以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、浴室を構成する浴室ユニット110、浴室以外の部屋120(例えば、台所など)、及び、浴室ユニット110及び部屋120などに対応して設けられる電動式排水栓操作システム1を簡略化して模式的に示す図である。電動式排水栓操作システム1の説明に先立って、まず、浴室ユニット110、及び、当該浴室ユニット110に配置される槽体としての浴槽100などの概略構成について説明する。
浴室ユニット110は、図2及び図3に示すように、四方を囲む複数の側壁(図2,3では、2つの側壁のみを図示)及び各側壁の上部に設けられた天井111を備えており、これらによって浴室が形成されている。天井111には、天井111の裏側に配置された各種部品などを点検するための点検口112が設けられている。点検口112は、通常、カバー113で塞がれた状態となっているが、カバー113を上へと押し上げることで、点検口112からカバー113を取外可能である。
浴槽100は、浴室ユニット110内に設置されるとともに、その底面を構成する底壁部101と、当該底壁部101の外縁から上方に向けて延びる側壁部102とを備えている。底壁部101には、排水口103(図4,5参照)が貫通形成されている。また、浴室ユニット110の洗い場114側に位置する側壁部102を覆うようにしてエプロン104が設けられており、当該エプロン104によって常には後述する電動式操作装置3の駆動装置30が隠された状態とされている。但し、エプロン104を取外すことで、洗い場114側から駆動装置30を扱うことができるようになっている(図3参照)。また、浴槽100の下方には、防水パン105(図1参照。図2,3では不図示)が配置されている。
次いで、電動式排水栓操作システム1について説明する。電動式排水栓操作システム1は、図1に示すように、排水栓装置2と、電動式操作装置3と、入力装置4とを備えている。
まず、排水栓装置2について説明する。排水栓装置2は、図4に示すように、排水口部材21と、配管22と、アタッチメント部材23と、支持軸機構24と、栓蓋25とを備えている。
排水口部材21は、円筒状に形成されており、自身の中心軸と排水口103の中心軸とがほぼ一致した状態で排水口103に挿設されている。排水口部材21は、その上端部において径方向外側に突出形成された鍔部211と、当該鍔部211よりも下方の外周に形成された雄ねじ部212とを備えている。
配管22は、鉛直方向に沿って延びる円筒状の本体管221と、当該本体管221から枝分かれした状態で水平方向に延びる接続管222とを備えている。
本体管221は、排水口103に対応して設けられ、排水口103を通って流れる排水の流路を構成する部位である。本体管221は、その一端部(上端部)内周に前記雄ねじ部212を螺合可能な雌ねじ部221Aを備えている。そして、雄ねじ部212を雌ねじ部221Aに螺合し、鍔部211及び配管22の上端面により底壁部101を挟み込んだ状態とすることで、排水口部材21及び配管22が接続されるとともに、両者が浴槽100に取付けられた状態となっている。一方、図示されてはいないが、本体管221の他端部は、前記防水パン105に接続された状態とされている。
また、本実施形態においては、浴槽100(底壁部101)の上面と排水口部材21(鍔部211)との間、及び、配管22の上端面と浴槽100(底壁部101)の下面との間のそれぞれに介在されるようにして、弾性変形可能な材料(例えば、樹脂やゴム等)により形成された断面コの字状をなす環状のシール部材26が配置されている。当該シール部材26により、排水口部材21及び配管22と浴槽100との間からの漏水防止が図られている。
接続管222は、後述するレリースワイヤ62を電動式操作装置3側から排水栓装置2側へと案内するためのガイド筒61が接続される部位である。尚、ガイド筒61の一端部は、その内周に接続管222が嵌合されることで接続管222と水密に接続されている。一方、ガイド筒61の他端部には、中心に貫通孔を有するゴムブッシュ63が嵌め込まれており、当該ゴムブッシュ63の前記貫通孔にはレリースワイヤ62のうち後述する駆動装置30の近傍に位置する部位(駆動装置30から出た部位)が挿通されている(図6参照)。ゴムブッシュ63及びレリースワイヤ62は隙間なく密着した状態とされており、その結果、ゴムブッシュ63及びレリースワイヤ62によってガイド筒61の他端部は水密に閉塞された状態となっている。
尚、例えばガイド筒61を短くすること等により、ゴムブッシュ63の前記貫通孔に、レリースワイヤ62のうち駆動装置30から離れた部位が挿通されるようにしてもよい。すなわち、駆動装置30及びゴムブッシュ63間におけるレリースワイヤ62の長さがより大きなものとなるようにしてもよい。この場合には、駆動装置30の取り回しがよくなり、駆動装置30の設置位置に関する自由度や設置等に係る作業性をより向上させることができる。
アタッチメント部材23は、排水口部材21及び配管22(本体管221)の内部空間の中心、つまり、排水流路の中心にて支持軸機構24を保持するためのものである。アタッチメント部材23は、内側に位置する筒状の保持部231と、当該保持部231の外側において当該保持部231と同心円状に設けられた筒状の外環部232と、保持部231及び外環部232を連結する複数の連結部233とを備えている。保持部231は、その内周に支持軸機構24が挿通された状態で、支持軸機構24を保持する。また、外環部232は、排水口部材21へと取付けられる部位であり、外環部232が排水口部材21の内周に固定されることで、保持部231ひいてはこれに保持される支持軸機構24が排水流路の中心に配置される。
支持軸機構24は、栓蓋25を上下動させるためのものであり、筒状部241及び支持軸242を備えている。筒状部241は、円筒状をなしており、上下動不能な状態で前記保持部231により保持されている。支持軸242は、上部にて栓蓋25を支持するものであって、筒状部241の内周に配置されており、筒状部241に対し上下動可能な状態とされている。また、支持軸242は、上動した状態の前記栓蓋25へと下向きの力を加えたときに後述する第二伝達片部3332へと加わる負荷を吸収するための特別な機構を備えないものとされている。尚、「特別な機構」とあるのは、例えば、ばねを備えたショックアブソーバなど、負荷を吸収するという用途のために専ら設けられた機構をいう。
加えて、支持軸機構24には、レリースワイヤ62の一端部が接続されている。より詳しくは、レリースワイヤ62は、長尺筒状のアウターチューブ621と、当該アウターチューブ621の内周に設けられ、例えば、金属製のコアコイルや撚り線等からなるインナーワイヤ622とを備えている。そして、アウターチューブ621の一端部が筒状部241に固定され、インナーワイヤ622の一端部が支持軸242の下部に接触可能な状態とされている。尚、アウターチューブ621の他端部には、鍔状をなすフレア部(図示せず)が設けられており、当該フレア部が後述する駆動装置30に取付けられている。
