JP7215224B2 - アーク式電気炉における排滓方法及び溶融金属の製造方法 - Google Patents

アーク式電気炉における排滓方法及び溶融金属の製造方法 Download PDF

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Description

本願はアーク式電気炉において溶融金属の液面に存在するスラグ又は不純物の排滓方法等を開示する。
電気エネルギーを用いて金属を加熱して溶解させるアーク式の電気炉が広く用いられている。例えば、アーク式電気炉の内部に固体金属を設置し、電極と固体金属源との間でアーク形態の電流を発生させて加熱することで、電気炉の内部において固体金属を溶解させて所望の溶融金属を得ることができる。或いは、アーク式電気炉の内部に溶融金属を導入し、電極と溶融金属との間でアーク形態の電流を発生させて加熱することで、電気炉内において溶融金属の溶融状態を保持することができる。ここで、アーク式電気炉によって溶融金属を加熱保持する際、当該溶融金属中の不純物が溶融金属の液面へと浮上する場合がある。溶融金属として溶鋼を例にとると、当該溶鋼中の不純物が主に酸化物形態として溶鋼の上部へと浮上し、溶鋼の液面にスラグが形成される。溶融金属の上部に浮上したスラグや不純物(以下「スラグ等」という場合がある)は、通常、電気炉に設けられた排滓口から炉外へと排出される。
電気炉は一般に炉径が大きく、その分、溶融金属の液面におけるスラグ等の厚みが薄くなる傾向がある。溶融金属の表面のスラグ等を炉外へと効率的に排出するためには、造滓材による成分調整やカーボンインジェクションによるスラグフォーミング等を行うことが多い。また、従来において、溶融金属の表面のスラグ等を炉外へと排出する際は、炉体を傾動せずに排滓口からスラグ等があふれ出るように排出させるか(特許文献1等)、或いは、炉体傾動によりスラグ等の排出を行ってきた。すなわち、スラグ面の高さと排滓口の高さとの差による位置エネルギーを利用してスラグ等の排出を行うのが一般的であった。
一方、排滓口から掻き出し用の治具を挿入して、人力、機械操作、ロボット等により溶融金属の液面を掻き出すことも考えられる。これは、大型の電気炉では導入が容易ではない上に、排滓口が大きく開くことにより抜熱過多や不純ガスの混入といった問題があるほか、掻き出し用の治具の寿命の面や、機械操作・ロボット等の設置には設置場所等の制約がある。また人力で行う場合は、作業者の身体的負荷が大きい。また、溶融金属の液面に存在するスラグ等に運動エネルギーを伝達して、スラグ等の排出を促進することも考えられる。例えば、特許文献2に開示された技術を参考に、電気炉の内部でガスの上吹きを行い、ガス流によりスラグ等を押し出すことがあり得る。しかしながら、特許文献2に開示された技術はタンディッシュからスラグを排出する技術であり、電気炉の蓋の構造や電気炉の大きさ等を考えると、特許文献2に開示された技術を電気炉にそのまま適用することは困難である。
特許第3783261号公報 特開平8-57599号公報
上述の通り、アーク式電気炉の排滓口からスラグ等を排出する場合、従来においてはスラグ等の厚みによる位置エネルギーしか利用することができず、スラグ等の排出速度が遅いという課題がある。特にアーク式電気炉は、炉径が大きく、また炉蓋に電極等が挿入配置されるため、転炉等と比較して傾動角が小さくならざるを得ず、例えば数度程度である。すなわち、炉を傾動させることによってスラグ等の排出を促すことには限界がある。また、メタルの歩留低下を防ぐために、メタル面を排滓口よりも低い位置に制御する制約が働くため、スラグ等の厚みが薄くなるとスラグ等の排出速度が顕著に低下する。さらに、スラグ等の厚みが薄くなると、排滓口の壁面や底面とスラグ等との間に働く流動摩擦力によってスラグ等の排出が進まなくなるため、たとえ排出時間を長時間としても、排滓率を十分に高めることは難しい。
一方、本発明者の新たな知見によると、アーク式電気炉の内部においてガスの上吹きを行って、スラグ等にガス流による運動エネルギーを与えただけでは、スラグ等の排出速度を十分に高めることが難しい場合がある。ガスにより押されたスラグ等が排滓口付近で渦を形成し、排滓口から逃げる方向に運動し、与えられた運動エネルギーがスラグ等の排出に効率的に利用されていないためと考えられる。
以上の通り、アーク式電気炉において、単位時間当たりのスラグ等の排出量(排出速度)を高め、かつスラグ等の厚みが薄い場合においても排出速度を高位で保つことが可能な新たな技術が必要である。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、アーク式電気炉の内部に配置された溶融金属をアーク放電によって加熱して、前記溶融金属の液面にスラグ又は不純物を浮上させる、浮上工程と、前記電気炉の内部に設置された少なくとも1つのガス吹出手段によって、前記溶融金属の液面よりも上方から前記溶融金属の液面又は前記溶融金属の液面に存在する前記スラグ又は不純物へとガスを吹き付けて、前記溶融金属の液面に存在する前記スラグ又は不純物を前記電気炉の側面に設けられた排滓口へと誘導するとともに、前記排滓口へと誘導された前記スラグ又は不純物を前記排滓口を介して前記電気炉の外部へと排出する、排滓工程と、を備え、前記排滓工程において、前記ガス吹出手段から吹き出されるガスの向きを前記排滓口に向かう向きとし、且つ、前記ガス吹出手段から吹き出されるガスの吹出幅W1を、前記排滓口における前記溶融金属の液面の最小幅W2の半分以上とする、アーク式電気炉における排滓方法を開示する。
