以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は浴室用椅子を斜め上から見た斜視図であり、図2は浴室用椅子を斜め下から見た斜視図である。また、図3及び図4はいずれも浴室用椅子を示す側面図である。図1~図3では、浴室用椅子が開脚され座部が展開された状態を示しており、図4では、浴室用椅子が閉脚され座部が折り畳まれた状態を示している。
また、以下の説明では、使用者が浴室用椅子に座った状態を基準として、前後左右をいうものとする。また、以下の説明では、特に断りがない限り、浴室用椅子が開脚され座部が展開された状態(つまり図1~図3の状態)における浴室用椅子の構成をいうものとする。
図1~図4に示すように、浴室用椅子10は、脚フレーム11と、その脚フレーム11に取り付けられた座部12及び背もたれ部13とを備える。脚フレーム11は、前脚フレーム15と後脚フレーム16とを有している。これら各脚フレーム15,16は金属製のパイプ材により形成されている。
前脚フレーム15は、左右一対の前脚部17と、それら各前脚部17を連結して設けられる背もたれフレーム18とを有している。各前脚部17は、上方に向かうにつれ後方に傾斜するように延びている。また、各前脚部17の下端部には、滑り防止等の目的で樹脂製のキャップ19が取り付けられている。
背もたれフレーム18は、背もたれ部13が取り付けられる部分であり、座部12よりも上方に延在させて設けられている。背もたれフレーム18は、各前脚部17からそれぞれ上向きに後方傾斜して延びる一対の縦フレーム部21と、それら各縦フレーム部21の上端部をつなぐ横フレーム部22とを有している。なお、本実施形態では、背もたれフレーム18と各前脚部17とがパイプ材により一体形成されている。
前脚フレーム15は、さらに、各前脚部17を連結する複数の連結フレーム23,24を有している。これら各連結フレーム23,24はいずれも左右方向に延びるパイプ材からなる。各連結フレーム23,24のうち、連結フレーム23は連結フレーム24よりも上方にかつ後方に配置されている。
後脚フレーム16は、左右一対の後脚部27と、それら各後脚部27を連結する複数の連結フレーム28,29とを有している。各後脚部27は、上方に向かうにつれ前方に傾斜するように延びている。また、各後脚部27の下端部には、滑り防止等の目的で樹脂製のキャップ31が取り付けられている。
各連結フレーム28,29はいずれも左右方向に延びるパイプ材からなる。各連結フレーム28.29のうち、連結フレーム28は連結フレーム29よりも上方にかつ前方に配置されている。また、連結フレーム28は、前脚フレーム15の連結フレーム23と略同じ高さ位置に配置され、その連結フレーム23よりも前方に位置している。
前脚フレーム15の前脚部17と後脚フレーム16の後脚部27とは互いに交差する交差部において回動軸32を介して連結されている。回動軸32は左右方向に延びる軸であり、左右の脚部17,27ごとに一対設けられている。前脚部17と後脚部27とは回動軸32を中心として互いに回動可能とされ、ひいては前脚フレーム15と後脚フレーム16とは回動軸32を中心として互いに回動可能とされている。そして、その回動により、前脚フレーム15と後脚フレーム16とは互いの下部が離間する開脚状態(図3に示す状態)と、互いの下部が接近する閉脚状態(図4に示す状態)とに移行可能となっている。閉脚状態では、各脚フレーム15,16が折り畳まれた状態となり、その折り畳み状態において浴室用椅子10は自立可能となっている。
座部12は、樹脂材料により形成された板状の座部本体34と、その座部本体34の上面側に取り付けられた座部クッション35とを備える。座部本体34は、前脚フレーム15の連結フレーム23と後脚フレーム16の連結フレーム28とにより支持された状態で設けられている。また、座部クッション35は、防水性を有するクッション材料により形成され、その上面が使用者が座る座面36となっている。
座部本体34の裏面には、左右に離間して一対のブラケット37が設けられている。これら各ブラケット37には左右方向に貫通する孔部(図示略)が設けられ、それら各ブラケット37の孔部には後脚フレーム16の連結フレーム28が挿通されている。これにより、座部本体34は各ブラケット37を介して連結フレーム28に回動可能に取り付けられている。このため、座部12は、連結フレーム28を回動軸とした回動により、座面36が上方を向く展開状態(図3に示す状態)と、座面36が前方を向く折り畳み状態(図4に示す状態)とに切替可能とされている。
