以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。また、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。また、以下の実施形態において、実際に計測される熱流の値を熱流値と呼ぶ。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る熱流計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の熱流計測システムは、異常ネルンスト効果を発現する磁性材料からなる熱流検出層を含む熱流センサを備える。以下においては、熱流センサについて説明した後に、その熱流センサを備える熱流計測システムについて説明する。
〔熱流センサ〕
図1は、本実施形態の熱流計測システムが備える熱流センサ10の構成の一例を示す概念図である。熱流センサ10は、平板状の外観を有する。図1は、平板状の熱流センサ10を側方から見た際の側面図である。
熱流センサ10は、基板11、第1磁場印加層12、第1絶縁層13、熱流検出層14、第2絶縁層15、第2磁場印加層16、およびカバー層17を有する。
基板11は、その上面に第1磁場印加層12が形成される基材である。基板11は、熱流を伝導しやすい材料で構成される。例えば、基板11は、ポリイミドによって構成される。なお、基板11の材料は、熱流を伝導しやすければ、ポリイミドに限定されない。
第1磁場印加層12は、基板11の上面に形成される。第1磁場印加層12は、第1端と第2端を有する所定のパターンで形成された導電体である。例えば、第1磁場印加層12は、上面視において、第1端と第2端が離れた位置に配置されるミアンダ形状を有する。ミアンダ形状とは、並列して設けられた複数の配線が直列に接続されるように、隣接し合う各々の配線の端部が接続され、全体で一本の線路を形成する形状である。第1磁場印加層12をミアンダ形状とする場合、第1端と第2端を有する配線が、基板11の面上で折り返されるように配置される。なお、第1磁場印加層12の形状は、第1端から第2端までの配線の線路長を長くできさえすれば、ミアンダ形状に限定されない。
例えば、第1磁場印加層12は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)、金(Au)などの金属材料で構成される。なお、第1磁場印加層12の材料は、導電性があれば、CuやAl、Auなどの金属材料に限定されない。例えば、第1磁場印加層12は、スパッタ法やめっき法によって形成できる。なお、第1磁場印加層12は、スパッタ法やめっき法以外の方法で形成されてもよい。
第1絶縁層13は、第1磁場印加層12と熱流検出層14の間に配置される絶縁体である。一例として、第1絶縁層13の二つの主面のうち、第1磁場印加層12が配置される面を第1面と呼び、熱流検出層14が配置される面を第2面と呼ぶ。例えば、第1絶縁層13は、ポリイミドによって構成される。なお、第1絶縁層13の材料は、絶縁性があれば、ポリイミドに限定されない。
熱流検出層14は、第1絶縁層13と第2絶縁層15の間に配置される。熱流検出層14は、第1端と第2端を有する所定のパターンで形成された導電性磁性体である。例えば、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16を構成する導電体のパターンと、熱流検出層14を構成する導電性磁性体のパターンとは、互いに対向する。例えば、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16を構成する導電体のパターンと、熱流検出層14を構成する導電性磁性体のパターンとは同一の形状である。例えば、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16の各々と熱流検出層14は、上面視において、一方のパターンの線路長に沿って、他方のパターンの線路が延在するように配置される。
なお、熱流検出層14を構成する導電体の配線パターンと、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16を構成する導電体の配線パターンとは、全く同じ配線幅でなくてもよい。熱流検出層14を構成する導電体の配線パターンの配線幅の方が広い場合、配置ずれなどの影響があると、一本の熱流検出層14の配線内で磁化の強さが非一様になって不均一な起電力分布が生じ、出力信号が小さくなる可能性がある。そのため、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16と、熱流検出層14を構成する導電体の配線パターンの配線幅は同程度か、もしくは、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16の方が広いことが望ましい。また、熱流検出層14を構成する導電体の配線パターンの配線幅が狭すぎると内部抵抗が大きくなり、ノイズが増える。そのため、熱流検出層14を構成する導電体の配線パターンの配線幅は、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16の配線幅の半分から同程度の範囲とするのがよい。
また、熱流検出層14を構成する導電体の配線パターンと、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16を構成する導電体の配線パターンとは、上面視において多少ずれていてもよい。許容されるずれは、熱流検出層14を構成する導電体の配線パターンの配線間の空隙幅以下であることが好ましい。また、熱流検出層14を構成する導電体の配線パターンの配線間の空隙を埋める絶縁層が設けられている場合、許容されるずれは、絶縁層の幅以下であることが好ましい。また、熱流検出層14や第1磁場印加層12、第2磁場印加層16の作製プロセスの位置合わせ精度をdxとすると、熱流検出層14を構成する導電体の配線パターンの配線間の空隙幅(絶縁層幅)はdx以上にすることが望ましい(dxは正の実数)。
熱流検出層14と第1磁場印加層12との距離と、熱流検出層14と第2磁場印加層16との距離とが等しければ、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16を流れる電流によって、面直方向(z方向)に発生する熱流を相殺できる。そのため、熱流検出層14と第1磁場印加層12との距離と、熱流検出層14と第2磁場印加層16との距離は等しい方がよい。
熱流検出層14には、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16を流れる電流によって発生する磁場によって熱流センサ10の面内方向(xy面内の方向)に磁化しやすいように、軟磁性薄膜を用いることが好ましい。例えば、熱流検出層14には、鉄(Fe)やアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)などの金属を含む軟磁性材料を用いることができる。具体的には、熱流検出層14の材料として、Fe3Alなどの鉄-アルミニウム合金や、Ni80Fe20などのパーマロイ、Niなどの金属を用いることができる。例えば、Fe3Alの熱流検出層14は、フォトリソグラフィ法で形成したフォトレジストパターンやメタルマスクを用いたスパッタ法で形成できる。また、例えば、Niの熱流検出層14は、めっき法で形成できる。
熱流検出層14は、センシング感度を高めるために、実効的な長さの長い形状を有することが好ましい。例えば、熱流検出層14は、第1磁場印加層12と同様に、上面視において、第1端と第2端が離れた位置に配置されるミアンダ形状を有する。熱流検出層14をミアンダ形状とする場合、第1端と第2端を有する磁性体配線が、第1絶縁層13の面上で折り返されるように配置される。熱流検出層14をミアンダ形状の磁性体配線で実現する場合、隣接し合う配線間の間隔が近すぎると干渉し合って磁場が弱くなる可能性があるので、ある程度の間隔を空けた方がよい。なお、熱流検出層14の形状は、第1端から第2端までの配線の線路長を長くできさえすれば、ミアンダ形状に限定されない。
熱流検出層14は、薄い方が、形状磁気異方性が出やすいため、面内方向に磁化しやすい。しかし、熱流検出層14は、薄すぎると電気抵抗が大きくなってノイズが大きくなるため、求められる磁化とバランスを考慮した厚さを有することが好ましい。また、熱流検出層14を構成する複数の配線間に、絶縁性のバッファ層を設けてもよい。
第2絶縁層15は、熱流検出層14と第2磁場印加層16の間に配置される絶縁体である。一例として、第2絶縁層15の二つの主面のうち、第2磁場印加層16が配置される面を第1面と呼び、熱流検出層14が配置される面を第2面と呼ぶ。第2絶縁層15は、第1絶縁層13と同じ厚さであることが好ましい。例えば、第2絶縁層15は、ポリイミドによって構成される。なお、第2絶縁層15の材料は、絶縁性があれば、ポリイミドに限定されない。
