JP7217554B1 - 建築物 - Google Patents

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Abstract

【課題】居室壁面等からの輻射熱を制御することで居室内の人の体感温度を最適化することができ、居室内の温湿度を急速に変化させる状況にも対応し得る建築物の提供。【解決手段】居室0110の床下、壁体、天井裏、居室内のいずれか一以上を流通する流通空気を流すために立ち上がる風道0160と、風道を介して流通空気を取り入れる流通空気取入口0171と、流通空気の一部を温調するエアコン0172と、温調された空気と温調されない空気とを混合する空気混合スペース0173と、混合空気を外部に強制送風して流通空気とする送風ファン0174と、を有する流通空気の混合空調室0170と、流通空気で居室滞在者を輻射冷暖房するための空気流通空間と、流通空気を居室内に導入する開閉可能な又は/及び常時開である給気グリル0180と、流通空気で輻射冷暖房され又は/及び給気グリルから流通空気を取り入れて冷暖房される居室0110と、を有する。【選択図】図1F

Description

本発明は、居室を構成する壁面等からの輻射熱を制御することによって快適な居住空間を得られるようにした建築物に関する。
従来、上記したような居室を構成する壁面等からの輻射熱を制御する建築物としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
この建築物は、断熱構造に構成された床下空間と、断熱構造に構成された小屋裏空間と、これらの床下空間及び小屋裏空間を接続するようにして内・外壁部間及び居室間に形成された躯体内循環通路を備えている。
床下空間には、冷暖房用エアコン及び冷気上昇用送風機が配置されており、床下空間に放出された冷暖房用エアコンからの冷気を冷気上昇用送風機に接続された冷気上昇用ダクトを介して小屋裏空間に送り込むようになっている。
一方、小屋裏空間には、暖気下降用送風機が設置されており、躯体内循環通路を上昇して小屋裏空間に入り込んだ暖気を暖気下降用送風機に接続された暖気下降用ダクトを介して床下空間に送り込むようになっている。
この建築物において、夏季には、床下空間の冷暖房用エアコンがクーラーとして作動して冷気を床下空間に放出し、放出された冷気は、冷気上昇用送風機によって冷気上昇用ダクトを介して小屋裏空間に送り込まれる。
そして、小屋裏空間に送り込まれた冷気が、内・外壁部間及び居室間の躯体内循環通路を自然に下降することで、居室内全体が内壁部を介して的に冷やされることとなる。
一方、この建築物において、冬季には、床下空間の冷暖房用エアコンがヒータとして作動して暖気を床下空間に放出し、放出された暖気が、内・外壁部間及び居室間の躯体内循環通路を自然に上昇することで、居室内全体が内壁部からの輻射熱により暖められることとなる。
この際、躯体内循環通路を上昇して小屋裏空間に入り込む暖気は、暖気下降用送風機によって暖気下降用ダクトを介して床下空間に送り込まれ、この床下空間に送り込まれた暖気が、冷暖房用エアコンから放出された暖気とともに再び躯体内循環通路を自然に上昇して循環することで、より効果的に居室全体が暖められることとなる。
実用新案登録第3164069号公報
ところが、上記した従来の建築物では、冷やした空気や温めた空気が内・外壁部間及び居室間の躯体内循環通路を自然に流れるようにしているので、躯体内循環通路を流れる空気の温度を変化させることで、居室内の人が感じる温度を適宜コントロールすることができるものの、居室内の温湿度を急速に変化させる状況では、この状況に対応することが難しいという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
本発明は、上記した従来の課題に着目して成されたもので、居室を構成する壁面等からの輻射熱を制御することによって居室内の人の体感温度を最適化することが可能であるのは勿論のこと、居室内の温湿度を急速に変化させる状況にも対応することができる建築物を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の建築物を提供する。
すなわち、本発明の第一の態様は、後記する居室の床下、壁体、天井裏、居室内のいずれか一以上を流通する空気である流通空気を上方又は下方に流通させるために立ち上がる風道と、後記する送風ファンによって作り出される圧力差によって前記風道を介して流通空気を取り入れる流通空気取入口と、取り入れた流通空気の一部を温調するエアコンと、エアコンによって温調された空気と温調されない空気とを混合する空気混合スペースと、空気混合スペースの混合空気を外部に強制送風して流通空気とする送風ファンと、を有する流通空気の混合空調室と、流通空気によって居室滞在者を輻射冷暖房するための空気流通空間と、流通空気を居室内に導入するための開閉可能な給気グリル又は/及び常時開である給気グリルと、流通空気によって輻射冷暖房され又は/及び前記給気グリルから流通空気を取り入れて冷暖房される居室と、を有する構成としている。
この建築物は、居室を構成する内壁面と、床面と、天井面との全面(内壁面と外壁面との接続部材及び屋内と屋外にわたって配置される窓やその上下の構造部材、並びに、屋内建具やその上方の構造部材は除く)を温度制御し、居室内の滞在者に対する内壁面と、床面と、天井面からの輻射熱量を制御する。
この建築物は、内壁面は、加熱した流通空気によって、居室内温度よりも高温に加熱することにより、内壁面からの輻射熱量の増大によって居室内の滞在者を温め、冷却した流通空気によって、居室内温度よりも低温に冷却することにより、内壁面からの輻射熱量の減少によって居室内の滞在者を冷やすことで居室内の滞在者の体感温度を最適化する。
また、本発明の第二の態様において、前記風道は外壁面に接さないように構成されるようにしている。
さらに、本発明の第三の態様において、前記風道の壁面の少なくとも一部は、防音手段(遮音又は/及び吸音を含む。以下同じ。)又は/及び、断熱手段(断熱材又は/及び、断熱構造を含む。以下同じ)で直接又は間接に防音又は/及び断熱されている構成としている。
さらにまた、本発明の第四の態様において、前記風道の壁面の少なくとも一部は、居住空間の壁面で構成されるようにしている。
さらにまた、本発明の第五の態様において、風道は少なくとも二以上の居室に沿って設けられている構成としている。
さらにまた、本発明の第六の態様において、前記空調室は、居住空間の上部又は/及び側部に設けられている構成としている。
さらにまた、本発明の第七の態様において、前記混合空調室は、防音手段、制振・防振手段のいずれか一以上の手段による防音、制振・防振がされている構成としている。
さらにまた、本発明の第八の態様において、前記居室は、天井面、床面、少なくとも一部の壁面は、略面状に前記流通空気を流通させる流通空間で冷やされ、又は、暖められるように構成されるようにしている。
さらにまた、本発明の第九の態様において、前記各居室の流通空間は相互に空間的につながっている構成としている。
さらにまた、本発明の第十の態様において、各居室間はドアやふすま、窓(等の障子)の隙間を介する以外は、常時直接に空間的にはつながらないように構成されている。
さらにまた、本発明の第十一の態様は、前記風道と、前記居室の少なくとも一部とを空間的に接続するための開閉自在なショートカット給気口を有する構成としている。
さらにまた、本発明の第十二の態様は、空気混合スペース、風道、流通空間のいずれか一以上に、蓄熱、調湿、消臭、抗菌、除菌、清浄の少なくともいずれか一の機能を空気に対して果たす機能器を配置した構成としている。
さらにまた、本発明の第十三の態様は、流通空気の内、居室内に導入されて冷暖房するために利用された空気を直接的に外気に排気するための居室に設けられた居室空気排気口と、居室空気排気口から排気される流通空気を空気流通空間に戻入しないで直接的に外気に排気する排気管と、をさらに有する構成としている。
さらにまた、本発明の第十四の態様は、外気からフレッシュ空気を導入するフレッシュ空気導入管と、前記排気管を流通する温調された空気と前記フレッシュ空気導入管から導入される温調されていないフレッシュ空気との熱交換をするための熱交換器をさらに有する構成としている。
本発明に係る建築物によれば、居室を構成する壁面等からの輻射熱を制御することによって居室内の人の体感温度を最適化することができ、加えて、居室内の温湿度を急速に変化させる状況にも対応することが可能であるという非常に優れた効果が得られる。
本発明の実施形態1に係る建築物の全体斜視図。 実施形態1に係る建築物の二階の横断面図。 実施形態1に係る建築物の一階の横断面図。 図1Bにおけるa-a線位置での縦断面図。 図1Bにおけるb-b線位置での縦断面図。 図1Bにおけるc-c線位置での縦断面図。 実施形態1に係る建築物の小屋裏で且つ風道及び空調室位置での横断面図。 図1Fの風道及び混合空調室を拡大して示す部分拡大縦断面図。 実施形態1に係る建築物の基礎を示す平面図。 図1Iにおけるe-e線位置での部分縦断面図。 図1Hの混合空調室の流通空気取入口をさらに拡大して示す部分拡大縦断面図。 従来の建築物における基礎を示す平面図。 図1Lにおけるd-d線位置での部分縦断面図。 実施形態1に係る建築物において居室内の人と内壁面と居室内の空気との間における熱収支を説明するための概念図。 実施形態1に係る建築物における風道内部の写真。 実施形態1に係る建築物における混合空調室の写真。 実施形態1に係る建築物における混合空調室の図1Pとは異なる部位から撮影した写真。 実施形態2に係る建築物の風道を拡大して示す部分拡大斜視図。 実施形態3に係る建築物の風道を拡大して示す部分拡大斜視図。 実施形態4に係る建築物の図1Bに相当する部分横断面図。 実施形態5に係る建築物の図1Bに相当する横断面図。 実施形態5に係る建築物の図1Fに相当する縦断面図。 実施形態6に係る建築物の図1Fに相当する縦断面図。 実施形態6に係る建築物の図1Bに相当する横断面図。 実施形態7に係る建築物の図1Hに相当する部分拡大縦断面図。 実施形態8に係る建築物の図1Fに相当する縦断面図。 実施形態9に係る建築物の図1Fに相当する縦断面図。 実施形態10に係る建築物の図1Kに相当する部分拡大縦断面図。 実施形態10に係る建築物の送風ファン取り付け状況を示す斜視図。 実施形態5に係る建築物の内部通気層を説明する簡略縦断面図。 実施形態1に係る建築物において屋根の内側を構成する天井面と屋根側の桁上に配される断熱材との間に小屋裏空間を有することを説明するための簡略縦断面図。 実施形態1に係る建築物において屋根の内側を構成する水平である天井面と屋根の内側に勾配に沿って配される断熱材との間に小屋裏空間を有することを説明するための簡略縦断面図。 図13Aに示した小屋裏空間の写真。 実施形態1に係る建築物において屋根の内側を構成する斜天面である天井面と屋根の内側に勾配に沿って配される断熱材との間に小屋裏空間を有することを説明するための簡略縦断面図。 実施形態6に係る建築物において輻射による冷暖房時における流通空気の流れを説明する簡略縦断面図。 実施形態6に係る建築物において輻射冷暖房モードにおける流通空気の換気を説明する簡略縦断面図。 実施形態6に係る建築物において空気を媒体とした熱伝達による冷暖房を併用するモードにおける流通空気の流れを説明する簡略縦断面図。 実施形態6,8,9に係る建築物における断熱位置及び空調室位置の配置パターン1を示す簡略縦断面図。 実施形態6,8,9に係る建築物における断熱位置及び空調室位置の配置パターン2を示す簡略縦断面図。 実施形態6,8,9に係る建築物における断熱位置及び空調室位置の配置パターン3を示す簡略縦断面図。 実施形態6,8,9に係る建築物における断熱位置及び空調室位置の配置パターン4を示す簡略縦断面図。 実施形態6,8,9に係る建築物における断熱位置及び空調室位置の配置パターン5を示す簡略縦断面図。 実施形態6,8,9に係る建築物における断熱位置及び空調室位置の配置パターン6を示す簡略縦断面図。
