<通信システムの概要>
図1は通信システム1の一例を示す図である。通信システム1は、例えば、ITSで使用されるシステムである。具体的には、通信システム1は、ITSの安全運転支援通信システムとして使用されることが可能である。安全運転支援通信システムは、安全運転支援システムと呼ばれたり、安全運転支援無線システムと呼ばれたりする。
図1に示されるように、通信システム1は、複数の携帯型電子機器2と、複数の路側機3と、複数の電子機器40がそれぞれ搭載された複数の車両4とを備える。以後、携帯型電子機器2を単に携帯機器2と呼ぶことがある。また、車両4に搭載される電子機器40を車載機器40と呼ぶことがある。
路側機3は、例えば、車道8に設けられた横断歩道80の近くに位置する。図1に示される車道8は、片側1車線の車道であって、第1車線8aと、当該第1車線8aの対向車線となる第2車線8bとを備える。路側機3は、例えば、第1車線8aの近くに位置する。
車道8の近くには、車道8に沿って車道8に併設された2つの歩道9が存在する。2つの歩道9は、第1車線8aに沿って第1車線8aに併設された歩道9aと、第2車線8bに沿って第2車線8bに併設された歩道9bとを備える。
車道8の上方には、車両4の横断歩道80の通行を制御するための2つの車両用信号機10が位置する。2つの車両用信号機10は、第1車線8aの上方に位置し、第1車線8aを走行する車両4の運転者が視認可能な車両用信号機10aと、第2車線8bの上方に位置し、第2車線8bを走行する車両4の運転者が視認可能な車両用信号機10bとを備える。
また、車道8の近くには、歩行者の横断歩道80の通行を制御するための2つの歩行者用信号機11が位置する。2つの歩行者用信号機11は、第1車線8a側の歩道9aの上方に位置する歩行者用信号機11aと、第2車線8b側の歩道9bの上方に位置する歩行者用信号機11bとを備える。横断歩道80を歩道9b側から歩道9a側に向かって横断する歩行者は歩行者用信号機11aを視認可能である。一方で、横断歩道80を歩道9a側から歩道9b側に向かって横断する歩行者は歩行者用信号機11bを視認可能である。
通信システム1では、路側機3と、車道8を走る自動車等の車両4と、歩道9を歩くユーザ20が所持する携帯機器2とが、互いに通信を行うことが可能である。ユーザ20は、人であって、歩行者であるとも言える。また、複数の車両4は、互いに通信することが可能である。路側機3と車両4との間の通信、車両4間の通信、路側機3と歩行者の携帯機器2との間の通信、歩行者の携帯機器2と車両4の間の通信は、それぞれ、路車間通信、車車間通信、路歩間通信、歩車間通信と呼ばれる。以後、ユーザ20を歩行者20と呼ぶことがある。
携帯機器2は、例えば、スマートフォン等の携帯電話機である。携帯機器2は、自身の位置を示す位置情報等を路側機3等に送信することができる。なお携帯機器2は、携帯電話機以外の電子機器であってもよい。携帯機器2は、例えば、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ウェアラブル機器などであってよい。携帯機器2として採用されるウェアラブル機器は、リストバンド型あるいは腕時計型などの腕に装着するタイプであってもよいし、ヘッドバンド型あるいはメガネ型などの頭に装着するタイプであってもよいし、服型などの体に装着するタイプであってもよい。
路側機3は、後述するカメラ320及び表示部340を備える。第1車線8aを走行する車両4の運転者及び第2車線8bを走行する車両4の運転者は、路側機3の表示部340の表示を視認することが可能である。
横断歩道80の近くに位置する路側機3は、当該横断歩道80の車両4の通行を制御するための車両用信号機10a及び10bと、当該横断歩道80の歩行者の通行を制御するための歩行者用信号機11a及び11bとを制御することが可能である。路側機3は、その周辺に位置する車両用信号機10a及び10b及び歩行者用信号機11a及び11bを制御することが可能であると言える。
また路側機3は、例えば、車両用信号機10及び歩行者用信号機11の灯火に関する情報及び道路規制に関する情報などを車両4及び携帯機器2に通知することが可能である。また、路側機3は、その周辺の車両4及び歩行者を検知することが可能である。横断歩道80の近くに位置する路側機3は、例えば、横断歩道80を渡る歩行者を検知することが可能である。そして、路側機3は、検知した車両4及び歩行者に関する情報を、車両4及び携帯機器2に通知することが可能である。また、路側機3は、車両4及び携帯機器2から通知される情報を、他の車両4及び携帯機器2に通知することが可能である。
車両4は、自身の位置、速度及びウィンカーに関する情報などを、車載機器40を使用して、他の車両4、路側機3及び携帯機器2に対して通知することが可能である。そして、車両4は、他の装置から通知される情報に基づいて警告等の各種通知を運転者に行うことによって、運転者の安全運転を支援することが可能である。車両4は、車載機器40が備えるスピーカ及び表示装置等を利用して、運転者に各種通知を行うことが可能である。
このように、通信システム1では、路車間通信、車車間通信、路歩間通信及び歩車間通信が行われることによって、車両4の運転者の安全運転が支援される。
なお図2の例では、車両4として、自動車の車両が示されているが、車両4は、自動車以外の車両であってもよい。例えば、車両4は、バスの車両であってもよいし、路面電車の車両であってもよい。また、路側機3の設置場所は図2の例に限られない。
<路側機の構成例>
図2は路側機3の構成の一例を示すブロック図である。図2に示されるように、路側機3は、制御部300、通信部310、カメラ320、センサー330及び表示部340を備える。制御部300は、路側機3の他の構成要素を制御することによって、路側機3の動作を統括的に管理することが可能である。制御部300は制御装置あるいは制御回路とも言える。制御部300は、以下にさらに詳細に述べられるように、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む。
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)として、又は複数の通信可能に接続された集積回路IC及び/又はディスクリート回路(discrete circuits)として実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って実行されることが可能である。
