以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、渦抑制装置を備えた立軸ポンプの一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、ポンプ20は、鉛直方向に延びる主軸32と、主軸32に固定された羽根車31と、内部に羽根車31を収容するポンプケーシング27と、ポンプケーシング27に連結された揚水管28と、揚水管28に連結された吊り下げ管33と、吊り下げ管33に連結された吐出しエルボ30とを備えている。
より具体的には、揚水管28は、ポンプケーシング27の上端に接続されており、吊り下げ管33は、揚水管28の上端に接続されている。吐出しエルボ30は、吊り下げ管33の上端に接続されており、吊り下げ管33を介して揚水管28に連結されている。揚水管28は、吸込水槽1の上壁を構成するポンプ据付床2に形成されたポンプ開口5を通して下方に延びている。吊り下げ管33は、ポンプ据付床2に設置されたポンプベース35に固定されている。揚水管28は、吊り下げ管33およびポンプベース35を介してポンプ据付床2に固定されている。
ポンプケーシング27は、揚水管28によって吸込水槽1内に吊り下げられている。ポンプケーシング27は、吸込ベルマウス22と、インペラケーシング21と、吐出しボウル24とを備えている。吐出しボウル24は、揚水管28に連結されており、インペラケーシング21は、吐出しボウル24に連結されており、吸込ベルマウス22は、インペラケーシング21に連結されている。
より具体的には、吐出しボウル24は、揚水管28の下端に接続されており、インペラケーシング21は、吐出しボウル24の下端に接続されており、吸込ベルマウス22は、インペラケーシング21の下端に接続されている。羽根車31は、インペラケーシング21内に収容されている。吐出しボウル24の内部には、内側ボウル25が配置されている。ポンプケーシング27の内周面(吐出しボウル24の内周面)には、複数のガイドベーン37が固定されており、複数のガイドベーン37は、羽根車31の上方(吐出側)に配置されている。内側ボウル25は、複数のガイドベーン37に着脱可能に支持されている。吸込ベルマウス22は、下方に開口した吸込口22aを有している。
吐出しエルボ30は、吊り下げ管33を介して揚水管28に連結された吐出しエルボ本体30aと、吐出しエルボ30の上壁の一部を構成する吐出しエルボ上蓋30bとを有している。吐出しエルボ本体30aおよび吐出しエルボ上蓋30bは、互いに分離可能に構成されている。ポンプ20は、保護管36をさらに備えており、主軸32は、保護管36に挿入されている。吐出しエルボ上蓋30bは、保護管36に接続されている。主軸32は、吐出しエルボ30、吊り下げ管33、揚水管28、およびポンプケーシング27を通って鉛直方向に延びている。主軸32の下端は、ポンプケーシング27内に位置しており、保護管36の下端は、内側ボウル25に接続されている。
主軸32および保護管36は、吐出しエルボ上蓋30bを貫通して延びており、主軸32および保護管36の上端は吐出しエルボ30の上方に位置している。吐出しエルボ本体30aには、筒体47が接続されており、主軸32および保護管36は、筒体47を通って延びている。本実施形態では、筒体47と、吐出しエルボ本体30aは一体に形成されている。
主軸32は、外軸受45および水中軸受41によって回転可能に支持されている。水中軸受41は、内側ボウル25内に収容されており、主軸32の下部を支持している。水中軸受41は、支持部材41aを介して内側ボウル25の内周面に固定されている。外軸受45は、筒体47の上方に配置された原動機支持ケース13内に配置されており、主軸32の上部を支持している。本実施形態では、水中軸受41は、注水仕様である。水中軸受41の例として、ゴム軸受(カットレス軸受)、樹脂軸受、セラミックス軸受などのすべり軸受が挙げられる。一実施形態では、水中軸受41は、無注水仕様としてもよい。
原動機支持ケース13の上部には、原動機12が固定されており、原動機12の回転軸12aは、原動機支持ケース13内に延びている。主軸32の上端は、原動機支持ケース13内で、原動機12の回転軸12aに連結されている。この原動機12により主軸32および羽根車31が回転するように構成されている。本実施形態では、ポンプ20の設置面は一床式で構成されており、原動機12は電動機である。一実施形態では、ポンプ20の設置面は二床式で構成してもよい。さらに一実施形態では、原動機12は、立軸減速機と電動機との組み合わせ、傘歯車減速機と電動機との組み合わせ、傘歯車減速機とディーゼルエンジンとの組み合わせ、傘歯車減速機とガスタービンエンジンとの組み合わせとしても良い。
吐出しボウル24の内周面と内側ボウル25の外周面との間には液体の流路が形成されている。羽根車31が回転すると、吸込水槽1内の液体(例えば水)が吸込ベルマウス22の吸込口22aから吸い込まれる。液体は、羽根車31の回転により、吐出しボウル24、揚水管28、吊り下げ管33、吐出しエルボ30を通って図示しない吐出配管に移送される。このように、吸込水槽1内の液体がポンプ20によって汲み上げられる。
吸込水槽1から吸い込まれた液体は、吐出しエルボ30を通るときに、吐出しエルボ本体30aと吐出しエルボ上蓋30bとの間の隙間から漏れ、ポンプ20の運転中、筒体47内は液体で満たされる。そのため、ポンプ20は、筒体47内の液体が原動機支持ケース13内に侵入するのを防ぐための軸封装置51をさらに備えている。筒体47の上端には蓋50が設置されており、原動機支持ケース13は、蓋50上に配置されている。蓋50および軸封装置51により、原動機支持ケース13内への液体の侵入が防止される。このような軸封装置51の例として、グランドパッキン、メカニカルシール等が挙げられる。
ポンプ20は、液体の流路を形成する流路構造体53と、流路構造体53の内部に配置された内部構造体54とを備えている。流路構造体53は、ポンプケーシング27(吐出しボウル24、インペラケーシング21、および吸込ベルマウス22)と、複数のガイドベーン37と、揚水管28と、吊り下げ管33と、吐出しエルボ本体30aと、筒体47とを含んでいる。内部構造体54は、主軸32と、羽根車31と、保護管36と、吐出しエルボ上蓋30bと、内側ボウル25と、水中軸受41とを含んでいる。
