この発明に係る血流計測装置、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムの実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
実施形態に係る血流計測装置は、少なくとも光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を実行する機能を備えている。以下の実施形態では、生体の計測対象が被検眼(眼底)とし、フーリエドメインタイプのOCTを実行する眼科装置が実施形態に係る血流計測装置の機能を実現する場合について説明する。
以下、スウェプトソースOCTと眼底カメラとを組み合わせた眼科装置について説明するが、実施形態に係る構成はこれに限定されない。例えば、OCTの種別はスウェプトソースOCTには限定されず、スペクトラルドメインOCT等であってもよい。ここで、スウェプトソースOCTは、波長可変光源(波長掃引光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光をバランスドフォトダイオード等で検出し、波長の掃引及び測定光のスキャンに応じて収集された検出データにフーリエ変換等を施して画像を形成する手法である。一方、スペクトラルドメインOCTは、低コヒーレンス光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル分布を分光器で検出し、検出されたスペクトル分布にフーリエ変換等を施して画像を形成する手法である。換言すると、スウェプトソースOCTは時分割でスペクトル分布を取得する手法であり、スペクトラルドメインOCTは空間分割でスペクトル分布を取得する手法である。なお、実施形態に適用可能なOCTの手法はこれらに限定されず、他の任意の手法(例えば、タイムドメインOCT)を適用することが可能である。
実施形態に係る眼科装置は、眼底カメラのような被検眼の写真(デジタル写真)を取得する機能を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。また、眼底カメラの代わりに、走査型レーザ検眼鏡(SLO)や、スリットランプ顕微鏡や、前眼部撮影カメラや、手術用顕微鏡など、任意のモダリティが設けられてもよい。なお、眼底写真等の正面画像は、眼底の観察やスキャンエリアの設定やトラッキングなどに利用可能である。
〈構成〉
図1に示すように、眼科装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100、及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系が設けられている。OCTユニット100には、OCTを実行するための光学系や機構が設けられている。演算制御ユニット200はプロセッサを含む。被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが、眼底カメラユニット2に対向する位置に設けられている。
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
〈眼底カメラユニット2〉
眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efを撮影するための光学系や機構が設けられている。眼底Efを撮影して得られる画像(眼底像、眼底写真等と呼ばれる)には、観察画像や撮影画像がある。観察画像は、例えば、近赤外光を用いた動画撮影により得られる。撮影画像は、例えば、可視フラッシュ光を用いて得られるカラー画像若しくはモノクロ画像、又は近赤外フラッシュ光を用いて得られるモノクロ画像である。眼底カメラユニット2は、フルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能であってよい。
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する。OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット100に導かれる。
照明光学系10の観察光源11は、例えばハロゲンランプ又は発光ダイオード(LED)である。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼E(特に眼底Ef)を照明する。
被検眼Eからの観察照明光の戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この戻り光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、例えば所定のフレームレートで戻り光を検出する。なお、撮影光学系30のピントが眼底Efに合っている場合には眼底Efの観察画像が得られ、ピントが前眼部に合っている場合には前眼部の観察画像が得られる。
撮影光源15は、例えば、キセノンランプ又はLEDを含む可視光源である。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。被検眼Eからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。
液晶ディスプレイ(LCD)39は、被検眼Eを固視させるための固視標を表示する。LCD39から出力された光束(固視光束)は、その一部がハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した固視光束は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。LCD39の画面における固視標の表示位置を変更することにより被検眼Eの固視位置を変更できる。なお、LCD39の代わりに、複数のLEDが2次元的に配列されたマトリクスLEDや、光源と可変絞り(液晶絞り等)との組み合わせなどを、固視光束生成手段として用いることができる。
眼底カメラユニット2にはアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する光学系のアライメントに用いられるアライメント指標を生成する。フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。
アライメント光学系50のLED51から出力されたアライメント光は、絞り52及び53並びにリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eに投射される。
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(2つの輝点からなるアライメント指標像)に基づき、従来と同様のマニュアルアライメントやオートアライメントを行うことができる。