さらに、インナーワイヤ622の他端部には、円筒状をなす抜け止め部材(図示せず)が固定されており、当該抜け止め部材によって、インナーワイヤ622の他端部が後述する変位運動部35と接続されている。そして、インナーワイヤ622は、変位運動部35の変位に伴いアウターチューブ621に対し往復移動するように構成されており、インナーワイヤ622の往復移動に伴い支持軸242が上下動するようになっている。具体的には、インナーワイヤ622が往動(駆動装置30側から排水栓装置2側へと移動)したときには、支持軸242は、インナーワイヤ622に押し上げられるようにして上動する。一方、この状態で、インナーワイヤ622が復動すると、支持軸242は自重により下動する。尚、インナーワイヤ622の一端部を支持軸242に接続し、インナーワイヤ622が復動したときに、当該インナーワイヤ622に引かれるようにして支持軸242が下動するように構成してもよい。
栓蓋25は、円板状をなす栓蓋本体部251と、当該栓蓋本体部251の裏側の外側寄りに設けられた環状のパッキン部252とを備えている。栓蓋25は、栓蓋本体部251における裏側の中心部に設けられた円筒状部位へと支持軸242の先端部が挿通されて係止されることで、支持軸242に取付けられている。また、栓蓋25は、前記円筒状部位から支持軸242を引抜く方向の力が加えられることで、支持軸242から取外可能である。すなわち、栓蓋25は、特段の工具などを用いることなく、支持軸242に対し比較的容易に取付及び取外可能となっている。
パッキン部252は、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂など)により形成されており、支持軸242が上動した状態では、排水口部材21から離間した状態となる。その結果、排水口103が開状態となる(図5参照)。一方、支持軸242が下動した状態では、栓蓋25が所定の閉鎖位置に配置され、排水口部材21へとパッキン部252の外周縁全周が接触する。その結果、排水口103が閉状態となる(図4参照)。
次いで、電動式操作装置3について説明する。電動式操作装置3は、栓蓋25を遠隔操作するための通電動作可能な装置であって、より具体的には、通電により生じた駆動力をインナーワイヤ622を介して支持軸242及び栓蓋25側へと付与し、栓蓋25を上下動させるための装置である。
電動式操作装置3は、駆動装置30及び制御装置39(図1,3参照)を有している。本実施形態において、駆動装置30は、浴槽100の側壁部102とエプロン104との間に設けられた図示しない被固定部材に取付けられており、後述する被操作部341Aがエプロン104側を向いた状態で配置されている。また、駆動装置30は、図6~9に示すように、ケース31、モータ32、伝達体33、手動操作対応部34、変位運動部35、並びに、それぞれ位置検出センサとしての第一磁気センサ361及び第二磁気センサ362を備えている。
ケース31は、モータ32や伝達体33、変位運動部35などを保持するとともに、駆動装置30を前記被固定部材へと取付ける際に取付部として機能するものである。ケース31は、第一ケース構成部311、第二ケース構成部312、及び、第三ケース構成部313を備えており、これらケース構成部311~313が組立てられることで形成されている。
第一ケース構成部311は、全体として平板状をなす基部311Aと、当該基部311Aに立設され、内部にモータ32の収容されるモータ収容壁部311Bと、基部311Aに立設され、内部に伝達体33の収容される伝達体収容壁部311Cと、基部311Aに凹設され、内部に第一磁気センサ361及び第二磁気センサ362の収容されるセンサ収容壁部311Dとを備えている。
基部311Aのうち伝達体収容壁部311Cの内側に位置する部位には、後述するクラッチ機構付歯車333を挿通するための孔部311E(図9参照)が形成されている。また、モータ収容壁部311Bにおけるモータ32の収容空間と、伝達体収容壁部311Cにおける伝達体33の収容空間とは連通した状態とされており、この連通箇所の近傍にてそれぞれ後述するウォーム331と第一歯車332Aとが噛合された状態となっている。さらに、センサ収容壁部311Dは、変位運動部35の側方に配置するように構成されている。
第二ケース構成部312は、基部311Aに取付けられることで、上述した各収容壁部311B~311Dの内部空間に蓋をするためのカバーとして機能する。尚、本実施形態において、第二ケース構成部312は、第一ケース構成部311に対しねじ止め固定されるように構成されているが、他の手法(例えばスナップフィットなど)によって第一ケース構成部311に取付けられるように構成されていてもよい。
第三ケース構成部313は、手動操作対応部34や変位運動部35を保持するとともに、アウターチューブ621の他端部の被取付部として機能するものである。第三ケース構成部313は、手動操作対応部34が挿通・設置される貫通孔313Dを具備してなる基部313Aと、当該基部313Aに立設された平板状や湾曲板状などをなす複数の壁からなる変位運動部収容壁部313Bと、アウターチューブ621の他端部に設けられた前記フレア部の配置される凹み状のチューブ被取付部313Cとを備えている。
基部313Aのうち貫通孔313Dを形成する部位には、段部313Eが形成されており、当該段部313Eに対し手動操作対応部34の後述するCリング343が係止されるようになっている。これにより、第三ケース構成部313からの手動操作対応部34の抜け止め防止が図られている。
また、変位運動部収容壁部313Bは、その内部に変位運動部35を往復移動可能な状態で収容している。さらに、変位運動部収容壁部313Bの内部には、それぞれ後述するピニオン341C及びクラッチ機構付歯車333が収容されており、貫通孔313Dの中心軸と同軸状に配置されたピニオン341Cを挟むような位置関係で変位運動部35及びクラッチ機構付歯車333が配置されている。
さらに、第三ケース構成部313は、第一ケース構成部311へと取付可能とされている。第一ケース構成部311へと第三ケース構成部313を取付けた状態とすることで、変位運動部収容壁部313Bのうち変位運動部35等の配置される箇所は蓋がされた状態となる。また、第一ケース構成部311へと第三ケース構成部313を取付けた状態とすることで、チューブ被取付部313Cに配置されたアウターチューブ621の他端部(前記フレア部)の脱落が防止され、ケース31へとアウターチューブ621を安定した状態で接続できるようになっている。
モータ32は、電動により排水口103を開閉するための駆動源である。モータ32は、回転可能な棒状の軸部321を備えるとともに、制御装置39と一体に設けられた図示しない電源に対し扁平状のケーブル64(図6,7参照。図2,3では非扁平状で図示。図8,9等では不図示)を介して電気的に接続されている。モータ32は、前記電源からの給電により、軸部321を双方向に回転させることができるようになっている。尚、ケーブル64は、前記電源からモータ32に対する給電を行うための図示しない給電線と、前記両磁気センサ361,362から制御装置39に対し信号を送信するための図示しない信号線とを備えたものである。
伝達体33は、軸部321の回転による駆動力を栓蓋25側へと伝達するための機構であり、ウォーム331、減速歯車群332、及び、クラッチ機構付歯車333を備えている。
ウォーム331は、筒状ウォームによって構成されており、軸部321に固定されている。ウォーム331は、軸部321とともに回転する。
