以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。なお、本実施の形態において、「回転数」とは、単位時間当たりの回転数、すなわち回転速度に相当している。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるヒートポンプ給湯装置30を示す図である。図1に示すように、本実施の形態のヒートポンプ給湯装置30は、ヒートポンプユニット100と、貯湯タンク11を有する貯湯ユニット200とを備えた貯湯式給湯装置に相当する。ヒートポンプユニット100は、ヒートポンプを用いて水を加熱する加熱手段に相当する。ヒートポンプユニット100及び貯湯ユニット200との間は、水が通る配管16a及び配管16kと、電気配線(図示省略)とを介して接続されている。
ヒートポンプユニット100は、圧縮機1、水冷媒熱交換器2、膨張弁3及び空気熱交換器4等の機器を有しており、電力により作動する。これらの機器は、配管等により環状に接続され、圧縮機1により冷媒を循環させる冷媒回路101を構成している。冷媒回路101は、水を加熱するヒートポンプサイクルに相当する。水冷媒熱交換器2は、水と冷媒との間で熱を交換するもので、水の流入口及び流出口を有している。以下の説明では、ヒートポンプユニット100から流出する湯水を「加熱湯」と呼ぶ場合がある。水冷媒熱交換器2は、流入口から流入した水を冷媒により加熱し、流出口から加熱湯を流出させる。また、空気熱交換器4は、空気と冷媒との間で熱を交換する。ヒートポンプユニット100は、外気を空気熱交換器4へ送風するファン5をさらに備えている。なお、以下の説明において、単に「水」または「湯」と記載した場合には、低温の水から、高温の湯まで、あらゆる温度の液体の水が含まれうる。
貯湯ユニット200内には、貯湯タンク11のほか、循環ポンプ6a、追焚き用ポンプ6b、切替弁7、切替弁8、切替弁9、及び混合弁10などが備えられている。循環ポンプ6aは、後述の貯湯回路201及び追焚き回路202などに水を循環させるためのポンプである。循環ポンプ6aは、貯湯回路201及び追焚き回路202の一部を構成している。追焚き用ポンプ6bは、浴槽(図示省略)と、追焚き熱交換器12との間で浴槽水を循環させるためのポンプである。切替弁7は、例えば、Aポート、Bポート、Cポート、及びDポートの4つのポートを有する電磁駆動式の四方弁等により構成されている。切替弁7は、水冷媒熱交換器2の流出口から流出する加熱湯の流路を、切替弁8と、貯湯タンク11の下部にある低温水戻し口11eとに切り替える切替機構を構成している。また、切替弁7は、貯湯タンク11の上部にある高温水取出し口11aから流出した湯を低温水戻し口11eに戻す切替機構を構成している。
切替弁8は、例えば、Eポート、Fポート、Gポート、及びHポートの4つのポートを有する電磁駆動式の四方弁等により構成されている。切替弁8は、Eポートから流入する水の流路を、貯湯タンク11の中間高さ部分にある追焚き戻し口11cと、貯湯タンク11の上部にある高温水流出入口11bと、追焚き熱交換器12とに切り替える切替機構を構成している。切替弁9は、例えば、Iポート、Jポート、及びKポートの3つのポートを有する電磁駆動式の三方弁等により構成されている。切替弁9は、貯湯タンク11の下部にある取出し口11fから流出した水が循環ポンプ6aを通過して水冷媒熱交換器2へ流入する流路状態と、追焚き熱交換器12から流出した水が循環ポンプ6aを通過して水冷媒熱交換器2へ流入する流路状態とを切り替える切替機構を構成している。
混合弁10は、Lポート、Mポート、及びNポートの3つのポートを有している。混合弁10は、貯湯タンク11の中間高さ部分にある中温水取出し口11dから取り出される中温水と、水源に接続された給水端からの低温水とを混合、または中温水と低温水との切替えをし、給湯混合部15へ流出させる。貯湯タンク11は、加熱湯を貯留する。貯湯タンク11は、前述した高温水取出し口11a、高温水流出入口11b、追焚き戻し口11c、中温水取出し口11d、低温水戻し口11e、及び取出し口11fのほか、貯湯タンク11の下部に位置する給水口11gを備えている。給水口11gは、配管16pを介して給水端に接続されている。給水端から供給される低温水が配管16pを通って、貯湯タンク11内に流入する。
