例示的な実施形態に係る血管解析装置について図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態の血管解析装置は、OCTを利用して生体の血管のデータを収集し、血管壁に関する情報を生成する。
解析の対象となる血管は、OCTを適用可能な任意の血管であってよい。本開示では生体眼(被検眼)の血管を対象とする場合について詳しく説明するが、眼以外の部位の血管を対象としてもよい。例えば、皮膚血管や内臓血管を対象とすることができる。なお、内臓血管を対象とする場合には、内視鏡にOCTを組み込むことができる。
本明細書にて引用された文献に開示された技術やその他の任意の公知技術を実施形態に組み合わせることが可能である。
以下の実施形態では、フーリエドメインOCT(例えば、スウェプトソースOCT)を用いて生体眼の眼底を計測することが可能な血管解析装置について説明する。OCTのタイプはスウェプトソースOCTには限定されず、例えばスペクトラルドメインOCT又はタイムドメインOCTであってもよい。実施形態の血管解析装置はOCT装置と眼底カメラを組み合わせた装置であるが、眼底カメラ以外の眼底撮影装置とOCT装置とを組み合わせてもよい。そのような眼底撮影装置の例として、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、スリットランプ顕微鏡、眼科手術用顕微鏡などがある。
〈構成〉
図1に示すように、血管解析装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2には、被検眼の正面画像を取得するための光学系や機構が設けられている。OCTユニット100には、OCTを実行するための光学系や機構の一部が設けられている。OCTを実行するための光学系や機構の他の一部は、眼底カメラユニット2に設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算や制御を実行する1以上のプロセッサを含む。これらに加え、被検者の顔を支持するための部材(顎受け、額当て等)や、OCTの対象部位を切り替えるためのレンズユニット(例えば、前眼部OCT用アタッチメント)等の任意の要素やユニットが血管解析装置1に設けられてもよい。
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
〈眼底カメラユニット2〉
眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efを撮影するための光学系が設けられている。取得される眼底Efの画像(眼底像、眼底写真等と呼ばれる)は、観察画像、撮影画像等の正面画像である。観察画像は、近赤外光を用いた動画撮影により得られる。撮影画像は、フラッシュ光を用いた静止画像である。
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する。OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット100に導かれる。
照明光学系10の観察光源11から出力された光(観察照明光)は、凹面鏡12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ系17、リレーレンズ18、絞り19、及びリレーレンズ系20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼E(眼底Ef)を照明する。観察照明光の被検眼Eからの戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この戻り光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、所定のフレームレートで戻り光を検出する。なお、撮影光学系30のフォーカスは、眼底Ef又は前眼部に合致するように調整される。
撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。被検眼Eからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりイメージセンサ38の受光面に結像される。
液晶ディスプレイ(LCD)39は固視標(固視標画像)を表示する。LCD39から出力された光束は、その一部がハーフミラー33Aに反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光束は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。
LCD39の画面上における固視標画像の表示位置を変更することにより、固視標による被検眼Eの固視位置を変更できる。固視位置の例として、黄斑部を中心とする画像を取得するための固視位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための固視位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための固視位置や、黄斑から大きく離れた部位(眼底周辺部)の画像を取得するための固視位置などがある。このような典型的な固視位置の少なくとも1つを指定するためのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)等を設けることができる。また、固視位置(固視標の表示位置)をマニュアルで移動するためのGUI等を設けることができる。
固視位置を変更可能な固視標を被検眼Eに提示するための構成はLCD等の表示デバイスには限定されない。例えば、複数の発光部(発光ダイオード等)がマトリクス状(アレイ状)に配列された固視マトリクスを表示デバイスの代わりに採用することができる。この場合、複数の発光部を選択的に点灯させることにより、固視標による被検眼Eの固視位置を変更することができる。他の例として、移動可能な1以上の発光部によって、固視位置を変更可能な固視標を生成することができる。
アライメント光学系50は、被検眼Eに対する光学系のアライメントに用いられるアライメント指標を生成する。発光ダイオード(LED)51から出力されたアライメント光は、絞り52、絞り53、及びリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。アライメント光の被検眼Eからの戻り光(角膜反射光等)は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(アライメント指標像)に基づいてマニュアルアライメントやオートアライメントを実行できる。
従来と同様に、本例のアライメント指標像は、アライメント状態により位置が変化する2つの輝点像からなる。被検眼Eと光学系との相対位置がxy方向に変化すると、2つの輝点像が一体的にxy方向に変位する。被検眼Eと光学系との相対位置がz方向に変化すると、2つの輝点像の間の相対位置(距離)が変化する。z方向における被検眼Eと光学系との間の距離が既定のワーキングディスタンスに一致すると、2つの輝点像が重なり合う。xy方向において被検眼Eの位置と光学系の位置とが一致すると、所定のアライメントターゲット内又はその近傍に2つの輝点像が提示される。z方向における被検眼Eと光学系との間の距離がワーキングディスタンスに一致し、且つ、xy方向における被検眼Eの位置と光学系の位置とが一致すると、2つの輝点像が重なり合ってアライメントターゲット内に提示される。
オートアライメントでは、データ処理部230が、2つの輝点像の位置を検出し、主制御部211が、2つの輝点像とアライメントターゲットとの位置関係に基づいて後述の移動機構150を制御する。マニュアルアライメントでは、主制御部211が、被検眼Eの観察画像とともに2つの輝点像を表示部241に表示させ、ユーザーが、表示された2つの輝点像を参照しながら操作部242を用いて移動機構150を動作させる。
フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、フォーカス光学系60は照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。反射棒67は、照明光路に対して挿脱される。フォーカス調整を行う際には、反射棒67の反射面が照明光路に傾斜配置される。LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。フォーカス光の被検眼Eからの戻り光(眼底反射光等)は、アライメント光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(スプリット指標像)に基づいてマニュアルフォーカシングやオートフォーカシングを実行できる。
孔開きミラー21とダイクロイックミラー55との間の撮影光路に、視度補正レンズ70及び71を選択的に挿入することができる。視度補正レンズ70は、強度遠視を補正するためのプラスレンズ(凸レンズ)である。視度補正レンズ71は、強度近視を補正するためのマイナスレンズ(凹レンズ)である。
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用光路とOCT用光路(測定アーム)とを合成する。ダイクロイックミラー46は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。測定アームには、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44、及びリレーレンズ45が設けられている。
リトロリフレクタ41は、図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、それにより測定アームの長さが変更される。測定アームの光路長の変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。
分散補償部材42は、参照アームに配置された分散補償部材113(後述)とともに、測定光LSの分散特性と参照光LRの分散特性とを合わせるよう作用する。
OCT合焦レンズ43は、測定アームのフォーカス調整を行うために測定アームに沿って移動される。撮影合焦レンズ31の移動、フォーカス光学系60の移動、及びOCT合焦レンズ43の移動を連係的に制御することができる。
光スキャナ44は、実質的に、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ44は、測定アームにより導かれる測定光LSを偏向する。光スキャナ44は、例えば、2次元走査が可能なガルバノスキャナである。
〈OCTユニット100〉
図2に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する。干渉光学系により得られた検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを表す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
光源ユニット101は、例えば、出射光の波長を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。更に、光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。測定光LSの光路は測定アームなどと呼ばれ、参照光LRの光路は参照アームなどと呼ばれる。
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、リトロリフレクタ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、測定アームに配置された分散補償部材42とともに、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。リトロリフレクタ114は、これに入射する参照光LRの光路に沿って移動可能であり、それにより参照アームの長さが変更される。参照アームの光路長の変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。
