「第1実施形態」
図1は、第1実施形態の固定リング1の全体構成図である。固定リング1は、当該固定リング1自体を後述する回転シャフト7(図3参照)に固定すると同時に、後述するレゾルバロータ6を回転シャフト7(図3参照)に固定することが可能に構成されている。図1に示すように、固定リング1は、環状のリング本体3を具備し、当該リング本体3は、複数の突起部4と、複数の凸部5と、を備えている。
リング本体3は、環状の第1面3a及び第2面3bと、環状の第3面3c及び第4面3dと、を有している。第1面3a及び第2面3bは、互いに平行に対向して配置されている。第3面3c及び第4面3dは、第1面3aと第2面3bとの間に、当該第1面3a及び第2面3bと直交する方向に配置されている。
ここで、第3面3cに接する内接円の直径をD1(図4参照)とし、第4面3dに接する外接円の直径をD2(図4参照)とすると、直径D1は直径D2よりも小さく設定されている。第3面3cに接する内接円とは、例えば、後述する複数の突起部4の突出端(先端)相互に内接する仮想円を指す。また、第4面3dに接する外接円とは、例えば、第4面3dが円形を成している場合、当該円形の第4面3dに外接する仮想円を指す。これら内接円及び外接円は、互いに同一の中心を有している。ここで、当該中心を中心線2として規定すると、リング本体3は、中心線2周りに周方向に連続した形状を成している。
更に、リング本体3において、第1面3aと第2面3bとの間隔をW1(図2参照)とし、第3面3cと第4面3dとの間隔をW2(図2参照)とすると、間隔W1は間隔W2よりも狭く設定されている。間隔W1は、例えば、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)において、第1面3aと第2面3bとの間の距離(幅)を指す。また、間隔W2とは、例えば、中心線2と直交する方向(上記した内接円及び外接円の半径方向)において、第3面3cと第4面3dとの間の距離(幅)を指す。
これにより、リング本体3は、中心線2周りに周方向に連続した中空の薄板形状を成して構成されている。このようなリング本体3は、後述する回転シャフト7の外側に嵌めることができるように構成されている。かかる構成を実現するために、リング本体3には、複数の突起部4と、複数の凸部5と、が一体的に設けられている。
図1では一例として、突起部4及び凸部5は、互いに同数(例えば、6つ)適用されている。突起部4と凸部5とは、リング本体3の周方向に1つずつ交互に設けられている。突起部4及び凸部5は、リング本体3の周方向に等間隔で配置されている。
突起部4は、それぞれ、第1面3a及び第2面3bの平面視(図4参照)において、第3面3cよりも突出して構成されている。図1の例において、突起部4は、リング本体3の第3面3cから中心線2と直交する方向(上記した内接円及び外接円の半径方向)に向かって突出している。この場合、突起部4は、互いに同一の形状で同一の大きさを有している。
凸部5は、それぞれ、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)において、同じ方向に、リング本体3の一部を湾曲させて構成されている。図1の例において、凸部5は、第1面3aと第2面3bとを平行に対向させつつ、第1面3aを連続的に窪ませる方向(換言すると、第2面3bを連続的に膨らませる方向)に湾曲している。
凸部5は、互いに同一の形状で同一の大きさを有している。ここで、第1面3a及び第2面3bの平面視(図4参照)において、凸部5の第4面3d側の長さをL1とし、凸部5の第3面3c側の長さをL2とすると、長さL1は長さL2よりも長くなっている。かくして、凸部5は、弾性変形可能に構成されている。
図2は、突起部4及び凸部5の配置構成図である。図2に示すように、突起部4は、矩形状の立体的輪郭を有している。突起部4の突出端(先端)には、矩形状の第1接触端4tが構成されている。第1接触端4tは、リング本体3(固定リング1)を後述する回転シャフト7の外側に嵌めた際に、回転シャフト7の外周面7sに接触するように構成されている。
図2では一例として、突起部4は、第1面3a及び第2面3bの一部を第3面3cから矩形状に突出させると共に、第3面3cの一部を矩形状に突出させて構成されている。第3面3cから矩形状に突出させた第1面3a及び第2面3bは、互いに平行に対向して配置されている。また、第3面3cは、第1面3a及び第2面3bの突出部分を囲むように突出している。上記した第1接触端4tは、第3面3cの一部を矩形状に突出させた突出端(先端)に構成されている。
