JP7210145B2 - 耐火構造及び建築物 - Google Patents
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前記パネル断熱材が熱で溶けずに炭化する材料であり、
前記パネル断熱材の透湿係数が30~60ng/(m2・s・Pa)であることを特徴とする、前記石膏ボードの少なくとも一部と建築物の天井を構成する材料である木質材料とを互いに接する形態で積層させて前記木質材料を含む建築物に用いる耐火構造。
前記パネル断熱材が熱で溶けずに炭化する材料であり、
前記パネル断熱材の密度が10~30kg/m3であることを特徴とする、前記石膏ボードの少なくとも一部と建築物の天井を構成する材料である木質材料とを互いに接する形態で積層させて前記木質材料を含む建築物に用いる耐火構造。
前記パネル断熱材の厚さに対する前記石膏ボードの厚さの割合が0.3~1.6であることを特徴とする、前記石膏ボードの少なくとも一部と建築物の天井を構成する材料である木質材料とを互いに接する形態で積層させて前記木質材料を含む建築物に用いる耐火構造。
[9]
前記不燃材の厚さが12~70mmであり、前記パネル断熱材の厚さが20~50mmである、[1]~[8]のいずれかの耐火構造。
[10]
前記パネル断熱材の厚さが20~50mmであり、前記石膏ボードの厚さが25mm以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の耐火構造。
[11]
[1]~[10]のいずれかの耐火構造を備えることを特徴とする建築物。
本発明の耐火構造は、不燃材、パネル断熱材、及び石膏ボードが、この順に各部材が接する形態で積層されている。
従来の強化石膏ボード(a)6/アルミニウムシート7/強化石膏ボード(b)8の積層体を木質材料5上に設けた耐火構造(図2)では、火災の熱が強化石膏ボード(a)6にいち早く伝わり、強化石膏ボード(a)6中の結晶水が水蒸気となる。アルミニウムシート7は水蒸気を通さないため、発生した水蒸気は火災源側に移動して素早く揮発し、強化石膏ボード(a)は短時間で結晶水を放出する。また、アルミニウムシート7は放射熱を遮断するものの、熱伝導性が高いため、伝導熱が強化石膏ボード(b)8に伝わり易い。そのため、強化石膏ボード(b)8が加熱されやすく、強化石膏ボード(b)8中の結晶水も蒸発しやすい。
本発明者は、上記の問題点を解決するために、使用材料及び耐火構造の層構成について鋭意検討を重ねた。
表面側に不燃材2を設けることで、不燃材2側に火災が発生した場合であっても、燃えにくい。また、不燃材2に、断熱性、熱反射性を有する材料を用いると、石膏ボード4への熱伝導を一層抑えることができる。
不燃材2の下にパネル断熱材3を設けることで、不燃材2を通して伝わった熱はパネル断熱材3によって遮断され、石膏ボード4に伝わりにくい。また、パネル断熱材3として、熱で溶けずに炭化する材料を用いると、火が直接石膏ボードに触れないため、パネル断熱材炭化後の石膏ボード4の加熱を抑えることができる。
石膏ボード4を、不燃材2/パネル断熱材3の下に設けることで、伝導熱が石膏ボード4に伝わりにくく、石膏ボード4中の結晶水が水へと分解される時間帯を遅くすることができる。また、パネル断熱材3として透湿係数が低い材料を用いる場合は、石膏ボード4で発生した水蒸気が、火災源側へと移動しにくく、石膏ボード4内または木質材料5内に残り易くなり、石膏ボード4が一層加熱されにくくなる。
本発明者は、層構成により、耐火性能に優れ、石膏ボードの厚さを薄くするできることを見出した。なお、本発明の効果を損なわない範囲で他の層を各部材間に挿入しても、上記と同様の効果を得ることができる。
上記不燃材としては、熱伝導性が低く、燃えないものが好ましい。
不燃材の熱伝導率としては、0.03~0.24W・m-1・K-1であることが好ましく、より好ましくは0.05~0.14W・m-1・K-1である。なお、本明細書において、熱伝導率は、JIS A1412に準拠して測定される値をいう。
上記不燃材は、1種単独で用いてもよいし、同種及び/又は複数種を重ねて用いてもよい。
上記パネル断熱材としては、熱に強く、炭化するものが好ましい。上記パネル断熱材としては、例えば、フェノールフォーム、スチレンフォーム等の樹脂発泡体板;ロックウール、グラスウール等の板状の繊維;等が挙げられる。中でも、軽量性、熱伝導率の観点から、フェノールフォーム、ロックウールが好ましく、より好ましくはフェノールフォーム(フェノール樹脂発泡体板)である。
上記パネル断熱材は、1種単独で用いてもよいし、同種及び/又は複数種を重ねて用いてもよい。
なお、透湿係数は、厚さ25mmの条件で、JIS A1324に準拠して測定される値をいう。
なお、密度とは、JIS K7222に従って測定した、断熱材の質量と見かけ容積とから算出される値をいう。