以下に、本発明の実施形態を説明する。実施形態と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施形態1は主に請求項1,6,10に関し、実施形態2は主に請求項2に関し、実施形態3は主に請求項3に関し、実施形態4は主に請求項4,5に関し、実施形態5は主に請求項8,9に関し、実施形態6は主に請求項11に関し、実施形態7は主に請求項12に関し、実施形態8は主に請求項13に関し、実施形態9は主に請求項14に関し、実施形態10は主に請求項7に関する。なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
<実施形態1(主に請求項1,6,10に対応)>
<実施形態1 概要>
本実施形態に係る建築物の主たる特徴は、居室滞在者をその床下、壁体、天井裏、居室内のいずれか一以上を流通する空気である流通空気によって輻射冷暖房すること、及び、居室に流通空気を取り入れて冷暖房することの双方を同時に又は輻射冷暖房のみ行えるようにした点にある。
ここで、熱を運ぶ伝熱過程には、同じ物質内で熱を伝える熱伝導の他に、大きく分けて熱輻射(単に輻射ともいう)及び熱伝達がある。
輻射は、輻射元の物体が電磁波を出し、輻射先の物体がその電磁波を吸収することで熱が運ばれる現象である。なお、基本的には低温の物も高温の物もその温度に応じた輻射熱を出しており、温度が高いほど輻射熱量は増大する。本発明における「輻射冷暖房」とは、特に居室を構成する壁面、床面、天井面から人に対してなされる電磁波の吸収及び放出によるものである。
一方、熱伝達は別の物体同士が直接触れ合うことで熱を伝えることであり、流体の流れを媒介させることにより間接的に熱を伝える現象である(移流(対流)も含む)。例えば、エアコンや放熱機器によって室温を温めることで人を温める作用は、空気を媒体とした熱伝達によるものであり、本発明における「居室に流通空気を取り入れて冷暖房する」とは、この空気を媒体とした熱伝達によるものである。
このように、本実施形態に係る建築物において、居室滞在者を電磁波の吸収及び放出による輻射で冷暖房するモードでは、居室を構成する壁面等からの輻射熱を制御することで居室内の人の体感温度を最適化し得ることとなり、居室に流通空気を熱媒体として取り入れて冷暖房するモードでは、居室に流通空気を取り入れることで居室内の温湿度を急速に変化させる状況に対応し得ることとなる。
<実施形態1 構成 全体>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
すなわち、図1Aに簡略的に示すように、本実施形態の建築物0100は二階建ての建築物であり、例えば、地盤Eに設置したコンクリート基礎0101上に建築される。
図1B,図1Cは建築物0100の二階及び一階の各横断面を表しており、図1D,図1E,図1Fは図1Bにおけるa-a線位置での縦断面,b-b線位置での縦断面及びc-c線位置での縦断面をそれぞれ表している。ただし、図1Fの送風ファンからの流通空気は後述する混合空調室の床面などに設けられた配管スペースにつながれた断熱ダクトによって排出されるのみであり、混合空調室に図面上見えている断熱ダクトは理解のために記載したものであって、実際の断面では不可視である。
これらの図1B,1C及び縦断面図である図1D,図1Eに示すように、外周壁0102及び水平な屋根0103によって囲まれた内部には、複数の居室0110、ホール0105、階段0106、ダイニングキッチンDK、浴室(含む脱衣室)BR、洗面所(含むトイレ)Re等の居室空間が形成されている(以降、居室0110やダイニングキッチンDKや浴室BRや洗面所Re等の閉塞された居室空間を総称して居室0110と呼称する。また、屋根は水平なものに限定されるものではなく、切妻屋根や寄棟屋根や片流れ屋根等の勾配のある屋根であってもよい。)。
また、この建築物0100は、上記居室0110の他に、居室0110を輻射冷暖房するための空気流通空間である床下空間0120、一階天井懐0140及び二階天井懐0150を備えている。なお、この建築物0100は、小屋裏空間0130も有しているが、本実施形態では、小屋裏空間0130を空気流通空間として形成しておらず、後の本実施形態で説明する内部通気層は有していない。
さらに、この建築物0100は、縦断面図である図1Fに示すように、一階天井懐0140で下向きに開口する風道0160と、二階天井懐0150の上方に配置されて風道0160からの流通空気を取り入れる流通空気取入口0171を有する混合空調室0170と、居室0110に配置されて空気流通空間の空気を居室0110内に取入可能とする開閉可能な給気グリル0180(図1Dにのみ示す)を備えている。
<実施形態1 構成 外周壁 屋根>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
この建築物0100の壁面は大きく外周壁0102と内壁0108とに分けられる。そして、内壁0108の外周壁0102側には直接又は間接に隣接する少なくとも外気の温度変化による熱移動を極力小さくする断熱材(内壁とは区別して称する。以下同じ。)0107が配置され、この断熱材0107と外周壁0102との間には外気と連なる外部通気層0109が設けられている。この場合、外周壁0102は建築物0100の構造部材に支持される。
断熱材0107には、通常、板状の厚さ6~20cmのものが用いられ、種類としては、発泡系断熱材のポリスチレンフォーム、フェノールフォーム、ウレタンフォームなどが主に使用され、繊維系断熱材を用いる場合は、グラスウールやセルロースファイバーなどが主に使用されるがこれに限定されない。
<実施形態1 構成 居室>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
二階の横断面図である図1B,一階の横断面図である図1C,縦断面図である図1D,図1Eに示すように、居室0110は、内壁面0111、床面0112及び天井面0113で構成され、通常4つの内壁面、一の床面及び一の天井面を有するが、必ずしもこれに限るものではない。平天井以外の天井面0113の具体的な形状としては、勾配天井や船底天井や下がり天井等がある。
居室0110のうち同一階において隣接する居室0110間(居室0110とホール0105との間等も含む)は、仕切り壁0115で仕切られており、この仕切り壁0115の両面が隣接する居室0110の各内壁面0111a,0111bを構成する。この際、居室0110の仕切り壁0115に少なくとも一つは設けられる出入り口0116は、ドア等の障子Dで開閉されるように構成されている。この際、各居室0110間は、ドアやふすまや窓等の障子Dの隙間を介する以外は、常時直接に空間的にはつながらないようになっている。
本実施形態において、床面0112及び天井面0113はいずれも熱輻射可能である。つまり、床面0112及び天井面0113は、後述するようにして、床面0112及び天井面0113を居室内温度よりも高温にそれぞれ加熱して、床面0112及び天井面0113からの輻射熱量を増大させることで、居室0110内の滞在者を温めることを可能とする。一方、床面0112及び天井面0113は、後述するようにして、室内温度よりも低温にそれぞれ冷却して、床面0112及び天井面0113からの輻射熱量を減少させることで、居室0110内の滞在者を冷やすことを可能とする。
<実施形態1 構成 空気流通空間 床下空間>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
図1D,図1E及び図1F(風道及び混合空調室位置での縦断面図)に示すように、床下空間0120は、一階におけるすべての居室0110の床面0112よりも下側に設けられた空間である。この床下空間0120は、居室0110の床面0112と地盤Eに断熱材0121を介して設置されたコンクリート基礎0101との間において形成される空気流通空間であり、コンクリート基礎0101の外周部基礎立上り内面0101a及び入隅上面0101bには断熱材0121が貼付されている。そして、この床下空間0120は、後述するように他の空気流通空間とつながっている。
ここで、図1Lに従来技術として例示しているように、床下空間に冷暖房用エアコンAC及び送風機Fを配置して床下空間を混合空調室兼空気流通空間として冷暖房する場合には、冷暖房用エアコンACからの暖気や冷気を床下空間にむらなく行き渡らせるために、コンクリート基礎Bの外周部に囲まれた内部の基礎立上りBsを極力減らしてオープンな空間を作るようにしなければならなかった。この場合に何ら対策を打たないとすればBs1,Bs2が他の基礎から孤立してしまうため、このままでは十分な強度を保てず基礎としての機能を果たせないこととなる。そこで従来の工夫として、図1Lにおけるd-d線位置での部分縦断面図である図1Mにも示すように、コンクリート基礎Bの土間Bxの下方に鉄筋コンクリート製の地中梁Bb(図1Lでは破線で示す)を連続して設けることで、基礎立上りBsを減らすことによる強度不足である構造上の支障が生じないようにしている。
したがって、このように床下空間を混合空調室兼空気流通空間とする場合には、コンクリート基礎Bの構造が複雑になって、施工の手間暇が余計にかかってしまう。
これに対して、本実施形態では、後述するエアコン及び送風ファンを有する混合空調室0170を二階天井懐0150の上方に配置し、フレキシブルなダクトを用いて混合空調室0170からの温調された流通空気を空気流通空間である床下空間0120に送るようにしている。すなわち、図1Iに示すように、後述する仮想線で示す配管スペース0177を通して混合空調室0170から床下空間0120に下向き断熱ダクト0175を配管し、この下向き断熱ダクト0175を斜線で示されるコンクリート基礎Cの外周部に囲まれた内部の基礎立上りCsの間隙に設けられるメンテナンス用通路Ct(おおよそ点線で囲まれる空間)を通して床下輻射冷暖房を意図する位置に配管するようにしている。本実施形態では、このように配管することによって、流通空気を床下空間0120の隅々にまで行き渡らせることができるので、コンクリート基礎Cの基礎立上りCsの施工において、メンテナンス用通路Ctを設ける以外は基礎立上りCsを連続させることができる。
