JP7217294B2 - カルボニル化合物の製造法 - Google Patents

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Description

IPOD FERM BP-18976 NPMD NITE BP-02831
本開示は、炭素数が8~16のカルボニル化合物生産技術に関する。本開示は、炭素数が4~8のアルデヒドをドナー基質とするアルドール反応によって、炭素数が8~16のカルボニル化合物を製造することが可能な微生物菌体に関する。本開示は、微生物菌体を触媒とし、アルデヒド、α-ケト酸および糖のいずれかを原料として、炭素数が8~16のカルボニル化合物の製造技術に関する。
技術背景
一般式(II)で表されるα,β-不飽和アルデヒドのうち、2-phenyl-2-butenal、5-methyl-2-phenyl-2-hexenal、および2-isopropyl-5-methyl-2-hexenalなどはフレーバーやフレグランスとして利用される。
一般式(II)で表されるカルボニル化合物誘導体のうち炭素数が8の2-ethyl-2-hexenalを水素化すると、可塑剤原料として需要が大きい2-ethylhexanolに変換可能である。
また、一般式(I)および(II)で表されるカルボニル化合物誘導体のうち炭素数が9~16の誘導体は、水素化脱酸素反応によって炭素数が9~16のイソパラフィン、シクロパラフィン、アルキルベンゼン等の炭化水素化合物に変換可能であり、このうち炭素数が9~15の炭化水素化合物はジェット燃料成分として、炭素数が16の炭化水素化合物はディーゼル燃料成分として利用可能である。
一般式(I)および(II)で表されるカルボニル化合物誘導体は、短鎖のアルデヒドをアルドール反応によって連結することで生成可能である。
アルドール反応は、水酸化ナトリウムなどの強アルカリや陰イオン交換樹脂を触媒とした化学合成によって容易に行える。しかしこれらの反応ではアルカリの中和や高温での反応が必要とされ、環境負荷や製造工程でのエネルギー消費の削減などの観点から、より温和な条件での反応が望まれている。
近年、低環境負荷および低炭素型のアルドール反応として、プロリンやリシンなどのアミノ酸をはじめとする有機分子触媒を利用する方法が開発されている(特許文献1および非特許文献1)。この方法では室温などの温和な条件下で水溶液中での反応も可能である。
また、温和な条件でアルドール反応が可能で、なおかつ反応液からの回収が容易な触媒として、酵素のアルドラーゼを発現させた微生物菌体触媒の報告がある(特許文献2および非特許文献2)。
Y. Watanabe, K.Sawada and M. Hayashi. 2010. Green Chem. 12:384-386. G. Feron, G. Mauvais, F. Martin, E. Semon and C. Blin-Perrin. 2007. Lett. Appl. Microbiol. 45:29-35.
特開2010-065020号公報 US2007/0196906 A1
アミノ酸を触媒として水溶液系反応液で利用する場合、反応後に触媒を反応液から分離・回収することは容易ではなく、触媒コストがかかる。回収・再利用が可能な化学合成された有機分子触媒も開発されているが、触媒調製コストがかかる。
また、酵素のアルドラーゼはいずれもドナー基質に対して基質特異性が極めて高く、アルデヒドをドナー基質として利用できる酵素としてはアセトアルデヒドを利用できる2-deoxy-D-ribose-5-phosphate(DERA)のみである。しかもこの場合もアセトアルデヒドまたはプロパナール以外の炭素数が4以上のアルデヒドをドナー基質として、一般式(I)に表されるカルボニル化合物を生成させた例はない。
微生物菌体触媒は調製が容易で、反応液からの回収も可能である。そこで微生物菌体によって炭素数が4以上のアルデヒドをドナー基質としたアルドール反応が可能となれば、一般式(I)および(II)に表される炭素数が8~16のカルボニル化合物の低環境負荷、低炭素および低コストでの製造が可能となる。
更に一般式(I)および(II)で表される炭素数が8~16のカルボニル化合物の原料となる短鎖のアルデヒドは、糖から生成可能なα-ケト酸をα-ケト酸脱炭酸酵素によって脱炭酸することで生成させることが可能である。したがって微生物菌体によって炭素数が4以上のアルデヒドをドナー基質としたアルドール反応が可能となれば、一般式(I)および(II)に表される炭素数が8~16のカルボニル化合物を、バイオマス由来の糖やα-ケト酸を原料として製造することが可能になる。
したがって炭素数が4以上のアルデヒドをドナー基質としたアルドール反応が微生物菌体を触媒として可能となれば、現在は石油から製造されているフレーバー、フレグランス、可塑剤原料、およびジェット燃料等の液体燃料を、バイオマスを原料とし、なおかつ低環境負荷によって製造することが可能となり、化学品製造や運輸部門からの二酸化炭素排出量の大幅な削減が可能となり、地球温暖化対策の有効な手段となる。
本開示は、微生物菌体を用いて低環境負荷、低コストによる炭素数が8~16のカルボニル化合物の製造法を提供することを課題とする。
本開示は、一態様において、カルボニル化合物の製造方法であって、
触媒が存在する水溶液中で炭素数が4~8であるアルデヒドをドナー基質とするアルドール反応により炭素数が8~16であるカルボニル化合物を合成することを含み、
前記触媒は、微生物菌体またはその一部であり、前記カルボニル化合物は、下記一般式(I)で表されるβ-ヒドロキシアルデヒド、またはそれが脱水された下記一般式(II)で表されるα,β-不飽和アルデヒドである、製造方法に関する。
Figure 0007217294000001

(一般式(I)および(II)において、Rはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル基、または4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、ベンジル基、4-ヒドロキシベンジル基、(4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル)メチル基、または(4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)メチル基である。)
本開示は、その他の一態様において、本開示に係るカルボニル化合物の製造方法におけるアルドール反応に用いるための非酵素性の触媒であって、微生物菌体の非酵素性成分を含む、触媒に関する。
本開示は、その他の一態様において、アルドール反応における微生物菌体またはその一部の非酵素性の触媒としての使用に関する。
なお、本開示において、微生物菌体またはその一部を触媒として利用した反応を、「セル反応」と言うことがある。
本開示によれば、例えば、バイオプロセスによる温和な条件下での炭素数が8~16のカルボニル化合物の製造が可能となる。従って本開示は、農業残渣や木質バイオマス等の非可食バイオマスから可塑剤やバイオ燃料を効率的に製造するのに極めて有益である。
図1は、実施例におけるセル反応で検出するアルドール反応を示す図である。 図2は、実施例におけるセル反応液のGCMS分析結果を示す図である。 図3は、実施例におけるセル反応の結果を示す図である。 図4は、実施例におけるセル反応の結果を示す図である。 図5は、実施例における各株のリシンの菌体内濃度を比較した図である。 図6は、実施例におけるセル反応の結果を示す図である。 図7は、実施例におけるセル反応の結果を示す図である。 図8は、実施例におけるセル反応の結果を示す図である。 図9は、実施例におけるセル反応液の生成物を示す図である。 図10は、実施例におけるセル反応液のGCMS分析結果を示す図である。 図11は、実施例におけるセル反応液のGCMS分析結果を示す図である。 図12は、実施例で作成した形質転換体の培養液のGCMS分析結果を示す図である。 図13は、実施例で作成した形質転換体の生産化合物の構造式を示す図である。 図14は、実施例で作成した形質転換体の培養液のGCMS分析結果を示す図である。
本発明者は研究を重ね、以下の知見を得た。
(1)微生物菌体には炭素数が4~8のアルデヒドをドナー基質として炭素数が8~16のカルボニル化合物を生成する活性がある。この活性は微生物菌体を煮沸しても完全に保持される。この活性はアルドール反応を触媒する酵素であるアルドラーゼには依存しない非酵素的な活性である。
(2)リシンの微生物菌体内への蓄積、または微生物菌体の脂質のエタノールアミンやリシンによる修飾によって、菌体の当該アルドール反応活性を増強させることができる。
本開示は上記知見に基づく。
以下、本開示を詳細に説明する。
(I)微生物
本開示で使用する微生物菌体の微生物は特に制限されない。前記微生物の一又は複数の実施形態として、エシェリヒア コリまたはコリネ型細菌が挙げられる。
エシェリヒア コリとして好適な菌株は、エシェリヒア コリ K12株またはB株由来の株が好ましく、エシェリヒア コリ K12株由来の株としては、W1330、JM109、HST02、HB101、およびDH5α等が挙げられる。B株由来の株としては、BL21、およびBL21(DE3)等が挙げられ、これら菌株から派生した自然変異株でも人為的な遺伝子改変株であってもよい。
コリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー〔BargeysManualof Determinative Bacteriology、Vol. 8、599(1974)〕に定義されている一群の微生物であり、通常の好気的条件で増殖するものならば特に限定されるものではない。具体例を挙げれば、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌、およびマイクロコッカス属菌等が挙げられる。コリネ型細菌の中ではコリネバクテリウム属菌が好ましい。