1つの実施形態において、プロセッサは、例えば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続又は処理を実行するように構成された1以上の回路又はユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続き又は処理を実行するように構成されたファームウェア(例えば、ディスクリートロジックコンポーネント)であってもよい。
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、又はこれらのデバイス若しくは構成の任意の組み合わせ、又は他の既知のデバイス及び構成の組み合わせを含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
本例では、制御部300は、CPU(Central Processing Unit)301及び記憶部302を備える。記憶部302は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などの、CPU301が読み取り可能な非一時的な記録媒体を含む。記憶部302が有するROMは、例えば、不揮発性メモリであるフラッシュROM(フラッシュメモリ)である。記憶部302には、路側機3を制御するための制御プログラム302a等が記憶されている。制御部300の各種機能は、CPU301が記憶部302内の制御プログラム302aを実行することによって実現される。
なお、制御部300の構成は上記の例に限られない。例えば、制御部300は、複数のCPU301を備えてもよい。また制御部300は、少なくとも一つのDSP(Digital Signal Processor)を備えてもよい。また、制御部300の全ての機能あるいは制御部300の一部の機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路によって実現されてもよい。また、記憶部302は、ROM及びRAM以外の、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体を備えていてもよい。記憶部302は、例えば、小型のハードディスクドライブ及びSSD(Solid State Drive)などを備えていてもよい。
通信部310は、制御部300による制御によって、他の装置と通信することが可能である。路側機3の通信部310は、他の路側機3、携帯機器2及び車載機器40と直接無線通信することが可能である。路側機3の通信部310は、例えば、ITSに割り当てられている700MHz帯を使用して、当該路側機3の周辺の他の路側機3と直接無線通信することが可能である。また、通信部310は、ITSに割り当てられている700MHz帯を使用して、路側機3の周辺の携帯機器2及び車載機器40と直接無線通信を行うことが可能である。通信部310は、他の装置から受信した情報を制御部300に出力する。通信部310は、制御部300からの情報を他の装置に送信する。通信部310は通信回路とも言える。以後、単に700MHz帯と言えば、ITSに割り当てられている700MHz帯を意味する。
また通信部310は、車両用信号機10及び歩行者用信号機11に接続されている。制御部300は、通信部310を介して、車両用信号機10及び歩行者用信号機11を制御することが可能である。
なお、路側機3の通信部310は、携帯電話通信網及びインターネット等を含むネットワークを通じて、他の路側機3、携帯機器2及び車載機器40の少なくとも一つと通信することが可能であってもよい。また通信部310は、近距離無線通信を行うことが可能であってもよい。例えば、通信部310は、Bluetooth(登録商標)に準拠して無線通信することが可能であってもよい。また通信部310は、WiFi等の無線LAN(Local Area Network)を用いて無線通信を行うことが可能であってもよい。また通信部310は、他の無線通信方式に基づいて無線通信することが可能であってもよい。
カメラ320は、車道8あるいは歩道9の上方に位置する。カメラ320は、路側機3の周辺の道路の様子を撮影することが可能である。本例では、カメラ320は、横断歩道80の様子と、その周囲の様子とを撮影することが可能である。カメラ320で生成された画像は制御部300に入力される。カメラ320は、例えば動画を撮影することが可能である。
センサー330は、路側機3の周辺の道路の状況を検出することが可能である。センサー330は、例えば、レーダーセンサ及び赤外線センサー等を備えている。センサー330は、例えば、路側機3の周辺の歩行者及び車両4を検出することが可能である。センサー330は、検出結果を制御部300に出力する。
表示部340は、制御部300によって制御されることによって、文字、記号、図形などの各種情報を表示することが可能である。表示部340は、図1に示されるように、車道8の上方に位置する。これにより、車道8上の車両4の運転者は、表示部340で表示される情報を視認することができる。表示部340は、発光体として、例えば発光ダイオードを備える。なお、表示部340は発光ダイオード以外の発光体を備えてもよい。例えば、表示部340は液晶ディスプレイであってもよいし、有機ELディスプレイであってもよい。
路側機3の構成は上記の例に限られない。例えば、路側機3は、カメラ320、センサー330及び表示部340の少なくとも一つを備えなくてもよい。
<車載機器の構成例>
図3は車載機器40の構成の一例を示す図である。車載機器40は、例えば、カーナビゲーション装置と、ラジオ等を含む音響機器とを備える。車載機器40は、カーナビゲーション装置及び音響機器のうち、カーナビゲーション装置だけを備えてもよいし、音響機器だけを備えてもよい。また、車載機器40は、車両4のライト及び方向指示器等を制御する車両制御機能を有してもよい。
図3に示されるように、車載機器40は、例えば、制御部400、通信部410、表示部420、タッチパネル430、衛星信号受信部440、スピーカ450、センサー460及びカメラ470を備える。
制御部400は、車載機器40の他の構成要素を制御することによって、車載機器40の動作を統括的に管理することが可能である。制御部400は制御装置あるいは制御回路とも言える。制御部400は、以下にさらに詳細に述べられるように、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む。路側機3の制御部300が備えるプロセッサについての上記の説明は、制御部400が備えるプロセッサについても適用することができる。