上記石膏ボードとしては、石膏を主成分とした板であれば特に限定されず、例えば、JIS A6901の石膏ボード(GB-R)、シージング石膏ボード(GB-S)、強化石膏ボード(GB-F、GB-F(V))、石膏ラスボード(GB-L)、化粧石膏ボード(GB-D)、不燃積層石膏ボード(GB-NC)、普通硬質石膏ボード(GB-R-H)、シージング硬質石膏ボード(GB-S-H)、化粧硬質石膏ボード(GB-D-H)、構造用石膏ボード(GB-St-A、GB-St-B)吸放湿石膏ボード等が挙げられる。中でも、耐火性能の観点から、強化石膏ボードが好ましい。
上記石膏ボードは、1種単独で用いてもよいし、同種及び/又は複数種を重ねて用いてもよい。
上記木質材料としては、特に限定されず、例えば、合板、CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)、LVL(Laminated Veneer Lumber)等が挙げられる。また、木の種類としては、特に限定されず、針葉樹であってもよいし広葉樹であってもよい。
上記木質材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、防腐処理等の処理が施されていてもよい。
上記木質材料は、1種単独で用いてもよいし、同種及び/又は複数種を重ねて用いてもよい。
中でも、技能者が上向き作業をしなければならず施工が困難な天井が好ましい。
本実施形態の耐火構造の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、不燃材、パネル断熱材、石膏ボードの各部材を積層し、ビス、ステープル、釘などにより固定して製造する方法が挙げられる。固定は、隣り合う2部材だけを固定してもよいし、3部材以上をまとめて固定してもよい。本実施形態の耐火構造は、上記木質材料と上記石膏ボードとを、上記の方法で固定してもよい。
石膏ボードは結晶水を多く含む素材からなっており、非常に重い部材である。そのため、例えば天井等に設置する場合、持ち上げた状態で多数のビス等を打ち込んで固定する必要があり、施工性の観点から、改善が要求されていた。本発明の耐火構造によれば、石膏ボードを薄く、軽くできるため、施工性が著しく改善する。
本実施形態の耐火構造において、上記不燃材、上記パネル断熱材、及び上記石膏ボードの合計厚さとしては、50~150mmであることが好ましく、より好ましくは50~100mmである。
上記不燃材の厚さとしては、12~70mmであることが好ましく、より好ましくは15~25mmである。なお、不燃材を複数枚積層する場合は、上記不燃材の厚さとは、全ての不燃材の合計厚さをいうものとする。
上記パネル断熱材の厚さとしては、20~100mmであることが好ましく、より好ましくは20~50mmである。なお、パネル断熱材を複数枚積層する場合は、上記パネル断熱材の厚さとは、全てのパネル断熱材の合計厚さをいうものとする。
上記石膏ボードの厚さとしては、36mm未満であることが好ましく、より好ましくは35mm以下、更に好ましくは30mm以下、更に好ましくは9.5~25mm、特に好ましくは15~25mmである。なお、石膏ボードを複数枚積層する場合は、上記石膏ボードの厚さとは、全ての石膏ボードの合計厚さをいうものとする。
上記建築物としては、木質材料を含む建築物であれば限定されず、例えば、木造建築物;鉄骨構造、RC構造又はSRC構造と木造構造との混構造の建築物;等が挙げられる。
上記木質材料は、建築物の木質材料構造部を構成する材料であることが好ましい。上記木質材料構造部としては、床、壁、天井、屋根、柱、梁、枠体等が挙げられ、これらの一部に適用してもよい。中でも、床及び天井が好ましく、より好ましくは天井である。
床の木質材料5(床下地材等)上に、石膏ボード4、パネル断熱材3、不燃材2がこの順に積層され、床の耐火構造を形成している。床下地材上に、石膏ボード4の端面同士を突き合わせて、床下地材の全面を覆うように石膏ボード4が面全体に連接されている。また、石膏ボード4上に、パネル断熱材3の端面同士を突き合わせて、石膏ボード4の全面を覆うようにパネル断熱材3が面全体に連接されている。本例では、パネル断熱材の連接部と、石膏ボードの連接部とは、互いに直交し、重ならずにずれている。図4の床は、木質材料である床下地材の全面に設けられ、全面が本実施形態の耐火構造となっている。
天井の木質材料5(野縁)の下に、石膏ボード4、パネル断熱材3、不燃材2がこの順に積層され、天井の耐火構造を形成している。図4の天井は、木質材料5(野縁)が、石膏ボード4の一部と連接されている。天井の野縁部分が不燃材2/パネル断熱材3/石膏ボード4/木質材料5の耐火構造となっており、野縁に挟まれた部分(野縁と石膏ボードとが接していない部分)は、不燃材2/パネル断熱材3/石膏ボード4の3層の耐火構造となっている。
以下の部材を記載の順に積層し、ビスで固定して、長さ300mm、幅300mmの、ケイ酸カルシウム板/フェノールフォーム/強化石膏ボードの積層体からなる耐火構造を作製し、木質材料と強化石膏ボードが接するようにビスで固定した(図1)。なお、固定用のビスには、一般的なコースレットビスを用いた。
