(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る連結解除装置について、図1から図18を用いて説明する。図1に本発明の一実施形態における連結解除装置Aの斜視図を示す。図1に示す通り、本発明の一実施形態に係る連結解除装置Aは、分離機構1000、動力伝達軸2000および駆動部としてのモータMから構成される。
分離機構1000は、第1連結部材1100と第2連結部材1200から構成される。
第1連結部材1100と第2連結部材1200は、それぞれ分離対象物を連結するための第1取付部1100aと第2取付部1200aを有する。
<第1連結部材の説明>
図2に連結解除装置Aの分解斜視図を示す。図2に示す通り、第1保持ピン1110は、駆動半円軸1109に設けられた挿入孔1109aに挿入され圧入または接着により固定される。なお、第1保持ピン1110と駆動半円軸1109をまとめて駆動半円部材1111と記載する。
第1駆動軸受1103は、第1ピストン軸1104に挿入されて圧入または接着により固定される。なお、第1駆動軸受1103および第1ピストン軸1104をまとめて第1ピストン1105と記載する。
第1連結部材1100は、第1L形部材1101、第1ガイドピン1108、第1閉塞ピン1107、第1圧縮ばね1106、第1ピストン1105、第1固定軸受1102、駆動半円部材1111、第1カバー1113、第1カバー固定ねじ1112から構成される。
第1ガイドピン1108は、第1L形部材1101の貫通孔1101cに挿入され圧入または接着により固定される。
第1固定軸受1102は、第1L形部材1101のピストン孔1101bに挿入され圧入または接着により固定される。
第1閉塞ピン1107は、第1ピストン1105および第1圧縮ばね1106をピストン孔1101bに挿入した状態において、ピストン孔1101bに挿入され圧入または接着により固定される。
第1カバー1113は、駆動半円部材1111の摺動面1109bと第1L形部材1101の摺動面1101dを当接させた状態において、第1L形部材1101に設置し、第1カバー固定ねじ1112によってモータMが設けられた側と反対側から固定される。
なお、第1L形部材1101、第1ガイドピン1108、駆動半円部材1111は、連結中に応力集中等により高負荷が印加されるため、経年による腐食により強度が低下するのを防止する観点からも、高強度を有し耐食性材料でもあるステンレス鋼の一種であるSUS630-H900が好適である。
また、第1L形部材1101、第1ガイドピン1108、第1圧縮ばね1106、第1ピストン1105、駆動半円部材1111の表面状態は、後述する分離動作が作用したときに各部材間で摺動が発生するため、所望の摩擦係数を有する表面状態等を形成する必要がある。特に、摺動部の摩擦係数を小さくすることにより、所望の分離動作を得るためのモータMの出力を小さくすることができるので、表面粗さを小さくするとともに、二硫化モリブデン塗装(MIL-L-23398相当)またはDLC(Diamond-Like Carbon)コーティングを施工することが好適である。
<第2連結部材の説明>
第2保持ピン1210は、従動半円軸1209に設けられた挿入孔1209aに挿入され圧入または接着により固定される。なお、第2保持ピン1210と従動半円軸1209をまとめて従動半円部材1211と記載する。
第2駆動軸受1203は、第2ピストン軸1204に挿入されて圧入または接着により固定される。なお、第2駆動軸受1203および第2ピストン軸1204をまとめて第2ピストン1205と記載する。
第2連結部材1200は、第2L形部材1201、第2ガイドピン1208、第2閉塞ピン1207、第2圧縮ばね1206、第2ピストン1205、第2固定軸受1202、従動半円部材1211、第2カバー1212、第2カバー固定ねじ1213から構成される。
第2ガイドピン1208は、第2L形部材1201の貫通孔1201c(不図示)に挿入され圧入または接着により固定される。
第2固定軸受1202は、第2L形部材1201のピストン孔1201b(不図示)に挿入され圧入または接着により固定される。
第2閉塞ピン1207は、第2ピストン1205および第2圧縮ばね1206をピストン孔1201bに挿入した状態において、ピストン孔1201bに挿入され圧入または接着により固定される。
第2カバー1212は、従動半円部材1211の摺動面1209bと第2L形部材1201の摺動面1201dを当接させた状態において、第2L形部材1201に設置し、第2カバー固定ねじ1213によってモータMが設けられた側と反対側から固定される。