本例では、制御部400は、CPU401及び記憶部402を備える。記憶部402は、ROM及びRAMなどの、CPU401が読み取り可能な非一時的な記録媒体を含む。記憶部402が有するROMは、例えば、不揮発性メモリであるフラッシュROMである。記憶部402には、車載機器40を制御するための制御プログラム402a等が記憶されている。制御部400の各種機能は、CPU401が記憶部402内の制御プログラム402aを実行することによって実現される。
なお、制御部400の構成は上記の例に限られない。例えば、制御部400は、複数のCPU401を備えてもよい。また制御部400は、少なくとも一つのDSPを備えてもよい。また、制御部400の全ての機能あるいは制御部400の一部の機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路によって実現されてもよい。また、記憶部402は、ROM及びRAM以外の、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体を備えていてもよい。
通信部410は、制御部400による制御によって、他の装置と通信することが可能である。車載機器40の通信部410は、他の車載機器40、路側機3及び携帯機器2と直接無線通信することが可能である。車載機器40の通信部410は、例えば、700MHz帯を使用して、当該車載機器40の周辺の他の車載機器40と直接無線通信することが可能である。また、通信部410は、700MHz帯を使用して、車載機器40の周辺の路側機3及び携帯機器2と直接無線通信することが可能である。通信部410は、他の装置から受信した情報を制御部400に出力する。通信部410は、制御部400からの情報を他の装置に送信する。通信部410は通信回路とも言える。
なお、車載機器40の通信部410は、携帯電話通信網及びインターネット等を含むネットワークを通じて、他の車載機器40、路側機3及び携帯機器2の少なくとも一つと通信することが可能であってもよい。また通信部410は、近距離無線通信を行うことが可能であってもよい。また通信部410は、WiFi等の無線LANを用いて無線通信を行うことが可能であってもよい。また通信部410は、他の無線通信方式に基づいて無線通信することが可能であってもよい。
表示部420は、例えば、液晶ディスプレイあるいは有機ELディスプレイである。表示部420は、制御部400によって制御されることによって、文字、記号、図形などの各種情報を表示することが可能である。
タッチパネル430は、表示部420の表示画面に対する指等の操作子による操作を検出することが可能である。タッチパネル430は、例えば、投影型静電容量方式のタッチパネルである。車載機器40のユーザが指等の操作子によって、表示部420の表示画面に対して操作を行ったとき、その操作に応じた電気信号をタッチパネル430は制御部400に入力することが可能である。制御部400は、タッチパネル430からの電気信号に基づいて、表示画面に対して行われた操作の内容を特定することが可能である。そして制御部400は、特定した操作内容に応じた処理を行うことが可能である。
衛星信号受信部440は、測位衛星が送信する衛星信号を受信することが可能である。衛星信号受信部440は衛星信号受信回路とも言える。衛星信号受信部440は、受信した衛星信号に基づいて、車両4の絶対的な位置(言い換えれば、絶対座標系の位置)を示す位置情報を取得することが可能である。衛星信号受信部440は、車両4の位置情報を取得する位置取得部あるいは位置取得回路であると言える。衛星信号受信部440が取得する位置情報は、例えば、緯度、経度及び高度で表される。以後、衛星信号受信部440を単に受信部440と呼ぶことがある。
受信部440は、例えばGPS受信機であって、GPS(Global Positioning System)の測位衛星からの無線信号を受信することが可能である。受信部440は、受信した無線信号に基づいて、車両4の現在位置を、例えば緯度、経度及び高度で算出し、算出した緯度、経度及び高度を含む位置情報を制御部400に出力する。受信部440は、位置情報を繰り返し取得する。車両4の位置情報は、当該車両4に搭載された車載機器40の位置を示す位置情報であるとも言える。
なお受信部440は、GPS以外のGNSS(Global Navigation Satellite System)の測位衛星からの信号に基づいて車両4の位置情報を求めてもよい。例えば、受信部440は、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、IRNSS(Indian Regional Navigational Satellite System)、COMPASS、Galileoあるいは準天頂衛星システム(QZSS:Quasi-Zenith Satellites System)の測位衛星からの信号に基づいて車両4の位置情報を求めてもよい。
スピーカ450は、例えばダイナミックスピーカである。スピーカ450は、制御部400からの電気的な音信号を音に変換し、それによって得られた音を車載機器40の外部に出力することが可能である。
センサー460は、例えば、複数種類のセンサーを備える。センサー460は、例えば、加速度センサー、地磁気センサー及びジャイロセンサー等を備える。制御部400は、加速度センサー、地磁気センサー及びジャイロセンサーでの検出結果に基づいて、車両4の進行方向等を特定することが可能である。また制御部400は、加速度センサー、地磁気センサー及びジャイロセンサーでの検出結果に基づいて、受信部440で取得される位置情報を補正することが可能である。センサー460が備えるセンサーの種類はこの限りではない。
カメラ470は、車両4の周辺を撮影することが可能である。カメラ470は、例えば、車両4の前方の様子を撮影することが可能である。カメラ470は、制御部400による制御によって、例えば動画を撮影する。制御部400は、カメラ470に常に撮影を実行させてもよいし、所定の条件が成立したときにカメラ470に撮影を実行させてもよい。カメラ470は、ドライブレコーダと呼ばれるカメラであってもよいし、他のカメラであってもよい。
以上のような構成を備える車載機器40では、通信部410が、路側機3の通信部310が送信する情報を受信する。車載機器40では、制御部400が、受信部440及びセンサー460で得られた各種情報等に基づいて、車両4に関する車両情報を生成する。車載機器40は、生成した車両情報及び路側機3からの情報等に基づいて、車両4の運転者に対して警告等の通知を行う。車載機器40は、表示部420及びスピーカ450等を用いて、車両4の運転者に対して警告等の通知を行うことができる。なお、車載機器40の構成は図3の例には限られない。
