連の疼痛を評価するための視覚的アナログスケール(VAS)又は数値評価スケール(NRS)、皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)、膿瘍と炎症性小結節の合計に基づくHS臨床反応(HiSCR)、簡易HiSCR、EuroQuol-5D(EQ5D)、病因における不安と抑うつの尺度、医療資源活用、化膿性汗腺炎重症度指標(HSSI)、作業生産性指標(WPI)、炎症体表面積(BSA)、反対型ざ瘡重症度指標(AISI)などが挙げられる(例えば、Deckers and Prens(2016)Drugs 76:215-229;Sartorius et al.(2009)Br.J.Dermatol 161:831-39;Chiricozzi et al.(2015)Wounds 27(10):258-264を参照されたい)。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される本発明の方法の有効性は、HS医師総合評価(HS-PGA)、重症度評価スコアリングスコア(SAHS)、スコア数値評価スケール(NRS)、皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)、膿瘍と炎症性小結節の合計に基づくHS臨床反応(HiSCR)及び/又は簡易HiSCRによって評価することができる。好ましくは、本明細書で開示されるHS治療の有効性は、膿瘍と炎症性小結節の合計に基づくHS臨床反応(HiSCR)及び/又は簡易HiSCRによって評価することができる。
いくつかの実施形態では、HS患者は、HS治療に反応してHiSCRを達成する。いくつかの実施形態では、HS患者の集団が、開示した方法に従って治療される場合、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも70%は、治療の第16週までにHiSCRを達成する。
他の実施形態では、本明細書で開示されるHS治療の有効性は、治療の第16週までの、治療された患者における反応者の割合(すなわち本発明の化合物でのHS治療に対して、HiSCR反応を達成する患者)と、プラセボ治療された患者における反応者の割合との差によって測定することができる。いくつかの実施形態では、HiSCRによって測定される場合のこの反応者の割合の差は、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%又は少なくとも35%である。
治療反応に対する好ましいスコアリングシステムは、HiSCR、簡易HiSCR、NRS(特にNRS30)、重症度評価スコアリングシステム(SAHS)、HS-PGA、炎症性病変数(膿瘍、炎症性小結節及び/又は排膿瘻孔の数)及びDLQIである。
化膿性汗腺炎臨床反応(HiSCR)は、HS治療に対する臨床反応の尺度である。治療に対する(ベースラインと比較した)HiSCR反応は、以下の通りである:1)膿瘍及び炎症性小結節の少なくとも50%の減少、及び2)膿瘍の数の増加なし、及び3)排膿瘻孔の数の増加なし。本明細書で使用する場合、「簡易HiSCR」又は「sHiSCR」は、病変の進行を評価する場合にベースラインに対する膿瘍計数を含まない改変されたHiSCRを指す。好ましい実施形態では、HS患者は、HS治療に反応して簡易HiSCRを達成する。いくつかの実施形態では、HS患者の集団が、開示した方法に従って治療される場合、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも70%は、治療の第16週までに簡易HiSCRを達成する。
疼痛は、数値評価スケール(NRS)を使用して評価することができる。いくつかの実施形態では、HS患者は、HS治療に反応してNRSの向上を達成する。NRS30は、疼痛の少なくとも30%軽減、且つ3以上のベースラインスコアを有する患者におけるベースラインからの、皮膚疼痛の患者の総合評価(PGA)におけるベースラインからの少なくとも1単位の減少と定義される。いくつかの実施形態では、HS患者は、HS治療に反応してNRS30を達成する。いくつかの実施形態では、HS患者の集団が、開示した方法に従って治療される場合、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも60%は、治療の第16週までにNRS30を達成する。この実施形態の好ましい態様では、HS患者の集団が、開示した方法に従って治療される場合、少なくとも30%は、治療の第16週までにNRS30を達成する。いくつかの実施形態では、主張した方法に従う治療に反応して、患者は、早ければ初回投薬の1週後、VAS又はNRSによって測定される疼痛の迅速な減少を経験する。
重症度評価スコアリングシステム(SAHS)は、JAMA Dermatol 2018,154(3):330-335,Hassam et al.に記載されている。HSの重症度は、そのために以下の項目が調査されるSAHSスコアによって評価することができる:侵襲された領域の数(左腋窩、右腋窩、左乳腺下、右乳腺下、乳房間又は胸部、腹部、恥丘、左鼠径部、右鼠径部、性器、肛門周囲又は会陰、左臀部、右臀部及びその他[例えば、頸部、耳介後方])、瘻孔以外の炎症性及び/又は有痛性病変(ILOF)の数及び瘻孔の数。医師によって評価されるこれらの項目は、患者によって報告される2つの項目によって完全なものとなった:患者は、新しい腫物の数又は過去4週間で再燃した既存の腫物の数について尋ねられ、また患者の一連の日常活動(例えば、座る、動く又は働く)における最も症候性の病変の疼痛の現在の重症度(NRS)を数値評価スケールで評価することを求められた。SAHSスコアは、上のすべての収集された情報の複合スコアである。HSの軽症症例は、4以下のSAHSスコアによって定義される。中等症のHSは、5~8のSASHスコアによって定義され、HSの重症症例は、9以上のSASHによって定義される。
いくつかの実施形態では、HS患者は、HS治療に反応してSAHSスコアの向上を達成する。いくつかの実施形態では、HS患者は、HS治療に反応して、SAHSスコアの、ベースラインからの少なくとも1ポイントの低下を達成する。他の実施形態では、HS患者は、HS治療に反応して、SAHSスコアの、ベースラインからの少なくとも2ポイントの低下又は少なくとも3ポイントの低下を達成する。好ましくは、SAHSスコアは、LTA4H阻害剤での治療前、ベースラインで少なくとも4であった。
DLQIは、最も確立された皮膚科の生活の質の測定手段である。これは、前の週中の日常生活活動の感情及び別の面に対する皮膚疾患の影響に関する質問から構成される。各質問は、0(全くそうではない)~3(非常にそうである)でスコア付けされる。合計30ポイントが最大スコアであり、ここで、患者の生活に対して、0~1は、影響なし、2~5は、小さい、6~10は、中程度の、11~20は、非常に大きい、且つ21~30は、極めて大きい影響であるとみなされる(Finlay及びKhan(1994)Clin Exp Dermatol 19:210-16を参照されたい)。いくつかの実施形態では、HS患者は、HS治療に反応してDLQIの向上を達成する。
いくつかの実施形態では、主張した方法に従う治療に反応して、患者は、早ければ初回投薬の1週後、標準のCRP測定又は高感度CRP(hsCRP)測定によって測定されるCRPの迅速な減少を経験する。本明細書で使用する場合、「C反応性タンパク質」及び「CRP」は、血清C反応性タンパク質、すなわち炎症に対する急性期反応の指標として一般に使用される血漿タンパク質を指す。血漿中のCRPのレベルは、あらゆる濃度(例えば、mg/dl、nmol/L)で示すことができる。CRPのレベルは、様々な標準の測定法、例えば放射免疫拡散法、エレクトロイムノアッセイ、免疫比濁法、ELISA、比濁法、蛍光偏光イムノアッセイ及びレーザー比濁分析法によって測定することができる。CRPについて検査することは、標準のCRP検査又は高感度CRP(hs-CRP)検査(すなわちレーザー比濁分析法を使用して試料中の低レベルのCRPを測定することが可能である高感度検査)を用いることができる。CRPのレベルを検出するためのキットは、様々な企業、例えばCalbiotech,Inc、Cayman Chemical、Roche Diagnostics Corporation、Abazyme、DADE Behring、Abnova Corporation、Aniara Corporation、Bio-Quant Inc.、Siemens Healthcare Diagnosticsなどから購入することができる。
Sartorius HSスコア(HSスコア又はHSSとも呼ばれる)は、HS患者における侵襲された領域、小結節及び洞管を計数することによって付けられる。(Sartorius et al.(2003)Br J Dermatol 149:211-13)。改変Sartorius HSスコアは、使用をより実用的にする少しの単純化、例えばスコアに含める具体的な病変をより少なくすること、各パラメータに対して与えられる点の数への変更などを行うことによる元のバージョンのHSSの改正版である(Sartorius et al.(2009)Br.J Dermatol.161:831-839)。いくつかの実施形態では、HS患者は、HS治療に反応して改変Sartorius HSの向上を達成する。
HS医師総合評価(HS-PGA)は、HS病変(すなわち膿瘍、排膿瘻孔、炎症性小結節及び非炎症性小結節)の数に基づく6つの尺度の評価スケール(スコア範囲0~5)である。(Kimball AB,Kerdel F,Adams D et al Adalimumab for the treatment of moderate to severe hidradenitis suppurativa:a parallel randomized trial.Ann Intern Med 2012;157:846-855)。いくつかの実施形態では、HS患者は、HS治療に反応して改変HS-PGAの向上を達成する。いくつかの実施形態では、HS患者は、HS治療に反応して、HS-PGAスコアの、ベースラインからの少なくとも2ポイントの低下を達成する。好ましくは、HS-PGAスコアは、LTA4H阻害剤での治療前、ベースラインで少なくとも3であった。
いくつかの実施形態では、HS患者の集団が、開示した方法に従って治療される場合、第16週までに治療に反応した患者(例えば、第16週までにHiSCR又は簡易HiSCRを達成する患者)の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%は、治療の終了後(例えば、治療の終了の3か月後、又は6か月後、又は治療の終了の12か月後)に反応を持続していた。この実施形態の別の態様では、治療に反応した患者(例えば、第16週までに、例えばHiSCR又は簡易HiSCRを達成する患者)の少なくとも40%又は少なくとも50%は、治療の終了後(例えば、治療の終了の3か月後)に反応を持続していた。好ましくは、第16週までに治療に反応した患者(例えば、第16週までに、例えばHiSCR又は簡易HiSCRを達成する患者)の少なくとも70%は、治療の終了後(例えば、治療の終了の3か月後)に反応を維持していた。本明細書で使用する場合、用語「持続した」は、転帰又は目標(例えば、疼痛軽減、炎症軽減)が所与の時間にわたって実質的に維持されることを意味する。
病変関連のそう痒は、患者調査によって評価することができる。患者は、病変関連のそう痒を0(そう痒なし)~10(いっそう悪いそう痒の可能性)で評価することを求められた。いくつかの実施形態では、HS患者の集団が、開示した方法に従って治療される場合、そう痒スコアは、少なくとも2ポイント、好ましくは少なくとも3ポイント向上する。さらに、プラセボ群と比較する場合、治療された群とプラセボ群との差は、少なくとも1ポイントである。
病変の排膿によって引き起こされる臭気は、患者調査によって評価することができる。患者は、病変の排膿によって引き起こされる臭気を1(臭気なし)、2(少しの臭気)、3(中程度の臭気)、4(かなりの臭気)で評価することを求められた。いくつかの実施形態では、HS患者の集団が、開示した方法に従って治療される場合、そう痒スコアは、少なくとも1ポイント、好ましくは少なくとも2ポイント向上する。さらに、プラセボ群と比較する場合、治療された群とプラセボ群との差は、少なくとも1ポイントである。
仕事を完了する能力に関するHSに対する影響は、患者調査によって評価することができる。患者は、HSが仕事を完了する能力にどの程度影響を与えるかを1(全くなし)、2(少し)、3(中程度に)、4(大いに)、5(仕事は全くできない)で評価することを求められた。いくつかの実施形態では、HS患者の集団が、開示した方法に従って治療される場合、そう痒スコアは、少なくとも1ポイント、好ましくは少なくとも2ポイント向上する。さらに、プラセボ群と比較する場合、治療された群とプラセボ群との差は、少なくとも1ポイントである。
本明細書に開示されるLTA4H阻害剤は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせた場合に医薬組成物及び投薬形態として使用し得る。かかる組成物は、LTA4H阻害剤に加えて、担体、様々な希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、及び当該技術分野において公知の他の材料を含有し得る。担体の特性は投与経路に依存することになる。本発明の方法における使用のための医薬組成物は、経口投与、非経口投与、及び直腸投与など、特定の投与経路用に製剤化することができる。加えて、本発明の方法における使用のための医薬組成物は、固体形態(カプセル、錠剤、丸薬、顆粒、粉末又は坐薬を含むがこれらに限定されない)、又は液体形態(溶液、懸濁液又はエマルションを含むがこれらに限定されない)で作ることができる。本発明の方法における使用のための医薬組成物は、滅菌などの従来の製薬工程に供することができ、及び/又は従来の不活性希釈剤、潤滑剤、又は緩衝剤、並びに保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤及び緩衝液などの補助剤を含有することができる。本発明における使用のための医薬組成物及び投薬形態は、活性成分としての化合物(すなわち、本明細書に記載されるLTA4H阻害剤)が分解し得る速度を低下させる1つ以上の薬剤を含んでもよい。本明細書では「安定剤」と称されるかかる薬剤としては、限定はされないが、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤等が挙げられる。