つまり、図1Iにおけるe-e線位置での部分縦断面図である図1Jにも示すように、鉄筋コンクリート製の地中梁をコンクリート基礎Cの土間Cxの下方に連続して設ける必要がないので、基礎の形状が簡易なものとなり、施工時間の短縮及びこれに伴う施工コスト低減を実現することができる。
<実施形態1 構成 空気流通空間 一階天井懐>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
一階天井懐0140は、一階の居室0110の天井面0113と二階の居室0110の床面0112との間に形成されており、後述するようにして、流通空気を導入して一階の居室0110の天井面0113及び二階の居室0110の床面0112をそれぞれ加熱又は冷却可能とする空気流通空間である。そして、この一階天井懐0140も、後述するように他の空気流通空間とつながっている。
<実施形態1 構成 空気流通空間 二階天井懐>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
二階天井懐0150は、屋根0103とともに小屋裏空間0130を形成する小屋裏床面0132と二階の居室0110の天井面0113との間に設けられており、後述するようにして、流通空気を導入して二階の居室0110の天井面0113をそれぞれ加熱又は冷却可能とする空気流通空間である。そして、この二階天井懐0150も、後述するように他の空気流通空間とつながっている。
<実施形態1 構成 風道>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
風道0160は、図1F(風道及び混合空調室位置での縦断面図)及び図1G(風道及び混合空調室位置での二階の横断面図)に示すように、一階天井懐0140と混合空調室0170の流通空気取入口0171との間において、外周壁0102の屋内側に位置する内壁0108に隣接して上下方向に形成されており、一階天井懐0140内に入り込んだ流通空気を混合空調室0170に導くべく角筒状に気密施工されている。風道は一の建築物に原則的には一個の風道を備えるが、複数の風道があってもよい。建築物の床面積が比較的大きい場合などである。また風道の流通空気の取り入れ口(以下「風道入口」と称す。)は一の風道に対して一個の風道入口が備えられていることが原則であるが複数の風道入口を備えた一の風道であってもよい。この場合には風道入口は、一の風道の端部と中間部に備えられるように構成してもよい。またこの例では風道入口は、一階天井懐に設ける例を示したが、これに限定されず、一階床下に設けられていてもよい。この場合には適宜一階天井懐の流通空気はダクトなどを介して後述する混合空調室から流通させるように構成することもできる。この際、例えば、居室滞在者を輻射冷暖房するための流通空気を空気流通空間において常時行き渡らせる必要があるので、4LDK程度の建築物の場合、風道0160には毎時900~3000m程度の流通空気が通過する。つまり、風道0160がそれなりの広さの断面積が必要である。例えば0.1mから0.3m程度が好ましい。この断面積は、流通空気の量(空気流通空間の総体積)や、後述する混合空調室0170の送風ファン0174の送風能力や、空気流通空間の空気の流通抵抗などに基いて最適な値を設定する。流通抵抗が大きくなると、混合空調室0170の送風ファン0174にかかる負荷が増して、消費電力が上昇すると共に騒音も発生することになる。したがって、例えば、4LDKで総床面積が75mから150m程度の場合(例えば、空気流通空間の総体積が60mから170m程度の場合)では0.15mから0.25m程度が良い。
この風道0160は、図1Oの写真に示すように、通常の建築物の内壁と同等の材質で構成してよい。例えば、木材で構成することができる。木材で構成する場合には、その木材として杉、ヒノキ、べいまつ、もみの木、集成材、合板などを利用することができる。特に、ヒノキを用いた場合には、ヒノキが有する抗菌作用により、風道0160を清潔に保つことができ、加えて、ヒノキの良い香りが流通空気に付加されるので、流通空気を室内に導入する場合には、室内空気をよい香りにするという効果も得られる。また、このことはヒノキに限ったことではなく、もみの木やその他の木材でもよい。さらに、木材に香油を滲み込ませて利用することもできる。さらにまた、風道0160の壁面はしっくいで構成されてもよいし、木材としっくいなど混在させて構成してもよい。建築物の一般的な建築構造としては、矩形を多く用いるので、風道0160の断面も矩形にすることで、他の建築構造と干渉しないで最大断面積を得ることができる。この際、後の実施形態において詳述するが、風道0160の壁部を建築物の内壁と同等の材質である石膏ボードで構成してよい。なお、本実施形態において、図1Oにも示しているように、風道0160の断面が矩形状を成している場合を示しているが、これに限定されない。例えば、風道として塩ビ管なども利用することができる。塩ビ管は円形断面でも矩形断面でも構わない。また塩ビ管を利用する場合には、一本でなく複数本を束ねて利用する形式でもよい。ただし、塩ビ管の数が少ないと、塩ビ管一本あたりの風量(風速)が増して空気抵抗が大きくなるので、送風ファン0174の負荷が大きくなって好ましくない。したがって、塩ビ管の本数は塩ビ管の総開口面積が風道として必要な断面積0.15mから0.25m程度を満たすように決めることが好ましい。
<実施形態1 構成 混合空調室>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
二階天井懐0150の上方に配置された混合空調室0170は、図1Hの拡大縦断面図にも示すように、高さ寸法が60~140cm、好ましくは80cm程度の部屋であり、一端部(図示左端部)に位置して一階天井懐0140から風道0160を介して流通空気を取り入れる流通空気取入口0171と、この流通空気取入口0171の近傍に位置して取り入れた流通空気の一部を温調するエアコン0172と、このエアコン0172によって温調された空気と温調されないままの空気とを混合する空気混合スペース0173と、流通空気取入口0171とは反対側の一端部(図示右端部)に配置された複数台(本実施形態では床下空間用に4台、一階天井懐用に2台、二階天井懐用に2台、の合計8台であるが、図1F,1G,1Hでは4台のみ示している。)の送風ファン0174を具備している。これらの送風ファン0174は、風道0160を介して流通空気取入口0171から流通空気を取り入れるべく圧力差(本実施形態では陰圧)を作り出す機能、及び、空気混合スペース0173の混合空気を外部に強制送風して流通空気とする機能の二つの機能を有している。なお、風道0160から流通空気を取り入れる流通空気取入口0171及び送風ファン0174は、上述のように、混合空調室0170の両端部に配置されていることが望ましいが、必ずしもこの配置に限定されるものではない。
混合空調室0170に設置されるエアコン0172は、温調されて送風ファン0174によって排出されるべき流通空気と、温調されないで直接送風ファンによって排出される流通空気の量を適度にするように、流通空気取入口0171の近傍にエアコン0172を設置する。近傍とは、流通空気取入口0171の端縁部(風道0160との境目)からおおよそ50cm以内が好ましく、さらに好ましくは30cm以内である。また、図1Kに示すように、エアコン0172の室内熱交換器(建築物の外に配置される室外機とは別体を成す「室内エアコン本体」)の空気取入近傍において風道0160からの流通空気(太い白抜き矢印)がエアコン0172に取り入れられる流通空気(細い白抜き矢印)と、エアコン0172に取り入れられない流通空気(黒太矢印)とに分かれて流れるように混合空調室0170を構成することが好ましい。さらに、室内エアコン本体の温調された空気出口から排出される温調済の流通空気(斜線をあしらった細い矢印)と、直接排出されるべき未温調の流通空気(黒太矢印)とが互いに十分に混合されて混合空気(ドットをあしらった太い白抜き矢印)となるように、混合空調室0170の室内エアコン本体における空気出口の近傍に強制的に空気を混合するための強制空気混合スペース0173Aを設けることが好ましい。例えば、混合空調室0170に対して壁面側に設けられた流通空気取入口0171の直下にエアコン0172(室内エアコン本体)を設置すると共に、エアコン0172の前面に仕切り板0178を設けて強制空気混合スペース0173Aとするような構成が考えられる。
さらにまた、混合空調室0170は、後の実施形態において詳述するが、床面、壁面、天井面の少なくとも一の全部又は一部に防音材を配置することで遮音性能を高めるように構成することが好ましい。エアコン0172や送風ファン0174を配置した混合空調室0170からの音漏れによる影響をできるだけ小さくするためである。この際、必要に応じて遮熱シートを貼ってもよい。
混合空調室0170に対する流通空気取入口の配置は、床面に配置してもよいし、壁面に配置してもよい。また天井面に配置することも可能である。
混合空調室0170は、建築物の居室空間の上部又は側部に配置するのがよく、上述のように、建築物の床下には配置しない方がよい。建築物のコンクリート基礎の構造を複雑化しなくて済むからである。
ここで、混合空調室0170に流入する空気は、原則として風道0160経由のものとなる。ただし、混合空調室0170は、人の出入りができるように構成される場合があるので、人が出入りするためのドアやゲートなどの隙間からわずかながら流入することや、このドアやゲートなどを通って人が出入りするのに伴って少量の空気が流入することはある。
この混合空調室0170は、図1P,1Qの写真に示すように、風道0160と同じく通常の建築物の内壁と同等の材質で構成してよく、例えば、木材で構成することができる。木材で構成する場合には、その木材として杉、ヒノキ、べいまつ、もみの木、集成材、合板などを利用することができるが、特に、ヒノキを用いた場合には、ヒノキが有する抗菌作用により、混合空調室0170を清潔に保つことができ、加えて、ヒノキの良い香りが流通空気に付加されるので、流通空気を室内に導入する場合には、風道0160の場合と同じく室内空気をよい香りにするという効果も得られる。この場合もヒノキに限ったことではなく、もみの木やその他の木材でもよいほか、木材に香油を滲み込ませて利用することもできる。さらに、この混合空調室0170の壁面もしっくいで構成されてもよいし、木材としっくいなど混在させて構成してもよい。この際も、後の実施形態において詳述するが、混合空調室0170を建築物の内壁と同等の材質である石膏ボードで構成してよい。
なお、図1P,1Qの写真では、混合空調室0170の壁面に遮熱シートを貼付した場合を示しているが、この構成に限定されるものではない。
本実施形態において、空気流通空間を巡回している空気は、上述のように、自然循環を伴わないで混合空調室0170で生じる圧力差である陰圧に応じてほぼ唯一風道0160から流入する。したがって、夏場の冷房時でも冬場の暖房時でも空気の動きは同一となる。8台の送風ファン0174は送風速度が一定でもよいし、制御可能に構成されていてもよい。動かす台数なども個別制御可能でもよい。