<路側機及び車両の動作例>
次に、路側機3及び車両4の動作の一例について説明する。以下では、特に断らない限り、路側機3は、700MHz帯を使用して車両4の車載機器40と直接通信するものとする。また以下では、特に断らない限り、車両4の車載機器40は、700MHz帯を使用して他の車両4の車載機器40と直接通信するものとする。700MHz帯を使用した通信では周波数チャネルが1つだけ使用される。したがって、路側機3と車両4との間の通信と、車両4間の通信とは、同じ周波数チャネルが使用される。
ITSにおいては、700MHz帯を使用した通信の基本周期となる、長さが100msの制御周期50が規定されている。ITSにおいては、制御周期50が繰り返し現れる。図4は制御周期50を示す図である。非特許文献1においては、図4-16に制御周期50が示されている。
制御周期50においては、路側機3が車両4への情報の送信で使用することが可能な通信期間51を最大で16個設定することができる。つまり、制御周期50には、16個の通信期間51a~51pを設定することが可能である。通信期間51は通信チャネルであると言える。通信期間51の長さは可変であって、路側機3によって設定される。通信期間51は路車間通信期間と呼ばれる。
各路側機3では、制御部300が、16個の通信期間51a~51pのうち、少なくとも一つの通信期間51を、自身が使用する使用通信期間51として制御周期50に設定する。このとき、制御部300は、使用通信期間51の長さを決定する。通信部310は、各制御周期50において、使用通信期間51を用いて車両4に情報を送信する。具体的には、通信部310は、各制御周期50の使用通信期間51において、周辺の車両4(言い換えれば、周辺の車載機器40)に対して情報をブロードキャストする。制御部300は、周辺の車両4に送信する情報の量等に応じて、使用通信期間51を随時変更する。路側機3は、制御周期50のうち、使用通信期間51以外の期間において、他の装置が700MHz帯を使用して送信する情報を受信することが可能である。
制御部300は、制御周期50に設定した使用通信期間51を特定するための情報を含む路車間通信期間情報を生成する。非特許文献1においては、図4-22に路車間通信期間情報が示されている。例えば、制御部300が、通信期間51aを使用通信期間51として制御周期50に設定した場合を考える。この場合、制御部300は、制御周期50において通信期間51aを特定するための情報を含む路車間通信期間情報を生成する。他の例として、制御部300が、通信期間51c及び51dのそれぞれを使用通信期間51として制御周期50に設定した場合を考える。この場合、制御部300は、制御周期50において通信期間51cを特定するための情報と、制御周期50において通信期間51dを特定するための情報とを含む路車間通信期間情報を生成する。以後、路車間通信期間情報を通信期間情報と呼ぶことがある。
通信部310は、制御部300が生成した通信期間情報を、周辺の車両4(言い換えれば、周辺の車載機器40)に対してブロードキャストする。通信部310は、周辺の車両4に対して、通信期間情報を繰り返し送信する。通信部310は、例えば制御周期50ごとに通信期間情報を送信する。車載機器40は、路側機3から受信した通信期間情報に基づいて、当該路側機3が送信で使用する使用通信期間51を特定することができる。
制御部300は、通信部310が周辺の各路側機3から受信する通信期間情報に基づいて、16個の通信期間51a~51pにおいて、周辺の各路側機3が使用していない未使用の通信期間51を特定する。言い換えれば、制御部300は、16個の通信期間51a~51pにおいて、周辺の各路側機3において使用通信期間51として設定されていない未使用の通信期間51を特定する。そして、制御部300は、未使用の通信期間51のうち、少なくとも一つの通信期間51を、使用通信期間51として制御周期50に設定する。これにより、互いに近い場所に位置する複数の路側機3が700MHz帯を使用して送信する信号が干渉する可能性を低減することができる。
このように、制御部300は、通信部310が車両4との通信に使用する通信期間51を決定する決定部として機能する。通信期間51は一種の無線リソースであると言えることから、制御部300は、通信部310が車両4との通信に使用する無線リソースを決定する決定部として機能すると言える。また、制御部300は、通信部310が車両4との通信に使用する通信チャネルを決定する決定部として機能すると言える。
一方で、各車両4では、車載機器40が、各制御周期50について、当該制御周期50のうち、周辺の各路側機3が使用していない期間を路側機不使用期間として特定する。言い換えれば、車載機器40は、制御周期50のうち、周辺の各路側機3で設定された使用通信期間51以外の期間を路側機不使用期間として特定する。車載機器40では、制御部400が、通信部410が周辺の各路側機3から受信する通信期間情報に基づいて路側機不使用期間を特定する。そして、制御部400は、路側機不使用期間においてキャリアセンスを行って、路側機不使用期間のうち、他の車載機器40(言い換えれば、他の車両4)が情報を送信していない期間を、空きの期間として特定する。制御部400は、例えば、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)に基づくキャリアセンスを行う。通信部410は、制御部400が特定した空きの期間を使用して、周辺の車両4に情報を送信する。具体的には、通信部410は、特定された空きの期間において、周辺の車両4(言い換えれば、周辺の車載機器40)に対して情報をブロードキャストする。車載機器40は、制御周期50において、制御部400が特定した空きの期間以外の期間において、他の装置からの情報を受信することができる。
このように、車両4は、各制御周期50において、周辺の路側機3及び車両4が送信に使用していない期間に、周辺の車両4に対して情報を送信する。これにより、車両4が700MHz帯を使用して送信する信号と、路側機3が700MHz帯を使用して送信する信号とが干渉する可能性を低減することができる。さらに、互いに近い場所に位置する複数の車両4が700MHz帯を使用して送信する信号が干渉する可能性を低減することができる。
以後、上述のように、車両4が、その周辺の各路側機3からの通信期間情報に基づいて路側機不使用期間を特定し、特定した路側機不使用期間においてキャリアセンスを行って空きの期間を特定し、特定した空きの期間を使用して周辺の車両4に情報を送信する動作を、通常動作と呼ぶ。