フォーカス光学系60は、撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。反射棒67は、照明光路に対して挿脱可能である。
フォーカス調整を行う際には、反射棒67の反射面が照明光路に斜設される。LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット視標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同じ経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(2つの輝線像からなるスプリット指標像)に基づき、従来と同様のマニュアルアライメントやオートアライメントを行うことができる。
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路とOCT用の光路とを合成する。ダイクロイックミラー46は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。OCT用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45が設けられている。
光路長変更部41は、図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、例えばコーナーキューブと、これを移動する機構とを含む。
光スキャナ42は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ42は、OCT用の光路を通過する測定光LSの進行方向を変更する。それにより、被検眼Eが測定光LSでスキャンされる。光スキャナ42は、xy平面の任意方向に測定光LSを偏向可能であり、例えば、測定光LSをx方向に偏向するガルバノミラーと、y方向に偏向するガルバノミラーとを含む。
〈OCTユニット100〉
図2に例示するように、OCTユニット100には、被検眼EのOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系の構成は、従来のスウェプトソースOCTと同様である。すなわち、この光学系は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系を含む。干渉光学系により得られる検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
光源ユニット101は、一般的なスウェプトソースOCTと同様に、出射光の波長を高速で変化させることが可能な波長可変光源を含む。波長可変光源は、例えば、近赤外レーザ光源である。
光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。更に、光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。
コーナーキューブ114は、入射した参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ114に対する参照光LRの入射方向と出射方向は互いに平行である。コーナーキューブ114は、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
図1及び図2に示す構成では、測定光LSの光路(測定光路、測定アーム)の長さを変更するための光路長変更部41と、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するためのコーナーキューブ114の双方が設けられているが、光路長変更部41とコーナーキューブ114のいずれか一方のみが設けられもよい。また、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバ121によりファイバカプラ122に導かれる。
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれてコリメータレンズユニット40により平行光束に変換され、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44及びリレーレンズ45を経由し、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを重ね合わせて干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123及び124を通じて検出器125に導かれる。
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力する。検出器125は、その検出結果(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。
DAQ130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果を演算制御ユニット200に送る。
〈演算制御ユニット200〉
演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。また、演算制御ユニット200は、各種の演算処理を実行する。例えば、演算制御ユニット200は、一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器125により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等の信号処理を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、演算制御ユニット200は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。そのための演算処理は、従来のスウェプトソースOCTと同様である。
演算制御ユニット200は、例えば、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含む。ハードディスクドライブ等の記憶装置には各種のコンピュータプログラムが格納されている。演算制御ユニット200は、操作デバイス、入力デバイス、表示デバイスなどを含んでいてもよい。
〈制御系〉
眼科装置1の制御系(処理系)は、演算制御ユニット200を中心に構成される。
眼科装置1の制御系(処理系)の構成例を図3~図5に示す。図3は、眼科装置1の制御系の機能ブロック図の一例を表す。図4は、図3の画像形成部220の機能ブロック図の一例を表す。図5は、図3のデータ処理部230の機能ブロック図の一例を表す。
演算制御ユニット200は、図3に示すように、制御部210と、画像形成部220と、データ処理部230とを含む。
〈制御部210〉