本開示の排滓方法においては、前記少なくとも1つのガス吹出手段が、ランス及びバーナーから選ばれる少なくとも1つであってもよい。
本開示の排滓方法においては、前記少なくとも1つのガス吹出手段が、幅広のガス吹出孔を有していてもよい。
本開示の排滓方法においては、前記排滓工程において、複数の前記ガス吹出手段からガスを各々吹き出し、各々のガスの向きを前記排滓口に向かう向きとしてもよい。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、本開示の排滓方法によって排滓を行う工程と、前記電気炉の内部の溶融金属を外部へと取り出す工程と、を備える、溶融金属の製造方法を開示する。
本開示の技術によれば、アーク式電気炉において、単位時間当たりのスラグ等の排出量(排出速度)を高め、かつスラグ等の厚みが薄い場合においても排出速度を高位で保つことが可能である。
排滓方法S10の流れを説明するための図である。 排滓方法S10において用いられるアーク式電気炉100の構成の一例を説明するための概略図である。図2(A)が水平断面における形状(端面)を概略的に示す図であり、図2(B)が図2(A)のIIB-IIB鉛直断面における形状(端面)を概略的に示す図である。 ガス吹出手段10の機能について説明するための概略図である。 ガス吹出手段10から吹き出されるガスの吹出幅W1について説明するための概略図である。 ガス吹出手段10によるガス吹き出しの位置について説明するための概略図である。 排滓口20における溶融金属の液面の最小幅W2について説明するための概略図である。 水モデル実験結果の一つを示す図である。 水モデル実験結果の一つを示す図である。
1.アーク式電気炉における排滓方法
図1にアーク式電気炉における排滓方法S10の流れを示す。また、図2に排滓方法S10において用いられるアーク式電気炉100の構成の一例を概略的に示す。図1及び2に示すように、排滓方法S10は、アーク式電気炉100の内部に配置された溶融金属1をアーク放電によって加熱して、溶融金属1の液面にスラグ又は不純物(スラグ等2)を浮上させる、浮上工程S1と、電気炉100の内部に設置された少なくとも1つのガス吹出手段10によって、溶融金属1の液面よりも上方から溶融金属1の液面又は溶融金属1の液面に存在するスラグ等2へとガスを吹き付けて、溶融金属1の液面に存在するスラグ等2を電気炉100の側面に設けられた排滓口20へと誘導するとともに、排滓口20へと誘導されたスラグ等2を排滓口20を介して電気炉100の外部へと排出する、排滓工程S2と、を備えている。ここで、排滓方法S10は、排滓工程S2において、ガス吹出手段10から吹き出されるガスの向きを排滓口20に向かう向きとし、且つ、ガス吹出手段10から吹き出されるガスの吹出幅W1を、排滓口20における溶融金属1の液面の最小幅W2の半分以上とすることに一つの特徴がある。
1.1.アーク式電気炉の構成
まず、排滓方法S10にて用いられるアーク式電気炉100の構成について説明する。図2に示すように、アーク式電気炉100は、アーク放電によって溶融金属1を加熱することが可能であり、且つ、溶融金属1の液面へと浮上したスラグ等2を外部へと排出することが可能であるように構成される。具体的には、アーク式電気炉100は、電気炉の内部に設置された少なくとも1つのガス吹出手段10と、電気炉の内部から外部へとスラグ等2を排出するために電気炉の側面(側壁43)に設けられた少なくとも1つの排滓口20とを有する。ガス吹出手段10は、電気炉の内部に溶融金属1が配置された状態において、溶融金属1の液面よりも上方から溶融金属1の液面又は溶融金属1の液面に存在するスラグ等2へとガスを吹き付けて、溶融金属1の液面に存在するスラグ等2を排滓口20へと誘導可能であるように構成される。
1.1.1.ガス吹出手段10
図3を参照しつつアーク式電気炉100に備えられるガス吹出手段10の機能について説明する。ガス吹出手段10は、電気炉の内部に溶融金属1が配置された状態において、溶融金属1の液面よりも上方から溶融金属1の液面又は溶融金属1の液面に存在するスラグ等2へとガスを吹き付けて、溶融金属1の液面に存在するスラグ等2を排滓口20へと誘導可能であるように構成される。例えば、ガス吹出手段10はガス吹出孔(吹出孔10a、図4参照)を備えていてもよい。この場合、例えば、図3に示すように、ガス吹出手段10のガス吹出孔の延長線と溶融金属1の液面とが交わる領域α(溶融金属1の液面においてガスが吹き付けられる領域α)がガス吹出孔の斜め下に配置されるように、ガス吹出手段10から斜め下に向かってガスが吹き出されるように構成するとよい。また、ガス吹出手段10から吹き出されたガスが排滓口20の方向に向かうように、電気炉の内部におけるガス吹出手段10の向きを調整するとよい。本発明者が確認した限りでは、ガス吹出手段10から吹き出されるガスの進行方向が、水平面に対して15度以上60度以下となるように構成された場合、スラグ等2の排出効率を一層高め易い。すなわち、図3(C)に示すように、ガス吹出手段10からのガスの進行方向と水平面とのなす角度θが15度以上60度以下であってもよい。