コリネバクテリウム属菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム エフィシェンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム ハロトレランス(Corynebacterium halotolerance)、およびコリネバクテリウム アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)等が挙げられる。中でも、安全でかつキシロオリゴ糖の利用能が高い点で、コリネバクテリウム グルタミカムが好ましい。好適な菌株として、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株(FERM BP-18976)、ATCC13032株、ATCC13869株、ATCC13058株、ATCC13059株、ATCC13060株、ATCC13232株、ATCC13286株、ATCC13287株、ATCC13655株、ATCC13745株、ATCC13746株、ATCC13761株、ATCC14020株、ATCC31831株、MJ-233(FERM BP-1497)、およびMJ-233AB-41(FERM BP-1498)等が挙げられ、中でも、R株(FERM BP-18976)、ATCC13032株、およびATCC13869株が好ましい。
なお、分子生物学的分類により、ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)、コリネバクテリウム リリウム(Corynebacterium lilium)等のコリネ型細菌もコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に菌名が統一されている〔Liebl, W. et al., Transfer of Brevibacterium divaricatum DSM 20297T,"Brevibacterium flavum" DSM20411, "Brevibacterium lactofermentum" DSM 20412 and DSM 1412, and Corynebacterium glutamicum and their distinction by rRNA gene restriction patterns. Int J Syst Bacteriol.41:255-260(1991)〕。
ブレビバクテリウム属菌としては、ブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)(例えばATCC6872株)等が挙げられる。
アースロバクター属菌としては、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)(例えばATCC8010株、ATCC4336株、ATCC21056株、ATCC31250株、ATCC31738株、およびATCC35698株)等が挙げられる。
マイコバクテリウム属菌としては、マイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)(例えばATCC19210株、ATCC27289株)等が挙げられる。
マイクロコッカス属菌としては、マイクロコッカス フロイデンライヒ(Micrococcus freudenreichii)(例えばNo.239株(FERM P-13221))、マイクロコッカス ルテウス(Micrococcus leuteus)(例えばNo.240株(FERM P-13222))、マイクロコッカス ウレアエ(Micrococcus ureae)(例えばIAM1010株)、およびマイクロコッカス ロゼウス(Micrococcus roseus)(例えばIFO3764株)等が挙げられる。
形質転換
形質転換方法は、公知の方法を制限無く使用できる。このような公知の方法として、例えば塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン介在トランスフェクション、電気穿孔法などが挙げられる。中でも、コリネ型細菌には、電気パルス法が好適であり、電気パルス法は、公知の方法〔例えば、Kurusu, Y. et al., Electroporation-transformation system for Coryneform bacteria by auxotrophic complementation. Agric. Biol. Chem. 54:443-447(1990)〕および〔Vertes A. A. et al., Presence of mrr- and mcr- like restriction systems in Coryneform bacteria. Res. Microbiol. 144:181-185(1993)〕により行うことができる。
宿主染色体遺伝子の破壊または変異導入
宿主のコリネ型細菌は、必要に応じて生合成の競合経路や生合成経路の抑制因子または排出系トランスポーター等をコードする遺伝子が破壊され、または欠失させることができる。また染色体上への変異導入によって特定の遺伝子がコードする酵素タンパク質の機能を向上させることもできる。標的遺伝子前後のDNA断片を連結することで標的遺伝子全長が欠失したDNA断片を作製し、該DNAで細菌を形質転換して染色体上で相同組換えを起こさせることにより、染色体上の標的遺伝子を完全に欠失させることができる。或いは標的遺伝子の部分配列を欠失し、正常に機能する酵素タンパク質を産生しないように改変した欠失型遺伝子を作製し、該遺伝子を含むDNAで細菌を形質転換して、欠失型遺伝子と染色体上の遺伝子とで相同組換えを起こさせることにより、染色体上の標的遺伝子を欠失型または破壊型の遺伝子に置換することができる。欠失型または破壊型の遺伝子によってコードされる酵素タンパク質は、生成したとしても、野生型酵素タンパク質とは異なる立体構造を有し、機能が低下または消失している。また、特定の変異が導入された遺伝子断片を当該染色体領域と相同組み換えを起こさせることにより、染色体上の特定の位置に変異導入させることができる。このような相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子欠失または破壊は既に確立しており、温度感受性複製起点を含むプラスミド、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で複製起点を持たないスイサイドベクターを利用する方法などがある(米国特許第6303383号、特開平05-007491号)。マーカーレス染色体遺伝子導入用ベクターpCRA725は、コリネバクテリウム グルタミカムR内で複製不能なプラスミドである。プラスミドpCRA725に導入した染色体上の相同領域との一重交叉株の場合、pCRA725上のカナマイシン耐性遺伝子の発現によるカナマイシン耐性と、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)のsacR-sacB遺伝子の発現によるスクロース含有培地での致死性を示すのに対し、二重交叉株の場合、pCRA725上のカナマイシン耐性遺伝子の脱落によるカナマイシン感受性と、sacR-sacB遺伝子の脱落によるスクロース含有培地での生育性とを示す。従って、マーカーレス染色体遺伝子導入株は、カナマイシン感受性およびスクロース含有培地生育性を示す。
微生物の増殖
反応液中での反応に先立ち、野生株または形質転換体を好気条件下で、温度約25~38℃で、約12~48時間培養して増殖させることが好ましい。
培養用培地
反応に先立つ野生株または形質転換体の好気的培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類およびその他の栄養物質等を含有する天然培地または合成培地を用いることができる。
炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、マンノース、マルトース、マンニトール、キシロース、アラビノース、ガラクトース、澱粉、糖蜜、ソルビトール、グリセリン等の糖質または糖アルコール;酢酸、クエン酵、乳酸、フマル酸、マレイン酸またはグルコン酸等の有機酸;エタノールまたはプロパノール等のアルコール等が挙げられる。また、所望によりノルマルパラフィン等の炭化水素等も用いることができる。炭素源は、1種を単独で使用でき、または2種以上を混合して使用してもよい。培地中のこれら炭素源の濃度は、通常、約0.1~10(w/v%)とすればよい。
窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機または有機アンモニウム化合物、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウム、または硝酸カリウム等が挙げられる。また、コーンスティープリカー、肉エキス、ベプトン、NZ-アミン、蛋白質加水分解物、またはアミノ酸等の含窒素有機化合物等も使用できる。窒素源は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。培地中の窒素源濃度は、使用する窒素化合物によっても異なるが、通常、約0.1~10(w/v%)とすればよい。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、または炭酸カルシウム等が挙げられる。これら無機塩は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。培地中の無機塩類濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常、約0.01~1(w/v%)とすればよい。
栄養物質としては、例えば肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティープリカー、脱脂粉乳、脱脂大豆塩酸加水分解物、または動植物若しくは微生物菌体のエキスやそれらの分解物等が挙げられる。栄養物質の培地濃度は、使用する栄養物質によっても異なるが、通常、約0.1~10(w/v%)とすればよい。さらに、必要に応じて、ビタミン類を添加することもできる。ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、またはニコチン酸等が挙げられる。
培地のpHは約5~8が好ましい。
具体的な好ましい大腸菌用培地としては、LB培地等が挙げられる。本培地において、糖類を上記濃度範囲内で添加して用いてもよい。
具体的な好ましいコリネ型細菌用培地としては、A培地〔Inui, M. et al., Metabolic analysis of Corynebacterium glutamicum during lactate and succinate productions under oxygen deprivation conditions. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 7:182-196(2004)〕、およびBT培地〔Omumasaba, C. A. et al., Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase isoforms with opposite, ATP-dependent regulation. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 8:91-103(2004)〕等が挙げられる。これらの培地において、糖類濃度を上記範囲にして用いればよい。