内部構造体54は、流路構造体53から抜き出し可能に構成されており、内部構造体54は、複数のガイドベーン37に着脱可能に支持されている。図2は、内部構造体54を流路構造体53から抜き出した状態を示す模式図である。本実施形態では、羽根車31の先端の外形寸法は、ガイドベーン37の内側先端の外形寸法より小さい。このように構成することによって、内部構造体54の全体を、流路構造体53から抜き出すことが可能となっている。
本実施形態では、ポンプ20は、軸継手56を備えているが、ポンプ高さ全長が比較的短い場合、軸継手56を不要としても良い。軸継手56を不要とすることで、維持管理性を向上させることができる。軸継手56の一例として、ソケットが挙げられる。
ポンプ20は、空気吸込渦の発生を抑制する第1の空気吸込渦抑制装置としての複数の縦棒61および複数の縦リブ62と、第2の空気吸込渦抑制装置としての半円筒体71をさらに備えている。図1では、1つの縦棒61および1つの縦リブ62のみが図示されている。複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71は、流路構造体53の外側に配置されている。本実施形態では、複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71は、ポンプケーシング27の外側に配置されている。主軸32の軸方向から見たときに、複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71は、ポンプ開口5の内側に位置している。複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71は、吸込水槽1内の液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に配置されている。
ポンプ20の揚水能力の向上に伴い、吸込水槽1の液体の流速が高くなり、結果として吸込水槽1の底面から水中渦が発生し易くなる。そこで、ポンプ20は、吸込ベルマウス22の下部に、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間に発生する水中渦を抑制する水中渦抑制装置としての複数の水中渦抑制板49を備えている。水中渦抑制板49は平板状の部材である。
図3に示すように、空気吸込渦は、自由表面を形成する液体の流れが流路構造体53(揚水管28または吐出しボウル24)によって分流されるときに生じるカルマン渦7が発達して生じる。したがって、カルマン渦7は、流路構造体53(揚水管28または吐出しボウル24)の下流側に発生する。また、カルマン渦7は、液体の流れによって下流側に流される。したがって、複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71は、主軸32の下流側に配置される。
図4は、流路構造体53の吐出し口径に関連付けられた各寸法の例を示す図であり、図5は、図4に示すポンプ20と吸込水槽1を上から見た図である。図4に示すように、流路構造体53の吐出し口径(本実施形態では、ポンプケーシング27の吐出し側の口径、すなわち揚水管28の口径)をdとすると、吸込ベルマウス22の下端(すなわちポンプケーシング27の下端)から吸込水槽1の底面までの距離(吸込口22aから吸込水槽1の底面までの距離)は、一般に0.5d以上であり、一例として0.75d~1.0dの範囲内である。ポンプ20の中心(主軸32の軸心O)から吸込水槽1の後壁までの距離は1.5d以下である。ポンプ開口5の直径は、吐出し口径dによって概ね決まる値であるが、一実施形態では1.6d~2.1dの範囲内である。図5に示すように、吸込水槽1の水路幅は3.0d程度である。これらの寸法で設計した場合、ポンプ20が運転可能な吸込水槽1の最低水位(吸込水槽1内の液体の液面の最低高さ)LWLは、従来のポンプに比べて、0.5d~0.9d程度低くすることができる。
図6は、第1の空気吸込渦抑制装置としての縦棒61および縦リブ62、および第2の空気吸込渦抑制装置としての半円筒体71を示す側面図であり、図7は、図6のA-A線断面図である。図6および図7では、保護管36および複数の水中渦抑制板49の図示は省略されている。図6および図7に示すように、ポンプ20は、複数の縦棒61と、複数の縦リブ62とを備えている。本実施形態では、2つの縦棒61と、2つの縦リブ62が設けられているが、縦棒61および縦リブ62の数は本実施形態に限定されない。
各縦棒61は全体として主軸32に沿って延びている。同様に、各縦リブ62は全体として主軸32に沿って延びている。2つの縦棒61および2つの縦リブ62は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体がポンプ開口5の内側に位置している。縦棒61および縦リブ62は、全体として鉛直方向に延びている。本実施形態では、縦棒61は、主軸32と平行に延びる直線形状を有しているが、一実施形態では、縦棒61の形状はこの実施形態に限定されない。縦棒61の一部が湾曲していてもよい。
縦棒61は、一般に円形の断面形状を有し、主軸32の軸方向に延びている。各縦棒61は、流路構造体53の外周面との間に隙間が存在した状態で流路構造体53に固定されている。本実施形態では、各縦棒61は、複数のブラケット65によってポンプケーシング27の外周面に連結されている。すなわち、縦棒61とポンプケーシング27の外周面との間に隙間が存在した状態で、各縦棒61はポンプケーシング27に固定されている。
一実施形態では、縦棒61は、揚水管28や吊り下げ管33に固定されてもよい。図8は、縦棒61の他の固定方法を示す模式図であり、図9は、図8のB-B線断面図である。図9では、保護管36の図示は省略されている。図8および図9に示すように、本実施形態の複数のブラケット65は、L字型の形状を有している。複数のブラケット65は、吊り下げ管33のフランジ33aおよび揚水管28のフランジ28aに取り付けられている。2つの縦棒61のそれぞれは、複数の固定具67によって、フランジ33aに取り付けられたブラケット65、およびフランジ28aに取り付けられたブラケット65に固定されている。固定具67の例として、UボルトやUバンド等が挙げられる。本実施形態では、4つのブラケット65および4つの固定具67が設けられているが、ブラケット65および固定具67の数は、本実施形態に限定されない。