また、以後、特に断らない限り、車両4の送信は、車両4が他の車両4に対して情報を送信することを意味する。また、特に断らない限り、路側機3の送信は、路側機3が車両4に対して情報を送信することを意味する。また、車両4が他の車両4に送信する情報を第1情報と呼ぶことがある。また、路側機3が車両4に送信する情報を第2情報と呼ぶことがある。第2情報には通信期間情報が含まれる。
上記の説明から理解できるように、車両4は、その周辺に多くの他の車両4が存在する場合、制御周期50において空きの期間を特定することができない可能性がある。したがって、緊急車両4のように、重要な情報を送信する車両4が、長時間情報を送信できない可能性がある。言い換えれば、他の車両4での受信の優先度が高い情報を送信する車両4が、長時間情報を送信できない可能性がある。
本例では、車両4が送信する第1情報が優先度の高い情報である場合、路側機3は、使用通信期間51を、送信に実際に使用するのではなく、例外的に、当該車両4が通信で使用するための通信期間51として設定する。これにより、重要な情報を送信する車両4が長時間情報を送信できない可能性を低減することが可能となる。以下に、この点について詳細に説明する。以下では、重要な情報を送信する車両4、言い換えれば、優先度の高い情報を送信する車両4として、緊急車両4を例に挙げて説明する。緊急車両4としては救急車及び消防車等が考えられる。
図5は、車両4が送信する第1情報を路側機3が受信する場合の当該路側機3の動作の一例を示すフローチャートである。各路側機3は図5に示される処理を実行する。以後、説明対象の路側機3を対象路側機3と呼ぶことがある。
図5に示されるように、ステップs1において、対象路側機3の通信部310が、車両4が送信する第1情報を受信すると、ステップs2が実行される。車両4は第1情報をブロードキャストするため、対象路側機3は第1情報を受信することができる。
ステップs2において、対象路側機3の制御部300は、通信部310が受信した第1情報が優先度の高い情報であるか否かを判定する。本例では、制御部300は、第1情報が緊急車両4が送信する情報である場合、当該第1情報が優先度の高い情報であると判定する。一方で、制御部300は、第1情報が緊急車両4以外の車両4が送信する情報である場合、当該第1情報が優先度の高い情報であるとは判定しない。本例での情報の優先度とは、車両4での受信の優先度を意味する。したがって、優先度の高い情報とは、他の情報よりも優先させて車両4に受信させたい情報であると言える。
ここで、緊急車両4が送信する第1情報には、例えば、当該緊急車両4を特定するための識別情報が含まれる。また、緊急車両4が送信する第1情報には、緊急車両4の位置情報が含まれる。緊急車両4の位置情報は、緊急車両4の車載機器40の受信部440で取得される。以後、緊急車両4が送信する第1情報を緊急車両情報と呼ぶことがある。
ステップs2において、制御部300は、通信部310が受信した第1情報に、緊急車両4の識別情報が含まれる場合、通信部310が受信した第1情報は優先度の高い情報であると判定する。ステップs2の処理は、対象路側機3が受信した第1情報が緊急車両情報であるか否かを判定する処理であるとも言える。以後、ステップs2において、第1情報が優先度の高い情報であると判定された場合の当該第1情報を送信する緊急車両4を、特定緊急車両4と呼ぶことがある。
ステップs2においてYESと判定されると、ステップs3が実行される。一方で、ステップs2においてNOと判定されると、図5の処理が終了する。ステップs3において、制御部300は、16個の通信期間51a~51pにおいて、対象路側機3と、その周辺の各路側機3とで使用通信期間51として設定されていない空きの通信期間51が存在するか否かを判定する。ステップs3においてYESと判定されると、ステップs4が実行される。一方で、ステップs3においてNOと判定されると、ステップs5が実行される。
ステップs4において、制御部300は、空きの通信期間51を使用通信期間51として制御周期50に設定する。そして、制御部300は、制御周期50に新たに設定した使用通信期間51を特定するための情報を含む通信期間情報を生成する。以後、ステップs4において設定される使用通信期間51を、特定使用通信期間51と呼ぶことがある。
またステップs4において、制御部300は、特定使用通信期間51を、例外的に、緊急車両4が送信で使用するための車両用通信期間51に設定する。制御部300は、特定使用通信期間51を用いて実際には第2情報を送信しないことによって、特定使用通信期間51を車両用通信期間51に設定する。その後、図5の処理が終了する。
このように、路側機3においては、特定使用通信期間51が実際には送信に使用されないものの、当該路側機3が送信する通信期間情報には、特定使用通信期間51を特定するための情報が含められる。したがって、特定使用通信期間51を設定した路側機3から通信期間情報を受信した装置は、当該通信期間情報に基づいて、当該路側機3では特定使用通信期間51が使用されていると判定することになる。
ステップs5においては、制御部300は、車両用通信期間51を確保できるか否かを判定する。制御部300は、16個の通信期間51a~51pのすべてが、対象路側機3の周辺の複数の路側機3において使用通信期間51とされている場合、車両用通信期間51を確保できないと判定する。一方で、制御部300は、16個の通信期間51a~51pのうちの少なくとも一つの通信期間51を、当該制御部300自身が使用通信期間51としている場合、車両用通信期間51を確保できると判定する。言い換えれば、制御部300は、16個の通信期間51a~51pに、対象路側機3の使用通信期間51が含まれる場合には、車両用通信期間51を確保できると判定する。
ステップs5においてNOと判定されると、図5の処理が終了する。一方で、ステップs5においてYESと判定されると、ステップs6が実行される。ステップs6においては、制御部300は、対象路側機3の使用通信期間51を車両用通信期間51に設定する。具体的には、制御部300は、通信部310が通信に使用している使用通信期間51を、使用しないようにすることによって、当該使用通信期間51を車両用通信期間51に設定する。言い換えれば、制御部300は、通信部310が使用通信期間51において第2情報を送信しないようにすることによって、当該使用通信期間51を車両用通信期間51に設定する。このとき、通信部310が複数の使用通信期間51を使用している場合、制御部300は、ある使用通信期間51の長さを大きくしてもよい。そして、通信部310は、別の使用通信期間51で送信する第2情報を、長さを長くした当該ある使用通信期間51で送信することによって、当該別の使用通信期間51を車両用通信期間51に設定してもよい。