リトロリフレクタ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ119を通じてアッテネータ120に導かれてその光量が調整され、光ファイバ121を通じてファイバカプラ122に導かれる。
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれてコリメータレンズユニット40により平行光束に変換され、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44及びリレーレンズ45を経由し、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。測定光LSの被検眼Eからの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを重ね合わせて干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、生成された干渉光を所定の分岐比(例えば1:1)で分岐することで一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123及び124を通じて検出器125に導かれる。
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードを含む。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をデータ収集システム(DAQ)130に送る。
データ収集システム130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐して2つの分岐光を生成し、これら分岐光の一方を光学的に遅延させ、これら分岐光を合成し、得られた合成光を検出し、その検出結果に基づいてクロックKCを生成する。データ収集システム130は、検出器125から入力される検出信号のサンプリングをクロックKCに基づいて実行する。データ収集システム130は、このサンプリングの結果を演算制御ユニット200に送る。
本例では、測定アームの光路長を変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ41)と、参照アームの光路長を変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ114、又は参照ミラー)との双方が設けられているが、一方の要素のみが設けられていてもよい。また、測定アームの光路長と参照アームの光路長との間の差(光路長差)を変更するための要素はこれらに限定されず、任意の要素(光学部材、機構など)であってよい。
〈処理系〉
血管解析装置1の処理系(演算制御系)の構成例を図3及び図4に示す。制御部210、画像形成部220及びデータ処理部230は、演算制御ユニット200に設けられる。
〈制御部210〉
制御部210は、各種の制御を実行する。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。
〈主制御部211〉
主制御部211は、制御プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含み、血管解析装置1の各部(図1~図4に示された要素を含む)を制御する。
撮影光路に配置された撮影合焦レンズ31と照明光路に配置されたフォーカス光学系60とは、主制御部211の制御の下に、図示しない撮影合焦駆動部によって同期的に移動される。測定アームに設けられたリトロリフレクタ41は、主制御部211の制御の下に、リトロリフレクタ(RR)駆動部41Aによって移動される。測定アームに配置されたOCT合焦レンズ43は、主制御部211の制御の下に、OCT合焦駆動部43Aによって移動される。測定アームに設けられた光スキャナ44は、主制御部211の制御の下に動作する。参照アームに配置されたリトロリフレクタ114は、主制御部211の制御の下に、リトロリフレクタ(RR)駆動部114Aによって移動される。これら駆動部のそれぞれは、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。
移動機構150は、例えば、少なくとも眼底カメラユニット2を3次元的に移動する。典型的な例において、移動機構150は、±x方向(左右方向)に移動可能なxステージと、xステージを移動するx移動機構と、±y方向(上下方向)に移動可能なyステージと、yステージを移動するy移動機構と、±z方向(奥行き方向)に移動可能なzステージと、zステージを移動するz移動機構とを含む。これら移動機構のそれぞれは、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。
主制御部211は、LCD39を制御する。例えば、主制御部211は、LCD39の画面において予め設定された位置に固視標を表示させる。また、主制御部211は、LCD39に表示されている固視標の表示位置(固視位置)を変更することができる。固視標の移動は、連続的移動、断続的移動、離散的移動など、任意の態様で行うことが可能である。本実施形態における固視位置の移動態様については後述する。
固視位置は、例えば、LCD39における固視標画像の表示位置(画素の座標)によって表現される。この座標は、例えば、LCD39の表示画面において予め定義された2次元座標系で表される座標である。固視マトリクスが用いられる場合、固視位置は、例えば、点灯された発光部の位置(座標)によって表現される。この座標は、例えば、複数の発光部の配列面において予め定義された2次元座標系で表される座標である。
〈記憶部212〉
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、OCT画像や眼底像や被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。
〈画像形成部220〉
画像形成部220は、データ収集システム130から入力された信号(サンプリングデータ)に基づいて、眼底EfのOCT画像データを形成する。画像形成部220は、眼底EfのBスキャン画像データ(2次元断層像データ)と、位相画像データとを形成することができる。これらOCT画像データについては後述する。画像形成部220は、例えば、画像形成プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。なお、本明細書では、特に言及しない限り、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを区別しない。
本実施形態の血流計測では、眼底Efに対して2種類の走査(主走査及び補足走査)が実行される。
主走査では、位相画像データを取得するために、眼底Efの注目血管に交差する断面(注目断面)を測定光LSで反復的に走査する。
補足走査では、注目断面における注目血管の傾きを推定するために、所定の断面(補足断面)を測定光LSで走査する。補足断面は、例えば、注目血管に交差し、且つ、注目断面の近傍に位置する断面(第1補足断面)であってよい。或いは、補足断面は、注目断面に交差し、且つ、注目血管に沿う断面(第2補足断面)であってよい。
第1補足断面が適用される場合の例を図5Aに示す。本例では、眼底像Dに示すように、眼底Efの視神経乳頭Daの近傍に位置する1つの注目断面C0と、その近傍に位置する2つの補足断面C1及びC2とが、注目血管Dbに交差するように設定される。2つの補足断面C1及びC2の一方は、注目断面C0に対して注目血管Dbの上流側に位置し、他方は下流側に位置する。注目断面C0及び補足断面C1及びC2は、例えば、注目血管Dbの走行方向に対して略直交するように向き付けられる。
第2補足断面が適用される場合の例を図5Bに示す。本例では、図5Aに示す例と同様の注目断面C0が注目血管Dbに略直交するように設定され、且つ、注目断面C0に略直交するように補足断面Cpが設定される。補足断面Cpは、注目血管Dbに沿って設定される。一例として、補足断面Cpは、注目断面C0の位置において注目血管Dbの中心軸を通過するように設定されてよい。
例示的な血流計測において、主走査は、患者の心臓の少なくとも1心周期を含む期間にわたって繰り返し実行される。それにより、全ての心時相における血流動態を求めることが可能となる。なお、主走査を実行する時間は、予め設定された一定の時間であってもよいし、患者ごとに又は検査ごとに設定された時間であってもよい。前者の場合、標準的な心周期よりも長い時間が設定される(例えば2秒間)。後者の場合、患者の心電図等の生体データを参照することができる。ここで、心周期以外のファクターを考慮することも可能である。このファクターの例としては、検査に掛かる時間(患者への負担)、光スキャナ44の応答時間(走査時間間隔)、検出器125の応答時間(走査時間間隔)などがある。
画像形成部220は、断層像形成部221と、位相画像形成部222とを含む。
〈断層像形成部221〉
断層像形成部221は、主走査においてデータ収集システム130より得られたサンプリングデータに基づいて、注目断面における形態の時系列変化を表す断層像(主断層像)を形成する。この処理についてより詳しく説明する。主走査は、上記のように注目断面C0を繰り返し走査するものである。断層像形成部221には、この繰り返し走査に応じて、データ収集システム130からサンプリングデータが逐次に入力される。断層像形成部221は、注目断面C0の各走査に対応するサンプリングデータに基づいて、注目断面C0に対応する1枚の主断層像を形成する。断層像形成部221は、この処理を主走査の反復回数だけ繰り返すことで、時系列に沿った一連の主断層像を形成する。ここで、これら主断層像を複数の群に分割し、各群に含まれる主断層像群を重ね合わせて画質の向上を図ってもよい(画像の加算平均処理)。
更に、断層像形成部221は、補足断面に対する補足走査においてデータ収集システム130により得られたサンプリングデータに基づいて、補足断面の形態を表す断層像(補足断層像)を形成する。補足断層像を形成する処理は、主断層像を形成する処理と同じ要領で実行される。ここで、主断層像は時系列に沿う一連の断層像であるが、補足断層像は1枚の断層像であってよい。また、補足断層像は、補足断面を複数回走査して得られた複数の断層像を重ね合わせて画質の向上を図ったものであってもよい(画像の加算平均処理)。
図5Aに例示する補足断面C1及びC2が適用される場合、断層像形成部221は、補足断面C1に対応する補足断層像と、補足断面C2に対応する補足断層像とを形成する。図5Bに例示する補足断面Cpが適用される場合、断層像形成部221は、補足断面Cpに対応する補足断層像を形成する。
以上に例示したような断層像を形成する処理は、従来のフーリエドメインOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、高速フーリエ変換(FFT)などを含む。高速フーリエ変換により、データ収集システム130により得られたサンプリングデータ(干渉信号、インターフェログラム)が、Aラインプロファイル(z方向に沿った反射強度プロファイル)に変換される。Aラインプロファイルを画像化することで(つまり、反射強度値に画素値を割り当てることで)、Aスキャン画像が得られる。複数のAスキャン画像をスキャンパターンにしたがって配列することにより、Bスキャン画像やサークルスキャン画像などの2次元断層像が得られる。他のタイプのOCT装置の場合、断層像形成部221は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。