図10は、縦棒61のさらに他の固定方法を示す模式図であり、図11は、図10のC-C線断面図である。図11では、保護管36の図示は省略されている。図10および図11に示すように、本実施形態のブラケット65は、平板状の形状を有しており、環状部68と、複数の縦棒保持部69を備えている。複数の縦棒保持部69は、環状部68の外周面に接続されており、環状部68と一体に形成されている。複数の縦棒保持部69のそれぞれは、貫通孔69aを有している。ブラケット65は、吊り下げ管33のフランジ33aと揚水管28のフランジ28bとの間に挟まれて固定されている。各縦棒61は、各貫通孔69aに挿入され、縦棒保持部69に固定される。本実施形態では、ブラケット65は、2つの縦棒保持部69および2つの貫通孔69aを有しているが、縦棒保持部69および貫通孔69aの数は、縦棒61の数に基づいて決定されるため、本実施形態に限定されない。
図4に示す各寸法の例に従えば、縦棒61の上端は、吸込ベルマウス22の下端(吸込口22a)から0.8d~1.75dの範囲内に位置している。縦棒61の下端は、羽根車31(図1参照)の上端よりも下方に位置している。
上述のように、吸込水槽1の水位(吸込水槽1内の液体の液面の高さ)の低下に伴い、吸込水槽1の自由表面にカルマン渦7(図3参照)が発生することがある。カルマン渦7の発生を抑制するためには、縦棒61の上端は、カルマン渦7が発生するときの吸込水槽1の水位よりも上に位置する必要がある。吸込水槽1の水路幅が3.0d程度かつポンプ20の中心(主軸32の軸心O)から吸込水槽1の後壁までの距離が1.5d以下の場合等において、従来のポンプの最低水位は、一般に2.5d以上の水位である。この従来のポンプの最低水位より高い水位では、一般にカルマン渦7は発生しないが、吸込水槽1の形状によってはカルマン渦7が発生する可能性がある。図4に示す各寸法の例に従えば、本実施形態のポンプ20は従来のポンプの最低水位より低い水位でも運転するため、縦棒61の上端は、従来のポンプの最低水位以下の位置となる。これは、ポンプ20の運転開始後に吸込水槽1の水位が低下したときにカルマン渦7の発生を抑制するためである。図4によれば、吸込ベルマウス22の下端から吸込水槽1の底面までの距離は、0.75d~1.0dの範囲内であるため、縦棒61の上端は、吸込ベルマウス22の下端から(吸込口22aから)0.8d以上、かつ運転開始水位以下の範囲内に位置する。一実施形態では、縦棒61の上端は、吸込ベルマウス22の下端から0.8d~1.75dに位置する。
縦リブ62は、流路構造体53の外周面に固定されている。図1乃至図11を参照して説明した実施形態では、縦リブ62は、ポンプケーシング27の外周面に沿って湾曲した形状を有し、主軸32の軸方向に延びている。図1乃至図11を参照して説明した実施形態では、縦リブ62は、ポンプケーシング27の外周面に固定されており、ポンプケーシング27の外周面からポンプケーシング27の径方向外側に突出している。一実施形態では、縦リブ62の上部は、揚水管28の外周面に固定されてもよい。さらに一実施形態では、縦リブ62は、ポンプケーシング27および/または揚水管28と一体に形成されてもよい。
図7に示すように、2つの縦棒61は、2つの縦リブ62にそれぞれ隣接して配置されている。各縦棒61は、隣接する縦リブ62よりも主軸32の軸心Oから離れた位置にある。すなわち、主軸32の軸心Oと縦棒61との距離は、主軸32の軸心Oと縦リブ62との距離よりも長い。縦棒61と同様に、縦リブ62の上端は、カルマン渦7が発生するときの吸込水槽1の水位よりも上に位置する必要がある。図6に示す実施形態では、縦リブ62は、縦棒61よりも短いが、一実施形態では、縦リブ62は、縦棒61と同じ長さでもよく、または縦棒61より長くてもよい。
図7に示すように、2つの縦棒61は、吸込水槽1内の液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に位置しており、主軸32の軸心Oを通る液体の流れ方向と平行な直線RLに関して対称に配置されている。同様に、2つの縦リブ62は、液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に位置しており、主軸32の軸心Oを通る液体の流れ方向と平行な直線RLに関して対称に配置されている。本実施形態では、2つの縦棒61および2つの縦リブ62は、ポンプケーシング27の外周面上の液体の流れの剥離点よりも下流側に配置されている。
吸込水槽1の水位が高いときは、吸込水槽1内の液体の流速は低く、吸込水槽1の水位が低くなると、吸込水槽1内の液体の流速が高くなる。カルマン渦7の発生個所は、吸込水槽1の水位、および吸込水槽1内の液体を汲み上げる時の吸込水槽1内の液体の流速によって変化する。カルマン渦7は、吸込水槽1内の液体の流速が低いとき、ポンプケーシング27または揚水管28の外周面付近に発生し易い。
図12は、ポンプケーシング27または揚水管28によって分流された液体の流れを示す図である。図12の矢印に示すように、ポンプケーシング27または揚水管28によって分流されたポンプケーシング27または揚水管28の外周面付近の液体は、縦リブ62に衝突することによってその流れを乱される。結果として、縦リブ62は、ポンプケーシング27または揚水管28の外周面付近におけるカルマン渦7の発生を抑制することができる。
縦リブ62は、吸込水槽1の水位が高いとき(吸込水槽1内の液体の流速が低いとき)に、空気吸込渦の発生を効果的に抑制することができる。一例として、縦リブ62は、その高さ(ポンプケーシング27の径方向の長さ)が0.1d程度であり、かつその幅(ポンプケーシング27の周方向の長さ)が0.1d程度であるとき、カルマン渦7の発生を効果的に抑制できる。
縦リブ62に衝突してその流れを乱された液体は、ポンプケーシング27の外側に流され、ポンプケーシング27から離れた位置にカルマン渦7を発生させることがある。また、吸込水槽1の水位が比較的低いとき(吸込水槽1内の液体の流速が高いとき)、ポンプケーシング27から離れた位置にカルマン渦7が発生し易いことが知られている。そこで、このようなカルマン渦7の発生を抑制するために、本実施形態では、縦棒61は、縦リブ62よりも半径方向において外側に配置されている。図12の矢印に示すように、縦リブ62に衝突してポンプケーシング27の外側に流された液体や、ポンプケーシング27または揚水管28によって分流された液体の一部は、縦棒61に衝突し、縦棒61と縦リブ62の間を流れ、あるいは縦棒61の周りを流れるため、その流れが乱される。結果として、縦棒61は、ポンプケーシング27から離れた位置におけるカルマン渦7の発生を抑制することができる。