減速歯車群332は、軸部321の回転で生じた駆動力をクラッチ機構付歯車333に対し、回転数を減じつつ伝達するためのものである。本実施形態において、減速歯車群332は、それぞれ2段歯車(歯数の異なる2つの歯車が、歯車の回転軸方向に沿って並ぶようにして配置されたもの)によって構成された、第一歯車332A、第二歯車332B、第三歯車332C及び第四歯車332Dを備えている。本実施形態では、第一歯車332Aが「ウォーム331に噛合された歯車」に相当する。
第一歯車332A及び第三歯車332Cは、同軸状に配置されており、棒状の第一軸部371によって自由回転可能な状態で支持されている。尚、第一軸部371の両端部は、第二ケース構成部312に設けられた図示しない受け部と、第三ケース構成部313の所定位置に固定された受け部材(図示せず)の図示しない受け部とによって支持されている。
第二歯車332B及び第四歯車332Dは、同軸状に配置されており、棒状の第二軸部372によって自由回転可能な状態で支持されている。尚、第二軸部372は、第二ケース構成部312に設けられた図示しない受け部と、第一ケース構成部311の基部311Aに設けられた図示しない受け部とによって支持されている。
また、第一歯車332Aは、その大きい側の歯車がウォーム331に噛合され、その小さい側の歯車が第二歯車332Bにおける大きい側の歯車に噛合されている。第二歯車332B、第三歯車332C及び第四歯車332Dにおいては、この順序でモータ32からの駆動力が伝達されるように各歯車が噛合されているが、駆動力は、それぞれ小さい側の歯車から大きい側の歯車へと伝達されるようになっている。例えば、第二歯車332Bにおける小さい側の歯車から、この歯車に噛合された、第三歯車332Cにおける大きい側の歯車に対し駆動力が伝達される。
さらに、本実施形態では、ウォーム331及びこれに噛合された第一歯車332Aからなるセルフロック機構によってストッパ機構38が構成されている。ストッパ機構38によれば、軸部321を回転させることで第一歯車332Aを回転させることができる一方、第二歯車332B側から加わる力による第一歯車332Aの回転を規制することができる。
クラッチ機構付歯車333は、歯車332A~332Dと同様に2段歯車のような外観を呈しており、第一歯車332A及び第三歯車332Cと同軸状に配置され、かつ、前記第一軸部371によって自由回転可能な状態で支持されている。クラッチ機構付歯車333は、その大きい側の歯車に対し第四歯車332Dの小さい側の歯車が噛合され、その小さい側の歯車に対し後述するピニオン341Cが噛合された状態となっている。尚、クラッチ機構付歯車333の詳細な構成については後に説明する。
手動操作対応部34は、回動部341、円筒状の外筒部342及びCリング343を備えている。また、回動部341は、被操作部341A、中間部341B及びピニオン341Cを備えており、これらがこの順序で同軸状に並ぶ構成とされている。
被操作部341Aは、停電や故障などの異常の発生時において栓蓋25を上下動させたい場合に、手動操作の対象となる部位である。被操作部341Aは、回動部341の一端部に設けられており、円板状をなしている。また、上述の通り、被操作部341Aは、エプロン104側を向くように配置されており、エプロン104を取外したときに、洗い場114側を向くようになっている。そのため、エプロン104を取外すことで、被操作部341Aを容易に洗い場114側から手動操作可能となっている。尚、本実施形態では、手動操作をより容易に可能とすべく、被操作部341Aに突状のつまみが設けられている。
また、被操作部341Aを手動操作することで生じた負荷は、後述する第一伝達片部3331を介することなく、ピニオン341Cを介して後述する第二伝達片部3332へと加わるように構成されている。
中間部341Bは、被操作部341Aよりも小径の柱状をなしており、前記外筒部342に挿通されている。
ピニオン341Cは、モータ32からの駆動力や被操作部341Aを手動操作して生じた駆動力を変位運動部35へと伝達する機能を有する。ピニオン341Cは、回動部341の他端部に設けられており、回動部341の外周に設けられた複数の歯によって構成されている。ピニオン341Cは、変位運動部35に設けられた後述する歯351に噛合されている。
Cリング343は、中間部341Bが外筒部342に挿通された状態で、中間部341Bとピニオン341Cとの間に位置する溝部へと嵌め込まれた状態とされている。これにより、回動部341、外筒部342及びCリング343が分離することなく、一まとめの状態となっている。
変位運動部35は、ピニオン341Cに対し直接的に噛合された複数の歯351を備えてなるラックによって構成されている。ピニオン341Cの回動により、変位運動部35は、所定の第一位置と所定の第二位置との間で往復移動する。
加えて、変位運動部35には、円柱状の磁石352が取付けられている。磁石352は、変位運動部35の変位に合わせてその位置が変化するようになっている。
さらに、上述の通り、変位運動部35には、インナーワイヤ622の他端部が接続されており、変位運動部35が往動することでインナーワイヤ622が往動し、変位運動部35が復動することでインナーワイヤ622が復動するようになっている。
第一磁気センサ361及び第二磁気センサ362は、それぞれ磁石352で生じている磁気を検知するためのセンサであり、例えば、ホール素子などを有している。第一磁気センサ361及び第二磁気センサ362は、変位運動部35の側方において、変位運動部35の往復移動方向に沿って所定間隔をあけた状態で、センサ収容壁部311Dに固定されている。両磁気センサ361,362は、それぞれ前記ケーブル64の前記信号線を介して制御装置39に接続されており、磁石352で生じている磁気を検知することで、変位運動部35の位置ひいては排水口103の開閉状態を検知する。
本実施形態では、排水口103が開状態とされ、変位運動部35が前記第一位置に配置されたときに、第一磁気センサ361によって磁石352の磁気が検知されるようになっており、一方、排水口103が閉状態とされ、変位運動部35が前記第二位置に配置されたときに、第二磁気センサ362によって磁石352の磁気が検知されるようになっている。第一磁気センサ361及び第二磁気センサ362は、磁石352の磁気を検知すると、前記信号線を介して磁気検出信号を前記制御装置39へと出力する。尚、磁気検出信号は、一定の短時間毎に前記制御装置39へと出力される。
次いで、制御装置39の説明に先立って、まず入力装置4について説明する。入力装置4は、電動によって排水口103を開閉する際などに、使用者によって入力操作されるものである。本実施形態では、図1に示すように、入力装置4は、浴室以外の部屋120に設けられており、浴槽100へと湯を供給するための給湯器130と電気的に接続されている。尚、入力装置4の設置場所は、特に限定されるものではなく、浴室などに設けてもよい。また、入力装置4を持ち運び可能な装置としてもよいし、入力装置4を複数設けてもよい。
さらに、入力装置4は、例えば液晶等からなる各種情報を表示するための表示部と、例えば押しボタン等からなる情報の入力部とを備えている。表示部においては、例えば、排水口103の現在の開閉状態に関する情報や、浴槽100へと吐出される湯の温度などが表示可能となっている。尚、入力部及び表示部をタッチパネルによって構成し、両者を一体化してもよい。