なお、第2L形部材1201、第2ガイドピン1208、従動半円部材1211は、連結中に応力集中等により高負荷が印加されるため、経年による腐食により強度が低下するのを防止する観点からも、高強度を有し耐食性材料でもあるステンレス鋼の一種であるSUS630-H900が好適である。
また、第2L形部材1201、第2ガイドピン1208、第2圧縮ばね1206、第2ピストン1205、従動半円部材1211の表面状態は、後述する分離動作が作用したときに各部材間で摺動が発生するため、所望の摩擦係数を有する表面状態等を形成する必要がある。特に、摺動部の摩擦係数を小さくすることにより、所望の分離動作を得るためのモータMの出力を小さくすることができるので、表面粗さを小さくするとともに、二硫化モリブデン塗装(MIL-L-23398相当)またはDLC(Diamond-Like Carbon)コーティングを施工することが好適である。
<動力伝達軸の連結説明>
動力伝達軸2000は、入力孔2000a(不図示)にモータMの出力軸Maが挿入されて連結し、出力溝2000bに駆動半円部材1111の凸部1109gが連結し、駆動部としてのモータMによって分離機構1000連結を解除するのに必要な回転駆動力を得られる構成となる。
なお、動力伝達軸2000は、作動中に応力集中等により高負荷が印加されるため、経年による腐食により強度が低下するのを防止する観点からも、高強度を有し耐食性材料でもあるステンレス鋼の一種であるSUS630-H900が好適である。
また、動力伝達軸2000の表面状態は、後述する分離動作が作用したときに各部材間で摺動が発生するため、所望の摩擦係数を有する表面状態等を形成する必要がある。特に、摺動部の摩擦係数を小さくすることにより、所望の分離動作を得るためのモータMの出力を小さくすることができるので、表面粗さを小さくするとともに、二硫化モリブデン塗装(MIL-L-23398相当)またはDLC(Diamond-Like Carbon)コーティングを施工することが好適である。
<CCW回転するときの分離機構の組立および作動原理>
分離機構1000の係合部である駆動半円部材1111と従動半円部材1211がCCW方向に回転して連結が解除されるときの説明を図3から図6を用いて説明する。図3に分離機構1000を組み立てるときの説明図を示す。図3の断面図に示す通り、組立時、第1連結部材1100と第2連結部材1200は、それぞれL字状に形成されており、その外形が略等しくなるように構成されている。こうすることによって、図3のように両者を点対称に配置して当接させた際に隙間が生じないようになっている。
また、第1連結部材1100と第2連結部材1200が連結した状態において、第1ガイドピン1108は第2ガイド孔1201a、第2ガイドピン1208は第1ガイド孔1101aに挿入されており、第1連結部材1100と第2連結部材1200の移動方向が、第1ガイドピン1108および第2ガイドピン1208の軸方向(基準面X方向)に規制されている。
ただし、第1ガイドピン1108と第2ガイド孔1201a、第2ガイドピン1208と第1ガイド孔1101aとの間の軸直交方向(基準面Y方向)には、意図的に隙間S/2が設けられており、基準面Y方向にも若干の移動が可能である。
さらに、第1ガイド孔1101aと第1ピストン孔1101b、第2ガイド孔1201aと第2ピストン孔1201bは内部で貫通しており、第1ガイドピン1108を第2ピストン1205、第2ガイドピン1208を第1ピストン1105が分離方向(図3中の矢印a方向であり第1連結部材1100は右方向、第2連結部材1200は左方向が分離方向となる。)に弾性力aを与えているため、第1連結部材1100と第2連結部材1200を分離方向と逆方向(矢印b方向)に外力bを与えた状態にて連結させる。
なお、弾性力aは、第1圧縮ばね1106および第2圧縮ばね1206を圧縮したときに生じる力もしくは、分離対象物から第1連結部材、第2連結部材に及ぼされる力である。このとき、弾性力aは、外力bより小さい。
また、図3に示すように、第1L形部材1101と第2L形部材1201には、駆動半円部材1111と従動半円部材1211を合わせて形成される外周面が略真円形の円柱に対応する凹みがある。
なお、第1L形部材1101の摺動面1101dと第2L形部材1201の摺動面1201dはそれぞれ半円形、より詳しくは、真円を上面および底面とする円柱形状を、その上面と底面を形成する真円の中央を通る面(基準面X)で割った形状(以下説明上、半円柱と称する。)に沿って凹んでいる。すなわち、連結状態においては、摺動面1101dと摺動面1201dは互いの正面に対向し、貫通孔(円形保持部)cを形成する。貫通孔cは真円形状を延ばした円柱状である。ここで、説明上貫通孔cの断面形状が真円であるとして説明したが、実際に加工する際には正確に真円とすることは難しく、真円に近いものを含むことは言うまでもない。また、後述するように、摺動面1101dと摺動面1201dの間に隙間を生じる状態であっても、両者が対向している状態においては真円形状を成していると見做せる。当然、真円で形成することができれば、以下に説明する連結原理における連結の密着度を高めることができ、好適である。