典型的には、本発明における使用のための医薬組成物は、
a)充填剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシン;
b)滑沢剤、例えば、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウム塩又はカルシウム塩(例えばステアリン酸マグネシウム(Magensium,stearate))及び/又はポリエチレングリコール;
c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミウニムマグネシウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC又はヒプロメロース)などのメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン;必要に応じて
d)崩壊剤、例えば、クロスポビドン、デンプン、寒天、アルギン酸又はそのナトリウム塩、又は発泡性の混合物;
e)流動促進剤、例えば、シリカ、コロイド状無水/コロイド状二酸化ケイ素など、及び/又は
f)吸収剤、着色料、香味料及び甘味料
と共に活性成分を含む錠剤又はカプセルである。
錠剤は、当該技術分野において公知の方法に係るフィルムコート錠又は腸溶錠のいずれかであってもよい。
経口投与に好適な組成物は、有効量の式Iの化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)を錠剤、ロゼンジ、水性又は油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、エマルション、硬又は軟カプセル剤、又はシロップ剤又はエリキシル剤の形態で含む。経口使用が意図される組成物は、当該技術分野において医薬組成物の製造に関して公知の任意の方法により調製され、かかる組成物は、医薬品的にエレガントで美味な製剤をもたらすため、甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1つ以上の薬剤を含有することができる。錠剤は、錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容可能な賦形剤との混合で活性成分を含有し得る。そうした賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤、例えば、コーンスターチ、又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン又はアカシア;及び潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクである。錠剤は素錠であるか、又は胃腸管での崩壊及び吸収を遅延させて、それにより長時間の持続作用をもたらすため公知の技法によってコーティングされる。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を利用することができる。経口使用向けの製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合される硬ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水若しくは油媒体、例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセルとして提供することができる。
経皮適用に好適な組成物は、有効量の本発明の方法における使用のための化合物を好適な担体と共に含む。経皮送達に好適な担体には、宿主の皮膚の通過を助ける吸収性の薬理学的に許容可能な溶媒が含まれる。例えば、経皮的装置は、裏当て部材、化合物を任意選択で担体と共に収容するリザーバ、任意選択で宿主の皮膚の化合物を長時間にわたって制御された所定の速度で送達するための速度制御バリア、及び装置を皮膚に固定する手段を含む包帯材料の形態である。
好ましい実施形態において、好適な組成物は経口投与用である。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、LTA4H阻害剤(例えば、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)は医薬製剤中に配合され、ここで前記医薬製剤は、70~95重量%の量の1つ以上の充填剤、3~5重量%の量の崩壊剤及び2~3重量%の量の結合剤をさらに含む。この実施形態の詳細な態様において、製剤は、1重量%の量の滑沢剤及び0.5重量%の量の流動促進剤をさらに提供する。
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態において、医薬製剤はカプセル又は錠剤形態である。本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態において、医薬製剤は錠剤形態である。
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態において、医薬製剤はカプセル形態である。この実施形態のある具体的な態様において、カプセルフィルは、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩と、微結晶性セルロース及びマンニトールからなる充填剤であって、総カプセルフィルの70~95重量%の量である充填剤と、総カプセルフィルの3~5重量%の量のクロスポビドンと、総カプセルフィルの2~3重量%の量のヒプロメロースと、総カプセルフィルの約1重量%の量のステアリン酸マグネシウム(magnesium stereate)と、総カプセルフィルの約0.5重量%の量のシリカ及びコロイド状二酸化ケイ素とを含む。
本開示の方法における使用のための医薬組成物はまた、標的とされる特定の障害の治療用の追加の治療薬も含有し得る。例えば、医薬組成物は抗炎症剤も含み得る。かかる追加の因子及び/又は薬剤は、本明細書に記載されるLTA4H阻害剤との相乗効果を生み出すため、又は本明細書に記載されるLTA4H阻害剤によって引き起こされる副作用を最小限に抑えるために本医薬組成物中に含まれ得る。
有利には、HS治療の間、式(I)~(V)のいずれか1つの化合物又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩など、開示されるLTA4H阻害剤と様々な療法が組み合わされてもよい。
従って、本発明のLTA4H阻害剤は、1つ以上の他の治療薬と同時、又はその前若しくは後のいずれに投与されてもよい。本発明の方法における使用のためのLTA4H阻害剤は、他の薬剤と別々に、それと同じ又は異なる投与経路により、又はそれと同じ医薬組成物中で一緒に投与されてもよい。
一実施形態において、本発明は、対象のHSを治療又は予防する方法であって、治療中の同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ製剤としての、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの他の治療薬とを含む製品を対象に投与することを含む方法に関する。任意選択で、本発明の方法における使用のための医薬組成物は、上に記載したとおりの薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。
本発明の方法における使用のための組み合わせ製剤として提供される製品は、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩と1つ又は複数の他の治療薬とを同じ医薬組成物中に一緒に含むか、又は式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩と1つ又は複数の他の治療薬とを個別の形態で、例えばキットの形態で含む組成物を含む。
一実施形態において、本発明は、本発明の方法における使用のためのキットであって、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩を少なくとも1つが含有する2つ以上の別個の医薬組成物を含むキットを提供する。一実施形態において、このキットは、容器、仕切りのあるボトル、又は仕切りのあるフォイル小包装など、前記組成物を別々に保持する手段を含む。かかるキットの例は、錠剤、カプセルなどの包装に典型的に用いられるとおりのブリスターパックである。
本発明のキットは、異なる投薬形態の投与、例えば経口及び非経口投与、別個の組成物の異なる投薬間隔での投与、又は別個の組成物の互いに対する用量設定に使用されてもよい。服薬コンプライアンスを助けるため、本発明のキットは典型的には投与説明書を含む。
本発明の組み合わせ療法では、本明細書に記載されるLTA4H阻害剤と他の治療薬とは同じ又は異なる製造者によって製造及び/又は製剤化されてもよい。さらに、本明細書に記載されるLTA4H阻害剤と他の治療薬とは、(i)医師への組み合わせ製品の出荷前に(例えば、本発明の方法における使用のための化合物と他の治療薬とを含むキットの場合);(ii)投与直前に医師自身によって(又は医師の指導の下に);(iii)患者自身の体内で、例えば化合物(LTA4H阻害剤)及び他の治療薬を逐次投与する間に、組み合わせ療法に一体にまとめられてもよい。
従って、本発明は、HSを治療又は予防するための、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩の使用を提供し、ここでこの医薬品は、別の治療薬と併せた投与用に調製される。本発明はまた、HSを治療又は予防するための別の治療薬の使用も提供し、ここでこの医薬品は、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩と併せて投与される。
本発明はまた、HSを治療又は予防する方法における使用のための、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩も提供し、ここで前記化合物は、別の治療薬と併せた投与用に調製される。本発明はまた、HSを治療又は予防する方法における使用のための別の治療薬も提供し、ここでこの他の治療薬は、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩と併せた投与用に調製される。
本発明はまた、HSを治療又は予防する方法における使用のための、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩も提供し、ここで前記化合物は、別の治療薬と併せて投与される。本発明はまた、HSを治療又は予防する方法における使用のための別の治療薬も提供し、ここでこの他の治療薬は、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩と併せて投与される。
本発明はまた、そのような治療及び/又は予防を必要としている患者のHSを治療及び/又は予防するための、式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩の使用も提供し、ここで患者は、以前に(例えば24時間以内に)別の治療薬による治療を受けている。本発明はまた、それを必要としている患者のHSを治療又は予防するための別の治療薬の使用も提供し、ここで患者は、以前に(例えば24時間以内に)式(I)~(V)のいずれか1つに係る化合物(又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物)、又はその薬学的に許容可能な塩による治療を受けている。
かかる組み合わせ療法には、外用薬治療(クリーム[非ステロイド系又はステロイド系]、洗浄剤、消毒剤)、全身治療(例えば、生物製剤、抗生物質、又は化学的実体による)、消毒剤、光線力学療法、及び外科的介入(レーザー、ドレナージ又は切開、切除)が含まれる。
経口抗生物質の例は、テトラサイクリン系及びリファンピシンである。
開示されるLTA4H阻害剤と併せた使用のための外用HS薬剤の非限定的な例としては、過酸化ベンゾイル、外用ステロイドクリーム、アミノグリコシド群に含まれる外用抗生物質、例えば、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、及びエリスロマイシンなど、レソルシノールクリーム、ヨウ素スクラブ、及びクロルヘキシジンが挙げられる。
開示されるLTA4H阻害剤と併せた使用のための全身治療に使用されるHS薬剤の非限定的な例としては、IL-17アンタゴニスト(イキセキズマブ、ブロダルマブ、セクキヌマブ CJM112)が挙げられるが、さらには、ビメキズマブなどのIL17A/Fアンタゴニスト又はMOR106などのIL17Cアンタゴニスト、腫瘍壊死因子α(TNF-α)遮断薬(Enbrel(登録商標)(エタネルセプト)、Humira(登録商標)(アダリムマブ)、Remicade(登録商標)(インフリキシマブ)及びSimponi(登録商標)(ゴリムマブ)など)、インターロイキン12/23遮断薬(Stelara(登録商標)(ウステキヌマブ)、タソシチニブ、及びブリアキヌマブなど)、IL-23遮断薬(グセルクマブ、チルドラキズマブ及びリサンキズマブなど) p19阻害剤、アプレミラスト又はOtezla(登録商標)などのPDE4阻害剤)、補体経路阻害剤、例えば、B因子阻害剤(例えば、国際公開第2015/009616号パンフレットに開示される化合物、又は4-((2S,4S)-4-エトキシ-1-((5-メトキシ-7-メチル)-1H-インドール-4-イル)メチル)ピペリジン-2-イル)安息香酸としても知られるLNP023)、C5a阻害剤(IFX-001、アバコパン(Avacopan)としても知られるCCX168)など、IL-1アンタゴニスト(カナキヌマブ、ゲボキズマブ、リロナセプト、アナキンラ、MaBp1(XBiotech))、NLRP3及びNLRP5阻害剤などのインフラマソーム阻害剤、CXCR1/2阻害剤、IL-18アンタゴニスト、IL-6アンタゴニスト、IL-36アンタゴニスト、CD20アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、IL-8アンタゴニスト、B細胞枯渇薬(特にリツキシマブなどのCD20アンタゴニスト、並びにBAFF-R及びイスカリマブ(Iscalimab)(CFZ533)などのCD40アンタゴニスト)、IL-21アンタゴニスト、IL-22アンタゴニスト、VEGFアンタゴニスト、CXCLアンタゴニスト、MMPアンタゴニスト、及びデフェンシンアンタゴニスト(例えば、受容体デコイ、アンタゴニスト抗体等)、並びに広域スペクトル経口JAK阻害剤又はより特異的なTYK2又はJAK1、JAK2又はJAK3阻害剤も挙げられる。