また、前記入力部には、排水口103を閉状態とする際に操作(例えば、押圧等)される閉鎖用入力部と、排水口103を開状態とする際に操作される開放用入力部とが設けられている。閉鎖用入力部は、例えば、「閉」といった文字や排水口103が閉状態となることを示す図形などの付された押しボタン等により構成されている。一方、開放用入力部は、例えば、「開」といった文字や排水口103が開状態となることを示す図形などの付された押しボタン等により構成されている。
本実施形態では、制御装置39及び給湯器130間における信号の送受信が可能とされているところ、前記閉鎖用入力部が操作(押圧)されると、入力装置4から給湯器130を介して制御装置39に対し所定の閉鎖要求信号が出力される。一方、前記開放用入力部が操作(押圧)されると、入力装置4から給湯器130を介して制御装置39に対し所定の開放要求信号が出力される。尚、給湯器130を介することなく、入力装置4及び制御装置39間において信号が直接送受信されるようにしてもよい。
さらに、前記入力部には、浴槽100へと給湯する際に操作される給湯時入力部が設けられている。当該給湯時入力部を操作することで、入力装置4から給湯器130に対し給湯要求信号が出力され、ひいては給湯器130から浴槽100に対する給湯がなされる。
次に、制御装置39について説明する。制御装置39は、駆動装置30の動作を制御するための装置である。制御装置39は、天井111の裏側に配置されており、本実施形態では、点検口112の近傍(点検口112から手の届く範囲内)に配置されている(図2,3参照)。これにより、制御装置39の取付施工や、故障時の修理などを容易に行うことが可能となっている。
制御装置39は、例えばマイコン等により構成されており、自身に入力された各種情報に応じて、排水口103の開閉状態を把握したり、モータ32の動作を制御したりする。詳述すると、制御装置39は、第一磁気センサ361から磁気検出信号が入力されると、排水口103の開閉状態に関する情報として「開状態」である旨を所定の記憶手段(例えばメモリ)に記憶する。一方、制御装置39は、第二磁気センサ362から磁気検出信号が入力されると、排水口103の開閉状態に関する情報として「閉状態」である旨を前記記憶手段に記憶する。尚、排水口103の開閉状態に関する情報は、磁気検出信号が入力される度に更新して記憶される。また、排水口103の開閉状態に関する情報は、制御装置39から給湯器130を介して入力装置4へと入力され、入力装置4は、この入力情報に基づいて、排水口103の開閉状態に関する情報を前記表示部にて表示させる。
さらに、制御装置39は、入力装置4から給湯器130を介して前記開放要求信号又は前記閉鎖要求信号が入力されると、現在の排水口103の開閉状態に応じてモータ32の動作を制御する。すなわち、制御装置39は、前記開放要求信号が入力された場合に、前記記憶手段の情報から排水口103が閉状態であると把握したときには、前記電源からモータ32に対し軸部321を一方側に回転させるための電力を供給させる。そして、制御装置39は、モータ32への給電開始後、第一磁気センサ361から磁気検出信号が入力され、排水口103が開状態に切替わったことを把握すると、前記電源からモータ32に対する給電を停止させ、モータ32の動作を停止させる。その結果、排水口103は閉状態から開状態へと切換わることになる。一方、制御装置39は、前記開放要求信号が入力された場合に、前記記憶手段の情報から排水口103が既に開状態であると把握したときには、前記電源からモータ32へと電力を供給させることなく、排水口103を開状態のままで維持する。
さらに、制御装置39は、前記閉鎖要求信号が入力された場合に、前記記憶手段の情報から排水口103が開状態であると把握したときには、前記電源からモータ32に対し軸部321を他方側に回転させるための電力を供給させる。そして、制御装置39は、モータ32への給電開始後において、第二磁気センサ362から磁気検出信号が入力され、排水口103が閉状態に切替わったことを把握すると、前記電源からモータ32に対する給電を停止させ、モータ32の動作を停止させる。その結果、排水口103は開状態から閉状態へと切換わることになる。一方、制御装置39は、前記閉鎖要求信号が入力された場合に、前記記憶手段の情報から排水口103が既に閉状態であると把握したときには、前記電源からモータ32へと電力を供給させることなく、排水口103を閉状態のままで維持する。
上記のように制御装置39では、変位運動部35の配置位置を検出する第一磁気センサ361及び第二磁気センサ362からの情報に基づき、軸部321の回転方向が制御される。
尚、上記では、排水口103の開閉状態を切換える際に、磁気センサ361,362から入力される磁気検出信号に基づき、モータ32に対する給電停止が行われるように構成されているが、給電開始からの経過時間や軸部321の回転数に応じて、モータ32に対する給電停止を行うように構成してもよい。また、上記において、制御装置39は、予め排水口103の開閉状態を記憶し、閉鎖要求信号又は開放要求信号が入力されたときには、その記憶情報に基づきモータ32の動作を制御するように構成されているが、閉鎖要求信号又は開放要求信号が入力されたときに磁気センサ361,362から磁気検出信号を受信し、受信内容に基づきモータ32の動作を制御するように構成してもよい。すなわち、制御装置39は、閉鎖要求信号や開放要求信号が入力されたことを契機として排水口103の開閉状態を把握し、把握した開閉状態に基づきモータ32の動作制御を行うものであってもよい。
次いで、クラッチ機構付歯車333の詳細な構成について説明する。クラッチ機構付歯車333は、図10及び図11に示すように、同一の回転軸にて回転動作する第一伝達片部3331と第二伝達片部3332とが組み立てられてなるものである。より詳しくは、第一伝達片部3331の中心部には、先端に突起部3331Bの設けられた軸3331Aが設けられており、第二伝達片部3332の中心に形成された孔部3332Aに軸3331Aを挿通し、突起部3331Bを第二伝達片部3332に係止した状態とすることで、第一伝達片部3331及び第二伝達片部3332が同軸状に組み立てられている。また、第一伝達片部3331及び第二伝達片部3332は、それぞれ歯車であり、これらが同軸状に配置されることで、クラッチ機構付歯車333は二段歯車のような外観を呈している。
第一伝達片部3331は、第四歯車332Dの小さい側の歯車と噛合されており、軸部321の回転に伴い回転するようになっている。
また、第一伝達片部3331は、軸3331Aの根元側の外側に、クラッチ機構3331Cを有している。クラッチ機構3331Cは、2本の半円弧状の撓み変形部3331Dを備えており、両撓み変形部3331Dは、軸3331Aの外周面から僅かに距離をあけた状態で軸3331Aの周囲を取り囲むようにして対称に設けられている。
また、両撓み変形部3331Dは、一端部が軸3331Aに連結されている一方、他端部は特に支持されておらず、その結果、撓み変形部3331Dの延びる方向(軸3331Aの周方向)に沿った撓み変形部3331Dの少なくとも中心部は、軸3331Aの径方向、すなわち、第一伝達片部3331や第二伝達片部3332の回転軸と直交する方向に沿って弾性変形となっている。そして、両撓み変形部3331Dの前記中心部に対応して、前記回転軸と直交する方向に沿って外側に突出した係止部3331Eが設けられている。