駆動半円部材1111と従動半円部材1211は、それぞれの摺動面1109cと摺動面1209cが当接して円柱形状を成し、それぞれの摺動面1109bと摺動面1209bが、第1L形部材1101の摺動面1101dと第2L形部材1201の摺動面1201dの両方に当接するように配置されることで、第1連結部材1100と第2連結部材1200が分離することを規制し、連結状態を維持している。このように、本実施形態に係る連結解除装置Aは、分割された一対の半円部材によって円柱部材を構成し、その円柱部材を回転させて2つの連結部材を跨ぐように配置することで2つの部材を連結し、円柱部材を回転させることで連結状態を解除することができるものである。
図4に連結時の分離機構1000の断面図を示す。図4に示す通り、連結時、第1連結部材1100と第2連結部材1200は、分離方向に弾性力aが与えられた状態である。
なお、基準面Xに対し摺接面dの駆動半円部材1111側が成す角をθ1とすると、角度θ1は90度より若干大きく設定され、駆動半円部材1111と従動半円部材1211は摺接面d方向にほぼ摺動しない。
第1連結部材1100と第2連結部材1200は、基準面Y方向には規制がないため、それぞれ基準面Y方向に移動する。
しかし、第1ガイドピン1108と第2ガイド孔1201a、第2ガイドピン1208と第1ガイド孔1101aが接触することにより、第1連結部材1100と第2連結部材1200の摺接面d方向への移動は、基準面Y方向に隙間S開いたところで規制される。
図5に作動中の分離機構1000の断面図を示す。図5の断面図に示す通り、作動時、駆動半円部材1111はモータM(不図示)からの駆動力によりCCW方向に回転する。
また、従動半円部材1211は、駆動半円部材1111と摺接面dで当接しており、摺接面d方向に摺動しながら駆動半円部材1111より駆動力が伝達され、CCW方向に回転する。
このとき、角度θ1が小さくなるに従い、第1連結部材1100と第2連結部材1200の分離方向の隙間Lが大きくなる。
なお、隙間Lと角度θ1の関係は、L=S/tanθ1となる。
そのため、角度θ1が90度以下で比較的大きい場合には角度θ1の変化に対して移動量Lの変化は小さく、角度θ1が減少し、角度θ1が0に近づくにつれて移動量Lが急激に無限大に発散することが上記Lを求める式から分かる。
また、隙間Sを任意に調整することで、隙間Lと角度θ1の関係を一意に定めることができる。
図6に分離時の分離機構1000の断面図を示す。図6に示す通り、隙間Lが所定の大きさとなった時点で第1ガイドピン1108が第2ガイド孔1201a、第2ガイドピン1208が第1ガイド孔1101aから抜け、第1連結部材1100と第2連結部材1200の連結が解除される。
なお、第1ガイドピン1108および第2ガイドピン1208をそれぞれ第2ガイド孔1201aおよび第1ガイド孔1101aから確実に抜けるようにするため、第1ピストン1105の端部1105aおよび第2ピストン1205の端部1205aがそれぞれ第1ガイド孔1101aの端部1101eおよび第2ガイド孔1201aの端部1201eから抜ける設計にすることが好適である。
また、第1ピストン1105は第1固定軸受1102、第2ピストン1205は第2固定軸受1202と接触することで、連結解除後の位置を一意に決めることができる。
連結が解除されると、駆動半円部材1111の凸部1109gは、規制力が無くなるため、動力伝達軸2000の溝2000bが延在する方向に第1L型連結部材1101と共に移動し、溝2000bから分離する。
第1ガイドピン1108と第2ガイドピン1208の軸方向長さを同じに設計すると、加工誤差の影響で厳密に同じ長さに製造することができないため、第1ガイドピン1108と第2ガイドピン1208がそれぞれ第2ガイド孔1201aおよび第1ガイド孔1101aから抜ける順序を設定することができない。そのため、前述の順序を設定したい場合、第1ガイドピン1108と第2ガイドピン1208の軸方向長さを違わせる設計とすることで、前述の順序を設定することができる。
図7に第2ガイドピン1208が第1ガイドピン1108より早く規制が解除されるように設計した場合の分離装置1000の断面図を示す。図7に示す通り、第1ガイドピン1108を第2ガイドピン1208より軸方向に長くすることで、第2ガイドピン1208は第1ガイド孔1101aを抜けて規制が解除されているが、第1ガイドピン1108は第2ガイド孔1201aに挿通されて規制された状態となり、設計した通り第2ガイドピン1208が第1ガイドピン1108より早く規制が解除されていることがわかる。