水冷媒熱交換器2の流出口は、配管16aを介して切替弁7のAポートに接続されている。切替弁7のBポートは、配管16bを介して切替弁8のEポートに接続されている。切替弁8のFポートは、配管16c及び配管16eを介して追焚き熱交換器12の一次側流入口に接続されている。追焚き熱交換器12の一次側の流出口は、配管16fを介して切替弁9のJポートに接続されている。また、追焚き熱交換器12の一次側の流出口は、配管16gを介して、中温水取出し口11dと混合弁10のLポートとの間をつなぐ流路に接続されている。切替弁9のIポートは、配管16hを介して取出し口11fに接続されている。切替弁9のKポートは、配管16jを介して循環ポンプ6aの吸込口に接続されている。循環ポンプ6aの吐出口は、配管16lを介して切替弁7のCポートに接続されている。配管16kは、配管16lの途中に設けられた分岐部と、水冷媒熱交換器2の流入口との間をつないでいる。切替弁7のDポートは、配管16mを介して低温水戻し口11eに接続されている。切替弁8のHポートは、配管16n及び16qを介して高温水流出入口11bに接続されている。切替弁8のGポートは、配管16oを介して追焚き戻し口11cに接続されている。
循環ポンプ6a、貯湯タンク11、配管16a,16b,16h,16j,16k,16n,16q、及び切替弁7,8,9は、水冷媒熱交換器2から流出する加熱湯を貯湯タンク11内に貯湯する貯湯回路201を構成している。
循環ポンプ6a、追焚き熱交換器12、配管16b,16d,16e,16f,16j,16l,16o、及び切替弁7,8,9は、追焚き熱交換器12により負荷側の加熱対象水を加熱する追焚き回路202を構成している。
追焚き熱交換器12により加熱される加熱対象水は、前述した浴槽水に限定されるものではなく、例えば、床暖房用の循環水であってもよい。循環ポンプ6aは、必ずしも貯湯ユニット200に設置する必要はなく、ヒートポンプユニット100側に搭載してもよい。また、高温水流出入口11b、中温水取出し口11d、配管16q、混合弁10、及び給湯混合部15は、貯湯タンク11から温水を取り出して、浴槽あるいは給湯端に給湯する給湯回路203を構成している。
本実施の形態では、ヒートポンプユニット100の冷媒回路101の加熱能力を調整可能である。以下の説明では、ヒートポンプユニット100の冷媒回路101の加熱能力を単に「加熱能力」と呼ぶ場合がある。加熱能力は、ヒートポンプユニット100が時間あたりに水に与える熱量に相当する。加熱能力の単位は、例えばkW(キロワット)である。圧縮機1は、例えばインバータ制御式のDCブラシレスモータ等を備えた駆動装置(図示省略)により駆動される。この場合には、当該駆動装置により圧縮機1の回転数を調整することで、圧縮機1から吐出する冷媒の圧力及び温度を変化させたり、加熱能力を変化させたりすることができる。ただし、本開示のヒートポンプ給湯装置30においては、そのような駆動装置を用いなくてもよく、例えば、ヒートポンプユニット100に複数台の圧縮機を搭載し、そのうちで稼働する圧縮機の台数を切り替えることで、吐出する冷媒の圧力及び温度、あるいは加熱能力を変化させる構成としてもよい。
また、圧縮機1には、他の構造物を付加してもよい。そのような他の構造物としては、例えば、その吸い込み側に配置されて冷媒音を低減させるサクションマフラーのような容器と、圧縮機1の吐出側に流出した潤滑油を分離回収する油分離装置とが挙げられる。ヒートポンプユニット100の冷媒としては、例えば二酸化炭素、R410A、プロパン、プロピレンなどのように、高温出湯が可能な冷媒を用いるのが好ましいが、本開示のヒートポンプ給湯装置30においては、これらの冷媒に限定されるものではない。
次に、ヒートポンプ給湯装置30の制御系統について説明する。以下の説明では、水冷媒熱交換器2から流出する加熱湯の温度を「出湯温度」と称する。ヒートポンプユニット100は、水冷媒熱交換器2に流入する水の温度を検出する入水温度センサ13aと、出湯温度を検出する出湯温度センサ13bと、ヒートポンプユニット100の周囲の外気温度を検出する外気温度センサ13cとを備えている。出湯温度センサ13bは、出湯温度検出手段に相当するものであり、図示の例では水冷媒熱交換器2の流出口の近傍に配置されている。また、冷媒回路101は、圧縮機1から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ13dと、圧縮機1に吸い込まれる冷媒の温度を検出する吸込温度センサ13eと、空気熱交換器4の入口もしくは中間部となる位置で冷媒の温度を検出する蒸発温度センサ13fとを備えている。貯湯ユニット200には、複数の貯湯温度センサ13g,13h,13i,13jが設けられている。貯湯温度センサ13g,13h,13i,13jは、互いに異なる高さの位置において貯湯タンク11に設置され、それぞれの設置場所で貯湯タンク11内の水温を検出する。