係止部3331Eは、撓み変形部3331Dの存在により、前記回転軸と直交する方向に沿って弾性変形可能となっている。また、係止部3331Eは、第一伝達片部3331のうち第二伝達片部3332へと挿通される部位に設けられており、図12に示すように、第二伝達片部3332の次述する被係止部3332Bへと係止された状態となっている。尚、図12は、図10に示すクラッチ機構付歯車333を上から見たときの平面図であり、理解を容易にすべく、クラッチ機構3331Cや係止部3331Eに散点模様を付し、被係止部3332Bに斜め格子模様を付している。
第二伝達片部3332は、外周部がピニオン341Cに噛合されるとともに、その内周に、係止部3331Eが係止される被係止部3332Bを備えている。被係止部3332Bは、図13に示すように、第二伝達片部3332の回転軸と直交する方向に沿って凹んだ窪みが、第二伝達片部3332の回転方向に沿って複数並ぶようにして形成された外観を呈している。通常、前記係止部3331Eは、前記窪みに配置されており、軸部321の回転に伴う第一伝達片部3331の回転動作時には、係止部3331Eから被係止部3332Bへと力が加わる。これにより、第二伝達片部3332は、第一伝達片部3331の動作方向に応じた正方向又は逆方向に回転動作する。このとき、ストッパ機構38は、軸部321の回転による第一伝達片部3331及び第二伝達片部3332の回転動作を許容する。
本実施形態では、排水口103が閉状態であるときに第二伝達片部3332が前記正方向に回転動作することで、ピニオン341Cが一方側に回転し、ひいては変位運動部35が往動する。一方、排水口103が開状態であるときに、第二伝達片部3332が前記逆方向に回転動作することで、ピニオン341Cが他方側に回動し、ひいては変位運動部35が復動する。
また、第二伝達片部3332は、少なくとも栓蓋25が上動した状態(排水口103が開状態であるとき)において当該栓蓋25へと下向きの負荷が加わったときに、支持軸242、インナーワイヤ622、変位運動部35及びピニオン341Cを介して、自身を前記逆方向に回転させる方向の負荷が栓蓋25側から加わるようになっている。
ここで、栓蓋25側から第二伝達片部3332側へと負荷が加わったときには、ストッパ機構38によって第一歯車332Aの回転が規制され、ひいては第一伝達片部3331の回転動作が規制される。そのため、第二伝達片部3332には、第一伝達片部3331に対し前記逆方向に相対回転する方向の負荷が加わることになり、その結果、係止部3331Eを介してクラッチ機構3331C(撓み変形部3331D)に対し、径方向内側へと撓み変形する方向の力、すなわち被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止が不十分状態となる方向の力が加わる。尚、「被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止が不十分状態」とあるのは、例えば、被係止部3332Bに対し係止部3331Eが接触しているものの、被係止部3332Bに対する係止部3331Eの掛かり代が十分でなく、第二伝達片部3332を動作させて被係止部3332Bを移動させたときに、係止部3331Eがほとんど又は全く移動せずに被係止部3332Bのみが移動していく状態(例えば、被係止部3332Bが係止部3331Eを乗り越えて動いていく状態)をいう。
しかし、本実施形態では、撓み変形部3331Dの弾性率や係止部3331E及び被係止部3332Bの形状(例えば、被係止部3332Bにおける前記窪みの深さなど)等を調節することで、比較的大きな負荷が栓蓋25へと加わらない限り、被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止が不十分状態とはならないように構成されている。そのため、栓蓋25側から第二伝達片部3332側へと加わる負荷が所定量(例えば、浴槽100に水を溜めたときに貯留された水から栓蓋25へと加わり得る最大の下向きの負荷量)以下である場合には、被係止部3332Bに対し係止部3331Eが十分に係止された状態で維持され、ひいては栓蓋25側から第二伝達片部3332側へと加わる負荷に伴う第二伝達片部3332の回転動作が規制される。従って、通常時には、ストッパ機構38によって栓蓋25を上動した状態で維持することが可能である。尚、前記所定量に関しては、浴槽100に貯留され得る水の量などの各種条件に応じて適宜変更可能である。
これに対し、上動した状態の栓蓋25や支持軸242を強く下向きに押し込んだ場合など、栓蓋25や支持軸242側から第二伝達片部3332側へと前記所定量を上回る負荷が加わったときには、クラッチ機構3331C(撓み変形部3331D)が径方向内側に比較的大きく撓み変形して被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止が不十分状態となる。その結果、係止部3331Eが被係止部3332Bを乗り越えるようにして、ストッパ機構38によって回転動作が規制されている状態の第一伝達片部3331に対し、第二伝達片部3332が独立して動作する(本実施形態では、前記逆方向に空転する)ことになる。
尚、上記のように構成されたクラッチ機構3331Cでは、栓蓋25や支持軸242へと比較的大きな下向きの力を加えて栓蓋25や支持軸242を強制的に下動させた後に前記力の印加を解除すると、支持軸242が僅かに戻る(上動する)場合がある。
次いで、上記のように構成された電動式排水栓操作システム1において、電動により排水口103の開閉状態を切換えるための操作が行われた場合の動作について説明する。
排水口103が閉状態であるときに、入力装置4へと排水口103を開状態とする旨の情報が入力され、制御装置39へと開放要求信号が入力されると、制御装置39によって前記電源からモータ32に対し電力が供給され、軸部321が一方側に回転する。これにより、軸部321の駆動力が伝達体33及びピニオン341Cを介して変位運動部35へと伝達され、変位運動部35が前記第二位置から前記第一位置へと往動する。また、このとき、第一伝達片部3331が回転し、係止部3331Eから被係止部3332Bへと力が加わることで、第二伝達片部3332が前記正方向に回転する。そして、変位運動部35とともにインナーワイヤ622が往動することで、支持軸242及び栓蓋25が上動する。このように軸部321の回転による駆動力は、伝達体33及び支持軸242などを介して栓蓋25側へと伝達される。また、変位運動部35が往動して前記第一位置へと配置されることで、第一磁気センサ361から磁気検出信号が出力されるようになる。そして、第一磁気センサ361から磁気検出信号が入力されると、制御装置39は、前記電源からモータ32に対する電力供給を停止する。その結果、排水口103が閉状態から開状態へと切換えられる。尚、モータ32に給電せずとも、排水口103の開状態はストッパ機構38によって維持される。