制御部210は、眼科装置1の各部を制御する。制御部210は、プロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブなどを含む。制御部210の機能は、回路を含むハードウェアと、制御ソフトウェアとの協働により実現される。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。
〈主制御部211〉
主制御部211は各種の制御を行う。特に、主制御部211は、眼底カメラユニット2の合焦駆動部31A及び43A、CCDイメージセンサ35及び38、LCD39、光路長変更部41、及び光スキャナ42などを制御する。また、主制御部211は、OCTユニット100の光源ユニット101、参照駆動部114A、検出器125、及びDAQ130などを制御する。更に、主制御部211は、図1及び図2に示す光学系を駆動する光学系駆動部(図示せず)を制御する。
合焦駆動部31Aは、主制御部211からの制御を受け、撮影光学系30の光軸に沿って撮影合焦レンズ31を移動させる。合焦駆動部31Aには、撮影合焦レンズ31を保持する保持部材と、この保持部材を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。それにより、主制御部211からの制御を受けた合焦駆動部31Aが撮影合焦レンズ31を移動することにより、撮影光学系30の合焦位置が変更される。なお、手動又はユーザーの操作部242に対する操作により合焦駆動部31Aが撮影光学系30の光軸に沿って撮影合焦レンズ31を移動するようにしてもよい。
合焦駆動部43Aは、主制御部211からの制御を受け、OCTユニット100における干渉光学系の光軸(測定光の光路)に沿ってOCT合焦レンズ43を移動させる。合焦駆動部43Aには、OCT合焦レンズ43を保持する保持部材と、この保持部材を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。それにより、主制御部211からの制御を受けた合焦駆動部43AがOCT合焦レンズ43を移動することにより、測定光の合焦位置が変更される。なお、手動又はユーザーの操作部242に対する操作により合焦駆動部43Aが干渉光学系の光軸に沿ってOCT合焦レンズ43を移動するようにしてもよい。
主制御部211は、CCDイメージセンサ35の露光時間(電荷蓄積時間)、感度、フレームレート等を制御することが可能である。主制御部211は、CCDイメージセンサ38の露光時間、感度、フレームレート等を制御することが可能である。
主制御部211は、LCD39に対して固視標や視力測定用視標の表示制御を行うことが可能である。それにより、被検眼Eに呈示される視標の切り替えや視標の種別の変更が可能になる。また、LCD39における視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eに対する視標呈示位置を変更することが可能である。
主制御部211は、光路長変更部41を制御することにより、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を相対的に変更することが可能である。主制御部211は、被検眼Eの対象部位がOCT画像のフレーム内における所定の範囲に描出されるように光路長変更部41を制御する。具体的には、主制御部211は、被検眼Eの対象部位がOCT画像のフレーム内における所定のz位置(深さ方向の位置)に描出されるように光路長変更部41を制御することが可能である。
主制御部211は、光スキャナ42を制御することにより被検眼Eの眼底Ef又は前眼部における測定光LSの走査位置を変更することが可能である。光スキャナ42の制御には、測定光LSをx方向に偏向するガルバノミラーによる走査位置、走査範囲又は走査速度の制御、測定光LSをy方向に偏向するガルバノミラーによる走査位置、走査範囲又は走査速度の制御などがある。また、主制御部211は、光スキャナ42による測定光LSの走査態様を制御することができる。測定光LSの走査態様としては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある
主制御部211は、光源ユニット101を制御することにより、光L0の点灯と消灯の切り替えや、光L0の光量の変更などを制御することが可能である。
主制御部211は、参照駆動部114Aを制御することにより、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を相対的に変更することが可能である。参照駆動部114Aは、参照光路に設けられたコーナーキューブ114を移動させる。それにより、参照光路の長さが変更される。主制御部211は、被検眼Eの対象部位がOCT画像のフレーム内における所定の範囲に描出されるように参照駆動部114Aを制御する。具体的には、主制御部211は、被検眼Eの対象部位がOCT画像のフレーム内における所定のz位置に描出されるように参照駆動部114Aを制御することが可能である。主制御部211は、光路長変更部41及び参照駆動部114Aの少なくとも一方を制御することにより、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を相対的に変更することが可能である。以下では、主制御部211は、光路長変更部41だけを制御することにより測定光LSと参照光LRとの光路長差調整を行うものとして説明するが、参照駆動部114Aだけを制御することにより参照光LRと測定光LSとの光路長差調整を行ってもよい。
主制御部211は、検出器125の露光時間(電荷蓄積時間)、感度、フレームレート等を制御することが可能である。また、主制御部211は、DAQ130を制御することが可能である。
図示しない光学系駆動部は、眼科装置1に設けられた光学系(図1及び図2に示す光学系)を3次元的に移動する。主制御部211は、被検眼Eと装置光学系との位置関係を維持するように光学系駆動部を制御することが可能である。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとピント合わせが実行される。トラッキングは、被検眼Eを動画撮影して得られる画像に基づき被検眼Eの位置や向きに合わせて装置光学系をリアルタイムで移動させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
〈記憶部212〉
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、例えば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。
〈画像形成部220〉
画像形成部220は、DAQ130によりサンプリングされた検出器125からの検出信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データと位相画像の画像データとを形成する。画像形成部220はプロセッサを含む。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。