第2磁場印加層16は、第2絶縁層15の上面に形成される。第2磁場印加層16は、第1端と第2端を有する所定のパターンで形成された導電体である。例えば、第2磁場印加層16は、第1磁場印加層12と同様のパターンで形成される。例えば、第2磁場印加層16と第1磁場印加層12とは、上面視において重なる。例えば、第2磁場印加層16は、上面視において、第1端と第2端が離れた位置に配置されるミアンダ形状を有する。第2磁場印加層16をミアンダ形状とする場合、第1端と第2端を有する配線が、第2絶縁層15の面上で折り返されるように配置される。なお、第2磁場印加層16の形状は、第1端から第2端までの配線の線路長を長くできさえすれば、ミアンダ形状に限定されない。
例えば、第2磁場印加層16は、銅やアルミニウム、金などの金属材料で構成される。なお、第2磁場印加層16の材料は、導電性がありさえすれば、銅やアルミニウム、金などの金属材料に限定されない。例えば、第2磁場印加層16は、めっきによって形成できる。なお、第2磁場印加層16は、めっき以外の方法で形成されてもよい。
カバー層17は、第2磁場印加層16の上面に形成される。カバー層17は、熱流センサ10を保護する保護層である。カバー層17は、機械的強度や化学的安定性、耐熱性などが高い絶縁材料であることが好ましい。例えば、カバー層17は、ポリイミドによって構成される。なお、カバー層17の材料は、機械的強度や化学的安定性、耐熱性などが十分であれば、ポリイミドに限定されない。
熱流センサ10が熱流を検知する範囲は、熱流検出層14のパターンの範囲内である。言い換えると、熱流センサ10は、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16によって磁場が印加されている熱流検出層14のパターンの範囲内において熱流を検出する。熱流センサ10を用いる際には、第1磁場印加層12の第1端と第2磁場印加層16の第2端との間、または、第1磁場印加層12の第2端と第2磁場印加層16の第1端との間を導線(図示しない)によって電気的に接続する。そして、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16に直流電流を流した際に、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16の対向位置において反対向きに電流が流れるように構成する。
第1磁場印加層12と第2磁場印加層16によって挟まれた熱流検出層14の位置には、第1磁場印加層12を流れる電流と、第2磁場印加層16を流れる電流とに起因して磁場が発生する。熱流検出層14の位置において、第1磁場印加層12を流れる電流によって印加される磁場と、第2磁場印加層16を流れる電流によって印加される磁場とは加算される。熱流検出層14は、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16によって印加される磁場によって、熱流センサ10の面内方向(xy面内方向)に磁化する。第1磁場印加層12および第2磁場印加層16が熱流検出層14に比べて厚いほど、熱流検出層14に印加される磁場のばらつきが低減する。そのため、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16は、熱流検出層14よりも膜厚が厚い方がよい。
第1磁場印加層12および第2磁場印加層16に流れる電流は互いに等しいことが好ましい。第1磁場印加層12および第2磁場印加層16に流れる電流が等しければ、それぞれの磁場印加層を流れる電流によって発生するジュール熱に起因する熱流がキャンセルされる。その結果、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16を流れる電流のジュール熱に起因する面直方向(zy面内方向)の熱勾配がなくなるため、外部からの熱流の検出感度が向上する。
熱流検出層14に発生した起電力に応じた電圧値Vは、異常ネルンスト効果によって熱流検出層14の面内方向に発生する電場E、熱流検出層14の第1端141から第2端142までの配線の線路長Lを用いて、以下の式1のように表現できる。
V=EL・・・(1)
異常ネルンスト効果に基づいた電場Eは、熱流検出層14の異常ネルンスト係数Qおよび透磁率μ、熱流検出層14の上面と下面との間の温度勾配dT、熱流検出層14の磁化Mを用いて、以下の式2のように表現できる。
E=Q(μM×dT)・・・(2)
また、温度勾配dTは、熱流検出層14の熱伝導率λと、熱流検出層14を通過する熱流値qとを用いて、以下の式3のように表現できる。
dT=-q/λ・・・(3)
上記の式1~3を用いれば、熱流検出層14に発生した起電力に応じた電圧値Vを用いて、その電圧値に対応する熱流値qを算出できる。
以上が、本実施形態の熱流計測システムが備える熱流センサ10の構成についての説明である。なお、図1の構成は、熱流センサ10の構成の一例であって、本実施形態の熱流計測システムが備える熱流センサ10の構成を図1の形態に限定するものではない。
〔熱流計測システム〕
次に、本実施形態の熱流計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の熱流計測システムは、熱流センサ10の第1磁場印加層12および第2磁場印加層16に電流を流すための直流電源を備える。
図2は、本実施形態の熱流計測システム1の構成の一例を示す概念図である。図2のように、熱流計測システム1は、熱流センサ10、熱流計測装置100、直流電源110、電圧計120を有する。図2においては、実際には積層される第1磁場印加層12、熱流検出層14、および第2磁場印加層16を仮想的に横に並べて図示する。
熱流センサ10は、図1に示す構造を有する。熱流センサ10は、図1のように、基板11、第1磁場印加層12、第1絶縁層13、熱流検出層14、第2絶縁層15、第2磁場印加層16、およびカバー層17を有する。実際には、第1磁場印加層12、熱流検出層14、および第2磁場印加層16は積層される。なお、図2においては、カバー層17を省略する。
第1磁場印加層12は、第1端121および第2端122を有する。熱流検出層14は、第1端141および第2端142を有する。第2磁場印加層16は、第1端161および第2端162を有する。
第1磁場印加層12の第2端122は、第2磁場印加層16の第2端162に電気的に接続される。例えば、熱流検出層14の第2端162と、熱流センサ10の側面と、第1絶縁層13と、第2絶縁層15との間に絶縁物を充填する。そして、第1絶縁層13および第2絶縁層15の側面と充填された絶縁物で形成される熱流センサ10の側面上に配線(図示しない)を配置すれば、第1磁場印加層12の第2端122と第2磁場印加層16の第2端162を電気的に接続できる。また、例えば、熱流検出層14の第2端162と、熱流センサ10の側面と、第1絶縁層13と、第2絶縁層15との間に充填された絶縁物と、第1絶縁層13および第2絶縁層15とを貫通するビア電極を設ければ、第1磁場印加層12の第2端122と第2磁場印加層16の第2端162を電気的に接続できる。ビア電極は、熱流検出層14に接しないように設けられている。
第1磁場印加層12の第1端121は、直流電源110を挟んで、第2磁場印加層16の第1端161に電気的に接続される。熱流センサ10の第1端141は、熱流センサ10の第2端142に電気的に接続される。熱流センサ10の第1端141と第2端142の間には電圧計120が配置される。
熱流計測装置100は、直流電源110と電圧計120に接続される。熱流計測装置100は、直流電源110を駆動させ、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16を流れる電流を制御する。また、熱流計測装置100は、電圧計120を用いて、熱流が通過することによって熱流検出層14に発生する起電力を計測する。
直流電源110は、熱流計測装置100の制御に応じて直流電流を出力する。直流電源110は、第2磁場印加層16の第1端161に正極が接続され、第1磁場印加層12の第1端121に負極が接続される。なお、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16に流す電流の向きを反対に構成する場合、直流電源110は、第2磁場印加層16の第1端161に負極が接続され、第1磁場印加層12の第1端121に正極が接続される。
電圧計120は、熱流検出層14の第1端141と第2端142に接続される直流電圧計である。電圧計120は、熱流検出層14の第1端141と第2端142の間の電圧を計測し、計測した電圧値を熱流計測装置100に出力する。