ガス吹出手段10は所定の吹出幅W1にてガスを吹き出すことが可能なように構成される。図4を参照しつつガス吹出手段10からの「ガスの吹出幅W1」について説明する。
図4(A)に示す形態においては、アーク式電気炉100に備えられた1つの排滓口20に対して、当該排滓口20の正面にガス吹出手段10が1つだけ備えられており、当該ガス吹出手段10が吹出孔10aを有しており、当該吹出孔10aが排滓口20に向けられている。この場合、当該吹出孔10aの水平方向の開口長さを「幅」或いは「横幅」、鉛直方向の開口長さを「高さ」或いは「縦幅」と定義する。そして、吹出孔10aの水平方向の開口長さのうち最も長いもの(すなわち「横幅」のうち最も長い部分)を「ガスの吹出幅W1」と定義する。
図4(A)に示す形態において、吹出孔10aの形状は特に限定されるものではなく、多角形状や円形状等、種々の形状を採用し得る。吹出幅W1を容易に増大させる観点から、ガス吹出手段10が幅広のガス吹出孔10aを有していてもよい。言い換えれば、ガス吹出手段10は高さよりも幅のほうが大きい吹出孔10aを有していてもよい。また、ガス吹出手段10は複数の吹出孔10aを有していてもよい。ガス吹出手段10が幅方向に複数の吹出孔10aを有する場合、幅方向一端に配置されたガス吹出孔10aの中心と幅方向他端に配置された吹出孔10aの中心とを結んだ直線を特定し、当該直線を水平面に投影した長さを「ガスの吹出幅W1」と定義する。ガス吹出手段10が高さ方向に複数の吹出孔10aを有する場合、複数の吹出孔10aの横幅のうち最も長いものを「ガスの吹出幅W1」と定義する。ガス吹出手段10が幅方向及び高さ方向の双方向(斜め方向も含む)に複数の吹出孔10aを有する場合、幅方向一端に配置されたガス吹出孔10aの中心と幅方向他端に配置された吹出孔10aの中心とを結んだ直線を特定し、当該直線を水平面に投影した長さL1と、複数の吹出孔10aの横幅のうち最も長い長さL2とを特定し、L1及びL2のうち長いほうを「ガスの吹出幅W1」と定義する。
図4(B)に示す形態においては、アーク式電気炉100に備えられた1つの排滓口20に対して、当該排滓口20の正面にガス吹出手段10が幅方向に複数並列して備えられており、当該複数のガス吹出手段10が吹出孔10aを各々有しており、各々の吹出孔10aが排滓口20に向けられている。すなわち、複数のガス吹出手段10からガスを各々吹き出し、各々のガスの向きを排滓口20に向かう向きとしている。この場合、水平断面において、排滓口20に向かって右端に配置されたガス吹出手段10の吹出孔10aの中心(図芯)から、左端に配置されたガス吹出手段10の吹出孔10aの中心(図芯)までの長さを「ガスの吹出幅W1」と定義する。すなわち、排滓口20の正面にガス吹出手段10が複数備えられる場合、幅方向一端に配置されたガス吹出手段10の吹出孔10aの中心と幅方向他端に配置されたガス吹出手段10の吹出孔10aの中心とを結んだ直線を特定し、当該直線を水平面に投影した長さを「ガスの吹出幅W1」と定義する。
図4(B)に示す形態において、各々の吹出孔10aの形状は特に限定されるものではなく、多角形状や楕円形状等、種々の形状を採用し得る。吹出幅W1を容易に増大させる観点から、複数のガス吹出手段10のうち少なくとも1つのガス吹出手段10が幅広のガス吹出孔10aを有していてもよい。言い換えれば、少なくとも1つのガス吹出手段10は高さよりも幅のほうが大きい吹出孔10aを有していてもよい。また、少なくとも1つのガス吹出手段10は複数の吹出孔10aを有していてもよい。ガス吹出手段10が複数の吹出孔10aを有する場合、上記のL1又はL2のうちの長いほうの中心の位置を吹き出し孔10aの中心(図芯)の位置とみなし、上記の通りW1を特定する。尚、図4(B)においては、複数のガス吹き出し手段10からのガス吹き出し方向が平行となるように向けられているが、平行でなくてもよい。
アーク式電気炉100に設けられるガス吹出手段10の具体例としては、例えば、ランス及びバーナーから選ばれる少なくとも1つが挙げられる。ガス吹出手段10としてランスとバーナーとを併用してもよい。ランスの構造は、例えば、従来公知の転炉上吹き用のランスの構造を参考とすればよい。アーク式電気炉100の内部においてランスから吹き出させるガスの種類は特に限定されるものではない。例えば、ランスは、不活性ガス又は窒素ガスを吹出可能であるように構成されていてもよい。一方、バーナーの構造は、従来公知のバーナーと同様の構造とすればよい。バーナーは、通常、可燃性ガスを吹出可能であるように構成される。可燃性ガスの種類に特に制限はない。ガス吹出手段10としてバーナーを使用した場合、スラグ等2の昇温が可能となる。スラグ等2は一般的に高温になるほど粘度が低下するため、バーナーによってスラグ等2を昇温させつつ押し出すことで、排滓口20を介してスラグ等2をより効率的に排出させることができる。
