以下に、本開示に係る表面処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1は、実施形態に係る表面処理装置1の装置構成を示す模式図である。図2は、図1のA-A断面模式図である。なお、以下の説明では、表面処理装置1の通常の使用状態における上下方向を、表面処理装置1における上下方向Zとして説明し、表面処理装置1の通常の使用状態における上側を、表面処理装置1における上側とし、表面処理装置1の通常の使用状態における下側を、表面処理装置1における下側として説明する。また、表面処理装置1の通常の使用状態における水平方向を、表面処理装置1においても水平方向として説明する。さらに、水平方向のうち、後述する収容ユニット支持部材110の揺動軸111の延在方向を表面処理装置1における長さ方向Yとし、表面処理装置1の高さ方向と長さ方向との双方に直交する方向を、表面処理装置1における幅方向Xとして説明する。
<表面処理装置1の全体構成>
本実施形態に係る表面処理装置1は、内部に被処理材W(図20参照)が収容可能に形成されるチャンバー10と、被処理材Wに対して表面処理を行う第1処理装置であるプラズマ生成装置40と、被処理材Wに対して第1処理装置とは異なる表面処理を行う第2処理装置であるスパッタリング装置70と、被処理材Wを収容する収容ユニット100と、チャンバー10内の圧力を減圧するポンプユニット140と、を有している。このうち、プラズマ生成装置40は、プラズマを生成することによって被処理材Wに対して表面処理を行うことが可能になっており、スパッタリング装置70は、スパッタリングを行うことによって被処理材Wに対して表面処理を行うことが可能になっている。また、プラズマ生成装置40とスパッタリング装置70とは、チャンバー10内に配置する側の装置を切り替えることが可能になっている。
なお、図1、図2は、プラズマ生成装置40やスパッタリング装置70がチャンバー10内に位置する場合におけるチャンバー10での位置関係を示すため、チャンバー10内に位置する側の装置がプラズマ生成装置40とスパッタリング装置70とのいずれの場合でも適用できる模式図になっている。チャンバー10は、中空の略直方体の形状で形成されており、プラズマ生成装置40やスパッタリング装置70は、上側の壁面である上壁12に取り付けられ、チャンバー10内に配置されている。また、チャンバー10には、スパッタリング装置70でスパッタリングを行う際に用いるガスをチャンバー10内に流入するガス流入部16が、チャンバー10の側壁13に配置されている。ガス流入部16は、例えば、アルゴンや窒素、酸素等を、スパッタリング装置70でスパッタリングを行う際に用いるガスの経路が接続されており、これらのガスをチャンバー10内に流入するガスを流入することが可能になっている。
また、収容ユニット100は、収容ユニット支持部材110によって支持されてチャンバー10に内設されており、これによりチャンバー10は、内部に被処理材Wを収容することが可能になっている。収容ユニット支持部材110は、チャンバー10を構成する複数の側壁13のうち、対向する一組の側壁13である支持壁14に連結され、支持壁14に支持されている。
収容ユニット支持部材110に支持される収容ユニット100は、収容ユニット支持部材110を介して支持壁14に支持されている。収容ユニット支持部材110は、対向する支持壁14の双方に向かって水平方向に延びる揺動軸111を中心として、揺動することが可能になっている。即ち、チャンバー10には、収容ユニット100を揺動させる揺動手段であるサーボモータ120が取り付けられており、収容ユニット支持部材110は、サーボモータ120から伝達される駆動力によって揺動することが可能になっている。収容ユニット支持部材110に支持される収容ユニット100は、収容ユニット支持部材110が揺動する際には、揺動軸111を中心として収容ユニット支持部材110と一体となって揺動することが可能になっている。
また、ポンプユニット140は、チャンバー10の底部15に取り付けられており、チャンバー10内の流体、即ち、チャンバー10内のガスを吸引することにより、チャンバー10内の圧力を減圧することが可能になっている。
ポンプユニット140は、流体の流量を調整するバルブユニットである流量調整バルブ150と、流体を吸引するポンプであるターボ分子ポンプ170とを有しており、ターボ分子ポンプ170で吸引する流体の流量を流量調整バルブ150で調整することにより、チャンバー10内の圧力を、所望の圧力に減圧することができる。
このうち、流量調整バルブ150は、チャンバー10内に配置される昇降バルブ153と、昇降バルブ153をチャンバー10内で上下方向Zに移動させる駆動手段であるサーボアクチュエータ160とを有している。昇降バルブ153は、チャンバー10内で上下方向Zに移動することにより、ターボ分子ポンプ170で吸引する流体の流量を調整することが可能になっている。