図3には、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16に電流が流れる様子を矢印で図示した概念図である。図3のように、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16には、互いに反対方向に向けて電流が流れる。図3には、熱流計測装置100が直流電源110を駆動して、第2磁場印加層16の第1端161から第2端162、第1磁場印加層12の第2端122から第1端121に向けて電流が流れる例を図示する。
図4は、図3のように第1磁場印加層12と第2磁場印加層16に電流が流れた際に、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16に発生する磁場によって、熱流検出層14が磁化する様子を図示した概念図である。図4のように、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16に電流が流れると、アンペールの法則に従って、第1磁場印加層12および第2磁場印加層16を構成する配線の周囲に磁場が発生する。第1磁場印加層12および第2磁場印加層16を構成する配線の周囲の磁場は、熱流検出層14を構成する配線の位置で加算され、熱流検出層14を磁化する。図4のように、熱流検出層14を構成する配線のうち隣接し合う配線は互いに逆向きに磁化する。
また、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16に電流が流れることによって、熱流センサ10の内部からも、ジュール熱に起因する熱流が発生する。熱流センサ10は、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16によって熱流検出層14を挟み込んだ上下対称な構造を有し、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16は直列に接続されている。そのため、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16には等しい電流が流れる。その結果、第1磁場印加層12で発生する熱流と第2磁場印加層16で発生する熱流とが、熱流検出層14において互いにキャンセルし合うため、外部からの熱流がない状態では熱流検出層14に起電力は発生しない。
図5は、図3および図4のように、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16に電流を流した状態で、外部から熱流が到達した状況を示す概念図である。図6は、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16に電流を流した状態で、外部から熱流が到達した状況において、熱流検出層14に起電力が発生し、熱流検出層14に電流が流れる様子を図示した概念図である。
図5のように第1磁場印加層12から第2磁場印加層16に向けて熱流が熱流検出層14を通過すると、熱流検出層14を構成する各々の導電性磁性体において異常ネルンスト効果による起電力が発生する。このときに発生する起電力がミアンダ形状の構造の熱流検出層14において加算された結果、熱流検出層14の第1端141と第2端142との間で出力電圧を検出できる。熱流検出層14の第1端141と第2端142との間の出力電圧は、熱流値に比例するため、検出された出力電圧を熱流値に変換することによって、熱流検出層14を通過する熱流を計測できる。
以上が、本実施形態の熱流計測システム1の構成についての説明である。なお、図2~図5の構成は、熱流計測システム1の構成の一例であって、本実施形態の熱流計測システム1の構成を図2~図5の形態に限定するものではない。
〔熱流計測装置〕
次に、本実施形態の熱流計測システム1が有する熱流計測装置100について図面を参照しながら説明する。図7は、熱流計測装置100の構成の一例を示すブロック図である。図7のように、熱流計測装置100は、電源制御部101、電圧計測部102、熱流算出部103、および出力部107を有する。図7には、熱流計測装置100の計測した熱流値を出力するための出力装置130を出力部107に接続する例を示す。
電源制御部101は、直流電源110に接続される。電源制御部101は、直流電源110を駆動させ、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16を流れる電流を制御する。電源制御部101が第1磁場印加層12と第2磁場印加層16に流す電流の電流値は、予め設定された値である。なお、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16に流す電流の電流値を電源制御部101によって変更可能に設定してもよい。
電圧計測部102は、電圧計120に接続される。また、電圧計測部102は、熱流算出部103に接続される。電圧計測部102は、熱流検出層14に発生した起電力の電圧値を電圧計120から取得する。電圧計測部102は、取得した熱流検出層14の起電力の電圧値を熱流算出部103に出力する。
熱流算出部103は、電圧計測部102に接続される。また、熱流算出部103は、出力部107に接続される。熱流算出部103は、熱流検出層14に発生した起電力に応じた電圧値を電圧計測部102から取得する。熱流算出部103は、取得した電圧値を熱流値に変換する。熱流算出部103は、算出した熱流値を出力部107に出力する。
出力部107は、熱流算出部103から熱流値を取得する。出力部107は、取得した熱流値を出力装置130に出力する。
出力装置130は、出力部107から熱流値を取得する。出力装置130は、取得した熱流値を出力する。例えば、出力装置130は、熱流値に関する情報を表示させるモニターを有する表示装置によって実現される。また、例えば、出力装置130は、熱流値に関する情報を紙などの媒体に印刷するプリンターによって実現される。また、例えば、出力装置130は、熱流値に関する情報を音声で通知するスピーカによって実現される。なお、出力装置130は、熱流値に関する情報を出力できさえすれば、特に限定は加えない。
以上が、本実施形態の熱流計測システム1が有する熱流計測装置100についての説明である。なお、図7の熱流計測装置100は一例であって、本実施形態の熱流計測システム1が有する熱流計測装置100を図7の形態に限定するものではない。
(動作)
次に、本実施形態の熱流計測システム1が有する熱流計測装置100の動作について図面を参照しながら説明する。図8は、熱流計測装置100の動作の一例について説明するためのフローチャートである。図8のフローチャートに沿った熱流計測装置100の動作の説明においては、熱流計測装置100を構成する構成要素を主体とするが、熱流計測装置100を動作の主体としてみなすこともできる。
図8において、まず、熱流計測装置100の電源制御部101は、直流電源110を駆動させ、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16に電流を流す(ステップS11)。
次に、熱流計測装置100の電圧計測部102は、電圧計120によって計測された電圧値を計測する(ステップS12)。
ここで、熱流計測装置100の電圧計測部102によって計測された電圧値が閾値を超えなかった場合(ステップS13でNo)、ステップS12に戻る。
一方、熱流計測装置100の電圧計測部102によって計測された電圧値が閾値を超えた場合(ステップS13でYes)、熱流計測装置100の熱流算出部103は、その電圧値を用いて熱流値を算出する(ステップS14)。
そして、熱流計測装置100の出力部107は、算出された熱流値を出力装置130に出力する(ステップS15)。
ここで、熱流の計測を継続する場合(ステップS16でYes)、ステップS12に戻る。一方、熱流の計測を終了する場合(ステップS16でNo)、図8のフローチャートに沿った処理を終了とする。
以上が、本実施形態の熱流計測システム1が有する熱流計測装置100の動作についての説明である。なお、図8の熱流計測装置100の動作は一例であって、本実施形態の熱流計測システム1が有する熱流計測装置100の動作を図8の手順に限定するものではない。
〔製造方法〕
次に、本実施形態の熱流計測システム1の熱流センサ10に含まれる熱流検出層14の製造方法について図面を参照しながら説明する。図9は、熱流検出層14の製造方法の一例について説明するための概念図である。図9は、めっきによって熱流検出層14を形成する例である。
図9の(a)は、熱流検出層14のパターンを形成するための絶縁層151を導電性基材152の面上に形成させた版である。
図9の(b)は、熱流検出層14のパターンを有するめっき層153を導電性基材152の面上にめっきした状態である。めっき層153は、絶縁層151によって被覆されていない導電性基材152の面上に形成される。例えば、めっき層153は、鉄-アルミニウム合金や、パーマロイ等の軟磁性材料である。