ガス吹出手段10から吹き出されるガスの流速や流量は特に限定されるものではなく、電気炉の規模や排出すべきスラグ等2の量等に応じて適宜決定すればよい。
上述の通り、ガス吹出手段10は、溶融金属1の液面又は溶融金属1の液面に存在するスラグ等2にガスを吹き付けてスラグ等2に運動エネルギーを与える機能を有するが、これ以外の機能をさらに有していてもよい。例えば、溶融金属1中に反応ガスや不活性ガスを吹き込む機能を有していてもよい。
図2においては、ガス吹出手段10によるガス吹き出しの位置(例えば吹出孔の位置)が電極30と排滓口20との間である形態を示したが、ガス吹出手段10によるガス吹き出しの位置はこれに限定されるものではない。図5に示すように、電気炉の内部空間を排滓口20側の空間Xと排滓口20とは反対側の空間Yとに鉛直面にて等分した場合、ガス吹出手段10によるガスの吹き出しを空間Xにて行ってもよいし、空間Yにて行ってもよいし、空間Xと空間Yとの境界にて行ってもよい。特に、ガス吹出手段10によるガスの吹き出しを排滓口20側の空間Xにて行った場合に、スラグ等2を排滓口20へとより誘導し易い。
図2においては、ガス吹出手段10が炉蓋41に固定される形態を示したが、ガス吹出手段10の固定の位置はこれに限定されるものではない。例えば、ガス吹出手段10を炉の側壁43に固定してもよい。この場合においても、ガス吹出手段10から排滓口20の方向へと所定の幅W1にてガスを吹き出させてスラグ等2に排滓口20に向かう運動エネルギーを与えることができ、スラグ等2の排出を促進することができる。
ガス吹出手段10は、電気炉の一部にリジッドに固定されている必要はなく、電気炉の内部においてガスの吹き出し方向を変更可能なように取り付けられていてもよい。例えば、ガス吹出手段10は電気炉の内部において旋回可能に取り付けられていてもよい。
1.1.2.排滓口20
図6を参照しつつ水平断面における排滓口20の形状や排滓口20における溶融金属1の液面の最小幅W2について説明する。図6(A)に示すように、アーク式電気炉100においては、例えば、水平断面において入口側(電気炉の内部側)から出口側(電気炉の外部側)にかけて開口幅が略同じである排滓口20が採用され得る。この場合、「排滓口20における溶融金属1の液面の最小幅W2」は、排滓口20の入口側及び出口側の開口幅と一致することとなる。
排滓口20の形状は、図6(A)に示す形状に限定されるものではない。例えば、排滓口20は、水平断面において電気炉100の内部から外部に向かって先細りとなる形状を有していてもよい。具体的には、図6(B)に示すように、排滓口20においては、出口側(電気炉の内部側)の開口幅Waが入口側(電気炉の外部側)の開口幅Wbよりも狭くてもよい。このように排滓口20の形状が先細りである場合、「排滓口20における溶融金属1の液面の最小幅W2」は、排滓口20の出口側の開口幅Waと一致することとなる。
或いは、排滓口20は、水平断面において電気炉100の内部から外部に向かって先太りとなる形状を有していてもよい。具体的には、図6(C)に示すように、排滓口20においては、入口側(電気炉の内部側)の開口幅Wbが出口側(電気炉の外部側)の開口幅Waよりも狭くてもよい。この場合、「排滓口20における溶融金属1の液面の最小幅W2」は、排滓口20の入口側の開口幅Wbと一致することとなる。
排滓口20の出口側の開口幅Waと、入口側の開口幅Wbと、排滓口20の長さL(入口側開口と出口側開口との水平距離)との関係は特に限定されるものではない。尚、排滓口20の長さLは、電気炉の側壁43の厚さ以上であることが一般的である。スラグドア21の配置や排出されたスラグ等を受ける鍋(不図示)の可動範囲によっては、排滓口20が電気炉の外壁よりも突出して設置されていてもよく、その場合、排滓口20の長さLは側壁43の厚さよりも長くなる。
排滓口20の入口側の開口形状や出口側の開口形状は、特に限定されるものではない。開口を正面から視た場合の形状として、多角形状や円形状等、種々の形状を採用し得る。排滓口20の開口幅Wa及びWbや開口高さや長さLの具体的な値は特に限定されるものではなく、アーク式電気炉100の規模や側壁43の厚み等に応じて適宜決定することができる。
図2においては、排滓口20の入口側と出口側とで水平方向における高さが略同じである形態を示したが、排滓口20の形態はこれに限定されるものではない。排滓口20の入口側の高さが出口側の高さよりも高くなるように構成してもよいし、排滓口20の入口側の高さが出口側の高さよりも低くなるように構成してもよい。