<CW回転するときの分離機構の組立および作動原理>
分離機構1000の係合部である駆動半円部材1111と従動半円部材1211がCW方向に回転して連結が解除されるときの説明を図8から図11を用いて説明する。図8に分離機構1000を組み立てるときの説明図を示す。組立時の説明は、前述したCCW方向に回転して連結が解除されるときの説明(図3)と、駆動半円部材1111と従動半円部材1211の位置関係が入れ替わったのみであるので省略する。
図9に連結時の分離機構1000の断面図を示す。連結時の説明は、前述したCCW方向に回転して連結が解除されるときの説明(図4)と、駆動半円部材1111と従動半円部材1211の位置関係が入れ替わったのみであるので省略する。なお、基準面Xに対し摺接面dの駆動半円部材1111側が成す角θ1は、90度より若干小さく設定される。よって、基準面Xと摺接面dの位置関係は、図4と図9で同一である。
図10に作動中の分離機構1000の断面図を示す。図10の断面図に示す通り、分離作動時、駆動半円部材1111はモータM(不図示)からの駆動力によりCW方向に回転する。
また、従動半円部材1211は、駆動半円部材1111と摺接面dで当接しており、摺接面d方向にほぼ摺動することなく、駆動半円部材1111より駆動力が伝達され、CW方向に回転する。
このとき、角度θ1が小さくなっても、第1連結部材1100と第2連結部材1200の分離方向の隙間Lは、CCWのときのように大きくなることはない。
そのため、角度θ1が0度になった瞬間に急激に分離する。
図11に分離時の分離機構1000の断面図を示す。分離時の説明は、前述したCCW方向に回転して連結が解除されるときの説明(図6)と、同じであるので省略する。
<CW方向への回転とCCW方向への回転における駆動トルクの比較>
図12に前述した係合部をCCWおよびCW方向に回転して分離機構1000が分離する場合における、基準面Xと摺接面dの駆動半円部材1111側の成す角θ1
と係合部を回転させるために必要なトルクの関係を示す。CCW方向に回転させると、角度θ1が小さくなるに従い、係合部を回転させるために必要なトルクも小さくなる。
また、係合部をCCW方向に回転させる場合、角度θ1が0付近になると、前述した弾性力aおよび後述するマルマンバンドを周方向に引っ張る力による係合部をCCW方向に回転させるトルクが大きくなり、係合部はCCW方向にモータMの動力がなくても駆動する場合がある。
上記の現象は、図12においては、CCW方向に回転させる場合の曲線において、係合部を回転させるために必要なトルクが0以下になったときの現象に対応する。
CCW方向に回転させる場合、分離時、係合部を回転させるために必要なトルクは小さく、すなわち、分離装置1000に印加された負荷が小さい状態で分離されるため、分離により発生する衝撃は小さくなる。
CW方向に回転させると、角度θ1が小さくなっても、係合部を回転させるために必要なトルクはほとんど変化しない。
CW方向に回転させる場合、分離時、連結対象部材を瞬間的に分離することができる。
このように、一つの連結解除装置において連結の解除の仕方を複数有する構造を実現することで、装置の使用用途や目的に合わせた解除の仕方を選択することができ、連結解除装置の汎用性を高めることができる。
<精密位置決め機構の説明>
係合部の回転を止める精密位置決め機構について、図13から図14を用いて説明する。図13にCCW回転により分離したときの分離装置1000の分解斜視図を示す。第1L形部材1101は、第1カバー1113と当接する面1101fと摺動面1101dとの間に溝1101gを有している。
また、溝1101gを形成する壁の一部として端部1101h(当接部)を有している。
駆動半円部材1111は、半円を形成する摺動面1109bおよび摺動面1109cより第1カバー1113側に駆動回転調整部1109d(フランジ)を有している。
また、駆動回転調整部1109dは、端部1109e(突き当て部)を有している。
駆動半円部材1111は、CCW方向に回転すると、端部1109eが端部1101hに接触することで回転位置が規制され、その回転が停止する。
第2L形部材1201は、第2カバー1213と当接する面1201fと摺動面1201dとの間に溝1201gを有している。
また、溝1201gを形成する壁の一部として端部1201h(当接部)を有している。
従動半円部材1211は、半円を形成する摺動面1209bおよび摺動面1209cより第2カバー1213側に従動回転調整部1209d(フランジ)を有している。
また、従動回転調整部1209dは、端部1209e(突き当て部)を有している。
従動半円部材1211は、CCW方向に回転すると、端部1209eが端部1201hに接触することで回転位置が規制され、その回転が停止する。