〈位相画像形成部222〉
位相画像形成部222は、主走査においてデータ収集システム130により得られたサンプリングデータに基づいて、注目断面における位相差の時系列変化を表す位相画像を形成する。位相画像の形成に用いられるサンプリングデータは、断層像形成部221による主断層像の形成に用いられるサンプリングデータと同じである。よって、主断層像と位相画像との間の位置合わせをすることが可能である。つまり、主断層像の画素と位相画像の画素との間に自然な対応関係を設定することが可能である。
位相画像の形成方法の一例を説明する。この例の位相画像は、隣り合うAライン複素信号(つまり、隣接する走査点に対応する信号)の位相差を算出することにより得られる。換言すると、この例の位相画像は、主断層像の画素値(輝度値)の時系列変化に基づいて形成される。主断層像の任意の画素について、位相画像形成部222は、その画素の輝度値の時系列変化のグラフを作成する。位相画像形成部222は、このグラフにおいて所定の時間間隔Δtだけ離れた2つの時点t1及びt2(t2=t1+Δt)の間における位相差Δφを求める。そして、この位相差Δφを時点t1(より一般に、時点t1と時点t2との間の任意の時点)における位相差Δφ(t1)として定義する。予め設定された多数の時点のそれぞれについてこの処理を実行することにより、当該画素における位相差の時系列変化が得られる。
位相画像は、各画素の各時点における位相差の値を画像として表現したものである。この画像化処理は、例えば、位相差の値を表示色や輝度で表現することで実現できる。このとき、時系列に沿って位相が増加した場合の表示色(例えば赤色)と、減少した場合の表示色(例えば青色)とを変更することができる。また、位相の変化量の大きさを表示色の濃度で表現することもできる。このような表現方法を採用することで、血流の向きや大きさを表示色で明示することが可能となる。以上の処理を各画素について実行することにより位相画像が形成される。
なお、位相差の時系列変化は、上記の時間間隔Δtを十分に小さくして位相の相関を確保することにより得られる。このとき、測定光LSの走査において断層像の分解能に相当する時間未満の値に時間間隔Δtを設定したオーバーサンプリングが実行される。
〈データ処理部230〉
データ処理部230は、各種のデータ処理を実行する。例えば、データ処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。その具体例として、データ処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。更に、データ処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)や、外部から入力された画像に対して、各種の画像処理や解析処理を施すことができる。
データ処理部230は、眼底Efの3次元画像データを形成することができる。3次元画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像データの例として、スタックデータやボリュームデータがある。
スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させて得られた画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり、1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られた画像データである。
ボリュームデータは、3次元的に配列されたボクセルを画素とする画像データであり、ボクセルデータとも呼ばれる。ボリュームデータは、スタックデータに補間処理やボクセル化処理などを適用することで形成される。
データ処理部230は、3次元画像データに対してレンダリングを施すことで、表示用の画像を形成することができる。適用可能なレンダリング法の例として、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、最大値投影(MIP)、最小値投影(MinIP)、多断面再構成(MPR)などがある。
データ処理部230は、血流情報を求めるための例示的な要素として、血管領域特定部231と、血流情報生成部232と、断面設定部237とを含む。血流情報生成部232は、傾き推定部233と、血流速度算出部234と、血管径算出部235と、血流量算出部236とを含む。
更に、データ処理部230は、血管の状態を評価するための例示的な要素として、外壁領域特定部261、内壁領域特定部262、外壁形態解析部271、内壁形態解析部272と、血管形態解析部273と、異常判定部280とを含む。
〈血管領域特定部231〉
血管領域特定部231は、主断層像、補足断層像、及び位相画像のそれぞれについて、注目血管Dbに対応する血管領域を特定する。この処理は、各画像の画素値を解析することによって実行することが可能である(例えば閾値処理)。
なお、主断層像と補足断層像は解析処理の対象として十分な解像度を持っているが、位相画像は血管領域の境界を特定できるほどの解像度を持っていない場合がある。しかし、位相画像に基づき血流情報を生成する以上、それに含まれる血管領域を高精度且つ高確度で特定する必要がある。そこで、例えば次のような処理を行うことで、位相画像中の血管領域をより正確に特定することができる。
前述のように、主断層像と位相画像は同じサンプリングデータに基づいて形成されるため、主断層像の画素と位相画像の画素との間の自然な対応関係を定義することが可能である。血管領域特定部231は、例えば、主断層像を解析して血管領域を求め、この血管領域に対応する位相画像中の画像領域を当該対応関係に基づき特定し、特定された画像領域を位相画像中の血管領域として採用することができる。これにより、位相画像の血管領域を高精度且つ高確度で特定することができる。
ここで、典型的には、主断層像は主に血管壁の外面(外壁)を描出し、位相画像は血管内腔を描出することを考慮し、主断層像から特定された血管領域の外縁(輪郭)よりも内側に外縁を有する画像領域を位相画像の血管領域として求めるようにしてもよい。
〈血流情報生成部232〉
血流情報生成部232は、注目血管Dbに関する血流情報を生成する。前述のように、血流情報生成部232は、傾き推定部233と、血流速度算出部234と、血管径算出部235と、血流量算出部236とを含む。
〈傾き推定部233〉
傾き推定部233は、補足走査により収集された補足断面のデータ(断面データ、補足断層像)に基づいて、注目血管の傾きの推定値を求める。この傾き推定値は、例えば、注目断面における注目血管の傾きの測定値、又はその近似値であってよい。
注目血管の傾きの値を実際に測定する場合の例を説明する(傾き推定の第1の例)。図5Aに示す補足断面C1及びC2が適用された場合、傾き推定部233は、注目断面C0と補足断面C1と補足断面C2との間の位置関係と、血管領域特定部231による血管領域の特定結果とに基づいて、注目断面C0における注目血管Dbの傾きを算出することができる。
注目血管Dbの傾きの算出方法について図6Aを参照しつつ説明する。符号G0、G1及びG2は、それぞれ、注目断面C0における主断層像、補足断面C1における補足断層像、及び補足断面C2における補足断層像を示す。また、符号V0、V1及びV2は、それぞれ、主断層像G0内の血管領域、補足断層像G1内の血管領域、及び補足断層像G2内の血管領域を示す。図6Aに示すz座標軸は、測定光LSの入射方向と実質的に一致する。また、主断層像G0(注目断面C0)と補足断層像G1(補足断面C1)との間の距離をdとし、主断層像G0(注目断面C0)と補足断層像G2(補足断面C2)との間の距離を同じくdとする。隣接する断層像の間隔、つまり隣接する断面の間隔を、断面間距離と呼ぶ。
傾き推定部233は、3つの血管領域V0、V1及びV2の間の位置関係に基づいて、注目断面C0における注目血管Dbの傾きAを算出することができる。この位置関係は、例えば、3つの血管領域V0、V1及びV2を接続することによって求められる。その具体例として、傾き推定部233は、3つの血管領域V0、V1及びV2のそれぞれの特徴位置を特定し、これら特徴位置を接続することができる。この特徴位置としては、中心位置、重心位置、最上部(z座標値が最小の位置)、最下部(z座標値が最大の位置)などがある。これら特徴位置のうちでは、最上部の特定が最も簡便な処理と考えられる。また、特徴位置の接続方法としては、線分で結ぶ方法、近似曲線(スプライン曲線、ベジェ曲線等)で結ぶ方法などがある。
更に、傾き推定部233は、3つの血管領域V0、V1及びV2から特定された特徴位置の間を接続する線に基づいて傾きAを算出する。線分で接続する場合、例えば、注目断面C0の特徴位置と補足断面C1の特徴位置とを結ぶ第1線分の傾きと、注目断面C0の特徴位置と補足断面C2の特徴位置とを結ぶ第2線分の傾きとに基づき傾きAを算出することができる。この算出処理の例として、2つの線分の傾きの平均値を求めることが可能である。また、近似曲線で結ぶ場合の例として、近似曲線が注目断面C0に交差する位置におけるこの近似曲線の傾きを求めることができる。なお、断面間距離dは、例えば、線分や近似曲線を求める処理において、断層像G0~G2をxyz座標系に埋め込むときに用いられる。
上記の例では、3つの断面における血管領域を考慮しているが、2つの断面を考慮して傾きを求めるように構成することも可能である。その具体例として、上記第1線分又は第2線分の傾きを目的の傾きとすることができる。また、2つの補足断層像G1及びG2に基づいて注目断面C0における注目血管Dbの傾きAを算出することができる。
上記の例では1つの傾きを求めているが、血管領域V0中の2つ以上の位置(又は領域)についてそれぞれ傾きを求めるようにしてもよい。この場合、得られた2つ以上の傾きの値を別々に用いることもできるし、これら傾きの値を統計的に処理して得られる値(例えば、平均値、最大値、最小値、中間値、最頻値など)を傾きAとして用いることもできる。
注目血管の傾きの近似値を求める場合の例を説明する(傾き推定の第2の例)。図5Bに示す補足断面Cpが適用された場合、傾き推定部233は、補足断面Cpに対応する補足断層像を解析して、注目断面C0における注目血管Dbの傾きの近似値を算出することができる。
注目血管Dbの傾きの近似方法について図6Bを参照しつつ説明する。符号Gpは、補足断面Cpにおける補足断層像を示す。符号Aは、図6Aに示す例と同様に、注目断面C0における注目血管Dbの傾きを示す。
本例において、傾き推定部233は、補足断層像Gpを解析して、眼底Efの所定組織に相当する画像領域を特定することができる。例えば、傾き推定部233は、網膜の表層組織である内境界膜(ILM)に相当する画像領域(内境界膜領域)Mを特定することができる。画像領域の特定には、例えば、公知のセグメンテーション処理が利用される。
内境界膜と眼底血管とは互いに略平行であることが知られている。傾き推定部233は、注目断面C0における内境界膜領域Mの傾きAappを算出する。注目断面C0における内境界膜領域Mの傾きAappは、注目断面C0における注目血管Dbの傾きAの近似値として用いられる。
なお、図6A及び図6Bに示す傾きAは、注目血管Dbの向きを表すベクトルであり、その値の定義は任意であってよい。一例として、傾き(ベクトル)Aとz軸とが成す角度として傾きAの値を定義することが可能である。同様に、図6Bに示す傾きAappは、内境界膜領域Mの向きを表すベクトルであり、その値の定義は任意であってよい。例えば、傾き(ベクトル)Aappとz軸とが成す角度として傾きAappの値を定義することが可能である。なお、z軸の向きは、測定光LSの入射方向と実質的に同一である。