ここで、突起部4の第1接触端4tと、回転シャフト7の外周面7sとの間の接触状態には、例えば、線接触、点接触、面接触などが含まれる。この場合、突起部4の立体的輪郭は、矩形状に限定されることは無く、これ以外の形状であってもよい。例えば、第1接触端4tに向けて先細りとなった四角錐台形状や円錐台形状などを、突起部4の立体的輪郭として適用してもよい。なお、突起部4の形状(輪郭)や大きさは、例えば、固定リング1の用途や使用目的に応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。
凸部5は、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)で見て、リング本体3の一部を同じ方向に湾曲させた立体的輪郭を有している。図2の例において、凸部5は、中心線2と直交する方向(上記した内接円及び外接円の半径方向)において、第3面3c側から第4面3d側に向けて曲率が連続的に小さくなっている。かくして、第1面3a及び第2面3bの平面視(図4参照)において、凸部5の第4面3d側の長さL1は、凸部5の第3面3c側の長さL2よりも長くなっている。
リング本体3の一部を湾曲させた凸部5は、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)で見て、最も突出した部分を有し、この部分に曲面状の第2接触端5tが設けられている。図2の例において、第2接触端5tは、凸部5の輪郭を構成する第2面3bに構成されている。第2接触端5tは、リング本体3(固定リング1)を後述する回転シャフト7の外側に嵌めた際に、後述するレゾルバロータ6(図3参照)の表面6dに接触するように構成されている。この場合、凸部5の第2接触端5tと、レゾルバロータ6の表面6dとの間の接触状態としては、上記した凸部5の曲率の程度に応じて、例えば、線接触、点接触、面接触などが想定される。
図3は、上記した固定リング1によって、レゾルバロータ6を回転電機の回転シャフト7に固定した状態を示す図である。回転電機の種類には、インナーロータ式、或いは、アウターロータ式の双方が含まれる。インナーロータ式回転電機は、ステータの内側にロータが回転可能に配置される。一方、アウターロータ式回転電機は、ステータの外側にロータが回転可能に配置される。
上記いずれの方式においても、図3に示された回転シャフト7は、ロータと一体となって回転するように構成されている。更に、固定リング1によって回転シャフト7に固定されたレゾルバロータ6も、ロータと一体となって回転する。これにより、レゾルバロータ6は、ステータに設けられたレゾルバステータと協働して、回転シャフト7の回転角度を検出する回転角センサとして構成されている。
レゾルバロータ6は、環状の鋼板6p(図5参照)を、複数枚積層させて構成されている。鋼板6pは、同一の形状及び寸法を有する中空の薄板形状を成している。かくして、内側に真円形の貫通孔6hが形成された環状のレゾルバロータ6が実現される。貫通孔6hの差渡し径(内径)は、レゾルバロータ6を回転シャフト7の外側に隙間嵌めすることができるように設定されている。
更に、レゾルバロータ6は、周方向に連続した非真円形の外周面6sを有している。レゾルバロータ6の外周面6sには、膨張部6aと収縮部6bとが複数設けられている。膨張部6a及び収縮部6bは、周方向に1つずつ交互に等間隔で配置されている。図3の例において、膨張部6aは、外周面6sの一部を円弧形状に膨らませて構成されている。収縮部6bは、隣り合う2つの膨張部6aの相互間に配置され、外周面6sの一部を窪ませて構成されている。
このため、回転シャフト7(ロータ)の回転中において、レゾルバロータ6とレゾルバステータとの間のギャップが一定タイミングで変化する。このとき、ギャップの変化に基づいて、回転電機(回転シャフト7)の回転角度が検出される。例えば、回転中に、レゾルバステータに巻回されたコイルに電流を流して磁界を形成する。磁界中をレゾルバロータ6が回転する。このとき、磁束の量が場所ごとに変化する。この磁束の変化状態を検出する。これにより、回転電機(回転シャフト7)の回転角度が検出される。
