以下、本発明の実施の形態について、説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
また、本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーと、感光剤と、分子中に酸無水物基を有するシランカップリング剤と、を含む。
本実施形態の感光性樹脂組成物によれば、パターン形成可能な感光性樹脂組成物であって、Si、SiN、Cu、SiO2基板等の異種の無機材料に対する密着性が良好、かつ、その接着強度にも優れる膜を形成することが可能であり、電子部品を構成する回路基板に対する基板密着性を高めることができる。これにより、絶縁信頼性に優れた電子装置の構造を実現できる。
詳細なメカニズムは定かでないが、当該感光性樹脂組成物中の分子中に酸無水物基を有するシランカップリング剤は、銅等の異種の無機材料に対する密着性を向上させる効果があると考えられ、さらには、分子中に酸無水物基を有するシランカップリング剤と、環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーとを組み合わせた場合、低い誘電率を保つことができ、マイグレーションを防止できるので、当該感光性樹脂組成物は環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマー、及び、分子中に酸無水物基を有するシランカップリング剤を組み合わせて有することにより、その密着強度と絶縁信頼性とを飛躍的に向上させることができると推測される。
<環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマー>
本実施形態の感光性樹脂剤組成物は、環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーを含むため、密着性、低誘電性、加工性に優れた硬化膜を得ることができる。
本発明において環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーとは、環状構造(脂環又は芳香環)と炭素-炭素二重結合とを有する環状オレフィン骨格を有するモノマー由来の構造単位を有するポリマーを意味する。環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーは、環状オレフィン単量体以外の単量体から導かれる構造単位を有していてもよい。前記環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーは、環状オレフィン単量体の単独重合体(開環重合体を含む)又は共重合体(開環重合体を含む)である。
前記環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーは、ノルボルネン系モノマー由来の構造単位Aを含むことが好ましい。構造単位Aを有し、ノルボルネン骨格を有することで、より密着性を向上させることができ、また有機絶縁層(硬化膜)における低誘電性をより実現できる。
前記環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーの原料となるノルボルネン系モノマーは、下記式(a-1)で表されることが好ましい。
式(a-1)中、nは、0~2であることが好ましく、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30の有機基であることが好ましい。また、R1~R4のうち、任意の2つが互いに結合して、アルキリデン基、単環又は多環構造を形成してもよい。式(a-1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。有機基は、炭素数1~10であることが好ましく、R1~R4を構成する有機基は、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい。
前記環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーの原料として、上記式(a-1)で表されるノルボルネン系モノマーを用いることにより、密着性を向上させることができ、低誘電性の実現が可能である。
炭素原子数1~10の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基、などが挙げられる。極性基としては、たとえば、水酸基、炭素原子数1~10のアルコキシル基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基、エポキシ基、カルボニルオキシカルボニル基(ジカルボン酸の酸無水物残基)、アルコキシ基、カルボニル基、第三級アミノ基、スルホン基、アクリロイル基、およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ;カルボニルオキシ基としては、例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基などのアルキルカルボニルオキシ基、およびベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などが挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などが挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
上記式(a-1)で表されるモノマーとしては、2-ノルボルネン;5-メチル-2-ノルボルネン、5,5-ジメチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネンなどのアルキル基(C1~C10アルキル基)を有するノルボルネン類;5-エチリデン-2-ノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン、5-メチル-5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基を有するノルボルネン類;5-シアノ-2-ノルボルネンなどのシアノ基を有するノルボルネン類;5-フェニル-2-ノルボルネン、5-フェニル-5-メチル-2-ノルボルネンなどのアリール基を有するノルボルネン類;オクタリン;6-エチル-オクタヒドロナフタレンなどのアルキル基を有する、オクタリン8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-n-プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-n-ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(4-フェニルフェノキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-n-プロポキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-イソプロポキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-n-ブトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-フェノキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン8-メチル-8-(1-ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-(2-ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-(4-フェニルフェノキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン等を挙げることができる。
上記した中でも、ノルボルネン系モノマーとして、2-ノルボルネン;5-メチル-2-ノルボルネン、5,5-ジメチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネンなどのアルキル基(C1~C10アルキル基)を有するノルボルネン類;5-エチリデン-2-ノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン、5-メチル-5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基を有するノルボルネン類;5-シアノ-2-ノルボルネンなどのシアノ基を有するノルボルネン類;5-フェニル-2-ノルボルネン、5-フェニル-5-メチル-2-ノルボルネンなどのアリール基を有するノルボルネン類;オクタリン;6-エチル-オクタヒドロナフタレンなどのアルキル基を有するオクタリンなどが好ましい。
これらのノルボルネン系モノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのノルボルネン系モノマーのうち、二環式オレフィンが好ましく、このうち、ノルボルネンやアルキル基(メチル基、エチル基などのC1~C10アルキル基)を有するノルボルネンなどのノルボルネン類が好ましい。
密着性向上、及び、有機絶縁層(硬化膜)における低誘電性実現の観点から、本実施形態の環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーは、下記の式(A11)で表されるノルボルネン系モノマー由来の構造単位Aを含むことができる。
また、本実施形態の環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーは、下記の式(A12)で表されるノルボルネン系モノマー由来の構造単位Aを含むことができる。本実施形態の環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーは、該ポリマーが、例えば、ノルボルネン系モノマーを開環重合した場合、構成単位(A12)を含みうる。