注目血管の傾き推定の第3の例として、血管領域特定部231は、図6Bに示す補足断層像Gpを解析して、注目血管Dbに相当する画像領域を特定することができ、更に、傾き推定部233は、注目断面C0に相当する位置における当該画像領域の傾きを求めることができる。このとき、傾き推定部233は、例えば、注目血管Dbに相当する画像領域の境界又は中心軸を曲線近似することができ、注目断面C0に相当する位置における当該近似曲線の傾きを求めるようにしてもよい。前述した眼底Efの所定組織に相当する画像領域(例えば内境界膜領域M)に対して同様の曲線近似を適用することも可能である。
傾き推定部233が実行する処理は上記の例には限定されず、眼底Efの断面にOCTスキャンを適用して収集された断面データに基づいて注目血管Dbの傾きの推定値(例えば、注目血管Db自体の傾き値、その近似値など)を求めることが可能な任意の処理であってよい。
〈血流速度算出部234〉
血流速度算出部234は、位相画像として得られる位相差の時系列変化に基づいて、注目血管Db内を流れる血液の注目断面C0における血流速度を算出する。この算出対象は、或る時点における血流速度でもよいし、この血流速度の時系列変化(血流速度変化情報)でもよい。前者の場合、例えば心電図の所定の時相(例えばR波の時相)における血流速度を選択的に取得することが可能である。また、後者における時間の範囲は、注目断面C0を走査した時間の全体又は任意の一部である。
血流速度変化情報が得られた場合、血流速度算出部234は、計測期間における血流速度の統計値を算出することができる。この統計値としては、平均値、標準偏差、分散、中央値、最頻値、最大値、最小値、極大値、極小値などがある。また、血流速度の値に関するヒストグラムを作成することもできる。
血流速度算出部234は、ドップラーOCTの手法を用いて血流速度を算出する。このとき、傾き推定部233により算出された注目断面C0における注目血管Dbの傾きA(又は、その近似値Aapp)が考慮される。具体的には、血流速度算出部234は、次式を用いることができる。
ここで:
Δfは、測定光LSの散乱光が受けるドップラーシフトを表す;
nは、媒質の屈折率を表す;
vは、媒質の流速(血流速度)を表す;
θは、測定光LSの照射方向と媒質の流れベクトルとが成す角度を表す;
λは、測定光LSの中心波長を表す。
本実施形態では、nとλは既知であり、Δfは位相差の時系列変化から得られ、θは傾きA(又は、その近似値Aapp)から得られる。典型的には、θは、傾きA(又は、その近似値Aapp)に等しい。これらの値を上記の式に代入することにより、血流速度vが算出される。
〈血管径算出部235〉
血管径算出部235は、注目断面C0における注目血管Dbの径を算出する。この算出方法の例として、眼底像(正面画像)を用いた第1の算出方法と、断層像を用いた第2の算出方法がある。
第1の算出方法が適用される場合、注目断面C0の位置を含む眼底Efの部位の撮影が予め行われる。それにより得られる眼底像は、観察画像(のフレーム)でもよいし、撮影画像でもよい。撮影画像がカラー画像である場合には、これを構成する画像(例えばレッドフリー画像)を用いてもよい。また、撮影画像は、眼底蛍光造影撮影(フルオレセイン蛍光造影撮影など)により得られた蛍光画像でもよいし、OCT血管造影(OCTアンジオグラフィ)により得られた血管強調画像(アンジオグラム、モーションコントラスト画像)でもよい。
血管径算出部235は、撮影画角(撮影倍率)、ワーキングディスタンス、眼球光学系の情報など、画像上のスケールと実空間でのスケールとの関係を決定する各種ファクターに基づいて、眼底像におけるスケールを設定する。このスケールは実空間における長さを表す。具体例として、このスケールは、隣接する画素の間隔と、実空間におけるスケールとを対応付けたものである(例えば画素の間隔=10μm)。なお、上記ファクターの様々な値と、実空間でのスケールとの関係を予め算出し、この関係をテーブル形式やグラフ形式で表現した情報を記憶しておくことも可能である。この場合、血管径算出部235は、上記ファクターに対応するスケールを選択的に適用する。
更に、血管径算出部235は、このスケールと血管領域V0に含まれる画素とに基づいて、注目断面C0における注目血管Dbの径、つまり血管領域V0の径を算出する。具体例として、血管径算出部235は、血管領域V0の様々な方向の径の最大値や平均値を求める。また、血管領域235は、血管領域V0の輪郭を円近似又は楕円近似し、その円又は楕円の径を求めることができる。なお、血管径が決まれば血管領域V0の面積を(実質的に)決定することができるので(つまり両者を実質的に一対一に対応付けることができるので)、血管径を求める代わりに当該面積を算出するようにしてもよい。
第2の算出方法について説明する。第2の算出方法では、典型的には、注目断面C0における断層像が用いられる。この断層像は、主断層像でもよいし、これとは別個に取得されたものでもよい。
この断層像におけるスケールは、OCTの計測条件などに基づき決定される。本実施形態では、図5A又は図5Bに示すように注目断面C0を走査する。注目断面C0の長さは、ワーキングディスタンス、眼球光学系の情報など、画像上のスケールと実空間でのスケールとの関係を決定する各種ファクターに基づいて決定される。血管径算出部235は、例えば、この長さに基づいて隣接する画素の間隔を求め、第1の算出方法と同様にして注目断面C0における注目血管Dbの径を算出する。
〈血流量算出部236〉
血流量算出部236は、血流速度の算出結果と血管径の算出結果とに基づいて、注目血管Db内を流れる血液の流量を算出する。この処理の一例を以下に説明する。
血管内における血流がハーゲン・ポアズイユ流(Hagen-Poiseuille flow)と仮定する。また、血管径をwとし、血流速度の最大値をVmとすると、血流量Qは次式で表される。
血流量算出部236は、血管径算出部235による血管径の算出結果wと、血流速度算出部234による血流速度の算出結果に基づく最大値Vmとを、この数式に代入することにより、目的の血流量Qを算出する。
以上のように、血流情報生成部232は、注目血管の傾き推定値と位相画像とに基づき血流速度を求めることができ、注目血管の傾き推定値と位相画像と血管径とに基づき血流量を求めることができる。血管径は、断層像又は位相画像に基づき算出可能である。血流速度は血流情報の例であり、血流量は血流情報の他の例である。
〈断面設定部237〉
主制御部211は、表示部241に眼底Efの正面画像を表示させる。この正面画像は、任意種別の画像であってよく、例えば、観察画像、撮影画像、蛍光画像、モーションコントラスト画像、OCTプロジェクション画像、及びOCTシャドウグラムのうちのいずれかであってよい。
ユーザーは、操作部242を操作することで、表示された眼底Efの正面画像に対して1以上の注目断面を指定することができる。注目断面は、注目血管に交差するように指定される。断面設定部237は、指定された1以上の注目断面と、眼底Efの正面画像とに基づいて、1以上の注目断面のそれぞれに関する1以上の補足断面を設定することができる。なお、補足断面の設定を手動で行うようにしてもよい。
他の例において、断面設定部237は、眼底Efの正面画像を解析して1以上の注目血管を特定するように構成されていてよい。注目血管の特定は、例えば、血管の太さや、眼底の所定部位(例えば、視神経乳頭、黄斑)に対する位置関係や、血管の種別(例えば、動脈、静脈)などに基づいて実行される。更に、断面設定部237は、特定された1以上の注目血管のそれぞれに関する1以上の注目断面と1以上の補足断面とを設定することができる。
このように、ユーザーにより、断面設定部237により、又は、ユーザーと断面設定部237との協働により、図5A又は図5Bに例示するような注目断面及び補足断面が眼底Efに対して設定される。
〈外壁領域特定部261〉
断層像形成部221により構築された断層像(2次元断層像)には、網膜の層構造や脈絡膜に加え、血管の外壁が描出される。より詳細には、2次元断層像には、少なくとも、血管の外壁のうち網膜表面側の部分が明瞭に描出される。ここで、血管の外壁とは、血管壁の外面を意味する。
外壁領域特定部261は、断層像形成部221により構築された2次元断層像を解析して血管の外壁の少なくとも一部に相当する画像領域(外壁領域)を特定する。換言すると、外壁領域特定部261は、血管の外壁のうち2次元断層像に描出されている部分に相当する画像領域を特定する。
なお、血管の外壁のうち2次元断層像に描出されていない部分に相当する画像領域を推定するようにしてもよい。この推定は、例えば、2次元断層像に描出されている部分に基づく外挿処理を含んでいてよい。この外挿処理は、例えば、円近似、楕円近似、曲線近似などの演算を含んでいてよい。また、2次元断層像に対応する断面の近傍領域(例えば、他の断面、3次元領域など)のOCT画像に基づき外挿処理を行うことも可能である。
本例では、外壁領域特定部261は、図5A又は図5Bに示す注目断面C0のOCT画像(例えば主断層像G0)を解析することにより、注目断面C0における注目血管Dbの外壁に相当する外壁領域を特定することができる。
外壁領域特定部261は、例えば、血管領域特定部231が2次元断層像から特定した血管領域の外縁(輪郭)を特定するように構成されていてよい。他の例として、外壁領域特定部261は、血管領域特定部231と同様の処理を2次元断層像に適用して血管領域を特定する処理と、この血管領域の外縁を特定する処理とを実行するように構成されていてもよい。外縁特定処理は、例えば閾値処理や二値化などの画像処理を含む。
前述したように、本実施形態は、血流計測において、注目断面C0にOCTスキャンを繰り返し適用して複数の2次元データ(2次元データセット)を取得し、断層像形成部221により、この2次元データセットから、互いに異なる複数の時間にそれぞれ対応する複数の2次元断層像を形成する。外壁領域特定部261は、これら2次元断層像を解析することで、複数の時間にそれぞれ対応する複数の外壁領域を特定することができる。このようにして特定される複数の外壁領域は、注目血管Dbの外壁の形態の時間変化を表現したデータセットであり、典型的には、注目血管Dbの拍動に起因する外壁形態の時間変化を表現したデータセットである。
〈内壁領域特定部262〉
位相画像形成部222により構築された位相画像(2次元位相画像)は、対応する断面における位相差の時系列変化(時間変化)を表現している。位相差の時間変化は、主として血流に起因する。よって、位相画像は、血流が生じている箇所を表現した画像であり、換言すると、血管内腔を表現した画像と言える。血管内腔の外縁は血管の内壁に一致する。
なお、実施形態において、血管の内壁は、血管壁の内面を少なくとも意味し、血管壁内面に付着したプラークの表面をも意味していてもよい。すなわち、実施形態において、血管の内壁とは、位相画像において血流が生じている箇所(位相差の時間変化が生じている箇所)の外縁を意味する。
内壁領域特定部262は、位相画像形成部222により構築された2次元位相画像を解析して血管の内壁の少なくとも一部に相当する画像領域(内壁領域)を特定する。換言すると、内壁領域特定部262は、血管の内壁のうち2次元位相画像に描出されている部分に相当する画像領域を特定する。
なお、血管の内壁のうち2次元位相画像に描出されていない部分に相当する画像領域を推定するようにしてもよい。この推定は、例えば、2次元位相画像に描出されている部分に基づく外挿処理を含んでいてよい。この外挿処理は、例えば、円近似、楕円近似、曲線近似などの演算を含んでいてよい。また、2次元位相画像に対応する断面の近傍領域(例えば、他の断面、3次元領域など)の位相画像に基づき外挿処理を行うことも可能である。
ただし、プラークが付着している可能性を考慮し、このような外挿処理を適用しないようにしてもよい。例えば、血管の内壁のうち2次元位相画像に描出されている部分が少ない場合(2次元位相画像に描出されていない部分、つまり推定される部分が大きい場合)などには、血管内壁の外挿処理を適用しなくてよい。