図4に示すように、画像形成部220は、断層像形成部221と、位相画像形成部222とを含む。
〈断層像形成部221〉
断層像形成部221は、DAQ130による検出信号のサンプリング結果に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。この処理には、従来のスウェプトソースOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、高速フーリエ変換(FFT)などの信号処理が含まれる。断層像形成部221により形成される画像データは、スキャンラインに沿って配列された複数のAライン(z方向に沿うスキャンライン)における反射強度プロファイルを画像化することにより形成された一群の画像データ(一群のAスキャン像データ)を含むデータセットである。
〈位相画像形成部222〉
位相画像形成部222は、眼底Efの所定部位を繰り返しOCTスキャンすることにより得られたデータ(OCTデータ)に基づいて位相画像を形成する。この実施形態では、眼底Efにおける所定部位に対して繰り返し走査(OCTスキャン)することにより時系列データ(時系列のOCTデータ)が取得される。繰り返し走査される期間は、少なくとも生体の心臓の拡張期と収縮期とを含む期間であってよい。所定部位は、注目血管を含む。OCTスキャンは、所定部位における注目血管に交差するように実行される。
位相画像形成部222は、取得された時系列データのそれぞれに基づいて、所定部位における注目血管に交差する断面の位相画像を形成する。すなわち、位相画像形成部222は、眼底Efの所定部位に対して測定光LSで繰り返し走査することにより取得された時系列データに基づいて、当該所定部位の断面における時系列の複数の位相画像を形成する。
位相画像の形成に用いられるデータは、断層像形成部221が断層像を形成するために用いられるデータと同じであってよい。この場合、スキャンされた断面の断層像と位相画像とを容易に位置合わせすることができる。つまり、同じデータに基づき形成された断層像と位相画像とについて、断層像の画素と位相画像の画素とを自然に対応付けることが可能である。
位相画像の形成方法の例を説明する。本例の位相画像は、隣り合うAライン複素信号(隣接する走査点に対応する信号)の位相差を算出することにより得られる。換言すると、本例の位相画像は、スキャンされた断面の断層像の各画素について、その画素の画素値(輝度値)の時系列変化に基づき形成される。任意の画素について、位相画像形成部222は、その輝度値の時系列変化のグラフを考慮する。位相画像形成部222は、このグラフにおいて所定の時間間隔Δtだけ離れた2つの時点t1及びt2(t2=t1+Δt)の間における位相差Δφを求める。そして、この位相差Δφを時点t1(より一般に2つの時点t1及びt2の間の任意の時点)における位相差Δφ(t1)として定義する。あらかじめ設定された多数の時点のそれぞれについてこの処理を実行することで、当該画素における位相差の時系列変化が得られる。
位相画像は、各画素の各時点における位相差の値を画像として表現したものである。この画像化処理は、例えば、位相差の値を表示色や輝度で表現することで実現できる。このとき、時系列に沿って位相が増加したことを表す色(例えば赤)と、減少したことを表す色(例えば青)とを違えることができる。また、位相の変化量の大きさを表示色の濃さで表現することもできる。このような表現方法を採用することで、血流の向きや大きさを色や濃度で提示することが可能となる。以上の処理を各画素について実行することにより位相画像が形成される。
なお、位相差の時系列変化は、上記の時間間隔Δtを十分に小さくして位相の相関を確保することにより得られる。このとき、測定光LSの走査において断層像の分解能に相当する時間未満の値に時間間隔Δtを設定したオーバーサンプリングが実行される。
〈データ処理部230〉
データ処理部230は、画像形成部220により形成された画像データに対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。例えば、データ処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。また、データ処理部230は、CCDイメージセンサ35、38を用い得られた画像(前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
データ処理部230は、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行することにより、被検眼Eのボリュームデータ(ボクセルデータ)を形成することができる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像を形成する。
データ処理部230は、取得されたボリュームデータ(3次元データセット、スタックデータ等)に各種のレンダリングを施すことで、任意断面におけるBモード画像(縦断面像、軸方向断面像)、任意断面におけるCモード画像(横断面像、水平断面像)、プロジェクション画像、シャドウグラムなどを形成することができる。Bモード画像やCモード画像のような任意断面の画像は、指定された断面上の画素(ピクセル、ボクセル)を3次元データセットから選択することにより形成される。プロジェクション画像は、3次元データセットを所定方向(z方向、深さ方向、軸方向)に投影することによって形成される。シャドウグラムは、3次元データセットの一部(たとえば特定層に相当する部分データ)を所定方向に投影することによって形成される。Cモード画像、プロジェクション画像、シャドウグラムのような、被検眼の正面側を視点とする画像を正面画像(en-face画像)と呼ぶ。
また、データ処理部230は、OCTにより時系列に収集されたデータ(例えば、Bスキャン画像データ)に基づいて、網膜血管や脈絡膜血管が強調されたBモード画像や正面画像(血管強調画像、アンギオグラム)を構築することができる。例えば、被検眼Eの略同一部位を反復的にスキャンすることにより、時系列のOCTデータを収集することができる。
いくつかの実施形態では、データ処理部230は、略同一部位に対するBスキャンにより得られた時系列のBスキャン画像を比較し、信号強度の変化部分の画素値を変化分に対応した画素値に変換することにより当該変化部分が強調された強調画像を構築する。更に、データ処理部230は、構築された複数の強調画像から所望の部位における所定の厚さ分の情報を抽出してen-face画像として構築することでOCTアンギオグラムを形成する。
実施形態に係るデータ処理部230は、位相画像形成部222により形成された時系列の複数の位相画像に基づいて血流情報を生成することが可能である。このようなデータ処理部230は、図5に示すように、血管領域特定部231と、血管領域サイズ特定部232と、情報生成部233と、特徴量算出部234と、血管判定部235とを含む。