構造単位式(A11)、式(A12)は、それぞれ、これらの構造単位を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記式(A11)、式(A12)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~30の有機基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~10の有機基である。これらの有機基はカルボキシル基、グリシジル基、オキセタニル基等の官能基を有していてもよい。
また、式(A12)中、nは、例えば、0、1または2であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることがより好ましい。
R1~R4を構成する有機基は、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい。
本実施形態において、式(A11)、(A12)中のR1、R2、R3およびR4は、式(a-1)中のR1~R4に準じたものがあげられるが、R1~R4を構成する有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。
アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、たとえばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、たとえばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、たとえばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
さらに、R1~R4を構成するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基は、1以上の水素原子が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。なかでもアルキル基の1以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されたハロアルキル基が好ましい。R1~R4の少なくともいずれか1つをハロアルキル基とすることで、共重合体を使用して硬化膜を構成した際、この硬化膜の誘電率を低下させることができる。また、ハロアルキルアルコール基とすることで、アルカリ現像液に対する溶解性を適度に調整できるだけでなく、耐熱変色性を向上させることができる。
なお、ポリマーを含んで構成される膜の光透過性を高める観点からは、R1~R4のいずれかが水素であることが好ましく、たとえば、式(A11)、(A12)の構造単位を採用する場合にあっては、R1~R4すべてが水素であることが好ましい。
また、本実施形態の感光性樹脂剤組成物は、無水マレイン酸、マレイミドまたはこれらの誘導体由来の構造単位Bを有する環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーであることが好ましい。構造単位Bを有することで、より加工性を向上させることができる。
上記無水マレイン酸、マレイミドまたはこれらの誘導体由来の構造単位Bは、無水マレイン酸または無水マレイン酸誘導体(無水マレイン酸系モノマー)に由来する構造単位を含むことができる。
上記無水マレイン酸または無水マレイン酸誘導体としては、たとえば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ジメチル無水マレイン酸またはこれらの誘導体が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このように共重合体は、分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物に由来する構造単位を備えることができる。
上記無水マレイン酸または無水マレイン酸誘導体に由来する構造単位は、下記の式(1)で示される構造単位を含むことができる。
上記式(1)中、RX、RYは、それぞれ独立して水素または炭素数1~3の有機基であることが好ましく、それぞれ独立して水素又は炭素数1の有機基であることがより好ましく、RXが水素かつRYが水素又は炭素数1の有機基であることが更に好ましく、RXとRYが水素であることが一層好ましい。
上記無水マレイン酸または無水マレイン酸誘導体に由来する構造単位として、上記(1)で示される構造単位を含むことにより、より加工性を向上させることができる。
本実施形態において、上記式(1)中、RX及びRYを構成する有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。また、アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばシクロプロピル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、たとえばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
前記共重合体は、上記の式(1)で示される構造単位中の酸無水間が開環したエステル化合物由来の構造単位を有することができ、好ましくは、無水マレイン酸の酸無水環が開環したエステル化合物由来の構造単位Cを有することができる。
上記構造単位Cは、たとえば、下記式(B2)により示される構造単位を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(B2)中のRB1は、水素または炭素数1~30の有機基を含むものである。このRB1は、エステル結合、アミド結合、ケトン結合、ウレア結合、ウレタン結合等で結合基を介して結合する有機基であってもよい。
上記一般式(B2)中のRB1を構成する有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基およびヘテロ環基が挙げられる。
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、イソブトキシ基及びt-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
上記一般式(B2)中のRB1としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、及び、アルキニル基からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。これにより、RB1中の結合が開裂することを抑制できる。したがって、共重合体の耐熱性を向上できる。
上記一般式(B2)中、RB1としては、例えば、エステル結合を介して結合する、水素原子及び炭素原子からなる群より選択される1種以上の原子によって形成される脂肪族基であることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましい。
上記無水マレイン酸、マレイミドまたはこれらの誘導体由来の構造単位Bは、マレイミドまたはマレイミド誘導体由来の構造単位を含むことができる。これにより、加工性、耐熱性を高めることができる。
上記マレイミドまたはマレイミド誘導体由来の構造単位は、下記式(8)で表されるマレイミド系モノマーに由来する構造単位を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
R12は、水素原子またはC1~C30の有機基である。R12を構成するC1~C30の有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、もしくはシクロアルキル基等の炭化水素基が挙げられる。アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、たとえばフェニル基、およびナフチル基が挙げられる。アラルキル基としては、たとえばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、たとえばトリル基、キシリル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。なお、R5に含まれる一以上の水素原子が、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素等のハロゲン原子によって置換されていてもよい。
また上記共重合体は、上述の構造単位A~構造単位Cに加えて、その他のエチレン性二重結合を有する化合物に由来する構造単位Dを含んでいてもよい。その他のエチレン性二重結合を有する化合物としては、例えば、スチレン、ヒドロキシスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数2~20のα-オレフィン;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ジエン;アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸等のアクリル酸類;マレイン酸、ジメチルマレイン酸、ジエチルマレイン酸、ジブチルマレイン酸等のマレイン酸類などが挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
本実施形態の環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーにおいて、環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーを100としたとき、ポリマー中の、ノルボルネン系モノマー由来の構造単位Aは、好ましくは30mol%以上であり、より好ましくは、50mol%以上である。上記範囲にすることにより、半導体保護膜として十分な耐熱性を得ることができる。
本実施形態の感光性組成物において、上記環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーの含有量は、当該感光性樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、20質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。このような数値範囲とすることにより、密着性と加工性とのバランスを図ることが可能である。
本実施形態において、感光性樹脂組成物の不揮発成分とは、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。感光性樹脂組成物の不揮発成分全体に対する含有量とは、溶媒を含む場合には、感光性樹脂組成物のうちの溶媒を除く不揮発成分全体に対する含有量を指す。