(II)アルドール反応活性を有する微生物菌体触媒
本開示において、アルドール反応活性を有する微生物菌体触媒(以下、「本開示に係る触媒」ともいう)は、一又は複数の実施形態において、微生物の菌体またはその一部を含む触媒であり、その他の一又は複数の実施形態において、微生物菌体の非酵素性成分を含む触媒である。本開示に係る触媒は、その他の一又は複数の実施形態において、微生物の菌体またはその一部からなる触媒である。前記微生物については、上述のとおりであり、例えば、エシェリヒア コリまたはコリネ型細菌菌体を使用した触媒が挙げられる。
したがって、本開示は、一態様において、アルドール反応における微生物菌体またはその一部の触媒としての使用に関し、一又は複数の実施形態において微生物菌体またはその一部の非酵素性の触媒としての使用に関する。
本開示に係る触媒に使用する微生物は、野生株や自然変異株であってもよい。該微生物は、一又は複数の実施形態において、アルドール反応促進の観点から、遺伝子改変によってアルドール反応活性を有するアミノ酸(例えば、プロリンやリシン)やアミノ酸代謝物の菌体内濃度を高めた株、またはエタノールアミンやリシンで細胞膜リン脂質を修飾させた株が好ましい。
アミノ酸やアミノ酸代謝物の菌体内における高蓄積、または、細胞膜リン脂質の修飾は、各生合成経路の導入と強化、生合成遺伝子発現の抑制因子の破壊、アミノ酸やアミノ酸代謝物の排出系トランスポーターの破壊等によって行うが、その具体的な遺伝子改変内容は限定されない。
微生物菌体の細胞膜の脂質をエタノールアミンで修飾する酵素としては、一又は複数の実施形態においてCDP-diacylglycerol--serine O-phosphatidyltransferaseおよびphosphatidylserine decarboxylase活性を有するタンパク質が挙げられる。
微生物菌体の細胞膜の脂質をリシンで修飾する酵素としては、一又は複数の実施形態において、phosphatidylglycerol lysyltransferase活性を有するタンパク質が挙げられる。
例えば、コリネ型細菌をアルドール反応用触媒として用いる場合は、野生株や自然変異株であってもよいが、好ましくは遺伝子改変によってアルドール反応活性を有するアミノ酸やアミノ酸代謝物の菌体内濃度を高めた株、またはエタノールアミンやリシンで細胞膜リン脂質を修飾させた株が好ましい。
本開示に係る触媒に使用する微生物としては、一又は複数の実施形態において、α-ケト酸脱炭酸酵素活性を有する酵素をコードする遺伝子が導入された株が挙げられる。該遺伝子を導入する場合にはアルデヒドの代わりにα-ケト酸を反応基質として用いることもできる。ここでα-ケト酸脱炭酸酵素活性を有する酵素をコードする遺伝子は特に限定されない。
CDP-Diacylglycerol--serine O-phosphatidyltransferaseおよびphosphatidylserine decarboxylase
CDP-Diacylglycerol--serine O-phosphatidyltransferaseは脂質生合成中間体であるCDP-ジアシルグリセロールとセリンからホスファチジルセリンを生成する酵素である。Phosphatidylserine decarboxylaseはホスファチジルセリンを脱炭酸することによってホスファチジルエタノールアミンを生成する酵素である。
CDP-Diacylglycerol--serine O-phosphatidyltransferaseおよびphosphatidylserine decarboxylaseの由来は特に限定されないが、例えば、マイコバクテリウム スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)由来の酵素を用いることができる。
マイコバクテリウム スメグマティス由来のCDP-Diacylglycerol--serine O-phosphatidyltransferaseとしては配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。
マイコバクテリウム スメグマティス由来のphosphatidylserine decarboxylaseとしては配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。
また、本開示では、配列番号2および/または3のアミノ酸配列と同一性が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上のアミノ酸配列からなり、かつCDP-diacylglycerol--serine O-phosphatidyltransferaseおよび/またはphosphatidylserine decarboxylase活性を有するポリペプチドも使用できる。
配列番号2および3のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのホモログをコードするDNAは、コードするアミノ酸配列が同一であれば、塩基配列は特に限定されない。
Phosphatidylglycerol lysyltransferase
Phosphatidylglycerol lysyltransferaseは脂質のホスファチジルグリセロールとリシルtRNAからリシルホスファチジルグリセロールを生成する酵素である。
Phosphatidylglycerol lysyltransferaseの由来は特に限定されないが、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)由来の酵素を用いることができる。
バチルス アミロリケファシエンス由来の酵素としては配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。
また、本開示では、配列番号4のアミノ酸配列と同一性が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上のアミノ酸配列からなり、かつphosphatidylglycerol lysyltransferase活性を有するポリペプチドも使用できる。
配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのホモログをコードするDNAは、コードするアミノ酸配列が同一であれば、塩基配列は特に限定されない。
α-ケト酸脱炭酸酵素
α-ケト酸脱炭酸酵素は、ピルビン酸、α-ケト吉草酸、α-ケトイソカプロン酸、インドールピルビン酸、またはフェニルピルビン酸等のα-ケト酸の脱炭酸反応を触媒する酵素であり、アルデヒドを生成する。酵素によって各α-ケト酸に対する活性が異なる。
α-ケト酸脱炭酸酵素の由来は特に限定されないが、エンテロバクター クロアカエ(Enterobacter cloacae)由来の酵素およびザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)由来の酵素が挙げられ、エンテロバクター クロアカエ由来の酵素がより好ましい。
α-ケト酸脱炭酸酵素は、α-ケト酸に対する活性が異なる複数のα-ケト酸脱炭酸酵素を同時に用いることもできる。
複数のα-ケト酸脱炭酸酵素を同時に用いる場合の、α-ケト酸脱炭酸酵素の由来の組み合わせは特に限定されないが、エンテロバクター クロアカエ由来の酵素とザイモモナス モビリス由来の酵素とを組み合わせて用いることができる。
エンテロバクター クロアカエ由来の酵素としては配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。
ザイモモナス モビリス由来の酵素としては配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。
また、本開示では、配列番号1または5のアミノ酸配列と同一性が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上のアミノ酸配列からなり、かつα-ケト酸脱炭酸酵素活性を有するポリペプチドも使用できる。
配列番号1または5のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのホモログをコードするDNAは、コードするアミノ酸配列が同一であれば、塩基配列は特に限定されない。
(III)微生物菌体触媒によるカルボニル化合物の製造方法
上記説明した微生物菌体触媒を炭素数が2~8の短鎖のアルデヒドを含む反応液中で反応(セル反応)させることにより、炭素数が8~16のカルボニル化合物誘導体を製造することができる。微生物菌体触媒がα-ケト酸脱炭酸酵素活性を有する酵素をコードする遺伝子を導入する場合には、α-ケト酸を反応原料として用いることもできる。またさらにアルコール脱水素酵素活性を有する酵素をコードする内在遺伝子のうち少なくとも1つ以上を破壊することによって、糖を反応原料として用いることもできる。また、これらの遺伝子導入および/又は破壊が行われた微生物菌体触媒を用いることで、α-ケト酸および/または糖を含み、かつ主成分としてアルデヒドを含まない原料から、炭素数が8~16のカルボニル化合物誘導体を製造することができる。
本開示で創製したコリネ型細菌形質転換体による糖を原料とした炭素数が8~16のカルボニル化合物の製造にあたっては、アルデヒド生成経路の流量の増加;解糖系経路の流量の増加;ペントースリン酸経路の流量の増加;アルコール、アルデヒド、中鎖カルボニル化合物、浸透圧または有機酸に対する耐性の増加および副生物(目的とする生成産物以外の炭素含有分子を意味すると理解される)生産の減少からなる群から選択される特徴の1つまたは2つ以上を生じる遺伝子修飾をさらに含むことができる。そのような遺伝子修飾は、具体的には、内在性または外来性遺伝子の過剰発現および/または内在性遺伝子の不活化;古典的突然変異誘起;スクリーニングおよび/または目的変異体の選別などにより導入することができる。
反応液
