JP7206100B2 - 全固体型薄膜リチウム電池用負極および全固体型薄膜リチウム電池 - Google Patents
全固体型薄膜リチウム電池用負極および全固体型薄膜リチウム電池 Download PDFInfo
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Description
一方、特許文献2に記載されているような全体として異方性がない骨格構造を持つ非晶質のシリコンは、充放電時のリチウムイオンの吸蔵または放出によるクラックの影響は結晶質シリコンよりも小さい。また、特許文献2に記載されているホウ素ドープシリコンターゲットは、純シリコンと比較して抵抗率が低いため、DCスパッタ法により、非晶質シリコン膜を成膜することが可能となる。しかしながら、このホウ素ドープシリコンターゲットを用いて成膜された非晶質シリコン膜は、スパッタ時にホウ素が揮発するため、抵抗率が純シリコンと同程度と高くなってしまう。負極活物質である非晶質シリコン膜の抵抗率が高くなると、電池の抵抗率も高くなるため、出力特性が低下して、高電流値での放電容量が低くなる。
本発明に係る全固体型薄膜リチウム電池用負極において、前記導電性物質がチタンであって、前記負極活物質層の前記チタンの含有量が1原子%以上15原子%以下の範囲内にあることが好ましい。
図1は、本発明の一実施形態に係る全固体型薄膜リチウム電池の模式断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る全固体型薄膜リチウム電池の負極活物質層の構造を示す模式図である。
相対密度がこの範囲内にあると、リチウムイオンの吸蔵や放出による負極活物質層42の体積変化量を小さくすることができる。なお、本実施形態において、相対密度は、負極活物質層42の組成から算出された密度の理論値に対する負極活物質層42の密度の実測値の百分率を意味する。
図3は、本発明の一実施形態に係る全固体型薄膜リチウム電池の製造方法の工程を示す模式平面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る全固体型薄膜リチウム電池用負極の負極活物質層を形成するためのコスパッタ装置の一例を示す模式断面図である。
封止材50による被覆方法としては、蒸着法、スパッタ法などの絶縁性の薄膜を形成する方法や、アクリルやエポキシ材(液体)をデバイス基板上に塗布した上にバリアフィルムを配置して硬化させる方法、又はバリアフィルム上にホットメルト樹脂(個体)を塗工し、デバイス基板と熱プレスすることで張り合わせる方法など、封止方法として利用されている公知の方法を用いることができる。
表面にSiO2膜(厚さ:1μm)を有するシリコン基板(厚さ:725μm)を用意した。このシリコン基板のSiO2膜の表面に、シリコン膜を前述の図4に示すコスパッタ装置60を用いて成膜した。コスパッタ装置60のシリコンターゲット61としてホウ素ドープシリコンターゲットを、導電性物質ターゲット62として金属チタンターゲットを用いた。ステージ63にシリコン基板をSiO2側の表面がターゲットを向くように配置し、次いで、ステージ63を回転させながら、DCスパッタ法により、下記のスパッタ条件にてシリコン基板のSiO2膜の表面に、シリコン膜(厚さ:200nm)を成膜した。なお、シリコン膜の成膜に際しては、金属チタンターゲットに接続しているDC電源のパワーを変えて、チタン含有量が異なる4種類のシリコン膜を成膜した。
(1)DC電源のパワー:
ホウ素ドープシリコンターゲット(1000W固定)
金属チタンターゲット(0~500W)
(2)プロセスガス:Ar
(3)チャンバー内のガス圧:3.0Pa
(4)温度:室温(温度調整なし)
成膜した4種類のシリコン膜を、それぞれ酸で溶解した。次いで、得られた溶液のチタンとケイ素の濃度を、ICP-AESを用いた測定した。測定したチタンとケイ素の濃度をモル比に換算して、シリコン膜の組成をSi1-xTixで表したときのx値を算出した。その結果、シリコン膜のx値は、0、0.033、0.115、0.296であった。
成膜した4種類の非晶質シリコン膜の断面を、走査型電子顕微鏡写真を用いて観察した。その結果を図5に示す。
成膜した4種類のシリコン膜について抵抗率をそれぞれ、四端子法又は二端子法により測定した。シリコン膜の組成と抵抗率の関係を、図6に示す。