ステップs6において車両用通信期間51が設定されると、図5の処理が終了する。対象路側機3は、第1情報を再度受信すると(ステップs1)、ステップs2を実行し、以後同様に動作する。ただし、対象路側機3は、特定緊急車両4についての車両用通信期間51を一度設定した後は、当該車両用通信期間51の設定が解除されるまで、特定緊急車両4から緊急車両情報を受信したとしても、ステップs3~s6を実行しない。車両用通信期間51の設定の解除については後述する。
図6は、緊急車両4が通信期間情報を受信する場合の当該緊急車両4の動作の一例を示すフローチャートである。以後、説明の対象の緊急車両4を対象緊急車両4と呼ぶことがある。
図6に示されるように、ステップs11において、対象緊急車両4の車載機器40の通信部410が通信期間情報を受信すると、ステップs12が実行される。対象緊急車両4が通信期間情報を受信するということは、その通信期間情報を送信する路側機3の通信エリア内に対象緊急車両4が位置することを意味する。
ステップs12では、車載機器40の制御部400が、受信された通信期間情報に基づいて、車両用通信期間51を特定できるか否かを判定する。以後、制御部400が、車両用通信期間51を特定できるか否かを判定する際に使用する通信期間情報を送信する路側機3を、特定路側機3と呼ぶことがある。
ステップs12において、制御部400は、ステップs11で受信された通信期間情報に基づいて、その通信期間情報を送信した特定路側機3が設定した使用通信期間51を特定する。次に制御部400は、特定した使用通信期間51において特定路側機3が第2情報を送信しているか否かを判定する。このとき、制御部400は、例えば、使用通信期間51でのRSSI(Received Signal Strength Indicator)を求める。そして、制御部400は、求めたRSSIがしきい値以上の場合、当該使用通信期間51において特定路側機3が第2情報を送信している判定する。一方で、制御部400は、RSSIがしきい値未満の場合、当該使用通信期間51において特定路側機3が第2情報を送信していないと判定する。特定路側機3において複数の使用通信期間51が設定されている場合には、当該複数の使用通信期間51のそれぞれについて、制御部400は、当該使用通信期間51において特定路側機3が第2情報を送信しているか否かを判定する。制御部400は、使用通信期間51において特定路側機3が第2情報を送信していないと判定すると、当該使用通信期間51が車両用通信期間51として特定路側機3で設定されている判定する。これにより、車両用通信期間51が特定され、ステップs12においてYESと判定される。一方で、制御部400は、特定路側機3において設定された使用通信期間51に、特定路側機3が第2情報を送信していない通信期間51が含まれない場合には、車両用通信期間51を特定できないと判定する。これにより、ステップs12においてNOと判定される。
ステップs12においてNOと判定されると、図6の処理が終了する。一方で、ステップs12においてYESと判定されると、ステップs13が実行される。ステップs13において、通信部410は、ステップs12において特定された車両用通信期間51において緊急車両情報を送信する。これにより、対象緊急車両4の周辺に多数の車両4が存在する場合であっても、対象緊急車両4は緊急車両情報を送信することが可能となる。その結果、対象緊急車両4の周辺の車両4は、重要な緊急車両情報をより確実に受信することができる。
対象緊急車両4は、通信期間情報を再度受信すると(ステップs11)、ステップs12を実行し、その後同様に動作する。ただし、対象緊急車両4は、自身が使用するための車両用通信期間51を一度特定した後は、特定路側機3が送信する第2情報が受信できなくなるまで、ステップs11を実行したとしてもステップs12及び13を実行しない。つまり、対象緊急車両4は、自身が使用するための車両用通信期間51を一度特定した後は、特定路側機3の通信エリア外に移動するまで、通信期間情報を受信したとしてもステップs12及び13を実行しない。
また、対象緊急車両4は、自身が使用するための車両用通信期間51を一度特定した後は、特定路側機3が送信する第2情報が受信できなくなるまで、各制御周期50において車両用通信期間51に緊急車両情報を送信する。これにより、対象緊急車両4は、特定路側機3の通信エリア内に存在する場合には、特定路側機3が設定した車両用通信期間51を使用して緊急車両情報を繰り返し周辺の車両4に対して送信する。対象緊急車両4は、車両用通信期間51を使用して緊急車両情報を送信しない場合には、上述の通常動作を行って、制御周期50の空きの期間を使用して緊急車両情報を繰り返し送信する。
緊急車両情報を受信した車両4では、車載機器40が、表示部420及びスピーカ450の少なくとも一方を使用して、近くに緊急車両4が存在することを運転者に通知する。このとき、車両4の車載機器40の制御部400は、緊急車両情報に含まれる位置情報と、受信部440で得られる位置情報とに基づいて、当該車両4と緊急車両4との間の距離を求めてもよい。そして、制御部400は、求めた距離を、表示部420及びスピーカ450の少なくとも一方を使用して運転者に通知してもよい。
本例では、緊急車両4以外の車両4は図6の処理を実行しない。緊急車両4以外の車両4は、通常動作を行って、制御周期50の空きの期間を使用して第1情報を送信する。
なお、対象緊急車両4は、ステップs11において、複数の路側機3から通信期間情報を受信する場合には、ステップs12において、受信した複数の通信期間情報のうちの一つの通信期間情報に基づいて、車両用通信期間51を特定できるか否かを判定する。
図7は、特定路側機3が設定した車両用通信期間51を緊急車両4が特定した後の当該緊急車両4の動作の一例を示すフローチャートである。図7に示されるように、ステップs21において、対象緊急車両4の制御部400は、特定路側機3が送信する通信期間情報を通信部410が所定時間内に受信できるか否かを判定する。この所定時間は、例えば、路側機3が通信期間情報を送信する周期の数倍程度に設定される。路側機3は、通信期間情報等の情報を送信するときには、当該路側機3を特定するための識別情報を送信するため、制御部400は、特定路側機3が送信する通信期間情報を通信部410が受信できるか否かを判定することができる。