本実施の形態のヒートポンプ給湯装置30は、ヒートポンプユニット100に搭載された制御装置14と、貯湯ユニット200に搭載された制御装置50を備えている。制御装置14及び制御装置50のそれぞれは、例えばプロセッサ及びメモリを備えた制御手段に相当している。制御装置14と制御装置50とは、双方向に通信可能に接続されている。本実施の形態では、制御装置14と制御装置50とが連携して、沸上げ運転を含むヒートポンプ給湯装置30の各種の動作を制御する。沸上げ運転では、ヒートポンプユニット100及び循環ポンプ6aが駆動され、循環ポンプ6aにより水がヒートポンプユニット100へ送られ、ヒートポンプユニット100が水を加熱する。本実施の形態における沸上げ運転では、ヒートポンプユニット100により加熱された湯は、貯湯タンク11に蓄積される。
以下では、説明の便宜上、制御装置14及び制御装置50を総称して単に「制御装置50」と呼ぶ。すなわち、以下の説明では、制御装置50が処理を実行するものとして記載するが、いずれの処理についても、制御装置14が単独で実行してもよいし、制御装置50が単独で実行してもよいし、制御装置14と制御装置50とが連携して実行してもよい。また、制御装置14及び制御装置50に代えて例えばリモコン51が処理を実行してもよい。その場合にはリモコン51が制御手段に相当する。また、本開示におけるヒートポンプ給湯装置30の制御手段は、本実施の形態のように複数の制御装置が連携する構成に限らず、単一の制御装置によって構成されるものでもよい。
制御装置50と、リモコン51との間は、有線通信または無線通信により、双方向に通信可能である。制御装置50とリモコン51とがネットワークを介して通信可能でもよい。リモコン51は、ユーザインターフェースの例である。リモコン51は、情報を表示する表示部51aと、使用者が操作する操作部51bとを有する。リモコン51は表示部51a及び操作部51bの両方の機能を有するタッチスクリーンを備えてもよい。使用者等の人間は、リモコン51を操作することで、ヒートポンプ給湯装置30を遠隔操作したり、各種の設定などを行ったりすることが可能である。表示部51aは、使用者等の人間に情報を報知あるいは通知する報知手段あるいは通知手段としての機能を有する。本実施の形態におけるリモコン51は、表示部51aを報知手段あるいは通知手段として備えるが、変形例として、例えば音声案内装置のような他の報知手段あるいは通知手段を備えてもよい。リモコン51は、例えば台所、リビング、浴室などの壁に設置されたものでもよい。または、例えばスマートフォンのような携帯情報端末がリモコン51のようなユーザインターフェースとしての機能を有するように構成してもよい。複数のリモコン51が制御装置50に対して通信可能でもよい。
制御装置50には、ヒートポンプ給湯装置30が備える各種のセンサの出力と、リモコン51に対する使用者の操作内容の情報などが入力される。制御装置50は、これらの入力情報に基づいてヒートポンプユニット100及び貯湯ユニット200の動作をそれぞれ制御する。例えば、制御装置50は、圧縮機1、循環ポンプ6a、及び追焚き用ポンプ6bの運転状態と、膨張弁3の開度と、切替弁7、切替弁8、切替弁9、及び混合弁10の流路方向あるいは切り替え位置等を制御する。また、制御装置50は、沸上げ運転、追焚き運転等を実行する。制御装置50は、沸上げ運転中に、出湯温度の制御と、冷媒回路101の加熱能力の制御とを実行する。
制御装置50は、外部機器(図示省略)とさらに通信可能に接続されていてもよい。当該外部機器は、例えばHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)コントローラでもよい。