HS治療の間における、開示されるLTA4H阻害剤との組み合わせにおける使用のための追加のHS薬剤としては、アシトレチン(例えば、Soriatane(登録商標))及びイソトレチノインなどのレチノイド類、免疫系抑制薬(例えば、ラパマイシン、T細胞遮断薬[例えば、Amevive(登録商標)(アレファセプト)及びRaptiva(登録商標)[エファリズマブ]) シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、レフルノミド、タクロリムス等)、ヒドロキシ尿素(例えば、Hydrea(登録商標))、スルファサラジン、6-チオグアニン、フマル酸塩(例えば、フマル酸ジメチル及びフマル酸エステル類)、アザチオプリン、コルヒチン、アリトレチノイン、ステロイド類、コルチコステロイド類、セルトリズマブ、モメタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ボツリヌス毒素、トリアムシノロン、IFX-1(InflaRx)、LY-3041658(Eli Lilly)、TE-2232(Immunwork)、NSAIDs、COX阻害剤、医療用麻薬、ケトプロフェン、コデイン、ガバペンチン、プレガバリン ゲンタニル(gentanyl)、抗生物質(外用、経口、IV)(例えば、クリンダマイシン、リファンピン、テトラサイクリン、サレサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、リメサイクリン、トリメトプリム・スルファメトキサゾール、エリスロマイシン、セフトリアキソン、モキシフロキサシン、メトロニダゾール、単独で又は組み合わせとして)、コルチコステロイド(注射用又は経口)、抗アンドロゲン/ホルモン療法(経口避妊薬、スピロノラクトン、フィナステリド、デュタステリド、プロゲステロンIUD、酢酸シプロテロン、エチニルエストラジオール(ethinyloestradiol)、ゲストデン、ノルゲスチメート、デソゲストレル、ドロスピレノン、スピロノラクトン)、トリアムシノロンアセトニド、MEDI8968、ヒドロキシクロロキン、ダプソーン、メトホルミン、アダパレン、アゼライン酸及び亜鉛が挙げられる。
開示されるキット、方法、及び使用における使用に好ましい組み合わせとしては、PDE4i及びJAKi、並びに抗生物質(全て経口)が挙げられる。
組み合わせにおける使用のためのJAK阻害剤の例は、BMS986165、INCB054707、ルキソリチニブ、アブロシチニブ、トファシチニブ及びバリシチニブである。JAK阻害剤の他の例は、国際公開第2017/089985号パンフレット、国際公開第2018/055550号パンフレット及び国際公開第2018/055551号パンフレットに開示される化合物である。
当業者は、開示されるLTA4H阻害剤と併せた共送達に適切な上記HS薬剤の投薬量を判断することができるであろう。
LTA4H阻害剤、例えば、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩は、好都合には経口投与される。本開示の医薬組成物を使用した経口療法の継続期間は、治療下の疾患の重症度並びに各個別の患者の状態及び個人的な反応に応じて変わることになる。医療提供者は、本開示の医薬組成物を使用する経口療法の適切な継続期間及び療法の投与タイミングを決定することになる。一部の実施形態において、患者はHSに関して、特許請求される本方法により少なくとも16週間、少なくとも24週間、少なくとも36週間、少なくとも48週間、少なくとも52週間にわたって治療される。一部の実施形態において、患者はHSに関して慢性使用で治療される。
一実施形態において、HSの予防又は治療における使用のための本発明の医薬組成物は、約50~70kgの対象につき約1~500mgの1つ又は複数の活性成分、又は約1~250mg又は約1~150mg又は約1~100mg、又は約1~50mgの活性成分の単位投薬量であってもよい。化合物、医薬組成物の治療上有効な投薬量は、対象の種、体重、年齢及び個別的な状態、造影剤誘発性腎症障害の重症度に依存する。当業者である医師、臨床医又は獣医師は、障害又は疾患の進行を予防、治療又は阻害するのに必要な活性成分の各々の有効量を容易に決定することができる。
好ましい製剤は、約1mg~約160mgのLTA4H阻害剤又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩と、充填剤、崩壊剤、結合剤、並びに任意選択で滑沢剤及び流動促進剤から独立に選択される1つ以上の賦形剤とを含むカプセル又は錠剤組成物である。好ましい実施形態において、カプセル又は錠剤組成物は、約5mg~約80mgのLTA4H阻害剤又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩と、充填剤、崩壊剤、結合剤、並びに任意選択で滑沢剤及び流動促進剤から独立に選択される1つ以上の賦形剤とを含む。さらに別の実施形態において、カプセル又は錠剤組成物は、約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg及び約50mgのLTA4H阻害剤又は実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩と、充填剤、崩壊剤、結合剤、並びに任意選択で滑沢剤及び流動促進剤から独立に選択される1つ以上の賦形剤とを含む。
本明細書には、化膿性汗腺炎(HS)を治療する方法であって、約1mg~約160mg、又は約10mg~約100mg、又は約20~約60mgの用量のLTA4H阻害剤(すなわち、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)をそれを必要としている患者に毎日経口投与することを含む方法が開示される。前記用量は、1日1回の投与レジメン又は1日2回の投与レジメンのいずれかで患者に投与することができる。別の実施形態において、本方法は、約10mg~約30mgの用量のLTA4H阻害剤(すなわち、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)をそれを必要としている患者に1日2回(BID)経口投与することを含む。この実施形態の好ましい態様において、本方法は、約20mgの用量のLTA4H阻害剤(すなわち、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)を前記患者に1日2回(BID)経口投与することを含む。
本明細書には、化膿性汗腺炎(HS)を治療する方法であって、約1mg~約160mg、又は約10mg~約100mg、又は約20~約60mgの1日用量のLTA4H阻害剤をそれを必要としている患者に経口投与することを含む方法が開示され、ここでLTA4H阻害剤は、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸、又はその薬学的に許容可能な塩である。この実施形態の好ましい態様において、本方法は、約10mg~約30mgの用量の(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸、又はその薬学的に許容可能な塩を前記患者に1日2回経口投与することを含む。この実施形態の最も好ましい態様において、本方法は、約20mgの用量の(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸、又はその薬学的に許容可能な塩を前記患者に1日2回経口投与することを含む。
本明細書には、化膿性汗腺炎(HS)を治療する方法であって、約1mg~約160mg、又は約10mg~約100mg、又は約20mg~約60mgの1日用量のLTA4H阻害剤をそれを必要としている患者に経口投与することを含む方法が開示され、ここでLTA4H阻害剤は、本明細書に記載されるとおりの、その遊離形態にある(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の結晶形である。この実施形態の好ましい態様において、本方法は、約10mg~約30mgの用量の本明細書に記載されるとおりの(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の結晶形を前記患者に1日2回経口投与することを含む。この実施形態の最も好ましい態様において、本方法は、約20mgの用量の本明細書に記載されるとおりの(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の結晶形を前記患者に1日2回経口投与することを含む。
本明細書には、化膿性汗腺炎(HS)の治療における使用のためのLTA4H阻害剤(すなわち、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)が開示され、ここでLTA4H阻害剤は、約1mg~約160mg、又は約4mg~約100mg、又は約10mg~約100mg、又は約20mg~約60mg又は約5mg~約80mg(例えば、約20mg、約30mg、約40mg又は約80mg)の1日用量でそれを必要としている患者に経口投与される。この実施形態の好ましい態様において、LTA4H阻害剤(例えば、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)は、約5mg QD~約40mg BIDの用量でそれを必要としている患者に経口投与される。この実施形態のさらに別の好ましい態様において、LTA4H阻害剤(例えば、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)は、それを必要としている患者に約10mg~約30mgの用量で1日2回(例えば約10mg BID、約15mg BID、好ましくは約20mg BID)経口投与される。この実施形態のさらに最も好ましい態様において、LTA4H阻害剤(例えば、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)は、それを必要としている患者に約20mgの用量で1日2回経口投与される。
本明細書には、化膿性汗腺炎(HS)の治療における使用のための、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸又はその薬学的に許容可能な塩であるLTA4H阻害剤が開示され、ここでLTA4Hは、約1mg~約160mg、又は約4mg~約100mg、又は約10mg~約100mg、又は約20mg~約60mg又は約5mg~約80mg(例えば、約20mg、約30mg、約40mg又は約80mg)の1日用量でそれを必要としている患者に経口投与される。この実施形態の好ましい態様において、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸、又はその薬学的に許容可能な塩は、約5mg QD~約40mg BIDの用量でそれを必要としている患者に経口投与される。この実施形態のさらに別の好ましい態様において、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸、又はその薬学的に許容可能な塩は、それを必要としている患者に約10mg~約30mgの用量で1日2回(例えば、約10mg BID、約15mg BID、好ましくは約20mg BID)経口投与される。さらに最も好ましい実施形態において、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸、又はその薬学的に許容可能な塩は、それを必要としている患者に約20mgの用量で1日2回経口投与される。
本明細書には、化膿性汗腺炎(HS)の治療における使用のための、本明細書に記載されるとおりのその遊離形態にある(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の結晶形であるLTA4H阻害剤が開示され、ここでLTA4Hは、約1mg~約160mg、又は約4mg~約100mg、又は約10mg~約100mg、又は約20mg~約60mg又は約5mg~約80mg(例えば、約20mg、約30mg、約40mg又は約80mg)の1日用量でそれを必要としている患者に経口投与される。この実施形態の好ましい態様において、本明細書に記載されるとおりのその遊離形態にある(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の結晶形は、約10mg QD~約40mg BIDの用量でそれを必要としている患者に経口投与される。この実施形態のさらに別の好ましい態様において、本明細書に記載されるとおりのその遊離形態にある(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の結晶形は、それを必要としている患者に約10mg~約30mgの用量で1日2回(例えば、約10mg BID、約15mg BID、好ましくは約20mg BID)経口投与される。さらに最も好ましい実施形態において、本明細書に記載されるとおりのその遊離形態にある(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の結晶形は、それを必要としている患者に約20mgの用量で1日2回経口投与される。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、LTA4H阻害剤の用量は約10mg~約30mg BID又は約20mg BIDである。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は、1年間にわたる治療後に、(簡易)化膿性汗腺炎臨床反応(HiSCR)、数値評価スケール(NRS)、化膿性汗腺炎-医師総合評価(HS-PGA)、又は皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)によって測定される場合の持続する反応を達成する。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、本明細書に開示されるとおりのLTA4H阻害剤による治療前、患者は全身性HS薬剤による治療歴がある。本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、全身性薬剤は、外用薬治療、抗生物質、免疫系抑制薬、TNF-α阻害剤、IL-1アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態において、本明細書に記載されるとおりのLTA4Hによる治療前、患者は、HSに対する全身性薬剤又は外用薬治療による治療歴がない。
