JP7203686B2 - 造形物の製造方法 - Google Patents
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Description
ただし、既に形成されているビードの上に、次のビードを形成しようとする場合、既に形成されているビードの表面には、溶加材の溶融および固化に伴ってスラグが付着していることがある。そして、通常スラグは絶縁体で構成されているため、スラグが付着している部位ではアークを発生させることが困難となり、結果として、アークの発生不良に起因するビードの形成不良が生じることがあった。
ここで、前記未付着部位の特定は、既に形成されているビードの表面を撮像した画像からスラグが付着した領域を抽出することで行われる、ものとしてもよい。
また、既に形成されているビードに前記溶加材または当該溶加材を保持する溶接トーチを突き当てることにより、当該ビードに付着したスラグを除去する工程をさらに含む、ものとしてもよい。
ここで、前記受け付ける工程では、前記始点を延伸してなる新たな始点と当該終点を延伸してなる新たな終点とが付加された前記出力データを受け付け、前記検出する工程では、形成されたx層目のビードのうち、前記新たな始点および前記新たな終点を付加することに伴って延伸された延伸領域の中から、前記未付着部位を検出する、ものとしてもよい。
また、前記検出する工程では、形成されたx層目のビードを撮像した画像を用いて前記未付着部位を検出する、ものとしてもよい。
[金属積層造形システム]
図1は、本発明の実施の形態における金属積層造形システム1の概略構成例を示した図である。
本実施の形態の金属積層造形システム1は、計画作成装置40と、積層造形装置60とを備える。これらのうち、計画作成装置40は、ビード121を順次積層することによって積層造形物120を形成する計画(以下では、積層計画と称する)に関する、制御プログラム等の作成を行う。また、積層造形装置60は、計画作成装置40が作成した、積層計画に関する制御プログラムに従って動作することで母材110上に積層造形物120を形成し、母材110と積層造形物120とを有する構造体100の製造を行う。そして、積層造形装置60は、ロボット装置10と、溶接トーチ20と、カメラ25と、制御装置30とを備える。この金属積層造形システム1では、計画作成装置40が、積層造形装置60を制御する制御プログラム等を、各種メモリカード等のリムーバブルな記録媒体50に書き込む。そして、積層造形装置60に設けられた制御装置30が、記録媒体50に書き込まれた制御プログラム等を読み出して実行する。
(積層造形装置)
本実施の形態で用いた積層造形装置60は、ガスシールドアーク溶接方式を採用したロボット溶接装置を転用したものとなっている。そして、この積層造形装置60は、所謂産業用ロボットで構成されたロボット装置10と、ロボット装置10に取り付けられ、溶接プロセスで用いるワイヤ21の供給等を行う溶接トーチ20と、ロボット装置10に取り付けられ、溶接トーチ20の周辺の画像を撮影するカメラ25と、これらロボット装置10、溶接トーチ20およびカメラ25の動作を制御する制御装置30とを有している。なお、この積層造形装置60は、この他に、シールドガスを供給するガス供給装置やワイヤ21を供給するワイヤ供給装置等をさらに有しているのであるが、ここではその詳細な説明を省略する。
図2は、積層造形装置60に設けられたロボット装置10の概略構成を示した斜視図である。以下では、図1に加えて図2も参照しつつ、ロボット装置10の構成について説明を行う。
溶接トーチ20は、アルゴンガスや炭酸ガス等のシールドガスが供給される略筒状のシールドノズルと、シールドノズルの内部に配置されたコンタクトチップ(ともに図示せず)とを有している。そして、コンタクトチップには、送給されてくるワイヤ21が保持されるようになっている。この溶接トーチ20は、ワイヤ21を送給しつつ、シールドガスを流しながらアークを発生させてワイヤ21を溶融および固化させることで、母材110上に複数のビード121を形成且つ積層し、積層造形物120の形成を行うようになっている。なお、本実施の形態の金属積層造形システム1において、積層造形物120の形成に用いられる、溶加材の一例としてのワイヤ21については、積層造形物120に求められる機能や特性等に応じて、適宜選定することが可能である。そして、ここでは、ワイヤ21自身が電極且つ溶加材となる「溶極式」を例として説明を行うが、「非溶極式」を採用することも可能である。