縦棒61は、縦リブ62が空気吸込渦の発生を抑制することができる吸込水槽1の水位範囲から吸込水槽1の水位がさらに低下したとき(すなわち、吸込水槽1内の液体の流速が高いとき)に、空気吸込渦の発生を効果的に抑制することができる。また、縦リブ62に衝突してポンプケーシング27の外側に流された液体によって発生するカルマン渦7は、縦リブ62よりも下流側に発生する。そのため、縦棒61は、主軸32の軸心Oと縦リブ62とを結ぶ線の延長線よりも下流側(図7参照)に配置されている。一実施形態では、縦棒61は、上記延長線上に配置されてもよい。
図7に示すように、主軸32の軸心Oと2つの縦リブ62とを結ぶ2つの線がなす角度θ0は、主軸32の軸心Oと2つの縦棒61とを結ぶ2つの線がなす角度θ1よりも大きいか、あるいは等しい(θ0≧θ1)。本実施形態では、角度θ0は、角度θ1よりも大きい。θ0およびθ1の値が30°~120°程度のとき、縦リブ62と縦棒61との組み合わせは、カルマン渦7の発生を効果的に抑制できる。
一実施形態では、縦棒61の断面形状は、四角形、L字型などの多角形であってもよい。上述した各実施形態の縦リブ62は四角形の断面形状を有しているが、縦リブ62の断面形状はこの形状に限定されない。一実施形態では、縦リブ62の断面形状は三角形または円形であってもよい。
図6および図7に示すように、第2の空気吸込渦抑制装置としての半円筒体71は、縦棒61と縦リブ62の下方に配置されている。半円筒体71は、流路構造体53の外周面との間に隙間が存在した状態で、流路構造体53に固定されている。本実施形態では、半円筒体71は、ポンプケーシング27の外周面と半円筒体71との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット75によってポンプケーシング27に固定されている。
より具体的には、半円筒体71は、複数のブラケット75を介して吸込ベルマウス22に固定されており、吸込ベルマウス22の外周面の一部を囲むように配置されているが、半円筒体71の構成は、この実施形態に限定されない。例えば、半円筒体71は、その下端が吸込ベルマウス22の下端よりも下に位置するように配置されてもよく、その下端が吸込ベルマウス22の下端と同じ高さに位置するように配置されてもよい。一実施形態では、半円筒体71は吐出しボウル24に固定されてもよい。半円筒体71は、主軸32と平行に延びる内周面71aを有している。
半円筒体71は、吸込水槽1内の液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に配置されており、ポンプケーシング27の外周面の一部を囲むように配置されている。図7に示すように、主軸32の軸方向から見たときに、半円筒体71の全体はポンプ開口5の内側に位置している。
カルマン渦7が発生すると、吸込水槽1内の液体を汲み上げる際に、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう下向きの強い流れが発生し、空気吸込渦に発達する。図13は、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう流れを示す図である。図13では、縦棒61、縦リブ62、および複数の水中渦抑制板49の図示は省略されている。図13に示すように、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう下向きの流れF1は、半円筒体71によって内側の流れF2と外側の流れF3に分流される。内側の流れF2は、半円筒体71と流路構造体53(本実施形態では、吸込ベルマウス22)の間に引き込まれる。半円筒体71は、内側の流れF2が外側の流れF3よりも強くなる位置に配置されている。
空気吸込渦に発達しうる下向きの強い流れF1は、半円筒体71によって2つの流れF2,F3に分解される。さらに、半円筒体71と流路構造体53(本実施形態では、吸込ベルマウス22)の間に引き込まれた内側の流れF2は、上流側から半円筒体71と流路構造体53(本実施形態では、吸込ベルマウス22)との間の隙間に引き込まれた液体の流れF4などによって乱される。このようにして勢いを失った内側の流れF2は、吸込口22aから吸い込まれる際に、吸込ベルマウス22の下端のエッジ部に衝突し、さらに乱される。
このようにして、半円筒体71は、カルマン渦7から空気吸込渦に発達する過程の下向きの強い流れを破壊することができる。結果として、半円筒体71は、空気吸込渦の発生を抑制することができる。上述のように、半円筒体71は、主軸32と平行に延びる内周面71aを有している。このような内周面71aは、上流側から流れてくる液体を、半円筒体71と流路構造体53(吸込ベルマウス22)との間の隙間に引き込む効果を助長する。一例として、半円筒体71は、その高さ(主軸32と平行な方向の長さ)が0.2d~0.4d程度のとき、空気吸込渦の発生を効果的に抑制できる。
本実施形態では、図7に示すように、主軸32の軸心Oと半円筒体71の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度θ2は180°であるが、この角度θ2は180°に限定されず、120°~180°の範囲内で選択してもよい。図14(a)および図14(b)に示すように、半円筒体71は、その上端および下端から半径方向内側または半径方向外側に延びるフランジ71bを有してもよい。この場合も、半円筒体71は、主軸32と平行に延びる内周面71aを有している。