セル反応の反応液としては、上記A培地、BT培地、またはLB培地等の培養液中で行ってもよいし、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウム等のバッファー中で行ってもよい。原料として糖を用いる場合は、反応液としてはバガス、コーンストーバー等の非可食農産廃棄物、またはスイッチグラス、ネピアグラス、ミスキャンサス等のエネルギー作物を糖化酵素で糖化した糖化液等を用いることもできる。これらの培地において、糖類濃度を上記範囲にして用いればよい。
反応条件
セル反応の反応温度、即ち形質転換体の生存温度は、約20~50℃が好ましく、約25~47℃がより好ましい。上記温度範囲であれば、効率良く有機化合物を製造できる。
また、反応時間は、約1~7日間が好ましく、約1~3日間がより好ましい。
培養は、バッチ式、流加式、連続式の何れでもよい。中でもバッチ式が好ましい。
反応は、好気的条件で行ってもよく、還元条件で行ってもよい。
(IV)生産物の回収
上記のようにしてアルデヒド、α-ケト酸または糖を直接の基質としてセル反応することにより、反応液中に炭素数が8~16のカルボニル化合物が生産される。
反応液を回収することによりこれら生産物を回収できるが、さらに、公知の方法で生産物を反応液から分離することもできる。そのような公知の方法として、合成吸着剤溶離法、および液液分配法等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 アルドール反応活性を有するコリネ型細菌の構築
(1)リシン高生産株の構築
配列番号6~9に示すコリネバクテリウム グルタミカムR(FERM BP-18976)由来のaspartokinase(lysC)の変異体lysC T311I、dihydrodipicolinate reductase(dapB)、diaminopimelate decarboxylase(lysA)、transketolaseおよびtransaldolase(tkt-tal)の各遺伝子をgapAプロモーターを含有するクローニングベクター(pCRB209[WO2012/033112])に導入した。尚、構築した各プラスミドを表1に示す。
Figure 0007217294000002
上記遺伝子をコリネバクテリウム グルタミカムR株の染色体にマーカーレスで導入するために必要なDNA領域を、コリネバクテリウム グルタミカムR株の生育に必須でないと報告されている配列[Appl Environ Microbiol. 2005 Jun;71(6):3369-3372](SSI領域)を基に決定し、このDNA領域をPCR法により増幅した。
得られたDNA断片をマーカーレス遺伝子組換え用プラスミドpCRA725[J Mol Microbiol Biotechnol. 2004;8(4):243-54 / JP2006-124440A]に導入した。pCRG22およびpCRG23はインバースPCR法によりSSI領域に遺伝子を組み込むための制限酵素部位(ユニークサイト)を導入した。
尚、SSI領域の単離およびインバースPCRに用いたプライマー配列および得られた染色体導入用ベクターを表2に示す。
Figure 0007217294000003
上述の染色体導入用プラスミドに、上記表1で構築した遺伝子発現プラスミドからgapAプロモーター融合酵素遺伝子断片を取得し導入した。
得られたカルボニル化合物生産関連遺伝子染色体導入用プラスミドを表3に示す。
Figure 0007217294000004
コリネバクテリウム グルタミカムR株の染色体遺伝子にマーカーレスで変異導入するために必要なDNA領域をPCR法により増幅し、マーカーレス遺伝子組換え用プラスミドpCRA725[J Mol Microbiol Biotechnol. 2004;8(4):243-54/JP2006-124440A]に導入した。
コリネバクテリウム グルタミカムR株の染色体上のaspartokinase(lysC)、pyruvate carboxylase(pyc)およびhomoserine dehydrogenase(hom)遺伝子への変異導入用プラスミドをそれぞれpCRG28、pCRG29およびpCRG30と命名した。各染色体遺伝子変異導入用プラスミドおよび構築に用いたプライマー配列を表4に示す。
Figure 0007217294000005
コリネバクテリウム グルタミカムR株の染色体遺伝子をマーカーレスで破壊するために必要なDNA領域をPCR法により増幅し、マーカーレス遺伝子組換え用プラスミドpCRA725[J Mol Microbiol Biotechnol. 2004;8(4):243-54/JP2006-124440A]に導入した。
コリネバクテリウム グルタミカムR株のphosphoenolpyruvate carboxylase(pckA)およびdihydroxyacetone phosphate(dhpA)遺伝子破壊用プラスミドをそれぞれpCRG31およびpCRG32と命名した。各遺伝子破壊用プラスミドおよび構築に用いたプライマー配列を表5に示す。
Figure 0007217294000006
上記染色体導入用プラスミドpCRG24~27、染色体遺伝子変異導入用プラスミドpCRG28~30、染色体遺伝子破壊用プラスミドpCRG31と32、さらにはldhA遺伝子破壊用プラスミドpCRA728[J Mol Microbiol Biotechnol. 8(4):243-254(2004)]はいずれも、コリネバクテリウム グルタミカムR内で複製不可能なプラスミドである。
コリネバクテリウム グルタミカムR(FERM BP-18976)を宿主とした染色体の修飾は、上記各プラスミドの一つを電気パルス法[Agric. Biol. Chem. 54:443-447(1990)およびRes. Microbiol. 144:181-185(1993)]の方法に従って、コリネバクテリウム グルタミカムR株へ導入し、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗布した。
さらに、上記の培地で得られた株を、スクロース10%(wt/vol)を含有するA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗布した。
プラスミドが染色体上の相同領域と1点相同組換えを起こした場合、プラスミド上のカナマイシン耐性遺伝子の発現によるカナマイシン耐性と、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)のsacR-sacB遺伝子の発現によるスクロース致死性とを示すのに対し、2点相同組換えを起こした場合は、プラスミド上のカナマイシン耐性遺伝子の脱落によるカナマイシン感受性と、sacR-sacB遺伝子の脱落によるスクロース含有培地での生育性とを示す。従って、目的とする染色体修飾株は、カナマイシン感受性およびスクロース含有培地生育性を示す。
上記方法によって、プラスミドpCRG24~32およびpCRA728を用いてコリネバクテリウム グルタミカムRの染色体修飾を行い、得られたリシン高生産株をLHlys31株と命名した(表6)。液体培養の一部は等量の50%グリセロールを添加した後、グリセロールストックとして-80℃で保存した。
コリネバクテリウム グルタミカムのリシン生産株において、細胞壁のペプチドグリカン生合成に関与するUDP-N-acetylmuramoylalanyl-D-glutamate-2,6-diaminopimelate ligase(murE)の機能を変異導入によって減弱することによって、リシンの生産量が向上することが報告されている[Nucreic acids Res. 2003. 41:6360-6369]。
そこでLHlys31株のmurE遺伝子について、上記文献に記載されている変異(G81L)の導入を染色体上で行い、これをLHlys50w株と命名した(表6)。
空のクローニングベクターpCRB209を電気パルス法により導入して、コリネバクテリウム グルタミカムLHlys50w株を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗布した。その結果得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)LHlys50w/Lgap株と命名した(表6)。液体培養の一部は等量の50%グリセロールを添加した後、グリセロールストックとして-80℃で保存した。
(2)ホスホエタノールアミン生合成酵素発現株の構築
配列番号2および配列番号3に示すMycobacterium smegmatis由来のCDP-diacylglycerol--serine O-phosphatidyltransferase活性を有する酵素とphosphatidylserine decarboxylase活性を有する酵素をコードする遺伝子を挿入したプラスミドを構築し、これをpCRB12T-msm-PEと命名した。
上述のプラスミドpCRB12T-msm-PEを電気パルス法により導入して、コリネバクテリウム グルタミカムR株を形質転換し、カナマイシン50μg/mlおよびクロラムフェニコール5μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗布した。その結果得られた株をコリネバクテリウム グルタミカムPE株と命名した(表6)。液体培養の一部は等量の50%グリセロールを添加した後、グリセロールストックとして-80℃で保存した。
(3)リシルホスファチジルグリセロール生合成酵素発現株の構築
配列番号4に示すBacillus amyloliquefaciens由来のphosphatidylglycerol lysyltransferase活性を有する酵素をコードする遺伝子をpCRB209のgapAプロモーター下流に挿入した発現プラスミドを構築し、Lgap-bao-mprFと命名した。
上述のプラスミドLgap-bao-mprFを電気パルス法により導入して、コリネバクテリウム グルタミカムR株を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗布した。その結果得られた株をコリネバクテリウム グルタミカムLPG株と命名した(表6)。液体培養の一部は等量の50%グリセロールを添加した後、グリセロールストックとして-80℃で保存した。
(4)α-ケト酸を基質にカルボニル化合物を製造できる微生物菌体の構築
配列番号1に示すEnterobactor cloacae由来のα-ケト酸脱炭酸酵素活性を有する酵素をコードする遺伝子をpCRB209のgapAプロモーター下流に挿入した発現プラスミドを構築し、PGibu37と命名した。