制御部400は、特定路側機3が送信する通信期間情報を通信部410が所定時間内に受信できたと判定した場合、ステップs21を再度実行する。一方で、制御部400が、特定路側機3が送信する通信期間情報を通信部410が所定時間内に受信できなかったと判定した場合、ステップs22が実行される。つまり、特定路側機3が送信する通信期間情報を受信していた通信部410が、当該通信期間情報を受信できなくなった場合、ステップs22が実行される。言い換えれば、特定路側機3が送信する通信期間情報を通信部410が継続して受信することができない場合、ステップs22が実行される。通信部410が、特定路側機3が送信する通信期間情報を所定時間内に受信できないことは、対象緊急車両4が特定路側機3の通信エリア外に移動したことを意味する。
ステップs22において、通信部410は、緊急車両情報の送信に、特定路側機3が設定した車両用通信期間51を使用することを止める。その後、対象緊急車両4は、通信期間情報を受信すると(ステップs11)、図6のようにステップs12を実行する。以後、対象緊急車両4は同様に動作する。
このように、対象緊急車両4は、特定路側機3の通信エリア外に移動すると、車両用通信期間51の使用を止めて、通常動作を行う。
図8は、路側機3が車両用通信期間51の設定を解除する場合の当該路側機3の動作の一例を示すフローチャートである、図8に示されるように、ステップs31において、対象路側機3の制御部300は、特定緊急車両4が送信する緊急車両情報を通信部310が所定時間内に受信できるか否かを判定する。この所定時間は、例えば、緊急車両4が緊急車両情報を送信する周期の数倍程度に設定される。
制御部300は、特定緊急車両4が送信する緊急車両情報を通信部310が所定時間内に受信できたと判定した場合、ステップs31を再度実行する。一方で、制御部300が、特定緊急車両4が送信する緊急車両情報を通信部310が所定時間内に受信できなかったと判定した場合、ステップs32が実行される。つまり、特定緊急車両4が送信する緊急車両情報を受信していた通信部310が、当該緊急車両情報を受信できなくなった場合、ステップs32が実行される。言い換えれば、特定緊急車両4が送信する緊急車両情報を通信部310が継続して受信することができない場合、ステップs32が実行される。通信部310が、特定緊急車両4が送信する緊急車両情報を所定時間以内に受信できないことは、特定緊急車両4が対象路側機3の通信エリア外に移動したことを意味する。
ステップs32において、制御部300は、車両用通信期間51の設定を解除する。言い換えれば、制御部300は、特定使用通信期間51の車両用通信期間51としての設定を解除する。特定使用通信期間51の車両用通信期間51としての設定が解除された場合、制御部300は、通信部310に、特定使用通信期間51に第2情報を送信させてもよい。あるいは、制御部300は、制御周期50に対する特定使用通信期間51の設定を解除してもよい。
なお、路側機3が車両用通信期間51の設定を解除する方法は上記の例に限られない。図9は、路側機3が車両用通信期間51の設定を解除する場合の当該路側機3の動作の他の一例を示すフローチャートである、図9の例では、ステップs41において、対象路側機3の制御部300は、特定緊急車両4が対象路側機3の通信エリア外に移動するタイミングを推定する。以後、当該タイミングをエリア外移動タイミングと呼ぶことがある。エリア外移動タイミングは、特定緊急車両4が、対象路側機3の通信エリア内から当該通信エリア外に出るタイミングであると言える。
ステップs41において、制御部300は、特定緊急車両4が繰り返し送信する緊急車両情報に含まれる位置情報に基づいて、特定緊急車両4の走行速度及び走行方向を求める。そして、制御部300は、特定緊急車両4の現在位置と、特定緊急車両4の走行速度及び走行方向と、対象路側機3の通信エリアの範囲を示すエリア情報とに基づいて、エリア外移動タイミングを推定する。エリア情報は、記憶部302に記憶されている。
ステップs41の後、ステップs42において、制御部300は、現在が、推定したエリア外移動タイミングであるか否かを判定する。ステップs42においてNOと判定されると、ステップs42が再度実行される。一方で、ステップs42においてYESと判定されると、つまりエリア外移動タイミングになると、上述のステップs32が実行されて、特定使用通信期間51の車両用通信期間51としての設定が解除される。
以上のように、本例では、路側機3の制御部300は、車両4が送信する第1情報が優先度の高い情報であると判定した場合、使用通信期間51を車両用通信期間51として設定する。言い換えれば、路側機3は、車両4が送信する第1情報が優先度の高い情報であると判定した場合、自身が通信に使用する無線リソースを、当該車両4が通信に使用する無線リソースとして設定する。これにより、路側機3の働きによって、緊急車両4のように、優先度の高い情報を送信する車両4が、他の車両4に対して情報を送信することができない可能性を低減することができる。よって、路側機3の利便性が向上する。
なお路側機3は、車両用通信期間51を設定すると、設定した車両用通信期間51を特定するための期間特定情報を送信してもよい。この場合、緊急車両4の制御部400は、通信部410が受信する期間特定情報に基づいて車両用通信期間51を特定してもよい。通信部410は、特定された車両用通信期間51を使用して通信する。
また路側機3は、その周辺の路側機3が緊急車両情報の受信に応じて車両用通信期間51を設定すると、自身においても車両用通信期間51を設定してもよい。図10は、この場合の路側機3の動作の一例を示すフローチャートである。以後、図5のように、路側機3が、緊急車両4が送信する第1情報の受信に応じて設定する車両用通信期間51を、第1車両用通信期間51と呼ぶことがある。また、路側機3が、周辺の路側機3での第1車両用通信期間51の設定に応じて設定する車両用通信期間51を、第2車両用通信期間51と呼ぶことがある。
図10の例では、路側機3は、第1車両用通信期間51を設定すると、設定した第1車両用通信期間51を特定するための期間特定情報を送信する。図10に示されるように、ステップs51において、対象路側機3の通信部310が期間特定情報を受信すると、制御部300は、周辺の路側機3で第1車両用通信期間51が設定されたと判定する。その後、上述のステップs3が実行される。図10でのステップs3以降の処理は、上述の図5でのステップs3以降の処理と同様である。図10のステップs6では、対象路側機3に第2車両用通信期間51が設定される。