第1L形部材1101、駆動半円軸1109、第2L形部材1201および従動半円軸1209は、切削加工により精密加工が成されており、係合部の回転を精密に止めることが可能である。
また、上記で説明した精密位置決め機構は、係合部の保持機構を兼ねていない。
なお、分離装置1000を小型化する場合および部品形状を簡単化する場合等、精密位置決め機構と係合部の保持機構を兼ねる別の態様を採用することも可能である。図14にCCW回転により分離したときの分離装置1000の分解斜視図(図13を別角度から記載)を示す。第1連結部材1100を組み立てた状態において、駆動半円部材1111の駆動回転調整部1109dは、第1L形部材1101の溝1101gと第1カバー1113との間に隙間を有して挟まれる。
駆動半円部材1111の第1保持ピン1110は、第1カバー1113に形成された溝1113aに挿通される。
また、作動中、駆動半円部材1111がCCW方向に回転しても、溝1113aは第1保持ピン1110の軌跡に沿うように形成されており、溝1113aの側面1113bおよび底面1113cに接触することはない。
例えば、駆動半円部材1111は、CCW方向に回転すると、第1保持ピン1110が溝1113aの側面1113bに接触することで回転が停止する。
第2連結部材1200を組み立てた状態において、従動半円部材1211の従動回転調整部1209dは、第2L形部材1201の溝1201gと第2カバー1213との間に隙間を有して挟まれる。
また、従動半円部材1211の第2保持ピン1210は、第2カバー1213に形成された溝1213aに挿通される。
また、作動中、従動半円部材1211がCCW方向に回転しても、溝1213aは第2保持ピン1210の軌跡に沿うように形成されており、溝1213aの側面1213bおよび底面1213cに接触することはない。
例えば、従動半円部材1211は、CCW方向に回転すると、第2保持ピン1210が溝1213aの側面1213bに接触することで回転が停止する。
第1L形部材1101、駆動半円軸1109、第1カバー1113、第2L形部材1201、従動半円軸1209、第2カバー1213は、切削加工により精密加工が成されており、係合部の回転を精密に止めることが可能である。
<斉発性の確保の説明>
連結解除装置Aの斉発性を確保するための、係合部回転量調整機構について、図15から図18を用いて説明する。図15にCCW回転により分離するときの連結状態における分離装置1000の分解斜視図を示す。第1L形部材1101の溝1101gは、形成する壁の一部として端部1101iを有している。
駆動半円部材1111の駆動回転調整部1109dは、端部1109fを有している。
駆動半円部材1111は、CW方向に回転すると、端部1109fが端部1101iに接触することで回転が停止する。
第2L形部材1201の溝1201gは、形成する壁の一部として端部1201iを有している。
従動半円部材1211の従動回転調整部1209dは、端部1209fを有している。
従動半円部材1211は、CW方向に回転すると、端部1209fが端部1201iに接触することで回転が停止する。
つまり、分離装置1000を連結させたとき、モータMをCW方向に回転させることで、係合部である駆動半円部材1111および従動半円部材1211の回転開始位置を精密に決めることができる。
また、前述の通り、係合部の回転停止位置も精密に決めることができるので、係合部の回転量を精密に決めることができる。
なお、端部1101hと端部1101iおよび端部1201hと端部1201iは、それぞれ同じ部材(第1L形部材1101および第2L形部材1201)に加工されることにより、部品間のガタによるバラツキをなくして精度を向上させることができる。
前述の通り、第1L形部材1101、駆動半円軸1109、第2L形部材1201および従動半円軸1209は、切削加工により精密加工が成されており、製造による寸法のバラツキは極小化されている。
よって、分離機構1000は、複数個製造したときも個体間の係合部の回転量はほぼ同じであり、高い斉発性を確保することが可能である。
なお、係合部である駆動半円部材1111および従動半円部材1211の回転開始位置は、精密に、かつ任意に決めることができる。図16に図15より端部1101iおよび端部1201iの位置及び構造を変更したときの、連結状態の分離装置1000の正面図を一例として示す。
第1L形部材1101の端部1101iと基準面X方向の成す角θ2および第2L形部材1201の端部1201iと基準面X方向の成す角θ2の大きさは、任意に決めることが可能である。(図15に示すθ2は90°、図16に示すθ2は45°で記載している。)