図9の(c)は、導電性基材152の面上に形成されためっき層153を転写フィルム154に転写する状態を示す。例えば、転写フィルム154は、ポリイミド等の絶縁材料である。転写フィルム154は、第1絶縁層13に相当する。
図9の(d)は、熱流検出層14のパターンを形成するための絶縁層151を導電性基材152の面上に形成させた版から、転写フィルム154(第1絶縁層13)を剥がした状態を示す。図9の(d)のように、転写フィルム154(第1絶縁層13)の一方の面上には、めっき層153(熱流検出層14)が形成される。
以上が、本実施形態の熱流計測システム1の熱流センサ10に含まれる熱流検出層14の製造方法についての説明である。なお、図9の熱流検出層14の製造方法は一例であって、本実施形態の熱流検出層14の製造方法を図9で示す手順に限定するものではない。
以上のように、本実施形態の熱流センサは、基板、第1磁場印加層、第1絶縁層、熱流検出層、第2絶縁層、および第2磁場印加層を備える。第1磁場印加層は、基板の上面に配置され、導電体によって構成される。第1絶縁層は、第1磁場印加層の上面に配置される。熱流検出層は、第1絶縁層の上面に配置され、導電性磁性体によって構成される。第2絶縁層は、熱流検出層の上面に配置される。第2磁場印加層は、第2絶縁層の上面に配置され、導電体によって構成される。熱流検出層は、第1絶縁層を介して第1磁場印加層と対向し、第2絶縁層を介して第2磁場印加層と対向する。
本実施形態の一態様において、第1磁場印加層および第2磁場印加層を構成する導電体のパターンと、熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンとは互いに対向する。また、本実施形態の一態様において、第1磁場印加層および第2磁場印加層の各々と熱流検出層とが第1絶縁層および第2絶縁層の各々を介して設けられ、第1磁場印加層および第2磁場印加層の各々の配線パターンに対向して熱流検出層の配線パターンが設けられる。また、本実施形態の一態様において、第1磁場印加層および第2磁場印加層を構成する導電体のパターンと、熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンとは同一の形状である。また、本実施形態の一態様において、上面視において、第1磁場印加層および第2磁場印加層の各々を構成する導電体のパターンの線路長に沿って、熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンの線路が延在するように配置される。
本実施形態の一態様において、熱流検出層は、軟磁性の導電性磁性体によって構成される。本実施形態の一態様において、第1磁場印加層と熱流検出層の距離と、第2磁場印加層と熱流検出層の距離とが等しい。本実施形態の一態様において、第1磁場印加層、第2磁場印加層、および熱流検出層は、一本の配線が折り返された形状のパターンで構成される。本実施形態の一態様において、第1磁場印加層、第2磁場印加層、および熱流検出層は、ミアンダ形状のパターンで構成される。本実施形態の一態様において、第1磁場印加層および第2磁場印加層は、熱流検出層よりも膜厚が厚い。
また、本実施形態の熱流計測システムは、上述の熱流センサと熱流計測装置を備える。熱流計測装置は、第1磁場印加層および第2磁場印加層に流れる電流を制御し、熱流検出層の電圧を計測し、計測された電圧値を熱流値に変換する。
本実施形態の一態様の熱流計測システムにおいて、第1磁場印加層、第2磁場印加層、および熱流検出層の各々は、第1端および第2端を有する。第1磁場印加層および第2磁場印加層の各々の第1端は互いに電気的に接続される。第1磁場印加層および第2磁場印加層の各々の第2端は直流電源を介して接続される。熱流計測装置は、第1磁場印加層および第2磁場印加層のいずれかの第2端から直流電流を流す制御をし、熱流検出層の第1端と第2端との間の電圧を計測する。
本実施形態によれば、導電性磁性体からなる熱流検出層を2つの磁場印加層で挟み込むように構成することによって、熱流検出層の面内方向に効果的に磁場を印加できる。また、本実施形態によれば、2つの磁場印加層に流れる電流の電流値が等しくなるので、2つの磁場印加層に電流が流れることによって発生するジュール熱に起因する熱流を相殺できる。
また、本実施形態によれば、単一材料からなるミアンダ形状の導電性磁性体によって構成される熱流検出層に対して、外部からの一様な磁場ではなく、局所的に異なる非一様な磁場を印加できる。すなわち、本実施形態によれば、熱流検出層を構成するミアンダ形状の導電性磁性体の部分に安定した磁場を集中して印加できるため、高感度な熱流センサを得ることができる。
すなわち、本実施形態の熱流センサによれば、非一様な磁場を発生する磁場印加層を用いて、熱流検出層を非一様に磁化させることで、単一の材料で、高い取り出し電圧を有する熱電層を構成することが可能となる。言い換えると、本実施形態によれば、単一の導電性磁性体で熱流を検出する高感度の薄膜型の熱流センサを提供できる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る熱流計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の熱流計測システムは、直流電源の替わりに交流電源を備える点において、第1の実施形態の熱流計測システムと異なる。
図10は、本実施形態の熱流計測システム2の構成の一例を示す概念図である。図10のように、熱流計測システム1は、熱流センサ20、熱流計測装置200、交流電源210、電圧計220を有する。図10においては、実際には積層される第1磁場印加層22、熱流検出層24、および第2磁場印加層26を横に並べて図示する。交流電源210は、設定された周期に合わせて極性が入れ替わる交流電流を出力する。
熱流センサ20は、図1に示す熱流センサ10と同様の構造を有する。熱流センサ20は、基板21の上面に、第1磁場印加層22、第1絶縁層23、熱流検出層24、第2絶縁層25、第2磁場印加層26、およびカバー層(図示しない)が順番に積層された構造を有する。実際には、第1磁場印加層22、熱流検出層24、および第2磁場印加層26は積層される。なお、図10においては、カバー層を省略する。以下において、熱流センサ10と同様の構成については、説明を省略することがある。一例として、第1絶縁層23の二つの主面のうち、第1磁場印加層22が配置される面を第1面と呼び、熱流検出層24が配置される面を第2面と呼ぶ。また、一例として、第2絶縁層25の二つの主面のうち、第2磁場印加層26が配置される面を第1面と呼び、熱流検出層24が配置される面を第2面と呼ぶ。
第1磁場印加層22は、第1端221および第2端222を有する。熱流検出層24は、第1端241および第2端242を有する。第2磁場印加層26は、第1端261および第2端262を有する。例えば、第1磁場印加層22、熱流検出層24、および第2磁場印加層26は、ミアンダ形状を有し、上面視において重なる。
第1磁場印加層22の第2端222は、第2磁場印加層26の第2端262に電気的に接続される。例えば、図1のように各層を積層させた状態で、第1磁場印加層22の第2端222と、第2磁場印加層26の第2端262とは、熱流センサ20の側面に沿って配置された配線(図示しない)によって電気的に接続される。第1磁場印加層22の第1端221は、交流電源210を挟んで、第2磁場印加層26の第1端261に電気的に接続される。熱流センサ20の第1端241は、熱流センサ20の第2端242に電気的に接続される。熱流センサ20の第1端241と第2端242の間には電圧計220が配置される。
熱流計測装置200は、交流電源210と電圧計220に接続される。熱流計測装置200は、交流電源210を駆動させ、第1磁場印加層22と第2磁場印加層26を流れる交流電流を制御する。また、熱流計測装置200は、電圧計220を用いて、熱流が通過することによって熱流検出層24に発生する起電力を計測する。
交流電源210は、熱流計測装置200の制御に応じて交流電流を出力する。交流電源210は、第2磁場印加層26の第1端261と、第1磁場印加層22の第1端221との間に接続される。
電圧計220は、熱流検出層24の第1端241と第2端242に接続される交流電圧計である。電圧計220は、熱流検出層24の第1端241と第2端242の間の電圧を計測し、計測した電圧値を熱流計測装置200に出力する。
以上が、本実施形態の熱流計測システム2の構成についての説明である。なお、図10の構成は、熱流計測システム2の構成の一例であって、本実施形態の熱流計測システム2の構成を図10の形態に限定するものではない。
〔熱流計測装置〕