このように、図10の例では、対象路側機3は、周辺の路側機3が使用通信期間51を車両用通信期間51として設定した場合、自身の使用通信期間51を車両用通信期間51として設定する。これにより、周辺の路側機3の通信エリアから対象路側機3の通信エリアに緊急車両4が移動した場合、緊急車両4はすぐに車両用通信期間51を用いて通信することが可能となる。
以後、ステップs51において路側機3が受信した期間特定情報を送信した周辺の路側機3を、特定周辺路側機3と呼ぶことがある。また、ステップs51において路側機3が受信した期間特定情報によって特定される第1車両用通信期間51を、特定第1車両用通信期間51と呼ぶことがある。特定第1車両用通信期間51は、特定周辺路側機3に設定されている第1車両用通信期間51である。
なお、対象路側機3は、ステップs6を実行して第2車両用通信期間51を設定している場合には、車両4から第1情報を受信したとしても(図5のステップs1)、図5のステップs2~s6を実行しない。
また、対象路側機3は、空きの通信期間51に、特定第1車両用通信期間51と同じ通信期間51が含まれる場合には、その通信期間51を第2車両用通信期間51として設定してもよい。
図11は、路側機3が第2車両用通信期間51の設定を解除する場合の当該路側機3の動作の一例を示すフローチャートである。図11に示されるように、ステップs61において、対象路側機3の制御部300は、特定周辺路側機3が特定第1車両用通信期間51の設定を解除したか否かを判定する。つまり、制御部300は、特定周辺路側機3が、使用通信期間51の車両用通信期間51としての設定を解除したか否かを判定する。ステップs61において、制御部300は、通信部310が、特定第1車両用通信期間51と同じ通信期間51に、特定周辺路側機3が送信する第2情報を受信する場合、特定周辺路側機3が、特定第1車両用通信期間51の設定を解除したと判定する。また、制御部300は、特定周辺路側機3が送信する通信期間情報に、特定第1車両用通信期間51を特定するための情報が含まれなくなった場合、特定周辺路側機3が、特定第1車両用通信期間51の設定を解除したと判定する。一方で、特定周辺路側機3が送信する通信期間情報に、特定第1車両用通信期間51と同じ通信期間51を特定するための情報が含まれ、かつ、特定周辺路側機3が送信する第2情報を特定第1車両用通信期間51と同じ通信期間51において通信部310が受信しない場合には、特定周辺路側機3では特定第1車両用通信期間51が設定されていると判定する。
ステップs61においてNOと判定されると、ステップs61が再度実行される。一方で、ステップs61においてYESと判定されると、ステップs62が実行される。ステップs62において、制御部300は、緊急車両4が送信する緊急車両情報を通信部310が所定時間内に受信できるか否かを判定する。この所定時間は、例えば、緊急車両4が緊急車両情報を送信する周期の数倍程度に設定される。制御部300は、緊急車両4が送信する緊急車両情報を通信部310が所定時間内に受信できたと判定した場合、ステップs62を再度実行する。一方で、制御部300が、緊急車両4が送信する車両情報を通信部310が所定時間内に受信できなかったと判定した場合、ステップs63が実行される。
ステップs63において、制御部300は、第2車両用通信期間51の設定を解除する。言い換えれば、制御部300は、使用通信期間51の第2車両用通信期間51としての設定を解除する。第2車両用通信期間51の設定が解除された場合、制御部300は、通信部310に、第2車両用通信期間51として設定されていた使用通信期間51に第2情報を送信させてもよい。あるいは、制御部300は、制御周期50に対する当該使用通信期間51の設定を解除してもよい。
対象路側機3が図11のように動作することによって、緊急車両4が、特定周辺路側機3の通信エリアから、対象路側機3とは別の路側機3の通信エリアに移動した場合、ステップs61でYESと判定された後の最初のステップs62においてNOと判定される。よって、緊急車両4が、特定周辺路側機3の通信エリアから、対象路側機3とは別の路側機3の通信エリアに移動した場合には、対象路側機3は第2車両用通信期間51の設定を解除することができる。これにより、対象路側機3が通信に使用できる無線リソースが無駄に少なくなる可能性を低減することができる。
また、緊急車両4が、特定周辺路側機3の通信エリアから、対象路側機3の通信エリアに移動した場合、ステップs61でYESと判定された後に複数回ステップs62が実行される。そして、緊急車両4が対象路側機3の通信エリア外に移動した場合には、2回目以降のステップs62においてNOと判定され、第2車両用通信期間51の設定が解除される。
なお路側機3は、第1車両用通信期間51の設定を解除した場合には、その旨を通知する解除通知情報を送信してもよい。この場合、ステップs61において、通信部310が特定周辺路側機3から解除通知情報を受信すると、制御部300は、特定周辺路側機3が特定第1車両用通信期間51の設定を解除したと判定してもよい。
また、図12に示されるように、ステップs62においてYESと判定されると、上述のステップs41及びs42が実行されてもよい。ステップs42においてNOと判定されると、ステップs42が再度実行される。一方で、ステップs42においてYESと判定されると、ステップs63が実行されて、第2車両用通信期間51の設定が解除される。
上記の例では、優先度の高い第1情報として、緊急車両4が送信する情報が挙げられているが、優先度の高い第1情報には、緊急車両4が送信する情報以外の情報が含まれてもよい。例えば、発生した事故に関する情報を示す事故情報が、複数の車両4の間で転送される場合には、当該事故情報が、優先度の高い第1情報として使用されてもよい。
また、上記の例では、路側機3と車両4の間の通信と、車両4間の通信とでは、1つの周波数チャネルが使用されているが、複数の周波数チャネルが使用されてもよい。この場合、路側機3は、車両4が送信する第1情報が優先度の高い情報である場合、送信に使用する周波数チャネルを、当該車両4が送信に使用するための無線リソースとして、例外的に設定してもよい。
また、路側機3と車両4の間の通信と、車両4間の通信とでは、通信チャネルとして、複数の拡散コードが使用されてもよい。この場合、路側機3は、車両4が送信する第1情報が優先度の高い情報である場合、送信に使用する拡散コードを、当該車両4が送信に使用するための無線リソースとして、例外的に設定してもよい。
以上のように、通信システム1は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種の例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。