図15や図16に示すようにθ1=θ2とするのであれば、係合部をCCW方向に回転させて連結を解除する場合、図12に示すとおり、角度θ2を小さくすると係合部を回転させるために必要なトルクを小さくすることができるため、モータMの小型化、すなわち連結解除装置Aの小型化に好適である。
ただし、角度θ2を小さくし過ぎると、前述したとおり、弾性力aおよび後述するマルマンバンドを周方向に引っ張る力による係合部をCCW方向に回転させるトルクが大きくなり、係合部がCCW方向にモータMの動力がなくても駆動する場合があるので、弾性力aおよび後述するマルマンバンドを周方向に引っ張る力を鑑みて、適切な角度θ2を設定する必要がある。
一方、係合部をCW方向に回転させて連結を解除する場合、図12に示すとおり、角度θ2を小さくしても係合部を回転させるために必要なトルクは小さくならないが、モータMを作動させる時間が短くなるため、モータMを駆動させるための電源等の小型化に好適である。
図17に駆動半円部材1111および従動半円部材1211の形状をCW方向に回転させて回転開始位置を決めるとき、それぞれの部材が接触する場所を図15より変化させたときの、連結状態の分離装置1000の正面図を示す。
駆動半円部材1111は、CW方向に回転すると、端部1109gが第2L形部材1201の端部1201jに接触することで回転が停止する。
従動半円部材1211は、CW方向に回転すると、端部1209gが第1L形部材1101の端部1101jに接触することで回転が停止する。
上記の形状の場合、前述のように端部1109gおよび端部1209gの形状を調整することにより、回転開始位置を精密に決めることができる。
上記の形状の場合、一方の半円部材の回転開始位置を決める突き当てを、分離時に他方の半円部材が保持されるL型部材に設けることによって、第1L形部材1101、駆動半円部材1111、第2L形部材1201、従動半円部材1211の部品形状を図15よりも簡単化することができるため、量産に好適である。
また、上記で説明した係合部回転量調整機構は、係合部の保持機構を兼ねていない。
なお、分離装置1000を小型化する場合および部品形状を簡単化する場合等、係合部回転量調整機構と係合部の保持機構を兼ねる別の態様を採用することも可能である。図18にCCW回転により分離するときの連結状態の分離装置1000の分解斜視図(図15を別角度から記載)を示す。第1連結部材1100を組み立てた状態において、駆動半円部材1111の駆動回転調整部1109dは、第1L形部材1101の溝1101gと第1カバー1113との間に隙間を有して挟まれる。
駆動半円部材1111の第1保持ピン1110は、第1カバー1113に形成された溝1113aに挿通される。
駆動半円部材1111は、CW方向に回転すると、第1保持ピン1110が溝1113aの側面1113bに接触することで回転が停止する。
第2連結部材1200を組み立てた状態において、従動半円部材1211の従動回転調整部1209dは、第2L形部材1201の溝1201gと第2カバー1213との間に隙間を有して挟まれる。
また、従動半円部材1211の第2保持ピン1210は、第2カバー1213に形成された溝1213aに挿通される。
従動半円部材1211は、CW方向に回転すると、第2保持ピン1210が溝1213aの側面1213bに接触することで回転が停止する。
つまり、分離装置1000を連結させたとき、モータMをCW方向に回転させることで、係合部である駆動半円部材1111および従動半円部材1211の回転開始位置を精密に決めることができる。
また、前述の通り、連結解除時における係合部の回転停止位置も精密に決めることができるので、係合部の回転量を精密に決めることができる。
前述の通り、第1L形部材1101、駆動半円部材1111、第2L形部材1201および従動半円軸1211は、切削加工により精密加工が成されており、製造による寸法のバラツキは極小化されている。
よって、分離機構1000は、複数個製造したときも個体間の係合部の回転量はほぼ同じであり、高い斉発性を確保することが可能である。
<保持機構の説明>
連結解除装置Aが解除されたとき、係合部がバラバラにならないための保持機構について、図14を用いて説明する。図14にCCW回転により分離したときの分離装置1000の分解斜視図(図13を別角度から記載)を示す。第1連結部材1100を組み立てた状態において、駆動半円部材1111の駆動回転調整部1109dは、第1L形部材1101の溝1101gと第1カバー1113との間に隙間を有して挟まれる。
また、駆動半円部材1111の第1保持ピン1110は、第1カバー1113に形成された溝1113aに挿通される。
連結解除後、駆動半円部材1111は、駆動回転調整部1109dが第1L形部材1101の溝1101gと第1カバー1113との間に挟まれているため、第1保持ピン1110の軸方向に規制される。