次に、本実施形態の熱流計測システム2が有する熱流計測装置200について図面を参照しながら説明する。図11は、熱流計測装置200の構成の一例を示すブロック図である。図11のように、熱流計測装置200は、電源制御部201、電圧計測部202、熱流算出部203、補正部205、および出力部207を有する。図11には、熱流計測装置200の計測した熱量を出力するための出力装置230を出力部207に接続する例を示す。
電源制御部201は、交流電源210に接続される。電源制御部201は、交流電源210を駆動させ、第1磁場印加層12と第2磁場印加層16を流れる交流電流を制御する。電源制御部201が第1磁場印加層22と第2磁場印加層26に流す電流の電流値は、予め設定された値である。なお、第1磁場印加層22と第2磁場印加層26に流す交流電流の実効値を電源制御部201によって変更可能に設定してもよい。
電圧計測部202は、電圧計220に接続される。また、電圧計測部202は、熱流算出部203に接続される。電圧計測部202は、熱流検出層24に発生した起電力の電圧値を電圧計220から取得する。電圧計測部202は、取得した熱流検出層24の起電力の電圧値を熱流算出部203に出力する。
ここで、電圧計測部202によって計測される電圧について図面を参照しながら説明する。図12および図13は、熱流センサ20を構成する第1磁場印加層22および第2磁場印加層26を流れる電流の向きによって、熱流検出層24を流れる電流の向きが変化することについて説明するための概念図である。図12および図13の例では、熱流センサ20に対して、第1磁場印加層22から第2磁場印加層26に向けて面直方向(+z方向)に熱流が流れるものとする。
図12は、交流電源210から-x方向に電流が流れ出た状況を示す概念図である。図12の例では、第2磁場印加層26の第1端261から+y方向に向けて流れ込んだ電流が、y方向に沿って向きを変えることを繰り返して第2端262から流れ出す。第2磁場印加層26の第2端262から流れ出た電流は、第1磁場印加層22の第2端222から-y方向に向けて流れ込む。第1磁場印加層22の第2端222から-y方向に向けて流れ込んだ電流は、y方向に沿って向きを変えることを繰り返して第1端221から流れ出す。
図12の例では、第1磁場印加層22から第2磁場印加層26に向けて面直方向(+z方向)に熱流が流れる状況において、熱流検出層24の第1端241から第2端242に向けて電流が流れる。
図13は、交流電源210から+x方向に電流が流れ出た状況を示す概念図である。図13の例では、第1磁場印加層22の第1端221から+y方向に向けて流れ込んだ電流が、y方向に沿って向きを変えることを繰り返して第2端222から流れ出す。第1磁場印加層22の第2端222から流れ出た電流は、第2磁場印加層26の第2端262から-y方向に向けて流れ込む。第2磁場印加層26の第2端262から-y方向に向けて流れ込んだ電流は、y方向に沿って向きを変えることを繰り返して第1端261から流れ出す。
図13の例では、第1磁場印加層22から第2磁場印加層26に向けて面直方向(+z方向)に熱流が流れる状況において、熱流検出層24の第2端242から第1端241に向けて電流が流れる。
熱流算出部203は、電圧計測部202に接続される。また、熱流算出部203は、補正部205に接続される。熱流算出部203は、熱流検出層24に発生した起電力に応じた電圧値を電圧計測部202から取得する。熱流算出部203は、取得した電圧値を熱流値に変換する。熱流算出部203は、算出した熱流値を補正部205に出力する。熱流算出部203によって算出される熱流値は、電流が流れる方向に応じて極性が周期的に入れ替わる。
補正部205は、熱流算出部203によって算出された熱流値を取得する。補正部205は、取得した熱流値を補正する。一例として、補正部205は、熱流値の最大値と最小値の平均値をベースラインに設定し、ベースラインに合わせて熱流値を補正する。補正部205は、補正した熱流値を出力部207に出力する。
図14は、第1磁場印加層22から第2磁場印加層26に向けて概ね面直方向(+z方向)に熱流が流れる状況において、交流電源210から流れ出る電流に応じて極性が変化する電圧値の時間変化を示す概念図である。
例えば、面直方向(z方向)の熱流成分に加えて面内方向(xy面内)の熱流成分が存在する場合や、熱流分布が大きいことに起因して素子面内の熱流分布が不均一な場合が想定される。このような場合、第1磁場印加層22から第2磁場印加層26に向けて概ね面直方向(+z方向)に熱流が流れると、異常ネルンスト効果に起因する起電力に加えて、ゼーベック効果に起因する起電力もオフセット電圧が熱流検出層14に印加される可能性がある。異常ネルンスト効果に起因する起電力は熱流方向に対して垂直に生じることから、熱流検出層14の第1端と第2端との間に生じる面内方向の起電力(電圧値V)は、面直方向(z方向)の熱流に比例する。それに対し、ゼーベック効果に起因する起電力は、熱流方向に沿って生じることから、第1端と第2端との間に生じる面内方向の起電力(電圧値V)は、面内方向(xy面内方向)の熱流に依存する。そのため、交流電源210から+x方向に電流が流れ出た際に検出される電圧値V1と、交流電源210から-x方向に電流が流れ出た際に検出される電圧値V2とは、ゼーベック効果の寄与分だけ値がずれる。
本実施形態においては、交流電源210からの交流電流の極性の変化に応じて、異常ネルンスト効果に起因する面直方向(z方向)の起電力Vaの向きは変化する。それに対し、交流電源210からの交流電流の極性の変化に応じて、ゼーベック効果に起因する面直方向(z方向)の起電力Vsの向きは変化しない。そのため、以下の式4を用いて電圧値V1と電圧値V2の平均値を計算すれば、ゼーベック効果に起因する起電力Vsが除去され、異常ネルンスト効果に起因する起電力Vaを算出できる。
|Va|=(V1+V2)/2・・・(4)
出力部207は、補正部205から熱流値を取得する。出力部207は、取得した熱流値を出力装置230に出力する。
出力装置230は、出力部207から熱流値を取得する。出力装置230は、取得した熱流値を出力する。例えば、出力装置230は、熱流値に関する情報を表示させるモニターを有する表示装置によって実現される。また、例えば、出力装置230は、熱流値に関する情報を紙などの媒体に印刷するプリンターによって実現される。また、例えば、出力装置230は、熱流値に関する情報を音声で通知するスピーカによって実現される。なお、出力装置230は、熱流値に関する情報を出力できさえすれば、特に限定は加えない。
以上が、本実施形態の熱流計測システム2が有する熱流計測装置200についての説明である。なお、図11の熱流計測装置200は一例であって、本実施形態の熱流計測システム2が有する熱流計測装置200を図11の形態に限定するものではない。
(動作)
次に、本実施形態の熱流計測システム2が有する熱流計測装置200の動作について図面を参照しながら説明する。図15は、熱流計測装置200の動作の一例について説明するためのフローチャートである。図15のフローチャートに沿った熱流計測装置200の動作の説明においては、熱流計測装置200を構成する構成要素を主体とするが、熱流計測装置200を動作の主体としてみなすこともできる。
図15において、まず、熱流計測装置200の電源制御部201は、交流電源210を駆動させ、第1磁場印加層22と第2磁場印加層26に電流を流す(ステップS21)。
次に、熱流計測装置200の電圧計測部202は、電圧計220によって計測された電圧値を計測する(ステップS22)。
ここで、熱流計測装置200の電圧計測部202によって計測された電圧値が閾値を超えなかった場合(ステップS23でNo)、ステップS22に戻る。
一方、熱流計測装置200の電圧計測部202によって計測された電圧値が閾値を超えた場合(ステップS23でYes)、熱流計測装置200の熱流算出部203は、その電圧値を用いて熱流値を算出する(ステップS24)。
次に、熱流計測装置200の補正部205は、熱流算出部203によって算出された熱流値を補正する(ステップS25)。
そして、熱流計測装置200の出力部207は、算出された熱流値を出力装置230に出力する(ステップS26)。
ここで、熱流の計測を継続する場合(ステップS27でYes)、ステップS22に戻る。一方、熱流の計測を終了する場合(ステップS27でNo)、図15のフローチャートに沿った処理を終了とする。
以上が、本実施形態の熱流計測システム2が有する熱流計測装置200の動作についての説明である。なお、図15の熱流計測装置200の動作は一例であって、本実施形態の熱流計測システム2が有する熱流計測装置200の動作を図15の手順に限定するものではない。
以上のように、本実施形態の熱流計測システムは、上述の熱流センサと熱流計測装置を備える。熱流計測装置は、第1磁場印加層および第2磁場印加層に電流を流す制御をし、熱流検出層の電圧を計測し、計測された電圧値を熱流値に変換する。