本実施の形態における制御装置50は、給湯に使用された熱量(以下、「給湯使用熱量」と称する)を算出する給湯熱量算出手段52を備える。給湯熱量算出手段52は、給水温度センサ13kが検出する給水温度と、給湯温度センサ13lが検出する給湯温度と、ふろ給湯温度センサ13mが検出する給湯温度と、給湯流量センサ17aが検出する給湯流量と、ふろ給湯流量センサ17bが検出する給湯流量とに基づいて、給湯使用熱量を算出する。給水温度センサ13kが検出する給水温度とは、水源から給水端へ供給された低温水の温度である。給湯温度センサ13lが検出する給湯温度とは、給湯混合部15から浴槽以外の給湯端へ供給された湯の温度である。ふろ給湯温度センサ13mが検出する給湯温度とは、給湯混合部15から浴槽へ供給された湯の温度である。給湯流量センサ17aが検出する給湯流量とは、給湯混合部15から上記給湯端へ供給された湯の流量である。ふろ給湯流量センサ17bが検出する給湯流量とは、給湯混合部15から浴槽へ供給された湯の流量である。
制御装置50は、過去所定期間(例えば過去2週間)に給湯熱量算出手段52により算出された給湯使用熱量に関するデータを記憶することにより、給湯使用熱量を学習する機能を有している。例えば、制御装置50は、過去所定期間の給湯使用熱量を統計的に処理することにより、給湯使用熱量を学習する。また、制御装置50は、一日のうちの時間毎に給湯使用熱量を学習してもよい。
本実施の形態におけるヒートポンプ給湯装置30は、深夜時間帯モードを設定可能とする設定手段を備えてもよい。例えば、使用者がリモコン51を操作することによって深夜時間帯モードを設定可能としてもよい。また、制御装置50が例えばHEMSコントローラのような外部機器からの指令を受信すると深夜時間帯モードが設定されるように構成してもよい。深夜時間帯モードは、特に電力単価の安い深夜時間帯により多くの熱量を貯湯タンク11に貯めることで電力料金を安価とするためのモードに相当する。深夜時間帯モードが設定された場合には、深夜時間帯における沸上げ運転において、制御装置50は、冷媒回路101の加熱能力を所定の最高加熱能力に設定するとともに、出湯温度が所定の最高目標温度に等しくなるように制御する。これにより、深夜時間帯に沸上げ運転を集中させるため、昼間時間帯での沸上げ運転が不要な程度の給湯使用量の場合には、ランニングコストの低減が可能となる。なお、最高目標温度は、例えば90℃でもよい。
次に、図2を参照しつつ、ヒートポンプ給湯装置30の沸上げ運転の動作について説明する。図2は、実施の形態1によるヒートポンプ給湯装置30における沸上げ運転のときの水及び冷媒の流れを示す図である。図2に示すように、沸上げ運転では、冷媒回路101及び貯湯回路201を作動させることにより、貯湯タンク11の取出し口11fから流出させた低温水を冷媒回路101により加熱し、水冷媒熱交換器2の流出口から流出する高温の加熱湯を高温水流出入口11bから貯湯タンク11内に流入させる。
沸上げ運転について、更に以下に説明する。冷媒回路101では、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒が水冷媒熱交換器2を流通する水に放熱しながら温度低下する。このとき、高圧側冷媒圧力が臨界圧以下であれば、冷媒は液化しながら放熱する。また、水冷媒熱交換器2から流出した高圧低温の冷媒は、膨張弁3を通過することにより低圧気液二相の状態に減圧される。そして、この冷媒は、空気熱交換器4内を流通しつつ外気から吸熱することにより、蒸発してガス化される。空気熱交換器4から流出した低圧冷媒は、圧縮機1に吸い込まれて循環するので、この循環により冷凍サイクルすなわちヒートポンプサイクルが形成される。
また、切替弁7により配管16aと配管16bとが相互に接続され、切替弁8により配管16bと配管16nとが相互に接続され、切替弁9により配管16hと配管16jとが相互に接続される。これにより、貯湯回路201が形成される。そして、循環ポンプ6aが作動すると、貯湯タンク11内の水は、取出し口11fから配管16h,16j,16kを通って水冷媒熱交換器2に導入される。そして、この水は、水冷媒熱交換器2内でガス冷媒により加熱され、加熱湯となって水冷媒熱交換器2から流出する。この加熱湯は、配管16a,16b,16n,16qを通過して高温水流出入口11bから貯湯タンク11内に流入する。このように、沸上げ運転が実行されると、貯湯タンク11の上部が高温水となり下部が低温水となる温度分布状態を維持しつつ、貯湯される。