座部本体34の裏面側には、座部本体34と前脚フレーム15の連結フレーム24とを連結するリンク41が設けられている。リンク41は、左右方向に離間して一対設けられている。各リンク41は、その一端部が座部本体34に軸部39を介して回動可能に連結され、その他端部が連結フレーム24に回動可能に連結されている。なお、軸部39は、座部本体34の裏面側に設けられた軸受部42に取り付けられている。
座部本体34(ひいては座部12)と前脚フレーム15とがリンク41を介して連結されていることで、前脚フレーム15と後脚フレーム16とが開脚状態にある場合にはそれに連動して座部12が展開状態とされ(図3参照)、前脚フレーム15と後脚フレーム16とが閉脚状態にある場合にはそれに連動して座部12が折り畳み状態とされるようになっている(図4参照)。したがって、各リンク41は、各脚フレーム15,16(つまり脚フレーム11)と座部12とを上記のように連動させる連動手段を構成している。
背もたれ部13は、樹脂材料により形成された板状の背もたれ支持部45と、その背もたれ支持部45の前面側に取り付けられた背もたれクッション46とを備える(図7も参照)。背もたれ支持部45は、左右方向に長い横長形状とされ、前脚フレーム15の背もたれフレーム18に取り付けられている。詳しくは、背もたれ支持部45は、背もたれフレーム18の横フレーム部22の前方に配置され、その配置状態で横フレーム部22に取付金具48を用いて固定されている。
背もたれクッション46は、背もたれ支持部45と同じく、左右方向に長い横長形状とされている。背もたれクッション46は、防水性を有するクッション材料により形成され、その前面が使用者の背中を受ける背もたれ面となっている。
背もたれフレーム18には、背もたれ部13の他に、肘掛け部49が取り付けられている。肘掛け部49は左右に一対設けられ、直線状に延びている。各肘掛け部49は、その基端部において背もたれフレーム18の各縦フレーム部21に軸部57を介して回動可能に取り付けられている。これにより、各肘掛け部49は軸部57を中心とした回動により、先端側が軸部57に対して前方に位置する横向き状態(図3参照)と、先端側が軸部57に対して上方に位置する縦向き状態(図4参照)とに切替可能となっている。
ここで、浴室用椅子10には、座部12を脚フレーム11に係合させることで座部12を展開状態に保持するロック機構50と、そのロック機構50による座部12と脚フレーム11との係合を解除するためのロック解除機構60とが設けられている。以下、これらロック機構50及びロック解除機構60について説明する。まず、ロック機構50について図5及び図6に基づいて説明する。図5はロック機構50を拡大して示す斜視図であり、図6はロック機構50の内部構成を示す縦断面図である。図5及び図6ともに、(a)がロック機構50の係合部51が脚フレーム11(前脚フレーム15)の連結フレーム23に係合したロック状態を示しており、(b)が係合部51の係合が解除されたロック解除状態を示している。
図5及び図6に示すように、ロック機構50は、座部12の座部本体34の裏面側に設けられ、座部本体34の中央部に配置されている。ロック機構50は、前脚フレーム15の連結フレーム23に係合可能な係合部51と、その係合部51を収容する収容部52とを備える。なお、ロック機構50がロック手段に相当する。
収容部52は、座部本体34の裏面側に取り付けられ、後方に開口する開口部52aを有する箱状に形成されている。係合部51は、その一部が開口部52aより後方に突出した状態で収容部52の内部に収容されている。係合部51は、かかる収容状態で前後方向にスライド可能とされている。係合部51は、そのスライド移動により、開口部52aより突出した突出部分が連結フレーム23に係合される係合位置(図5(a)及び図6(a)に示す位置)と、その係合が解除される係合解除位置(図5(b)及び図6(b)に示す位置)との間で変位可能となっている。