本実施形態の一態様の熱流計測システムにおいて、第1磁場印加層、第2磁場印加層、および熱流検出層の各々は、第1端および第2端を有する。第1磁場印加層および第2磁場印加層の各々の第1端は互いに電気的に接続される。第1磁場印加層および第2磁場印加層の各々の第2端は交流電源を介して接続される。熱流計測装置は、第1磁場印加層および第2磁場印加層の各々の第2端から交流電流を流す制御をし、熱流検出層の第1端と第2端との間の電圧を計測する。
本実施形態の一態様において、熱流計測装置は、熱流検出層の第1端と第2端との間の電圧の最大値と最小値の平均値をベースラインに設定して熱流値を補正する。
本実施形態によれば、単一材料からなるミアンダ形状の導電性磁性体によって構成される熱流検出層に対して、周期的に向きが切り替わり、局所的に異なる非一様な磁場を印加できる。本実施形態によれば、交流電流によって熱流センサの磁化が周期的に反転することを利用し、熱流センサの面直方向に流れ込む熱流によって面内方向に発生するゼーベック効果に起因する起電力を除去できるので、高精度な熱流センサが得られる。
また、本実施形態によれば、ゼーベック効果やノイズなどによって生じ得るオフセット信号を判別し、そのオフセット信号を除去できる。さらに、本実施形態によれば、ロックイン検出等によって、より高感度な熱流センシングを実現できる。
例えば、測定対象となる熱流が小さい場合、熱流に起因する電圧信号が、多様な周波数のノイズに埋もれてしまう可能性がある。本実施形態の手法によれば、熱流に起因する信号が交流電流と同じ周波数で変調されていることが分かっているため、その周波数成分のみをフィルタで切り取ることによって、他の周波数成分のノイズを除去できる。その結果、本実施形態の手法によれば、多様な周波数のノイズに埋もれていた熱流に起因する電圧信号を高感度に抽出できる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る熱流計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の熱流計測システムは、磁場印加層を一層で構成する点において、第1の実施形態の熱流計測システムと異なる。以下においては、熱流センサについて説明した後に、その熱流センサを備える熱流計測システムについて説明する。
〔熱流センサ〕
図16は、本実施形態の熱流計測システムが備える熱流センサ30の構成の一例を示す概念図である。熱流センサ30は、平板状の外観を有する。図16は、平板状の熱流センサ30を側方から見た際の側面図である。
熱流センサ30は、基板31、熱流検出層34、絶縁層35、磁場印加層36、およびカバー層37を有する。
基板31は、その上面に熱流検出層34が形成される基材である。基板31は、熱流を伝導しやすい材料で構成される。例えば、基板31は、ポリイミドによって構成される。なお、基板31の材料は、熱流を伝導しやすければ、ポリイミドに限定されない。
熱流検出層34は、基板31と絶縁層35の間に配置される。熱流検出層34は、第1端と第2端を有する所定のパターンで形成された導電性磁性体である。例えば、磁場印加層36を構成する導電体のパターンと、熱流検出層34を構成する導電性磁性体のパターンとは、互いに対向する。例えば、磁場印加層36を構成する導電体のパターンと、熱流検出層34を構成する導電性磁性体のパターンとは同一の形状である。例えば、磁場印加層36と熱流検出層34は、上面視において、一方のパターンの線路長に沿って、他方のパターンの線路が延在するように配置される。
熱流検出層34は、熱流センサの面内方向(xy面内の方向)に磁化しやすい軟磁性薄膜によって実現されることが好ましい。例えば、熱流検出層34は、鉄-アルミニウム合金や、パーマロイ等の材料で実現できる。例えば、熱流検出層34は、センシング感度を高めるために、実効的な長さの長い形状を有することが好ましい。例えば、熱流検出層34は上面視において、第1端と第2端が離れた位置に配置されるミアンダ形状を有する。なお、熱流検出層34の形状は、第1端から第2端までの配線の線路長を長くできさえすれば、ミアンダ形状に限定されない。
絶縁層35は、熱流検出層34と磁場印加層36の間に配置される絶縁体である。一例として、絶縁層35の二つの主面のうち、磁場印加層36が配置される面を第1面と呼び、熱流検出層34が配置される面を第2面と呼ぶ。例えば、絶縁層35は、ポリイミドによって構成される。なお、絶縁層35の材料は、絶縁性があれば、ポリイミドに限定されない。
磁場印加層36は、絶縁層35の上面に形成される。磁場印加層36は、第1端と第2端を有する所定のパターンで形成された導電体である。例えば磁場印加層36は、熱流検出層34と同様のパターンで形成される。例えば、熱流検出層34と磁場印加層36とは、上面視において重なる。例えば、磁場印加層36は、上面視において、第1端と第2端が離れた位置に配置されるミアンダ形状を有する。なお、磁場印加層36の形状は、第1端から第2端までの配線の線路長を長くできさえすれば、ミアンダ形状に限定されない。
例えば、磁場印加層36は、銅やアルミニウム、金などの金属材料で構成される。なお、磁場印加層36の材料は、導電性がありさえすれば、銅やアルミニウム、金などの金属材料に限定されない。例えば、磁場印加層36は、めっきによって形成できる。なお、磁場印加層36は、めっき以外の方法で形成されてもよい。
カバー層37は、磁場印加層36の上面に形成される。カバー層37は、熱流センサ30を保護する保護層である。カバー層37は、機械的強度や化学的安定性、耐熱性などが高い絶縁材料であることが好ましい。例えば、カバー層37は、ポリイミドによって構成される。なお、カバー層37の材料は、機械的強度や化学的安定性、耐熱性などが十分であれば、ポリイミドに限定されない。
熱流検出層34の位置には、磁場印加層36を流れる電流に起因して磁場が発生する。熱流検出層34は、磁場印加層36によって印加される磁場によって、熱流センサ30の面内方向(xy面内方向)に磁化する。
第1の実施形態の式1~3を用いれば、熱流検出層34に発生した起電力に応じた電圧値Vを用いて、その電圧値に対応する熱流値qを算出できる。
以上が、本実施形態の熱流計測システムが備える熱流センサ30の構成についての説明である。なお、図16の構成は、熱流センサ30の構成の一例であって、本実施形態の熱流計測システムが備える熱流センサ10の構成を図16の形態に限定するものではない。
〔熱流計測システム〕
次に、本実施形態の熱流計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の熱流計測システムは、熱流センサ30の磁場印加層36に電流を流すための直流電源を備える。
図17は、本実施形態の熱流計測システム3の構成の一例を示す概念図である。図17のように、熱流計測システム3は、熱流センサ30、熱流計測装置300、直流電源310、電圧計320を有する。図17においては、実際には積層される熱流検出層34と磁場印加層36を仮想的に横に並べて図示する。
熱流センサ30は、図16に示す構造を有する。熱流センサ30は、図16のように、基板31、熱流検出層34、絶縁層35、磁場印加層36、およびカバー層37を有する。実際には、熱流検出層34と磁場印加層36は積層される。なお、図17においては、カバー層37を省略する。
熱流検出層34は、第1端341および第2端342を有する。磁場印加層36は、第1端361および第2端362を有する。熱流検出層34および磁場印加層36は、ミアンダ形状を有し、上面視において重なる。
磁場印加層36の第2端362は、直流電源310を挟んで、磁場印加層36の第1端361に電気的に接続される。熱流センサ30の第1端341は、熱流センサ30の第2端342に電気的に接続される。熱流センサ30の第1端341と第2端342の間には電圧計320が配置される。
熱流計測装置300は、直流電源310と電圧計320に接続される。熱流計測装置300は、直流電源310を駆動させ、磁場印加層36を流れる電流を制御する。また、熱流計測装置300は、電圧計320を用いて、熱流が通過することによって熱流検出層34に発生する起電力を計測する。
直流電源310は、熱流計測装置300の制御に応じて直流電流を出力する。直流電源310は、磁場印加層36の第1端361に正極が接続され、磁場印加層36の第2端362に負極が接続される。なお、磁場印加層36に流す電流の向きを反対に構成する場合、直流電源310は、磁場印加層36の第1端361に負極が接続され、磁場印加層36の第2端362に正極が接続される。
電圧計320は、熱流検出層34の第1端341と第2端342に接続される直流電圧計である。電圧計320は、熱流検出層34の第1端341と第2端342の間の電圧を計測し、計測した電圧値を熱流計測装置300に出力する。
図18は、磁場印加層36に電流が流れる様子を矢印で図示した概念図である。図18には、熱流計測装置300が直流電源310を駆動して、磁場印加層36の第1端361から第2端362に向けて電流が流れる例を図示する。