また、駆動半円部材1111は、第1保持ピン1110が第1カバー1113に形成された溝1113aに挿通されているため、第1保持ピン1110の軸直交方向に規制される。
よって、係合部の一部である駆動半円部材1111は、分離機構1000の作動後も第1連結部材1100からバラバラになることはない。
同様に、第2連結部材1200を組み立てた状態において、従動半円部材1211の従動回転調整部1209dは、第2L形部材1201の溝1201gと第2カバー1213との間に隙間を有して挟まれる。
また、従動半円部材1211の第2保持ピン1210は、第2カバー1213に形成された溝1213aに挿通される。
連結解除後、従動半円部材1211は、従動回転調整部1209dが第2L形部材1201の溝1201gと第2カバー1213との間に挟まれているため、第2保持ピン1210の軸方向に規制される。
また、従動半円部材1211は、第2保持ピン1210が第2カバー1213に形成された溝1213aに挿通されているため、第2保持ピン1210の軸直交方向に規制される。
よって、係合部の一部である従動半円部材1211は、分離機構1000の作動後も第2連結部材1200からバラバラになることはない。
そのため、分離機構1000の係合部は、精密位置決め機構とは別に、分離後も係合部がバラバラにならないための保持機構を有する。
なお、前述した精密位置決め機構、斉発性の確保および保持機構の説明は、係合部である駆動半円部材1111および従動半円部材1211をCCW方向に回転させて連結を解除する場合について図13から図18を用いて説明したが、係合部をCW方向に回転させて連結を解除する場合は、回転開始位置や回転停止位置を決める各規制構造を図3から図11に示す基準面Yに対して対称な構造とする必要がある。
また、前述した係合部をCCW方向に回転させて解除すると低衝撃に解除、CW方向に回転させて解除すると瞬間的に解除する特徴は、図1に示す通り駆動半円部材1111、従動半円部材1211からなる半円部材の下部に第1連結部材1100が、上部に第2連結部材1200が係合している場合の特徴であり、半円部材の上部に第1連結部材1100が、下部に第2連結部材1200が係合する形状の場合は、CCW方向に回転させて解除すると瞬間的に解除、CW方向に回転させて解除すると低衝撃に解除となり、解除時の特徴が逆となる。
ここで、本実施形態に係る連結解除装置を適用した装置の一例として、ロケットや衛星等の宇宙航行体の分離装置に設けた例を示す。図19に示すとおり、打ち上げ時のロケット(図19(a))は、1段からフェアリングまで連結した状態であるが、飛翔中にフェアリングおよび下段部材の連結を解除しながら(図19(b)および(c))、最終的に衛星等のペイロードとの連結を解除する(図19(d))。この構成によれば、フェアリングとロケットとの連結を解除する際に発生する衝撃を、火工品を用いて分離するものに比べて抑えることができると同時に、より確実に分離動作を行わせることができる。
以下にロケットの上段部材(フェアリング含む)、下段部材間および衛星分離装置に本実施形態に係る連結解除装置を適用した場合の具体的な構造について、図20から図21を用いて詳述する。図20に本実施形態における連結状態の斜視図を示す。図20に示す通り、本実施形態は、分離対象である下段部材3001および上段部材3002および連結解除装置3000、マルマンバンド3003、分離スプリング3004から構成される。
連結解除装置3000は、機体の周方向に180度対称に配置され、モータMは下段部材3001に保持される。
モータMは、上段部材3002に保持されてもよいが、上段部材3002を軽量にしたい場合は、下段部材3001に保持させる方が好適である。
マルマンバンドは、クランプ3003a、エンドクランプ3003b、バンド3003cから構成され、バンド3003cの両端はエンドクランプ3003bに締結される。
連結解除装置3000の連結部3000aは、エンドクランプ3003bの連結穴3003dに挿通され、締結用ナット3000bにより締結される。
締結用ナット3000bを締め付けるとバンド3003cが周方向に引っ張られ、機軸中心方向に発生した締付力によりクランプ3003aと下段部材3001および上段部材3002が嵌合することで、下段部材3001および上段部材3002が連結する。
なお、分離スプリング3004は、搭載された圧縮コイルばねが圧縮された状態であり、下段部材3001および上段部材3002に対して、機軸方向に弾性力を負荷した状態である。
図21に本実施形態における分離状態の斜視図を示す。図21に示す通り、連結解除装置3000が作動するとマルマンバンド3003が切断される。