床下空間用の4台の送風ファン0174と、一階天井懐用の2台の送風ファン0174と、二階天井懐用の2台の送風ファン0174との合計8台の送風ファン0174には、下向き断熱ダクト0175がそれぞれ接続されている。この下向き断熱ダクト0175にはフレキシブルな断熱ダクトを用いることが好ましく、下向き断熱ダクト0175と送風ファン0174との間に消音ダクト(図示省略)を介在させることがより好ましい。
この場合、混合空調室0170を構成する床面0170aの送風ファン0174の近傍には、外周壁0102の屋内側に配置した内壁0108に隣接するようにして上下方向に形成された筒状の配管スペース0177が開口しており、下向き断熱ダクト0175はこの配管スペース0177に配管されるようになっている。なお、本実施形態では、外周壁0102の屋内側に位置する内壁0108に隣接して配管スペース0177を配置するようにしているが、必ずしもこのような配置に限定されるものではない。また、混合空調室0170の流通空気は、原則としてこの送風ファン0174によってのみ混合空調室0170外に排出されるように構成される。混合空調室0170に出入りするための障子や、障子の隙間から漏れる流通空気は例外である。
本実施形態において、配管スペース0177には、流通空気を床下空間0120に導く4本の下向き断熱ダクト0175と、流通空気を一階天井懐0140に導く2本の下向き断熱ダクト0175と、流通空気を二階天井懐0150に導く2本の下向き断熱ダクト0175との合計8本の下向き断熱ダクト0175が配管されるが、図1F,Hでは床下空間0120用の2本、一階天井懐0140用の1本、二階天井懐0150用の1本の合計4本の下向き断熱ダクト0175のみを示している。
このように、下向き断熱ダクト0175によって流通空気を床下空間0120に導くと共に、一階天井懐0140に流通空気を導入して、一階の居室0110の床面0112及び天井面0113をそれぞれ加熱(又は冷却)することにより、床面0112及び天井面0113からの輻射熱量の増大(又は減少)によって一階の居室0110内の人を温める(又は冷やす)ことができるようにしている。
また、下向き断熱ダクト0175によって一階天井懐0140に流通空気を導入すると共に、二階天井懐0150に流通空気を導入して、二階の居室0110の床面0112及び天井面0113をそれぞれ加熱(又は冷却)することにより、床面0112及び天井面0113からの輻射熱量の増大(又は減少)によって二階の居室0110内の人を温める(又は冷やす)ことができるようにしている。
なお、混合空調室0170も、風道0160と同様に一の建築物に原則的には一つの混合空調室を備えるが、建築物の床面積が比較的大きい場合などは複数の混合空調室があってもよいし、一つの混合空調室0170に複数台のエアコン0172があってもよいし、一つの混合空調室0170に複数の風道0160及び複数台のエアコン0172があってもよい。
<実施形態1 構成 給気グリル 開閉自在>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
給気グリル0180は、図1Bのa-a線位置での縦断面図である図1Dに示すように、一階居室0110及び二階居室0110の各天井面0113にそれぞれ配置されている。この給気グリル0180は、手動或いは電動により開閉自在となっており、この給気グリル0180を開けた状態(図1Dに仮想線で示す状態)において、空気流通空間である一階天井懐0140及び二階天井懐0150を流通する流通空気を居室0110に取り入れることができるようにしている。すなわち、給気グリル0180を開けて流通空気を居室0110に取り入れることで、流通空気による輻射冷暖房に加えて、空気を媒体とした熱伝達によって居室0110内の温度を高める(又は下げる)こともできるようにしている。なお、後述するように、空気流通空間が壁面側にも存在する場合には、給気グリルは、壁面に設けられていてもよい。
<実施形態1 構成 給気グリル 常時開>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
また、本実施形態に係る建築物の給気グリル0180は、常時開として形成することができる。このように、常時開として形成した給気グリル0180は、新鮮空気を居室に取り入れるために用いられる。この際、建築物0100に設定した空気流通空間は、換気扇による換気が常時成される環境としており、例えば、換気扇により空気流通空間に取り込んだ新鮮空気は、この空気流通空間である一階天井懐0140及び二階天井懐0150を流通する流通空気とともに流れて、一階居室0110及び二階居室0110の各天井面0113における常時開の給気グリル0180から居室0110内に取り込まれる。つまり、新鮮空気は、混合空調室0170のエアコン0172で温調された流通空気と同じ経路を辿りつつ温調された流通空気に混ざって居室0110内に取り込まれる。したがって、本実施形態に係る給気グリル0180を常時開として形成した場合には、居室0110内に新鮮空気を取り込むことができる以外に、温調された流通空気により居室0110内の温度を暖めたり冷やしたりする効果も期待することができる。
<実施形態1 構成 給気グリル 開閉自在+常時開>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
さらに、本実施形態に係る建築物において、手動或いは電動により開閉自在として形成した給気グリル0180と、常時開として形成した給気グリル0180とを寝室やダイニングキッチンDK等の居室0110の形態に合わせて選択的に配置することができる。
<実施形態1 作用 輻射による冷暖房 給気グリル
<(主に請求項1,6,10に対応)>
本実施形態に係る建築物0100では、輻射による冷暖房を行う輻射冷暖房モードにおいて、混合空調室0170の内部は、作動中の送風ファン0174によって生じる圧力差により陰圧環境となっており、図1Fに示すように、風道0160から流通空気取入口0171を介して空気が入り込む(流通空気の流れを矢印で示す)。
この流通空気取入口0171から入り込む空気のうち、送風ファン0174と同じく作動中のエアコン0172で温調された図1Fに実線矢印で示す空気は、混合空調室0170の空気混合スペース0173において、エアコン0172によって温調されないままエアコン0172を通り過ぎた風道0160からの図1Fに破線矢印で示す空気と混合される。
この際、図1Kを用いて上述したように、混合空調室0170の端部に設けられた流通空気取入口0171の直下にエアコン0172を設置すると共に、エアコン0172の前面に仕切り板0178を設けて強制空気混合スペース0173Aとすることで、温調空気と未温調空気とをより確実に混合させることができる。
この空気混合スペース0173(強制空気混合スペース0173A)で混合された空気は、実線矢印で示す流通空気として送風ファン0174によって配管スペース0177に配管された下向き断熱ダクト0175を介して床下空間0120に強制的に送風されると共に、一階天井懐0140及び二階天井懐0150にもそれぞれ強制的に送風される。
床下空間0120では、下向き断熱ダクト0175を介して強制的に送風された流通空気が床下全体にわたって流通することによって、一階の居室0110の熱輻射可能な床面0112を加熱又は冷却する。
一方、一階天井懐0140では、下向き断熱ダクト0175を介して強制的に送風された流通空気が一階天井懐全体にわたって流通することによって、一階の居室0110の熱輻射可能な天井面0113及び二階の居室0110の熱輻射可能な床面0112をそれぞれ加熱又は冷却する。
この際、二階天井懐0150でも、一階天井懐0140と同様に、下向き断熱ダクト0175を介して強制的に送風された流通空気が二階天井懐全体にわたって流通することによって、二階の居室0110の熱輻射可能な天井面0113を加熱又は冷却する。
このように、床下空間0120,一階天井懐0140及び二階天井懐0150の各空気流通空間全体において流通する流通空気で、一階の居室0110の床面0112及び天井面0113、並びに、二階の居室0110の床面0112及び天井面0113を加熱又は冷却し、これにより一,二階の居室0110の各床面0112及び天井面0113からの輻射熱量をそれぞれ増大又は減少させることで、一階居室0110内及び二階居室0110内の各滞在者の体感温度を最適化し得ることとなる。
一階天井懐0140において流通して一階の居室0110の天井面0113及び二階の居室0110の床面0112をそれぞれ加熱又は冷却した流通空気は、作動中の8台(図示4台)の送風ファン0174により陰圧環境となっている混合空調室0170の内部に風道0160及び空気取入口0171を介し略吸引状態で入り込むこととなる。
そして、流通空気取入口0171から入り込んだ流通空気は、上記と同様にしてエアコン0172で温調され、温調されない空気と混合されて再び、流通空気として床下空間0120,一階天井懐0140及び二階天井懐0150のそれぞれにおいて流通することとなる。
このように、輻射による冷暖房を行う輻射冷暖房モードでは、流通空気が居室0110を原則的に経由しないうえ、各居室0110間がドアやふすまや窓等の障子Dの隙間を介する以外は、常時直接に空間的にはつながらないようにしているので、後の実施形態で詳述する「ショートカット給気口」を開かない限り、居室0110内の空気が空気流通空間を循環することがほとんどなく、例えば、キッチンやダイニングにおける料理や食材の匂いが障子Dで閉ざされた居室0110に入り込むことがほとんどない。
<実施形態1の重要用語の説明:輻射熱>
ここで、居室内の滞在者が快適に過ごせる温度環境とは、居室内の滞在者における最適な熱収支を実現して、体温調節することである。図1Nは、この熱収支を説明するための概念図である。この図では、1方向のみの熱収支を例示しているが、これは図の煩雑さを避けるためであり、実際はすべての方向で熱収支が存在する。元来、滞在者は摂食、代謝、排泄、呼吸、発汗などの生理現象や運動により、熱の生産と放散をして一定の体温(36℃~37℃)を維持している。さらに、居室内の滞在者の体温に見合った一定の輻射熱(Rs)も放散している。逆に、居室内の滞在者は、内壁面、天井面、床面等の居室内面(通常は人の体温よりも低温)からの表面温度に見合う輻射熱(Rw)を受けている。また、周辺の空気(通常は人の体温よりも低温)に対しても伝達による熱(Rr)の放散もしている。
熱収支のバランスが崩れ、最適値より下がれば人は「寒い」と感じ、最適値を上回れば人は「暑い」と感じる。従って、居室内の滞在者が快適に過ごせる熱収支は一定の最適値である。また、居室内の滞在者からの輻射熱も一定であることから、居室内の滞在者への内壁面、天井面、床面等の居室内面からの輻射熱と周辺の空気への伝達による熱の放散の合計値は一定となる。換言すれば、居室内空気の温度が低く体温との差が大きい場合は、周辺の空気への伝達による熱の放散は大きくなるので、その分居室内面を加熱して居室内の滞在者への居室内面からの輻射熱を大きくして、居室内の滞在者が快適に過ごせる最適な熱収支を実現する。本明細書では、このことを加熱された内壁面と床面と天井面等の居室内面からの輻射熱量の増大によって居室内の滞在者を温める、などと表現するものとしている。居室内空気の温度が高く体温との差が小さい場合は、周辺の空気への伝達による熱の放散は小さくなるので、その分内居室内面を冷却して居室内の滞在者への居室内面からの輻射熱を小さくして、居室内の滞在者が快適に過ごせる最適な熱収支を実現する。本明細書では、このことを冷却された内壁面と床面と天井面等の居室内面からの輻射熱量の減少によって室内の人を冷やす、などと表現するものとしている。