図4は、第1面3a平面視における固定リング1とレゾルバロータ6の配置構成図である。図4では一例として、固定リング1(リング本体3)は、第4面3dが円形を成している。なお、固定リング1(リング本体3)の第4面3dの形状は、円形に限定されることは無く、これ以外の形状(例えば、楕円形状、多角形形状)であってもよい。
図4に示すように、固定リング1による固定状態において、当該固定リング1(リング本体3)は、その外周面3bがレゾルバロータ6の外周面6sよりも内側に位置付けられるように設計されている。これにより、上記した回転角度の検出時における回転角センサの磁気効率に影響を与えること無く、レゾルバロータ6を回転シャフト7に固定することが可能となる。
また、固定リング1(リング本体3)は、回転シャフト7の外側に締り嵌めすることが可能に設計されている。この場合、固定リング1による固定状態において、当該固定リング1(リング本体3)は、突起部4(第1接触端4t)のみが回転シャフト7の外周面7sに接触する。換言すると、突起部4(第1接触端4t)以外の固定リング1(リング本体3)の第3面3cは、回転シャフト7の外周面7sと接触することは無い。
更に、第1面3a及び第2面3bの平面視において、突起部4は、第3面3cよりも突出している。第3面3cに接する内接円の直径D1は、第4面3dに接する外接円の直径D2よりも小さく設定されている。凸部5の第4面3d側の長さL1は、凸部5の第3面3c側の長さL2よりも長くなっている。
図5は、固定リング1によってレゾルバロータ6を、回転シャフト7に固定するプロセスの模式図である。図5に示すように、レゾルバロータ6の貫通孔6hを回転シャフト7の外側に隙間嵌めする。このとき、レゾルバロータ6の裏面6cを、回転シャフト7の棚部7pに載置させる。レゾルバロータ6の裏面6cは、周方向に連続した環状を成し、凹凸の無い平坦面状を有している。一方、回転シャフト7の棚部7pは、周方向に連続した環状を成し、凹凸の無い平坦面状を有している。このため、レゾルバロータ6の裏面6cと、回転シャフト7の棚部7pとは、互いに隙間無く接触する。
次に、固定リング1(リング本体3)を回転シャフト7の外側に締り嵌めする。この場合、中心線2上方から中心線2下方に向けて、固定リング1(リング本体3)の第1面3aに押圧力を付与する。押圧力の付与方法としては、例えば、中空円筒形の押圧治具によって、第1面3aに押圧力を付与する方法が想定される。これにより、固定リング1(リング本体3)がレゾルバロータ6に向けて押し込まれる。
そして、かかる押し込み動作を予め設定した位置で停止する。この間、凸部5が弾性変形することで、固定リング1(リング本体3)の第3面3c側が、中心線2と直交する方向(上記した内接円及び外接円の半径方向)に拡径する。例えば、上記した押圧治具によって、リング本体3(第1面3a)の外周側に押圧力を付与する。このとき、固定リング1(リング本体3)が、凸部5の第3面3c側の周方向両端を支点に少し傾斜する。
これにより、第1面3a及び第2面3bの平面視において、固定リング1(リング本体3)と共に、突起部4が半径方向外側に後退する。この結果、固定リング1(リング本体3)を回転シャフト7に沿ってスムーズに移動させることが可能となる。かくして、凸部5の突出端(先端)である曲面状の第2接触端5tが、最適な圧力で、レゾルバロータ6の表面6dに接触する。
この後、押圧治具による押圧力を解除する。そうすると、凸部5が初期形状に復元しようと弾性変形する。このとき、固定リング1(リング本体3)の第3面3c側が、中心線2と直交する方向(即ち、半径方向)内側に縮径する。換言すると、突起部4が半径方向内側に前進する。これにより、突起部4の突出端(先端)である第1接触端4tが、回転シャフト7の外周面7sに接触する。この結果、固定リング1(リング本体3)が、回転シャフト7の外周に固定(締り嵌め)される。
そして、固定リング1(リング本体3)が回転シャフト7に固定されたと同時に、凸部5(第2接触端5t)からレゾルバロータ6の表面6dに最適な圧力が作用する。これにより、レゾルバロータ6は、固定リング1(リング本体3)の凸部5(第2接触端5t)と、回転シャフト7の棚部7pとで挟持された状態に維持される。この結果、例えば応力ひずみ等を発生させること無く、レゾルバロータ6が回転シャフト7に固定される。