本開示の方法、使用及びキットの一実施形態において、本明細書に記載されるとおりのLTA4H阻害剤(例えば、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)は、抗生物質、JAK阻害剤、TYK2阻害剤 PDE4阻害剤又は免疫抑制薬のうちの少なくとも1つとの組み合わせで投与される。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、本明細書に記載されるとおりのLTA4H阻害剤(例えば、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)の用量は、約10mg~約30mg BIDである。本開示の方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態において、LTA4H阻害剤(例えば、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)の用量は、約20mgである。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は中等症~重症のHSを有する。
本明細書で使用する場合、語句「中等症~重症」は、患者が3つ以上の活動性炎症性病変[すなわち、膿瘍及び/又は炎症性小結節などの深在性炎症性病変]を有し、瘻孔が10個以下であり、及び少なくとも2つの解剖学的領域がHS病変に関与している必要があるHS疾患を指す。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は成人である。本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態において、HS患者は、中等症~重症のHS疾患を有する成人である。
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態において、患者は青年患者(12歳以上)である。一部の実施形態において、患者は、中等症~重症のHSを有する青年患者である。
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態において、患者は、少なくとも1年にわたってHSと診断されている。
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態において、患者は、HSの結果としての広範囲の瘢痕を有しない(すなわち、20個未満の瘻孔、排膿性若しくは非排膿性又は10個未満の瘻孔)。
本開示の方法、使用及びキットの一部の実施形態において、患者は以前、従来の全身性HS療法への反応が不十分であったことがある。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、本明細書に記載されるとおりのLTA4H阻害剤(例えば、実施形態1、2、2A~2N、3、及び3A~3Eのいずれか1つに係る化合物、又はその薬学的に許容可能な塩)による治療前、患者は3以上のHS-PGAスコアを有する。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は治療の第16週までに(簡易)HiSCRを達成する。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は治療の第16週までにNRS30を達成する。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は治療の第16週までにHS紅斑が減少する。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は治療の第16週までにDLQIによって測定される場合の6以下の減少を達成する。
好ましい実施形態において、本開示の方法、使用又はキットが中等症~重症HSを患う患者の集団を治療するために使用される場合、前記患者の少なくとも40%が治療の第16週までに前記投与ステップに反応して簡易HiSCRを達成する。
別の好ましい実施形態において、本開示の方法、使用又はキットが中等症~重症HSを患う患者の集団を治療するために使用される場合、治療の第16週までの反応者の割合(例えばHS治療に対してHiSCR反応を達成する患者)とプラセボ治療患者における反応者の割合との差が少なくとも15%、少なくとも25%、又は少なくとも30%である。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は、例えば治療の16週間までに、改変Sartoriusスコアの減少を呈する。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は、例えば治療の16週間までに、DLQIの向上を呈する。
好ましい実施形態において、本開示の方法、使用又はキットが中等症~重症HSを患う患者の集団を治療するために使用される場合、前記患者の少なくとも25%(及び好ましくは少なくとも30%)が、例えば治療の第16週までに前記投与ステップに反応してNRS30反応を達成する。
好ましい実施形態において、本開示の方法、使用又はキットが中等症~重症HSを患う患者の集団を治療するために使用される場合、前記患者の15%未満が治療中に前記投与ステップに反応して(例えば16週間の治療中に)HS紅斑を生じる。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は、本明細書に記載されるとおりのLTA4H阻害剤と組み合わせて少なくとも1つの外用薬物療法及び少なくとも1つの消毒剤でさらに治療される。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は本明細書に記載されるとおりのLTA4H阻害剤で少なくとも16週間、少なくとも24週間、少なくとも36週間、少なくとも48週間又は少なくとも52週間治療される。最も好ましくは、患者は少なくとも16週間治療される。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は、そのLTA4H阻害剤の初回投与の早ければ1週間後に、VAS又はNRSによって測定される場合の疼痛の迅速な減少を呈する。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、患者は、IL-17抗体又はその抗原結合断片の初回投与の早ければ1週間後に、標準のCRP測定を用いて測定される場合のCRPの迅速な減少を呈する。
本開示の方法、使用及びキットの好ましい実施形態において、LTA4H阻害剤は、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸又はその薬学的に許容可能な塩である。
本開示の好ましい実施形態において、LTA4H阻害剤は、その遊離形態にある(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の結晶形(本明細書ではフォームBと称される)である。
好ましい実施形態において、LTA4H阻害剤は、実質的に純粋な相の本明細書に記載されるとおりのフォームBである。
以下の項目に要約される本発明の態様、有利な特徴及び好ましい実施形態は、それぞれ単独で又は組み合わせで、本発明の目的の解決に寄与する:
項目1.化膿性汗腺炎(HS)を治療又は予防する方法であって、治療有効量のLTA4H阻害剤をそれを必要としている対象に投与することを含む方法。
項目2.LTA4H阻害剤が、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩:
[式中、
R1は、OH又はNH
2であり;
Yは、O、S又はCH
2であり;
X1、X2、X3及びX4は、Nであり;又は
X1、X2、X3及びX4は、N、NH、C、CH及びOから選択され、但し、X1、X2、X3又はX4のうちの少なくとも2つはN又はNHであるものとし;
R2は、フェニルによって任意選択で置換されているC
1~C
6アルキル;C
3~C
6シクロアルキル;ハロゲン、シアノ、ハロゲンによって任意選択で置換されているC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、又はN、O及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~6員ヘテロアリール環によって任意選択で置換されているフェニル;又はN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む5~10員単環式若しくは二環式ヘテロアリールであって、ハロゲン、シアノ又はハロゲンによって任意選択で置換されているC
1~C
6アルキルによって任意選択で置換されているヘテロアリールである];又はその薬学的に許容可能な塩である、項目1に係る方法。
項目3.LTA4H阻害剤が、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸、又はその薬学的に許容可能な塩である、項目1又は2に係る方法。
項目4.LTA4H阻害剤が医薬製剤中に配合され、前記医薬製剤が、充填剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤及び流動促進剤から各々が独立に選択される1つ以上の薬学的に許容可能な担体を含む、上記項目のいずれかに係る方法。
項目5.医薬製剤が錠剤又はカプセル形態である、項目4に係る方法。
項目6.LTA4H阻害剤が約10mg~約100mgの1日用量で投与される、上記項目のいずれかに係る方法。
項目7.LTA4H阻害剤が1つ以上の治療薬との組み合わせで投与される、上記項目のいずれかに係る方法。
項目8.患者が、LTA4H阻害剤と組み合わせて少なくとも1つの外用薬物療法及び少なくとも1つの消毒剤でさらに治療される、項目1~6のいずれか1つに係る方法。
項目9.LTA4H阻害剤による治療前、患者はHSに対する全身性薬剤又は外用薬治療による治療歴がない、項目1~8のいずれかに係る方法。
項目10.患者が、以下の基準:
a)患者が中等症~重症のHSを有する;
b)LTA4H阻害剤による治療前、患者が3以上のHS-PGAスコアを有する;
c)LTA4H阻害剤による治療前、患者が少なくとも3つの炎症性病変を有する;又は
d)LTA4H阻害剤による治療前、患者がHSの結果としての広範な瘢痕を有しない(10個未満の瘻孔)
のうちの1つに従い選択される、上記項目のいずれかに係る方法。
項目11.前記患者が、以下:
a)簡易HiSCR;
b)HS紅斑の減少;
c)NRS30;
d)DLQIによって測定される場合の6以下の減少;及び/又は
e)DLQIの向上
のうちの少なくとも1つを(例えば治療の第16週までに)達成する、上記項目のいずれかに係る方法。
項目12.前記方法が中等症~重症のHSを患う患者の集団を治療するために使用される場合、前記患者の少なくとも40%が例えば治療の第16週までに簡易HiSCRを達成する、上記項目のいずれかに係る方法。
項目13.前記方法が中等症~重症のHSを患う患者の集団を治療するために使用される場合、又は前記患者の少なくとも25%が例えば治療の第16週までにNRS30反応を達成する、項目1~11のいずれかに係る方法。
項目14.前記方法が中等症~重症のHSを患う患者の集団を治療するために使用される場合、前記患者の15%未満が治療中、例えば16週間の治療中にHS紅斑を生じる、項目1~11のいずれかに係る方法。
項目15.患者がLTA4H阻害剤で少なくとも16週間治療される、上記項目のいずれかに係る方法。
項目16.患者は、LTA4H阻害剤の第1の投与の早ければ1週後、以下:
a)VAS又はNRSによって測定される場合の疼痛の迅速な減少、及び
b)標準のCRP測定を使用して測定される場合のCRPの迅速な減少
の少なくとも1つを有する、項目1~11のいずれかに係る方法。
項目17.前記患者は、治療の終了後(例えば、治療の終了の3か月後)、炎症性病変数、化膿性汗腺炎臨床反応(HiSCR)、数値評価スケール(NRS)、改変Sartorius HSスコア、化膿性汗腺炎-医師総合評価(HS-PGA)又は皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)によって測定される場合の持続する反応を達成する、上記項目のいずれかに係る方法。
項目18.前記患者は、治療の終了後(例えば、治療の終了の3か月後)、簡易HiSCR(sHiSCR)によって測定される場合の持続する反応を達成する、項目17に係る方法。
項目19.LTA4H阻害剤が約10mg~約30mgの用量で1日2回投与される、上記項目のいずれか1つに係る方法。
項目20.そのような治療及び/又は予防を必要としている患者の化膿性汗腺炎(HS)の治療及び/又は予防における使用のためのLTA4H阻害剤。
項目21.前記LTA4H阻害剤が、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩:
[式中、
R1は、OH又はNH
2であり;
Yは、O、S又はCH
2であり;
X1、X2、X3及びX4は、Nであり;又は
X1、X2、X3及びX4は、N、NH、C、CH及びOから選択され、但し、X1、X2、X3又はX4のうちの少なくとも2つはN又はNHであるものとし;