上述のプラスミドPGibu37を塩化カルシウム法により導入してエシェリヒア コリを形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地に塗布した。その結果得られた株をエシェリヒア コリ(Escherichia coli)KDC株と命名した(表6)。液体培養の一部は等量の50%グリセロールを添加した後、グリセロールストックとして-80℃で保存した。
Figure 0007217294000007
実施例2 微生物菌体によるアルドール反応
(1)菌体調製
エシェリヒア コリの培養は、グリセロールストック50μlを最終濃度2%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加した10mlのLB培地[tryptone10g、yeast extract 5g、NaCl 10gを蒸留水1Lに溶解]に植菌し、33℃、24時間好気条件下で振盪培養した。
コリネバクテリウム グルタミカムの培養は、グリセロールストック50μlを最終濃度4%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加した10mlのA培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7gを蒸留水1Lに溶解]に植菌し、33℃にて24時間、好気条件下で振盪培養した。
(2)菌体を触媒としたセル反応
各菌体を集菌後、リン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]で2回洗浄した。洗浄後の菌体を、100μlリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]中にセル濃度がOD600=200となるように懸濁した。ここに基質としてブチルアルデヒド3μl(終濃度330mM)を添加してセル反応を開始した。反応温度は33℃で1時間反応させた。コントロールとして、菌体を加えずにその他は全く同じ条件で行ったサンプルも用意した。
(3)アルドール反応産物の検出
アルドール反応産物の検出は、セル反応後の反応液に等量の酢酸エチルを添加してボルテックスした後、酢酸エチル層10μlを酢酸エチル90μlと混合してガスクロマトグラフ質量分析計GCMS QP-2010(島津製作所製)にて分析した。標品はSIGMA社より購入した。本反応におけるアルドール反応産物は、ブチルアルデヒド2分子がセルフアルドール反応によって連結して生成する2-ethyl-3-hydroxyhexanal(2E3HH)、または更に脱水反応まで進んだ2-ethyl-2-hexenal(2E2H)である(図1)。
GCMS分析の結果、エシェリヒア コリ菌体を触媒としてブチルアルデヒドのアルドール反応産物の生成が検出された。アルドール反応産物である2-ethyl-3-hydroxyhexanalのほとんどは脱水まで進行し、2-ethyl-2-hexenalが主生成物であった(図2)。コリネバクテリウム グルタミカム菌体にも当該活性が検出されたが、エシェリヒア コリ菌体の活性の方が約8倍も高かった(図3)。エシェリヒア コリ菌体にはアルドール反応を触媒する酵素アルドラーゼが発現しているが、本アルドラーゼはブチルアルデヒドのような炭素数が4以上の脂肪族や芳香族アルデヒドをドナー基質としたアルドール反応はほとんど触媒できないことが知られている。そのため、エシェリヒア コリ菌体に検出されたブチルアルデヒドに対するアルドール反応はアルドラーゼ以外の活性によるものと考えられた。
実施例3 熱処理したエシェリヒア コリ菌体のアルドール反応活性
エシェリヒア コリ菌体に検出されたブチルアルデヒドに対するアルドール反応活性が酵素によるものか否かを確認するため、煮沸した菌体によるアルドール反応活性を検討した。
(1)菌体調製
エシェリヒア コリの培養はLB培地[tryptone 10g、yeast extract 5g、NaCl 10gを蒸留水1Lに溶解]に、炭素源として、最終濃度2%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加し、グリセロールストック50μlを植菌後、33℃で24時間振盪培養した。
(2)菌体の熱処理
菌体を集菌後、リン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]で2回洗浄した。洗浄後の菌体を、100μlリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]中にセル濃度がOD600=200となるように懸濁した。本細胞懸濁液を100℃で10分間煮沸した後、遠心分離によって上清部分を回収して可溶性画分とした。沈殿は100μlリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]で再懸濁して不溶性画分とした。
上記可溶性画分および不溶性画分それぞれ100μlに、3μlのブチルアルデヒドを添加して反応温度33℃で1時間反応させた後、反応液に100μl酢酸エチルを加えてボルテックスし、酢酸エチル層をGCMS分析した。
GCMS分析の結果、可溶性画分(図4 boil-sup)にはアルドール反応活性はほとんど検出されなかった(図4)。このことはエシェリヒア コリ菌体が有するアルドール反応活性が遊離のアミノ酸由来ではないことを示唆している。
一方、不溶性画分(図4 boil-ppt)には煮沸前の菌体(図4 BL21)と同等のアルドール反応活性が保持されていた(図4)。このことはエシェリヒア コリ菌体が有するアルドール反応活性が酵素由来ではないことを示唆している。
実施例4 コリネ型細菌のリシン高生産株菌体によるアルドール反応
アミノ酸のリシンは高いアルドール反応活性を有することが知られているが、反応液に溶解するため反応後の反応液からの回収が容易ではない。一方、コリネ型細菌菌体のアルドール反応活性はかなり低いが、微生物菌体は反応後の反応液からの回収は容易である。リシンはコリネ型細菌で高生産が可能なアミノ酸である。そこでコリネ型細菌にリシンを高生産させて菌体内に蓄積させることができれば、本微生物菌体をリシンの固定化触媒として利用できるのではないかと考えた。
(1)菌体調製
コリネバクテリウム グルタミカムR株についてグリセロールストック50μlを、最終濃度4%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加した10mlのA培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7gを蒸留水1Lに溶解]に植菌し、33℃にて48時間、好気条件下で振盪培養した。
コリネバクテリウム グルタミカムLHlys50w/Lgap株についてグリセロールストック50μlを、カナマイシン50μg/mlおよび最終濃度4%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加した10mlのA培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7gを蒸留水1Lに溶解]に植菌し、33℃にて48時間、好気条件下で振盪培養した。
(2)菌体内リシン濃度の定量
菌体を集菌後、リン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]で2回洗浄した菌体について、100μlリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]中にセル濃度がOD600=100となるように懸濁した後、100℃で10分間煮沸した。
煮沸後の菌体を氷冷後、遠心分離を行い、上清をサイエックス社製のQTRAP5500 LC-MS/MSシステムによって解析した。その結果、LHlys50w/Lgap株で菌体内リシン濃度が顕著に高くなっていた(図5)。
(3)菌体を触媒としたセル反応
上記(2)においてリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]で2回洗浄した菌体を、100μlリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]中にセル濃度がOD600=200となるように懸濁した。ここに基質としてブチルアルデヒド3μl(終濃度330mM)を添加して反応を開始した。反応温度は33℃で1時間反応させた。コントロールとして、菌体を加えずにその他は全く同じ条件で行ったサンプルも用意した。
(4)アルドール反応産物の検出
アルドール反応産物の検出は、セル反応後の反応液に等量の酢酸エチルを添加してボルテックスした後、酢酸エチル層10μlを酢酸エチル90μlと混合してGCMSにて分析した。
GCMS分析の結果、菌体内のリシン濃度を反映して、LHlys50w/Lgap株で菌体のアルドール反応活性も高くなっていた(図6)。このことはアルドール反応活性を有する有機分子触媒を菌体内に蓄積させることで固定化触媒として利用できることを示している。また本方法により菌体のアルドール反応活性を向上させることができることも示している。
実施例5 コリネ型細菌のホスホエタノールアミン生合成酵素発現菌体によるアルドール反応
動物細胞や植物細胞から抽出されたホスファチジルエタノールアミン(細胞膜脂質の1種)にもアルドール反応を触媒する活性があることが報告されている[Nippon Nogei Kagaku Kaishi 1973 47:313-319, J. Mass Spectrom.201449:557-569]。ただし物質生産に利用された例はない。ホスファチジルエタノールアミンを微生物菌体に蓄積させることでアルドール反応用微生物菌体触媒が作成できるかを検討した。宿主には脂質にホスファチジルエタノールアミンを全く含まないコリネ型細菌を使用した。
(1)菌体調製
コリネバクテリウム グルタミカムR/vecおよびPE株についてグリセロールストック50μlを、それぞれカナマイシン50μg/mlまたはカナマイシン50μg/mlとクロラムフェニコール5μg/mlを含み、最終濃度4%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加した10mlのA培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7gを蒸留水1Lに溶解]に植菌し、33℃にて24時間、好気条件下で振盪培養した。
(2)菌体を触媒としたセル反応