図2においては、排滓口20の内壁の形状が平面(水平断面及び鉛直断面でのいずれの形状においても直線状)である形態を示したが、排滓口20の形態はこれに限定されるものではない。排滓口20の内壁の形状が曲面(水平断面及び鉛直断面のうちの少なくとも一方の断面での形状において曲線状)であってもよい。また、排滓口20は、内壁に凹凸を有していてもよい。
図2においては、電気炉の側面に排滓口20が1つだけ備えられる形態を示したが、排滓口20の数は1つに限定されるものではない。アーク式電気炉100の規模等に応じて排滓口20の数を2つ以上とすることも可能である。
電気炉の側面における排滓口20の位置は特に限定されるものではない。排滓口20の位置に応じて、内部に設置すべき溶融金属1の量等が決定され得る。
1.1.3.その他の構成
アーク式電気炉100は上記のガス吹出手段10と排滓口20とを備えていればよく、これ以外の構成については従来と同様とすることができる。上述の通り、アーク式電気炉100は、内部に溶融金属が配置される空間が形成される。ここで、当該空間の内壁には、外壁を保護するために、耐火ブロックからなる耐火壁体が形成され得る。また、耐火壁体のみならず、内部で冷却水が循環して外壁を保護する冷却パネル部材が装着され得ることも一般的である。
図2に示すように、アーク式電気炉100の上部には、開放した上部をカバーし、アーク熱を発生させる電極30を備えた電気炉天井部材(炉蓋)41が結合される。電気炉天井部材41には、図示されていないが、溶解過程および精錬過程で発生する多量の廃ガスやほこりなどを排出する排気管、固体金属源や副材を投入するための投入口、その他の配管等が連結されてもよい。アーク式電気炉100においては、電極30と固体金属または溶融金属との間でアーク形態の電流を発生させ、固体金属の加熱溶融、或いは、溶融金属の加熱保持を行い得る。
図2に示すように、アーク式電気炉100においては、排滓制御や炉内雰囲気制御のため、排滓口20に開閉可能な構造、すなわちスラグドア11を設けてもよい。或いは、スラグドア11を使用せず、開放型の排滓口20としてもよい。
図2に示すように、アーク式電気炉100においては、炉底42に溶融金属を流出させるための出口42aが設けられていてもよい。或いは、炉底42に出口42aを有さず、溶融金属を傾動により流出させてもよい。尚、スラグ等2を排出する場合に炉体を傾動する場合も同様であるが、炉体の傾動角度が大きいと、電極30など電気炉100に付随する設備の設置が困難となる。スラグ等2を排出する場合の炉体の傾動角度は、操業時(アーク放電時)と比較して10度以下とすることが好ましい。
図2においては交流電気炉を想定して電極30が複数描かれているが、アーク式電気炉100は交流電気炉に限らず直流電気炉でも構わない。この場合、電極30は1本であっても複数本であってもよい。
1.2.浮上工程S1
本開示の排滓方法S10においては、浮上工程S1において、上記のようなアーク式電気炉100の内部に配置された溶融金属1をアーク放電によって加熱する。「アーク式電気炉の内部に配置された溶融金属」とは、アーク式電気炉100の内部に固体金属を収容したうえでアーク放電によって固体金属を溶融させて得られた溶融金属や、あらかじめ溶融させた金属をアーク式電気炉100の内部への流し込むようにして配置された溶融金属や、溶融金属を保持した炉内に固体金属を投入したうえでアーク放電によって固体金属を溶融させて得られた溶融金属等、種々の形態を含む。溶融金属1は不純物を含むものであって液面にスラグ等2が浮上し得るものであればよい。そのような溶融金属1としては、例えば、溶鋼、ステンレスを含む各種鉄合金、ニッケル等が挙げられる。特にスラグの生成を伴う溶鋼が好ましい。アーク放電による溶融金属の加熱条件については従来と同様であることから、ここでは詳細な説明を省略する。
浮上工程S1においては、上記のような溶融金属1をアーク放電によって加熱し、溶融金属1の表面にスラグ等2を浮上させる。例えば、溶融金属を加熱し続けることで、スラグ等2が自ずと溶融金属1の表面に浮上し、溶融金属1の液面にスラグ等2からなる層が形成され得る。その際に、成分調整等のために、造滓材等の副材を使用しても良い。スラグ等2は溶融金属1の液面全体に連続層として存在していてもよいし、液面の所々に分散して存在していてもよい。
1.3.排滓工程S2
排滓工程S2においては、電気炉100の内部に設置された少なくとも1つのガス吹出手段10によって、溶融金属1の液面よりも上方から溶融金属1の液面又は溶融金属1の液面に存在するスラグ等2へとガスを吹き付けて、溶融金属1の液面に存在するスラグ等2を電気炉100の側面に設けられた排滓口20へと誘導するとともに、排滓口20へと誘導されたスラグ等2を排滓口20を介して電気炉100の外部へと排出する。「溶融金属1の液面又は溶融金属1の液面に存在するスラグ等2へとガスを吹き付ける」とは、溶融金属1の液面にのみガスを吹き付ける形態、スラグ等2にのみガスを吹き付ける形態、及び、溶融金属1の液面及びスラグ等2の双方にガスを吹き付ける形態のいずれも含む概念である。