本例では、内壁領域特定部262は、図5A又は図5Bに示す注目断面C0の2次元位相画像を解析することにより、注目断面C0における注目血管Dbの内壁に相当する内壁領域を特定することができる。
内壁領域特定部262は、例えば、血管領域特定部231により特定された2次元位相画像中の血管領域の外縁(輪郭)を特定するように構成されていてよい。他の例として、内壁領域特定部262は、血管領域特定部231と同様の処理を2次元位相画像(及び2次元断層像)に適用して血管領域を特定する処理と、この血管領域の外縁を特定する処理とを実行するように構成されていてもよい。外縁特定処理は、例えば閾値処理や二値化などの画像処理を含む。
前述したように、本実施形態は、血流計測において、注目断面C0にOCTスキャンを繰り返し適用して複数の2次元データ(2次元データセット)を取得し、位相画像形成部222により、この2次元データセットから、互いに異なる複数の時間にそれぞれ対応する複数の2次元位相画像を形成する。内壁領域特定部262は、これら2次元位相画像を解析することで、複数の時間にそれぞれ対応する複数の内壁領域を特定することができる。このようにして特定される複数の内壁領域は、注目血管Dbの内壁の形態の時間変化を表現したデータセットであり、典型的には、注目血管Dbの拍動に起因する内壁形態の時間変化を表現したデータセットである。
〈外壁形態解析部271〉
外壁形態解析部271は、外壁領域特定部261により2次元断層像から特定された外壁領域の形態解析を行う。外壁領域の形態は、例えば、外壁領域の形状及びサイズのいずれか一方又は双方を含む。
外壁形態解析部271は、例えば、外壁領域を近似する図形を求めることができる。この近似図形は、典型的には、近似円又は近似楕円である。図形近似は任意の公知の手法で実行可能であり、例えば、外壁領域上の複数の点に図形をフィッティングする手法を適用することができる。
近似円が得られた場合、外壁形態解析部271は、この近似円の形状(すなわち円形状)を外壁形状として求めることができる。また、外壁形態解析部271は、外壁領域と近似円との間の差を表すパラメータを外壁形状として求めることができる。また、外壁形態解析部271は、近似円の周長、半径、及び直径のうちの少なくとも1つを外壁サイズとして求めることができる。
近似楕円が得られた場合、外壁形態解析部271は、この近似楕円の形状(すなわち楕円形状)を外壁形状として求めることができる。また、外壁形態解析部271は、外壁領域と近似楕円との間の差を表すパラメータを外壁形状として求めることができる。また、外壁形態解析部271は、近似楕円の周長、短径、及び長径のうちの少なくとも1つを外壁サイズとして求めることができる。
近似図形を求めない場合、外壁形態解析部271は、例えば、外壁領域の周長、最大径、最小径、最大径と最小径との差、及び最大径と最小径との比のうちの少なくともいずれかを外壁形態として求めることができる。
外壁形態解析部271は、血管瘤に相当する画像領域(血管瘤領域)を表すパラメータを求めることができる。そのために、外壁形態解析部271は、例えば、外壁領域における膨張箇所(血管瘤領域)を特定する処理と、血管瘤領域を除く外壁領域上の複数の点から近似図形(例えば近似円又は近似楕円)を求める処理と、近似図形と血管瘤領域とを比較する処理とを実行することができる。このような処理により、例えば、血管瘤領域のサイズと近似図形のサイズとの比又は差、近似図形(又は外壁領域)を外縁とする領域のサイズ(面積)と血管瘤領域のサイズ(面積)との比又は差、血管瘤領域のサイズ(面積、周長)などが得られる。互いに近接する複数の断面について上記処理が適用された場合には、血管瘤領域の面積と近似図形の面積との比又は差、近似図形(又は外壁領域)を外縁とする領域の体積と血管瘤領域の体積との比又は差、血管瘤領域の体積などが得られる。
前述したように、外壁領域特定部261は、血管外壁の形態の時間変化を表す複数の外壁領域を特定することができる。この場合、外壁形態解析部271は、これら外壁領域に基づいて血管外壁の形態の時間変化を求めることができる。血管外壁の形態の時間変化は、例えば、外壁形状の時間変化及び外壁サイズの時間変化のいずれか一方又は双方を含んでいてよい。外壁形状及び外壁サイズは、前述したパラメータのいずれかであってよい。
〈内壁形態解析部272〉
内壁形態解析部272は、内壁領域特定部262により2次元位相画像から特定された内壁領域の形態解析を行う。内壁領域の形態は、例えば、内壁領域の形状及びサイズのいずれか一方又は双方を含む。
内壁形態解析部272は、例えば、内壁領域を近似する図形を求めることができる。この近似図形は、典型的には、近似円又は近似楕円である。図形近似は任意の公知の手法で実行可能であり、例えば、内壁領域上の複数の点に図形をフィッティングする手法を適用することができる。
近似円が得られた場合、内壁形態解析部272は、この近似円の形状(すなわち円形状)を内壁形状として求めることができる。また、内壁形態解析部272は、内壁領域と近似円との間の差を表すパラメータを内壁形状として求めることができる。また、内壁形態解析部272は、近似円の周長、半径、及び直径のうちの少なくとも1つを内壁サイズとして求めることができる。
近似楕円が得られた場合、内壁形態解析部272は、この近似楕円の形状(すなわち楕円形状)を内壁形状として求めることができる。また、内壁形態解析部272は、内壁領域と近似楕円との間の差を表すパラメータを内壁形状として求めることができる。また、内壁形態解析部272は、近似楕円の周長、短径、及び長径のうちの少なくとも1つを内壁サイズとして求めることができる。
近似図形を求めない場合、内壁形態解析部272は、例えば、内壁領域の周長、最大径、最小径、最大径と最小径との差、及び最大径と最小径との比のうちの少なくともいずれかを内壁形態として求めることができる。
内壁形態解析部272は、血管内に存在するプラークに相当する画像領域(プラーク領域)を表すパラメータを求めることができる。そのために、内壁形態解析部272は、例えば、内壁領域における隆起箇所(プラーク領域)を特定する処理と、プラーク領域を除く内壁領域上の複数の点から近似図形(例えば近似円又は近似楕円)を求める処理と、近似図形とプラーク領域とを比較する処理とを実行することができる。このような処理により、例えば、プラーク領域のサイズと近似図形のサイズとの比又は差、近似図形(又は内壁領域)を外縁とする領域のサイズ(面積)とプラーク領域のサイズ(面積)との比又は差、プラーク領域のサイズ(面積、周長)などが得られる。互いに近接する複数の断面について上記処理が適用された場合には、プラーク領域の面積と近似図形の面積との比又は差、近似図形(又は内壁領域)を外縁とする領域の体積とプラーク領域の体積との比又は差、プラーク領域の体積などが得られる。
内壁形態解析部272は、血管瘤に相当する画像領域(血管瘤領域)を表すパラメータを求めることができる。そのために、内壁形態解析部272は、例えば、内壁領域における膨張箇所(血管瘤領域)を特定する処理と、血管瘤領域を除く内壁領域上の複数の点から近似図形(例えば近似円又は近似楕円)を求める処理と、近似図形と血管瘤領域とを比較する処理とを実行することができる。このような処理により、例えば、血管瘤領域のサイズと近似図形のサイズとの比又は差、近似図形(又は内壁領域)を外縁とする領域のサイズ(面積)と血管瘤領域のサイズ(面積)との比又は差、血管瘤領域のサイズ(面積、周長)などが得られる。互いに近接する複数の断面について上記処理が適用された場合には、血管瘤領域の面積と近似図形の面積との比又は差、近似図形(又は内壁領域)を外縁とする領域の体積と血管瘤領域の体積との比又は差、血管瘤領域の体積などが得られる。
前述したように、内壁領域特定部262は、血管内壁の形態の時間変化を表す複数の内壁領域を特定することができる。この場合、内壁形態解析部272は、これら内壁領域に基づいて血管内壁の形態の時間変化を求めることができる。血管内壁の形態の時間変化は、例えば、内壁形状の時間変化及び内壁サイズの時間変化のいずれか一方又は双方を含んでいてよい。内壁形状及び内壁サイズは、前述したパラメータのいずれかであってよい。
〈血管形態解析部273〉
血管形態解析部273は、外壁領域特定部261により特定された外壁領域と、内壁領域特定部262により特定された内壁領域とに基づいて、血管の形態解析を行う。血管の形態は、例えば、血管壁の厚さ、形状及びサイズのうちのいずれか1つ、いずれか2つ又は全てを含む。
血管形態解析部273は、例えば、外壁形態解析部271と同じ要領で外壁領域の近似図形(外壁近似図形)を求めることができ、内壁形態解析部272と同じ要領で内壁領域の近似図形(内壁近似図形)を求めることができる。また、血管形態解析部273は、外壁形態解析部271と同様の外壁形態解析を行うことでき、内壁形態解析部272と同様の内壁形態解析を行うことができる。
また、血管形態解析部273は、外壁近似図形と内壁近似図形との間の距離を求めることができる。外壁近似図形と内壁近似図形との間の距離は、例えば、外壁近似図形の中心(又は重心)を通過する直線上において定義される。或いは、外壁近似図形と内壁近似図形との間の距離は、例えば、内壁近似図形の中心(又は重心)を通過する直線上において定義される。この距離は、対応する直線の方向における血管壁の厚さを表す。また、このような距離を複数の方向について求めることで、外壁近似図形と内壁近似図形との間の距離の分布が得られる。この距離分布は、血管壁の厚さ分布に相当する。
また、血管形態解析部273は、外壁近似図形を外縁(外周)とし、且つ、内壁近似図形を内縁(内周)とする略円環状(略アニュラス状)の画像領域に関するパラメータを求めることができる。このパラメータの例として、面積、外周と内周との間の距離の分布、外周形状と内周形状との間の差、外周長と内周長との間の比又は差などがある。
外壁近似図形を求めない場合、外壁領域を用いて上記と同様の処理を実行することができる。内壁近似図形を求めない場合、内壁領域を用いて上記と同様の処理を実行することができる。
前述したように、外壁領域特定部261は、血管外壁の形態の時間変化を表す複数の外壁領域を特定することができ、更に、内壁領域特定部262は、血管内壁の形態の時間変化を表す複数の内壁領域を特定することができる。この場合、血管形態解析部273は、複数の外壁領域と複数の内壁領域とに基づいて血管の形態の時間変化を求めることが可能である。血管の形態の時間変化は、例えば、血管壁の厚さの時間変化、形状の時間変化及びサイズの時間変化のうちのいずれか1つ、いずれか2つ又は全てを含んでいてよい。血管壁厚、血管壁形状及び血管壁サイズは、前述したパラメータのいずれかであってよい。
〈異常判定部280〉
異常判定部280は、外壁領域特定部261により特定された外壁領域及び内壁領域特定部262により特定された内壁領域のいずれか一方又は双方に基づいて異常判定を行う。
例えば、異常判定部280は、外壁形態解析部271と同じ要領で前述の外壁形態パラメータのいずれかを求めることができ、内壁形態解析部272と同じ要領で前述の内壁形態パラメータのいずれかを求めることができる。或いは、異常判定部280は、外壁形態解析部271により求められた外壁形態パラメータを用いることや、内壁形態解析部272により求められた内壁形態パラメータを用いることができる。異常判定部280は、外壁形態パラメータ及び内壁形態パラメータのいずれか一方又は双方に基づいて、血管の異常判定を行うことができる。異常判定の例として、異常の有無、異常の程度などがある。
異常判定は、既定の閾値との比較を含んでいてよい。例えば、血管壁厚を閾値と比較することで、プラークの有無や程度、動脈硬化の有無や程度、血管瘤の有無や程度を判定することが可能である。
異常判定の他の例として、血管外壁の形状に基づいて、血管瘤の有無や程度を判定することができる。また、血管内壁の形状に基づいて、プラークの有無や程度、動脈硬化の有無や程度、血管瘤の有無や程度を判定することができる。