図6は、固定状態における突起部4(第1接触端4t)の断面構成図である。上記したように、固定リング1(リング本体3)は、回転シャフト7の外側に締り嵌めさせる。このため、各突起部4の突出端(第1接触端4t)を周方向に相互に結んだ仮想円(即ち、上記した第3面3cに接する内接円)の直径D1(図4参照)は、回転シャフト7(例えば、固定部7c)の外周面7sの直径よりも小さく設定されている。なお、固定部7cとは、回転シャフト7の外周面7sのうち、固定リング1によってレゾルバロータ6を回転シャフト7に固定する部位を指す。
図6に示すように、上記した押圧力の付与方法によって固定リング1(リング本体3)を押し込む際に、突起部4の突出端(第1接触端4t)には、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sからの反力が作用する。そして、上記した押し込み動作を停止した際に(図5参照)、即ち、レゾルバロータ6が、固定リング1(リング本体3)の凸部5(第2接触端5t)と、回転シャフト7の棚部7pとで挟持された際に、突起部4及びその周辺のリング本体3は、中心線2上方に向けて弾性変形した状態となる。
このとき、図6では一例として、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)で見て、突起部4の突出端(第1接触端4t)の下端辺T2のみが、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sに接触(例えば、線接触)する。端面Tm並びに上端辺T1は、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sに対して非接触となる。なお、突起部4の突出端(第1接触端4t)は、平坦面状の端面Tmと、端面Tmの両側の上端辺T1及び下端辺T2と、を有する。上端辺T1は下端辺T2よりも上方に位置する。
ここで、例えば、固定リング1の用途や使用目的に応じて、突起部4の突出端(第1接触端4t)の輪郭を変化させてもよい。これにより、例えば、突起部4の突出端(第1接触端4t)の端面Tmを、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sに接触させたり、或いは、突起部4の突出端(第1接触端4t)の上端辺T1を、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sに接触させたりすることが可能となる。
以上、第1実施形態によれば、第1面3a及び第2面3bの平面視(図4参照)において、複数の突起部4を第3面3cよりも突出して構成する。これにより、固定状態において、突起部4(第1接触端4t)のみを、回転シャフト7の外周面7sに均等に接触させることができる。この結果、固定リング1(リング本体3)自体を、軸方向(中心線2方向)、径方向(中心線2と直交する方向)、周方向(中心線2周りの方向)に変位しないように、回転シャフト7に固定することができる。この場合、例えば図6に示すように、突起部4の突出端(第1接触端4t)の下端辺T2のみを、回転シャフト7の外周面7sに接触させる。これにより、回転シャフト7に対する固定リング1(リング本体3)の固定強度を向上させることができる。
第1実施形態によれば、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)において、複数の凸部5を、リング本体3の一部を湾曲して構成する。この場合、中心線2と直交する方向(半径方向)において、凸部5は、第3面3c側から第4面3d側に向けて曲率が連続的に小さくなる。第1面3a及び第2面3bの平面視(図4参照)において、凸部5の第4面3d側の長さL1は、凸部5の第3面3c側の長さL2よりも長くなっている。このような構成によれば、固定の際に凸部5が弾性変形することで、固定リング1(リング本体3)と共に、突起部4が半径方向外側に後退する。これにより、固定リング1(リング本体3)を回転シャフト7に沿ってスムーズに移動させることができる。この結果、凸部5の突出端(先端)である曲面状の第2接触端5tを、最適な圧力で、レゾルバロータ6の表面6dに接触させることができる。そして、この状態で、固定リング1(リング本体3)を回転シャフト7に固定することで、レゾルバロータ6を、固定リング1(リング本体3)の凸部5(第2接触端5t)と、回転シャフト7の棚部7pとで挟持した状態で、例えば応力ひずみ等を発生させること無く、回転シャフト7に固定することができる。