カメラ25は、CCDやCMOS等の撮像デバイスを有しており、この例では、赤外画像を撮影できるようになっている。そして、カメラ25は、溶接トーチ20とともに、ロボット装置10の最先端に位置する手首回転部17に取り付けられた保持部18に保持されており、溶接トーチ20に追従して動くことにより、溶接トーチ20から突出するワイヤ21の先端部の周辺の画像(赤外画像)を撮影するようになっている。
図3は、積層造形装置60に設けられた制御装置30の機能構成例を示した図である。以下では、図1に加えて図3も参照しつつ、制御装置30の構成について説明を行う。
受付部301は、計画作成装置40から、記録媒体50を介して、積層造形装置60を構成するロボット装置10および溶接トーチ20を連動して動作させるための制御プログラム等を含む出力データの入力を受け付ける。
第1出力手段、修正手段および第2出力手段の一例としての全体制御部302は、受付部301が受け付けた制御プログラムにしたがい、ロボット装置10および溶接トーチ20を連動して動作させるための全体的な制御を行う。
ロボット制御部303は、全体制御部302による制御のもと、ロボット装置10を構成する各部を動作させることにより、保持部18に保持された溶接トーチ20の位置制御および姿勢制御等を行う。
溶接制御部304は、全体制御部302による制御のもと、溶接トーチ20に対する給電動作、ワイヤ送給動作およびガス供給動作等に関する制御を行う。
カメラ制御部305は、全体制御部302による制御のもと、カメラ25による撮影動作に関する制御を行う。
続いて、計画作成装置40の詳細について説明を行う。
図4は、本実施の形態における計画作成装置40のハードウェア構成例を示した図である。
本実施の形態の計画作成装置40は、例えば汎用のPC(Personal Computer)等により実現される。なお、具体的な説明は行わなかったが、積層造形装置60に設けられた制御装置30も、以下に説明する計画作成装置40と同様のハードウェア構成を有している。
図5は、本実施の形態の計画作成装置40の機能構成例を示した図である。
本実施の形態の計画作成装置40は、取得部401と、変換部402と、切断部403と、分割部404と、延伸部405と、作成部406と、付加部407と、出力部408とを有している。以下では、図1に加えて図4も参照しつつ、計画作成装置40の構成について説明を行う。
取得部401は、CAD装置2から、積層造形物120のもととなる造形物の三次元CADデータD3d(後述する図8(a)も参照)を取得する。ここで、三次元CADデータD3dは、三次元形状データの一例である。
変換部402は、取得部401から受け取った三次元CADデータD3dを、計画作成装置40での各種データ加工に用いられる内部データDiに変換する。
切断部403は、変換部402から受け取った内部データDiを、複数の層の積層体となるように切断(スライス)することで、層形状データDs(具体的には、1層目の層形状データDs(1)~n層目の層形状データDs(n)を含むn層分のデータ:後述する図8(b)も参照)を作成する。ここで層形状データDsは、スライスデータの一例である。
分割部404は、切断部403から受け取った層形状データDsに対し、層毎に分割点を設定することで、分割済層形状データDd(具体的には、1層目の分割済層形状データDd(1)~n層目の分割済層形状データDd(n)を含むn層分のデータ:後述する図8(c)も参照)を作成する。ここで、分割済層形状データDdは、修正されたスライスデータの一例である。
延伸部405は、分割部404から受け取った分割済層形状データDdに対し、層毎に始点および終点を付加することで、延伸済層形状データDe(具体的には、1層目の延伸済層形状データDe(1)~n層目の延伸済層形状データDe(n)を含むn層分のデータ:後述する図8(d)も参照)を作成する。ここで、延伸済層形状データDeは、修正されたスライスデータの一例である。
作成部406は、延伸部405が作成した延伸済層形状データDeに基づき、積層造形装置60の制御装置30が積層造形物120を製造する際に実行する、制御プログラムで使用される制御データDcを作成する。
付加部407は、制御装置30が実行する制御プログラムに、延伸部405から受け取った延伸済層形状データDeと、作成部406から受け取った制御データDcとを付加することで、出力データDoを作成する。
出力部408は、付加部407から受け取った出力データDoを、記録媒体50に書き込むことによって出力する。
ここで、図1等を参照しながら、本実施の形態の金属積層造形システム1によって製造される構造体100に関する説明を行っておく。