更に他の例として、単一の血管の2以上の位置について取得された2以上のパラメータ値を比較することで異常判定を行うことが可能である。また、異なる2以上の血管について取得された2以上のパラメータ値を比較することで異常判定を行うことも可能である。
前述したように、外壁領域特定部261は、血管外壁の形態の時間変化を表す複数の外壁領域を特定することができ、更に、内壁領域特定部262は、血管内壁の形態の時間変化を表す複数の内壁領域を特定することができる。この場合、異常判定部280は、複数の外壁領域及び複数の内壁領域のいずれか一方又は双方に基づいて異常判定を行うことができる。例えば、異常判定部280は、血管壁厚の時間変化、血管壁形状の時間変化、及び血管壁サイズの時間変化のうちのいずれか1つ、いずれか2つ又は全てに基づいて、異常判定を行うことができる。
異常判定の基準は、臨床データ等から統計的に得られた基準を含んでいてよい。また、異常判定の基準は、当該被検者(当該被検眼)について過去に得られたデータから得られた基準を含んでいてよい。例えば、経過観察などにおいて、過去に得られたデータからパラメータのトレンドを推定し、このトレンドと新たに得られたデータとを比較することができる。また、過去に得られたデータのうちのいずれか(ベースラインデータ)と新たに得られたデータとを比較することもできる。
更に、異常判定部280は、血流情報生成部232により生成された血流情報(血流速度、血流量等)に基づいて異常判定を行うことができる。
血流異常判定は、既定の閾値との比較を含んでいてよい。例えば、血流情報を閾値と比較することが可能である。また、単一の血管の2以上の位置について取得された2以上の血流情報を比較することによって血流異常判定を行うことも可能である。また、異なる2以上の血管について取得された2以上の血流情報を比較することによって血流異常判定を行うことも可能である。
また、異常判定部280は、血流情報の時間変化に基づいて血流異常判定を行うことができる。
血流異常判定の基準は、臨床データ等から統計的に得られた基準を含んでいてよい。また、血流異常判定の基準は、当該被検者(当該被検眼)について過去に得られたデータから得られた基準を含んでいてよい。例えば、経過観察などにおいて、過去に得られたデータから血流情報のトレンドを推定し、このトレンドと新たに得られた血流情報とを比較することができる。また、過去に得られたデータのうちのいずれか(ベースラインデータ)と新たに得られた血流情報とを比較することもできる。
〈ユーザーインターフェイス240〉
ユーザーインターフェイス(UI)240は、表示部241と操作部242とを含む。表示部241は、図1に示す表示装置3や他の表示デバイスを含む。操作部242は、任意の操作デバイスを含む。ユーザーインターフェイス240は、例えばタッチパネルのように、表示機能と操作機能の双方を備えたデバイスを含んでいてもよい。
〈データ入出力部290〉
データ入出力部290は、血管解析装置1からのデータの出力と、血管解析装置1へのデータの入力とを行う。
データ入出力部290は、例えば、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。通信部290は、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置は、例えば、任意の眼科装置である。また、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなど、任意の情報処理装置であってもよい。
データ入出力部290は、記録媒体から情報を読み取る装置(データリーダ)、記録媒体に情報を書き込む装置(データライタ)などを含んでいてもよい。
〈動作〉
血管解析装置1の動作のいくつかの例を説明する。なお、患者IDの入力、アライメント、フォーカス調整、光路長調整などの準備的処理は既に行われたとする。また、以下に説明する動作例のうちのいずれか2つ以上を組み合わせることができる。
〈第1の動作例〉
図7に示すフローチャートは、血管壁の形態を評価するための血管解析装置1の動作の一例を示す。解析の対象となる血管(注目血管)と、解析の対象となる断面(注目断面)とは、既に決定されているものとする。注目断面は、注目血管に交差するように設定されている。よって、注目断面のOCT画像には、注目血管の断面が描出される。
(S1:注目血管の注目断面を繰り返しスキャンする)
まず、血管解析装置1は、OCTユニット100、光スキャナ44等を用いて、注目血管の注目断面を繰り返しスキャンする。それにより、注目断面に対応する複数のOCTデータ(2次元データセット)が得られる。
(S2:2次元断層像を形成する)
断層像形成部221は、ステップS1で取得された2次元データセットから、注目断面における組織構造を表す2次元断層像を形成する。この処理では、2次元データセットに含まれる2次元データ群のうちの少なくとも1つの2次元データが用いられる。
ここで、断層像形成部221は、2次元データセットに含まれる2次元データ群のうちの複数の2次元データから複数の2次元断層像を形成することができる。これにより得られた複数の2次元断層像を位相画像形成部222に提供し、ステップS3で用いることができる。
(S3:2次元位相画像を形成する)
位相画像形成部222は、ステップS1で取得された2次元データセットから、注目断面における位相差の時系列変化を表す2次元位相画像を形成する。この処理では、2次元データセットに含まれる2次元データ群のうちの複数の2次元データが用いられる。
(S4:注目血管の外壁領域を特定する)
外壁領域特定部261は、ステップS2で形成された2次元断層像を解析することで、注目血管の外壁の少なくとも一部に相当する外壁領域を特定する。
ステップS2で複数の2次元断層像が得られた場合、外壁領域特定部261は、これら2次元断層像を合成(加算平均)し、それにより得られた低ノイズの2次元断層像から外壁領域を特定することができる。
(S5:注目血管の内壁領域を特定する)
内壁領域特定部262は、ステップS3で形成された2次元位相画像を解析することで、注目血管の内壁の少なくとも一部に相当する内壁領域を特定する。
(S6:異常判定を行う)
異常判定部280は、ステップS4で特定された外壁領域及びステップS5で特定された内壁領域のいずれか一方又は双方に基づいて、注目血管の血管壁についての異常判定を行う。
(S7:判定結果を提示する)
主制御部211は、ステップS6で行われた異常判定の結果を表示部241に表示させる。
更に、主制御部211は、ステップS2で得られた2次元断層像及びステップS3で得られた2次元位相画像のいずれか一方又は双方を表示部241に表示させることができる。複数の2次元断層像が得られた場合、主制御部211は、複数の2次元断層像を切り替え表示又は動画表示させることができる。
2次元断層像の表示及び/又は2次元位相画像の表示に加えて、主制御部211は、ステップS4で特定された外壁領域及びステップS5で特定された内壁領域のいずれか一方又は双方を強調表示することができる。外壁領域の強調表示は、例えば、外壁領域に対応する画素を所定の色で表示することにより行われる。同様に、内壁領域の強調表示は、例えば、内壁領域に対応する画素を所定の色で表示することにより行われる。
また、主制御部211は、ステップS6で異常が検出された箇所を強調表示することができる。例えば、主制御部211は、異常が検出された箇所に対応する画素を所定の色で表示することができる。また、ステップS6で異常の程度が検出された場合、主制御部211は、異常の程度に応じた色で異常箇所を表示することができる。
本動作例によれば、ユーザーは、注目血管の血管壁に異常があるか否かを把握することができる。また、ユーザーは、注目血管の血管壁の異常の程度を把握することができる。また、ユーザーは、異常箇所を把握することが可能である。
〈第2の動作例〉
図8に示すフローチャートは、血管壁の動きを評価するための血管解析装置1の動作の一例を示す。解析の対象となる血管(注目血管)と、解析の対象となる断面(注目断面)とは、既に決定されているものとする。
(S11:注目血管の注目断面を繰り返しスキャンする)
まず、血管解析装置1は、OCTユニット100、光スキャナ44等を用いて、注目血管の注目断面を繰り返しスキャンして2次元データセットを取得する。
(S12:複数の2次元断層像を形成する)
断層像形成部221は、ステップS11で取得された2次元データセットから、互いに異なる複数の時間にそれぞれ対応する複数の2次元断層像を形成する。これにより得られた複数の2次元断層像を位相画像形成部222に提供し、ステップS13で用いることができる。
(S13:複数の2次元位相画像を形成する)
位相画像形成部222は、ステップS11で取得された2次元データセットから、互いに異なる複数の時間にそれぞれ対応する複数の2次元位相画像を形成する。
(S14:各2次元断層像から外壁領域を特定する)
外壁領域特定部261は、ステップS12で形成された複数の2次元断層像を解析して、上記複数の時間にそれぞれ対応する複数の外壁領域を特定する。すなわち、外壁領域特定部261は、ステップS12で形成された複数の2次元断層像のそれぞれを解析することで、当該2次元断層像中の外壁領域を特定する。
(S15:各2次元位相画像から内壁領域を特定する)
内壁領域特定部262は、ステップS13で形成された複数の2次元位相画像を解析して、上記複数の時間にそれぞれ対応する複数の内壁領域を特定する。すなわち、外壁領域特定部261は、ステップS13で形成された複数の2次元位相画像のそれぞれを解析することで、当該2次元位相画像中の内壁領域を特定する。
(S16:血管壁の形態の時間変化を求める)
データ処理部230は、ステップS14で特定された複数の外壁領域及びステップS15で特定された複数の内壁領域のいずれか一方又は双方から、血管壁の形態の時間変化を求める。
例えば、外壁形態解析部271は、ステップS14で特定された複数の外壁領域に基づいて注目血管の外壁の形態の時間変化を求めることができる。また、内壁形態解析部272は、ステップS15で特定された複数の内壁領域に基づいて注目血管の内壁の形態の時間変化を求めることができる。また、血管形態解析部273は、ステップS14で特定された複数の外壁領域及びステップS15で特定された複数の内壁領域の双方に基づいて、注目血管(その血管壁)の形態の時間変化を求めることができる。
(S17:異常判定を行う)
異常判定部280は、ステップS16で求められた外壁形態の時間変化、内壁形態の時間変化、及び血管壁形態の時間変化のうちのいずれか1つ、いずれか2つ、又は全てに基づいて、注目血管の血管壁についての異常判定を行う。
(S18:判定結果を提示する)
主制御部211は、ステップS17で行われた異常判定の結果を表示部241に表示させる。異常判定結果の表示態様は、第1の動作例と同様であってよい。
本動作例によれば、ユーザーは、注目血管の血管壁(外壁、内壁)の動きに異常があるか否かを把握することができる。また、ユーザーは、注目血管の血管壁の動きの異常の程度を把握することができる。また、ユーザーは、異常箇所を把握することが可能である。
〈第3の動作例〉
図9に示すフローチャートは、複数の断面について血管壁の評価を行うための血管解析装置1の動作の一例を示す。
(S21:複数の断面を設定する)
まず、断面設定部237は、眼底Efに対して複数の断面を設定する。複数の断面のそれぞれ(注目断面)は、少なくとも1つの血管(注目血管)に交差している。
典型的には、複数の注目断面には順序が付与される。ステップS22の反復的OCTスキャンは、この順序にしたがって複数の注目断面に対して順次に適用される。K個の注目断面が設定されたとして以下の説明を行う(Kは、2以上の整数)。
(S22:断面を繰り返しスキャンする)
血管解析装置1は、OCTユニット100、光スキャナ44等を用いて、第1番目の注目断面を繰り返しスキャンして2次元データセットを取得する。
(S23:全ての断面をスキャンしたか?)