図19は、図18のように磁場印加層36に電流が流れた際に、磁場印加層36に発生する磁場が熱流検出層34の位置に磁界を発生させる様子を図示した概念図である。図19のように、磁場印加層36に電流が流れると、アンペールの法則に従って、磁場印加層36を構成する配線の周囲に磁場が発生する。磁場印加層36を構成する配線の周囲の磁場は、熱流検出層34を磁化する。図19のように、熱流検出層34を構成する配線のうち隣接し合う配線は互いに逆向きに磁化する。
図20は、図18および図19のように、磁場印加層36に電流を流した状態で、外部から熱流が到達した状況を示す概念図である。図21は、磁場印加層36に電流を流した状態で、外部から熱流が到達した状況において、熱流検出層34に起電力が発生し、熱流検出層34に電流が流れる様子を図示した概念図である。
図20のように基板31から第2磁場印加層16に向けて熱流が熱流検出層34を通過すると、熱流検出層34を構成する各々の導電性磁性体において異常ネルンスト効果による起電力が発生する。このときに発生する起電力がミアンダ形状の構造の熱流検出層34において加算された結果、熱流検出層34の第1端341と第2端342との間で出力電圧を検出できる。熱流検出層34の第1端341と第2端342との間の出力電圧は、熱流値に比例するため、検出された出力電圧を熱流値に変換することによって、熱流検出層34を通過する熱流を計測できる。
また、熱流計測システム3は、低周波のノイズや、振動等の外因性の信号揺らぎに微弱信号が埋もれてしまうのを防ぐため、ノイズ源よりも高周波の周波数で磁場を変調し、ノイズの少ない周波数領域で信号を評価するロックイン検出法に適用できる。
以上が、本実施形態の熱流計測システム3の構成についての説明である。なお、図16~図21の構成は、熱流計測システム3の構成の一例であって、本実施形態の熱流計測システム3の構成を図16~21の形態に限定するものではない。なお、本実施形態の熱流計測システム3は、第2の実施形態のように、磁場印加層36に交流電流を流すように構成してもよい。
以上のように、本実施形態の熱流計測システムは、絶縁層、磁場印加層、および熱流検出層を有する熱流センサを備える。磁場印加層は、絶縁層の第1面に配置され、導電体によって構成される。熱流検出層は、絶縁層の第1面に対向する第2面に配置され、導電性磁性体によって構成される。磁場印加層および熱流検出層は、熱流検出層は、絶縁層を介して磁場印加層と対向する。
本実施形態の一態様において、磁場印加層を構成する導電体のパターンと、熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンとは互いに対向する。また、本実施形態の一態様において、磁場印加層と熱流検出層とが絶縁層を介して設けられ、磁場印加層の配線パターンに対向して熱流検出層の配線パターンが設けられる。また、本実施形態の一態様において、磁場印加層を構成する導電体のパターンと、熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンとは同一の形状である。また、本実施形態の一態様において、上面視において、磁場印加層を構成する導電体のパターンの線路長に沿って、熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンの線路が延在するように配置される。
本実施形態によれば、単一の導電性磁性体で熱流を検出する高感度の薄膜型の熱流センサを提供できる。
上記の各実施形態の熱流計測システムは、リチウムイオン電池などの発熱体を含む製品の異常発熱を検知する用途に用いることができる。一般的な温度検知では、発熱体の温度が閾値を超えた時点で異常を検知する。それに対し、各実施形態の熱流計測システムは、発熱体からの熱流を検出するため、発熱体の温度が閾値を超える前に、閾値を超えた熱流が検知された時点において異常を検知できる。
また、各実施形態の熱流センサは、薄型化できるため、計測対象物の表面に貼付しても、面直方向の熱流の流れを妨げにくい。そのため、各実施形態の熱流センサをプラントの配管に貼付すれば、配管からの排熱をリアルタイムで管理することができる。また、各実施形態の熱流センサによって検出された熱流のログを取れば、配管からの排熱をログで管理することもできる。
(構成例)
ここで、各実施形態に係る熱流センサの構成例について一例を挙げて説明する。図22は、本構成例の熱流センサ50の構造の一例について説明するための概念図である。図22は、平板状の熱流センサ50を側方から見た際の側面図である。本構成例の熱流センサ50は、第1の実施形態の熱流センサ10に対応する。図22は、熱流センサ50を構成する各層の位置関係を表し、各層の膜厚は正確に表していない。
熱流センサ50は、基板51、第1磁場印加層52、第1絶縁層53、熱流検出層54、第2絶縁層55、第2磁場印加層56、およびカバー層57を有する。基板51、第1磁場印加層52、第1絶縁層53、熱流検出層54、第2絶縁層55、第2磁場印加層56、およびカバー層57は、第1の実施形態の熱流センサ10の対応する構成要素と同様であるため、詳細な説明は省略する。
熱流センサ50の形状は、上面視において、一辺が30ミリメートルの正方形である。第1磁場印加層52および第2磁場印加層56の導電体のパターンと、熱流検出層54の導電性磁性体のパターンは同一である。第1磁場印加層52および第2磁場印加層56の導電体のパターンと、熱流検出層54の導電性磁性体のパターンは、149本の配線が並行しており、隣接し合う各々の配線の端部同士が接続されて一つの配線となり、ミアンダ形状をなす。第1磁場印加層52および第2磁場印加層56の導電体のパターンと、熱流検出層54の導電性磁性体のパターンを構成する配線の幅w1は100マイクロメートルであり、それらの配線間の間隔w2は100マイクロメートルである。
基板51およびカバー層57の材質はポリイミドである。第1磁場印加層52および第2磁場印加層56の材質は銅(Cu)である。熱流検出層54の材質はFe3Alである。熱流検出層54の材質はNiでもよい。第1絶縁層53および第2絶縁層55の材質はポリイミドである。
基板51およびカバー層57の膜厚tsは10マイクロメートルである。第1磁場印加層52および第2磁場印加層56の膜厚tmは10マイクロメートルである。熱流検出層54の膜厚tdは1マイクロメートルである。第1絶縁層53および第2絶縁層55の膜厚tiは5マイクロメートルとした。
熱流検出層54を効果的に磁化させるためには、tm≧tiかつtm≧tdの条件を満たすことが望ましい。さらに、熱流検出層54を効果的に磁化させるためには、tm≧ti+tdの条件を満たすことがより望ましい。第1の理由は、第1磁場印加層52および第2磁場印加層56が厚いほど、電気抵抗が小さくなり、ジュール熱に起因する熱流の発生が低減するためである。第2の理由は、第1磁場印加層52および第2磁場印加層56が熱流検出層54に比べて厚いほど、熱流検出層54に印加される磁場のばらつきが低減するためである。
以上が、本構成例の熱流センサ50の構造の一例についての説明である。なお、図22の熱流センサ50の構成は、一例であって、各実施形態の熱流センサの構成を図22の形態に限定するものではない。
以上が、各実施形態に係る熱流センサについての説明である。なお、各実施形態の熱流センサは、一例であって、各実施形態に係る熱流センサを図面で示す形態に限定するものではない。
(ハードウェア)
ここで、各実施形態に係る熱流計測装置を実現するハードウェア構成について、図23の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、図23の情報処理装置90は、各実施形態の熱流計測装置の処理を実行するための構成例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
図23のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図23においては、インターフェースをI/F(Interface)と略して表記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを主記憶装置92に展開し、展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る熱流計測装置による処理を実行する。
第1の実施形態の熱流計測装置100(図7)に対応させると、電源制御部101、電圧計測部102、および熱流算出部103の機能がプロセッサ91の動作によって実現される。また、第2の実施形態の熱流計測装置200(図11)に対応させると、電源制御部201、電圧計測部202、熱流算出部203、および補正部205の機能がプロセッサ91の動作によって実現される。