〈血管領域特定部231〉
血管領域特定部231は、位相画像形成部222により形成された位相画像において、注目血管に対応する血管領域(注目血管の断面領域)を特定する。この実施形態では、血管領域特定部231は、位相画像形成部222により時系列データに基づいて形成された複数の位相画像のそれぞれにおける血管領域を特定する。血管領域の特定は、位相差の変化が大きい領域を特定することにより行われる。
いくつかの実施形態では、血管領域特定部231は、位相画像の画素値を解析することにより血管領域を特定する。この解析処理には、例えば、閾値処理、エッジ検出、二値化、細線化、領域拡張法(リージョングローイング)などの公知の画像処理が含まれる。
いくつかの実施形態では、位相画像に描出される血管領域の形状が略円形状である場合、血管領域特定部231は、位相差の変化が大きい略円形状の領域を特定することにより血管領域を特定する。
この実施形態では、同じデータから断層像と位相画像とを形成することが可能である。それにより、血管領域特定部231は、断面形態が比較的明瞭に描出される断層像内の血管領域を特定し、特定された血管領域に対応する位相画像内の領域を血管領域として特定することが可能である。
いくつかの実施形態では、血管領域特定部231は、ユーザーによる操作部242(後述)に対する操作内容に基づいて指定された血管領域を特定する。ユーザーは、主制御部211により表示部241(後述)に表示された眼底Efの正面画像又は断面の位相画像を見ながら操作部242に対して操作を行うことにより、所望の注目血管に対応する血管領域を指定することができる。
〈血管領域サイズ特定部232〉
血管領域サイズ特定部232は、血管領域特定部231により特定された位相画像における血管領域のサイズを特定する。血管領域のサイズとして、血管領域の面積、周囲長、当該領域を円近似したときの直径又は半径、当該領域を楕円近似したときの長径及び短径などがある。
面積を特定する処理は、例えば、特定された領域内の画素の数をカウントする処理を含む。周囲長を特定する処理は、例えば、特定された領域の外縁に含まれる画素の数をカウントする処理を含む。当該領域を円近似したときの直径等を特定する処理は、特定された領域の輪郭を特定する処理と、特定された輪郭を公知の円近似処理により近似円を算出する処理と、算出された近似円の直径又は半径を特定する処理とを含む。当該領域を楕円近似したときの長径等を特定する処理は、特定された領域の輪郭を特定する処理と、特定された輪郭を公知の楕円近似処理により近似楕円を算出する処理と、算出された近似楕円の長径及び短径を特定する処理とを含む。
この実施形態では、血管領域サイズ特定部232は、血管領域特定部231により特定された複数の位相画像のそれぞれにおける血管領域についてサイズを特定する。
〈情報生成部233〉
情報生成部233は、複数の位相画像について血管領域サイズ特定部232により特定されたサイズの経時的変化を表す情報を生成する。情報生成部233は、例えば、血管領域サイズ特定部232により特定されたサイズを、当該位相画像において対応する血管領域と、当該位相画像を形成するためのOCTデータの取得タイミング(OCTスキャンの実行タイミング)とに関連付けて、図示しない記憶部(又は記憶部212)に保存する。情報生成部233は、所望の注目血管に対応する血管領域に関連付けれたサイズと取得タイミングとに基づいて、注目血管に対応する血管領域のサイズの経時的変化を表す情報を生成する。
血管領域のサイズの経時的変化を表す情報として、横軸(縦軸)に時間を表し、縦軸(横軸)に血管領域の面積等のサイズを表す経時的変化グラフ、血管領域の面積等のサイズを時系列に並べたリストなどがある。主制御部211は、情報生成部233により生成された経時的変化情報を表示部241に表示させることが可能である。
〈特徴量算出部234〉
特徴量算出部234は、情報生成部233により生成されたサイズの経時的変化を表す情報に基づいて、サイズの経時的変化の特徴量を算出する。算出された特徴量に基づいて、当該血管領域の血流情報などを求めることが可能である。
図6に、実施形態に係る情報生成部233により生成されたサイズの経時的変化を表す情報の一例を模式的に示す。図6は、横軸に時間を表し、縦軸に血管領域の面積(単位:ピクセル数)表す経時的変化グラフの一例を破線で表す。なお、図6では、血管領域の面積の経時的変化と共に、血流速度(血管流速)(単位:毎秒ミリメートル)の経時的変化を表す実線で図示されている。血流速度の経時的変化は、例えば、特開2017-079886号公報に開示されているように、眼底Efに対して実行されたOCTにより取得された時系列データに含まれる位相情報を解析することにより求められる。図6では、このようにして求められた血流速度の経時的変化は、血管領域の面積の経時的変化と同じ時間軸上に図示されている。
図6に示すように、時間の経過に伴い血流速度が速くなると位相画像における血管領域の面積が増大し、且つ、時間の経過に伴い血流速度が遅くなると血管領域の面積が減少する。しかも、血管領域の面積の変化タイミング(立ち上がりタイミング、立ち下がりタイミング、周期等)は、血流速度の変化タイミングと略一致する。すなわち、血管領域の面積の経時的変化と位相情報を解析して求められた血流速度の経時的変化とは相関関係がある。この相関関係に着目して、情報生成部233により生成された血管領域のサイズの経時的変化を表す情報の特徴量を算出することで、位相情報を解析するための複雑な処理を行うことなく注目血管の血流情報を特定することが可能である。
特徴量算出部234により算出される特徴量は、面積(サイズ)の経時的変化を表す情報に基づいて、面積の経時的変化の周期T、当該経時的変化における最小値Minと最大値Maxとの差D、最小値Minと最大値Maxとの比R、最小値Minから最大値Maxへの変化に要する時間T1、及び最大値Maxから最小値Minへの変化に要する時間T2の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、特徴量算出部234により算出される特徴量は、更に、サイズの平均値、平均値と最小値との差、及び平均値と最大値との差の少なくとも1つを含む。サイズが面積以外の周囲長などの他のパラメータである場合も同様である。
血流速度の経時的変化は、心臓の拍動に起因した変化である。位相画像における血管領域のサイズの経時的変化の特徴量として周期Tを算出し、例えば、算出された周期Tから1分間の拍動数に変換することにより、被検者の心拍数を特定することが可能になる。
また、動脈では血流速度の経時的変化における最小値と最大値との差が大きいのに対し、静脈では血流速度の経時的変化における最小値と最大値との差は非常に小さい。位相画像における血管領域のサイズの経時的変化の特徴量として差Dを算出し、算出された差Dの大きさを解析することにより当該血管領域に対応する注目血管が動脈であるか静脈であるか否かを判別することが可能になる。