<感光剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成として、次のような感光剤を含むことができる。これにより、加工性を向上させることができる。感光剤として、光または熱分解性を有するものを用いることができる。これにより、ポジ型感光性樹脂組成物からなる樹脂膜に対して、所定のブリーチング処理を実施することにより、露光・現像後に当該樹脂膜中に残存する感光剤を除去(分解)することができ、それにより、密着性(とくに膜同士の密着性)を高めることができる。ブリーチング処理としては、全面露光や硬化温度よりも低い低温加熱などが挙げられる。
上記感光剤は、たとえばジアゾキノン化合物、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩もしくはスルホニウム・ボレート塩などのオニウム塩、2-ニトロベンジルエステル化合物、N-イミノスルホネート化合物、イミドスルホネート化合物、2,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン化合物、またはジヒドロピリジン化合物を用いることができる。この中でも、感度や溶剤溶解性に優れるジアゾキノン化合物を用いることがとくに好ましい。
本実施形態の感光性樹脂組成物における感光剤の含有量は、特に限定されるものではないが、上記共重合体100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。また、感光性樹脂組成物における感光剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。感光剤の含有量が上記範囲内であることで良好なパターニング性能を発揮することができる。
<カップリング剤>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、官能基として酸無水物を含有するカップリング剤を有する。このような感光性樹脂組成物は、無機材料に対する密着性が良好な樹脂膜の形成を可能にする。これにより、例えば貫通配線や半導体チップに対する密着性が良好な有機絶縁層が得られる。
このような酸無水物含有カップリング剤は、官能基である酸無水物が無機酸化物を溶解させるとともに、陽イオン(金属陽イオン等)と配位結合する。
一方、酸無水物含有カップリング剤に含まれるアルコキシ基は、加水分解して例えばシラノールとなる。このシラノールは、無機材料の表面水酸基と水素結合する。
したがって、これらの結合機構に基づいて、無機材料に対する密着性が良好な感光性樹脂組成物が得られると考えられる。
カップリング剤には、官能基として酸無水物を含有するカップリング剤(以下、省略して「酸無水物含有カップリング剤」ともいう。)が用いられる。
具体的には、アルコキシシリル基を含む化合物が好ましく用いられ、アルコキシシリル基含有アルキルカルボン酸無水物が好ましく用いられる。このようなカップリング剤によれば、無機材料に対する密着性がより良好であり、かつ感度が良好でパターニング性に優れた感光性樹脂組成物が得られる。
アルコキシシリル基を含む化合物の具体例としては、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシシリルプロピルコハク酸無水物、3-ジメチルメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-ジメチルエトキシシリルプロピルコハク酸無水物のようなコハク酸無水物、3-トリメトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物、3-ジメチルメトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物、3-ジメチルエトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物のようなジカルボン酸無水物、3-トリメトキシシリルプロピルフタル酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルフタル酸無水物、3-ジメチルメトキシシリルプロピルフタル酸無水物、3-ジメチルエトキシシリルプロピルフタル酸無水物のようなフタル酸無水物等のアルコキシシリル基含有アルキルカルボン酸無水物が挙げられる。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
これらの中でもコハク酸無水物が好ましく、アルコキシシリル基含有コハク酸無水物がより好ましく用いられ、特に3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物がより好ましく用いられる。かかるカップリング剤によれば、分子長や分子構造が最適化されるため、前述した密着性およびパターニング性がより良好になる。
酸無水物含有カップリング剤の添加量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の固形分全体の0.3~5質量%程度であるのが好ましく、0.5~4.5質量%程度であるのがより好ましく、0.7~4質量%程度であるのがさらに好ましい。酸無水物含有カップリング剤の添加量を前記範囲内に設定することにより、例えば貫通配線や半導体チップのような無機材料に対する密着性が特に良好な有機絶縁層が得られる。これにより、有機絶縁層の絶縁性が長期にわたって維持される等、信頼性の高い半導体装置の実現に寄与する。
なお、酸無水物含有カップリング剤の添加量が前記下限値を下回ると、酸無水物含有カップリング剤の組成等によっては、無機材料に対する密着性が低下するおそれがある。一方、酸無水物含有カップリング剤の添加量が前記上限値を上回ると、酸無水物含有カップリング剤の組成等によっては、感光性樹脂組成物の感光性や機械的特性が低下するおそれがある。
また、このような酸無水物含有カップリング剤に加えて、他のカップリング剤がさらに添加されてもよい。
他のカップリング剤としては、例えば、官能基としてアミノ基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、ビニル基、ウレイド基、スルフィド基等を含むカップリング剤が挙げられる。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
このうち、アミノ基含有カップリング剤としては、例えばビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基含有カップリング剤としては、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アクリル基含有カップリング剤としては、例えばγ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基含有カップリング剤としては、例えば3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ビニル基含有カップリング剤としては、例えばビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレイド基含有カップリング剤としては、例えば3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
スルフィド基含有カップリング剤としては、例えばビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。
その他のカップリング剤の添加量は、特に限定されないが、酸無水物含有カップリング剤の1~200質量%程度であるのが好ましく、3~150質量%程度であるのがより好ましく、5~100質量%程度であるのがさらに好ましい。添加量をこの範囲内に設定することにより、酸無水物含有カップリング剤による前述した作用が損なわれることなく、その他のカップリング剤の添加によって別の作用が追加されることとなる。その結果、双方のカップリング剤によってもたらされる効果の両立を図ることができる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、架橋剤を含むことができる。架橋剤は、上記共重合体と架橋反応できるものであれば、特に限定されない。これにより密着性を高めることができる。
上記架橋剤は、環状エーテル基を有する化合物を含むことができる。
環状エーテル基を有する化合物を含むことにより、露光現像後の後硬化における密着性を向上させることができる。詳細なメカニズムは定かでないが、第1回路基板と第2回路基板とのボンディング工程の前まで、感光性樹脂組成物からなる樹脂膜の硬化反応を抑制できるため、後硬化において硬化反応を十分進めることが可能となり、後硬化時における高い密着性を実現できる、と考えられる。
上記環状エーテル基を有する化合物は、たとえば、エポキシ樹脂またはオキセタン化合物を含むことができる。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は、モノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。エポキシ樹脂としては、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族多官能エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族多官能エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
また、エポキシ樹脂としては、3官能以上の多官能エポキシ樹脂(つまり、1分子中にエポキシ基が3個以上あるもの)を含むことができる。多官能エポキシ樹脂としては、3官能以上20官能以下のものがより好ましい。