図15は、ポンプ20の他の実施形態を示す側面図であり、図16は、図15のD-D線断面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図1乃至図14を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図15および図16では、保護管36および複数の水中渦抑制板49の図示は省略されている。図15および図16に示すように、本実施形態のポンプ20は、円弧部材76をさらに備えている。本実施形態では、第2の空気吸込渦抑制装置は、半円筒体71および円弧部材76から構成される。円弧部材76は、半円筒体71の上方に配置され、かつ縦リブ62および縦棒61の下方に配置されている。一実施形態では、縦棒61の下端は、円弧部材76と接触していてもよい。さらに一実施形態では、縦棒61は円弧部材76に固定、連結されていてもよい。円弧部材76は、流路構造体53(本実施形態では、ポンプケーシング27)の外周面の周方向に沿って湾曲している。本実施形態では、円弧部材76は、半円環状である。円弧部材76は、流路構造体53の外周面との間に隙間が存在した状態で、流路構造体53に固定されている。本実施形態では、円弧部材76は、ポンプケーシング27の外周面と円弧部材76との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット77によってポンプケーシング27に固定されている。
円弧部材76は、吸込水槽1内の液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に配置されており、流路構造体53(ポンプケーシング27)の外周面の一部を囲むように配置されている。図16に示すように、円弧部材76は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体がポンプ開口5の内側に位置している。円弧部材76は、流れF1の進路を妨害する位置に配置されている。流れF1は、半円筒体71により分流される前に、円弧部材76に衝突することによって複数の流れF5に分流され、半円筒体71に入る流れが弱められる。結果として、空気吸込渦を生じる下向きの強い流れを弱めることができる。このように、円弧部材76と半円筒体71との組み合わせは、空気吸込渦の発生をより効果的に抑制することができる。
図16に示すように、本実施形態では、主軸32の軸心Oと円弧部材76の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度θ3は180°であるが、この角度θ3は180°に限定されず、120°~180°の範囲内で選択してもよい。円弧部材76の断面形状は、円形、四角形、L字型などの多角形であってもよい。
一実施形態では、図17に示すように、円弧部材76は、互いに離間した第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bから構成されてもよい。特に説明しない本実施形態の詳細は、図15および図16を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の円弧部材76A,76Bの周方向の長さは、図15および図16を参照して説明した円弧部材76の周方向の長さよりも短い。
第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bは、液体の流れ方向に関して主軸32の下流側で、主軸32の軸心Oを通る液体の流れ方向と平行な直線RL’に関して対称に配置されている。具体的には、第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bは、直線L1,L2上に配置されている。直線L1,L2は、直線RL’に対して45°程度の角度にあり、かつ主軸32の軸心Oを通る直線である。
カルマン渦7は、直線L1,L2よりも吸込水槽1内の液体の流れ方向の下流側に発生することが多い。そのため、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう下向きの流れF1の進路を妨害するために、第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bは、直線L1,L2上に配置されている。本実施形態の円弧部材76A,76Bと半円筒体71との組み合わせは、コンパクトな構成で空気吸込渦の発生を抑制することができる。
半円筒体71または、半円筒体71と円弧部材76との組み合わせは、縦棒61と縦リブ62との組み合わせが空気吸込渦の発生を抑制することができる吸込水槽1の水位範囲から吸込水槽1の水位がさらに低下したとき(すなわち、吸込水槽1内の液体の流速が高いとき)に、空気吸込渦の発生を効果的に抑制することができる。したがって、半円筒体71および円弧部材76を、縦棒61および縦リブ62と組み合わせることによって、吸込水槽1のより幅広い水位およびより幅広い流速において、カルマン渦7の発生を抑制し、有害な空気吸込渦の発生を防止することができる。
一実施形態では、ポンプ20は、縦棒61と縦リブ62との組み合わせのみを備えていてもよい。さらに、一実施形態では、ポンプ20は、半円筒体71のみ、または半円筒体71と円弧部材76との組み合わせのみを備えていてもよい。
図18は、図1に示す複数の水中渦抑制板49を下から見た図である。図18に示すように、本実施形態では、4つの水中渦抑制板49が吸込ベルマウス22の下部に固定されている。4つの水中渦抑制板49のうち2つは吸込水槽1内の液体の流れ方向と平行に配置され、他の2つは吸込水槽1内の液体の流れ方向と垂直に配置されている。ただし、水中渦抑制板49の数は本実施形態に限定されない。
複数の水中渦抑制板49の一端は、主軸32の軸心Oの延長線上で、互いに固定されており、複数の水中渦抑制板49のそれぞれの他端は、吸込ベルマウス22の内周面に固定されている。図1に示すように、水中渦抑制板49は、吸込ベルマウス22の下端から下方に突出している。水中渦抑制板49の上端は、吸込ベルマウス22の下端よりも高い位置にあり、かつ羽根車31よりも低い位置にある。
このような水中渦抑制板49によれば、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間に発生する水中渦を抑制することができる。この水中渦は、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間の旋回流が発達して形成されるものであり、吸込ベルマウス22が吸込水槽1の底面の近くに位置しているときに発生しやすい。本実施形態のポンプ20は、水中渦の原因となる旋回流を水中渦抑制板49で消滅させることにより、水中渦の発生を効果的に抑制することができる。したがって、従来の構造よりも吸込ベルマウス22を低い位置に配置することができ、低水位で、吸込水槽1内の液体を汲み上げることが可能となる。