一方、排水口103が開状態であるときに、入力装置4に対し排水口103を閉状態とする旨の情報が入力され、制御装置39へと閉鎖要求信号が入力されると、制御装置39によって前記電源からモータ32に対し電力が供給され、軸部321が他方側に回転する。これにより、軸部321の駆動力が伝達体33及びピニオン341Cを介して変位運動部35へと伝達され、変位運動部35が前記第一位置から前記第二位置へと復動する。また、このとき、第一伝達片部3331が回転し、係止部3331Eから被係止部3332Bへと力が加わることで、第二伝達片部3332が前記逆方向に回転する。そして、変位運動部35とともにインナーワイヤ622が復動することで、支持軸242及び栓蓋25が下動する。また、変位運動部35が復動して前記第二位置に配置されることで、第二磁気センサ362から磁気検出信号が出力されるようになる。そして、第二磁気センサ362から磁気検出信号が入力されると、制御装置39は、前記電源からモータ32に対する電力供給を停止する。その結果、排水口103が開状態から閉状態へと切換えられる。
このように上述した電動式排水栓操作システム1では、基本的には栓蓋25の電動操作により排水口103の開閉状態を切換えることができる。一方、電動式排水栓操作システム1は、上記の通り、栓蓋25や支持軸242が上動して排水口103が開状態であるときに、栓蓋25や支持軸242へと下向きの力を加えて栓蓋25や支持軸242側から第二伝達片部3332へと前記所定量を上回る負荷を加えることにより、クラッチ機構3331Cによって被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止を不十分状態としつつ、ストッパ機構38によって動作が規制された第一伝達片部3331に対し第二伝達片部3332を独立して前記逆方向に動作させることができ、ひいては栓蓋25や支持軸242を下動させることが可能に構成されている。そのため、この構成を利用することによって、停電時や故障時などの異常発生時には、手動により排水口103を開状態から閉状態へと切換えることが可能である。
すなわち、栓蓋25が上動して排水口103が開状態であるときに異常が発生し、電動操作によって排水口103を閉状態とすることが不能となった場合には、図14に示すように、支持軸242から栓蓋25を取外した上で、支持軸242へと比較的大きな下向きの力を加えることで、栓蓋25側(支持軸242側)から第二伝達片部3332へと前記所定量を上回る負荷を加える。これにより、クラッチ機構3331C(撓み変形部3331D)が撓み変形して被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止が不十分状態となり、ストッパ機構38によって動作が規制された第一伝達片部3331に対し第二伝達片部3332が独立して前記逆方向に動作(空転)する。その結果、支持軸242は、栓蓋25を前記閉鎖位置へと配置可能な位置まで下動する。尚、支持軸242から栓蓋25を予め取外すのは、栓蓋25が排水口部材21へと接触すること等によって支持軸242が十分に下動しないといった事態が生じることを防ぐためである。その後、栓蓋25を、下動した支持軸242へと再度取付けるとともに前記閉鎖位置へと配置することで、排水口103を開状態から閉状態に切換えることができる。尚、第二伝達片部3332の回転に伴い、変位運動部35は前記第一位置から前記第二位置へと移動する。そのため、停電や故障状態などから回復したときには、第二磁気センサ362から制御装置39へと磁気検出信号が入力されることになり、制御装置39は、排水口103が閉状態であると正しく把握することができる。
さらに、本実施形態では、被操作部341Aに対する操作によって、手動による排水口103の開閉状態の切換を行うことができる。すなわち、排水口103が閉状態であるときには、被操作部341Aに対し、これを一方側に回動させる方向の負荷を加える。このとき、ピニオン341Cに噛合された第二伝達片部3332に負荷が加わることになるが、第二伝達片部3332へと前記所定量を上回る負荷が加えるようにすることで、クラッチ機構3331Cによって被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止が不十分状態となり、ストッパ機構38によって動作が規制された第一伝達片部3331に対し第二伝達片部3332が独立して前記正方向に回転動作(空転)する。そして、第二伝達片部3332が回転することでピニオン341Cが回動することになり、変位運動部35及びインナーワイヤ622が往動する。その結果、支持軸242及び栓蓋25を上動させて排水口103を閉状態から開状態へと切換えることができる。尚、第二伝達片部3332の回転に伴い、変位運動部35は前記第二位置から前記第一位置へと移動する。そのため、停電や故障状態などから回復したときには、第一磁気センサ361から制御装置39へと磁気検出信号が入力されることになり、制御装置39は、排水口103が開状態であると正しく把握することができる。
一方、排水口103が開状態であるときには、被操作部341Aに対し、これを他方側に回動させる方向の負荷を加える。このとき、ピニオン341Cに噛合された第二伝達片部3332に負荷が加わることになるが、第二伝達片部3332へと前記所定量を上回る負荷が加えるようにすることで、クラッチ機構3331Cによって被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止が不十分状態となり、ストッパ機構38によって動作が規制された第一伝達片部3331に対し第二伝達片部3332が独立して前記逆方向に回転動作(空転)する。そして、第二伝達片部3332が回転することでピニオン341Cが回動することになり、変位運動部35及びインナーワイヤ622が復動する。その結果、支持軸242及び栓蓋25を下動させて排水口103を開状態から閉状態へと切換えることができる。尚、変位運動部35が前記第一位置から前記第二位置へと移動するため、停電や故障状態などから回復したときには、第二磁気センサ362から制御装置39へと磁気検出信号が入力され、制御装置39は、排水口103が閉状態であると正確に把握することができる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、栓蓋25側から第二伝達片部3332へと加わる負荷が所定量以下である場合には、ストッパ機構38によって、負荷に伴う第一伝達片部3331及び第二伝達片部3332の動作を規制することができる。従って、ストッパ機構38によって第二伝達片部3332を前記正方向に移動した状態で停止させることにより、モータ32に対し非通電の状態で栓蓋25を上動させた状態のまま(つまり排水口103を開放した状態のまま)維持することができる。従って、排水口103を開状態で維持するための電力を不要とすることができ、消費電力の低減や安全性向上を効果的に図ることができる。
また、本実施形態では、栓蓋25が上動して排水口103が開状態であるときには、第二伝達片部3332へと前記所定量を上回る負荷が加わるように栓蓋25へと下向きの力を加えることで、第二伝達片部3332を独立して逆方向に動作させる(本実施形態では、空転させる)ことが可能に構成されている。そのため、この構成を利用することにより、栓蓋25を手動で下動させることができる。従って、仮に停電やモータ32の故障等により栓蓋25の電動操作が不能になったとしても、排水口103を開状態から閉状態へと手動で切換えることができる。