係合部51が係合位置にある場合には、係合部51(詳しくは上記突出部分)が連結フレーム23に対して下方から係合され、その結果座部12が連結フレーム23に対して係合された状態(ロック状態)となる。この場合、その係合により座部12が展開状態から上方へ回動することが規制され、それにより座部12の展開状態が保持される。一方、係合部51が係合解除位置にある場合には、連結フレーム23に対する係合部51の係合が解除され、その結果連結フレーム23に対する座部12の係合が解除された状態(ロック解除状態)となる。この場合、座部12が展開状態から上方へ回動することが許容され、それにより、座部12を展開状態から折り畳み状態に移行させることが可能となる。
収容部52の内部には、係合部51を係合位置に向けて付勢する付勢手段としてのコイルばね53が収容されている。収容部52には、その内部側に突出する壁部52bが形成され、その壁部52bと係合部51との間にコイルばね53が圧縮状態で配設されている。
係合部51には、収容部52における開口部52aの周縁部に当接する当接部51aが設けられている。係合部51は、コイルばね53の付勢力により常時係合位置に向けて付勢されている一方、当接部51aが開口部52aの周縁部に当接することでそれ以上付勢側へ変位することが規制されている。これにより、係合部51は、常時係合位置に位置するようになっている。
係合部51には、ワイヤ55が接続されている。ワイヤ55は、可撓性を有して形成され、ロック解除機構60と接続されている(図8参照)。後述するように、ワイヤ55がロック解除機構60による解除操作により引っ張られると、それに伴い係合部51がコイルばね53の付勢力に抗して係合位置(図6(a)参照)から係合解除位置(図6(b)参照)に変位するようになっている。そして、それにより、連結フレーム23に対する座部12の係合が解除され、つまりは座部12のロックが解除されるようになっている。また、ワイヤ55は、その大部分が樹脂製のチューブ56内に挿通されている。
続いて、ロック解除機構60について説明する。ロック解除機構60は、背もたれ部13の背面側に設けられている。以下、ロック解除機構60について図7~図10に基づいて説明する。図7は、背もたれ部13の周辺を示す背面図である。図8は、背もたれ部13に設けられたロック解除機構60を分解した状態で示す分解斜視図である。図9は、背もたれ部13とロック解除機構60とを示す縦断面図であり、図7のA-A線断面図に相当する。図10は、ロック解除機構60の動作を示す背面図である。なお、図9及び図10ではいずれも、(a)がロック解除機構60のロック解除レバー61が通常位置にある状態を示し、(b)がロック解除レバー61がロック解除位置にある状態を示している。
図7~図10に示すように、ロック解除機構60は、背もたれ部13の背もたれ支持部45の背面側に設けられている。ロック解除機構60は、ロック解除レバー61と、そのロック解除レバー61に連結されたアーム62と、それらロック解除レバー61及びアーム62を覆うカバー63とを備える。なお、図10では、カバー63を取り外した状態で示している。
ロック解除レバー61は、座部12と連結フレーム23との係合を解除する解除操作を行うためのものである。ロック解除レバー61は、樹脂材料により形成され、背もたれ支持部45の背面側に対向して設けられる板状のレバー本体部65と、そのレバー本体部65の上端部に設けられる指掛け部66とを有している。
ロック解除レバー61は、背もたれ支持部45の背面側に設けられた凹部64に配設されている。凹部64は、背もたれ支持部45の左右方向の中央部に形成され、背もたれ支持部45の背面と上面とにおいてそれぞれ開放されている。ロック解除レバー61は、そのレバー本体部65を凹部64の底面に対向させた状態で当該凹部64に配置されている。
指掛け部66は、ロック解除レバー61を操作する際に指を掛ける部分である。指掛け部66は、レバー本体部65の上端部からその背面側に突出して形成されている。指掛け部66は、レバー本体部65の幅方向(左右方向)に延びており、詳しくは幅方向の全域に亘って延びている。
指掛け部66には、その突出側の先端部に下方に向けて突出する突条部67が形成されている。突条部67は、指掛け部66の先端部に沿って形成され、詳しくは指掛け部66の先端部全域(左右方向の全域)に亘って形成されている。また、指掛け部66の左右方向の両端部にはそれぞれ指掛け部66とレバー本体部65とを接続する一対の壁部68が設けられている。これらの壁部68は突条部67にも接続されている。これにより、指掛け部66の補強が図られている。