マルマンバンド3003が切断されると、マルマンバンド3003は機軸中心方向に発生していた締付力が解放されることにより機軸直交方向にはじかれ、下段部材3001と上段部材3002の連結が解除される。
下段部材3001と上段部材3002の連結が解除されると、分離スプリング3004の弾性力によって、下段部材3001と上段部材3002は機軸方向に分離する。
なお、下段部材3001と上段部材3002が機軸方向に傾くことなく分離されることが望ましい。一般に、連結解除装置3000は、2個に限らず複数個の搭載が可能であり、連結解除装置3000を複数個搭載する場合、解除のタイミングがずれるとマルマンバンド3003の一部が下段部材3001と上段部材3002にひっかかり、下段部材3001と上段部材3002が機軸方向に傾いて分離されてしまう。それに対し、本実施形態に係る連結解除装置は、上述した構成によって高い斉発性を有しており、下段部材3001と上段部材3002とを機軸方向に傾けずに分離するのに有効である。
また、下段部材3001と上段部材3002の周方向長さが短い(マルマンバンド3003の長さが短い)場合等、マルマンバンド3003が機軸直交方向にはじかれる速度が、下段部材3001と上段部材3002の分離する速度に対して速く、分離時の傾きに寄与しない場合は、連結解除装置3000を1個にすることも可能である。
また、フェアリング等の衛星近傍の分離箇所は、衛星への衝撃を低減することが要求されるため、駆動半円部材1111、従動半円部材1211をCCW方向に回転させて分離することが好適である。
一方、機体への外力が負荷された状態で分離する等、分離動作をゆっくり行うことで機体の姿勢制御が困難になる場合等、瞬間的な分離が要求されるときはCW方向に回転させて分離することが好適である。
(第二実施形態)
本発明の一実施形態に係る連結解除装置を適用した装置の他の例として、連結解除装置を機軸方向に配置した例を示す。本実施形態は、前述のマルマンバンドを無くすことによる軽量化および機体の外側に凸部が無くなることによる空気抵抗および発熱の低減に有利である。
以下にロケットの上段部材(フェアリング含む)、下段部材間に本実施形態に係る連結解除装置を適用した場合の具体的な構造について、図22から図24を用いて詳述する。図22に本実施形態における連結状態の斜視図を示す。なお、図20に示す第1実施形態同様に、本実施形態は、分離対象である下段部材4001および上段部材4002および連結解除装置4000、分離スプリング4004から構成される。なお、図22においては、連結解除装置4000を図示するために上段部材4002を省略して示す。
連結解除装置4000は、機体の周方向に90度等間隔に配置され、モータMは下段部材4001に保持される。
モータMは、上段部材4002に保持されてもよいが、上段部材4002を軽量にしたい場合は、下段部材4001に保持させる方が好適である。
分離スプリング4003は、搭載された圧縮コイルばねが圧縮された状態であり、下段部材4001および上段部材4002に対して、機軸方向に弾性力を負荷した状態である。
図23に本実施形態における連結状態の連結解除装置4000周辺の断面図を示す。図23に示す通り、上段部材4002のインロー部4002aは、下段部材4001のインロー部4001aと嵌合される。
連結解除装置4000の連結部4000bは、上段部材4002のリブ4002bに設けられた連結穴4002cに挿通され、締結用ナット4000dにより締結される。
連結解除装置4000の連結部4000aは、下段部材4001のリブ4001bに設けられた連結穴4001cに挿通され、締結用ナット4000cにより締結される。
図24に本実施形態における分離状態の連結解除装置4000周辺の断面図を示す。図24に示す通り、連結解除装置3000が作動すると、下段部材3001と上段部材3002は機軸方向に分離する。
なお、連結解除装置4000を複数個搭載する場合、解除のタイミングがずれると下段部材4001と上段部材4002が機軸方向に傾いて分離されるため、高い斉発性を有した本実施形態の連結解除装置4000は有効である。
また、連結解除装置4000を複数個搭載する場合、下段部材4001と上段部材4002が分離しないように機軸方向に対して耐えなければならない引張力を分散させる、すなわち連結解除装置4000の1個に負荷される引張力を小さくすることができ、連結解除装置4000の小型、軽量化に好適である。
一方、衛星分離装置のように、機体の直径および機軸方向に対して耐えなければならない引張力が小さい場合、連結解除装置4000を機軸に1個のみ配置することも軽量化に好適である。
また、下段部材4001と上段部材4002の分離に必要な機軸方向の弾性力が、第1圧縮ばね4106、第2圧縮ばね4206の弾性力で十分であるときには、分離スプリング4003は設けなくても良い。