ステップS22で第k番目の注目断面を繰り返しスキャンしたとする(k=1~K)。k=1~K-1のいずれかである場合(S23:No)、処理はステップS22に戻る。k=Kである場合(S23:Yes)、処理はステップS24に移行する。
(S24:各断面の2次元断層像を形成する)
断層像形成部221は、第k番目の注目断面についてステップS22で取得された2次元データセットから2次元断層像を形成する。これにより、ステップS21で設定されたK個の注目断面のそれぞれについて2次元断層像が得られる。
(S25:各断面の2次元位相画像を形成する)
位相画像形成部222は、第k番目の注目断面についてステップS22で取得された2次元データセットから2次元位相画像を形成する。これにより、ステップS21で設定されたK個の注目断面のそれぞれについて2次元位相画像が得られる。
(S26:各断面における外壁領域を特定する)
外壁領域特定部261は、ステップS24でk番目の注目断面について得られた2次元断層像を解析して、k番目の注目断面に描出されている注目血管の外壁に相当する外壁領域を特定する。これにより、ステップS21で設定されたK個の注目断面のそれぞれについて外壁領域が得られる。
(S27:各断面における内壁領域を特定する)
内壁領域特定部262は、ステップS25でk番目の注目断面について得られた2次元位相画像を解析して、k番目の注目断面に描出されている注目血管の内壁に相当する内壁領域を特定する。これにより、ステップS21で設定されたK個の注目断面のそれぞれについて内壁領域が得られる。
(S28:各断面について異常判定を行う)
異常判定部280は、第k番目の注目断面についてステップS26で特定された外壁領域及びステップS27で特定された内壁領域のいずれか一方又は双方に基づいて、k番目の注目断面に対応する注目血管の血管壁についての異常判定を行う。これにより、ステップS21で設定されたK個の注目断面のそれぞれについて、対応する注目血管の異常判定が実行される。
(S29:複数の断面についての判定結果を提示する)
主制御部211は、ステップS28で行われた異常判定の結果を表示部241に表示させる。異常判定結果の表示態様は、第1の動作例と同様であってよい。
本動作例において、主制御部211は、ステップS21で設定されたK個の注目断面について取得されたK個の判定結果を同時に表示することができる。例えば、主制御部211は、K個の判定結果を切り替え表示又は並列表示することができる。
主制御部211は、眼底Efの正面画像を表示させ、且つ、K個の判定結果を正面画像に重ねて表示させることができる。眼底Efの正面画像は、例えば、事前に取得され、又は本動作例の任意の段階で取得される。
本動作例によれば、ユーザーは、注目血管に異常があるか否かを把握することができる。また、ユーザーは、注目血管の血管壁の異常の程度を把握することができる。また、ユーザーは、異常箇所を把握することが可能である。また、ユーザーは、眼底Efの複数の箇所に関する異常判定結果を把握することができる。
〈第4の動作例〉
図10に示すフローチャートは、血流動態に異常が有るときに血管壁の形態評価を行うための血管解析装置1の動作の一例を示す。解析の対象となる血管(注目血管)と、解析の対象となる断面(注目断面)とは、既に決定されているものとする。
(S31:注目血管の注目断面を繰り返しスキャンする)
血管解析装置1は、OCTユニット100、光スキャナ44等を用いて、注目血管の注目断面を繰り返しスキャンして2次元データセットを取得する。
(S32:注目血管の補足断面をスキャンする)
血管解析装置1は、OCTユニット100、光スキャナ44等を用いて、注目血管に交差する2以上の補足断面のそれぞれにOCTスキャンを適用することで、2以上の補足断面にそれぞれ対応する2以上の2次元データを取得する。
2以上の補足断面の1つが注目断面である場合、ステップS32では1以上の補足断面(注目断面以外の補足断面)に対してOCTスキャンが適用される。
補足断面のOCTスキャンの後に注目断面のOCTスキャンを行うようにしてもよい。
(S33:補足断面の2次元断層像を形成する)
断層像形成部221は、ステップS32で取得された各補足断面の2次元データセットから、この補足断面における組織構造を表す2次元断層像を形成する。これにより、2以上の補足断面のそれぞれに対応する2次元断層像が得られる。
(S34:注目断面の2次元位相画像を形成する)
位相画像形成部222は、ステップS31で取得された2次元データセットから、注目断面における位相差の時系列変化を表す2次元位相画像を形成する。
(S35:注目血管の傾きを推定する)
傾き推定部233は、ステップS33で形成された2以上の補足断面に対応する2以上の2次元断層像から、注目断面における注目血管の傾きの推定値を求める。
(S36:注目血管の血流情報を生成する)
血流速度算出部234は、ステップS34で形成された2次元位相画像とステップS35で求められた傾き推定値に基づいて、注目血管内を流れる血液の注目断面における速度を算出する。
また、血流量算出部236は、血流速度算出部234により算出された血流速度と、血管径算出部235により算出された注目断面における注目血管の径とに基づいて、注目血管内を流れる血液の注目断面における流量を算出することができる。本例が適用される場合、ここまでの任意の段階で、ステップS31のOCTスキャンで取得された2次元データから注目断面の2次元断層像が形成される。(血管領域特定部231及び)血管径算出部235は、この2次元断層像から、注目断面における注目血管の径を算出する。
(S37:血流の異常判定を行う)
異常判定部280は、ステップS36で取得された血流情報に基づいて異常判定を行う。
(S38:血流の異常有り?)
ステップS37において異常有りと判定された場合(S38:Yes)、処理はステップS39に移行する。
他方、ステップS37において異常無しと判定された場合(S38:No)、処理はステップS43に移行する。この場合、ステップS43において、血流異常が検出されなかったことを示す情報が提示される。
(S39:注目断面の2次元断層像を形成する)
ステップS37において異常有りと判定された場合(S38:Yes)、断層像形成部221は、ステップS31で取得された2次元データセットから、注目断面における組織構造を表す2次元断層像を形成する。
(S40:注目血管の外壁領域を特定する)
外壁領域特定部261は、ステップS39で形成された2次元断層像を解析することで、注目血管の外壁の少なくとも一部に相当する外壁領域を特定する。
(S41:注目血管の内壁領域を特定する)
内壁領域特定部262は、ステップS34で形成された2次元位相画像を解析することで、注目血管の内壁の少なくとも一部に相当する内壁領域を特定する。
(S42:血管壁の異常判定を行う)
異常判定部280は、ステップS40で特定された外壁領域及びステップS41で特定された内壁領域のいずれか一方又は双方に基づいて、注目血管の血管壁についての異常判定を行う。
(S43:判定結果を提示する)
主制御部211は、ステップS38で行われた血流の異常判定の結果と、ステップS42で行われた血管壁の異常判定の結果とを、表示部241に表示させる。
本動作例によれば、ユーザーは、注目血管の血管壁に異常があるか否かを把握することができる。また、ユーザーは、注目血管の血管壁の異常の程度を把握することができる。また、ユーザーは、血管壁の異常箇所を把握することが可能である。
更に、本動作例によれば、ユーザーは、注目血管の血流動態に異常があるか否かを把握することができる。また、ユーザーは、注目血管の血流動態の異常の程度を把握することができる。
加えて、本動作例は、注目血管の血流動態に異常が発見されたときに、この注目血管の血管壁の異常判定を行うように構成されているので、血流動態(機能)と血管壁(構造)とを総合的に評価することが可能である。
〈第5の動作例〉
図11に示すフローチャートは、血管壁の形態に異常が有るときに血流動態の評価を行うための血管解析装置1の動作の一例を示す。解析の対象となる血管(注目血管)と、解析の対象となる断面(注目断面)とは、既に決定されているものとする。
(S51:注目血管の注目断面を繰り返しスキャンする)
血管解析装置1は、OCTユニット100、光スキャナ44等を用いて、注目血管の注目断面を繰り返しスキャンして2次元データセットを取得する。
(S52:注目断面の2次元断層像を形成する)
断層像形成部221は、ステップS51で取得された2次元データセットから、注目断面における組織構造を表す2次元断層像を形成する。
(S53:注目断面の2次元位相画像を形成する)
位相画像形成部222は、ステップS51で取得された2次元データセットから、注目断面における位相差の時系列変化を表す2次元位相画像を形成する。
(S54:注目血管の外壁領域を特定する)
外壁領域特定部261は、ステップS52で形成された2次元断層像を解析することで、注目血管の外壁の少なくとも一部に相当する外壁領域を特定する。
(S55:注目血管の内壁領域を特定する)
内壁領域特定部262は、ステップS53で形成された2次元位相画像を解析することで、注目血管の内壁の少なくとも一部に相当する内壁領域を特定する。
(S56:血管壁の異常判定を行う)
異常判定部280は、ステップS54で特定された外壁領域及びステップS55で特定された内壁領域のいずれか一方又は双方に基づいて、注目血管の血管壁についての異常判定を行う。
(S57:血管壁の異常有り?)