指掛け部66と各壁部68とにより囲まれた領域は指を挿し入れるための指入れ部69となっている。本実施形態では、指入れ部69の幅、つまりは各壁部68の間の間隔が8~10cm程度となっている。これにより、指入れ部69には少なくとも親指を除く4本の指を入れることが可能となっている。そのため、それら4本の指を指掛け部66に掛けてロック解除レバー61を操作することが可能となっている。
ロック解除レバー61は、凹部64において上下方向にスライド可能とされている。この場合、ロック解除レバー61は、背もたれ部13の背面に沿って上下方向にスライド可能とされている。すなわち、ロック解除レバー61のスライド方向は直線方向とされ、その直線方向に沿ってロック解除レバー61は上下スライド可能となっている。
凹部64において左右方向の両側には互いに対向する一対の側面部64aが形成されている。これら各側面部64aは、上下方向に互いに平行に延びている。また、ロック解除レバー61は、その幅(左右方向の長さ)が各側面部64aの間の間隔(つまり凹部64の幅)と同じか又はそれよりも若干小さくなっている。これにより、ロック解除レバー61は、凹部64において左右方向への変位が規制された状態となっており、その結果、上下方向にのみスライドすることが可能となっている。つまり、この場合、ロック解除レバー61は、凹部64により、上下方向へスライドするよう案内されている。したがって、この場合、凹部64がガイド部に相当する。
ロック解除レバー61は、通常位置(図9(a)及び図10(a)に示す位置)と、それよりも上側のロック解除位置(図9(b)及び図10(b)に示す位置)との間でスライド可能とされている。ロック解除レバー61には、そのレバー本体部65に上下に延びる長孔状の孔部71が形成されている。この孔部71には、カバー63の裏面に設けられた突起部72が入り込んでいる。これにより、ロック解除レバー61は、突起部72に対して上方から当接する下位置と、突起部72に対して下方から当接する上位置との間でスライド可能とされている。この場合、下位置がロック解除レバー61の通常位置、上位置がロック解除レバー61のロック解除位置となっている。ロック解除レバー61は、通常位置においては、突起部72に対する当接によりそれ以上下方へスライドすることが規制され、ロック解除位置においては、突起部72に対する当接によりそれ以上上方へスライドすることが規制されている。そのため、ロック解除レバー61は、通常位置からロック解除位置までの範囲内においてのみスライド可能となっている。
ロック解除レバー61が通常位置にある場合には、ロック解除レバー61の上端面が背もたれ支持部45の上面(ひいては背もたれ部13の上面)と略面一とされている。ロック解除レバー61の上端面は指掛け部66の上面により形成され、そのため、指掛け部66の上面と背もたれ支持部45の上面とは略面一とされている。また、指掛け部66の突条部67は、その背面が背もたれ支持部45の背面と略面一とされている。したがって、ロック解除レバー61は、通常位置にある場合には、背もたれ支持部45の上面及び背面からそれぞれ張り出さないように配置されている。
これに対して、ロック解除レバー61がロック解除位置にある場合には、ロック解除レバー61が背もたれ支持部45の上面よりも上方に突出した状態とされる。この場合、ロック解除レバー61が突出する突出長さはロック解除レバー61の上下方向の長さの半分以下となっている。そのため、ロック解除レバー61がロック解除位置にある場合には、その上下方向の半分以上が凹部64に収容された状態となっている。
ロック解除レバー61の下端部にはアーム62が連結されている。アーム62は、互いに異なる方向に延びる第1アーム部62a及び第2アーム部62bを有している。これら各アーム部62a,62bのうち、第1アーム部62aは、ロック解除レバー61(詳しくはレバー本体部65)の下端部に回動可能に連結されている。詳しくは、ロック解除レバー61の下端部には、背面側に突出する円柱状の突部74が設けられ、第1アーム部62aには、その第1アーム部62aの延びる方向に長い長孔75が形成されている。そして、第1アーム部62aの長孔75にロック解除レバー61の突部74が挿入されることで、第1アーム部62aひいてはアーム62がロック解除レバー61に回動可能に連結されている。
第2アーム部62bには、ワイヤ55が連結されている。この場合、ロック解除レバー61はアーム62を介してワイヤ55と連結されている。アーム62は、各アーム部62a,62bの境界部に設けられた回転軸76に回動可能に軸支されている。回転軸76は、前後に延びる軸であり、背もたれ支持部45に取り付けられている。