図19は、ポンプ20のさらに他の実施形態を示す模式図であり、図20は、図19のE-E線断面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図1、図3乃至図7、図12乃至図14、および図18を参照して説明した各実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図19および図20に示すように、本実施形態のポンプケーシング27は、揚水管28の内部に配置されている。本実施形態のポンプ20は、吊り下げ管33を備えておらず、揚水管28は、ポンプ据付床2に設置されたポンプベース35に固定されている。揚水管28はポンプ開口5を通して吸込ベルマウス22の下端(吸込口22a)まで延びている。吐出しエルボ30は、揚水管28の上端に接続されている。
本実施形態のポンプケーシング27は、すり鉢状の拡大管80をさらに備えており、拡大管80は、吐出しボウル24の上端に接続されている。拡大管80は、上方に開口した吐出口80aを有し、吸込ベルマウス22の吸込口22aから吸い込まれた液体は、羽根車31の回転により、吐出しボウル24、拡大管80を通って、吐出口80aから吐き出される。その後、液体は、揚水管28、吐出しエルボ30を通って図示しない吐出配管に移送される。
本実施形態のインペラケーシング21は、吸込ベルマウス22の上端に載置されている。ポンプケーシング27は、インペラケーシング21と吸込ベルマウス22の接触面で分離可能に構成されており、インペラケーシング21は、吸込ベルマウス22に着脱可能に支持されている。吸込ベルマウス22は、揚水管28に連結されている。より具体的には、吸込ベルマウス22は、揚水管28の内周面に固定されている。本実施形態の内側ボウル25は、保護管36および複数のガイドベーン37に接続されている。
本実施形態の流路構造体53は、揚水管28と、吐出しエルボ本体30aと、筒体47と、吸込ベルマウス22とを含んでいる。内部構造体54は、主軸32と、羽根車31と、保護管36と、吐出しエルボ上蓋30bと、インペラケーシング21と、吐出しボウル24と、複数のガイドベーン37と、内側ボウル25と、水中軸受41と、拡大管80とを含んでいる。図21に示すように、本実施形態においても、内部構造体54の全体を、流路構造体53から抜き出すことが可能となっている。内部構造体54は、吸込ベルマウス22に着脱可能に支持されている。
一実施形態では、流路構造体53は、吸込ベルマウス22を備えず、内部構造体54が吸込ベルマウス22を備えていてもよい。この場合、吸込ベルマウス22は、インペラケーシング21に連結され、内部構造体54は、揚水管28に着脱可能に支持される。より具体的には、吸込ベルマウス22は、揚水管28に着脱可能に支持される。さらに一実施形態では、複数の水中渦抑制板49は、吸込ベルマウス22に固定されず、揚水管28の下端に固定されてもよい。この場合、内部構造体54は、揚水管28および/または複数の水中渦抑制板49に着脱可能に支持される。より具体的には、吸込ベルマウス22は、揚水管28および/または複数の水中渦抑制板49に着脱可能に支持される。
複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71は、揚水管28の外側に配置されている。各縦棒61は、複数のブラケット65によって、揚水管28の外周面との間に隙間が存在した状態で揚水管28に固定されている。縦リブ62は、揚水管28の外周面に沿った形状を有し、主軸32の軸方向に延びている。縦リブ62は、揚水管28の外周面に固定されており、揚水管28の外周面から揚水管28の径方向外側に突出している。さらに一実施形態では、縦リブ62は、揚水管28と一体に形成されてもよい。2つの縦棒61および2つの縦リブ62は、揚水管28の外周面上の液体の流れの剥離点よりも下流側に配置されている。半円筒体71は、揚水管28との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット75によって揚水管28に固定されている。半円筒体71は、揚水管28の外周面の一部を囲むように配置されている。
一実施形態では、ポンプ20は、図15乃至図17を参照して説明した各実施形態の円弧部材76をさらに備えていてもよい。特に説明しない本実施形態の詳細は、図15乃至図17を参照して説明した各実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。この場合、円弧部材76は、揚水管28の外周面の周方向に沿って湾曲し、揚水管28の外周面の一部を囲むように配置される。円弧部材76は、揚水管28の外周面との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット77によって揚水管28に固定される。
さらに一実施形態では、ポンプ20は、縦棒61と縦リブ62との組み合わせのみを備えていてもよい。さらに、一実施形態では、ポンプ20は、半円筒体71のみ、または半円筒体71と円弧部材76との組み合わせのみを備えていてもよい。
図22は、ポンプ20のさらに他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図19乃至図21を参照して説明した各実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、吐出しエルボ30は、吸込水槽1内に配置されており、筒体47は、ポンプ据付床2に設置されたポンプベース35に固定されている。筒体47はポンプ開口5を通して下方に延びている。本実施形態のポンプ20は、軸継手56を備えていないが、一実施形態では、ポンプ20は、軸継手56を備えていてもよい。ポンプ20によって汲み上げられた液体は、吐出しエルボ30から、吐出配管38に移送される。吐出しエルボ30を吸込水槽1内に配置することにより、主軸32の長さを短くすることができる。図22では、原動機12は、立軸直結モータであるが、原動機12の位置に傘歯車減速機を設置し、水平方向に横軸原動機(ディーゼルエンジン、ガスタービン、電動機)を配置してもよい。