また仮に使用者が手動により栓蓋25を下動可能であることを知らなかったり、忘れていたりしても、栓蓋25を下方に押圧するという、排水口103を閉鎖しようとする際に自然に思いつきやすい行動を単に取ることで、手動により栓蓋25が下動可能である点を理解することができるため、使用者にとって非常に都合がよい。
さらに、栓蓋25に下向きの力を加えて第二伝達片部3332へと負荷を加えたときに、第一伝達片部3331に対し第二伝達片部3332が独立して動作(空転)するため、負荷の印加に伴うモータ32や伝達体33などの部品における破損や変形をより確実に防止することができる。そのため、排水口103を手動で閉状態とした場合であっても、停電復旧後などにおける通常使用に支障が生じるといったことはない。
また、栓蓋25を支持軸242から取外した上で支持軸242へと下向きの力を加えることにより、栓蓋25を閉鎖位置へと配置可能な位置まで支持軸242を下動させることができる。従って、下動後に支持軸242が僅かに戻るような場合であっても、支持軸242を十分に下動させて排水口103をより確実に閉状態とすることができる。また、栓蓋25を取外した上で支持軸242を下動させるため、栓蓋25が排水口部材21と接触するといったことがなくなり、支持軸242を十分に下動させることが容易に可能となる。
加えて、本実施形態では、被操作部341Aを手動操作し、第二伝達片部3332へと前記所定量を上回る負荷を加えることで、ストッパ機構38によって動作が規制された第一伝達片部3331に対し第二伝達片部3332を独立して正方向又は逆方向に動作させることができる。従って、第二伝達片部3332を逆方向に動作させて排水口103を閉状態とすることのみならず、第二伝達片部3332を正方向に動作させて排水口103を開状態とすることも可能となり、停電時等において、排水口103の開閉状態を手動により自由に切換えることができる。これにより、使用者にとっての利便性を高めることができる。
また、被操作部341Aは手動操作により回動するものであるため、直線方向に往復移動可能な被操作部を設けた場合と比べて、電動式操作装置3を十分に小型なものとすることができる。その結果、電動式操作装置3の設置に係る自由度を十分に向上させることができる。
さらに、ウォーム331及びこれに噛合された第一歯車332Aによって奏されるセルフロック効果によって、ストッパ機構38を実現することができる。従って、ストッパ機構38を単純化することができ、電動式操作装置3の複雑化や製造コストの増大をより確実に防止することができる。
また、変位運動部35は、排水口103の開閉状態に応じて前記第一位置又は前記第二位置に配置されるため、変位運動部35の位置を検出することで、排水口103の実際の開閉状態を正確に把握することができる。従って、電動により排水口103の開閉状態を切換えるときに、排水口103の実際の開閉状態に応じた適切な方向に軸部321を回転させることができる。これにより、軸部321の回転方向を誤ることに伴う部品の破損などをより確実に防止することができる。また、排水口103を手動で閉状態とした後に特段の対処を行うことなく通常使用が可能となり、使用者にとっての利便性を一層高めることができる。
さらに、クラッチ機構3331Cは、係止部3331Eを弾性変形可能とする撓み変形部3331Dを備えており、撓み変形部3331Dを変形させて係止部3331Eを第一伝達片部3331等の回転軸側に弾性変形(移動)させることで、被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止を不十分状態とすることができる。従って、クラッチ機構3331Cを非常にシンプルな構成によって実現することができ、電動式操作装置3の複雑化や製造コストの増大をより効果的に抑えることができる。
また、支持軸242は、上動した状態の栓蓋25へと下向きの力を加えたときに第二伝達片部3332へと加わる負荷を吸収する特別な機構を備えないものとされている。すなわち、支持軸242は、ショックアブソーバなどを備えないものとされている。そのため、製造コストの増大抑制をより効果的に図ることができる。さらに、特別な機構を設けることに伴う支持軸242の大径化を防止することができ、ひいては支持軸242の配置される排水の流路における通水面積をより大きく確保することできる。
さらに、ショックアブソーバ等の特別な機構を設けなくても、クラッチ機構3331Cによって、栓蓋25へと過負荷が加わったときには第二伝達片部3332が前記逆方向に独立して回転するため、伝達体33やモータ32等の破損や変形をより確実に防止することができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態では、停電等の異常時に排水口103を手動で開状態から閉状態へと切換えるときに、支持軸242から栓蓋25を取外した上で、支持軸242へと力を加える例を示している。これに対し、栓蓋25が上動して排水口103が開状態であるときに、栓蓋25へと下向きの力を加えることのみにより、排水口103を手動で閉状態とすることが可能に構成してもよい。この構成は、例えば、栓蓋本体部251やパッキン部252の形状を調節したり、排水口部材21など栓蓋25の周囲に位置する部材と栓蓋25との相対位置関係を調節したりすること等により、栓蓋25へと下向きの力を加えたときに支持軸242が十分に下動するように構成することで実現可能である。
この構成において、排水口103を手動で開状態から閉状態へと切換える場合には、図15に示すように、栓蓋25へと比較的大きな下向きの力を加えて栓蓋25側から第二伝達片部3332(図8,9,11,12等参照)へと前記所定量を上回る負荷を加える。これにより、上記実施形態と同様に、クラッチ機構3331C(撓み変形部3331D)が撓み変形して被係止部3332Bに対する係止部3331Eの係止が不十分状態となり、ストッパ機構38によって動作が規制された第一伝達片部3331に対し第二伝達片部3332が独立して前記逆方向に動作(空転)する。その結果、栓蓋25を下動させて排水口103を開状態から閉状態に切換えることができる。
この構成によれば、使用者は、栓蓋25を下方に押圧するという、排水口103を閉鎖しようとする際に自然に思いつきやすい行動を単に取ることで、排水口103を開状態から閉状態へと直感的に切換えることができる。また仮に、使用者が栓蓋25を押圧することで排水口103を手動で閉状態へと切換可能であることを知らなかったり、忘れていたりしても、上記のように、自然に思いつきやすい行動を取ることで排水口103を手動で閉状態とすることができるため、使用者にとって大変都合がよい。