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置92として構成・追加してもよい。
補助記憶装置93は、種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって構成される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
入出力インターフェース95は、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器を接続するように構成してもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成とすればよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
第1の実施形態の熱流計測装置100(図7)に対応させると、出力部107の機能が入出力インターフェース95の動作によって実現される。また、第2の実施形態の熱流計測装置200(図11)に対応させると、出力部207の機能が入出力インターフェース95の動作によって実現される。
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
また、情報処理装置90には、記録媒体(図示しない)に記録されたデータの読み書きを仲介するドライブ装置(図示しない)を設けてもよい。ドライブ装置は、バス98に接続され、プロセッサ91と記録媒体との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。
記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。また、記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体や、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現してもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
以上が、各実施形態に係る熱流計測装置を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、図23のハードウェア構成は、各実施形態に係る熱流計測装置の演算処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る熱流計測装置に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。
各実施形態の熱流計測装置の構成要素は、任意に組み合わせることができる。また、各実施形態の熱流計測装置の構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよいし、回路によって実現してもよい。
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
絶縁層と、
前記絶縁層の第1面に配置され、導電体によって構成される磁場印加層と、
前記絶縁層の前記第1面に対向する第2面に配置され、導電性磁性体によって構成される熱流検出層と、を備え、
前記熱流検出層は、
前記絶縁層を介して前記磁場印加層と対向する、
熱流センサ。
(付記2)
前記磁場印加層を構成する導電体のパターンと、前記熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンとが互いに対向する、
付記1に記載の熱流センサ。
(付記3)
前記磁場印加層を構成する導電体のパターンと、前記熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンとが同一の形状である、
付記2に記載の熱流センサ。
(付記4)
上面視において、前記磁場印加層を構成する導電体のパターンの線路長に沿って、前記熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンの線路が延在するように配置される、
付記2または3に記載の熱流センサ。
(付記5)
基板と、
前記基板の上面に配置され、導電体によって構成される第1磁場印加層と、
前記第1磁場印加層の上面に配置される第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上面に配置され、導電性磁性体によって構成される熱流検出層と、
前記熱流検出層の上面に配置される第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上面に配置され、導電体によって構成される第2磁場印加層と、を備え、
前記第1磁場印加層、前記第2磁場印加層、および前記熱流検出層は、上面視において重なる同一形状のパターンで構成される、熱流センサ。
前記熱流検出層は、
前記第1絶縁層を介して前記第1磁場印加層と対向し、
前記第2絶縁層を介して前記第2磁場印加層と対向する、
熱流センサ。
(付記6)
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層を構成する導電体のパターンと、前記熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンとが互いに対向する、
付記5に記載の熱流センサ。
(付記7)
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層を構成する導電体のパターンと、前記熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンとが同一の形状である、
付記6に記載の熱流センサ。
(付記8)
上面視において、前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層の各々を構成する導電体のパターンの線路長に沿って、前記熱流検出層を構成する導電性磁性体のパターンの線路が延在するように配置される、
付記6または7に記載の熱流センサ。
(付記9)
前記熱流検出層は、軟磁性の導電性磁性体によって構成される、付記5乃至8のいずれか一項に記載の熱流センサ。
(付記10)
前記第1磁場印加層と前記熱流検出層の距離と、前記第2磁場印加層と前記熱流検出層の距離とが等しい、付記5乃至9のいずれか一項に記載の熱流センサ。
(付記11)
前記第1磁場印加層、前記第2磁場印加層、および前記熱流検出層は、一本の配線が折り返されたミアンダ形状のパターンで構成される、付記5乃至10のいずれか一項に記載の熱流センサ。
(付記12)
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層は、前記熱流検出層よりも膜厚が厚い、付記5乃至11のいずれか一項に記載の熱流センサ。
(付記13)
付記5乃至12のいずれか一項に記載の熱流センサと、
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層に流れる電流を制御し、前記熱流検出層の電圧を計測し、計測された電圧値を熱流値に変換する熱流計測装置と、を備える熱流計測システム。
(付記14)
前記第1磁場印加層、前記第2磁場印加層、および前記熱流検出層の各々が第1端および第2端を有し、
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層の各々の前記第1端が互いに電気的に接続され、
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層の各々の前記第2端が直流電源を介して接続され、
前記熱流計測装置は、
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層のいずれかの前記第2端から直流電流を流す制御をし、前記熱流検出層の前記第1端と前記第2端との間の電圧を計測する、付記13に記載の熱流計測システム。
(付記15)
前記第1磁場印加層、前記第2磁場印加層、および前記熱流検出層の各々が第1端および第2端を有し、
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層の各々の前記第1端が互いに電気的に接続され、
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層の各々の前記第2端が交流電源を介して接続され、
前記熱流計測装置は、
前記第1磁場印加層および前記第2磁場印加層の各々の前記第2端から交流電流を流し制御をし、前記熱流検出層の前記第1端と前記第2端との間の電圧を計測する、付記13に記載の熱流計測システム。
(付記16)
前記熱流計測装置は、
前記熱流検出層の前記第1端と前記第2端との間の電圧の最大値と最小値の平均値をベースラインとして前記熱流値を補正する、付記15に記載の熱流計測システム。