次に、沸上げ運転時に制御装置50が実行する加熱湯の温度制御及び冷媒回路101の加熱能力制御について説明する。温度制御として、制御装置50は、出湯温度センサ13bにより検出される出湯温度(以下、「実出湯温度」と称する)が所定の目標出湯温度に等しくなるように、循環ポンプ6aの回転数を調整する。すなわち、制御装置50は、目標出湯温度と実出湯温度との偏差に応じて、循環ポンプ6aの回転数を制御する。この制御を以下「ポンプフィードバック制御」と称する。また、循環ポンプ6aの回転数を以下「ポンプ回転数」と称する。ポンプフィードバック制御では、一定の時間間隔で周期的にポンプ回転数を調整する処理が実行される。沸上げ運転では、目標出湯温度を所定の貯湯目標温度に設定した状態で貯湯を実行する。すなわち、目標出湯温度は、貯湯目標温度に等しい。例えば、制御装置50は、貯湯タンク11の容量との関係において、目標蓄熱量を貯湯タンク11に蓄えることができるように貯湯目標温度すなわち目標出湯温度を設定する。目標蓄熱量は、例えば、リモコン51の操作内容等に基づいて設定されるか、または過去の給湯使用量などに基づいて算出される。また、制御装置50は、貯湯目標温度すなわち目標出湯温度が、予め定められた範囲内(例えば、65~90℃)に収まるように設定する。
上記温度制御では、水冷媒熱交換器2に出入りする加熱湯の流量を制御するだけなので、温度制御により実現される出湯温度の最高値は、冷媒回路101の加熱能力に依存している。したがって、冷媒回路101には、目標出湯温度が設定範囲内の最大値(上記例では、90℃)に設定された場合でも、これを実現できるだけの加熱能力が要求される。このため、加熱能力制御では、例えば、貯湯タンク11内の残湯量すなわち残熱量、外気温度、給水温度等に基づいて上記要求を満たす加熱能力の目標値(目標加熱能力)を設定し、冷媒回路101の実際の加熱能力が目標加熱能力に等しくなるように、圧縮機1の回転数等を制御する。このように加熱能力を制御すれば、目標出湯温度の設定及び外部条件がどのように変化した場合でも、要求される出湯温度を安定的に確保することができる。加熱能力制御は、例えば、一定の時間間隔で周期的に実行される。また、圧縮機1の回転数には、耐久性の観点から上限回転数及び下限回転数が設けられている。
また、本実施形態におけるヒートポンプユニット100として、例えば冷媒の圧力が臨界圧力以上となる超臨界ヒートポンプユニットだけでなく、臨界圧力以下で作動するヒートポンプユニットを用いてもよい。この場合、冷媒としてはフロンガス、アンモニア等を用いてもよい。
出湯温度が沸点付近の高温に到達すると、水の沸騰による膨張が発生したり、水流路を形成する銅配管の酸化銅腐食が発生したりするおそれがある。このため、出湯温度が沸点付近の高温に到達することを確実に防止することが望まれる。このことに鑑みて、本実施の形態における制御装置50は、沸上げ運転のときに、ポンプ加速制御を実行可能としている。ポンプ加速制御は、実出湯温度が、目標出湯温度よりも高い上限温度に達した場合に、ポンプ回転数が所定回転数上昇するように循環ポンプ6aを加速させる制御である。当該所定回転数を以下「追加回転数」と称する。上限温度は、水の沸点よりも低い温度であり、例えば95℃でもよい。ポンプ加速制御では、制御装置50は、例えば、ポンプ回転数が、実出湯温度が上限温度に達した時点のポンプ回転数よりも追加回転数だけ高い回転数まで加速されるように、循環ポンプ6aを制御する。ポンプ加速制御が実行されると、循環ポンプ6aは、ポンプフィードバック制御よりも急速に加速されるので、水の循環流量が急上昇する。その結果、出湯温度が速やかに低下するので、出湯温度が沸点付近の高温に到達することを確実に防止することができる。
ポンプ加速制御によってポンプ回転数が追加回転数だけ上昇した場合の出湯温度の低下度合いが大きくなり、実出湯温度が目標出湯温度よりも低くなる可能性がある。例えば、目標出湯温度が90℃であり、ポンプ加速制御実行後の実出湯温度が85℃まで低下するような場合がある。そのような場合には、ポンプフィードバック制御によりポンプ回転数が低下するので、実出湯温度を上昇させて目標出湯温度に近づけることができる。その際に、実出湯温度が急激に上昇して上限温度に達し、再びポンプ加速制御が実行される可能性がある。このような出湯温度のハンチングは、貯湯回路201の圧力損失と、ポンプ加速制御における追加回転数とのバランスに起因したり、または給湯混合部15から給湯端末への給湯による貯湯回路201の圧力損失の低下に起因したりする。