多官能エポキシ樹脂としては、例えば、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-([2,3-エポキシプロポキシ]フェニル)エチル]フェニル]プロパン、フェノールノボラック型エポキシ、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、α-2,3-エポキシプロポキシフェニル-ω-ヒドロポリ(n=1~7){2-(2,3-エポキシプロポキシ)ベンジリデン-2,3-エポキシプロポキシフェニレン}、1-クロロ-2,3-エポキシプロパン・ホルムアルデヒド・2,7-ナフタレンジオール重縮合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが用いられる。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いても良い。
オキセタン化合物は、オキセタニル基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1,4-ビス{[(3-エチルー3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、4,4’-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ビフェニル、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)ジフェノエート、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリ[[3-[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピル]シラセスキオキサン]誘導体、オキセタニルシリケート、フェノールノボラック型オキセタン、1,3-ビス[(3-エチルオキセタンー3-イル)メトキシ]ベンゼン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記架橋剤の含有量の下限値は、感光性樹脂組成物の不揮発成分全体に対して、例えば、10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物において、耐熱性や機械的強度を向上させることができる。一方、架橋剤の含有量の上限値は、感光性樹脂組成物の不揮発成分全体に対して、例えば、50質量%以下であり、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。これにより、感光性樹脂組成物において、パターニング性を向上させることができる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、フェノール樹脂を含むことができる。このフェノール樹脂は、モノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。フェノール樹脂を含むことにより、相溶性、加工性を向上できる。詳細なメカニズムは定かでないが、ワニス状の感光性樹脂組成物中において、共重合体と感光剤との相溶性を高めることができる、と考えられる。また、感光剤としてジアゾキノン化合物を用いた場合、これとフェノール化合物がアゾカップリング反応することができるため、現像時の膜減りを低減したり、解像度を向上させることができる。
上記フェノール樹脂は、分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール樹脂を含むことが好ましい。
上記フェノール樹脂として、下記のフェノール樹脂や低分子のフェノール化合物を用いることができる。このフェノール樹脂としては、公知のもののなかから適宜選択することができるが、たとえばノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、トリスフェニルメタン型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂を用いることができる。良好な現像特性の観点から、ノボラック型フェノール樹脂を用いることができる。低分子のフェノール化合物としては、ビフェノール、4-エチルレソルシノール、2-プロピルレソルシノール、4-ブチルレソルシノール、4-ヘキシルレソルシノール、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’-ジヒドロキシジフェニルジスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビフェノール、4,4’-(1,3-ジメチルブチリデン)ジフェノール、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール、4,4’-エチリデンビスフェノール、2,2’-エチレンジオキシジフェノール、3,3’-エチレンジオキシジフェノール、1,5-ビス(o-ヒドロキシフェノキシ)-3-オキサペンタン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フロログルシド、α,α,α‘-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン等を挙げることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記フェノール樹脂の含有量は、感光性樹脂組成物中の共重合体全体の含有量を100質量部とした時に、例えば、1質量部以上30質量部以下であり、好ましくは3質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。上記の範囲内で配合することで硬化物の耐熱性や強度が向上する。
上記界面活性剤は、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含む界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、均一な樹脂膜を得られること(塗布性の向上)や、現像性の向上に加え、接着強度の向上にも寄与する。
界面活性剤としてより具体的には、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含むノニオン系界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤として使用可能な市販品としては、例えば、DIC株式会社製の「メガファック」シリーズの、F-251、F-253、F-281、F-430、F-477、F-551、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-569、F-570、F-572、F-574、F-575、F-576、R-40、R-40-LM、R-41、R-94等の、フッ素を含有するオリゴマー構造の界面活性剤、株式会社ネオス製のフタージェント250、フタージェント251等のフッ素含有ノニオン系界面活性剤、ワッカー・ケミー社製のSILFOAM(登録商標)シリーズ(例えばSD 100 TS、SD 670、SD 850、SD 860、SD 882)等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含むノニオン系界面活性剤により、接着強度の向上が図れる理由については明らかではないが、推定される原因として、たとえば(i)膜表面が平滑になる結果、硬化膜を加熱押圧して接着する際の接着面積が増すこと、(ii)界面活性剤が樹脂膜(硬化膜)の表面に偏在することで、硬化膜の表面が熱で部分的に融解しやすくなること、等が考えられる。
界面活性剤の含有量は、感光性樹脂組成物の不揮発性成分の全量を基準として、通常0.001~1質量%、好ましくは0.003~0.5質量%、より好ましくは0.005~0.3質量%、さらに好ましくは0.008~0.1質量%、特に好ましくは0.01~0.05質量%である。この範囲とすることで、上述の接着強度の向上の効果をより一層得ることが期待できる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。
上記溶剤としては、感光性樹脂組成物の各成分を溶解可能なもので、且つ、各構成成分と化学反応しないものであれば特に制限なく用いることができる。このような有機溶剤の一例としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γブチロラクトン、酢酸ブチル、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル及びメチル-3-メトキシプロピオネート等の有機溶剤が挙げられる。有機溶剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤は、感光性樹脂組成物中の非揮発成分全量の濃度が、1~50質量%であり、好ましくは5~40質量%となるように用いられることが好ましい。この範囲とすることで、各成分を十分に溶解させることができ、また、良好な薄膜塗布性を担保することができる。
本実施形態の感光性樹脂組成物には、上記の成分に加えて、必要に応じて、その他の添加剤を含むことができる。その他の添加剤としては、酸化防止剤、シリカ等の充填材、増感剤、フィルム化剤、密着助剤等が挙げられる。
感光性樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により製造することができる。
上記フィルム状の感光性樹脂組成物(感光性樹脂フィルム)は、たとえばワニス状の感光性樹脂組成物をキャリア基材上に塗布して得られた塗布膜(樹脂膜)に対して、溶剤除去処理を行うことにより得ることができる。上記感光性樹脂フィルムは、溶剤含有率が感光性樹脂組成物全体に対して10質量%以下とすることができる。たとえば80℃~150℃、1分間~30分間の条件で溶剤除去処理を行うことができる。これにより、感光性樹脂組成物の硬化が進行することを抑制しつつ、十分に溶剤を除去することが可能となる。
上記キャリア基材上に感光性樹脂組成物の樹脂膜を形成する工程は、例えば、感光性樹脂組成物を溶剤などに溶解・分散させて樹脂ワニスを調製して、各種コーター装置を用いて樹脂ワニスをキャリア基材に塗工した後、これを乾燥する方法、スプレー装置を用いて樹脂ワニスをキャリア基材に噴霧塗工した後、これを乾燥する方法、などが挙げられる。これらの中でも、スピンコーター、コンマコーター、ダイコーターなどの各種コーター装置を用いて、樹脂ワニスをキャリア基材に塗工した後、これを乾燥する方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な厚みを有するキャリア基材付き感光性樹脂フィルムを効率よく製造することができる。