また、動脈硬化では血流速度の経時的変化における最小値と最大値との比(例えば、最大値/最小値)は、正常な血管における比と比較すると小さくなる。位相画像における血管領域のサイズの経時的変化の特徴量として最小値Minと最大値Maxとの比Rを算出し、算出された比Rの大きさを解析することにより当該血管領域に対応する注目血管に動脈硬化(循環器疾患)の疑いがあるか否かを判別することが可能になる。
また、心臓の弁に異常がある場合、血流速度の経時的変化の最小値から最大値に変化する時間が長くなる。位相画像における血管領域のサイズの経時的変化の特徴量として最小値Minから最大値Maxに変化する時間T1を算出し、算出された時間T1の長さを解析することにより心臓弁膜症の疑いがあるか否かを判別することが可能になる。特に、注目血管が動脈である場合には周期Tは算出可能であるため、位相画像における血管領域のサイズの経時的変化の特徴量として最大値Maxから最小値Minに変化する時間T2を算出するようにしてもよい。
更に、位相画像における血管領域のサイズの経時的変化の特徴量として算出された差Dから血流速度を推定することも可能である。例えば、血管領域サイズ特定部232により特定された位相画像における血管領域のサイズに対応した血流速度の基準値(ノーマティブデータ)が既知の場合、当該基準値を基準に差Dから血流速度(最小値、最大値)を推定することが可能である。
いくつかの実施形態では、特徴量として算出された差Dに基づいて、当該注目血管が複数の速度範囲のいずれかに分類される。各速度範囲についてサイズの経時的変化の最小値と最大値との差の範囲があらかじめ決められている場合、特徴量として算出された差Dが複数の速度範囲のいずれに分類されるかを判別することができる。制御部210(主制御部211)は、分類された速度範囲が識別できるように眼底画像又はOCTアンギオグラムにおける当該注目血管に対応する血管領域を表示部241に表示させることが可能である。
〈血管判定部235〉
血管判定部235は、上記のように特徴量算出部234により算出された特徴量に基づいて、当該血管領域に対応する注目血管が動脈であるか否かを判定する。血管判定部235は、上記のように、最小値Minと最大値Maxとの差Dと、あらかじめ決められた閾値とを比較し、差Dが閾値以上のとき当該血管領域に対応する注目血管が動脈であると判定し、差Dが閾値未満のとき当該血管領域に対応する注目血管が静脈であると判定する。
いくつかの実施形態では、差Dと閾値との比較結果に加えて、周期Tを考慮して注目血管が動脈であるか否かを判定する。
〈ユーザーインターフェイス240〉
眼科装置1には、ユーザーインターフェイス240が設けられている。ユーザーインターフェイス240は表示部241と操作部242とを含む。表示部241は表示装置3を含む。操作部242は各種の操作デバイスや入力デバイスを含む。ユーザーインターフェイス240は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザーインターフェイス240の少なくとも一部を含まない実施形態を構築することも可能である。例えば、表示デバイスは、眼科装置に接続された外部装置であってよい。
眼科装置1は、実施形態に係る「血流計測装置」の一例である。演算制御ユニット200は、実施形態に係る「情報処理装置」の一例である。眼底Ef(被検眼E)は、実施形態に係る「生体」の一例である。図1において対物レンズ22からOCTユニット100までの光学系と演算制御ユニット200とは、実施形態に係る「データ取得部」の一例である。血管領域特定部231は、実施形態に係る「領域特定部」の一例である。血管領域サイズ特定部232は、実施形態に係る「サイズ特定部」の一例である。
〈動作〉
実施形態に係る眼科装置1の動作について説明する。
眼科装置1の動作の例を図7に示す。記憶部212には、図7に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図7に示す処理を実行する。なお、アライメント、フォーカス調整、干渉感度調整、z位置調整など、一般的な準備処理は既に完了しているとする。
(S1:3次元スキャン)
まず、制御部210(主制御部211)は、OCT血管造影のための3次元スキャンを眼底Efに対して実行するようにOCTユニット100等を制御する。例えば、眼底Efの複数の部位について、略同一部位を反復的にOCTスキャンすることにより時系列のOCTデータが収集される。
(S2:正面血管造影画像を形成)
データ処理部230は、略同一部位に対するBスキャンにより得られた時系列のBスキャン画像を比較し、信号強度及び位相の少なくとも1つの変化部分の画素値を変化分に対応した画素値に変換することにより当該変化部分が強調された強調画像を構築する。更に、データ処理部230は、構築された複数の強調画像から所望の部位における所定の厚さ分の情報を抽出してen-face画像として構築することで正面血管造影画像(OCTアンギオグラム)を形成する。
(S3:注目血管を指定)
制御部210は、ユーザーによる操作部242に対する操作を受け、ステップS2において形成された正面血管造影画像(又は、眼底カメラユニット2を用いて取得された眼底像)に表現されている血管分布における1以上の注目血管の指定を受け付ける。
いくつかの実施形態では、データ処理部230が、ステップS2において形成された正面血管造影画像に描出された血管のうち所定の径以上の血管を特定する。制御部210は、データ処理部230により特定された1以上の血管を注目血管として指定する。
指定された注目血管のそれぞれに対して以下の処理が適用される。
(S4:時系列データを収集)
制御部210は、ステップS1における得られたOCTデータから、ステップS3で指定された注目血管に交差する断面に対してOCTを繰り返し実行することにより得られた時系列のOCTデータを抽出することで、所望の時系列データを収集する。
制御部210は、ステップS3で指定された注目血管に交差する断面を繰り返しスキャンするようにOCTユニット100を制御し、時系列のOCTデータを取得させてもよい。
(S5:位相画像を形成)
画像形成部220は、ステップS4で収集された時系列のOCTデータのそれぞれに基づいて、ステップS3で指定された注目血管に交差する断面の複数の位相画像を形成する。
(S6:血管領域を特定)
血管領域特定部231は、ステップS5において形成された複数の位相画像のそれぞれについて血管領域を特定する。
(S7:血管領域の面積を特定)
血管領域サイズ特定部232は、ステップS6において形成された1以上の血管領域のそれぞれについて面積を特定する。
いくつかの実施形態では、血管領域サイズ特定部232は、ステップS6において形成された1以上の血管領域のそれぞれについて周囲長を特定する。
(S8:経時的変化を表す情報を生成)