ヒートポンプユニット100と貯湯ユニット200とを接続する配管16a及び配管16kは、ヒートポンプ給湯装置30が使用される住宅における設置スペースの都合により、配管長、曲がり数、配管径、高低差などが様々に異なる。このため、配管16a及び配管16kの圧力損失は、個々のヒートポンプ給湯装置30ごとに異なる。上記のような出湯温度のハンチングは、配管16a及び配管16kの圧力損失が小さい場合に顕著に発生しやすい。配管16a及び配管16kの圧力損失が小さいと、貯湯回路201の圧力損失が小さいので、ポンプ回転数の変化に対する水流量の変化が大きくなる。このため、以下のようにして、出湯温度のハンチングが発生する可能性がある。ポンプ加速制御が実行された場合の出湯温度の低下度合いが大きくなる。それゆえ、一旦ポンプ加速制御が発動すると、実出湯温度が目標出湯温度よりも大幅に低くなるため、その後にポンプフィードバック制御によりポンプ回転数を低下させるように働く。その際に、実出湯温度が目標出湯温度よりも低い状態が一定時間継続した場合には、実出湯温度が目標出湯温度に等しくなるポンプ回転数よりもずっと低い回転数にまでポンプ回転数が低下するので、実出湯温度は、目標出湯温度を超えて上昇する。その結果、ポンプフィードバック制御による出湯温度の調整が追いつかなくなり、ポンプ加速制御が再び発動する。この繰り返しにより出湯温度のハンチング現象が発生する。
上記のように、ポンプ加速制御が出湯温度のハンチングを誘発する可能性がある。ポンプフィードバック制御における制御システム定数(例えば比例ゲイン、積分時間、微分時間)、あるいは配管16a及び配管16kの圧力損失等により、出湯温度がハンチングした場合のハンチング時間周期は異なるが、本発明者らの知見によれば、ハンチング時間周期は、数分間(例えば3分間)となる事例がある。また、一旦ポンプ加速制御が実行された場合においても、2回目のポンプ加速制御に至らないケースがある。その一方で、一旦ポンプ加速制御が実行されると、数十回のポンプ加速制御の繰り返しにつながるケースがある。本発明者らの知見によれば、一旦ポンプ加速制御が実行されても、数十回のポンプ加速制御の連続によるハンチングにはつながらないケースでは、ほとんどの場合、ポンプ加速制御の実行回数は2回目までにとどまる。
以上のことから、比較的短い時間(例えば10分間)のうちにポンプ加速制御が複数回実行された場合には、出湯温度のハンチングにつながる可能性があると言える。このことに鑑みて、本実施の形態では、沸上げ運転の最中の所定時間内にポンプ加速制御が実行された回数が第一基準回数に達すると、制御装置50は、それ以降のポンプ加速制御を禁止する。これにより、その後にポンプ加速制御が繰り返し実行されることによって出湯温度のハンチングが発生することを確実に防止できる。
上記所定時間は、例えば10分間としてもよい。第一基準回数は、2回以上が好ましい。第一基準回数は、例えば3回としてもよいし、2回としてもよいし、4回としてもよい。沸上げ運転の最中に、制御装置50は、上記所定時間だけ前の時刻から現在までの間に実行されたポンプ加速制御の回数(以下、「ポンプ加速制御実行回数」と称する)をカウントし、ポンプ加速制御実行回数が第一基準回数に達すると、それ以降のポンプ加速制御を禁止する。
制御装置50は、沸上げ運転の最中にポンプ加速制御を禁止した場合に、当該沸上げ運転が終了すると、ポンプ加速制御の禁止を解除してもよい。すなわち、制御装置50は、当該沸上げ運転の次回の沸上げ運転では、ポンプ加速制御の禁止を解除し、ポンプ加速制御を実行可能としてもよい。これにより、次回の沸上げ運転のときには、ポンプ加速制御を実行可能となるので、出湯温度が沸点付近の高温に到達することを確実に防止できる。
ヒートポンプ給湯装置30は、ポンプ加速制御を禁止することを事前に設定可能とする設定手段を備えていてもよい。例えば、リモコン51等の外部機器を操作することにより、ポンプ加速制御を禁止し、沸上げ運転のときにポンプ加速制御を実行しないようにすることを事前に設定できるように構成してもよい。例えば、ヒートポンプ給湯装置30の性能を測定するための能力試験において、ポンプ加速制御に起因した出湯温度のハンチングが万一発生すると、正常なデータの取得ができないという不都合がある。そのような場合に、ポンプ加速制御を禁止することを事前に設定することで、出湯温度のハンチングが発生することをより確実に防止できる。