<実施形態1 作用 空気を媒体とした熱伝達による冷暖房 給気グリル開>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
本実施形態に係る建築物0100において、空気を媒体とした熱伝達による冷暖房を行う熱伝達冷暖房モードの場合は、図1Dに示すように、一階居室0110及び二階居室0110のうちの熱伝達冷暖房モードを望む居室0110(図示例では全室)の天井面0113に配置されている給気グリル0180を図1Dに仮想線で示すように開放する。
この給気グリル0180の開放により、空気流通空間である一階天井懐0140及び二階天井懐0150を流通する矢印で示す流通空気を居室0110に取り入れることができ、このように、流通空気を居室0110に取り入れることで、居室0110内の温湿度を急速に変化させる状況にも対応し得ることとなる。
本実施形態に係る建築物0100では、風道0160が一階天井懐0140で下向きに開口する(風道0160の下端部が居住空間の上部に位置する)ようにしていると共に、混合空調室0170を二階天井懐0150の上方に配置する(混合空調室0170が居住空間の上部に位置する)ようにしている。
したがって、上述したように、床下空間に冷暖房用エアコン及び冷気上昇用送風機を配置した従来の輻射による冷暖房を行う建築物(図1L,1M参照)と比べて、図1Iに示すように、コンクリート基礎Cの形状の簡略化を実現することができる。
<実施形態1 作用 空気を媒体とした熱伝達による冷暖房 給気グリル常時開>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
また、本実施形態に係る建築物0100において、給気グリル0180を常時開として形成すると共に、空気流通空間を換気扇による換気が常時成される環境とすると、換気扇により空気流通空間に取り込まれた新鮮空気は、空気流通空間である一階天井懐0140及び二階天井懐0150を流通する流通空気とともに流れて、一階居室0110及び二階居室0110の各天井面0113における常時開の給気グリル0180から居室0110内に取り込まれる。
このように、給気グリル0180を常時開とした場合には、新鮮空気を、流通空気、すなわち、混合空調室0170のエアコン0172で温調された流通空気に混ぜて居室0110内に取り込めるので、居室0110内に新鮮空気を取り込むことができるのに加えて、空気を媒体とした熱伝達による冷暖房も行うことができる。
なお、本実施形態に係る建築物0100の冷暖房時において、混合空調室0170のエアコン0172及び8台(図示4台)の送風ファン0174をいずれも動作させるようにしているが、上述したように、エアコン0172及び8台の送風ファン0174をそれぞれ独立して動作させるようにしてもよい。例えば、暑くもなく寒くもない気候時には、エアコン0172を作動させずに流通空気を流すだけでも十分な場合が想定され、その場合には、送風ファン0174のみを動作させるようにすることで、消費電力を少なく抑え得るからである。
また、8台あるうちの送風ファン0174を選択して動作させたり、送風ファン0174の回転数を調整できるようにしたりするようにしてもよい。これは、居室0110の内壁面、床面、天井面を適切な温度に保つために、所定の温度に調整した流通空気をどれくらいの流量で流通させるかに最適値があるためである。つまり、人が快適と感じる状態を保つために、外気温等との関係で最も効率が良い流通空気の温度と、内壁面、床面、天井を流通する流通空気の流速が決定される。例えば、流通空気の温度とその際に最適な流量を得るための送風ファン0174の作動台数及び送風ファン0174の回転数をコンピュータによって自動的に計算させて、送風ファン0174の作動台数及び送風ファン0174の回転数を制御するように構成することができる。
<実施形態1 効果>
<(主に請求項1,6,10に対応)>
本実施形態に係る建築物において、居室を構成する壁面等からの輻射熱を制御することによって、居室滞在者の体感温度を最適化することができるのに加えて、居室に空気を熱媒体として取入可否を自在に制御し又は取り入れることによって、居室内の温度を急速に最適温度(熱輻射による体感温度が最適になる範囲)に変化させる状況にも対応することが可能であるという非常に優れた効果が得られる。また、居室内の空気を常時新鮮な空気とすることもできるという効果がある。
さらに、コンクリート基礎の形状の簡略化を実現することが可能であるという非常に優れた効果が得られる。
<実施形態2(主に請求項2に対応)>
<実施形態2 概要>
本実施形態は、実施形態1を基本とし、風道が外壁面に接さないように構成されていることを特徴としている。
本発明に係る建築物では、混合空調室から床下空間や天井懐等の空気流通空間に送出した流通空気が風道に戻るまでの過程において、床面、壁面、天井面等を暖めたり冷やしたりするので、建築物の角部分のような極端に外周壁に近い部位に風道を配置すると、長い距離を移動して風道に戻る流通空気と、短距離の移動で風道に戻る流通空気とが生じることとなり、この流通空気の移動距離の違いによって冷暖房効率の低下を招く可能性がある。
本実施形態では、風道を建築物の外壁面に接さないように離れた位置に配置することで、床面、壁面、天井面等を暖めたり冷やしたりした流通空気が、風道に対してほぼ全方位から戻るようにしているので、流通空気の移動距離の違いによる温度ムラが生じ難くなり、効率の良い冷暖房を行い得ることとなる。
また、本実施形態に係る建築物では、酷暑時や極寒時において、風道を通過する流通空気が外気の影響を受け難くなり、エアコンの負荷増大を抑え得ることとなる。
<実施形態2 構成>
<(主に請求項2に対応)>
図2に部分的に示すように、本実施形態に係る建築物が、実施形態1に係る建築物と相違するところは、外壁面である外周壁0202の屋内側(図示右側)に外部通気層0209を介して順次配置された断熱材0207及び内壁0208に対して、風道支持部材0261を介して風道0260を配置した点にある。すなわち、風道0260を外周壁0202の内壁0208に接さないように離れた位置に配置した点にある。
つまり、本実施形態では、内壁0208と風道0260との間に風道支持部材0261を設けて、風道0260を外周壁0202の内壁0208から離れた位置に配置することで、床面、壁面、天井面等を暖めたり冷やしたりした流通空気が、風道0260に対して図2に矢印で示すようにほぼ全方位から戻るようにしている。加えて、風道0260を通過する流通空気が外気温度の影響を受け難くなるようにしている。
<実施形態2 効果>
<(主に請求項2に対応)>
本実施形態によれば、床面、壁面、天井面等を暖めたり冷やしたりした流通空気が、風道0260に対してほぼ全方位から戻るので、流通空気の移動距離の違いによる温度ムラが生じ難くなり、効率の良い冷暖房を行うことが可能になるという効果を奏する。
また、酷暑時や極寒時であったとしても、風道を通過する流通空気が外気の影響をほとんど受けないので、エアコンにかかる負荷が増えるのを少なく抑え得るという効果を奏する。
<実施形態3(主に請求項3に対応)>
<実施形態3 概要>
本実施形態は、実施形態1を基本とし、風道の壁面の少なくとも一部は、防音手段(遮音又は/及び吸音を含む。以下同じ。)又は/及び、断熱手段(断熱材又は/及び、断熱構造を含む。以下同じ)で直接又は間接に防音又は/及び断熱されていることを特徴としている。
本実施形態の建築物では、遮音又は/及び吸音を含む防音手段を風道の壁面の少なくとも一部に配置することで、混合空調室内で発生するエアコン及び送風ファンの作動音が風道を通して空気流通空間や居室に漏れ出るのを軽減し得ることとなり、必要に応じて配置される断熱材又は/及び、断熱構造を含む断熱手段により、風道を通過する流通空気の熱量の損失を少なく抑え得ることとなる。
<実施形態3 構成>
<(主に請求項3に対応)>
図3に部分的に示すように、本実施形態に係る建築物が、上記した実施形態1に係る建築物と比較して特徴とするところは、角筒状を成す風道0360の内壁面0362を防音手段0363で直に被覆した点にある。
<実施形態3 防音手段の説明>
<(主に請求項3に対応)>
ここで、「防音手段」の防音には、遮音又は/及び吸音の要素が含まれている。
遮音とは、例えば、居室に入り込んだり居室から漏れ出たりする音を遮ることであり、遮音材としては、コンクリート、石膏ボード、合板、アスファルトマット、ゴムマット、鉛シート、インシュレーションファイバーボード、木毛セメント板、ウレタンシート、不織布シート、布シート、毛シート、スポンジシート等を挙げることができる。なお、板状、シート状を例に挙げたがこれに限定されるものでなく、細かい性状の材料を所定の空間に配置したものであってもよい。コンクリートや石膏ボードのような単一の材料で構成された材料を採用する場合には、単位面積当たりの質量(面密度)が大きいほど、透過損失(遮音性能)が大きくなるので、コストパフォーマンスに見合った面密度のものを採用することが望ましい。
一方、吸音とは、天井面や壁面に吸音材を設置し、その居室で発生した音の反射を小さくしたり居室内の響きを低減したりして居室内騒音レベルを低減することであり、吸音材としては、多孔質型材料、板(膜)状材料及び共鳴器型材料の3種類の材料に分類される。
多孔質型材料としては、毛細管や連続気泡をもつ材料としてグラスウール、ロックウール、ウレタンスポンジ、フェルト等が挙げられ、このような多孔質型材料に音が入射すると、毛細管や連続気泡中において、摩擦や粘性抵抗や振動等によって音エネルギの一部が熱エネルギとして消費される。なお、ガラス繊維を綿状に加工したグラスウールは、吸音材の他に断熱材、防火性を高める不燃材料としても使用される。
板(膜)状材料としては、気密な材料として薄いベニヤ板やカンバス等が挙げられ、このような板(膜)状材料に音が当たると、板振動や膜振動をして音エネルギの一部がその内部摩擦によって消費される。
共鳴器型材料としては、有孔ボード、パンチングメタル等が挙げられ、このような共鳴器型材料の場合、音が当たると、空洞に続く孔の部分の空気が共鳴周波数に近い周波数で激しく振動して、音エネルギの一部が周辺との摩擦熱として消費される。
<実施形態3 構成 防音手段>
<(主に請求項3に対応)>