R2は、フェニルによって任意選択で置換されているC
1~C
6アルキル;C
3~C
6シクロアルキル;ハロゲン、シアノ、ハロゲンによって任意選択で置換されているC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、又はN、O及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~6員ヘテロアリール環によって任意選択で置換されているフェニル;又はN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む5~10員単環式若しくは二環式ヘテロアリールであって、ハロゲン、シアノ又はハロゲンによって任意選択で置換されているC
1~C
6アルキルによって任意選択で置換されているヘテロアリールである]である、請求項20に係る使用のためのLTA4H阻害剤。
項目22.前記LTA4H阻害剤が、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸、又はその薬学的に許容可能な塩である、項目20又は21に係る使用のためのLTA4H阻害剤。
項目23.LTA4H阻害剤が医薬製剤中に配合され、前記医薬製剤が、充填剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤及び流動促進剤から各々が独立に選択される1つ以上の薬学的に許容可能な担体を含む、項目20~22のいずれか1つにおける使用のためのLTA4H阻害剤。
項目24.医薬製剤が錠剤又はカプセル形態である、項目23における使用のためのLTA4H阻害剤。
項目25.そのような治療及び/又は予防を必要としている患者のHSの治療及び/又は予防における使用のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩であるLTA4H阻害剤を1つ以上の薬学的に許容可能な担体と共に含む医薬組成物。
項目26.LTA4H阻害剤が約10mg~約100mgの1日用量で投与される、項目20~24のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤又は項目25における使用のための医薬組成物。
項目27.LTA4H阻害剤又はそれを含む医薬組成物が1つ以上の第2の治療薬との組み合わせで投与される、項目20~24及び26のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤、又は項目25又は26における使用のための医薬組成物。
項目28.そのような治療及び/又は予防を必要としている患者のHSの治療及び/又は予防における使用のための、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩と1つ以上の治療薬とを含む組み合わせ製品。
項目29.患者が、LTA4H阻害剤と組み合わせて少なくとも1つの外用薬物療法及び少なくとも1つの消毒剤でさらに治療される、項目20~24及び26のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤、項目25及び26のいずれか1つに係る使用のための医薬組成物。
項目30.LTA4H阻害剤による治療前、患者はHSに対する全身性薬剤又は外用薬治療による治療歴がない、項目20~24、26、27及び29のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤、項目25~27及び29のいずれか1つに係る使用のための医薬組成物、又は項目28又は29に係る組み合わせ。
項目31.患者が、以下の基準:
a)患者が中等症~重症のHSを有する;
b)LTA4H阻害剤による治療前、患者が3以上のHS-PGAスコアを有する;
c)LTA4H阻害剤による治療前、患者が少なくとも3つの炎症性病変を有する;又は
d)LTA4H阻害剤による治療前、患者がHSの結果としての広範な瘢痕を有しない(10個未満の瘻孔)
のうちの1つに従い選択される、項目20~24、26、27及び29のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤、項目25~27及び29のいずれか1つに係る使用のための医薬組成物、又は項目28又は29に係る組み合わせ。
項目32.前記患者が治療の第16週までに、以下:
a)簡易HiSCR;
b)HS紅斑の減少;
c)NRS30;
d)DLQIによって測定される場合の6以下の減少;及び/又は
e)DLQIの向上
のうちの少なくとも1つを達成する、項目20~24、26、27及び29~31のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤、項目25~27、及び29~31のいずれか1つに係る使用のための医薬組成物、又は項目27~31のいずれか1つに係る組み合わせ。
項目33.治療の第16週までに、前記患者の少なくとも40%が簡易HiSCRを達成する;又は前記患者の少なくとも25%がNRS30反応を達成する;又は前記患者の15%未満がHS紅斑を生じる、項目20~24、26、27、及び29~31のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤、項目25~27、及び29~31のいずれか1つに係る使用のための医薬組成物、又は項目27~31のいずれか1つに係る組み合わせ。
項目34.患者がLTA4H阻害剤の初回投与の早ければ1週間後に、以下:
a)VAS又はNRSによって測定される場合の疼痛の迅速な減少、及び
b)標準のCRP測定を用いて測定される場合のCRPの迅速な減少、
のうちの少なくとも1つを呈する、項目20~24、26、27、及び29~31のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤、項目25~27、及び29~31のいずれか1つに係る使用のための医薬組成物、又は項目27~31のいずれか1つに係る組み合わせ。
項目35.前記患者が治療終了後(例えば治療終了後3ヵ月)に、炎症性病変数、化膿性汗腺炎臨床反応(HiSCR)、数値評価スケール(NRS)、改変Sartorius HSスコア、化膿性汗腺炎-医師総合評価(HS-PGA)、又は皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)によって測定される場合の持続する反応を達成する、項目20~24、26、27及び29~34のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤、項目25~27及び29~34のいずれか1つに係る使用のための医薬組成物、又は項目27~34のいずれか1つに係る組み合わせ。
項目36.前記患者が、治療終了後、例えば治療終了後3ヵ月に、簡易HiSCR(sHiSCR)によって測定される場合の持続する反応を達成する、項目35に係るLTA4H阻害剤、医薬組成物、又は組み合わせ。
項目37.LTA4H阻害剤が約10mg~約30mgの用量で1日2回投与される、項目20~24、26、27、及び29~34のいずれか1つに係る使用のためのLTA4H阻害剤、項目25~27、及び29~34のいずれか1つに係る使用のための医薬組成物、又は請求項27~34のいずれか1つに係る組み合わせ。
概要
本開示の1つ以上の実施形態の詳細が、上記の添付の説明に示される。本開示の実施又は試験においては、本明細書に記載されるものと同様の又は等価な任意の方法及び材料を使用することができるが、ここで好ましい方法及び材料を記載する。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、この説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、文脈上特に明確に指示されない限り単数形には複数形の指示対象が含まれる。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に引用される全ての特許及び刊行物は参照によって援用される。以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態をさらに詳しく例示するために提供される。これらの例は、いかなる形であれ、添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの開示される主題の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
略語
AE 有害作用
AUC 曲線下面積
AUClast 時間ゼロから最後の定量化可能濃度時点までの血漿(又は血清又は血液)濃度-時間曲線下面積 (質量×時間/容積)
AUCtau 時間ゼロから投与間隔τの終了時までの血漿(又は血清又は血液)濃度-時間曲線下面積(質量×時間/容積)
b.i.d.又はBID 1日2回
CI 信頼区間
Cmax 薬物投与後の最高濃度
Cmax,ss 定常状態における最高濃度
ECG 心電図
EoS 研究終了
PK 薬物動態
PD 薬力学
q.d.又はQD 1日1回
,ss 定常状態で
Tmax 薬物投与後に最高濃度に達するまでの制限時間
T1/2 終末消失半減期
実施例1:(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸(結晶形フォームB)
国際公開第2015/092740号パンフレットに記載されるとおりの実施例29(28g、35mmol)及び360g水と40gTHFとを含有する溶媒混合物を共に混合し、20分間撹拌した。この混合物をろ過し、ろ液をNaHCO
3水溶液でpH=5に調整した。撹拌を18時間継続した後、混合物をろ過すると、遊離酸(Int-1)が湿潤したケーキ25.6gとして得られ、これをさらなる精製なしに多形フォームBの調製に使用した。
505mgの遊離酸(Int-1)を20mlガラスバイアルに秤り取り、6mLのメタノールを加える。このスラリーを50℃に加熱し、マグネチックスターラを使用して4日間撹拌する。この懸濁液を室温に冷却し、ろ過する。回収された固体を真空下40℃で2.5時間乾燥させる。白色の固体をXRPD、DSC及びTGAにより分析した(それぞれ図1~図3)。
結晶形フォームBの代替的な作製方法が、2018年7月31日に出願された特許出願第PCT/CN2018/000278号明細書(代理人整理番号PAT058189-WO-PCT)に記載されている。
粉末X線回折
Bruker Discovery D8を使用して粉末X線回折(XRPD)パターンを反射配置で取得した(図1)。ゼロバックグラウンドSiウエハ試料ホルダを使用して粉末を解析した。放射線はCu Kα(l=1.5418Å)であった。パターンは2°~40°2θの間で測定した。
DSC:
各結晶形について、TA Instruments(DSC2500)を使用して示差走査熱量測定を行った(図2)。各分析につき、ピンホール型の蓋で閉じたアルミニウムT-zeroるつぼに2~4mgの試料を入れた。温度範囲30~300℃で加熱速度を毎分10℃とした。温度はセ氏温度(℃)で報告し、エンタルピーはジュール毎グラム(J/g)で報告する。プロットは吸熱ピークを下向きとして示す。補外開始温度について吸熱融解ピーク(融点)を評価した。この方法で測定した試料温度の正確度は約±1℃の範囲内であり、融解熱は約±5%の相対誤差の範囲内で測定することができる。
結晶形フォームBを使用して生成された例示的なDSCトレースを図2に示す。
フォームB:融解吸熱:Tonset=197.4℃(分解下で融解)
熱重量分析(TGA):
TA-instrument Q5000を使用してTGA曲線を取得した。5~15mgの試料をアルミニウムるつぼに入れ、気密密閉した。分析直前に、密閉したるつぼにロボット式オートサンプラーによって穴を開けた。TGA曲線は30~300℃の間を10℃/分で測定した。40℃~150℃の間のLoD(乾燥減量)を計算した。重量減少を試料温度測定値に対してプロットする。温度はセ氏温度(℃)で、及び重量減少は%で報告する。
結晶形フォームBを使用して生成された例示的なTGAトレースを図3に示す。
実施例2:
実施例3:HS患者皮膚生検の分析は、病変の白血球における5-リポキシゲナーゼ経路の強力な活性化を示す
HS病変には、LTA4H阻害剤の主要な細胞標的である好中球及びマクロファージが豊富である。H&E染色によるHS病変の組織学的分析から、HS患者の病変に好中球及びマクロファージなどの骨髄性細胞が豊富にあることが明らかになった。3μm厚パラフィン切片を切り出し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。5-リポキシゲナーゼ(クローン:EP6072(2)、Abcam、UK)及びCD68(クローンKP-1、Dako、Denmark)に関する自動化された免疫組織化学染色をVentana Discovery XT免疫染色装置(Roche Diagnostics、Switzerland)で実施した。特異的アイソタイプ対照を陰性対照として使用した。生検試料は全て、40倍対物レンズを備えたScanScope XTスライドスキャナ(Aperio、Leica Biosystems、Switzerland)を使用してデジタル化した。
マクロファージは抗CD68染色により同定した。5-リポキシゲナーゼに対する抗体で共染色すると、HS患者の皮膚病変に認められる骨髄性細胞(myyeloid cell)に5-リポキシゲナーゼ酵素の強力な核発現が実証された。高倍率画像により、経路活性化の証である、多くのマクロファージの核膜における5-リポキシゲナーゼ酵素の発現が明らかになった(Christmas et al 1999,「RAWマクロファージにおける核膜への5-及び15-リポキシゲナーゼの特異的局在化(Differential localization of 5-and 15-lipoxygenases to the nuclear envelope in RAW macrophages)」.J.Biol.Chem.p.25594-8)。5-リポキシゲナーゼが核膜に移行すると、この酵素が活性化して、その生合成産物LTA4が提供され、ここでLTA4は、それをLTB4へと変換するLTA4Hの基質である(図4、図5、図6)。