第1実施形態によれば、突起部4と凸部5とを、リング本体3の周方向に交互に配置させる。これにより、固定リング1(リング本体3)自体を回転シャフト7に固定すると同時に、レゾルバロータ6を回転シャフト7に固定することができる。この場合、固定に要する部品点数が大幅に削減されるため、固定プロセスを簡素化させることができる。この結果、固定に要するコストを低減することができる。同時に、固定に際し、軸方向(中心線2方向)、径方向(中心線2と直交する方向)、周方向(中心線2周りの方向)への荷重調整を容易に行うことができる。
「第2実施形態」
図7は、第2実施形態の固定リング1の全体構成図である。固定リング1は、レゾルバロータ6を回転シャフト7(図9参照)に固定することが可能に構成されている。図7に示すように、固定リング1は、環状のリング本体3を具備し、当該リング本体3は、複数の突起部4と、複数の凸部5と、を備えている。
なお、図9の回転シャフト7及びレゾルバロータ6と、図3の回転シャフト7及びレゾルバロータ6は、互いに同一の形状(構成)で同一の大きさを有している。また、本実施形態のリング本体3及び凸部5は、上記した第1実施形態のリング本体3及び凸部5と同一の形状(構成)で同一の大きさを有している。よって、以下、リング本体3及び凸部5の説明は省略し、突起部4の説明にとどめる。
図7では一例として、突起部4及び凸部5は、互いに同数(例えば、6つ)適用されている。突起部4と凸部5とは、リング本体3の周方向に1つずつ交互に設けられている。突起部4及び凸部5は、リング本体3の周方向に等間隔で配置されている。突起部4は、それぞれ、第1面3a及び第2面3bの平面視(図4参照)において、第3面3cよりも突出して構成されている。
図7の例において、突起部4は、複数の凹所3p内に1つずつ設けられている。凹所3は、リング本体3の周方向に等間隔で配置されている。凹所3と凸部5とは、リング本体3の周方向に1つずつ交互に設けられている。凹所3は、リング本体3の第3面3cを一部第4面3d方向に矩形状に窪ませて構成されている。
突起部4は、第1面3a及び第2面3bの平面視(図4参照)において、凹所3のうち最も窪んだ部分(即ち、最も第4面3d寄りの部分)からリング本体3の第3面3cを越えて延出している。この場合、突起部4は、第1面3a及び第2面3bと交差する方向に傾斜して延出されている。突起部4は、凹所3を構成する第3面3cと非接触に配置されている。突起部4は、互いに同一の形状で同一の大きさを有している。なお、突起部4の傾斜の程度は、中心線2と直交する仮想平面との成す角として規定することができる。
図8は、突起部4の配置構成図である。図8では一例として、突起部4は、突出端(先端)及び基端と、突出端(先端)と基端との間に構成された弾性領域4pと、を備えた矩形の立体形状を有している。突起部4の基端は、凹所3のうち最も窪んだ部分において、リング本体3に固定されている。
突起部4の突出端(先端)は、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)において、第1面3aよりも突出して位置付けられている。突起部4の突出端(先端)には、矩形状の第1接触端4tが構成されている。第1接触端4tは、リング本体3(固定リング1)を回転シャフト7の外側に締り嵌めした際に、回転シャフト7の外周面7sに接触するように構成されている。
このような構成を実現するため、各突起部4の突出端(第1接触端4t)を周方向に相互に結んだ仮想円(即ち、上記した第3面3cに接する内接円)の直径D1(図4参照)は、回転シャフト7(例えば、固定部7c)の外周面7sの直径よりも小さく設定されている。なお、固定部7cとは、回転シャフト7の外周面7sのうち、固定リング1によってレゾルバロータ6を回転シャフト7に固定する部位を指す。
図9は、固定リング1によってレゾルバロータ6を回転シャフト7に固定するプロセスの模式図である。図10は、固定状態における突起部4(第1接触端4t)を示す模式図である。図9及び図10に示すように、レゾルバロータ6(貫通孔6h)を回転シャフト7の外側に隙間嵌めする。次に、押圧治具によって、固定リング1(リング本体3)を回転シャフト7の外側に締り嵌めする。