以下の説明では、沸上げ運転の最中にポンプ加速制御が禁止された状態を「ポンプ加速制御の禁止状態」または単に「禁止状態」と呼び、ポンプ加速制御が禁止される前の状態を「ポンプ加速制御の禁止前状態」または単に「禁止前状態」と呼ぶ場合がある。
出湯温度のハンチングは、ポンプ回転数の変化に対する水流量の変動量が大きい場合に発生しやすい。このため、貯湯回路201に流れる水流量が大きいときには、出湯温度のハンチングは発生しにくい。貯湯回路201を流れる水流量が大きいと、ポンプ回転数の変化に対する水流量の変動の割合が小さくなるためである。このことに鑑みて、以下のようにしてもよい。
制御装置50は、ポンプ加速制御が禁止されると、目標出湯温度を、禁止前状態の目標出湯温度よりも低くしてもよい。例えば、制御装置50は、禁止状態のときの目標出湯温度を、禁止前状態の目標出湯温度よりも5℃低い温度にしてもよい。ヒートポンプユニット100で生成される熱量が一定であれば、目標出湯温度を下げることで、貯湯回路201に流れる水流量が増加するので、出湯温度のハンチングが発生することをより確実に防止できる。
また、制御装置50は、ポンプ加速制御の禁止状態に入る前に、目標出湯温度を低下させる処理を実施してもよい。例えば、制御装置50は、ポンプ加速制御実行回数が第二基準回数に達すると、目標出湯温度を、ポンプ加速制御実行回数が第二基準回数に達する前の目標出湯温度よりも低い値に変更してもよい。第二基準回数は、第一基準回数よりも小さい値である。例えば、第一基準回数が3回である場合には、2回または1回を第二基準回数としてもよい。上記のようにすることで、出湯温度のハンチングが発生することをさらに確実に防止できる。
制御装置50は、所定の最低回転数から所定の最高回転数までの範囲でポンプ回転数を調整する。制御装置50は、ポンプ加速制御が禁止されると、最低回転数を、禁止前状態の最低回転数よりも高くしてもよい。例えば、制御装置50は、禁止状態のときの最低回転数を、禁止前状態の最低回転数よりも200rpm高い値にしてもよい。最低回転数を上げることで、貯湯回路201に流れる水流量が小さくなることを抑制できるので、出湯温度のハンチングが発生することをより確実に防止できる。
また、制御装置50は、ポンプ加速制御の禁止状態に入る前に、最低回転数を上げる処理を実施してもよい。例えば、制御装置50は、ポンプ加速制御実行回数が第二基準回数に達すると、最低回転数を、ポンプ加速制御実行回数が第二基準回数に達する前の最低回転数よりも高い値に変更してもよい。これにより、出湯温度のハンチングが発生することをさらに確実に防止できる。
ポンプフィードバック制御において、制御装置50は、ある所定の時間間隔毎に目標出湯温度と実出湯温度との差を取得し、その差に比例ゲインを乗じた値をその時点のポンプ回転数に加算または減算することにより、ポンプ回転数を調整する。以下、ポンプフィードバック制御における比例ゲインを単に「比例ゲイン」と称する。比例ゲインの値が大きいと、目標出湯温度と実出湯温度の差に対するポンプ回転数の変動が大きく、実出湯温度が目標出湯温度に達するまでの時間が短いという利点がある。その一方で、比例ゲインの値が大きいと、ポンプ回転数の変動の感度が高いため、ポンプ回転数のハンチング、さらには出湯温度のハンチングが起こる可能性が増加する傾向がある。これに対し、比例ゲインの値が小さいと、実出湯温度が目標出湯温度に達するまでの時間は延びるが、目標出湯温度と実出湯温度の差に対するポンプ回転数の変動が小さく、ポンプ回転数のハンチング、さらには出湯温度のハンチングが起こりにくい。これらの事項に鑑みて、以下のようにしてもよい。
制御装置50は、禁止状態のときの比例ゲインを、禁止前状態の比例ゲインよりも小さくしてもよい。すなわち、制御装置50は、ポンプ加速制御が禁止されると、比例ゲインを、禁止前状態の比例ゲインよりも小さい値に変更してもよい。これにより、出湯温度のハンチングが発生することをより確実に防止できる。
また、制御装置50は、ポンプ加速制御の禁止状態に入る前に、比例ゲインを小さくする処理を実施してもよい。例えば、制御装置50は、ポンプ加速制御実行回数が第二基準回数に達すると、比例ゲインを、ポンプ加速制御実行回数が第二基準回数に達する前の比例ゲインよりも小さい値に変更してもよい。これにより、出湯温度のハンチングが発生することをさらに確実に防止できる。