図23は、ポンプ20のさらに他の実施形態を示す模式図である。本実施形態のポンプ20は、鉛直方向に延びる主軸32と、主軸32に固定された羽根車31と、内部に羽根車31を収容するポンプケーシング27と、吸込水槽1の上壁を構成するポンプ据付床2に形成されたポンプ開口5を通して下方に延びる揚水管28と、揚水管28に連結された吐出しエルボ30とを備えている。揚水管28は、ポンプ据付床2に設置されたポンプベース35に固定されている。より具体的には、吐出しエルボ30は、揚水管28の上端に接続されている。主軸32は、ポンプケーシング27内を延びている。
ポンプケーシング27は、揚水管28の内部に配置されている。ポンプケーシング27は、吸込ベルマウス22と、インペラケーシング21と、吐出しボウル24とを備えている。インペラケーシング21は、吐出しボウル24に連結されており、吸込ベルマウス22は、インペラケーシング21に連結されている。より具体的には、インペラケーシング21は、吐出しボウル24の下端に接続されており、吸込ベルマウス22は、インペラケーシング21の下端に接続されている。ポンプケーシング27は、上方に開口した吐出口27aを有している。吸込ベルマウス22は、下方に開口した吸込口22aを有している。揚水管28はポンプ開口5を通して吸込ベルマウス22の下端(吸込口22a)まで延びている。
揚水管28の内部には、水中モータ15が配置されており、主軸32の上端は、水中モータ15に連結されている。この水中モータ15により主軸32および羽根車31が回転するように構成されている。羽根車31が回転すると、吸込水槽1内の液体(例えば水)が吸込ベルマウス22の吸込口22aから吸い込まれる。液体は、羽根車31の回転により、ポンプケーシング27内を通って、吐出口27aから吐き出される。その後、液体は、揚水管28、吐出しエルボ30を通って図示しない吐出配管に移送される。このように、吸込水槽1内の液体がポンプ20によって汲み上げられる。
吐出しエルボ30は、揚水管28に連結された吐出しエルボ本体30aと、吐出しエルボ本体30aの上端に配置された吐出しエルボ上蓋30bとを備えている。吐出しエルボ本体30aおよび吐出しエルボ上蓋30bは、互いに分離可能に構成されている。
ポンプ20は、液体の流路を形成する流路構造体53と、流路構造体53の内部に配置された内部構造体54とを備えている。本実施形態の流路構造体53は、揚水管28と、吐出しエルボ本体30aとを含んでいる。内部構造体54は、主軸32と、羽根車31と、ポンプケーシング27と、水中モータ15とを含んでいる。本実施形態においても、内部構造体54の全体を、流路構造体53から抜き出すことが可能となっている。内部構造体54は、揚水管28に着脱可能に支持されている。
ポンプ20は、図19および図20を参照して説明した複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71をさらに備えている。複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71の詳細は、図19および図20を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。ポンプ20は、図1および図18を参照して説明した複数の水中渦抑制板49をさらに備えている。複数の水中渦抑制板49の詳細は、図1および図18を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
一実施形態では、ポンプ20は、図15乃至図17を参照して説明した各実施形態の円弧部材76をさらに備えていてもよい。特に説明しない本実施形態の詳細は、図15乃至図17を参照して説明した各実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。この場合、円弧部材76は、揚水管28の外周面の周方向に沿って湾曲し、揚水管28の外周面の一部を囲むように配置される。円弧部材76は、揚水管28の外周面との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット77によって揚水管28に固定される。
さらに一実施形態では、ポンプ20は、縦棒61と縦リブ62との組み合わせのみを備えていてもよい。さらに、一実施形態では、ポンプ20は、半円筒体71のみ、または半円筒体71と円弧部材76との組み合わせのみを備えていてもよい。
さらに一実施形態では、複数の水中渦抑制板49は、吸込ベルマウス22に固定されず、揚水管28の下端に固定されてもよい。この場合、内部構造体54は、揚水管28および/または複数の水中渦抑制板49に着脱可能に支持される。より具体的には、吸込ベルマウス22は、揚水管28および/または複数の水中渦抑制板49に着脱可能に支持される。
吸込水槽1が深く、ポンプ20の全長が長くなる場合、主軸32の長さも長くなり、ポンプ20の内部に中間軸受を必要とする場合がある。中間軸受を設けた場合、ポンプ20を引き抜くためには、より複雑な構造となる。そのような場合に図23に示すように、水中モータ15を揚水管28内に設置し、ポンプ20と直結させることによりポンプ20の構造の簡素化とポンプ20の縮小化が図れ、設備及びメンテナンスの簡略化につながる。
上述した各実施形態のポンプ20は、空気吸込渦抑制装置を備えているため、従来のポンプより重量が増加する。このため、ポンプ20全体を引き上げることが困難となる場合がある。このような場合でも、内部構造体54は、流路構造体53から抜き出し可能に構成されているため、流路構造体53を吸込水槽1に固定したままで、内部構造体54のみを引き上げることができる。したがって、主軸32や羽根車31の点検や整備を容易に行うことができる。結果として、ポンプ20の維持管理性を向上させることができる。
上述した各実施形態における第1の空気吸込渦抑制装置を構成する複数の縦棒61と複数の縦リブ62との組み合わせは、吸込水槽1の幅広い水位および幅広い流速において、カルマン渦7の発生を抑制し、空気吸込渦の発生を抑制することができる。
上述した各実施形態によれば、吸込ベルマウス22の吸込口22aに向かう液体の流れを阻害するものは実質的に無く、吸い込み損失がほぼ無いため、上述した各実施形態の第1の空気吸込渦抑制装置(縦棒61および縦リブ62)および/または第2の空気吸込渦抑制装置(半円筒体71および/または円弧部材76)を備えたポンプ20は、揚水能力を低下させることなく、有害な空気吸込渦の発生を防止することができる。