このとき、突起部4の突出端(先端)である第1接触端4tが、回転シャフト7の外周面7sに接触する。かくして、レゾルバロータ6は、例えば応力ひずみ等が発生すること無く、固定リング1(リング本体3)の凸部5(第2接触端5t)と、回転シャフト7の棚部7p(図5参照)とで挟持された状態に維持される。
ところで、固定リング1(リング本体3)を回転シャフト7の外側に締り嵌めする際、突起部4の突出端(第1接触端4t)には、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sからの反力が作用する。そして、レゾルバロータ6が、固定リング1(リング本体3)の凸部5(第2接触端5t)と回転シャフト7の棚部7pとで挟持された際(図9参照)、突起部4(弾性領域4p)は、中心線2上方に向けて弾性変形した状態に維持される。
このとき、図10では一例として、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)で見て、突起部4の突出端(第1接触端4t)の下端辺T2のみが、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sに接触(例えば、線接触)する。端面Tm及び上端辺T1は、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sに対して非接触となる。なお、突起部4の突出端(第1接触端4t)は、平坦面状の端面Tmと、端面Tmの両側の上端辺T1及び下端辺T2と、を有する。上端辺T1は下端辺T2よりも上方に位置する。
ここで、例えば、固定リング1の用途や使用目的に応じて、突起部4の突出端(第1接触端4t)の輪郭を変化させてもよい。これにより、例えば、突起部4の突出端(第1接触端4t)の端面Tmを、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sに接触させたり、或いは、突起部4の突出端(第1接触端4t)の上端辺T1を、回転シャフト7(固定部7c)の外周面7sに接触させたりすることが可能となる。
以上、第2実施形態によれば、突起部4の突出端(先端)と基端との間に弾性領域4pを介在させる。これにより、固定に際し、弾性領域4pが弾性変形することで、固定リング1(リング本体3)を回転シャフト7の外周面7sに嵌め易くすることができる。この結果、軸方向(中心線2方向)、径方向(中心線2と直交する方向)、周方向(中心線2周りの方向)への荷重調整を容易に行うことができる。なお、その他の構成及び効果は、上記した第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
「第3実施形態」
図11は、第3実施形態に係る固定リング1の部分拡大図である。本実施形態は、上記した第1及び第2実施形態の改良であり、図11には一例として、上記した第2実施形態に本実施形態の特徴部分を盛り込んだ固定リング1の構成が示されている。
図11に示すように、本実施形態の固定リング1は、後述するレゾルバロータ6を回転シャフト7(図12参照)に固定することが可能に構成されている。固定リング1は、環状のリング本体3を具備し、当該リング本体3は、複数の突起部4と、複数の凸部5と、複数の弾性部8と、を備えている。
なお、図12の回転シャフト7及びレゾルバロータ6と、図9の回転シャフト7及びレゾルバロータ6は、互いに同一の形状(構成)で同一の大きさを有している。また、本実施形態のリング本体3、突起部4及び凸部5は、後述する弾性部8を配置させるべく凸部5を幅狭に構成したこと以外、上記した第2実施形態のリング本体3、突起部4及び凸部5と同一の形状(構成)で同一の大きさを有している。よって、以下、リング本体3、突起部4及び凸部5の説明は省略し、弾性部8の説明にとどめる。
本実施形態の固定リング1において、リング本体3は、当該リング本体3の第3面3c又は第4面3dに、複数の弾性部8を備えて構成されている。図11の例において、弾性部8は、リング本体3の第4面3dに備えられている。弾性部8は、突起部4及び凸部5と同数(例えば、6つ)適用され、リング本体3の周方向に等間隔で配置されている。この場合、弾性部8は、凸部5の外側に対向して位置付けられている。