図6において、横軸は、シリコン膜の組成をSi1-xTixで表したときのx値であり、縦軸は、シリコン膜の室温時での抵抗率である。図6の結果から、a-Si1-xTixで表されるx=0のシリコン膜に対して、x=0.033とx=0.115のシリコン膜は抵抗率が顕著に低減すること、x=0.296のシリコン膜は、x=0.115のシリコン膜と抵抗率がほぼ同じあることが分かる。
成膜した4種類のシリコン膜についてX線回折パターンをそれぞれ、下記の条件で測定した。その結果を図7に示す。なお、X線回折パターンの測定は、金属チタンターゲットにのみ電圧を印加して成膜した金属チタン膜(x=1)に対しても行った。
管球:CuKa、ステップ角度:0.05°、ステップ間時間:1秒
ガラス基板の上に、Pt/Ti積層膜(Pt:100nm/Ti:20nm)をDCスパッタ法により成膜した。このPt/Ti積層膜付きガラス基板のPt表面に、実施例1と同様にして、4種類のシリコン膜(Si1-xTix:x=0、0.033、0.115、0.296)を成膜した。
成膜した4種類のシリコン膜についてX線回折パターンをそれぞれ、前記の条件で測定した。その結果を図8に示す。
図8の結果から、a-Si1-xTixで表されるx=0、0.033、0.115、0.296のいずれのシリコン膜について、シリコンに由来される回折ピークは見られず、下地のPtのX線回折ピークのみが検出されていることが分かる。よって、図7、図8の結果より、成膜した4種類のシリコン膜は、いずれも非晶質であることが確認された。
ガラス基板の上に、Ni/Cr積層膜をDCスパッタ法により成膜した。次いで、Ni/Cr積層膜のNi表面の一部に、前記実施例1と同様にして、非晶質シリコン膜(膜厚:200nm)を形成した。次いで、非晶質シリコン膜の表面を覆うように、固体電解質層としてLiPON膜(膜厚:2μm)を、RFスパッタ法(パワー:2kW、0.3Pa、窒素ガス使用)により成膜した。次いで、固体電解質層の表面の非晶質シリコン膜に対応しない位置にNi/Cr積層膜をDCスパッタ法により成膜した。次いで、固体電解質層の表面の非晶質シリコン膜に対向する位置と、Ni/Cr積層膜の表面の一部にリチウムを積層して、積層体を得た。そして、最後に、積層体の非晶質シリコン膜と接するNi/Cr積層膜と、リチウム箔に接するNi/Cr積層膜の一部を除いて、封止材として、アクリル系シール材とガスバリアフィルムを用いて封止した。こうして、非晶質シリコン膜評価用のハーフセルを作製した。
非晶質シリコン膜評価用のハーフセルに対して、放電試験を行って放電カーブを得た。なお、ハーフセルの放電試験では、非晶質シリコン膜にリチウムイオンを挿入することを放電という。放電試験として、0.03mAの電流で、セル電圧が0.05Vとなるまで定電流放電(CC放電)を行った。得られた放電カーブを、図9に示す。
図9において、横軸は、放電容量であり、縦軸は、ハーフセルの電圧である。図9の結果から、a-Si1-xTix:x=0、0.033、0.115の非晶質シリコン膜を用いたハーフセルは、x=0.296の非晶質シリコン膜を用いたハーフセルと比較して放電容量が高いこと、すなわち、非晶質シリコン膜へのリチウムイオンの挿入量が多いことが分かる。
上記で得られた放電カーブからセル電圧が0.05Vとなった時点での放電容量を計測した。非晶質シリコン膜の組成と放電容量の関係を、図10に示す。
図10において、横軸は、非晶質シリコン膜の組成をSi1-xTixで表したときのx値であり、縦軸は、放電容量である。図10の結果から、非晶質シリコン膜の放電容量(リチウムイオンの挿入量)は、xが少ない方が高い傾向にあることが分かる。
非晶質シリコン膜の組成と、図6に示した非晶質シリコン膜の抵抗率と、図10に示した放電容量との関係を図11に示す。なお、図11では、x=0.2の非晶質シリコン膜の抵抗率と、x=1のチタン膜の抵抗率と放電容量のデータを加えた。
図11において、横軸は、非晶質シリコン膜の組成をSi1-xTixで表したときのx値である。非晶質シリコン膜は、抵抗率が低く、かつ放電容量が高いことが好ましい。この両者のバランスを考慮すると、チタンを含む非晶質シリコン膜は、非晶質シリコン膜の組成をSi1-xTixで表したときのx値が、0.01≦x≦0.15を満足すること、すなわち、チタンの含有量が1原子%以上15原子%以下の範囲内にあることが好ましいと考えられる。