上記キャリア基材付き感光性樹脂フィルムは、巻き取り可能なロール状でもよいし、矩形形状の枚葉状であってもよい。キャリア基材付き感光性樹脂フィルムの表面は、例えば、露出していてもよく、保護フィルム(カバーフィルム)で覆われていてもよい。保護フィルムとしては、公知の保護機能を有するフィルムを用いることができるが、例えば、PETフィルムを使用してもよい。
また、本実施形態において、上記キャリア基材としては、例えば、高分子フィルムや金属箔などを用いることができる。当該高分子フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシート等の離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。当該金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅および/または銅系合金、アルミおよび/またはアルミ系合金、鉄および/または鉄系合金、銀および/または銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートで構成されるシートが安価および剥離強度の調節が簡便なため最も好ましい。これにより、キャリア基材付き感光性樹脂フィルムから、キャリア基材を適度な強度で剥離することが容易となる。
上記感光性樹脂フィルムの膜厚は、最終的な硬化膜の膜厚に応じて設計することができる。感光性樹脂フィルムの膜厚の下限値は、例えば、40μm以上であり、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは60μm以上である。これにより、厚膜の感光性樹脂フィルムを実現することができる。感光性樹脂フィルムの半導体チップ等の電子部材の埋め込み性を高めることができる。また、感光性樹脂フィルムの機械的強度を向上させることができる。一方で、上記感光性樹脂フィルムの膜厚の上限値は、特に限定されないが、例えば、300μm以下としてもよく、250μm以下としてもよく、200μm以下としてもよい。これにより、感光性樹脂フィルムの硬化膜を備える電子装置の薄層化を実現することができる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、膜形成用に用いられるものであって、基板同士を密着する接着剤に用いることができる。
以下に、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いた、電子デバイスの製造方法の概要を説明する。
本実施形態の電子デバイスの製造方法は、
感光性樹脂組成物を用いて基板上に樹脂膜を形成する膜形成工程(以下、単に「膜形成工程」とも記載する)と、
上記の樹脂膜を、例えば、60~150℃でプリベークするプリベーク工程(以下、単に「プリベーク工程」とも記載する)と、
上記のプリベークされた樹脂膜を露光および現像してパターニングされた樹脂膜を得るパターニング工程(以下、単に「パターニング工程」とも記載する)と、
前記パターニングされた樹脂膜を加熱または露光してパターニングされた樹脂膜に残存する感光剤の一部又は全部を分解するブリーチング工程(以下、単に「ブリーチング工程」とも記載する)と、
上記ブリーチング後膜同士、または、上記のブリーチング後膜が形成されていない基板と上記ブリーチング後膜とを密着させて、加熱しながら押圧し、ブリーチング後膜同士、または、ブリーチング後膜が形成されていない基板とブリーチング後膜とが接着された接着構造を得る接着工程(以下、単に「接着工程」とも記載する)と、
上記の接着構造を加熱する追加加熱工程(以下、単に「追加加熱工程」とも記載する)とを含むことができる。
上記製造方法によれば、無機材料に対する密着性、密着強度に優れる硬化膜を備える構造体を得ることができ、絶縁信頼性とが飛躍的に向上した電子デバイスを得ることができる。
図1は、本実施形態の電子デバイスの製造方法の一例を示したものである。なお、本発明は図1に示される製造方法のみに限定解釈されるものではない。
(膜形成工程)
本実施形態の電子デバイスの製造方法は、感光性樹脂組成物を用いて、基板10の上に樹脂膜20Aを形成する工程を含むことができる(図1(a))。
基板10の材質は特に限定されず、金属、ガラス、半導体、有機樹脂等が挙げられる。基板10としては、例えば、シリコンウェハ、セラミック基板、アルミ基板、SiCウェハ、GaNウェハなどが挙げられる。基板10は、表面処理がされていないベア(bare)基板であってもよいし、密着性向上やその他目的のために表面処理がなされた基板や、下塗り層を有する基板などであってもよい。基板10は、素子が配置されているもの、回路パターンが備えられているもの、孔や凹凸などの加工がされているものであってもよい。基板10の厚みは特に限定されないが、例えば0.02~1mm、好ましくは0.05~0.9mmである。基板10は、位置合わせのためのアラインメントマーク等を有していてもよい。基板10の形状は特に限定されない。
基板10の上に樹脂膜20Aを形成する方法は、特に限定されないが、スピンコート、噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング、インクジェット法などにより行うことができる。好ましくはスピンコートである。
樹脂膜20Aの膜厚は、特に限定されないが、例えば0.1~100μm、好ましくは0.2~50μmである。
なお、樹脂膜20Aを形成するための感光性樹脂組成物の組成、性状等については、上述の通りである。
(プリベーク工程)
次いで、本実施形態の電子デバイスの製造方法は、基板10の上に形成された樹脂膜20Aを、ホットプレート30等を用いて、60~150℃でプリベークする工程を含むことができる(図1(b))。
プリベークの温度は、上述のとおり60~150℃であればよいが、70~140℃、より好ましくは80~130℃である。プリベークの時間は、通常、15秒~10分、好ましくは20秒~8分、より好ましくは45秒~7分である。ホットプレート30以外の方法でプリベークをする方法としては、オーブンでの加熱等が挙げられる。
(パターニング工程)
次いで、本実施形態の電子デバイスの製造方法は、樹脂膜20Aを露光および現像して、基板10の上に、パターニングされた樹脂膜20Bを得る工程を含むことができる(図1(c))。
露光光源は、感光性樹脂組成物が感光するものである限り特に限定されないが、典型的にはg線、i線、エキシマレーザ等が挙げられる。
現像は、適当な現像液を用いて、例えば浸漬法、パドル法、回転スプレー法などの方法により行うことができる。現像により、樹脂膜20Aの露光部(ポジ型画像形成の場合)または未露光部(ネガ型画像形成の場合)が除去され、パターニングされた樹脂膜20Bが得られる。現像時間(現像液を樹脂膜20Aに接触させる時間)は、好ましくは0.5秒~10分、より好ましくは1秒~5分である。
現像に使用可能な現像液は特に限定されない。例えば、アルカリ水溶液、より具体的には、(i)水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ水溶液、(ii)エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン水溶液、(iii)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩の水溶液などが挙げられる。また、有機溶剤現像液(有機溶剤を組成中95質量%以上含有する現像液)を用いることもできる。このような有機溶剤としては、シクロペンタノン等のケトン溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートや酢酸ブチルなどのエステル溶剤などがある。また、現像液には、例えばメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や、界面活性剤などが添加されていてもよい。
本実施形態においては、有機溶剤現像液を用いることが好ましい。
現像後は、現像液の振り切り、現像後のリンス等により現像液を十分に除去することが好ましい。現像液の振り切りは、例えば、基板を回転させる等により行うことができる。リンスは、例えば、リンス液を、スピンコート、噴霧、浸漬等により、基板10およびパターニングされた樹脂膜20Bに供することで行う。リンス液としては、例えば蒸留水、アルコール類、エーテル類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)が適用可能である。
なお、露光と現像の間に、必要に応じて、樹脂膜20Aを再加熱してもよい(この工程は、Post-Exposure Bakeとも呼ばれる)。その温度・時間は、例えば60~140℃、10~300秒程度である。これにより、樹脂膜20A中の化学反応が促進されるため、より良好なパターニングを行えると期待される。
(ブリーチング工程)
次いで、本実施形態の電子デバイスの製造方法は、加熱または露光して感光剤を分解してブリーチング後膜を得るブリーチング工程を含むことができる。ブリーチング工程として加熱工程を行う場合、パターニングされた樹脂膜20Bを、ステージ40に載せ、適当な手段で加熱し、少なくとも一部が半硬化ブリーチング後膜20Cを得る工程を含むことができる(図1(d))。これにより、基板10の上にブリーチング後膜20Cが形成された、ブリーチング後膜付き基板100を得ることができる。
この工程における加熱温度は特に限定されないが、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。上限については、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。適切な温度範囲とすることで、樹脂膜20Bが過度に硬化されず、後の接着工程において、ブリーチング後膜20Cの界面で樹脂の絡み合いが十分に起こると考えられる。その結果、接着強度を一層高められると考えられる。
この工程の時間は、通常1~300分、好ましくは5~120分、より好ましくは10~60分である。
加熱の手段は、一態様としてオーブンが好ましい。また、ホットプレート等であってもよい。なお、硬化時の雰囲気は、空気であっても、窒素、アルゴンなどの不活性ガスであってもよい。また、減圧下での加熱等であってもよい。