図4:HS患者から入手した病変生検。ヘマトキシリン及びエオシンで染色したパラフィン切片から、多数の多形核細胞及びマクロファージを含む重度の混合型炎症性浸潤が明らかになった(スケールバーは4mmを示す)。
図5:HS皮膚病変生検(biospies)を5-リポキシゲナーゼに関して免疫組織化学染色した。この染色により、骨髄性細胞における5-リポキシゲナーゼの強力な発現が明らかになった。5-リポキシゲナーゼ発現パターンは、核に散在するか(短い矢印)、又は核膜にあるか(長い矢印、スケールバーは50μmを示す)のいずれかであった。
図6:多核巨細胞CD68+(赤色、スケールバーは30μmを示す)の核膜に局在する5-リポキシゲナーゼ(褐色)を示す代表的な顕微鏡写真。
実施例4:HS患者皮膚生検のリピドミクス分析
健常皮膚又は廃棄HS病変からの凍結ヒト皮膚生検(平均500mg)を機械的力(Covaris)を用いて微粉砕し、重水素標識化内部標準(ISTD)を含有する4mLのメタノール中で低温に維持したビーズビーティング装置(5000rpmの2×20秒サイクル、Precellys)を使用してホモジナイズした。次に、試料を-20℃に/45分間保つことによりタンパク質を沈殿させて、4℃において13000rpmで10分間遠心した。次に上清を完全に乾燥するまで蒸発させて(Genevac)、70μLのメタノール:水(50%/50%;v/v)に再構成し、続いてLC-MS/MSシステムに注入した。ISTDを含有するメタノール:水(50%/50%、v/v)中の純粋標準物質の段階希釈液により検量線を新たに作成し、試料中のISTDピーク面積比に対する代謝産物を検量用物質と比較することにより定量化を行った。
データ収集(acquision)には、機器の利用状況に応じて2つの分析プラットフォームを用いた:1)Waters H class UPLCシステムをWaters XevoTQSトリプル四重極型(QQQ)質量分析計と結合したもの、及び2)Dionex Ultimate 3000RS UPLCをSciex6500+ QQQと結合したもの。脂質の分離は、それぞれ、40℃で加熱した逆相カラムACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、2.1×50mm及びCORTECS UPLC C18 1.6μm、2.1×50mmを使用して達成した。流量は0.180mL/分に設定し、移動相は水-酢酸(99.99/0.01;v/v)(A)及びメタノール-アセトニトリル-酢酸(B)(50/50/0.01;v/v/v)からなった。溶離液グラジエントは、2分間45%のB、続いて2~16分の間に45%から65%のB、16~19分の間に65%から100%及び19~22分に100%のBに維持した。23~30分にカラムを再び初期条件と平衡化させた。イオン化は、負イオンモードで動作するESI源を使用して実施した。フラグメンテーションは各化合物に合わせて個々に調整した。
ピークのピッキング及び定量分析には、供給業者の規定ソフトウェアを使用した(WatersにはTargetLyx及びSciexデータにはAnalyst/Multiquant)。欠損値補完(群平均による置き換え)、対数変換(底2)、バッチ効果の補正(各試料の平均値によるスケーリングに基づく)及び群比較(経験的ベイズ調整t検定)を含めたさらなるデータ処理は、パッケージMetabolomics及びNormalizeMets(CRANから入手可能)によりR(バージョン3.4.2)で実施した(Anal.Chem.,2015,87(7),pp 3606-3615)。(図7及び図8)
14例の健常者及び16例のHS患者の皮膚生検から脂質を抽出し、LC-MS/MSにより分析した。
図7:病変皮膚では、非病変皮膚と比較したときLTA4Hの産物LTB4が有意に上方制御された(スケーリング後濃度平均値[fmol/mg]のlog2で示す)。
図8:5-リポキシゲナーゼ経路メディエーター5S,6RDiHETEもまた上昇したことから、HS病変における5-リポキシゲナーゼ経路の強力な活性化が指摘される(スケーリング後濃度平均値[fmol/mg]のlog2で示す)。***p<0.001、対応のない両側t検定を使用。
実施例5:健常皮膚生検と比べたHS皮膚生検のトランスクリプトミクス解析
18例のHS皮膚生検を8例の健常皮膚生検と比べたトランスクリプトミクス解析から、5-リポキシゲナーゼ経路遺伝子のトランスクリプトーム上方制御が示される。
スナップ凍結皮膚組織から、Qiagen Rneasy miniキットの推奨緩衝液を使用してホモジネートを調製した。製造者のプロトコルのとおりに細胞の全RNAを抽出した。同じ出発量のRNAから、High capacity cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を使用して試料のcDNAを調製した。CiToxLAB FranceによってAffymetrix HG_U133_Plus2マイクロアレイに試料が処理された。GeneSpring 11.5.1(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を使用してRMA正規化データを分析し、Illumina BaseSpace Correlation Engineソフトウェア及びQiagen IPAを使用して結果を解釈した。当初、データはCiToxLABによる標準的なQCコントロール及びGeneSpring(PCA、ハイブリダイゼーションコントロール)に供した。続いて、これをさらなる分析の前に、条件のいずれか1つにおいて100%の試料中第20百分位数を上回るプ ローブセットに対する発現レベルでフィルタリングした。
HS患者の皮膚病変は、LTA4Hを含めた5-リポキシゲナーゼ経路遺伝子レベルの上昇を示した。LTA4Hは健常及び病変皮膚の両方の皮膚で高発現であった(図9)。
図9は、正規化した標的遺伝子発現量を示す。8例の健常対照試料と比べた18例のHS患者試料の5-リポキシゲナーゼ遺伝子ALOX5、ALOX5AP及びLTA4Hの有意な上方制御を明らかにできたことから、リピドミクスデータと一致したLTB4生合成の上方制御が示唆される。***P<0.001;**P<0.01;*P<0.05、対応のない両側t検定を適用。
実施例6:実施例1の化合物及び実施形態3Dの化合物はHS患者の刺激皮膚生検における炎症促進性LTB4の生合成を抑制する
HS患者の皮膚生検を実施例1の化合物及び実施形態3Dの化合物から選択される5uMのLTA4H阻害剤(inbibitor)の存在下又は非存在下に細胞培養培地で2時間培養した。次に生検を10ug/mLイオノフォアで2時間刺激して、病変の炎症細胞における5-リポキシゲナーゼ経路の完全な活性化を誘導した。次に皮膚生検を回収し、脂質を抽出し、LTB4の生成に関して上に記載したとおりLC-MS/MSにより分析した。刺激したHS病変の皮膚生検は、多量の脂質メディエーターLTB4を生成した。実施例1の化合物又は実施形態3Dの化合物で処理した皮膚生検はLTB4をほとんど放出しなかった。(図10及び図11)
HS患者の皮膚病変生検は未処理のままとするか、又はLTA4H阻害剤の存在下又は非存在下においてイオノフォアで完全に刺激してLTB4生合成を誘導した。
図10:化合物1は実施例1の化合物である;
図11:化合物2は実施形態3Dの化合物である。
LTA4H阻害剤の存在により、HS患者の皮膚病変生検のLTB4産生能が完全に抑制された。LTB4量はfmol/mg組織単位で提供する。試験した数例のうち1化合物につき1例のドナーから得られた代表的な結果を示す。
図12:マウスを媒体、3mg/kg又は10mg/kg化合物2(実施形態3Dの化合物)のいずれかで治療した。最終回投与の22時間後に血液を採取し、1:3希釈し、10mg/mlカルシウムイオノフォアで15分間エキソビボ刺激してLTB4産生を誘導した。LTB4の放出をLTB4 EIAによって定量化して、両方の治療群とも90%を超えるLTB4阻害が実証された。各群4匹のマウスの平均値±平均値の標準誤差を示す。
実施例7:ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験の臨床データ
成人健常対象におけるその予備的な安全性、忍容性、及びPKを特徴付けるために設計されたFIH研究において、実施例1の化合物が研究された。この研究は、パート1、単回漸増投与(SAD)及びパート2の反復漸増投与(MAD)からなった。実施例1の化合物を5mg~2回100mgの用量範囲にわたって食後又は絶食条件下にQD又はBIDのいずれかで単回経口投与した。実施例1の化合物はまた、5mg QD~80mg BIDの用量範囲にわたって絶食条件下に反復用量投与で12日間経口投与した。
パート1(SAD)
パート1は、無作為化、被験者盲検及び治験責任医師部分盲検、プラセボ対照、単回漸増経口投与研究であった。用量は、1服で投与するか、又は2服に分けて12時間空けて投与するかのいずれかであった(N=69)。各コホートにつき8例の対象(7例の対象を無作為化したコホート7及び6例の対象を無作為化したコホート9を除く)を実施例1の化合物又は対応するプラセボのいずれかの投与を受けるように6:2比(実薬:プラセボ)で無作為化して、9つの用量レベルを試験した。
対象は以下のコホートのうちの1つに割り付けた:
コホート1:5mgの単回経口用量又は対応するプラセボ
コホート2:10mgの単回経口用量又は対応するプラセボ
コホート3:20mgの単回経口用量又は対応するプラセボ
コホート4:30mgの単回経口用量又は対応するプラセボ
コホート5:45mgの単回経口用量又は対応するプラセボ
コホート6:70mgの単回経口用量又は対応するプラセボ
コホート7:70mgの2用量に分けて12時間空けて服用する140mgの総経口用量又は対応するプラセボ
コホート8:100mgの2用量に分けて12時間空けて服用する200mgの総経口用量又は対応するプラセボ
コホート9:40mgの2用量に分けて12時間空けて服用する80mgの総経口用量又は対応するプラセボ
パート1(単回漸増投与)デザイン(qd)-研究の概要
パート1(単回漸増投与)デザイン(分割連日服用)-研究の概要
パート2(MAD)
パート2は、無作為化、被験者盲検及び治験責任医師部分盲検、プラセボ対照、MAD研究であり、ここでは各8例の対象を実施例1の化合物又は対応するプラセボのいずれかの投与を受けるように6:2比(実薬:プラセボ)で5つのコホートに無作為化した。
対象は以下のコホートのうちの1つに割り付けた:
コホート1:5mgの反復1日1回(qd)経口用量又は対応するプラセボ
コホート2:15mgの反復1日1回(qd)経口用量又は対応するプラセボ
コホート3:1日2回(bid)投与する20mgの反復経口1日用量又は対応するプラセボ
コホート4:1日2回(bid)投与する40mgの反復経口1日用量又は対応するプラセボ
コホート5:1日2回(bid)投与する80mgの反復経口1日用量又は対応するプラセボ
パート2 反復漸増投与デザイン(qd)-研究の概要
パート2 反復漸増投与デザイン(bid)-研究の概要
ヒト安全性及び忍容性
上記の研究のパート1(単回漸増投与、SAD)では、健常対象が最大総1日用量200mg(12時間空けて投与される2回の100mg)までの実施例1の化合物の単回投与を受けた。研究のパート2(反復漸増投与、MAD)では、対象が最大80mg BIDまでの投与を12日間受けた。研究の中断につながる有害事象はなかった。両パートで最も高い用量が安全であり、最大耐量が確立された。
本研究のSAD及びMAD部分において実施例1の化合物又はプラセボで治療した一部の対象に無症候性のリパーゼ上昇が認められた。3例の治療対象(1例はSADパートからの最も低い5mg用量の対象、2例はMADからの最も高い80mg BID用量の対象)及び1例のプラセボ治療対象にリパーゼの増加が認められた。リパーゼ上昇があったこれらの3例の対象では、リパーゼの増加に付随して軽度のアミラーゼの増加(1.5ULN以下)があった。いずれの対象も無症候性であり、事象は一過性で、すぐに正常レベルに戻り、この間、対象は引き続き実施例1の化合物の投与を受けていた。理学的検査、バイタルサイン又はECGについて、実施例1の化合物に関連する重大な所見はなかった。
従って、実施例1の化合物は、健常対象において最大80mg bid(160mgの1日用量)までの12日間にわたる用量が良好に忍容された。
ヒト薬物動態データ
実施例1の化合物の薬物動態挙動を健常対象において単回及び反復経口投与後に評価した。計算したPKパラメータは、実施例1の化合物の単回又は反復投与を受けた後の体循環中の薬物曝露量の測定に用いられる標準的なパラメータであった。
パート1(SAD)
実施例1の化合物の平均血漿濃度時間プロファイルを図13に示す。
5、10、20、30、45、70、2回70(分割服用、2つの同一用量を12時間空けて投与した)、2回100(分割服用)及び2回40mg(分割服用)の化合物の単回経口投与後、実施例1の化合物に対する血漿曝露量は用量に伴い増加し、投与後1~1.5時間の範囲のTmax中央値からは急速な吸収が示唆された。濃度ピーク後、血漿濃度は当初急激に低下した;後の時点では濃度下降速度は大幅に下がり、見かけの平均消失半減期(T1/2)は245~513時間の範囲であった。用量が5mgから100mgに(すなわち20倍)増加すると、Cmaxは21.7倍に増加した;AUC0-24hは75倍に増加し、ここで1日用量は40倍の増加(5mgから100mg bid)であった。百分率変動係数(CV%)はCmaxについて18.5~41.4及びAUC0-24hについて6.4~26.3の範囲であった。
AUCについて5mg~2回100mg(40倍)及びCmaxについて5mg~100mg(20倍)の用量範囲に関して、Cmaxの傾き推定値及び対応する90%CIは1.08(1.01,1.15)であり、AUClastについて傾きは1.00で90%CI(0.957;1.04)であり、及びAUC0-24について傾きは1.20で(1.15,1.24)の90%CIであった。AUClastについては全用量範囲にわたる用量比例性が実証されたが、Cmax及びAUC0-24hについては実証されず、ここでデータは、用量に伴う曝露量の増加比率がやや過剰であること示唆している。しかしながら、Cmax及びAUC0-24hについて、それぞれ4.50倍及び2.57倍の用量増加まではPKが用量比例的であると見なすことができる。