本実施形態において、風道0360の壁面0362を覆う防音手段0363は、図3の拡大円内に断面で示すように、遮音材である面密度が高めの2枚の石膏ボード0363a,0363aと、吸音材である多孔質型材料としてのグラスウール0363bから成っており、2枚の石膏ボード0363a,0363a間にグラスウール0363bを配置することで、混合空調室内で発生するエアコン及び送風ファンの作動音に2枚の石膏ボード0363a,0363aが共鳴するのを防ぐようにしている。この際、ガラス繊維を綿状に加工したグラスウール0363bは断熱材としても機能するようになっている。
なお、下向き断熱ダクトを配管する配管スペースの内壁面を上記防音手段(グラスウールを2枚の石膏ボードで挟み込んで成る防音手段)で直に被覆するようにしてもよく、この場合には、混合空調室内で発生するエアコン及び送風ファンの作動音が下向き断熱ダクトから漏れ出て居室に届くのを防ぐことができる。
<実施形態3 効果>
<(主に請求項3に対応)>
本実施形態によれば、混合空調室内で発生するエアコンや送風ファンの作動音が風道を通して混合空調室外の空気流通空間や居室に漏れ出るのを少なく抑え得るので、静かなより快適な居住空間を提供することができる。
また、風道に必要に応じて断熱材を配置することで、風道を通過する流通空気の熱量の損失を少なく抑えることに寄与し得る。
<実施形態4(主に請求項4,5に対応)>
<実施形態4 概要>
本実施形態は、実施形態1~3を基本とし、風道の壁面の少なくとも一部は、居室空間の壁面で構成されるようにし、さらに、風道が少なくとも二以上の居室に沿って設けられていることを特徴としている。
本実施形態の建築物では、風道が突出感なく居室空間に溶け込むこととなり、見栄えが良くなると共に、レイアウトの自由度が拡がることとなる。
<実施形態4 構成>
<(主に請求項4,5に対応)>
二階の部分横断面図である図4に示すように、本実施形態に係る建築物0400が、上記した実施形態1~3に係る建築物と相違するところは、隣接する居室0410a,0410b間において双方に沿うようにして風道0460を配置した点にある。具体的には、居室0410a,0410b間を仕切るようにして配置した一方の居室0410a用の収納庫0415に風道0460を組み込んだ構成としており、収納庫0415の正面である内壁面0411aと、収納庫0415の背面である内壁面0411bで風道0460の互いに相反する方向を向く一対の壁面(図示上下面)を構成している。
<実施形態4 効果>
<(主に請求項4,5に対応)>
本実施形態によれば、風道を居室と一体化するようにしているので、風道を突出感なく居室空間に溶け込ませることができ、その分だけ、見栄えの向上を実現することが可能であると共に、レイアウトの自由度を拡げることができるという効果を奏する。
<実施形態5 (主に請求項8,9に対応)>
<実施形態5 概要>
本実施形態は、実施形態1~4を基本とし、居室の天井面、床面、少なくとも一部の壁面が、略面状に流通空気を流通させる流通空間で冷やされ、又は、暖められるようにし、各居室の流通空間は相互に空間的につながっている構成としている。
本実施形態の建築物では、居室が、床面及び天井面だけでなく壁面も、略面状に流通空気を流通させる流通空間で冷やされ、又は、暖められるので、居室滞在者がより多くの方向から電磁波を吸収し、又はより多くの方向に通常よりも多くの電磁波を放出することになり、居室滞在者の体感温度を効率よく最適化し得ることとなる。
<実施形態5 構成 >
<(主に請求項8,9に対応)>
図5Aに示すように、本実施形態に係る建築物0500では、外周壁0502の屋内側に外部通気層0509outを介して順次配置される断熱材0507と内壁0508との間に内部通気層0509inを設けており、この内部通気層0509inは、図5Bに示すように、空気流通空間である床下空間0520,一階天井懐0540及び二階天井懐0550と空間的に連結されている。この内部通気層0509inは、断熱材0507と内壁0508との間において流通空気を略面状に行き渡らせる流通空間であり、このように構成することで、内壁0508に部分的な温度分布ができるのを防いだうえで、内壁0508を面で冷やしたり暖めたりするようにしている。
また、本実施形態に係る建築物0500では、隣接する居室0510を仕切る仕切壁0515の内部にも仕切壁内部通気層0515inを設けている。この仕切壁内部通気層0515inは、内部通気層0509inに連通していると共に、空気流通空間である一階天井懐0540及び二階天井懐0550と空間的に連結されている。この仕切壁内部通気層0515inは、仕切壁0515の内部において流通空気を略面状に行き渡らせる流通空間であり、このように構成することで、仕切壁0515の両面が構成する居室0510の各内壁面0511a,0511bに部分的な温度分布ができるのを防いだうえで、内壁面0511a,0511bを面で冷やしたり暖めたりするようにしている。
さらに、本実施形態に係る建築物0500では、図5A左側に位置して互いに隣接する居室0510a,0510bを仕切るようにして配置した一方の居室0510a用の収納庫0515Aにも仕切壁内部通気層0515inを設けている。具体的には、収納庫0515Aの背面側内壁0515Abの内部にも仕切壁内部通気層0515inを設けており、この仕切壁内部通気層0515inも、内部通気層0509inに連通していると共に、空気流通空間である一階天井懐0540及び二階天井懐0550と空間的に連結している。このように構成することで、収納庫0515Aの背面側内壁0515Abの両面が構成する居室0510a,0510bの各内壁面0511a,0511b(一方の居室0510aでは収納庫0515A内の内壁面0511a)に部分的な温度分布ができるのを防いだうえで、内壁面0511a,0511bを面で冷やしたり暖めたりするようにしている。
<実施形態5 作用 輻射による冷暖房>
<(主に請求項8,9に対応)>
本実施形態に係る建築物0500では、輻射による冷暖房を行う輻射冷暖房モードにおいて、図5Bに示すように、混合空調室0570の空気混合スペース0573で混合された実線矢印で示す温調空気及び破線矢印で示す未温調空気は、実線矢印で示す流通空気として送風ファン0574によって配管スペース0577に配管された下向き断熱ダクト0575を介して床下空間0520及び二階天井懐0550に強制的に送風される。
床下空間0520及び二階天井懐0550では、強制的に送風された流通空気がそれぞれ全体にわたって流通することによって、一階の居室0510の床面0512及び二階の居室0510の天井面0513を加熱又は冷却する。
この際、床下空間0520及び二階天井懐0550においてそれぞれ全体にわたって流通する流通空気は、これらの空気流通空間と空間的に連結されている内部通気層0509in及び仕切壁0515(収納庫0515Aの背面側内壁0515Abを含む)の仕切壁内部通気層0515inで略面状に行き渡り、このようにして流通空気が内部通気層0509in及び仕切壁内部通気層0515inを全体にわたって流通することによって、一階の居室0510及び二階の居室0510の各内壁面0511,0511a,0511bを加熱又は冷却する。
そして、内部通気層0509in及び仕切壁内部通気層0515inを全体にわたって上昇して一階天井懐0540に流れ込む床下空間0520からの流通空気と、内部通気層0509in及び仕切壁内部通気層0515inを全体にわたって下降して一階天井懐0540に流れ込む二階天井懐0550からの流通空気とが合流して一階天井懐0540を全体にわたって流通することによって、一階の居室0510の天井面0513及び二階の居室0510の床面0512を加熱又は冷却する。
これにより、一,二階の居室0510の各床面0512,天井面0513及び内壁面0508,0511a,0511bからの輻射熱量をそれぞれ増大又は減少させることで、一階居室0510内及び二階居室0510内の各滞在者の体感温度を最適化し得ることとなる。
一階天井懐0540に流れ込んで合流した床下空間0520からの流通空気と二階天井懐0550からの流通空気は、作動中の4台の送風ファン0574により陰圧環境となっている混合空調室0570の内部に風道0560及び空気取入口0571を介し略吸引状態で入り込むこととなる。
<実施形態5 構成 内部通気層 補足 >
<(主に請求項8,9に対応)>
図11は、内部通気層1106a,1106bを有することを説明するための縦断面を用いた概念図である。ここでは、建築物は、外周壁1101a,1101b(図中、黒色で塗りつぶされている部分)と、床下構造物1102と屋根裏構造物1103と2つの居室1100a,1100bとを有している。すべての内壁面のうち、建築物の外周壁の内側を構成する内壁面1104a,1104bと、外側にさらに配される断熱材1105a,1105bとの間に、床下構造物1102及び屋根裏構造物1103側に形成されている空気流通空間と空間的に連結された内部通気層1106a,1106bを有しており、図示しない混合空調室で十分に加熱された又は冷却された温調空気は、この内部通気層1106a,1106bを行き渡り、空間の一方を構成する内壁面を加熱又は冷却する。また、空間の反対側を構成する断熱材1105a,1105bの断熱効果によって、温調空気から外気への熱の移動を極力小さくする。
<実施形態5 効果>
<(主に請求項8,9に対応)>
本実施形態の建築物では、居室が、床面及び天井面だけでなく、内壁面や仕切壁の内壁面も、略面状に流通空気を流通させる内部通気層及び仕切壁内部通気層で冷やされ、又は、暖められるので、居室滞在者がより多くの方向から電磁波を吸収又は放出することになり、居室滞在者の体感温度を効率よく最適化することが可能である。
<実施形態6 (主に請求項11に対応)>
<実施形態6 概要>
本実施形態は、実施形態1~5を基本とし、風道と、居室の少なくとも一部とを空間的に接続するための開閉自在なショートカット給気口を有する構成としている。
本実施形態の建築物では、居室内の空気が風道を介して混合空調室に導入されてエアコンによって温調されるので、エアコンが居室内の温熱環境にリアルタイムで反応することとなり、その結果、より快適な居住空間を作り上げることができる。
<実施形態6 構成 >
<(主に請求項11に対応)>
図6A(風道及び混合空調室位置での縦断面図)及び図6B(二階の横断面図)に示すように、本実施形態に係る建築物0600が、上記した実施形態1~5に係る建築物と相違するところは、風道0660と居室0610とを空間的に接続するための開閉自在なショートカット給気口0685を風道0660に設けた点にある。本実施例では、ショートカット給気口0685を3か所に配置しているが、これよりも少なくてもよいし、多くてもよい。
このショートカット給気口0685は、手動或いは電動により開閉自在となっており、このショートカット給気口0685を開けた状態において、風道0660を介して居室0610内の空気を混合空調室0670に導入することができるようにしている。
<実施形態6 作用 >
<(主に請求項11に対応)>
本実施形態に係る建築物0600では、ショートカット給気口0685を開放すると、送風ファン0674の作動により陰圧環境にある混合空調室0670に居室0610内の空気が図6A及び図6Bに実線矢印で示すようにしてショートカット給気口0685及び風道0660を介して引っ張られる。これと同時に、引っ張られた空気と入れ替わるようにして、仮想線で示すようにして開放した開閉自在な給気グリル0680(或いは常時開とした給気グリル0680)を介して二階天井懐0650を流通する仮想線矢印で示す流通空気が居室0610内に流入する。