上記の構成において、ロック解除レバー61が通常位置からロック解除位置へ上方に向けてスライド操作されると、それに伴いアーム62が回転軸76を中心として回動する(図10(b)参照)。そして、そのアーム62の回動によりワイヤ55が引っ張られ、そのワイヤ55に接続された係合部51が係合位置(図5(a)参照)から係合解除位置(図5(b)参照)へ変位する。これにより、連結フレーム23に対する係合部51の係合、つまりは座部12の係合(ロック)が解除される。
ロック解除レバー61とアーム62とはカバー63により後方から覆われている。カバー63は、樹脂材料により形成され、背もたれ支持部45にビス等により固定されている。カバー63は、その上端部が背もたれ支持部45の上面よりも下方に位置している。これにより、ロック解除レバー61の上端側の一部、詳しくは指入れ部69を含む一部がカバー63よりも上方に露出した状態とされている。このため、指入れ部69は、後方に向けて開放された状態となっている。
カバー63には、後方に向けて開放された持ち手用の凹部79が形成されている。この凹部79は、浴室用椅子10を持ち運ぶ際に持ち手として用いられるもので、左右方向に長い横長形状とされている。また、凹部79は、ロック解除レバー61の指掛け部66(指入れ部69)の下方に形成され、詳しくは指掛け部66の直下に形成されている。したがって、指掛け部66と凹部79とは上下に並んで配置されている。
次に、ロック解除レバー61を操作して座部12のロック解除を行い、その座部12を折り畳み状態とする際の動作について説明する。
座部12のロック解除を行うに際しては、ロック解除レバー61の指掛け部66に指を掛け、ロック解除レバー61を通常位置(図9(a)及び図10(a)に示す位置)からロック解除位置(図9(b)及び図10(b)に示す位置)へと上方に向けてスライド操作する。このスライド操作により、ロック解除レバー61がロック解除位置に到達すると、ロック機構50の係合部51が係合位置(図5(a)参照)から係合解除位置(図5(b)参照)に変位する。これにより、連結フレーム23に対する係合部51の係合が解除され、ひいては座部12のロックが解除される。
次に、ロック解除位置に到達したロック解除レバー61をさらに上方に引き上げる。ロック解除レバー61は、ロック解除位置よりも上方へのスライドが規制されているため、この場合、ロック解除レバー61をロック解除位置に位置させた状態でロック解除レバー61が上方へ引き上げられる。この引き上げにより、背もたれ部13が上方に持ち上げられ、それに伴い前脚フレーム15及び後脚フレーム16が互いの下部同士が接近する側へと回動する。つまり、この場合、前脚フレーム15及び後脚フレーム16が開脚状態(図3参照)から閉脚状態(図4参照)へと移行する。そして、この移行に連動して、座部12が展開状態(図3参照)から折り畳み状態(図4参照)へと移行する。
このように、本浴室用椅子10では、ロック解除レバー61が通常位置から上方にスライド操作されることでロック解除位置に到達した後、ロック解除レバー61がさらに上方に引き上げられることで座部12が展開状態から折り畳み状態に切り替わるようになっている。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
背もたれ部13の背面側にロック解除レバー61を設け、そのロック解除レバー61を背もたれ部13(詳しくは背もたれ支持部45)の背面側に形成した凹部64により上下方向にスライド可能に案内する構成とした。そして、ロック解除レバー61を上側にスライド操作することで、ロック機構50による座部12と脚フレーム11(詳しくは連結フレーム23)との係合(ロック状態)を解除するようにした。この場合、ロック解除レバー61を上側にスライドさせるという簡単な操作により座部12のロック状態を解除することができる。例えば、ロック解除レバーが回動式であった上記特許文献1の構成では、ロック解除を行うにあたり、手を握る握り操作が必要であったが、上記の構成によれば、そのような握り操作が必要なく、握力の小さい使用者であってもロック解除を容易に行うことが可能となる。