パート2(MAD)
化合物の平均血漿濃度時間プロファイルを図14a(1日目)及び図14b(12日目)に示す。
1日目に実施例1の化合物の初回用量を経口投与した後、全ての用量群について(5及び15mg qd絶食;20、40及び80mg bid食後)、実施例1の化合物の血漿濃度が用量依存的に増加し、Tmax中央値は1~2.5時間の範囲であった。
実施例1の化合物の用量が5mg qdから80mg bidに(すなわち投与間隔当たり16倍)増加すると、12日目のCmax及びAUC(20、40及び80mg bidコホートについてAUC0-12h,ss並びに5及び15mg qdコホートについてAUC0-24h,ss)はそれぞれ17.9倍及び20.9倍に増加した。5~80mg(16倍)の用量範囲に関して、Cmax,ssの傾き推定値及び対応する90%CIは1.19(1.08,1.30)であり、AUCtau,ssについて傾きは1.07で90%CI(1.01;1.12)であった。Cmax,ss及びAUCtau,ssのいずれについても全用量範囲にわたる用量比例性は実証されなかった。しかしながら、Cmax,ss及びAUCtau PKは、それぞれ2.12倍及び6.29倍までの用量増加について用量比例的であると見なすことができる。AUCtauについて5mg qd~40mg bidの用量範囲にわたって用量比例性の基準が満たされた。%CVはCmaxについて17.1~30.2%及びAUC0-24hについて11.7~18.1の範囲であった。
調査した用量範囲全体ではCmax,ssは単回投与後と比べて1.39~1.19倍高かった(平均Cmax(12日目)/Cmax(1日目))。AUC(AUC0-12及びAUC0-24)に関しては、平均比率は2.08~1.27であった。これは、1日目から定常状態までの実施例1の化合物の蓄積が微量であることを示している。5mg qdの最低用量については、定常状態までに2.1倍の平均蓄積が認められたが、それより高い用量についてはいずれも、蓄積は1.4倍未満であった。bidレジメンの1日目には蓄積がほとんどなく(平均Racc、1日目1.09から1.29)、定常状態に達するまでの時間が短いことが示唆される。5つの用量群のうち4つで、2日目と比較したとき3日目の方が朝の投与前濃度が高く、しかし濃度差は小さい。3日目から4日目には、朝の投与前濃度の一貫した又は大きい増加は認められない。これは、定常状態に達するのが速い、すなわちおよそ3日目には達することを実証している。
実施例1の化合物の食後状態でのBID経口服用については、投与から3~4日以内に定常状態曝露量に達する。定常状態では、AUCtauについて5mg QD~40mg BIDにわたって用量比例性の基準が満たされた。
ヒト薬力学データ
PD血液バイオマーカー:血中ロイコトリエンB4(LTB4)
エキソビボで刺激した全血のヒト血漿ロイコトリエンB4(LTB4)の決定
動物モデルでエキソビボ刺激血液におけるLTB4阻害の程度は治療効果の程度、詳細には炎症組織中の好中球の減少と良好に相関した(図10)。
エキソビボ刺激血中LTB4の末梢PDリードアウトには治療有効性の予測性があり、従ってFIH試験で標的阻害をモニタするのに好適である。
図10:マウスを媒体、3mg/kg又は10mg/kg化合物2のいずれかで治療した。最終投与の22時間後に血液を採取し、1:3希釈し、10mg/mlカルシウムイオノフォアで15分間エキソビボ刺激してLTB4産生を誘導した。LTB4の放出をLTB4 EIAによって定量化して、両方の治療群とも90%を超えるLTB4阻害が実証された。各群4匹のマウスの平均値±平均値の標準誤差を示す。
従って、エキソビボで刺激した全血の血漿中におけるLTB4濃度をLC-MS/MS方法により決定した。
LTB4の生物学的分析方法
エキソビボ刺激は臨床現場で以下の手順どおりに実施した:
全血(500μL)をカルシウムイオノフォアA23187を用いて30分間刺激した。次に血漿上清を回収し、使用時まで少なくとも24時間、-80℃で凍結した。
LC-MS/MSによるLTB4定量化は以下のとおり実施した:
ヒト血漿を有機沈殿処理し、続いて逆相高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出によって分離した。
クロマトグラフィー:
60℃及び流量400μL/分におけるAgilent Technologies 1290 Infinity HPLC及びZorbax SB-C18、Rapid Resolution HD 1.8μm(100×2.1mm)カラムでの逆相分離
総分析実行時間11.0分。
検出:
AB Sciex QTrap 5500MS/MS Turbo Spray Ion Drive負イオンモード。
各対象及び時点の試料を調製し、3アリコートで分析した。アリコート1及び2は、エキソビボで刺激した全血からの血漿を含み、一方、陰性対照としてのアリコート3は、刺激していない全血からの血漿を含んだ。最初の2アリコートについてはCVが25%より大きい試料及び/又はアリコート3では値が検出された試料を結果から除外した。
アリコート1及び2の濃度の平均値としてLTB4濃度データを計算した。この計算にアリコート3の濃度は含めなかった。各バイオマーカーについてのベースラインからの変化率及びパーセント阻害率(ベースラインに対する割合)を計算した。ベースラインはベースライン及び1日目、-1時間の測定値の平均であった。
ベースラインからの変化率及びパーセント阻害率の計算時に欠損値として扱われることを避けるため、LLOQを下回る値は0.5×LLOQに置き換え、定量上限(ULOQ)を上回る値は1.5×ULOQに置き換えた。
結果:
SADの第1のコホートの結果から、血液細胞刺激LTB4放出が5mgでは24時間時点でベースラインから25~50%の低下に留まることが示された。24時間時点における阻害率は用量の増加に伴い増加することが観察された。10mg用量では投与後24時間における約50%阻害率が観察され、20mg用量ではCmax後に一過性の最大阻害率(90%超)が観察された。(図15)
SADパートにおける追加のコホートにより、用量依存的LTB4阻害が確認された。30mg、45mg及び70mg用量でそれぞれ、投与後24時間における約81%、86%及び89%の阻害率が観察された。
MADパートにおけるコホート1~3の定常状態データから、用量依存的LTB4阻害が確認された。9日目(定常状態)に投与前に採取した試料において、5mg(Q.D.)、15mg(Q.D.)及び20mg(B.I.D.)用量でそれぞれ約75%、90%及び99%の阻害率が観察された。(図16)
研究のMADパートでは、15mg(Q.D.)及び20mg(B.I.D.)用量で90~99%の標的阻害率が維持された。
結論として、血液試料中でエキソビボで評価した定常状態ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ標的阻害率は、平均して5mg QDで75%、15mg QDで90%及び20mg QD bidで99%であった。
水疱液バイオマーカー:カンタリジンで誘発した水疱液における血中ロイコトリエンB4(LTB4)
カンタリジン誘発性皮膚疱疹
実施例1の化合物が潜在的標的器官に及ぼすPD効果を評価するため、SADパートの1つの選択コホート及びMADパートの選択コホートの対象の腕に皮膚疱疹を誘発した。
臨床研究のパート1及び2(SAD及びMAD)において、選択コホートの対象の腕に皮膚疱疹を誘発した。このために、カンタリジン(カンタロン(cantharone)など)の溶液で湿らせた10mm直径のろ紙ディスクを対象の腕に貼り付けて表皮の疱疹を誘発し、貼り付けてから約24時間後(±1時間)に水疱液を採取した。
水疱液試料はSADコホート4では1日目投与前及び2日目投与前並びにMADコホート2~5では1日目投与前及び9日目投与前に採取した。
ヒト水疱液中のロイコトリエン類及びリポキシンA4の分析のための試料調製
水疱液試料はドライアイスで凍結されて受領し、分析時まで-70℃以下に保存した。分析当日、試料をフリーザーから取り出し、解凍後直ちに抽出した。
ヒト水疱液中のロイコトリエン類及びリポキシンA4に関する手順
90μLの水疱液(試料又はQC試料)を5μLの内部標準溶液IS-L-2(50ng/mLの重水素化ロイコトリエン類及びリポキシン)で強化し、微量遠心管内でボルテックスした。0.1%ギ酸を含有する90μLのメタノールを加えた。この後、5分間ボルテックス混合し、10分間氷上で超音波処理した。試料をフリーザー内において-20℃で40分間インキュベートした。この後、4℃において16,000rpm(27,500×g)で20分間遠心した。160μLの上清をMillipore 5kDa MWCOフィルタに移した。MWCOフィルタは、フィルタを通じて500μLメタノール/水1/1を遠心することにより予め洗浄しておいた。ロードしたフィルタを4℃において16000rpm(27500×g)で40分間(又は全ての液体がろ過されるまで)遠心した。140μLのろ液をHPLCガラスバイアルに移し、108μLの水と合わせ、短時間ボルテックスした。水疱液の容積が90μL未満であった場合、水を用いて容積を90μLにし、希釈係数を書き留めた。
高速液体クロマトグラフィー
2つのポンプ、1つは分析グラジエント用のUHPLCポンプ(モデルG4220B)と1つはローディングポンプとしてのクォータナリポンプ(モデルG1311B)とを備えたAgilent UHPLCシステムを使用してHPLCを実施した。
結果
本研究のパート1では、30mg治療群において24時間時点で採取した試料で水疱液を評価し、実施例1の化合物の平均濃度は4.67ng/mLであることが分かった。水疱液濃度は平均して同じ時点の血漿濃度と比べると約2倍高く、対応する血中濃度の僅か14%であった。
本研究のパート2では、15mg qd並びに20、40及び80mg bid治療群において9日目に投与前に採取した試料(水疱液)で水疱液を分析した。水疱液について用量が15mg qdで4.62ng/mLから80mg bidで233ng/mLになると、実施例1の化合物の平均濃度は増加した。水疱液濃度は血漿濃度と同程度で、水疱液/血漿比は約2であった。
皮膚及び血漿のLTB4阻害率(ベースラインからの%変化率)を図17に記録した。40mg1日用量(20mg BID)は血中において定常状態でLTB4のほぼ完全な抑制を示し、同じ用量がヒト皮膚水疱液中のLTB4の90%の抑制を達成し、ここで皮膚疱疹はカンタリジンの外用適用によって誘発した。
実施例8:中等症~重症HSを患う成人患者における(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸(フォームB)の有効性及び安全性
以下には、プラセボと比較した(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸の有効性を実証しようとする臨床試験デザインの詳細を提供する。
臨床試験デザイン
対象及び治験責任医師の盲検化により、HS病変数又は総合的HS-PGAスコア、並びに有害事象などの主観的リードアウトの偏りのない評価が可能となる。
中等症~重症化膿性汗腺炎(HS)を患う対象において、実施例1の化合物などの幾つかの活性治療化合物の有効性、安全性及び忍容性を評価するため、無作為化、被験者及び治験責任医師盲検、プラセボ対照、多施設及び並行群間比較研究を行う。約4週間のスクリーニング期間後、治療期間が16週間にわたり予定され、その後約12週間の安全性フォローアップが続く。対象には20mg BID p.o.の実施例1の化合物、又はプラセボ BID p.o.を投与する。
本研究に組み入れる対象は、少なくとも12ヵ月にわたって再発性炎症性病変と診断されている中等症~重症HSを呈する18~65歳の成人男性及び女性対象である。対象を本研究に組み入れる要件は、その対象が少なくとも3つの炎症性病変を有することである。ベースライン判定は-7日目から開始して、1日目の治療より前の-1日目に評価を完了できるようにし得る。投与前に全てのベースライン安全性評価結果が利用可能で且つ適格性基準を満たしていなければならない。無作為化は集中型自動応答技術(Interactive Response Technology:IRT)システムを用いて行う。
選択の主要臨床評価項目は、16週間の治療後の簡易HiSCR(化膿性汗腺炎臨床反応)である。
113日目(第17週)、安全性及び他の評価を実施した後、対象は全て、いかなる薬物の投与もないフォローアップ期間に入る。医学的に正当と認められる場合、及び潜在的な安全性上の懸念が(治験依頼者との討議後に)何ら特定されなかった場合、対象はこのフォローアップ期間中に以前禁止されていた薬物療法を受けてもよい。
141日目(第21週)及び197日目(第29週)のフォローアップ来院時に安全性及び有効性評価を行う。薬物動態(PK)及び薬力学(PD)を収集する。治験責任医師及び対象の盲検は研究終了まで維持する。研究終了時の来院は197日目(第29週)に行い、これには、研究完了評価と、続く研究からの登録解除が含まれる。
約45例の対象を、30例は実薬及び15例はプラセボに無作為化する。1日目、現場で対象に20mgの実施例1の化合物、又はその対応するプラセボを提供する。対象は、液体摂取(好ましくは水)の必要性を含めた薬物(BID)の服用の仕方、並びに朝食及び夕食の最中又はその直後に薬物を服用するよう現場人員の指図を受ける。ベースライン時、薬物投与及び臨床評価、並びにPK、薬力学(PD)及び必要な安全性評価を実施する。対象は、提供される全ての評価が完了し、安全性上の懸念がなければ、同じ日に現場から帰宅する。対象は8日目(第2週)、15日目(第3週)、及び29日目(第5週)に、その後は1ヵ月間隔で:それぞれ57日目(第9週)、85日目(第13週)及び113日目(第17週)に研究施設に外来通院する。これらの来院時に安全性及び選択の有効性評価を行い、PK/PD試料を収集する。
主要目的は、HS対象において16週間の治療後のプラセボと比較した実施例1の化合物による治療の予備的有効性を示すことである。16週間の治療期間後に12週間にわたるフォローアップ期間が含まれ、16週間の治療後に効果の持続可能性が持続又は増加し得るかが観察される。
対象のプラセボへの曝露を抑える一方で実薬への曝露に有利に働くという事実に基づき、2:1の無作為化が計画される。