特に、少なくとも溶融金属1の液面に存在するスラグ等2にガスを吹き付ける形態(スラグ等2にのみガスを吹き付ける形態、及び、溶融金属1の液面及びスラグ等2の双方にガスを吹き付ける形態)とするとよい。ここで、本発明者の新たな知見によれば、排滓口20を介して溶融金属の表面のスラグ等を排出を行う場合に、仮に電気炉の内部においてガスの上吹きを行って溶融金属の液面のスラグ等にガス流による運動エネルギーを与えたとしても、排滓口から排出されるスラグ等の排出速度を十分に高めることが難しい場合がある。ガスにより押されたスラグ等が排滓口付近で渦を形成し、排滓口から逃げる方向に運動し、与えられた運動エネルギーがスラグ等の排出に効率的に利用されていないためと考えられる。本発明者は、鋭意研究の結果、ガス吹出手段10からのガスの吹出幅W1によって、アーク式電気炉100におけるスラグ等2の排滓効率が変化することを突き止めた。本発明者の新たな知見によれば、排滓工程S2において、ガス吹出手段10から吹き出されるガスの向きを排滓口20に向かう向きとし、且つ、ガス吹出手段10からのガスの吹出幅W1を、排滓口20における溶融金属1の液面の最小幅W2の半分以上とすることで、排滓口20へと誘導されたスラグ等2を排滓口20を介して外部へと効率的に押し出すことができ、スラグ等2の排滓効率が顕著に高めることができる。尚、「ガス吹出手段10から吹き出されるガスの向きを排滓口20に向かう向きとする」とは、ガス吹出手段10から吹き出されたガスの進行方向を水平方向成分と鉛直方向成分とに分けた場合、当該水平方向成分の延長上に排滓口20が存在することを意味する。例えば、当該水平方向成分の延長上に排滓口20の入口及び出口の双方が存在するとよい。ガス吹出手段10から吹き出されたガスは、必ずしも排滓口20へと到達する必要はない。図3に示すように、排滓口20の入口よりも手前の溶融金属1の液面又は溶融金属1の液面に存在するスラグ等2に吹き付けられてもよい。
排滓工程S2においては、上述の通り、ガス吹出手段10からのガスの吹出幅W1を、排滓口20における溶融金属1の液面の最小幅W2の半分以上(50%以上)とする。より好ましくは吹出幅W1を最小幅W2の60%以上とする。最小幅W2に対する吹出幅W1の上限は特に限定されるものではない。例えば、吹出幅W1を最小幅W2の120%以下とすることができる。
排滓工程S2においてガス吹出手段10からのガスの流量は電気炉100の規模等に応じて適宜調整すればよい。例えば、溶融金属1の液面又は溶融金属1の液面に存在するスラグ等2に吹き付けられる単位炉内面積、単位時間当たりのガスの流量(すなわち、単位時間当たり、且つ、炉内の溶融金属の表面(上面)の面積で規格化された流量)を1~100Nm/h/mとしてもよい。また、ガス吹出手段10の溶損等を抑えるとともに溶融金属1の液面又は溶融金属1の液面に存在するスラグ等2により効率的にガスを吹き付ける観点からは、排滓工程S2において、ガス吹出手段10のガス吹き出し位置を溶融金属1の液面から0.1m以上2.0m以下の高さとしてもよい。
尚、上記説明では、工程S1及びS2を各々独立して説明したが、これらの工程が同時に行われてもよい。
2.溶融金属の製造方法
本開示の技術は溶融金属の製造方法としての側面も有する。すなわち、本開示の溶融金属の製造方法は、上記の排滓方法S10によって排滓を行う工程と、電気炉100の内部の溶融金属1を外部へと取り出す工程とを備える。電気炉100の内部の溶融金属1は、例えば、上述したように電気炉100の炉底42の出口42aを介して外部へと取り出せばよい。或いは、炉体を傾動させて溶融金属1を流出させてもよい。
従来のアーク式電気炉においては、溶融金属の液面に存在するスラグ等を電気炉の側面に設けられた排滓口を介して外部へと排出する場合に、スラグ面の高さと排滓口の高さの差による位置エネルギーを利用していた。しかしながら、このような形態では、スラグの排出速度が遅いという課題があった。当該課題に対し、本発明者は、ガス吹出手段(例えば上吹きランス)により排滓口に向かう方向にガスの吹き付けを行い、スラグ等に運動エネルギーを与えることでスラグ等を排出することを着想し、水モデル実験によりその効果を確かめた。その結果、ガス吹きによりスラグ等の排出は促進されるものの、ガス吹きの条件によってはスラグ等の排出速度を十分に高めることができない場合があった。その理由としてガスにより押されたスラグ等が排滓口付近で渦を形成し、排滓口から逃げる方向に運動することで、与えられた運動エネルギーが効率的に排出する流れに利用されていないためと考えられた。そこで、本発明者は、ガスにより与えられた運動エネルギーが効率的にスラグ等の排出に利用されるようなガス吹きの条件について検討を行った。その結果、ガス吹きの幅を所定以上とすることで、排滓口に向かうスラグ等の流量を増加させつつ排滓口におけるスラグ等の逆流を抑制することができ、ガスにより与えられた運動エネルギーが効率的にスラグ等の排出に利用され得るという知見を得た。以下、本開示の排滓方法による効果について、実施例を示しつつより詳細に説明する。以下に示す実施例は、本開示の排滓方法の一例を示したものである。本開示の排滓方法は以下に示す例に限定されるものではない。