ロック解除レバー61が上側にスライド操作されることでロック解除位置に到達した後、ロック解除レバー61がさらに上方へ引き上げられることで座部12が展開状態から折り畳み状態に切り替わる構成とした。このような構成によれば、ロック解除レバー61の引き上げ操作という一方向の操作により座部12のロック解除と折り畳みとを一挙に行うことができるため、座部12を展開状態から折り畳み状態に速やかに移行させることができる。
ロック解除レバー61に、その背面側に突出する指掛け部66を設け、その指掛け部66に、上記突出側の端部に沿って下方へ突出する突条部67を形成した。この場合、ロック解除レバー61の引き上げ操作により座部12のロックを解除するにあたり、使用者の指がロック解除レバー61から外れてしまうのを抑制することができる。これにより、座部12のロック解除をより一層し易くすることができる。
背もたれ部13の背面側に持ち手用の凹部79を形成したため、その凹部79を用いて浴室用椅子10を持ち運ぶことができる。また、凹部79をロック解除レバー61の指掛け部66の直下に形成したため、使用者が誤ってロック解除レバー61を持って浴室用椅子10を持ち運んでしまうのを防止することができる。
背もたれ部13の背面側に凹部64を形成し、その凹部64にロック解除レバー61を配置したため、ロック解除レバー61が背もたれ部13から背面側に突出するのを抑制することができる。この場合、背もたれ部13周辺の意匠性が損なわれるのを抑制しながら、ロック解除レバー61を上下スライド可能に案内させることが可能となる。
ロック解除レバー61の上端部に指掛け部66を設け、ロック解除レバー61が通常位置にある場合には、指掛け部66の上面(ロック解除レバー61の上端面)と背もたれ部13の上面とが略面一となるようにした。この場合、指掛け部66の上面と背もたれ部13の上面とが連続するため、背もたれ部13周辺の意匠性が損なわれるのをより一層抑制することができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記実施形態では、ロック解除レバー61のロック解除位置を通常位置に対して上側の位置としたが、これを逆にして、ロック解除レバー61のロック解除位置を通常位置に対して下側の位置としてもよい。この場合、ロック解除レバー61を下側(ロック解除位置)にスライド操作することで、連結フレーム23に対する座部12の係合が解除される構成となる。かかる構成は、例えばロック解除レバー61が下側にスライドされてアーム62が回動すると、そのアーム62によりワイヤ55が引っ張られるよう、アーム62の形状や回転軸76の位置等を設定することで実現することが可能である。
・上記実施形態では、背もたれ支持部45の背面側に凹部64を形成し、その凹部64にロック解除レバー61を配設することでロック解除レバー61を上下方向にスライド可能に案内する構成としたが、ロック解除レバー61を上下に案内する構成は必ずしもかかる構成に限定されない。例えば、背もたれ支持部45の背面側に凹部64を設けることに代え、上下方向に延びる案内レールを設けることが考えられる。具体的には、左右一対の案内レールを設け、それら各案内レールの間にロック解除レバー61を配置することで、ロック解除レバー61を各案内レールに沿って上下方向にスライド可能に案内する構成とすることが考えられる。また、1本の案内レールを設けるとともに、ロック解除レバー61を下向きに開口したコ字状に形成し、そして、そのロック解除レバー61をその溝部に案内レールが入り込んだ状態で配置することにより、ロック解除レバー61を案内レールに沿って上下にスライド可能に案内する構成とするようにしてもよい。なお、これらの構成では、案内レールがガイド部に相当する。
・上記実施形態では、ロック機構50により座部12を前脚フレーム15の連結フレーム23に係合させる構成としたが、これを変更して、座部12を後脚フレーム16の連結フレームに係合させる構成としてもよい。また、座部12を前脚フレーム15の前脚部17や後脚フレーム16の後脚部27に係合させる構成としてもよい。
・上記実施形態では、浴室用椅子10を持ち運ぶ際の持ち手となる持ち手用の凹部79をカバー63に形成したが、持ち手用の凹部79を背もたれ支持部45に形成してもよい。この場合にも、凹部79をロック解除レバー61の直下に形成するのが望ましい。
・上記実施形態では、座部12の折り畳み状態において座面36が前方を向くようにしたが、座部12の折り畳み状態において座面36が後方を向くようにしてもよい。