本研究には複数の臨床評価項目を含めることにより、それらの選択された評価項目の特性をより良く評価する:
・本研究には、主要評価項目として簡易HiSCRを選択した。簡易HiSCRは、膿瘍を炎症性小結節と合わせた数が50%低下し、排膿性瘻孔の増加がないこととして定義される。
・HSの炎症性病変は、典型的な解剖学的領域にある個々の病変(炎症性小結節、膿瘍及び排膿性瘻孔)の数を数えることになる。この数に加えて、総合的評価スケール(化膿性汗腺炎-医師総合評価又はHS-PGA)並びに複合スコア(化膿性汗腺炎スコアの重症度評価又はSAHS)が用いられることになる。
・皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)を含め、幾つかの患者報告アウトカムが用いられることになる。最後に、対象の視点からは皮膚関連疼痛が最も重要な症状であるため、疼痛に関する数値評価スケール(NRS)を含める。
臨床評価に関する追加情報:
HS-PGA(化膿性汗腺炎-医師総合評価):このスコアはHSの評価に探索的目的として用いられることになるもので、Kimball AB,Kerdel F,Adams D,et al(2012)「中等症~重症化膿性汗腺炎の治療に向けたアダリムマブ:並行無作為化試験(Adalimumab for the treatment of moderate to severe Hidradenitis suppurativa:a parallel randomized trial)」.Ann Intern Med;157:846-55において使用及び記載されている。
SAHSスコアは複合スコアであり(Hessam S,Scholl L,Sand M,et al(2018)「化膿性汗腺炎の新規重症度評価スコアリングシステム(A Novel Severity Assessment Scoring System for Hidradenitis Suppurativa)」.JAMA Dermatol;154(3):330-335)、炎症性病変数、瘻孔数、及びNRS疼痛について収集された情報から導き出されることになる。加えて、両方のコホートで解剖学的領域及び新しい腫物又は再燃した既存の腫物が収集されることになる。
皮膚疼痛-NRS(疼痛の数値評価スケール):アダリムマブ研究では皮膚関連疼痛用のNRSが用いられており(Kimball et al.(2016)N Engl J Med 375:422-34)、患者にとって皮膚又はHS関連疼痛は最も大きい負担の一つであることに伴いこれを用いることになる(Matusiak et al(2017)J Am Acad Dermatol;76:670-5)。HSに関連する疼痛は、平均して直近の24時間及び(直近の24時間で)最悪の場合に記録することになる。
他の患者報告アウトカム(PRO)には、多くの国及び言語で利用可能なバリデートされたスコアを含む皮膚科学関連のクオリティ・オブ・ライフ(QoL)ツールとして皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)が含まれることになる。これにはさらに患者総合評価も含まれる。
主な選択基準
・男性及び女性対象、18~65歳、スクリーニング前の少なくとも12ヵ月間にわたってHSと臨床的に診断されている
・炎症性病変、すなわち膿瘍及び/又は炎症性小結節が合計で少なくとも3つある、及び
・瘻孔が10個以下である、及び
・少なくとも2つの解剖学的領域がHS病変に関与する必要がある
・対象は体重が最低でも50Kg以上でなければならない。
主な除外基準
・スクリーニング時点、又は登録後30日以内若しくは登録後5半減期以内若しくは予想
される薬力学的効果がベースラインに戻る前のうちのいずれか最も長期となる;又は必要
に応じて各施設の規定によりさらに長期の被験薬の使用。
・無作為化/初回治療前の直近6ヵ月間におけるウステキヌマブ又はグセルクマブなどの
IL12及びIL23遮断生物製剤の使用。
・12ヵ月以内のリツキシマブ又はベリムマブ(belilumab)などのB細胞ター
ゲティング生物製剤又はB細胞枯渇生物製剤又は類似製剤の使用;これらの薬物投与を以
前受けていた患者については、B細胞数が正常範囲内でなければならない。
・無作為化/初回治療前3ヵ月又は5半減期(half-llives)(いずれか長期
となる方)における上記以外の生物学的免疫調節剤(例えば、アダリムマブ、セクキヌマ
ブ、エタネルセプト、インフリキシマブなど)の使用;
・12ヵ月以内のリツキシマブ又はベリムマブ(belilumab)の使用;
・無作為化前の直近4週間における任意の全身性HS治療(レチノイド類又は他の免疫調
節療法(immunmodulating therapies)、例えば、メトトレキ
サート、シクロスポリンA、コルチコステロイド類など)の使用。
・直近6ヵ月以内のシクロホスファミドの使用
・無作為化/初回治療前の直近1週間におけるHSに対する全身性抗生物質の使用
・スピロノラクトン又は他の抗アンドロゲン薬(フィナステリド、酢酸シプロテロンなど
)が(HSに対して)使用される場合、直近3ヵ月間に安定用量を受けている患者及び研
究期間にわたって継続する予定の患者のみを適格とする。
・無作為化/初回治療前の直近4週間におけるHSに対する外科的治療。散発的な切除生
検は外科的治療に含まれない
・3ヵ月以内に任意の高注入コルチコステロイドボーラス(1mg/kg超)の投与を受
けた
本発明は次の実施態様を含む。
[1]
そのような治療及び/又は予防を必要としている患者の化膿性汗腺炎(HS)の治療及び/又は予防における使用のためのLTA4H阻害剤。
[2]
前記LTA4H阻害剤が、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩:
[式中、
R1は、OH又はNH
2
であり;
Yは、O、S又はCH
2
であり;
X1、X2、X3及びX4は、Nであり;又は
X1、X2、X3及びX4は、N、NH、C、CH及びOから選択され、但し、X1、X2、X3又はX4のうちの少なくとも2つはN又はNHであるものとし;
R2は、フェニルによって任意選択で置換されているC
1
~C
6
アルキル;C
3
~C
6
シクロアルキル;ハロゲン、シアノ、ハロゲンによって任意選択で置換されているC
1
~C
6
アルキル、C
1
~C
6
アルコキシ、又はN、O及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~6員ヘテロアリール環によって任意選択で置換されているフェニル;又はN、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む5~10員単環式若しくは二環式ヘテロアリールであって、ハロゲン、シアノ又はハロゲンによって任意選択で置換されているC
1
~C
6
アルキルによって任意選択で置換されているヘテロアリールである]である、上記[1]に記載の使用のためのLTA4H阻害剤。
[3]
前記LTA4H阻害剤が、(S)-3-アミノ-4-(5-(4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)-2H-テトラゾール-2-イル)ブタン酸、又はその薬学的に許容可能な塩である、上記[1]又は[2]に記載の使用のためのLTA4H阻害剤。
[4]
前記LTA4H阻害剤が医薬製剤中に配合され、前記医薬製剤が、充填剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤及び流動促進剤から各々が独立に選択される1つ以上の薬学的に許容可能な担体を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤。
[5]
前記医薬製剤が錠剤又はカプセル形態である、上記[4]に記載の使用のためのLTA4H阻害剤。
[6]
そのような治療及び/又は予防を必要としている患者のHSの治療及び/又は予防における使用のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩であるLTA4H阻害剤を1つ以上の薬学的に許容可能な担体と共に含む医薬組成物。
[7]
前記LTA4H阻害剤が約10mg~約100mgの1日用量で投与される、上記[1]~[5]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤又は上記[6]に記載の使用のための医薬組成物。
[8]
前記LTA4H阻害剤又はそれを含む医薬組成物が、1つ以上の第2の治療薬との組み合わせで投与される、上記[1]~[5]及び[7]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤、又は上記[6]又は[7]に記載の使用のための医薬組成物。
[9]
そのような治療及び/又は予防を必要としている患者のHSの治療及び/又は予防における使用のための、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩と1つ以上の治療薬とを含む組み合わせ製品。
[10]
前記患者が、前記LTA4H阻害剤と組み合わせて少なくとも1つの外用薬物療法及び少なくとも1つの消毒剤でさらに治療される、上記[1]~[5]及び[7]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤、上記[6]又は[7]に記載の使用のための医薬組成物。
[11]
前記LTA4H阻害剤による治療前、前記患者にHSに対する全身性薬剤又は外用薬治療による治療歴がない、上記[1]~[5]、[7]、[8]及び[10]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤、上記[6]及び[7]及び[10]のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、又は上記[9]又は[10]に記載の組み合わせ。
[12]
前記患者が、以下の基準:
a)前記患者が中等症~重症のHSを有する;
b)前記LTA4H阻害剤による治療前、前記患者が3以上のHS-PGAスコアを有する;
c)前記LTA4H阻害剤による治療前、前記患者が少なくとも3つの炎症性病変を有する;又は
d)前記LTA4H阻害剤による治療前、前記患者がHSの結果としての広範な瘢痕を有しない(10個未満の瘻孔)
のうちの1つに従い選択される、上記[1]~[5]、[7]、[8]及び[10]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤、上記[6]及び[7]及び[10]のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、又は上記[9]又は[10]に記載の組み合わせ。
[13]
前記患者が例えば治療の第16週までに、以下:
a)簡易HiSCR;
b)HS紅斑の減少;
c)NRS30;
d)DLQIによって測定される場合の6以下の減少;及び/又は
e)DLQIの向上
のうちの少なくとも1つを達成する、上記[1]~[5]、[7]、[8]及び[10]~[12]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤、上記[6]及び[7]、及び[10]~[12]のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、又は上記[9]~[12]のいずれかに記載の組み合わせ。
[14]
例えば治療の第16週までに、前記患者の少なくとも40%が簡易HiSCRを達成する;又は前記患者の少なくとも25%がNRS30反応を達成する;又は前記患者の15%未満がHS紅斑を生じる、上記[1]~[5]、[7]、[8]及び[10]~[12]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤、上記[6]及び[7]、及び[10]~[12]のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、又は上記[9]~[12]のいずれかに記載の組み合わせ。
[15]
前記患者が前記LTA4H阻害剤の初回投与の早ければ1週間後に、以下:
a)VAS又はNRSによって測定される場合の疼痛の迅速な減少、及び
b)標準のCRP測定を用いて測定される場合のCRPの迅速な減少
のうちの少なくとも1つを呈する、上記[1]~[5]、[7]、[8]、及び[10]~[12]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤、上記[6]及び[7]、及び[10]~[12]のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、又は上記[9]~[12]のいずれかに記載の組み合わせ。
[16]
前記患者が治療終了後(例えば治療終了後3ヵ月)に、炎症性病変数、化膿性汗腺炎臨床反応(HiSCR)、数値評価スケール(NRS)、改変Sartorius HSスコア、化膿性汗腺炎-医師総合評価(HS-PGA)、又は皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)によって測定される場合の持続する反応を達成する、上記[1]~[5]、[7]、[8]及び[10]~[14]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤、上記[6]~[8]及び[10]~[14]のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、又は上記[9]~[14]のいずれかに記載の組み合わせ。
[17]
前記患者が、治療終了後、例えば治療終了後3ヵ月に、簡易HiSCR(sHiSCR)によって測定される場合の持続する反応を達成する、上記[16]に記載のLTA4H阻害剤、医薬組成物、又は組み合わせ。
[18]
前記LTA4H阻害剤が約10mg~約30mgの用量で1日2回投与される、上記[1]~[5]、[7]、[8]及び[10]~[14]のいずれかに記載の使用のためのLTA4H阻害剤、上記[6]~[8]、及び[10]~[14]のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、又は上記[9]~[14]のいずれかに記載の組み合わせ。