ステップS56において異常有りと判定された場合(S57:Yes)、処理はステップS58に移行する。
他方、ステップS56において異常無しと判定された場合(S57:No)、処理はステップS63に移行する。この場合、ステップS63において、血管壁の異常が検出されなかったことを示す情報が提示される。
(S58:注目血管の補足断面をスキャンする)
ステップS56において異常有りと判定された場合(S57:Yes)、血管解析装置1は、OCTユニット100、光スキャナ44等を用いて、注目血管に交差する2以上の補足断面のそれぞれにOCTスキャンを適用することで、2以上の補足断面にそれぞれ対応する2以上の2次元データを取得する。
2以上の補足断面の1つが注目断面である場合、ステップS58では1以上の補足断面(注目断面以外の補足断面)に対してOCTスキャンが適用される。
(S59:補足断面の2次元断層像を形成する)
断層像形成部221は、ステップS58で取得された各補足断面の2次元データセットから、この補足断面における組織構造を表す2次元断層像を形成する。これにより、2以上の補足断面のそれぞれに対応する2次元断層像が得られる。
(S60:注目血管の傾きを推定する)
傾き推定部233は、ステップS59で形成された2以上の補足断面に対応する2以上の2次元断層像から、注目断面における注目血管の傾きの推定値を求める。
(S61:注目血管の血流情報を生成する)
血流速度算出部234は、ステップS53で形成された2次元位相画像とステップS60で求められた傾き推定値に基づいて、注目血管内を流れる血液の注目断面における速度を算出する。
また、血流量算出部236は、血流速度算出部234により算出された血流速度と、血管径算出部235により算出された注目断面における注目血管の径とに基づいて、注目血管内を流れる血液の注目断面における流量を算出することができる。
(S62:血流の異常判定を行う)
異常判定部280は、ステップS61で取得された血流情報に基づいて異常判定を行う。
(S63:判定結果を提示する)
主制御部211は、ステップS57で行われた血流の異常判定の結果と、ステップS62で行われた血管壁の異常判定の結果とを、表示部241に表示させる。
本動作例によれば、ユーザーは、注目血管の血管壁に異常があるか否かを把握することができる。また、ユーザーは、注目血管の血管壁の異常の程度を把握することができる。また、ユーザーは、血管壁の異常箇所を把握することが可能である。
更に、本動作例によれば、ユーザーは、注目血管の血流動態に異常があるか否かを把握することができる。また、ユーザーは、注目血管の血流動態の異常の程度を把握することができる。
加えて、本動作例は、注目血管の血管壁に異常が発見されたときに、この注目血管の血流動態の異常判定を行うように構成されているので、血流動態(機能)と血管壁(構造)とを総合的に評価することが可能である。
〈作用・効果〉
例示的な実施形態に係る血管解析装置のいくつかの作用及びいくつかの効果について説明する。
例示的な実施形態の血管解析装置(1)は、スキャン部と、断層像形成部221と、位相画像形成部と、外壁領域特定部261と、内壁領域特定部とを含む。
スキャン部は、生体の血管に交差する第1断面に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを繰り返し適用して2次元データセットを取得する。本実施形態では、OCTユニット100と眼底カメラユニット2内の測定アームとを含む要素群が、このスキャン部の例に相当する。
断層像形成部は、スキャン部により取得された2次元データセットに含まれる少なくとも1つの2次元データから、第1断面における組織構造を表す2次元断層像を形成する。本実施形態の断層像形成部221は、この断層像形成部の例である。
位相画像形成部は、スキャン部により取得された2次元データセットに含まれる複数の2次元データから、第1断面における位相差の時系列変化を表す2次元位相画像を形成する。本実施形態の位相画像形成部222は、この位相画像形成部の例である。
外壁領域特定部は、断層像形成部により形成された2次元断層像を解析して、当該血管の外壁の少なくとも一部に相当する外壁領域を特定する。本実施形態の外壁領域特定部261は、この外壁領域特定部の例である。
内壁領域特定部は、位相画像形成部により形成された2次元位相画像を解析して、当該血管の内壁の少なくとも一部に相当する内壁領域を特定する。本実施形態の位相画像形成部222は、この位相画像形成部の例である。
このような実施形態によれば、血流計測において取得される2次元位相画像を用いて血管内壁を特定するように構成されているので、OCT血管造影(OCTアンジオグラフィ)で得られる画像から血管内壁を特定する従来技術と比較して、血管内壁の状態をより高い精度で把握することが可能である。これにより、血管の局所的、微細的な状態を高い精度で評価することが可能となる。
例示的な実施形態の血管解析装置(1)は、外壁領域及び内壁領域の少なくとも一方に基づいて異常判定を行う第1判定部を更に含んでいてよい。本実施形態の異常判定部280は、この第1判定部の例である。
例示的な実施形態において、第1判定部は、外壁領域と内壁領域との間の距離の分布に基づいて異常判定を行うように構成されていてよい。
例示的な実施形態において、第1判定部は、外壁領域の形状と内壁領域の形状とに基づいて異常判定を行うように構成されていてよい。
このような実施形態によれば、血管壁厚の異常や血管壁形状の異常を高い精度で評価することが可能となる。
例示的な実施形態において、断層像形成部は、スキャン部により取得された2次元データセットから、互いに異なる複数の時間にそれぞれ対応する複数の2次元断層像を形成するように構成されていてよい。更に、外壁領域特定部は、断層像形成部により形成された複数の2次元断層像を解析して、当該複数の時間にそれぞれ対応する複数の外壁領域を特定するように構成されていてよい。
更に、例示的な実施形態の血管解析装置(1)は、外壁領域特定部により特定された複数の外壁領域に基づいて当該血管の外壁の形態の時間変化を求めるように構成されていてよい。
このような実施形態によれば、血管外壁の形態を示すパラメータの時間変化を高い精度で取得することができる。これにより、血管外壁の動態を高い精度で把握、検出、解析することが可能になる。
例示的な実施形態において、位相画像形成部は、スキャン部により取得された2次元データセットから、互いに異なる複数の時間にそれぞれ対応する複数の2次元位相画像を形成するように構成されていてよい。更に、内壁領域特定部は、位相画像形成部により形成された複数の2次元位相画像を解析して、当該複数の時間にそれぞれ対応する複数の内壁領域を特定するように構成されていてよい。
更に、例示的な実施形態の血管解析装置(1)は、内壁領域特定部により特定された複数の内壁領域に基づいて当該血管の内壁の形態の時間変化を求めるように構成されていてよい。
このような実施形態によれば、血管内壁の形態を示すパラメータの時間変化を高い精度で取得することができる。これにより、血管内壁の動態を高い精度で把握、検出、解析することが可能になる。
例示的な実施形態において、断層像形成部は、スキャン部により取得された2次元データセットから、互いに異なる複数の時間にそれぞれ対応する複数の2次元断層像を形成するように構成されていてよい。更に、外壁領域特定部は、断層像形成部により取得された複数の2次元断層像を解析して、当該複数の時間にそれぞれ対応する複数の外壁領域を特定するように構成されていてよい。また、位相画像形成部は、スキャン部により取得された2次元データセットから、当該複数の時間にそれぞれ対応する複数の2次元位相画像を形成するように構成されていてよい。更に、内壁領域特定部は、位相画像形成部により取得された複数の2次元位相画像を解析して、当該複数の時間にそれぞれ対応する複数の内壁領域を特定するように構成されていてよい。加えて、例示的な実施形態の血管解析装置(1)は、血管形態解析部を更に含んでいてよい。血管形態解析部は、外壁領域特定部により特定された複数の外壁領域と内壁領域特定部により特定された複数の内壁領域とに基づいて、当該血管の形態の時間変化を求めるように構成される。本実施形態の血管形態解析部273は、この血管形態解析部の例である。
このような実施形態によれば、血管外壁の形態を示すパラメータの時間変化を高い精度で取得することができ、且つ、血管内壁の形態を示すパラメータの時間変化を高い精度で取得することができる。これにより、血管外壁の動態及び血管内壁の動態の双方を高い精度で把握、検出、解析することが可能である。したがって、血管壁の動態を高い精度で把握、検出、解析することが可能である。
例示的な実施形態において、スキャン部は、血管に交差する複数の第1断面のそれぞれにOCTスキャンを繰り返し適用することで、複数の第1断面にそれぞれ対応する複数の2次元データセットを取得するように構成されていてよい。断層像形成部は、スキャン部により取得された複数の2次元データセットのそれぞれについて、当該2次元データセットに含まれる少なくとも1つの2次元データから、対応する断面における組織構造を表す2次元断層像を形成するように構成されていてよい。これにより、複数の第1断面にそれぞれ対応する複数の2次元断層像が得られる。位相画像形成部は、スキャン部により取得された複数の2次元データセットのそれぞれについて、当該2次元データセットに含まれる複数の2次元データから、対応する断面における位相差の時系列変化を表す2次元位相画像を形成するように構成されていてよい。これにより、複数の第1断面にそれぞれ対応する複数の2次元位相画像が得られる。外壁領域特定部は、断層像形成部により取得された複数の2次元断層像のそれぞれについて、当該2次元断層像を解析して当該血管の外壁の少なくとも一部に相当する外壁領域を特定するように構成されていてよい。これにより、複数の第1断面にそれぞれ対応する複数の外壁領域が取得される。内壁領域特定部は、位相画像形成部により取得された複数の2次元位相画像のそれぞれについて、当該2次元位相画像を解析して当該血管の内壁の少なくとも一部に相当する内壁領域を特定することができる。これにより、複数の第1断面にそれぞれ対応する複数の内壁領域が得られる。
このような実施形態によれば、生体の複数の箇所における血管壁の形態を取得することができるので、血管壁形態の分布を得ることや、広域の異常判定を行うことが可能になる。
例示的な実施形態において、スキャン部は、当該血管に交差する2以上の第2断面のそれぞれにOCTスキャンを適用することで、2以上の第2断面にそれぞれ対応する2以上の2次元データを取得するように構成されていてよい。断層像形成部は、2以上の2次元データのそれぞれから2次元断層像を形成するように構成されていてよい。これにより、2以上の第2断面にそれぞれ対応する2以上の2次元断層像が得られる。例示的な実施形態の血管解析装置(1)は、血流情報取得部を更に含んでいてよい。血流情報取得部は、断層像形成部により取得された2以上の2次元断層像を解析して、第1断面における当該血管の傾きの推定値を求め、少なくとも傾きの推定値と2次元位相画像とに基づいて血流情報を取得するように構成される。本実施形態のデータ処理部230(血管領域特定部231、血流情報生成部232)は、この血流情報取得部の例である。
例示的な実施形態の血管解析装置(1)は、第2判定部と第1制御部とを更に含んでいてよい。
第2判定部は、血流情報取得部により取得された血流情報に基づいて異常判定を行うように構成される。本実施形態の異常判定部280は、この第2判定部の例である。
第1制御部は、第2判定部により異常であると判定された場合に外壁領域特定部及び内壁領域特定部を動作させるように構成される。本実施形態の主制御部211は、この第1制御部の例である。
例示的な実施形態の血管解析装置(1)は、第1判定部と第2制御部とを更に含んでいてよい。
第1判定部は、外壁領域及び内壁領域の少なくとも一方に基づいて異常判定を行うように構成される。本実施形態の異常判定部280は、この第1判定部の例である。
第2制御部は、第1判定部により異常であると判定された場合に血流情報生成部を動作させるように構成される。本実施形態の主制御部211は、この第2制御部の例である。
このような実施形態によれば、血管壁に関する情報に加え、血流動態に関する情報を取得することができるので、血管の構造的な情報と機能的な情報の双方を考慮した診療が可能になる。
以上に説明した実施形態は、この発明の例示的な態様に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を施すことが可能である。