以下の実施例においては、ガス吹出手段として上吹きランスを用いた場合を例示する。以下の実施例においては、説明の便宜上、吹出孔の形状が正円又は正多角形のランスを「ナローランス」と呼び、吹出孔の形状が長方形又は楕円のような幅広のランスを「ワイドランス」と呼ぶものとする。
1.水モデル実験
炉径70cmの電気炉模擬容器を使用し、ランスの形状(吹出幅W1)やランスの位置を様々に変えて水モデル実験を行った。水モデル実験では、メタルの模擬流体として食塩水(比重1.15g/cm)、スラグの模擬流体としてシリコーンオイル(比重0.965g/cm)を使用し、液面におけるスラグ厚みを50mmとした。水モデル実験における排滓口の幅W2は200mmで固定とし、ランスから吹き出されるガスの進行方向が水平面に対して60度となるようにした。
水モデル実験を実施した結果、ガス吹きを行うことで、ガスがスラグに当たる付近のスラグ流速が上昇することを知見した。これは特許文献2に記載されたものと同様の効果である。ただし、スラグ流速の上昇による排出速度の上昇は必ずしも大きくなかった。排滓口において流路の幅が急激に変化すると、押されたスラグ流が排滓口に入りきらず、排滓口の入り口付近で横方向に逃げるか反転するかして渦を形成し、排出を阻害する場合があるためと考えられる。
次に、ランスの吹出幅W1を変えて実験を行った。実験の結果、ランスの吹出孔の幅W1を大きくし、排滓口に向かうスラグ流の幅広い部分をガス流によって押すことで、排滓口の開口幅W2が同じでも、排滓口からのスラグの逆流が減少し、ガス吹きのエネルギーがより効率的に排滓に使用されることが分かった。水モデル実験においてW1/W2を変化させた場合の排滓効率の変化を図7及び下記表1に示す。図7(A)が全ガス流量を一定とした場合であり、図7(B)が吹出孔の単位面積当たりのガス流量を一定とした場合である。図7及び表1において、「ワイドランス」は、吹出孔の縦幅が1.5mm、横幅がW1となる長方形の吹出孔を持つランスであり、「複数ランス」は、吹出孔の内径が5mmのランスを20mm間隔で複数配置したものであり、「ナローランス」は内径10mmの吹出孔を持つランスである。また、図7及び表1において「ナローランス」及び「ワイドランス」とは、図4(A)のように1つの排滓口の正面に1つのランスを設置した場合であり、「複数ランス」とは、図4(B)のように1つの排滓口の正面に複数のランスを幅方向に並列させて設置した場合である。図7の縦軸は排滓開始から5分経過後における、電気炉模擬容器内のスラグの残留厚さ(mm)である。
Figure 0007215224000001
図7及び表1に示されるように、全ガス流量を一定とした場合でも、吹出孔の単位面積当たりのガス流量(≒流速)を一定とした場合でも、W1/W2≧0.5の場合に排滓促進効果が確認された。すなわち、排滓促進をもたらす最重要ポイントは、ワイドランスの吹出孔の横幅または複数ランスの設置幅と考えて問題ない。
ランスのガスの進行方向が水平面に対して60度となる条件において、上吹き有無によるスラグ厚みの経時変化を記録した。結果を図8に示す。図8において、ワイドランス及び複数ランスのいずれについてもW1/W2=0.5とした。また、ナローランスについてはW1/W2=0.05とした。図8の縦軸「M/M0」は、ランスによるガスの上吹きを行わなかった場合におけるスラグの排出速度に対する「排出速度の上昇率」に相当する。
図8に示す結果から明らかなように、排滓初期よりも排滓後期において、ガス吹きの有無によって、スラグの排出速度に大きな差が生じる。これは、排滓後期においては溶融金属の液面におけるスラグの厚みが薄くなっており、排滓が進行し難いことに起因する。すなわち、ガス吹きを行うことで、排滓後期においてスラグ厚が薄くなった後もスラグ排出速度を高位で保つことが可能といえる。特に、図8に示すように、ナローランスによってガスの上吹きを行う場合よりもワイドランスや複数ランスによってガスの上吹きを行う場合のほうが、排滓後期における排出速度の維持率が高いことが分かる。
2.実機試験
(実施例1)
シャフト炉でペレットを還元して、還元率90%のDRIを製造した。次に、このDRIを100t規模の上述の直流電気炉(排滓口の幅W2=1.0m)に100t装入し、還元材として石炭を10t使用して溶解および還元を行い、[C]=3.5mass%で温度1400℃の溶銑を製造した。この時、上部電極を陰極、下部電極を陽極としてアークを生成し、スラグ塩基度が1.3となるように生石灰を添加した。生成した溶銑中のS濃度は0.0033mass%で、スラグ中のS濃度は0.33mass%であった。
DRIの溶解および還元が終了した後のスラグ量M1は21tであった。直流電気炉の上部に設置したワイドランス(W1/W2=0.6)を下降させ、図2及び図4(A)のようなランス配置とした。スラグが排滓口に向かうようにNガスを110Nm/h/m(単位炉内面積、単位時間当たりの流量、以下同様)でスラグ面に吹き付け、5分間排滓を行った。この結果、排滓されたスラグ量M2は13.5tであり、M1とM2の比率より、排滓率は64%であった。