ショートカット給気口0685及び風道0660を介して混合空調室0670側に引っ張られた居室0610内の空気は、混合空調室0670内においてエアコン0672によって温調されることとなる。
<実施形態6 効果>
<(主に請求項11に対応)>
本実施形態の建築物では、居室内の空気が混合空調室に導入されてエアコンの温調に供されるので、エアコンが居室内の温湿度の高低にリアルタイムで反応することとなり、その結果、より快適な居住空間を作り上げることができるという効果が得られる。。
<実施形態7 (主に請求項12に対応)>
<実施形態7 概要>
本実施形態は、実施形態1~6を基本とし、混合空調室の空気混合スペース、風道、空気流通空間のいずれか一以上に、蓄熱、調湿、消臭、抗菌、除菌、清浄の少なくともいずれか一の機能を空気に対して果たす機能器を配置した構成としている。
本実施形態の建築物では、流通空気に対する蓄熱、調湿、消臭、抗菌、除菌、清浄等の機能を有する機能器の組み合わせ組み替えを自由且つ柔軟に行うことができる。
<実施形態7 構成 >
<(主に請求項12に対応)>
風道及び混合空調室位置での拡大縦断面図である図7に示すように、本実施形態に係る建築物0700が、上記した実施形態1~6に係る建築物と相違するところは、混合空調室0770の空気混合スペース0773及び風道0760に、蓄熱、調湿、消臭、抗菌、除菌、清浄の少なくともいずれか一の機能を空気に対して果たす機能器0778を配置した点にある。
なお、蓄熱、調湿、消臭、抗菌、除菌、清浄の少なくともいずれか一の機能を空気に対して果たす機能器0778を混合空調室0770の内壁面、天井面及び床面に面状に配置するようにしてもよいほか、風道0760の内壁面に機能器0778を面状に配置するようにしてもよい。
<実施形態7 効果>
<(主に請求項12に対応)>
本実施形態の建築物では、輻射による冷暖房に使用される流通空気が集まる混合空調室の空気混合スペース及び風道に、流通空気に対する蓄熱、調湿、消臭、抗菌、除菌、清浄の少なくともいずれか一を行う機能器を配置するようにしているので、機能器の組み合わせや組み替えを自由且つ柔軟に行うことができると共に、機能器の保守管理の容易化が図られる。
<実施形態8 (主に請求項13に対応)>
<実施形態8 概要>
本実施形態は、実施形態1~7を基本とし、流通空気の内、居室内に導入されて冷暖房するために利用された空気を直接的に外気に排気するための居室に設けられた居室空気排気口と、居室空気排気口から排気される流通空気を空気流通空間に戻入しないで直接的に外気に排気する排気管と、をさらに有する構成としている。
本実施形態の建築物では、冷暖房するために居室内に導入した流通空気を空気流通空間に戻さずに直接的に外気に排気するようにしているので、流通空気を常に綺麗に保つことができる。
<実施形態8 構成 >
<(主に請求項13に対応)>
図8に示すように、本実施形態に係る建築物0800が、上記した実施形態1~7に係る建築物と相違するところは、居室0810毎に居室空気排気口0817を設けると共に、居室0810の各居室空気排気口0817と接続する排気管0818を設けた点にある。
居室空気排気口0817は、冷暖房するために給気グリル0880を介して居室0810内に導入した空気流通空間を流通する流通空気を外気に排気するための排気口である。
一方、居室0810の各居室空気排気口0817と接続する排気管0818は、一階天井懐0840に配置されて、冷暖房するために給気グリル0880を介して居室0810内に導入した流通空気を空気流通空間に戻さずに直接的に外気に排気する管である。
<実施形態8 効果>
<(主に請求項13に対応)>
本実施形態の建築物では、冷暖房するために居室内に導入した流通空気を直接外気に排気するようにしているので、流通空気を常に綺麗に保つことができる。
<実施形態9 (主に請求項14に対応)>
<実施形態9 概要>
本実施形態は、実施形態8を基本とし、外気からフレッシュ空気を導入するフレッシュ空気導入管と、排気管を流通する温調された空気とフレッシュ空気導入管から導入される温調されていないフレッシュ空気との熱交換をするための熱交換器をさらに有する構成としている。
本実施形態の建築物では、新鮮な空気が空気流通空間である床下空間や天井懐を流通するので、空気流通空間における内部結露による建築物構造部材の腐朽や、シロアリ被害のリスクを減らすことができ、加えて、空気流通空間を流通する流通空気の熱量の損失を少なく抑えることができる。
<実施形態9 構成 >
<(主に請求項14に対応)>
図9に示すように、本実施形態に係る建築物0900が、上記した実施形態8に係る建築物と相違するところは、外気からフレッシュ空気を一階天井懐0940に導入するフレッシュ空気導入管0919を設けると共に、このフレッシュ空気導入管0919と居室0910の各居室空気排気口0917と接続する排気管0918との間で熱交換をするための熱交換器0920を設けた点にある。熱交換器0920では、排気管0918を流通する温調された空気(冷暖房のための空気)とフレッシュ空気導入管0919から導入される温調されていないフレッシュ空気との熱交換を行うものでる。
<実施形態9 効果>
<(主に請求項14に対応)>
本実施形態の建築物では、空気流通空間に外気からフレッシュ空気を導入するフレッシュ空気導入管を有しているので、新鮮な空気が空気流通空間である床下空間や天井懐を流通することとなり、空気流通空間における内部結露による建築物構造部材の腐朽や、シロアリ被害のリスクを減らすことができ、加えて、排気管を流通する温調された空気とフレッシュ空気導入管から導入される温調されていないフレッシュ空気との熱交換をするための熱交換器を有しているので、空気流通空間を流通する流通空気の熱量の損失を少なく抑えることができる。
<実施形態10(主に請求項7に対応)>
<実施形態10 概要>
本実施形態は、実施形態1~9を基本とし、混合空調室に、防音手段、制振・防振手段のいずれか一以上の手段による防音、制振・防振がしてある構成としている。
本実施形態の建築物では、混合空調室に、防音手段、制振・防振手段のいずれか一以上の手段による防音、制振・防振がなされているので、混合空調室内に配置したエアコン及び複数台の送風ファンの作動音が混合空調室から空気流通空間に漏れ出たり、作動中のエアコン及び複数台の送風ファンの振動が混合空調室から居室に伝わったりするのが抑制されることとなり、静かで快適な居住空間を得ることができる。
<実施形態10 構成 >
<(主に請求項7に対応)>
図10Aの空調室の縦断面図に示すように、本実施形態に係る建築物1000が、上記した実施形態1~9に係る建築物と比較して特徴的なところは、混合空調室1070の床面1070a及び流通空気取入口1071に防音手段1085を設けた点と、混合空調室1070内に複数台配置した送風ファン1074の作動時における振動が混合空調室1070の構造物に伝わるのを抑えるための制振・防振手段1090を設けた点にある。
<実施形態10 防音手段、制振・防振手段の説明>
<(主に請求項7に対応)>
「防音手段」については、実施形態3で説明したので、ここでは省略する。
「制振・防振手段」は、振動源とこれを支持する構造物との間に設置される油圧ダンパー、ゴムダンパー等の制振装置や、防振ゴム等の緩衝材であり、振動源で生じる振動が構造物に伝わるのを防ぐのに用いられる。
<実施形態10 構成 防音手段及び制振・防振手段>
<(主に請求項7に対応)>
本実施形態において、混合空調室1070の床面1070aには、防音手段として遮音材料である面密度が大きいアスファルト1085Aを敷いており、混合空調室1070内のエアコン1072及び送風ファン1074の各作動音が二階天井懐1050を経て居室に漏れるのを防ぐようにしている。
また、流通空気取入口1071では、エアコン1072の周囲である混合空調室1070の天井面、壁面及び仕切り板1078のエアコン1072側の面を防音手段としての吸音材料であるグラスウール1085Bで覆うようにしており、混合空調室1070内のエアコン1072及び送風ファン1074の各作動音が風道1060に伝搬するのを防ぐようにしている。この際、風道1060の上端部における壁面1062をグラスウール1085Bで覆うことで、防音効果をより高めるようにしている。
一方、本実施形態において、制振・防振手段1090は、図10Bに示すように、送風ファン1074の空気吸込み口のある本体吸込み面1074aを囲むべくこの面の外周サイズに合わせて形成された矩形状の木枠1091と、混合空調室1070の天井面1070bに送風ファン1074を取り付けるための防振吊り具1092とから構成された制振・防振構造である。この際、防振吊り具1092は、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製の筒状体1092aに緩衝材としての防振ゴム(図示省略)を内蔵してなっている。
この制振・防振手段1090では、送風ファン1074の本体吸込み面1074aの周縁部フランジ1074bに木枠1091を木ねじ1093で取り付け、本体吸込み面1074が下に向くようにして防振吊り具1092の一端を混合空調室1070の天井面1070bに固定すると共に他端を木枠1091に固定することで、送風ファン1074を吊り下げ支持するようにしている。これにより、送風ファン1074の作動時における振動が混合空調室1070の構造物である天井面1070bに伝わるのを少なく抑えるようにしている。
なお、本実施形態では、制振・防振手段1090を送風ファン1074にのみ採用した場合を示したが、エアコン1072に対しても制振・防振手段1090を採用することができる。
また、防音手段は、本実施形態で採用したアスファルト1085Aやグラスウール1085Bに限定されないし、制振・防振手段も、本実施形態で採用した木枠1091と防振吊り具1092とからなる制振・防振構造に限定されない。
<実施形態10 効果>
<(主に請求項7に対応)>
本実施形態の建築物では、混合空調室内に配置したエアコン及び複数台の送風ファンの作動音が混合空調室から空気流通空間に漏れ出たり、作動中のエアコン及び複数台の送風ファンの振動が混合空調室から居室に伝わったりするのを少なく抑えることができ、その結果、静かで快適な居住空間を得ることができるという効果がもたらされる。
<実施形態1~10 空気流通空間として形成していない小屋裏空間>
実施形態1~9では、小屋裏空間を有しているものの、小屋裏空間を空気流通空間として形成していない場合を示した。
図12は、小屋裏空間を空気流通空間として形成していない場合を示しており、2つの部屋1200a,1200bから構成される建築物を例示している。この建築物も外壁面1201a,1201bと建築物の外壁面の内側を構成する内壁面1204a,1204bと床下構造物1202と断熱材を含む屋根裏構造物1203を有している。