上記(1)において24時間培養した菌体をリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]で2回洗浄した菌体を、100μlリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]中にセル濃度がOD600=200となるように懸濁した。ここに基質としてブチルアルデヒド3μl(終濃度330mM)を添加して反応を開始した。反応温度は33℃で1時間反応させた。コントロールとして、菌体を加えずにその他は全く同じ条件で行ったサンプルも用意した。
(3)アルドール反応産物の検出
アルドール反応産物の検出は、セル反応後の反応液に等量の酢酸エチルを添加してボルテックスした後、酢酸エチル層10μlを酢酸エチル90μlと混合してGCMSにて分析した。
GCMS分析の結果、PE株ではR株よりも菌体のアルドール反応活性が高くなっていた(図7)。このことは細胞膜脂質にホスファチジルエタノールアミンを蓄積させることでもアルドール反応活性を有する微生物菌体触媒を作成可能であることを示唆している。
実施例6 コリネ型細菌のリシルホスファチジルグリセロール生合成酵素発現菌体によるアルドール反応
細胞膜リン脂質の1種であるリシルホスファチジルグリセロールはアルドール反応を触媒するという報告はないものの、ホスファチジルエタノールアミンと同様、アルドール反応を触媒しうるアミノ基を有する。そこでリシルホスファチジルグリセロールを微生物菌体に蓄積させることでアルドール反応用微生物菌体触媒が作成できるかも検討した。宿主にはリシルホスファチジルグリセロールを全く含まないコリネ型細菌を使用した。
(1)菌体調製
コリネバクテリウム グルタミカムR/vecおよびLPG株についてグリセロールストック50μlを、カナマイシン50μg/mlおよび最終濃度4%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加した10mlのA培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7gを蒸留水1Lに溶解]に植菌し、33℃にて24時間、好気条件下で振盪培養した。
(2)菌体を触媒としたセル反応
上記(1)において24時間培養した菌体をリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]で2回洗浄した菌体を、100μlリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]中にセル濃度がOD600=200となるように懸濁した。ここに基質としてブチルアルデヒド3μl(終濃度330mM)を添加して反応を開始した。反応温度は33℃で1時間反応させた。コントロールとして、菌体を加えずにその他は全く同じ条件で行ったサンプルも用意した。
(3)アルドール反応産物の検出
アルドール反応産物の検出は、セル反応後の反応液に等量の酢酸エチルを添加してボルテックスした後、酢酸エチル層10μlを酢酸エチル90μlと混合してGCMS分析した。
GCMS分析の結果、LPG株ではR株よりも菌体のアルドール反応活性が約2倍高くなっていた(図8)。このことは細胞膜脂質にリシルホスファチジルグリセロールを蓄積させることでもアルドール反応活性を有する微生物菌体触媒を作成可能であることを示唆している。
実施例7 エシェリヒア コリ菌体によるアルドール反応の反応特異性の検討
(1)菌体調製
エシェリヒア コリの培養はLB培地[tryptone 10g、yeast extract 5g、NaCl 10gを蒸留水1Lに溶解]に、炭素源として、最終濃度2%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加し、グリセロールストック50μlを植菌後、33℃で24時間振盪培養した。
(2)菌体を触媒としたセル反応
菌体を集菌後、リン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]で2回洗浄した。洗浄後の菌体を、100μlリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]中にセル濃度がOD600=200となるように懸濁した。基質にはアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、フェニルアセトアルデヒドのうちから1種類、または2種類の組み合わせで反応させた。アルデヒドの濃度はドナー基質を1μl、アクセプター基質を2μl添加した。反応は33℃で1時間行った。
(3)アルドール反応産物の検出
アルドール反応産物の検出は、セル反応後の反応液に等量の酢酸エチルを添加してボルテックスした後、酢酸エチル層10μlを酢酸エチル90μlと混合してGCMS分析した。
GCMS分析の結果、ブチルアルデヒド、ヘキサナール、フェニルアセトアルデヒドをドナー基質としたさまざまなアルドール反応産物の生成が検出された(図9)。各アルドール反応産物の生成速度はフェニルアセトアルデヒドをドナー基質とする場合は生産物の合計で2.0g/L/h前後、ヘキサナールをドナー基質とする場合は生産物の合計で1.0g/L/h程度であった。
実施例9 α-ケト酸を基質にしたカルボニル化合物の生成
アルドール反応の基質となるアルデヒドはアミノ酸の前駆体であるα-ケト酸をα-ケト酸脱炭酸酵素によって脱炭酸させることで生成可能である。そこでアルドール反応活性を有する微生物菌体にα-ケト酸脱炭酸酵素を発現させれば、α-ケト酸からも炭素数が8~16のカルボニル化合物を直接製造させることも可能である。
(1)菌体調製
エシェリヒア コリ KDC株の培養はLB培地[tryptone 10g、yeast extract 5g、NaCl 10gを蒸留水1Lに溶解]に、炭素源として、最終濃度2%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加し、グリセロールストック50μlを植菌後、33℃で24時間振盪培養した。
(2)菌体を触媒としたセル反応
菌体を集菌後、リン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]で2回洗浄した。洗浄後の菌体を、100μlリン酸バッファー[50mM NaPi(pH7.5),100mM NaCl]中にセル濃度がOD600=200となるように懸濁した。ここに基質としてα-ケトイソカプロン酸ナトリウムのみを終濃度200mMとなるように添加、またはフェニルピルビン酸ナトリウムを終濃度50mMおよびα-ケトイソカプロン酸ナトリウムを終濃度200mMとなるように添加して反応させた。
(3)アルドール反応産物の検出
アルドール反応産物の検出は、セル反応後の反応液に等量の酢酸エチルを添加してボルテックスした後、酢酸エチル層10μlを酢酸エチル90μlと混合してGCMS分析した。
GCMS分析の結果、α-ケトイソカプロン酸ナトリウムのみを基質にした場合にはイソバレルアルデヒドのセルフアルドール縮合産物である2-Isopropyl-5-methyl-2-hexenalが検出された(図10)。またフェニルピルビン酸ナトリウムとα-ケトイソカプロン酸ナトリウムとの両方を基質にした場合にはフェニルアセトアルデヒドとイソバレルアルデヒドとのアルドール縮合産物である5-methyl-2-phenyl-hexenalの生成が検出された(図11)。
実施例10 糖を原料として炭素数が10のカルボニル化合物誘導体を生産する形質転換体の構築
(1)α-ケト酸脱炭酸酵素遺伝子のクローニング
配列番号5に示すザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)由来のα-ケト酸脱炭酸酵素遺伝子はtacプロモーターを含有するクローニングベクターLtac5にクローニングし、LLE84と命名した。
(2)アルコール脱水素酵素遺伝子の破壊用プラスミドの構築
コリネバクテリウム グルタミカムRの染色体上に存在するアルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)遺伝子の内、cgR_413、cgR_2372、およびcgR_2695の3種類を破壊するために必要なDNA領域をPCR法により増幅した。
各遺伝子破壊用DNA断片は、マーカーレス遺伝子破壊用プラスミドpCRA725[J Mol Microbiol Biotechnol. 2004;8(4):243-54/JP2006-124440A]に組み込み、cgR_413、cgR_2372、およびcgR_2695各遺伝子破壊用プラスミドをそれぞれLKSadhC1、LKS2372-1、およびLKSadhA1と命名した。
(3)アルコール脱水素酵素遺伝子破壊株の構築
宿主には、カルボニル化合物生成と競合する乳酸脱炭酸酵素(lactate dehydrogenase)をコードする遺伝子とホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(phosphoenolpyruvate carboxylase)をコードする遺伝子の両方を、コリネバクテリウム グルタミカムRの染色体上から除去したコリネバクテリウム グルタミカムLLPEP株[J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 8:243-254(2004)]を用いた(表7)。
cgR_413、cgR_2372、およびcgR_2695遺伝子破壊用プラスミドLKSadhC1、LKS2372-1、およびLKSadhA1は、コリネバクテリウム グルタミカムR内で複製不可能なプラスミドである。まずLKSadhC1を、電気パルス法[Agric. Biol. Chem. 54:443-447(1990)およびRes. Microbiol.144:181-185(1993)]の方法に従って、コリネバクテリウム グルタミカムLLPEP株へ導入し、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗布した。
さらに、上記の培地で得られた株を、スクロース10%(wt/vol)を含有するA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗布した。
プラスミドLKSadhC1が染色体上の相同領域と1点相同組換えを起こした場合、LKSadhC1上のカナマイシン耐性遺伝子の発現によるカナマイシン耐性と、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)のsacR-sacB遺伝子の発現によるスクロース致死性とを示すのに対し、2点相同組換えを起こした場合は、LKSadhC1のカナマイシン耐性遺伝子の脱落によるカナマイシン感受性と、sacR-sacB遺伝子の脱落によるスクロース含有培地での生育性とを示す。従って、目的とするcgR_413遺伝子破壊株は、カナマイシン感受性およびスクロース含有培地生育性を示す。