情報生成部233は、ステップS7において特定された面積(周囲長)の経時的変化を表す情報を生成する。
(S9:特徴量を算出)
特徴量算出部234は、ステップS8において生成された血管領域の面積の経時的変化を表す情報から、血管領域の面積の最小値と最大値との差を特徴量として算出する。
(S10:血管判定)
血管判定部235は、ステップS9において算出された特徴量としての差と、あらかじめ決められた閾値とを比較し、当該差が閾値以上のとき注目血管が動脈であると判定し、当該差が閾値未満のとき注目血管が静脈であると判定する。ステップS10は、ステップS9において特徴量が算出された注目血管のそれぞれについて実行させる。
(S11:判定結果を表示)
制御部210は、ステップS2で形成された正面血管造影画像と、ステップS10で得られた判定結果とを、表示部241に表示させる。
制御部210は、ステップS3で指定された注目血管を示す情報を正面血管造影画像とともに表示させることができる。典型的な例として、制御部210は、正面血管造影画像において注目血管に相当する画像領域を所定の色で表示させる。例えば、動脈であると判定された注目血管を赤色で表示させ、且つ、静脈であると判定された注目血管を青色で表示させることができる。
2以上の注目血管が指定された場合、これら注目血管に相当する複数の画像領域に、互いに異なる色を割り当てることができる。このとき、動脈であると判定された注目血管を暖色系の色で表示させ、且つ、静脈であると判定された注目血管を寒色系の色で表示させることができる。
以上で、眼科装置1の動作は終了である(エンド)。
主制御部211は、ステップS10で得られた複数の注目血管に対する判定結果に基づいて、眼底Efにおける動脈の分布と静脈の分布とを表す血管マップを作成し、ステップS2で形成された正面血管造影画像とともに表示部241に表示させることが可能である。血管マップにおいては、動脈領域と静脈領域とが互いに異なる色で提示される。例えば、動脈領域は暖色系の色で表示され、且つ、静脈領域は寒色系の色で表示される。
図8に、実施形態に係る血管マップの一例を模式的に示す。
血管マップMには、赤色で表現された動脈領域AMと、青色で表現された静脈領域VMとが描出されている。
例えば、主制御部211は、血管マップと正面血管造影画像とを重ねて表示させることができる。この場合、正面血管造影画像をモノクロ画像として表示しつつ、この正面血管造影画像の上に重ねて血管マップを表示することができる。
例えば、主制御部211は、血管マップと正面血管造影画像とを並べて表示させることが可能である。
例えば、主制御部211は、血管マップの表示/非表示を切り替え可能とし、及び/又は、正面血管造影画像の表示/非表示とを切り替え可能とすることができる。
いくつかの実施形態では、ユーザーは、血管マップの表示態様を切り替えるための操作を操作部242に対して行うことができるように構成される。例えば、ユーザーは、動脈領域のみを表示させるための操作、静脈領域のみを表示させるための操作、動脈領域の表示/非表示を切り替えるための操作、静脈領域の表示/非表示を切り替えるための操作などを行うことができる。
例えば、図8に示す血管マップMが表示されているときに、動脈領域のみを表示させるための操作をユーザーが行うと、主制御部211は、血管マップM中の動脈領域AMのみが提示された動脈マップM1を、血管マップMの代わりに表示部241に表示させる(図9Aを参照)。
また、図8に示す血管マップMが表示されているときに、静脈領域のみを表示させるための操作をユーザーが行うと、主制御部211は、血管マップM中の静脈領域VMのみが提示された静脈マップM2を、血管マップMの代わりに表示部241に表示させる(図9Bを参照)。
また、動脈マップM1が表示されているときに、静脈領域のみを表示させるための操作をユーザーが行うと、主制御部211は、動脈マップM1の代わりに静脈マップM2を表示部241に表示させてもよい。逆に、静脈マップM2が表示されているときに、動脈領域のみを表示させるための操作をユーザーが行うと、主制御部211は、静脈マップM2の代わりに動脈マップM1を表示部241に表示させてもよい。
任意の動作例において、主制御部211は、収集データ、任意の画像(正面血管造形画像など)、血管マップなどを、記憶部212に保存することが可能である。また、主制御部211は、収集データ、任意の画像(正面血管造形画像など)、血管マップなどを、図示しない通信インターフェイスを制御して外部装置に送信することが可能である。また、主制御部211は、収集データ、任意の画像(正面血管造形画像など)、血管マップなどを、図示しない記録装置を制御して記録媒体に記録させることが可能である。
〈作用・効果〉
実施形態に係る血流計測装置、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムの作用及び効果について説明する。
いくつかの実施形態に係る血流計測装置(眼科装置1)は、光コヒーレンストモグラフィを用いて生体の血流計測を行う。血流計測装置は、データ取得部(図1における対物レンズ22からOCTユニット100までの光学系と演算制御ユニット200)と、位相画像形成部(222)と、領域特定部(血管領域特定部231)と、サイズ特定部(血管領域サイズ特定部232)と、情報生成部(234)とを含む。データ取得部は、生体(眼底Ef)の注目血管に交差する断面を繰り返し走査することにより時系列データを取得する。位相画像形成部は、時系列データに基づいて、上記の断面における時系列の複数の位相画像を形成する。領域測定部は、位相画像形成部により形成された複数の位相画像のそれぞれにおける血管領域を特定する。サイズ測定部は、領域特定部により特定された血管領域のサイズ(面積、周囲長など)を特定する。情報生成部は、複数の位相画像についてサイズ特定部により特定されたサイズの経時的変化を表す情報を生成する。
このような構成によれば、光コヒーレンストモグラフィを用いて生体の注目血管に交差する断面の位相画像を形成し、形成された位相画像における血管領域を特定し、特定された血管領域のサイズの経時的変化を表す情報を生成するようにしたので、時系列データに含まれる位相情報に対する複雑な解析処理を行うことなく、注目血管の状態を把握することが可能になる。従って、より簡便な手法で生体の血流情報を取得することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る血流計測装置は、情報生成部により生成された情報に基づいて、サイズの経時的変化の特徴量を算出する特徴量算出部(234)を含む。
このような構成によれば、断面の位相画像から血管領域のサイズの経時的変化の特徴量を算出するようにしたので、算出された特徴量から注目血管の血流の状態を簡便に把握することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る血流計測装置では、特徴量は、サイズの経時的変化の周期(T)、経時的変化における最小値(Min)と最大値(Max)との差(D)、最小値と最大値との比(R)、最小値から最大値への変化に要する時間(T1)、及び最大値から最小値への変化に要する時間(T2)の少なくとも1つを含む。