本実施の形態の構造体100は、積層対象となる母材110と、ワイヤ21を用いて母材上に形成される積層造形物120とを備えている。図1に示す例において、母材110は、矩形状(板状)を呈するとともに、その表面が鉛直上方を向くように配置されている。また、図1に示す例において、積層体の一例としての積層造形物120は、円筒状を呈するとともに、母材110の表面に、自身に設けられた開口部が鉛直上方を向くように形成されている。
母材110は、積層造形物120の土台となるものである。母材110には、所謂溶接プロセスによる積層造形物120の形成が可能な金属材を用いることができる。また、積層造形時の安定性の確保等を考慮すれば、積層造形物120として、図1に示すような板材を使用することが望ましい。
積層造形物120は、それぞれがワイヤ21を溶融・固化してなる複数のビード121を、鉛直方向上側に向かって積み重ねた構造を有している。そして、図1に示す積層造形物120では、n層のビード121(具体的は、1層目のビード121(1)~n層目のビード121(n))を積み重ねることによって、積層造形物120が構成されている。
続いて、図1に示す金属積層造形システム1の動作について説明を行う。
本実施の形態の金属積層造形システム1では、まず、計画作成装置40が、積層造形物120の形成で使用する、制御プログラムおよび各種データを含む出力データDoの作成を行うとともに、作成した出力データDoを記録媒体50に書き込む。そして、積層造形装置60が、記録媒体50から読み出した出力データDoに含まれる制御プログラム(および各種データ)にしたがって動作し、母材110上に積層造形物120の形成を行う。そこで、以下では、最初に計画作成装置40の動作について説明を行い、続いて積層造形装置60の動作について説明を行う。
図6は、計画作成装置40の動作例を示したフローチャートである。なお、ここでは、これから製造しようとする積層造形物120のもととなる造形物に関する三次元CADデータD3dが、既にCAD装置2によって作成されているものとする。
以上により、計画作成装置40の動作が完了する。
図7は、積層造形装置60の動作例を示したフローチャートである。ただし、図7は、実際には、積層造形装置60を構成する制御装置30の動作手順を示している。なお、図7に示す手順に従って積層造形装置60が動作を開始する前に、ロボット装置10の周辺のうちの予め定められた位置には、母材110が固定された状態で位置決めされているものとする。また、これから説明するステップ110~ステップ190が、製造する工程の一例となっている。
以上により、母材110上に、複数のビード121を積層してなる積層造形物120が形成された、構造体100を得ることができる。これにより、積層造形装置60の動作が完了する。
では、上述した金属積層造形システム1を用いた構造体100の製造に関し、具体的な例を挙げて説明を行う。なお、ここでは、図1に示したように、矩形状を呈する母材110上に、円筒状を呈する積層造形物120を形成することで、構造体100を製造する場合を例とする。
最初に、積層造形物120の製造に用いられる、各種データに関する説明を行う。
図8(a)~(d)および図9(a)~(c)は、積層造形物120の製造に際して、計画作成装置40で用いられる各種データの概念を説明するための図である。なお、ここで説明する各種データは、実際には、バイナリ形式やアスキー形式等によって表現されるものであるが、ここでは、理解を助けるために模式的な表記を行っている。そして、図8(a)~(d)では、各データの全体を三次元形状(斜視図)として表記しており、図9(a)~(c)では、各データのうちの1層分のデータを二次元形状(上面図)として表記している。
図8(a)は、三次元CADデータD3dの一例を示している。
図8(a)に示す三次元CADデータD3dは、上述したように、CAD装置2が作成し、計画作成装置40の取得部401が取得する。なお、ここには記載していないが、計画作成装置40の変換部402が作成する内部データDiも、表現形式が異なるだけで、表現しようとする形状そのものは、三次元CADデータD3dと同じである。
図8(b)は、層形状データDsの一例を示している。また、図9(a)は、図8(b)に示す層形状データDsを構成する、1層目の層形状データDs(1)の一例を示している。
図8(c)は、分割済層形状データDdの一例を示している。また、図9(b)は、図8(c)に示す分割済層形状データDdを構成する、1層目の分割済層形状データDd(1)の一例を示している。
図8(d)は、延伸済層形状データDeの一例を示している。また、図9(c)は、図8(d)に示す延伸済層形状データDeを構成する、1層目の延伸済層形状データDe(1)の一例を示している。
図10は、延伸済層形状データDeにおける各種経路を説明するための図である。ただし、図10は、上述した図9(c)と同じく、延伸済層形状データDeを構成する、1層目の延伸済層形状データDe(1)を例示している。