図3の(a)に示すように、基板10(ガラス基板)の上に、正極集電体層21として、Pt/Ti積層膜をDCスパッタ法(パワー:1kW、0.8Pa、アルゴンガス使用)により成膜した。次いで、図3の(b)に示すように、正極集電体層21の表面の一部に、正極活物質層22としてLiCoO2膜(厚さ:3μm)をRF+DC重畳スパッタ法(パワー:RF/DC=2/2kW、3.0Pa、アルゴンガス使用)により成膜して、正極20を形成した。次いで、図3の(c)に示すように、正極20を、大気圧下、窒素/酸素の雰囲気で、580℃の条件で加熱して、アニール処理を行った。
全固体型薄膜リチウム電池に対して、電池電圧が4.1Vに達するまでは0.3mAの電流で定電流充電(CC充電)を行い、電池電圧が4.1Vに達した後は電流が0.03mAになるまで定電流定電圧充電(CCCV充電)を行った。次いで、0.3mAの電流で、電池電圧が2.5Vとなるまで定電流放電(CC放電)を行った。なお、測定は室温で行った。1サイクル目の放電カーブを、図12に示す。
放電時の電流値を変えて、定電流放電(CC放電)を行って、電池電圧が4.1Vから2.5Vとなるまでの放電容量を測定した。なお、測定は室温で行った。その結果を、図13に示す。
充放電サイクル後の全固体型薄膜リチウム電池に対して、交流インピーダンス法により電気化学インピーダンス(EIS)を測定した。測定は25℃で行った。その結果を、図14に示す。
図15に示すように、R1で示される第1の半円は、正極(LiCoO2)、固体電解質層(LiPON)、負極(a-Si1-xTix)のバルクのインピーダンスの和を表し、R2で示される第2の半円は、正極と固体電解質層および固体電解質層と負極の界面のインピーダンスの和を表す。従って、図14の結果から、a-Si1-xTix:x=0.033、x=0.115の非晶質シリコン膜を用いた全固体型薄膜リチウム電池は、x=0の非晶質シリコン膜を用いた全固体型薄膜リチウム電池と比較して、負極(a-Si1-xTix)のバルクのインピーダンスが低いだけでなく、固体電解質層と負極の界面のインピーダンスも低いと考えられる。
前記充放電サイクル評価にて、100サイクルまで充放電サイクルを行った。1サイクル目の放電容量を100%として、各サイクルの放電容量維持率を算出した。その結果を図17に示す。
全固体型薄膜リチウム電池を250℃に設定したオーブン内で、0.5時間保存した。その後、全固体型薄膜リチウム電池をオーブンから取り出して、室温となるまで放冷した。放冷後の全固体型薄膜リチウム電池を、前記充放電サイクル評価と同じ条件で充電した後、放電した。なお、測定は室温で行った。得られた放電カーブを、図12に示した1サイクル目の放電カーブと共に、図18に示す。
(1)コスパッタ法によって、チタンを含む非晶質シリコン膜を成膜することが可能である。
(2)チタンを含む非晶質シリコン膜は、負極活物質層の充放電容量と抵抗率の観点から1原子%以上15原子%以下の範囲内にあることが好ましい。
(3)チタンを含む非晶質シリコン膜は、負極活物質層のバルクの抵抗を減少させるだけでなく、固体電解質層と負極活物質層との界面の抵抗を減少させる効果がある。
(4)チタンを含む非晶質シリコン膜を負極活物質層として用いた全固体型薄膜リチウム電池は、出力特性が向上すると共に、良好なサイクル特性と耐熱特性を示す。
Claims (4)
- 負極集電体層と、前記負極集電体層の表面に形成されている負極活物質層とを有し、
前記負極活物質層は、非晶質シリコンと、前記非晶質シリコンに分散されているリチウムに対して不活性な導電性物質とを含み、
前記負極活物質層の相対密度が70%以上90%以下の範囲内にあることを特徴とする全固体型薄膜リチウム電池用負極。 - 前記導電性物質が、銅、鉄、ニッケル、チタンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属であることを特徴とする請求項1に記載の全固体型薄膜リチウム電池用負極。
- 前記導電性物質がチタンであって、前記負極活物質層の前記チタンの含有量が1原子%以上15原子%以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の全固体型薄膜リチウム電池用負極。
- 正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置される固体電解質層と、を備え、
前記負極が、請求項1~3のいずれか1項に記載の全固体型薄膜リチウム電池用負極であることを特徴とする全固体型薄膜リチウム電池。
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