なお、念のために述べておくと、この工程における「ブリーチング」では、この工程を経る前(パターニング工程終了後)の樹脂膜20Bと比較して、ブリーチング後膜20Cのほうが、加熱または露光により感光剤が少なくなっている。また、「ブリーチング」として、加熱を行った場合、この工程を経る前(パターニング工程終了後)の樹脂膜20Bと比較して、ブリーチング後膜20Cのほうが、‘硬く’なる(例えば、粘度が高くなる、弾性が大きくなる、または、流動性が低下する、等)。別の言い方としては、ブリーチング後膜20Cには、いわゆるBステージ状態と言われる半硬化状態のものなども含まれる。
(接着工程)
次いで、本実施形態の電子デバイスの製造方法は、ブリーチング後膜20C同士を密着させて、100~350℃で加熱しながら押圧(加熱と押圧を同時に行う)し、ブリーチング後膜20C同士が接着・硬化された構造(接着構造)を得る工程を含むことができる(図1(e))。
図1(e)では、ブリーチング後膜付き基板100のブリーチング後膜20Cと、別のブリーチング後膜付き基板100Aのブリーチング後膜20Cとが密着するように、ブリーチング後膜付き基板100と別のブリーチング後膜付き基板100Aとを重ねている。そして、ブリーチング後膜付き基板100の側からは加熱を行い、別のブリーチング後膜付き基板100Aの側からは、例えば後述するボンディング装置を用いて加熱および押圧を行う。
この工程において、ブリーチング後膜付き基板100のブリーチング後膜20C、別のブリーチング後膜付き基板100Aのブリーチング後膜20Cの、少なくとも一方は、いわゆるBステージ状態と言われる半硬化状態であることが好ましい。
なお、上記の別のブリーチング後膜付き基板100Aは、ブリーチング後膜付き基板100と同様にして準備すればよい。例えば、別のブリーチング後膜付き基板100Aは、上述の図1(a)~(d)で説明した工程により準備されたものであればよい。また、別のブリーチング後膜付き基板100Aは、ブリーチング後膜付き基板100の一部を切り出す等して(ダイシング等して)得たものであってもよい。
加熱の温度は、100~300℃の範囲内であればよいが、好ましくは130℃~250℃、より好ましくは150~200℃である。なお、ここでの「加熱」とは、ブリーチング後膜20C自体が、100~300となるように加熱することをいう。ブリーチング後膜20C自体の温度は、適当な測定手段、例えば熱電対を用いる方法等により計測可能である。
押圧の圧力は、通常5~50N、好ましくは10~45N、より好ましくは15~40Nである。
加熱押圧の時間は、通常0.5~60秒、好ましくは0.2~10秒である。
加熱押圧の方法は特に限定されないが、例えば、電子デバイスの製造でしばしば用いられる公知のボンディング装置等を利用して行うことができる。
例えば、ブリーチング後膜付き基板100の下からはステージ40を通じて加熱し、別のブリーチング後膜付き基板100Aの上からは、ボンディング装置のボンディングヘッドで加熱しながら押圧することで、所望の加熱押圧を行うことができる。
このとき、ステージ40の設定温度は、例えば10~200℃、好ましくは20~150℃の範囲内である。また、ボンディングヘッドの設定温度は、例えば100~400℃、好ましくは130~250℃に設定し得る。このような設定温度とすることで、ブリーチング後膜20Cを上述の温度(例えば150~200℃)に速やかに昇温することができる。
接着工程の別の態様について説明する。
本実施形態の電子デバイスの製造方法は、硬化膜が形成されていない基板10Aと、基板10上のブリーチング後膜20Cとを密着させて、100~200℃で加熱しながら押圧(加熱と押圧を同時に行う)し、ブリーチング後膜が形成されていない基板10Aと基板10とが、ブリーチング後膜20Cを介して接着された構造を得る工程を含むことができる(図1(e-1))。
この態様において、ブリーチング後膜が形成されていない基板10Aの材質、表面処理の有無、素子・回路パターン・加工の有無、厚み、アラインメントマークの有無、形状等については、基板10として説明したものと同様である。
また、加熱や押圧の条件(数値設定)、加熱押圧の方法、そのための装置等については、図1(e)の説明で述べたものと同様である。
上述のように、接着工程は、図1(e)で説明されたような「ブリーチング後膜同士を接着する」ものであってもよいし、図1(e-1)で説明されたような「ブリーチング後膜が形成されていない基板と、ブリーチング後膜とを接着する」ものであってもよい。どちらを選択するかは任意であるが、接着強度を優先するのであれば前者のほうが好ましく、プロセスの更なる簡素化や材料の省略などの点では後者のほうが好ましい。
ここで、「ブリーチング後膜同士を接着する」場合、少なくともどちらか一方の加熱後樹脂膜は、いわゆるBステージ状態と言われる半硬化状態であることが好ましく、「ブリーチング後膜が形成されていない基板と、ブリーチング後膜とを接着する」場合、ブリーチング後膜は、いわゆるBステージ状態と言われる半硬化状態であることが好ましい。
(追加加熱工程)
本実施形態の電子デバイスの製造方法は、上記の接着工程で得られた接着構造を加熱する工程を含むことができる(図1(f))。具体的には、上記の接着工程で得られた接着構造(図1(e)における、ブリーチング後膜付き基板100と、別のブリーチング後膜付き基板100Aとが接着された構造全体)を、適当なステージ40に載せるなどして、熱を加えることができる。
また、上記の接着工程の変形例で得られた接着構造(図(e-1)における基板10、10Aおよびブリーチング後膜20Cからなる構造全体)を、適当なステージに載せるなどして、熱を加えてもよい(これについては、図1には明示していない)。
ここでの加熱温度は、好ましくは170℃以上、より好ましくは200℃以上、である。上限については、例えば400℃以下、好ましくは300℃以下である。適切な加熱温度とすることで、硬化状態を最適なものとし、接着強度を一層高めることができると期待される。
また、加熱時間は、通常0.5~300分、好ましくは1~270分、より好ましくは3~240分である。
加熱は、一態様としてオーブンで行うことが好ましい。また、ホットプレート等で行ってもよい。スループットや、一括して処理できる量などの観点ではオーブンで行うことが好ましい。なお、硬化時の雰囲気は、空気であっても、窒素、アルゴンなどの不活性ガスであってもよい。また、減圧下での加熱等であってもよい。
本実施形態の電子デバイスの製造方法は、上記で明示的に説明した工程以外の工程を含んでもよい。
例えば、現像液による現像後、あるいはリンス液によるリンス後に、現像液および/またはリンス液を乾燥させるための加熱工程(ブリーチング後膜を得る工程とは別の工程)などを含んでもよい。
ほかには、いずれかの段階において、基板10、樹脂膜20A、パターニングされた樹脂膜20B、ブリーチング後膜20Cなどを加工する(穴をあける、凹凸を設ける、切削する等)工程等を含んでもよい。以上のように、本願実施形態の感光性樹脂組成物の硬化膜を備える、構造体を得ることができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
本発明の参考形態を以下に付記する。
1.
分子中に環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーと、
感光剤と、
分子中に酸無水物基を有するシランカップリング剤と、
を含む膜形成用の感光性樹脂組成物。
2.
前記環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーが、ノルボルネン系モノマー由来の構造単位Aを含む、1.に記載の感光性樹脂組成物。
3.
前記ノルボルネン系モノマーが、前掲の式(a-1)で表される、2.に記載の感光性樹脂組成物。
(式(a-1)中、nは、0~2であり、R
1
~R
4
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30の有機基であり、R
1
~R
4
を構成する有機基は、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよく、R
1
~R
4
のうち、任意の2つが互いに結合して、アルキリデン基、単環又は多環構造を形成してもよい。)
4.
前記環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーが、前掲の式(A11)で表されるノルボルネン系モノマー由来の構造単位Aを含む、1.~3.のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(式(A11)中、nは、0~2であり、R
1
~R
4
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30の有機基であり、R
1
~R
4
を構成する有機基は、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよく、R
1
~R
4
のうち、任意の2つが互いに結合して、アルキリデン基、単環又は多環構造を形成してもよい。)
5.
前記環状オレフィン由来の構造単位を含有するポリマーは、分子中に、無水マレイン酸、マレイミドまたはこれらの誘導体由来の構造単位Bを有する共重合体である、1.~4.のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
6.
前記構造単位Bは、前掲の式(1)で示される構造単位を含む、5.に記載の感光性樹脂組成物。
(式(1)中、R
X
、R
Y
は、それぞれ独立して水素または炭素数1~3の有機基を示す。)
7.
前記共重合体は、分子中に、無水マレイン酸の酸無水環が開環したエステル化合物由来の構造単位Cを有する、6.に記載の感光性樹脂組成物。
8.
前記酸無水物基がコハク酸無水物基である、7.に記載の感光性樹脂組成物。
9.
基板同士を密着する接着剤に用いる、1.~8.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
10.
1.~9.のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化膜を備える、構造体。
11.
10.に記載の構造体を含む、電子デバイス。
12.