カナマイシン感受性およびスクロース含有培地生育性を示した株を宿主とし、上記と同様にしてLKS2372-1およびLKSadhA1を用いてcgR_2372およびcgR_2695遺伝子を順次破壊した。
上記で得られたcgR_413、cgR_2372およびcgR_2695の同時破壊株をコリネバクテリウム グルタミカムLLPEP2株(表7)と命名した。
(4)アルデヒド生産能の強化
LLPEP2株についてアルデヒド生産能を強化するため、フェニルアセトアルデヒド生合成経路の強化、解糖系の強化、および副生経路の破壊等の遺伝子改変を行った結果得られた株をLLPEP3株(表7)と命名した。以下に過剰発現させた遺伝子および破壊した遺伝子を示す。
染色体導入させた遺伝子:3-deoxy-D-arabino-heptulosonate-7-phosphatesynthase S180F(aroG, E.coli)、5-enolpyruvylshikimate3-phosphate synthase aroA(cgR_873)、3-dehydroquinate synthase(cgR_1670)、3-dehydroquinate dehydratase(cgR_494)、chorismate synthase(cgR_1672)、sikimate kinase(cgR_1671)、chorismate mutase/prephenate dehydratase feedback resistant mutant(pheAfbr, E.coli)、phenylpyruvate decarboxylase(aro10, S.cerevisiae)、indol-3-pyruvate decarboxylase(E. cloacae)、phosphofructokinase(cgR_1327)、triosephosphate isomerase(cgR_1634)、xylose isomerase(E. coli,Bacteroides vulgatus)、xylulokinase(E.coli, Bacteroidesvulgatus)、xylose transporter(araE, C.glutamicum)、citrate synthase(gltA, E. coli)、3-hydroxybutyryl-CoA dehydrogenase(Clostridium beijerinckii)、crotonase(Clostridiumacetobutylycum)、butyraldehyde dehydrogenase(Lactobacillus brevis)、acetolactate synthase(cgR_1347-1348)、keto-acid reductoisomerase(cgR_1349)、dihydroxy acid dehydratase(cgR_1344)。
破壊した遺伝子:citrate synthase(cgR_943)、phosphotransacetylase(cgR_2656)、acetate kinase(cgR_2655)、pyruvate:quinone oxidoreductase(cgR_2514)、enoyl-CoA hydratase(cgR_375)、malate dehydrogenase(cgR_2262)、mannitol 2-dehydrogenase(cgR_185)。
5)α-ケト酸脱炭酸酵素遺伝子導入株の構築
α-ケト酸脱炭酸酵素遺伝子導入株の構築には、コリネバクテリウム グルタミカムR株の染色体上から乳酸脱水素酵素とホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子とを除去したLLPEP株、またはLLPEP株の染色体上からアルコール脱水素酵素遺伝子cgR_413、cgR_2372およびcgR_2695の3遺伝子を同時に除去したLLPEP2株を宿主として用いた。
上述のプラスミドPGibu37を用いて、電気パルス法により、コリネバクテリウム グルタミカムLLPEP株を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗布した。その結果得られた株をコリネバクテリウム グルタミカムBUT1wと命名した(表7)。液体培養の一部は等量の50%グリセロールを添加した後、グリセロールストックとして-80℃で保存した。
次に上述のプラスミドPGibu37を用いて、上記と同様にしてコリネバクテリウム グルタミカムLLPEP2株を形質転換した。その結果得られた株をコリネバクテリウム グルタミカムBUT2wと命名した(表7)。液体培養の一部は等量の50%グリセロールを添加した後、グリセロールストックとして-80℃で保存した。
次に上述のプラスミドLLE84を用いて、電気パルス法によりコリネバクテリウム グルタミカムLLPEP3株を形質転換した。カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗布した。その結果得られた株をコリネバクテリウム グルタミカムBUT7wと命名した(表7)。液体培養の一部は等量の50%グリセロールを添加した後、グリセロールストックとして-80℃で保存した。
尚、実施例10に記した遺伝子組換えの概要は、表7にまとめて示した。コリネバクテリウム グルタミカムBUT7wは、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託した(受託日:2018年11月22日、受託番号:NITE BP-02831)。
Figure 0007217294000008
(6)生産化合物の同定
生産化合物の同定は、GCMSを使用し、GCMSのマススペクトルを装置付属のNISTライブラリを用いて検索した後、スペクトルの一致度が高い化合物の標品を同条件で測定し、保持時間とマススペクトルが実際に一致することを確認して行った。
標品が入手できない生産化合物については、培養液から直接単離してNMRによって構造解析を行った。生産化合物の単離は、培養液を酢酸エチルで抽出してエバポレーションにて濃縮した後、得られた粗抽出物をシリカゲルカラム(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することで行った。NMR測定は1H-NMR、13C-NMR、COSY、HSQCおよびHMBCをブルカーバイオスピン製AV400Mを使用して行った(日立化成テクノサービス社受託による)。
実施例11 α-ケト酸脱炭酸酵素遺伝子導入株の培養
上記BUT1w株についてグリセロールストック50mlを、カナマイシン50μg/mlおよび最終濃度4%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加した10mlのA培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7gを蒸留水1Lに溶解]に植菌し、33℃にて24時間、好気条件下で振盪培養した。
培養後の培養液200μlを回収し、これに200μl酢酸エチルを加えてボルテックスした後、遠心することで酢酸エチル層と水層を分離させた。酢酸エチル層をGCMS分析した。その結果、アルドール反応の基質となるべき短鎖のアルデヒドが還元されて生成したisobutanol、2-phenylethanol、2-methylbutanolおよび3-methylbutanolが検出された(図12A)。
アルデヒドの連結産物を生産させるため、アルデヒドがアルコール脱水素酵素によってアルコールに還元されないように内在性アルコール脱水素酵素を破壊したBUT2w株についてグリセロールストック50mlを、カナマイシン50μg/mlおよび最終濃度4%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加した10mlのA培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7gを蒸留水1Lに溶解]に植菌し、33℃にて24時間、好気条件下で振盪培養した。
培養後の培養液200μlを回収し、これに200μl酢酸エチルを加えてボルテックスした後、遠心することで酢酸エチル層と水層を分離させた。酢酸エチル層をガスクロマトグラフィー質量分析機(島津)によって分析した。その結果、BUT2w株においては2-phenylethanolや2-methylbutanol等のアルコール類の生産は顕著に低下していた。一方、未知化合物XおよびYの生産が検出された(図12B)。
実施例12 未知化合物の同定
化合物XおよびYを含む培養液500mlを酢酸エチル500mlで抽出し、酢酸エチル層を水、次いで飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムを添加して乾燥させた。乾燥後の酢酸エチル層をエバポレーションによって酢酸エチルを留去することで粗抽出物を得た。粗抽出物はシリカゲルカラムにアプライし、ヘキサン/酢酸エチル系の溶離液にて溶出させた。未知化合物XおよびYを含む各フラクションをエバポレーションにて溶媒を留去した後、核磁気共鳴法によって構造分析を行った。その結果、化合物XおよびYは、それぞれ3-hydroxy-4-phenyl-2-butanoneおよび4-phenyl-2,3-butanediolであった(図13)。また、4-phenyl-2,3-butanediolは水酸基の立体配置が異なると推定される2種類の異性体の混合物であった。化合物XおよびYはアルドール反応による生産物ではなく、ピルビン酸とフェニルアセトアルデヒドとがカルボライゲーション反応によって連結することで生成したものと考えられた。
各化合物の帰属は以下の通り。
3-hydroxy-4-phenyl-2-butanone(化合物X):1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ7.20-7.30 (m, 5H), 4.43 (dd, J=4, 8Hz, 1H), 3.14 (dd, J=4, 12Hz, 1H), 2.88(dd,J=8, 12Hz, 1H), 2.20(s,3H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ209.13 (C), 136.47 (C), 129.27 (2CH), 128.58 (2CH), 126.95 (CH), 77.68(CH),39.95 (CH2), 25.88 (CH3).