また、上述した各実施形態の第1の空気吸込渦抑制装置(縦棒61および縦リブ62)、第2の空気吸込渦抑制装置(半円筒体71および/または円弧部材76)、水中渦抑制装置(水中渦抑制板49)はポンプ20に取り付けることができるので、土木躯体である吸込水槽1への固定は不要であり、低コストかつ信頼性の高いポンプを提供することができる。
上述した各実施形態における主軸32および羽根車31以外の構成要素(流路構造体53、複数の縦棒61、複数の縦リブ62、半円筒体71、円弧部材76、および水中渦抑制板49等)は、鋼鉄製であり、かつ無塗装で使用できる材料から構成されている。このような材料として、耐食性が良く通常の状態で不動態被膜を形成する材料である、SUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)、SUS316(オーステナイト系ステンレス鋼)、二相ステンレス鋼(オーステナイト相とフェライト相からなるステンレス鋼)、スーパー二相ステンレス鋼、などが挙げられる。主軸32および羽根車31以外の構成要素を、上記のような材料とすることによって、ポンプ20の耐久性が向上し、かつ従来のポンプより軽量となる。結果として、ポンプ20の維持管理性をさらに向上させることができる。
図24は、ポンプ20のさらに他の実施形態を示す模式図であり、図25は、図24のF-F線断面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図1、図3乃至図7、図12乃至図14、および図18を参照して説明した各実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図24および図25に示すように、本実施形態の吐出しエルボ30は、吐出しエルボ上蓋30bを有さず、一体に形成されている。内側ボウル25は、複数のガイドベーン37によって吐出しボウル24に連結されており、複数のガイドベーン37に着脱可能に支持されていない。ポンプ20は、保護管36、筒体47を有していない。本実施形態におけるポンプ20の各構成要素(羽根車31、主軸32、ポンプケーシング27、揚水管28等)は、図1等に示す流路構造体53および/または内部構造体54を構成しない。
本実施形態の各縦棒61は、ポンプケーシング27の外周面との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット65によって、吸込水槽1の後壁に固定されており、半円筒体71は、ポンプケーシング27の外周面との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット75によって吸込水槽1の後壁に固定されている。
本実施形態のポンプ20は、図15乃至図17を参照して説明した各実施形態の円弧部材76をさらに備えていてもよい。特に説明しない本実施形態の詳細は、図15乃至図17を参照して説明した各実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。この場合、円弧部材76は、ポンプケーシング27の外周面と円弧部材76との間に隙間が存在した状態で、複数のブラケット77によって吸込水槽1の後壁に固定される。
本実施形態の複数の水中渦抑制板49は、複数の固定具82を介して吸込水槽1の底面に固定されている。吸込ベルマウス22は、複数の水中渦抑制板49に着脱可能に支持されている。図24および図25を参照して説明した各実施形態において、ポンプ20の構成要素のうち、複数の縦棒61、複数のブラケット65、半円筒体71、複数のブラケット75、円弧部材76、複数のブラケット77、複数の水中渦抑制板49、および複数の固定具82以外の構成要素をポンプ本体85と定義する。ポンプ本体85は、複数の水中渦抑制板49と分離可能に構成され、複数の水中渦抑制板49に着脱可能に支持されている。一実施形態では、水中渦抑制板49は、固定具82を介さず、吸込水槽1の底面に直接固定されてもよい。
さらに一実施形態では、インペラケーシング21は、吸込ベルマウス22に着脱可能に支持されていてもよい。この場合、吸込ベルマウス22は、複数の水中渦抑制板49に固定され、ポンプ本体85は、ポンプ20の構成要素のうち、複数の縦棒61、複数のブラケット65、半円筒体71、複数のブラケット75、円弧部材76、複数のブラケット77、複数の水中渦抑制板49、複数の固定具82、および吸込ベルマウス22以外の構成要素と定義される。ポンプ本体85は、吸込ベルマウス22と分離可能に構成され、吸込ベルマウス22に着脱可能に支持される。
さらに一実施形態では、ポンプ20は、縦棒61と縦リブ62との組み合わせのみを備えていてもよい。さらに、一実施形態では、ポンプ20は、半円筒体71のみ、または半円筒体71と円弧部材76との組み合わせのみを備えていてもよい。
ポンプ本体85は、複数の縦棒61、半円筒体71、円弧部材76、および複数の水中渦抑制板49を備えていないため、ポンプ本体85を、ポンプ場内に設置されるポンプ据付け用の天井クレーンで引き上げることが可能となり、ポンプ場の特性に合わせたポンプも提供ができる。また、土木構造にかかる荷重が従来のポンプと同じとなるため、ポンプ重量増量による土木構造への影響の懸念点が無くなる。さらに、吸込ベルマウス22とインペラケーシング21とを分離可能とした場合、ポンプ据付床2にかかる荷重がさらに軽減され、土木構造へ与える影響はさらに減る。
図24および図25を参照して説明した各実施形態における渦抑制装置(複数の縦棒61、複数の縦リブ62、半円筒体71、円弧部材76、および複数の水中渦抑制板49)は、耐食性が良く通常の状態で不動態被膜を形成する材料から構成されている。このような材料として、SUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)、SUS316(オーステナイト系ステンレス鋼)、二相ステンレス鋼(オーステナイト相とフェライト相からなるステンレス鋼)、スーパー二相ステンレス鋼、などが挙げられる。渦抑制装置を、上記のような材料とすることによって、渦抑制装置の整備をほぼ皆無とし、渦抑制装置を備えていないポンプと同様の点検整備を可能とする。結果として、ポンプ20の維持管理性をさらに向上させることができる。
上述した各実施形態は、特開2007-285253号公報に示すような羽根車の下方に水中軸受が配置されたポンプに適用してもよい。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。