1.~9.のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いた電子デバイスの製造方法であって、
基板上に樹脂膜を形成する膜形成工程と、
前記樹脂膜を60~150℃でプリベークするプリベーク工程と、
前記プリベークされた樹脂膜を露光および現像してパターニングされた樹脂膜を得るパターニング工程と、
前記パターニングされた樹脂膜を加熱または露光してパターニングされた樹脂膜に残存する感光剤の一部又は全部を分解するブリーチング工程と、
前記ブリーチング工程で得られたブリーチング後膜同士、または、前記ブリーチング後膜が形成されていない基板と前記ブリーチング後膜とを密着させて、加熱しながら押圧し、前記ブリーチング後膜同士、または、前記樹脂膜が形成されていない基板と前記ブリーチング後膜とが接着された接着構造を得る接着工程と、
前記接着構造を加熱する追加加熱工程と
を含む、電子デバイスの製造方法。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
<環状オレフィンポリマーの合成>
<合成例1:環状オレフィンポリマー(A-1)の合成>
密閉可能な反応容器内に、メチルグリシジルエーテルノルボルネン45.1g(250mmol)、2-ノルボルネン23.5g(250mmol)、マレイン酸水素1-ブチル51.7g(300mmol)、および無水マレイン酸24.5g(250mmol)を計量した。さらに、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)12.1g(53mmol)を溶解させたPGME105gを反応容器に加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、容器を密閉し、70℃で16時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、アセトン202gを添加し希釈した。希釈後の溶液を大量のヘキサンに注ぎ、ポリマーを析出させた。次いで、ポリマーを濾取しヘキサンでさらに洗浄した後、30℃にて16時間真空乾燥させた。ポリマーの収得量は101g、収率は70%であった。上記操作により、重量平均分子量Mwが6300である、下記式(A-1)により示される繰り返し単位を有する環状オレフィン系樹脂(共重合体1)を得た。
<合成例2:環状オレフィンポリマー(A-2)の合成>
撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸122.4g(1.25mol)、2-ノルボルネン117.6g(1.25mol)およびジメチル2、2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート11.5g(0.05mol)を計量し、メチルエチルケトン150.8gおよびトルエン77.7gに溶解させた。この溶解液に対して、10分間窒素を通気して酸素を除去し、その後、撹拌しつつ60℃で16時間、加熱した(重合工程)。
その後、この溶解液に、MEK320gを加えた後、水酸化ナトリウム12.5g0.31mol)、ブタノール463.1g(6.25mol)、トルエン480gの懸濁液に加え、無水マレイン酸由来の環状の構造体の繰り返し単位のうち、50%以上の繰り返し単位が閉環した状態となるように、45℃で3時間混合した。そして、この混合液を40℃まで冷却し、ギ酸88重量%水溶液、49.0g(0.94mol)で処理してプロトン付加した(開環工程)。
その後、MEKおよび水を加え、水層を分離することで、無機残留物を除去した。次いで、メタノール、ヘキサンを加え有機層を分離することで未反応モノマーを除去した。さらにプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート(PGMEA)を添加し、系内のメタノール及びブタノールを残留量1%未満となるまで減圧留去した。これにより重量平均分子量Mwが13,700である、下記式(A-2)により示される繰り返し単位を有する環状オレフィン系樹脂(共重合体2)のPGMEA溶液を得た。
<合成例3:環状オレフィンポリマー(A-3)の合成>
密閉可能な反応容器内に、ノルボルネンカルボン酸30.4g(220mmol)、メチルグリシジルエーテルノルボルネン57.7g(320mmol)、マレイミド24.3g(250mmol)、およびシクロヘキシルマレイミド44.8g(250mmol)を計量した。さらに、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)12.0g(52mmol)を溶解させたPGME113gを反応容器に加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、容器を密閉し、70℃で16時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、アセトン200gを添加し希釈した。希釈後の溶液を大量のヘキサンに注ぎ、ポリマーを析出させた。次いで、ポリマーを濾取しヘキサンでさらに洗浄した後、30℃にて16時間真空乾燥させ環状オレフィン系樹脂(A-3)を得た。ポリマーの収得量は126g、収率は80%であった。上記操作により、重量平均分子量Mwが8500である、下記式(A-3)により示される繰り返し単位を有する環状オレフィン系樹脂(共重合体3)を得た。
<各実施例、各比較例における感光性組成物の調製>
下記の表1に従い配合された各成分の原料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、不揮発成分が33質量%の混合溶液を得た。その後、混合溶液を0.2μmのナイロンフィルターで濾過し、ポジ型の感光性組成物を得た。
・ポリマー(A)
(A-1):下記式で表される共重合体1(上記合成例1で合成した環状オレフィン樹脂)
(A-2):下記式で表される共重合体2(上記合成例2で合成した環状オレフィン樹脂)
(A-3):下記式で表される共重合体3(上記合成例3で合成した環状オレフィン樹脂)
(A-4):フェノール樹脂(クレゾールノボラック樹脂、PR-56001、住友ベークライト株式会社製、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=11,000)
(A-5):メタクリル酸・スチレン・メタクリル酸グリシジル・ジシクロペンタジエニルメタクリレート共重合体(仕込みモル比30:10:50:10)、(ダイトーケミックス(株)製)
・感光剤(B)
(B-1):下記式で表されるジアゾキノン化合物(PA-5、ダイトーケミックス社製)
・カップリング剤(C)
(C-1)酸無水物基を有するシランカップリング剤(X-12-967C、信越化学株式会社製)
(C-2):シランカップリング剤(KBM-403E、信越化学株式会社製)
・架橋剤(D)
(D-1):下記式で表されるエポキシ樹脂(TECHMORE VG3101L、プリンテック株式会社製)
(D-2):下記式で表されるエポキシ樹脂(EXA-830CRP、株式会社DIC株式会社製)
・フェノール化合物(E)
(E-1):下記式で表されるフェノール化合物(TrisP-PA、本州化学株式会社製)
・界面活性剤(F)
(F-1):フッ素原子含有ノニオン系界面活性剤(メガファック F560、DIC株式会社製)
<感度の評価>
調製された感光性組成物を、それぞれ、8インチシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布した。塗布後、ホットプレートにて110℃で3分間プリベークし、膜厚約3.5μmの塗膜を得た。
この塗膜に、凸版印刷社製マスク(1~100μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して、i線を照射した。照射には、i線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いた。