4-phenyl-2,3-butanediol(化合物Y):1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ7.20-7.30 (m, 5H), 3.64 (m, 1H), 3.55 (m, 1H), 2.85 (dd, J=4,12Hz,1H), 2.65(m,1H), 1.22 (d, J=8.0Hz, 3H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ138.43 (C), 129.31 (2CH), 128.61 (2CH), 126.50 (CH), 75.89 (CH), 69.89(CH),38.15 (CH2), 17.07 (CH3).
および1H-NMR (400MHz,CDCl3) δ 7.20-7.30 (m, 5H), 3.80 (m, 2H), 2.77 (dd,J=4,16Hz,1H),2.67 (m, 1H), 1.21 (d, J=8.0Hz, 3H); 13C-NMR (100 MHz,CDCl3)δ 138.18 (C), 129.43 (2CH), 128.57 (2CH), 126.49 (CH), 76.68(CH), 69.95 (CH),39.97 (CH2), 19.48 (CH3).
実施例13 複数のα-ケト酸脱炭酸酵素遺伝子の共発現
基質特異性が異なる複数のα-ケト酸脱炭酸酵素構を発現させたBUT7w株についてグリセロールストック50mlを、カナマイシン50μg/mlおよび最終濃度4%になるように50%(w/v)グルコース溶液を添加した500mlのA培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v)Fe2SO4・7H2O+0.042%(w/v)MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v)biotin solution 1ml、0.01%(w/v)thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7gを蒸留水1Lに溶解]に植菌し、33℃にて24時間、好気条件下で振盪培養した。
培養後の培養液200μlを回収し、これに200μl酢酸エチルを加えてボルテックスした後、遠心することで酢酸エチル層と水層を分離させた。酢酸エチル層をGCMS分析した。その結果、BUT7w株においては3-hydroxy-4-phenyl-2-butanoneおよび4-phenyl-2,3-butanediol以外に、化合物Zの生産が新たに検出された。化合物Zのマススペクトルをライブラリ検索した結果、アセトアルデヒドとフェニルアセトアルデヒドのアルドール縮合反応によって生成する2-phenyl-2-butenalであると同定した(図14)。生産量は表8に示す。
Figure 0007217294000009
本開示は、バイオマスを原料にして炭素数が8~16のカルボニル化合物を製造させることにより、ジェット燃料をはじめとする液体燃料を提供できる。また製造されるカルボニル化合物は香料、フレーバーや可塑剤原料などとしても利用可能である。

Claims (11)

  1. カルボニル化合物の製造方法であって、
    触媒が存在する水溶液中で、前記水溶液中の炭素数が4~8であるアルデヒドをドナー基質とするアルドール反応により炭素数が8~16であるカルボニル化合物を合成することを含み、
    前記触媒は、微生物菌体またはその一部であり、
    前記微生物菌体が、エシェリヒア コリ菌体またはコリネバクテリウム グルタミカム菌体の形質転換体であって、細胞膜の脂質をエタノールアミンで修飾する酵素であるCDP-diacylglycerol--serine O-phosphatidyltransferaseおよびphosphatidylserine decarboxylase活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に改変された形質転換体であり、
    前記カルボニル化合物は、下記一般式(I)で表されるβ-ヒドロキシアルデヒド、またはそれが脱水された下記一般式(II)で表されるα,β-不飽和アルデヒドである、製造方法。
    Figure 0007217294000010
    [一般式(I)および(II)において、R1はエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル基、または4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル基であり、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、ベンジル基、4-ヒドロキシベンジル基、(4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル)メチル基、または(4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)メチル基である。]
  2. カルボニル化合物の製造方法であって、
    触媒が存在する水溶液中で、前記水溶液中の炭素数が4~8であるアルデヒドをドナー基質とするアルドール反応により炭素数が8~16であるカルボニル化合物を合成することを含み、
    前記触媒は、微生物菌体またはその一部であり、
    前記微生物菌体が、エシェリヒア コリ菌体またはコリネバクテリウム グルタミカム菌体の形質転換体であって、細胞膜の脂質をリシンで修飾する酵素であるphosphatidylglycerol lysyltransferase活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に改変された形質転換体であり、
    前記カルボニル化合物は、下記一般式(I)で表されるβ-ヒドロキシアルデヒド、またはそれが脱水された下記一般式(II)で表されるα,β-不飽和アルデヒドである、製造方法。
    Figure 0007217294000011
    [一般式(I)および(II)において、R1はエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル基、または4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル基であり、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、ベンジル基、4-ヒドロキシベンジル基、(4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル)メチル基、または(4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)メチル基である。]
  3. カルボニル化合物の製造方法であって、
    触媒が存在する水溶液中で炭素数が4~8であるアルデヒドをドナー基質とするアルドール反応により炭素数が8~16であるカルボニル化合物を合成することを含み、
    前記触媒は、微生物菌体またはその一部であり、
    前記微生物菌体が、エシェリヒア コリ菌体またはコリネバクテリウム グルタミカム菌体の形質転換体であって、α-ケト酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入された形質転換体であって、α-ケト酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質が、下記の(a)または(b)のタンパク質であり、
    (a) アミノ酸配列が、配列表の配列番号1または5のアミノ酸配列である、タンパク質
    (b) (a)のアミノ酸配列と同一性が90%以上で、かつα-ケト酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質
    前記水溶液は、原料としてアルデヒド、α-ケト酸および糖からなる群から選択される少なくとも一つを含有し、
    前記カルボニル化合物は、下記一般式(I)で表されるβ-ヒドロキシアルデヒド、またはそれが脱水された下記一般式(II)で表されるα,β-不飽和アルデヒドである、製造方法。
    Figure 0007217294000012
    [一般式(I)および(II)において、R1はエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル基、または4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル基であり、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、ベンジル基、4-ヒドロキシベンジル基、(4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル)メチル基、または(4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)メチル基である。]
  4. 前記コリネバクテリウム グルタミカムが、コリネバクテリウム グルタミカムR(FERM BP-18976)、ATCC13032、またはATCC13869(DSM1412)である、請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記微生物菌体が、その染色体上に存在するアルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子のうち、少なくとも一つ以上が破壊され、または欠損した形質転換体である、請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
  6. 原料が、主成分としてアルデヒドを含有しない、請求項に記載の製造方法。
  7. 記()~(4)の少なくとも1つを満たすエシェリヒア コリ菌体またはコリネバクテリウム グルタミカム菌体の形質転換体を含む、アルドール反応の非酵素性の触媒であって、
    該触媒は、カルボニル化合物の製造におけるアルドール反応に用いるための非酵素性の触媒であり、
    前記アルドール反応は、炭素数が4~8であるアルデヒドをドナー基質とし、炭素数が8~16であるカルボニル化合物を合成する反応であり、
    前記カルボニル化合物は、下記一般式(I)で表されるβ-ヒドロキシアルデヒド、またはそれが脱水された下記一般式(II)で表されるα,β-不飽和アルデヒドである、触媒
    (2)細胞膜の脂質をエタノールアミンで修飾する酵素であるCDP-diacylglycerol--serine O-phosphatidyltransferaseおよびphosphatidylserine decarboxylase活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に改変された形質転換体。
    (3)細胞膜の脂質をリシンで修飾する酵素であるphosphatidylglycerol lysyltransferase活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に改変された形質転換体。
    (4)α-ケト酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入された形質転換体。
    Figure 0007217294000013
    [一般式(I)および(II)において、R 1 はエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル基、または4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル基であり、R 2 はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、フェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、ベンジル基、4-ヒドロキシベンジル基、(4-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-イル)メチル基、または(4-ヒドロキシ-1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)メチル基である。]
  8. 前記形質転換体が、さらに下記(5)を満たす、請求項に記載の触媒。
    (5)染色体上に存在するアルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子のうち、少なくとも一つ以上が破壊され、または欠損した形質転換体。
  9. 前記コリネバクテリウム グルタミカムが、コリネバクテリウム グルタミカムR(FERM BP-18976)、ATCC13032、またはATCC13869(DSM1412)である、請求項またはに記載の触媒。
  10. 請求項1からのいずれかに記載のカルボニル化合物の製造方法におけるアルドール反応に用いるための非酵素性の触媒である、請求項からのいずれかに記載の触媒。
  11. コリネバクテリウム グルタミカムBUT7w株(受託番号: NITE BP-02831)コリネ型細菌形質転換体。
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