ヒートポンプ給湯装置30は、沸上げ運転のときに水が循環する循環経路となる貯湯回路201の圧力損失を変化させる圧力損失可変手段を備えていてもよい。例えば、切替弁7、切替弁8、及び切替弁9のうちの少なくとも一つにおいて、弁の内部にある弁体の回転角度を調整することにより、弁の内部の流路断面積を縮小させることで、貯湯回路201の圧力損失を増加可能となるように構成してもよい。
圧力損失可変手段は、貯湯回路201の経路を変更することによって貯湯回路201の圧力損失を変化させてもよい。例えば、次のように貯湯回路201の経路を変更してもよい。配管16hと配管16eとを接続するバイパス配管(図示省略)と、そのバイパス配管と配管16eとの接続点に位置する流路切替弁(図示省略)とを設ける。この流路切替弁は、上記バイパス配管からの水が追焚き熱交換器12へ流入するように流路を切り替え可能である。切替弁9のJポートとKポートとを連通させる。貯湯タンク11内の水は、取出し口11fから、上記バイパス配管、上記流路切替弁、追焚き熱交換器12、配管16f、及び切替弁9を通って配管16jに流入し、水冷媒熱交換器2へ送られる。このように、追焚き熱交換器12を経由するように貯湯回路201の経路を変更することにより、貯湯回路201の圧力損失を増加させることができる。
制御装置50は、ポンプ加速制御が禁止されると、貯湯回路201の圧力損失が禁止前状態の圧力損失よりも大きくなるように、圧力損失可変手段を作動させてもよい。貯湯回路201の圧力損失が増加すると、ポンプ回転数の変化に対する水流量の変動量が縮小するので、出湯温度のハンチングが起こりにくくなる。このため、貯湯回路201の圧力損失を増加させることで、出湯温度のハンチングが発生することをより確実に防止できる。
また、制御装置50は、ポンプ加速制御の禁止状態に入る前に、貯湯回路201の圧力損失を増加させる処理を実施してもよい。例えば、制御装置50は、ポンプ加速制御実行回数が第二基準回数に達すると、貯湯回路201の圧力損失が、ポンプ加速制御実行回数が第二基準回数に達する前の圧力損失よりも大きくなるように、圧力損失可変手段を作動させてもよい。これにより、出湯温度のハンチングが発生することをさらに確実に防止できる。
ヒートポンプ給湯装置30は、出湯温度が上限温度に達している状態が解消されない場合に異常を報知する報知手段を備えていてもよい。当該異常を以下「高温異常」と称する。例えば、リモコン51を報知手段として用いてもよい。例えば、ポンプ加速制御が発動しても出湯温度が上限温度以下にならないときには、ヒートポンプユニット100が制御不能な状態であるとして、高温異常を示すエラーをリモコン51等に表示してもよい。
また、報知手段は、ポンプ加速制御が禁止されている場合に高温異常を報知するときの内容を、ポンプ加速制御が禁止されていない場合に高温異常を報知するときの内容とは異なるものにしてもよい。これにより、以下の効果が得られる。
ポンプ加速制御の禁止状態における高温異常の発生は、制御機器の異常に起因している可能性が高い。これに対し、ポンプ加速制御の禁止前状態における高温異常の発生は、水冷媒熱交換器2内の水流路が、炭酸カルシウムを主成分とするスケールによって詰まったことに起因している可能性が高い。このため、高温異常が発生した場合に、禁止状態であるか禁止前状態であるかによって、高温異常の原因が異なる可能性があるので、修理サービスの対応内容が異なる可能性がある。そこで、禁止状態における高温異常と、禁止前状態における高温異常とで、例えばエラー表示の内容を異ならせることにより、修理サービスをより適切に提供する上で有利になる。
ヒートポンプ給湯装置30は、ポンプ加速制御が実施されたことを通知する通知手段を備えていてもよい。例えば、リモコン51を通知手段として用いてもよい。ポンプ加速制御の発動は、炭酸カルシウムを主成分とするスケールの詰まり、あるいは制御機器の異常があることを示唆している可能性がある。このため、ポンプ加速制御が実施された場合には、ヒートポンプ給湯装置30の点検を受けることが望ましい。そこで、ポンプ加速制御の発動の有無をリモコン51等に表示することにより、ヒートポンプ給湯装置30が運転不可能な状態になるよりも前に、使用者にヒートポンプ給湯装置30の状態を事前に知らせることができる。