複数の弾性部8は、それぞれ、基端8aと先端8b、及び、基端8aと先端8bとの間に構成された弾性本体8cを有している。弾性本体8cは、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)において、第1面3aと第2面3bとの間隔W1(図2参照)と同一の幅(厚さ)を有している。
弾性部8の基端8aは、リング本体3の第4面3dに固定されている。弾性部8の先端8bは、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)において、凸部5よりも突出して位置付けられている。弾性部8の先端8bは、基端8aからリング本体3の周方向に離間して位置付けられている。
このような構成によれば、弾性部8は、基端8aがリング本体3に支持され、先端8bが自由端となっている。弾性本体8cは、第1面3a及び第2面3bと交差する方向において、基端8aから先端8bに向かって下り勾配を成して傾斜している。なお、弾性部8の傾斜の程度は、中心線2と直交する仮想平面との成す角として規定することができる。
図12は、上記した固定リング1によってレゾルバロータ6を回転シャフト7に固定するプロセスの模式図である。図12に示すように、レゾルバロータ6(貫通孔6h)を回転シャフト7の外側に隙間嵌めする。この後、固定リング1(リング本体3)を回転シャフト7の外側に締り嵌めする。
このとき、凸部5(第2接触端5t)に先行して、弾性部8の先端8bが、レゾルバロータ6の表面6dに接触しつつ弾性変形する。この後、凸部5(第2接触端5t)が、レゾルバロータ6の表面6dに最適な圧力で接触する。これにより、レゾルバロータ6は、固定リング1(リング本体3)の凸部5(第2接触端5t)及び弾性部8の先端8bと、回転シャフト7の棚部7p(図5参照)とで挟持された状態に維持される。
以上、第3実施形態によれば、リング本体3の第3面3c又は第4面3dに、複数の弾性部8を備える。弾性部8は、基端8aがリング本体3に支持され、先端8bが、第1面3a及び第2面3bと直交する方向(中心線2の方向)において、凸部5よりも突出して位置付けられる。この場合、固定に際し、凸部5(第2接触端5t)に先行して、弾性部8の先端8bが、レゾルバロータ6の表面6dに接触しつつ弾性変形する。これにより、固定に際し、軸方向(中心線2方向)、径方向(中心線2と直交する方向)、周方向(中心線2周りの方向)への荷重調整を容易に行うことができる。なお、その他の構成及び効果は、上記した第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
「変形例」
上記した実施形態(図3、図4、図9、図12)では、4極(4つの膨張部6a)のレゾルバロータ6に対して、6つの凸部5から押圧荷重を作用させているが、好ましくは、複数の凸部5によってレゾルバロータ6の同じ部位(例えば、膨張部6a相互の同じ部位)に押圧荷重を作用させるようにする。例えば、凸部5の個数をレゾルバロータ6の極数(膨張部6a)の整数倍に設定する。これにより、凸部5からの押圧荷重を、例えば、各膨張部6a(極)相互の同一箇所に均等に作用させることができる。この結果、極(膨張部6a)毎の磁気的影響のバラつきを無くすることができる。
上記した実施形態において、回転シャフト7と固定リング1は、線膨張係数が互いに略同等の材質で構成することが好ましい。これにより、環境温度が変化しても、レゾルバロータ6に対する固定リング1の固定状態を一定に維持することができる。
上記した実施形態では、突起部4の突出端(先端)に矩形状の第1接触端4t(端面Tm、上端辺T1、下端辺T2)を構成したが、この場合、固定に際し、第1接触端4tと回転シャフト7(外周面7s)との接触面積を減少させることが好ましい。例えば、面接触よりも線接触、線接触よりも点接触となるように構成する。これにより、固定に際し、突起部4の突出端(第1接触端4t)を回転シャフト7(外周面7s)に食い込ませることができる。この結果、固定リング1を回転シャフト7に堅牢に固定することができる。
上記した実施形態において、突起部4の突出端(第1接触端4t)の輪郭は、回転シャフト7(外周面7s)に隙間無く接触するような曲面形状にしてもよい。例えば、突起部4の突出端(第1接触端4t)の輪郭を、回転シャフト7(外周面7s)の曲率に一致させた円弧形状にする。
以上、本発明の一実施形態及びいくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。