このような構成によれば、生体の心拍数、循環器疾患の疑いがあるか否かの情報等を非常に簡便に取得することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る血流計測装置は、経時的変化における最小値と最大値との差に基づいて、注目血管が動脈であるか否かを判定する血管判定部(235)を含む。
このような構成によれば、位相情報に対する複雑な解析処理を行うことなく、注目血管が動脈であるか否かを非常に簡便に判定することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る血流計測装置では、血管判定部は、上記の差が閾値以上のとき、注目血管が動脈であると判定する。
このような構成によれば、簡素な閾値処理で、注目血管が動脈であるか否かを判定することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る血流計測装置では、サイズ特定部は、領域特定部により特定された血管領域の面積又は周囲長を特定する。
このような構成によれば、位相画像における血管領域の面積又は周囲長の経時的変化を表す情報を生成するようにしたので、非常に簡素な処理で生体の血流情報を取得することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る情報処理装置(演算制御ユニット200)は、位相画像形成部(222)と、領域特定部(血管領域特定部231)と、サイズ特定部(血管領域サイズ特定部232)と、情報生成部(234)とを含む。位相画像形成部は、光コヒーレンストモグラフィを用いて生体(眼底Ef)の注目血管に交差する断面を繰り返し走査することにより得られた時系列データに基づいて、断面における時系列の複数の位相画像を形成する。領域特定部は、位相画像形成部により形成された複数の位相画像のそれぞれにおける血管領域を特定する。サイズ特定部は、領域特定部により特定された血管領域のサイズ(面積、周囲長など)を特定する。情報生成部は、複数の位相画像についてサイズ特定部により特定されたサイズの経時的変化を表す情報を生成する。
このような構成によれば、光コヒーレンストモグラフィを用いて生体の注目血管に交差する断面の位相画像を形成し、形成された位相画像における血管領域を特定し、特定された血管領域のサイズの経時的変化を表す情報を生成するようにしたので、時系列データに含まれる位相情報に対する複雑な解析処理を行うことなく、注目血管の状態を把握することが可能になる。従って、より簡便な手法で生体の血流情報を取得することが可能な情報処理装置を提供することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る情報処理方法は、位相画像形成ステップと、領域特定ステップと、サイズ特定ステップと、情報生成ステップとを含む。位相画像形成ステップは、光コヒーレンストモグラフィを用いて生体(眼底Ef)の注目血管に交差する断面を繰り返し走査することにより得られた時系列データに基づいて、断面における時系列の複数の位相画像を形成する。領域特定ステップは、位相画像形成ステップにおいて形成された複数の位相画像のそれぞれにおける血管領域を特定する。サイズ特定ステップは、領域特定ステップにおいて特定された血管領域のサイズを特定する。情報生成ステップは、複数の位相画像についてサイズ特定ステップにおいて特定されたサイズの経時的変化を表す情報を生成する。
このような方法によれば、光コヒーレンストモグラフィを用いて生体の注目血管に交差する断面の位相画像を形成し、形成された位相画像における血管領域を特定し、特定された血管領域のサイズの経時的変化を表す情報を生成するようにしたので、時系列データに含まれる位相情報に対する複雑な解析処理を行うことなく、注目血管の状態を把握することが可能になる。従って、より簡便な手法で生体の血流情報を取得することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る情報処理方法は、情報生成ステップにおいて生成された情報に基づいて、サイズの経時的変化の特徴量を算出する特徴量算出ステップを含む。
このような方法によれば、断面の位相画像から血管領域のサイズの経時的変化の特徴量を算出するようにしたので、算出された特徴量から注目血管の血流の状態を簡便に把握することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る情報処理方法は、経時的変化における最小値(Min)と最大値(Max)との差(D)に基づいて、注目血管が動脈であるか否かを判定する。
このような方法によれば、位相情報に対する複雑な解析処理を行うことなく、注目血管が動脈であるか否かを非常に簡便に判定することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る情報処理方法では、血管判定ステップは、上記の差が閾値以上のとき、注目血管が動脈であると判定する。
このような方法によれば、簡素な閾値処理で、注目血管が動脈であるか否かを判定することができるようになる。
いくつかの実施形態に係る情報処理方法では、サイズ特定ステップは、領域特定ステップにおいて特定された血管領域の面積又は周囲長を特定する。
このような方法によれば、位相画像における血管領域の面積又は周囲長の経時的変化を表す情報を生成するようにしたので、非常に簡素な処理で生体の血流情報を取得することができるようになる。
いくつかの実施形態に係るプログラムは、コンピュータに、上記のいずれかに記載の情報処理方法の各ステップを実行させる。
このようなプログラムによれば、光コヒーレンストモグラフィを用いて生体の注目血管に交差する断面の位相画像を形成し、形成された位相画像における血管領域を特定し、特定された血管領域のサイズの経時的変化を表す情報を生成するようにしたので、時系列データに含まれる位相情報に対する複雑な解析処理を行うことなく、注目血管の状態を把握することが可能になる。従って、より簡便な手法で生体の血流情報を取得することができるようになる。
いずれかの実施形態に係るプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この非一時的記録媒体は任意の形態であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
以上に説明した実施形態は本発明の一例に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内における変形(省略、置換、付加等)を任意に施すことが可能である。