その後、現像液として2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて30秒間×2回パドル現像を行うことによって露光部を溶解除去した。そして純水で10秒間リンスした。
露光量を変化させて複数回のパターニング評価を行い、幅5μmのマスク開口部により幅5μmのビアパターンが形成される最低露光量を感度(mJ/cm2)とした。
スループットの点から感度は小さい方がよいが、500mJ/cm2以下であれば実用上問題なく使用できる。評価結果を表1に示す。
<現像後解像度の評価>
上記の「最低露光量」+100mJ/cm2のエネルギーで露光した以外は、<感度の評価>と同様の工程によりパターンを形成した。得られたパターン付きウェハを酸素濃度を1000ppm以下に保ちながら、オーブンにて200℃で60分間加熱し、感光性組成物の硬化膜を得た。このときの開口している最小ビアサイズを、硬化後パターン解像度(μm)として評価した。解像度は微細配線を作成する上で小さいほうがよい。評価結果を表1に示す。
<膜強度の評価>
上記実施例及び比較例で得た感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウェハにスピンコーターを用いて塗布した。その後、ホットプレートにて110℃で3分間プリベークし、膜厚約10μmの塗膜を得た。その後、酸素濃度を1000ppm以下に保ちながら、オーブンにて200℃で60分間加熱し、感光性樹脂組成物の硬化膜を得た。
得られた硬化膜をダイシングして6.5mm×60mmのサイズにカットし、2%のフッ酸水溶液に浸漬して硬化膜を剥がし、60℃で10時間乾燥し、試験片を10本作製した。かかる試験片10本それぞれに対して、オリエンテック社製の引張試験機(テンシロンRTC-1210A)を用いて引張試験(延伸速度:5mm/分)を23℃雰囲気中で実施した。膜が破断した強度から膜強度(MPa)を算出した。
<比誘電率の測定>
調製された感光性組成物を、それぞれ、8インチシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布した。塗布後、ホットプレートにて110℃で3分間プリベークし、膜厚約10μmの塗膜を得た。この塗膜を、窒素雰囲気下、酸素濃度を1000ppm以下に保ちながら、200℃、90分の条件で硬化し、硬化膜(サンプル)を得た。得られたサンプルについて、円筒空胴共振器法を用いて、25℃、周波数1GHzにおける比誘電率を測定した。評価結果を表1に示す。
<Si、SiN、Cu、SiO2基板に対する密着性>
調製された感光性組成物を、それぞれ、Si、SiN、Cu、SiO2基板上にスピンコーターを用いて塗布した。塗布後、ホットプレートにて110℃で3分間プリベークし、膜厚約10μmの塗膜を得た。この塗膜を、窒素雰囲気下、酸素濃度を1000ppm以下に保ちながら、200℃、90分の条件で硬化し、硬化膜を得た。得られた硬化後の膜厚は9μmであった。得られた硬化膜付基板について、JISD0202に準じてテープピール試験を実施した、具体的には、カッターにて1mm四方の碁盤目100個(10×10)を作った後、温度85℃、85%RHの高温高湿条件下で100時間保管し、その後、碁盤目の上にスコッチテープを付着させ、直ちにテープの一端を塗膜面に直角に保ち瞬間的に引き離し、はがれた碁盤目の数を調べた。評価結果を表1に示す。
<接着性評価用サンプルAの作製>
以下手順によりボンディング後の接着性Aの評価用のサンプルを作製した。
(1)膜形成工程
厚さ0.725mmのシリコンウェハ上に、実施例及び比較例の感光性樹脂組成物をスピンコートにより塗布し、3.5μm厚の樹脂膜を形成した。
(2)プリベーク工程
上記の樹脂膜が形成されたウェハを、ホットプレートを用いてプリベークした。プリベークは110℃で3分間行った。
(3)現像工程
上記プリベークしたウェハ上の樹脂膜を2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド中に30秒間浸漬した後、純水で洗浄し、スピンにより乾燥を行った。
(4)ブリーチング工程(感光剤分解工程)
上記プリベークしたウェハ上の樹脂膜をN2雰囲気下で100℃で30分、続けて130℃で30分加熱処理を行い、ブリーチング後膜を得た。
(5)接着工程
以下手順により、接着構造を得た。
まず、上記のブリーチング後膜を有するウェハを、ダイシングソーを用いて切り出し、10mm×10mm角の正方形の評価用基板(下チップ)と、5mm×5mm角の正方形の評価用基板(上チップ)を作製した。
次に、下チップを、ブリーチング後膜がある面を上にして、フリップチップボンダーの下ステージ上に静置した。このときの下ステージの温度は30度に設定した。次に上チップを、200度に加熱したボンディングヘッドで、ブリーチング後膜がある面が下になるようにピックアップし、下チップのブリーチング後膜と上チップのブリーチング後膜とが密着するように、フリップチップボンダーの下ステージ上に静置された下チップの上に載せ、温度200℃、時間10秒、圧力25Nの条件で加熱・押圧した。
その後、酸素濃度を1000ppm以下に保ちながら、200℃、90分の条件で硬化し、ボンディング後接着評価A用サンプルを得た。
ここで、「25N」とは、5mm×5mmの上チップに対して25Nの力をかけたということであり、単位面積あたりの力(すなわち圧力)としては、1N/mm2すなわち1MPaである。
<接着性評価用サンプルBの作製>
ボンディング後の接着性Aの作製の接着工程において、上チップを5mmx5mm、厚み200μmのシリコンウェハに変更した以外はボンディング後の接着性Aの作製と同様にサンプルを作製した。
<接着性評価>
上記<接着性評価用サンプルAの作製>及び<接着性評価用サンプルBの作製>で得られた、接着性評価用サンプルの上チップに、エポキシ樹脂付きAlピン(Φ5.2mm、株式会社フォトテクニカ製)を立て、150℃で1時間熱処理し、Alピン付き接着サンプルAを得た。
得られたAlピン付き接着サンプルAを、引張試験機(テンシロンRTC-1210A、オリエンテック社製)を用いて1mm/minで引張試験を行い、破壊時の破断応力を測定した。結果を表1に示す。破断応力は信頼性の面から高いほうがよい。
<絶縁信頼性の評価>
(絶縁信頼性用サンプルの作製)
基材(耐熱塩化ビニル樹脂シート)に対し、幅25μm/ピッチ25μm、高さ3~5μm櫛歯型のCu配線を形成したCu配線基板を作製した。得られた感光性樹脂組成物を、Cu配線基板上にスピンコートによって乾燥後膜厚が10μmになるように塗布し、110℃で3分乾燥して感光性樹脂膜を形成した。
得られた感光性樹脂膜に対して、2.38wt%TMAH水溶液中に30秒浸漬後、純水で洗浄し乾燥した。続いて、200℃で90分、窒素下で、感光性樹脂膜を硬化させ絶縁信頼性用サンプルを得た。
(絶縁信頼性評価)
絶縁信頼性用サンプル作製で作製した基板のCu配線の端部(Cu電極)と電極配線とを半田接続し、B-HAST装置にて3.5Vのバイアスを掛けながら130℃/85%下で処理を行った。6分間隔でCu配線基板のCu配線間における絶縁抵抗値を自動的に計測し、絶縁抵抗値が1.0×104Ω以下になった場合を絶縁破壊とし、試験開始から絶縁破壊までの時間(h)を測定した。
表1に示すように、比較例1~3の感光性組成物は、パターン形成能、及び、異種の無機材料に対する良好な密着性を両立することができなかった。また、絶縁信頼性評価において、比較例1の感光性組成物を用いた場合は剥離、比較例1~3の感光性組成物を用いた場合はマイグレーションが確認された。
一方、実施例1~5の感光性組成物は、異種の無機材料に対して、良好な密着性を示した。さらに、実施例1~5の感光性組成物は、そのブリーチング後膜同士の接着強度、及び、ブリーチング後膜とシリコンウエハの接着強度が、ともに、比較例1~3の感光性組成物に比べ顕著に優れたものであり、優れた絶縁信頼性を示した。