(b)上記実施形態におけるクラッチ機構付歯車333は、第二伝達片部3332の内周に被係止部3332Bが設けられ、第一伝達片部3331のうち第二伝達片部3332へと挿通される部位に係止部3331Eが設けられるように構成されている。これに対し、図16及び図17に示すように、クラッチ機構付歯車333において、第一伝達片部3333の内周に係止部3333Eを設けるとともに、第二伝達片部3334のうち第一伝達片部3333に挿通される部位に、前記係止部3333Eが係止される被係止部3334Bを設けることとしてもよい。そして、被係止部3334Bが外側に突出形成されるとともに、当該被係止部3334Bを第一伝達片部3333及び第二伝達片部3334の回転軸と直交する方向に沿って弾性変形可能とする、第二伝達片部3334に設けられた2つの撓み変形部3334Dによってクラッチ機構3334Cを構成し、栓蓋25側から第二伝達片部3334へと比較的大きな負荷が加わったときに、クラッチ機構3334C(撓み変形部3334D)の撓み変形に伴い被係止部3334Bに対する係止部3333Eの係止が不十分状態となることで、第一伝達片部3333に対し第二伝達片部3334が独立して動作(空転)するように構成してもよい。
この場合には、上記実施形態と同様に、クラッチ機構3334Cを非常にシンプルな構成によって実現することができ、電動式操作装置3の複雑化や製造コストの増大をより効果的に抑えることができる。
(c)上記実施形態において、クラッチ機構3331Cはクラッチ機構付歯車333に設けられているが、クラッチ機構を設ける対象を適宜変更してもよい。例えば、第一歯車332A~第四歯車332Dのいずれかに上記実施形態と同様の技術思想に係るクラッチ機構を設けることとしてもよい。
(d)上記実施形態において、第一伝達片部3331及び第二伝達片部3332は回転移動するように構成されているが、第一伝達片部及び第二伝達片部が往復移動するように構成してもよい。また、第一伝達片部及び第二伝達片部のうちの一方を回転移動するもの(例えば歯車)とし、両者のうちの他方を往復移動するもの(例えば歯車が噛合されるラック)としてもよい。
(e)上記実施形態では、撓み変形部3331Dによって構成されたクラッチ機構3331Cを挙げているが、クラッチ機構はこれに限定されるものではない。従って、例えば、常には被係止部に対し係止部を押付けた状態とする一方、栓蓋25側から第二伝達片部側へと比較的大きな負荷が加わった場合に圧縮変形することで、被係止部に対する係止部の係止を不十分状態とするばね部材によってクラッチ機構を構成してもよい。より具体的には、図18及び図19に示すように、クラッチ機構付歯車333において、第一伝達片部3335のうち第二伝達片部3332へと挿通される部位に、有底の穴部3335Fを設けるとともに、当該穴部3335Fに対し、第二伝達片部3332(図11,13等参照)に設けられた被係止部3332B(図13参照)へと係止される円柱状の係止部3335Eを挿通設置し、さらに、穴部3335Fの底及び係止部3335E間に設置されたばね部材3335Dによってクラッチ機構3335Cを構成するとともに、このクラッチ機構3335C(ばね部材3335D)によって、第一伝達片部3335や第二伝達片部3332の回転軸と直交する方向に沿って係止部3335Eを弾性変形可能に構成してもよい。
このように構成した場合には、クラッチ機構3335C(ばね部材3335D)の破損をより生じにくくすることができ、電動式操作装置3の故障防止をより確実に図ることができる。
(f)上記実施形態においては、被操作部341Aが設けられているが、被操作部341Aを設けないこととしてもよい。
また、上記実施形態において、被操作部341Aは、回動操作されるように構成されているが、例えば、被操作部を往復移動操作されるものとしてもよい。例えば、変位運動部35に接続された往復移動可能なスライドノブを被操作部として設け、手動操作により当該スライドノブを往復移動させることで、排水口103の開閉状態を手動で切換可能としてもよい。
(g)上記実施形態において、変位運動部35は往復移動するように構成されているが、変位運動部を回動可能に構成してもよい。
(h)上記実施形態においては、電動操作時に、変位運動部35が移動するとともに回動部341が回動するところ、変位運動部35の移動により栓蓋25が上下動して排水口103の開閉状態が切換えられるように構成されている。これに対し、回動部341の回動により栓蓋25が上下動して排水口103の開閉状態が切換えられるように構成してもよい。例えば、回動部341の端面(被操作部341Aに対応する面)の外周寄りに突起を設けるとともに、当該突起が配管22内(排水の流路)に設置されて栓蓋25を直接又は間接的に支持するように構成し、回動部341の回動により前記突起が上下動することで、栓蓋25を上下動させて排水口103の開閉状態が切換えられるように構成してもよい。また、回動部341とは別に、配管22内(排水の流路)に設置される突起を有する回動体を設け、回動部341の回動による駆動力が前記回動体に伝達されて当該回動体が回動することで、前記突起が上下動し、ひいては当該突起に直接又は間接的に支持された栓蓋25が上下動するように構成してもよい。
(i)上記実施形態における駆動装置30や制御装置39の配設位置はあくまで一例であって、駆動装置30や制御装置39等の配設位置を適宜変更してもよい。
(j)上記実施形態において、ストッパ機構38は、ウォーム331及びこれに噛合された第一歯車332Aによって構成されているが、ストッパ機構は、栓蓋25を上動した状態で維持することができるとともに、栓蓋25へと前記所定量を上回る下向きの力を加えたときに、第一伝達片部に対し第二伝達片部を独立して動作させることが可能なように、第一伝達片部の動きを規制することができるものであればよい。従って、ストッパ機構の構成は上記実施形態で挙げたものに限定されず、例えば、軸部及び第一伝達片部間における駆動力の伝達経路に設けられ、減速比が十分に大きなものとなるように設定された歯車(減速歯車群や遊星歯車など)によってストッパ機構を構成してもよい。
(k)上記実施形態において、栓蓋25は、栓蓋本体部251の前記円筒状部位へと支持軸242の先端部が挿通されて係止されるように構成されているが、支持軸242の先端部へと単に載置されるように(支持軸242が係止されないように)栓蓋25を構成してもよい。この場合には、支持軸242に対する栓蓋25の取付及び取外を非常に容易に行うことができ、排水口103を手動で閉状態とすることが一層容易に可能となる。
(l)上記実施形態では、手動によって排水口103を閉状態へと切換えるときにおいて、支持軸242を下動させた後に、栓蓋25を、支持軸242へと再度取付けるとともに前記閉鎖位置へと配置するようになっているが、栓蓋25を前記閉鎖位置へと配置するにあたっては、必ずしも栓蓋25を支持軸242へと取付けなくてもよい。例えば、栓蓋25を前記閉鎖位置へと配置したときに、支持軸242の先端部から栓蓋25が離間した状態となったり、支持軸242の先端部に栓蓋25が載置された状態となったりするように構成してもよい。
(m)上記実施形態では、栓蓋25(パッキン部252)が排水口部材21に接触することで、排水口103が閉鎖されるように構成されているが、栓蓋25(パッキン部252)が底壁部101に接触することで、排水口103が閉鎖されるようにしてもよい。つまり、排水口103を閉状態とするときに栓蓋25が接触するように設定されたもの(接触対象物)は、排水口部材21であってもよいし、底壁部101であってもよい。
(n)上記実施形態では、槽体として浴槽100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は浴槽に限定されるものではない。従って、例えば、洗面器やキッチンの流し台などのその他の槽体に対し本発明の技術思想を適用することとしてもよい。