続いて、上記図8~図10に示す各種データを用いた、積層造形物120を含む構造体100の製造について説明を行う。
図11(a)~(d)は、構造体100の製造プロセス例を示した図である。
また、図12(a)~(d)は、図11に示す構造体100の製造プロセスのうち、1層目および2層目のビード121の積層手順例を示した図である。
なお、ここでは、積層造形物120を構成するビード121の総層数が、5(n=5)である場合を例として説明を行う。
図11(a)は、1層目の延伸済層形状データDe(1)に基づき、母材110上に、1層目のビード121(1)を形成した後の状態を示す斜視図である。また、図12(a)は、1層目のビード121(1)を形成する前の状態を示す上面図である。さらに、図12(b)は、1層目のビード121(1)を形成した後の状態を示す上面図である。
図11(b)は、2層目の延伸済層形状データDe(2)に基づき、1層目のビード121(1)上に、2層目のビード121(2)を形成した後の状態を示す斜視図である。また、図12(c)は、1層目のビード121(1)を形成した後であって、2層目のビード121(2)を形成する前の状態を示す図である。さらに、図12(d)は、2層目のビード121(2)を形成した後の状態を示す上面図である。
図11(c)は、5層目の延伸済層形状データDe(5)に基づき、4層目のビード121(4)上に、最終層となる5層目のビード121(5)を形成した後の状態、すなわち、母材110上に積層造形物120を形成した後の状態を示す図である。
図11(d)は、図11(c)に示す積層造形物120に機械加工を施して得られた加工物130を示している。
ここで、図11(d)に示す加工物130は、図11(c)に示す積層造形物120上の突起部を除去する切削加工が施されることによって略平坦となった外周面131と、特に機械加工が施されることなく、凹凸がそのまま残った内周面132とを有している。これにより、加工物130の形状を、もととなる造形物の形状(三次元CADデータD3d)に近づけることができる。なお、内周面132にも、外周面131と同様の切削加工を施すようにすれば、加工物130の形状を、もととなる造形物の形状にさらに近づけることが可能である。
上述した本実施の形態では、造形物の三次元CADデータD3dに基づいて積層造形物120を製造するにあたり、始点側延伸経路Rsおよび終点側延伸経路Reに基づく突起部を積層造形物120に形成するようにしていたが、これに限られるものではない。
この例では、計画作成装置40が、図8(c)に示す分割済層形状データDdを作成した後、延伸済層形状データDeを作成せずに、この分割済層形状データDdを含む出力データDoを作成し、出力する。そして、積層造形装置60では、1層のビード121を形成する毎に、アーク発生点の探索を行い、始点Ps(図10等に示す例では仮始点Ptsと記載)および終点Pe(図10等に示す例では仮終点Pte)の修正を行う。これは、1層毎に分割点Pdの修正(変更)を行うことと等価である。
このようにした場合にも、各層のビード121の形成を開始するに際して、アークの発生不良に伴うビード121の形成不良を抑制することができる。
Claims (3)
- 三次元形状データに基づき、アークを用いて溶加材を溶融および固化してなるビードを複数重ねた積層体を含む造形物を製造する、造形物の製造方法であって、
前記三次元形状データを複数の層に分割して得たスライスデータから、各層の分割点を決定する工程と、
前記分割点の一端側を延伸してなる始点と、当該分割点の他端側を延伸してなる終点とを設定し、当該始点および当該終点を付加することで前記スライスデータを修正する工程と、
修正された前記スライスデータに基づき、前記始点から前記終点に向かってビードを形成することで、前記造形物を製造する工程と
を有し、
前記製造する工程では、既に形成されているビードのうち、前記始点および前記終点を付加することに伴って延伸された延伸領域の中から、スラグが付着していない未付着部位を特定し、当該未付着部位を当該始点に修正して次のビードを形成する、造形物の製造方法。 - 前記未付着部位の特定は、既に形成されているビードの表面を撮像した画像からスラグが付着した領域を抽出することで行われる、請求項1記載の造形物の製造方法。
- 既に形成されているビードに前記溶加材または当該溶加材を保持する溶接トーチを突き当てることにより、当該ビードに付着したスラグを除去する工程をさらに含む、請求項1記載の造形物の製造方法。
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