(実施例2)
実施例1と同一条件において溶銑を製造し、DRIの溶解および還元が終了した後のスラグ量M1は20tであった。上述の直流電気炉の上部に設置したワイドランス(W1/W2=0.6)を下降させ、図2及び図4(A)のようなランス配置とした。スラグが排滓口に向かうように、Nガスを26Nm/h/mでスラグ面に吹き付け、5分間排滓を行った。この結果、排滓されたスラグ量M2は10.5tであり、M1とM2の比率より、排滓率は53%であった。
(実施例3)
実施例1と同一条件において溶銑を製造し、DRIの溶解および還元が終了した後のスラグ量M1は22tであった。上述の直流電気炉の上部に設置した3本のランスを下降させ、図4(B)のようなランス配置とした(W1/W2=0.6)。スラグが排滓口に向かうように、Nガスを26Nm/h/mでスラグ面に吹き付け、5分間排滓を行った。この結果、排滓されたスラグ量M2は12.5tであり、M1とM2の比率より、排滓率は57%であった。
(比較例1)
実施例1と同一条件において溶銑を製造し、DRIの溶解および還元が終了した後のスラグ量M1は20.5tであった。上述の直流電気炉の上部に設置したナローランス(W1/W2=0.06)を下降させ、図2及び図4(A)のようなランス配置とした。スラグが排滓口に向かうように、Nガスを26Nm/h/mでスラグ面に吹き付け、5分間排滓を行った。この結果、排滓されたスラグ量M2は9tであり、M1とM2の比率より、排滓率は44%であった。
(比較例2)
実施例1と同一条件において溶銑を製造し、DRIの溶解および還元が終了した後のスラグ量M1は20tであった。ランスによるガス吹きを行わずに5分間排滓を行った。この結果、排滓されたスラグ量M2は8.5tであり、M1とM2の比率より、排滓率は43%であった。
実施例1~3及び比較例1、2の実験条件及び実験結果を下記表2にまとめた。
Figure 0007215224000002
従来の形態と同様の形態である比較例2では排滓率が43%であったのに対し、比較例1ではナローランスによる上吹きを行った結果、排滓率が44%にわずかに上昇した。しかしながら、比較例1及び2のいずれにおいても、排滓率が50%を超えることは無かった。一方で、実施例1~3のように、ワイドランスや複数ランスを用いてW1/W2≧0.5として液面にガスを幅広く吹き付けた場合、いずれも排滓率が50%を超え、比較例1及び2と比べて顕著な排滓改善効果が確認された。
尚、上記の実施例では、アーク式電気炉において溶鋼を製造しつつスラグの排滓を行う形態を例示したが、本開示の技術はこの形態に限定されるものではない。溶鋼以外の溶融金属を製造する場合であっても同様の効果が期待できる。
1 溶融金属
2 スラグ又は不純物
10 ガス吹出手段
20 排滓口
21 スラグドア
30 電極
41 炉蓋(天井部材)
42 炉底
42a 出口
43 側壁
100 アーク式電気炉

Claims (5)

  1. アーク式電気炉の内部に配置された溶融金属をアーク放電によって加熱して、前記溶融金属の液面にスラグ又は不純物を浮上させる、浮上工程と、
    前記電気炉の内部に設置された少なくとも1つのガス吹出手段によって、前記溶融金属の液面よりも上方から前記溶融金属の液面又は前記溶融金属の液面に存在する前記スラグ又は不純物へとガスを吹き付けて、前記溶融金属の液面に存在する前記スラグ又は不純物を前記電気炉の側面に設けられた排滓口へと誘導するとともに、前記排滓口へと誘導された前記スラグ又は不純物を前記排滓口を介して前記電気炉の外部へと排出する、排滓工程と、
    を備え、
    前記排滓工程において、前記ガス吹出手段から吹き出されるガスの向きを前記排滓口に向かう向きとし、且つ、前記ガス吹出手段から吹き出されるガスの吹出幅W1を、前記排滓口における前記溶融金属の液面の最小幅W2の半分以上とする、
    アーク式電気炉における排滓方法。
  2. 前記少なくとも1つのガス吹出手段が、ランス及びバーナーから選ばれる少なくとも1つである、
    請求項1に記載の排滓方法。
  3. 前記少なくとも1つのガス吹出手段が、幅広のガス吹出孔を有する、
    請求項1又は2に記載の排滓方法。
  4. 前記排滓工程において、複数の前記ガス吹出手段からガスを各々吹き出し、各々のガスの向きを前記排滓口に向かう向きとする、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の排滓方法。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の排滓方法によって排滓を行う工程と、
    前記電気炉の内部の溶融金属を外部へと取り出す工程と、
    を備える、
    溶融金属の製造方法。
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