・ケイ酸カルシウム板(日本インシュレーション株式会社製)、厚さ15mm
・フェノールフォーム(旭化成建材株式会社製)、厚さ20mm
・強化石膏ボード(吉野石膏株式会社製)、厚さ15mmを2枚
・木質材料(杉集成材:等級E65-F255)、厚さ105mm
フェノールフォームと強化石膏ボードとの積層の順番を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、ケイ酸カルシウム板/強化石膏ボード/フェノールフォームの積層体を作製し、木質材料とフェノールフォームとが接するようにビスで固定した(図3)。
実施例及び比較例で得られた積層体について、以下の方法で耐火性能を評価した。
ISO834加熱プログラムに準拠して、試験の加熱時間は120分、加熱冷却後の放冷時間は360分、合計480分の条件で試験を行った。
実施例1および比較例1は、120分間の加熱を実施したところ、試験終了時まで、非加熱側へ火炎の噴出、発炎がなく、火炎が通る亀裂等の損傷も生じなかった。
試験後に各部材を剥がし、木質材料表面を観察したところ、実施例1の耐火構造は炭化しておらず、2時間耐火構造の基準を満たした(図5)。一方、比較例1の積層体は、表面が炭化しており、2時間耐火構造の基準を満たさなかった(図6)。
部材の厚みを以下のように変更した以外は実施例1と同様にして耐火構造を作成し、木質材料と強化石膏ボードが接するようにビスで固定した(図1)。なお、固定用のビスには、一般的なコースレットビスを用いた。
・ケイ酸カルシウム板 厚さ20mm
・フェノールフォーム 厚さ40mm
・強化石膏ボード 厚さ21mm
実施例1と同様の条件で耐火試験を行ったところ、実施例2は、120分間の加熱を実施したところ、試験終了時までの木材表面温度が最高で158℃であった。試験終了時まで、非加熱側へ火炎の噴出、発炎がなく、火炎が通る亀裂等の損傷も生じなかったうえ、各部材を剥がし、木質材料表面を観察したところ、実施例2の耐火構造は炭化しておらず、2時間耐火構造の基準を満たした。
2 不燃材
3 パネル断熱材
4 石膏ボード
5 木質材料
6 強化石膏ボード(a)
7 アルミニウムシート
8 強化石膏ボード(b)
Claims (11)
- 不燃材、パネル断熱材、及び石膏ボードがこの順に各部材が接する形態で積層され、
前記パネル断熱材が熱で溶けずに炭化する材料であり、
前記パネル断熱材の透湿係数が30~60ng/(m2・s・Pa)であることを特徴とする、前記石膏ボードの少なくとも一部と建築物の天井を構成する材料である木質材料とを互いに接する形態で積層させて前記木質材料を含む建築物に用いる耐火構造。 - 不燃材、パネル断熱材、及び石膏ボードがこの順に各部材が接する形態で積層され、
前記パネル断熱材が熱で溶けずに炭化する材料であり、
前記パネル断熱材の密度が10~30kg/m3であることを特徴とする、前記石膏ボードの少なくとも一部と建築物の天井を構成する材料である木質材料とを互いに接する形態で積層させて前記木質材料を含む建築物に用いる耐火構造。 - 不燃材、パネル断熱材、及び石膏ボードがこの順に各部材が接する形態で積層され、
前記パネル断熱材の厚さに対する前記石膏ボードの厚さの割合が0.3~1.6であることを特徴とする、前記石膏ボードの少なくとも一部と建築物の天井を構成する材料である木質材料とを互いに接する形態で積層させて前記木質材料を含む建築物に用いる耐火構造。 - 総厚さ35mm以下の前記石膏ボードを用いて、ISO834に準拠して行われる防耐火性能試験による2時間耐火構造の基準を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐火構造。
- 前記不燃材がケイ酸カルシウム板である、請求項1~4のいずれか一項に記載の耐火構造。
- 前記パネル断熱材がフェノール樹脂発泡体板である、請求項1~5のいずれか一項に記載の耐火構造。
- 前記不燃材、前記パネル断熱材、前記石膏ボード、及び木質材料がこの順に各部材が接する形態で積層された、請求項1~6のいずれか一項に記載の耐火構造。
- 前記不燃材、前記パネル断熱材、及び前記石膏ボードの合計厚さが50~100mmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の耐火構造。
- 前記不燃材の厚さが12~70mmであり、前記パネル断熱材の厚さが20~50mmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の耐火構造。
- 前記パネル断熱材の厚さが20~50mmであり、前記石膏ボードの厚さが25mm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の耐火構造。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載の耐火構造を備えることを特徴とする建築物。
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