この図12の例において、図示しない混合空調室で十分に加熱された又は冷却された温調空気は、混合空調室と空間的に連結されている天井懐1207を行き渡り、天井懐1207の一方を構成する天井面1206a,1206bを加熱又は冷却する。また、天井懐1207の反対側を構成する屋根裏構造物1203の断熱材の断熱効果によって、天井懐1207から空気流通空間として形成していない小屋裏空間1208への熱の移動を極力小さくする。
<実施形態1~9 空気流通空間として形成している小屋裏空間 その1>
図13Aは、居室の天井面が水平となっている場合の縦断面図である。建築物は、小屋裏空間1307を、建築物の屋根1305a,1305bの内側の勾配に沿って配された断熱材1303と、水平となっている天井面1306a,1306bとの間に有している(図13Bの写真参照。)。図示しない混合空調室で十分に加熱された又は冷却されてダクトを介して導入された温調空気は、この小屋裏空間1307を行き渡り、空間の一方を構成する天井面1306a,1306bを加熱又は冷却する。また、小屋裏空間1307の反対側を構成する断熱材1303の断熱効果によって、温調空気から外気への熱の移動を極力小さくする。
<実施形態1~9 空気流通空間として形成している小屋裏空間 その2>
図14は、居室の天井面が斜天面となっている場合の縦断面図である。建築物は、小屋裏空間1407を、建築物の屋根1405a,1405bの内側の勾配に沿って配された断熱材1403と、斜天面となっている天井面1406a,1406bとの間に有している。図示しない混合空調室で十分に加熱された又は冷却されてダクトを介して導入された温調空気は、この小屋裏空間1407を行き渡り、空間の一方を構成する天井面1406a,1406bを加熱又は冷却する。また、空間の反対側を構成する断熱材1403の断熱効果によって、温調空気から外気への熱の移動を極力小さくする。
<実施形態6 輻射による冷暖房時における流通空気の流れの説明 給気グリル閉 ショートカット給気口閉>
図15は、輻射による冷暖房を行う輻射冷暖房モードにおける流通空気の流れを示している。
1.空調室内におけるエアコンから送風ファンへ
2.送風ファンから小屋裏空間及び床下空間へ
3.小屋裏空間及び床下空間から内部通気層へ
4.内部通気層から一階天井懐へ
5.一階天井懐から風道へ
6.風道から空調室へ、流通空気の一部はそのまま空調室内へ、残りはエアコンを通して空調室内へ
このように、輻射による冷暖房を行う輻射冷暖房モードでは、エアコンによって温められた(冷やされた)空気が、床下空間、天井懐、壁の内部通気層を循環することで、床、壁、天井を温め(冷やし)、その輻射熱によって全館冷暖房を行う。
つまり、このモードにおいて、冷暖房の空気の流れは、居室内を経由しない。
<実施形態6,8,9 輻射冷暖房モードにおける流通空気の換気の説明 給気グリル常時開 ショートカット給気口閉>
図16は、輻射による冷暖房を行う輻射冷暖房モードにおける流通空気の換気(24時間換気)の状況を示している。
1.給気:屋外から換気扇
2.換気扇から一階天井懐へ
3.一階天井懐から風道へ
4.風道から空調室へ
5.空調室内におけるエアコンから送風ファンへ
6.送風ファンから小屋裏空間及び床下空間へ
7.小屋裏空間及び床下空間から内部通気層へ
8.内部通気層から常時開の給気グリルを介して居室内へ
9.居室内から排気グリル(空気排気口)及び排気管を介して換気扇へ
10.排気:換気扇から屋外
このように、輻射冷暖房モードにおける流通空気の換気(24時間換気)は、外部からの新鮮空気(給気)を床下空間、天井懐、壁の内部通気層を循環させることによって、壁内部等の湿気溜まりを防ぎ、これにより、内部結露や木材腐朽やシロアリ被害のリスクを低減する。
この24時間換気おいて、換気されて内部通気層を流通する空気は、24時間常時作動の換気扇による給排気の空気の量だけ、常時開の給気グリルを通して居室内に入り込み、居室内を経由して空気排気口及び排気管を介して排気される。
<実施形態6,8,9 空気を媒体とした熱伝達による冷暖房を併用するモードにおける流通空気の流れの説明 給気グリル開 ショートカット給気口開>
図17は、空気を媒体とした熱伝達による冷暖房を輻射による冷暖房と併用するモードの流通空気の流れを示している。
このモードでは、輻射冷暖房モードの流通空気の流れに加えて、居室内を経由する流通空気の流れが生じる。
1.空調室内におけるエアコンから送風ファンへ
2.送風ファンから小屋裏空間及び床下空間へ
3.小屋裏空間及び床下空間から内部通気層へ
4.内部通気層から一階天井懐(一部は給気グリルを介して居室内)へ
5.一階天井懐から風道(一部はショートカット給気口を介して居室内から風道)へ
6.風道から空調室へ、流通空気の一部はそのまま空調室内へ、残りはエアコンを通して空調室内へ
このように、ショートカット給気口を開いた状態では、風道を介して空調室へ居室内の空気が引っ張られ、この引っ張られた空気の分だけ、空気流通空間を流れる流通空気が開放状態の給気グリルを介して居室内に流入する。そして、この居室内を経由した流通空気がショートカット給気口を介して風道へ流れて、空調室内におけるエアコンに吸い込まれるので、エアコンが居室内の温熱環境にリアルタイムに反応することで、より快適な居室内環境を作り上げる。
この空気を媒体とした熱伝達による冷暖房と輻射による冷暖房とを併用するモードでは、内部通気層を通って循環する流通空気の流れと、居室内を経由する流通空気の流れとの2通りの流れが発生する。
<実施形態6,8,9 断熱位置及び空調室位置の配置パターン1>
図18に示すように、この配置パターン1では、屋根裏に断熱材を配置すると共に、この屋根裏に断熱材を配置することで形成される小屋裏空間に空調室を配置している。
<実施形態6,8,9 断熱位置及び空調室位置の配置パターン2>
図19に示すように、この配置パターン2では、屋根裏に設けられる水平な天井面構造物に断熱材を配置すると共に、この断熱材を含む天井面構造物の外側に空調室を配置している。
<実施形態6,8,9 断熱位置及び空調室位置の配置パターン3>
図20に示すように、この配置パターン3では、屋根裏に設けられる水平な天井面構造物に断熱材を配置すると共に、この断熱材を含む天井面構造物の内側で且つ二階居室の天井裏に空調室を配置している。
<実施形態6,8,9 断熱位置及び空調室位置の配置パターン4>
図21に示すように、この配置パターン4では、屋根裏に設けられる水平な天井面構造物に断熱材を配置すると共に、この断熱材を含む天井面構造物の内側で且つ二階居室の側部に空調室を配置している。
<実施形態6,8,9 断熱位置及び空調室位置の配置パターン5>
図22に示すように、この配置パターン5は、建築物が平屋である場合を示しており、屋根裏に設けられる水平な天井面構造物に断熱材を配置すると共に、この断熱材を含む天井面構造物の内側で且つ一階居室の側部に空調室を配置している。
<実施形態6,8,9 断熱位置及び空調室位置の配置パターン6>
図23に示すように、この配置パターン6は、建築物が小屋である場合を示しており、屋根裏に断熱材を配置すると共に、この屋根裏に断熱材を配置することで形成される小屋裏空間に空調室を配置している。
0100 建築物
0110 居室
0160 風道
0170 混合空調室
0171 流通空気取入口
0172 エアコン
0173 空気混合スペース
0174 送風ファン
0180 給気グリル

Claims (14)

  1. 後記する居室の床下、壁体、天井裏、居室内のいずれか一以上を流通する空気である流通空気を上方又は下方に流通させるために立ち上がる風道と、
    後記する送風ファンによって作り出される圧力差によって前記風道を介して流通空気を取り入れる流通空気取入口と、取り入れた流通空気の一部を温調するエアコンと、
    エアコンによって温調された空気と温調されない空気とを混合する空気混合スペースと、
    空気混合スペースの混合空気を外部に強制送風して流通空気とする複数台の同時稼働される送風ファンであって、前記圧力差を生じさせる送風ファンと、を有する1つの流通空気の混合空調室と、
    流通空気によって居室滞在者を輻射冷暖房するための空気流通空間と、
    流通空気を居室内に導入するための開閉可能な給気グリル又は/及び常時開である給気グリルと、
    流通空気によって輻射冷暖房され又は/及び前記給気グリルから流通空気を取り入れて冷暖房される居室と、
    を有する建築物。
  2. 前記風道は外壁面に接さないように構成される請求項1に記載の建築物。
  3. 前記風道の壁面の少なくとも一部は、防音手段(遮音又は/及び吸音を含む。以下同じ。)又は/及び、断熱手段(断熱材又は/及び、断熱構造を含む。以下同じ)で直接又は間接に防音又は/及び断熱されている請求項1又は請求項2に記載の建築物。
  4. 前記風道の壁面の少なくとも一部は、居住空間の壁面で構成される請求項1から請求項3のいずれか一に記載の建築物。
  5. 風道は少なくとも二以上の居室に沿って設けられている請求項1から請求項4のいずれか一に記載の建築物。
  6. 前記混合空調室は、居住空間の上部又は/及び側部に設けられている請求項1から請求項5のいずれか一に記載の建築物。
  7. 前記混合空調室は、防音手段、制振・防振手段のいずれか一以上の手段による防音、制振・防振がされている請求項1から請求項6のいずれか一に記載の建築物。
  8. 前記居室は、天井面、床面、少なくとも一部の壁面が、略面状に前記流通空気を流通させる空気流通空間で冷やされ、又は、暖められるように構成されている請求項1から請求項7のいずれか一に記載の建築物。
  9. 前記各居室の空気流通空間は相互に空間的につながっている請求項1から請求項8のいずれか一に記載の建築物。
  10. 各居室間はドアやふすま、窓(等の障子)の隙間を介する以外は、常時直接に空間的にはつながらないように構成されている請求項1から請求項9のいずれか一に記載の建築物。
  11. 前記風道と、前記居室の少なくとも一部とを空間的に接続するための開閉自在なショートカット給気口を有する請求項1から請求項10のいずれか一に記載の建築物。
  12. 空気混合スペース、風道、空気流通空間のいずれか一以上に、蓄熱、調湿、消臭、抗菌、除菌、清浄の少なくともいずれか一の機能を空気に対して果たす機能器を配置した請求項1から請求項11のいずれか一に記載の建築物。
  13. 流通空気の内、居室内に導入されて冷暖房するために利用された空気を直接的に外気に排気するための居室に設けられた居室空気排気口と、
    居室空気排気口から排気される流通空気を空気流通空間に戻入しないで直接的に外気に排気する排気管と、
    をさらに有する請求項1から請求項12のいずれか一に記載の建築物。
  14. 外気からフレッシュ空気を導入するフレッシュ空気導入管と、
    前記排気管を流通する温調された空気と前記フレッシュ空気導入管から導入される温調されていないフレッシュ空気との熱交換をするための熱交換器をさらに有する請求項13に記載の建築物。
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