また、流量調整バルブ150は、昇降バルブ153が連結される昇降軸162と、サーボアクチュエータ160で発生した動力を昇降軸162に伝達し、昇降軸162を上下方向Zに移動させるウォームジャッキ161とを有している。また、チャンバー10には、真空計180が取り付けられており、チャンバー10内の圧力は、真空計180によって検出することが可能になっている。サーボアクチュエータ160は、真空計180で検出した検出値に基づいて作動することにより、真空計180で検出した検出値に基づいて昇降バルブ153を上下方向Zに移動させ、ターボ分子ポンプ170で吸引する流体の流量を調整することが可能になっている。
<プラズマ生成装置40とスパッタリング装置70の切り替え構造>
図3、図4は、チャンバー10内に位置させるプラズマ生成装置40とスパッタリング装置70との切り替えについての説明図であり、図3は、プラズマ生成装置40がチャンバー10内に位置する状態を示す説明図である。図4は、スパッタリング装置70がチャンバー10内に位置する状態を示す説明図である。チャンバー10は、上方に開口部11を有しており、プラズマ生成装置40とスパッタリング装置70とは、それぞれ開口部11からチャンバー10内に入り込ませることにより、チャンバー10内に位置させる装置を切り替えることが可能になっている。詳しくは、プラズマ生成装置40は、開口部11を開閉自在にチャンバー10に取り付けられる第1開閉部材20に配置されており、スパッタリング装置70は、開口部11を開閉自在にチャンバー10に取り付けられる第2開閉部材30に配置されている。
第1開閉部材20と第2開閉部材30とは、いずれも平面視における形状が略矩形状になっており、チャンバー10を上下方向Zに投影した場合における、複数の側壁13により形成される外周の形状と同等の形状になっている。このため、第1開閉部材20と第2開閉部材30とは、チャンバー10の開口部11を覆うことのできる形状になっており、即ち、第1開閉部材20と第2開閉部材30とは、チャンバー10の開口部11を覆うことにより、開口部11を閉じることが可能になっている。また、第1開閉部材20と第2開閉部材30とは、チャンバー10に対して回動自在に取り付けられており、これにより、第1開閉部材20と第2開閉部材30とは、チャンバー10に対して回動することにより、開口部11を開閉する。
詳しくは、第1開閉部材20は、矩形の1つの辺と、チャンバー10の1つの側壁13とが、ヒンジ部21によって連結されている。ヒンジ部21は、水平方向に延びる回動軸を中心として第1開閉部材20を回動自在に、チャンバー10に連結している。第1開閉部材20は、ヒンジ部21を中心として回動することにより、チャンバー10の開口部11を覆って開口部11を閉じた状態の位置と、開口部11の上方に跳ね上がって開口部11を開いた状態の位置とに切り替えることができる。プラズマ生成装置40は、第1開閉部材20の厚さ方向に第1開閉部材20を貫通して第1開閉部材20に取り付けられている。また、プラズマ生成装置40は、チャンバー10に回動自在に連結される第1開閉部材20を閉じた際に、プラズマ生成装置40においてプラズマを生成する部分がチャンバー10内に位置する向きで、第1開閉部材20に取り付けられている。
第2開閉部材30は、矩形の1つの辺と、チャンバー10の複数の側壁13のうち第1開閉部材20が連結される側壁13に対向する側壁13とが、ヒンジ部31によって連結されている。ヒンジ部31は、水平方向に延びる回動軸を中心として第2開閉部材30を回動自在に、チャンバー10に連結している。第2開閉部材30は、ヒンジ部31を中心として回動することにより、チャンバー10の開口部11を覆って開口部11を閉じた状態の位置と、開口部11の上方に跳ね上がって開口部11を開いた状態の位置とに切り替えることができる。スパッタリング装置70は、第2開閉部材30の厚さ方向に第2開閉部材30を貫通して第2開閉部材30に取り付けられている。また、スパッタリング装置70は、チャンバー10に回動自在に連結される第2開閉部材30を閉じた際に、スパッタリング装置70においてスパッタリングを行う部分がチャンバー10内に位置する向きで、第2開閉部材30に取り付けられている。
第1開閉部材20と第2開閉部材30とは、チャンバー10の開口部11を閉じる際には、第1開閉部材20と第2開閉部材30とのうち一方は閉じ、他方は開いた状態にする。即ち、第1開閉部材20と第2開閉部材30とは、他方が開口部11を閉じていない状態において、チャンバー10の開口部11を閉じることが可能になっている。このため、第1開閉部材20は、第2開閉部材30が開口部11を閉じていない状態において開口部11を閉じることにより、プラズマ生成装置40におけるプラズマを生成する部分をチャンバー10内に位置させることができる(図3参照)。同様に、第2開閉部材30は、第1開閉部材20が開口部11を閉じていない状態において開口部11を閉じることにより、スパッタリング装置70におけるスパッタリングを行う部分をチャンバー10内に位置させることができる(図4参照)。
<プラズマ生成装置40>
図5は、図3に示すプラズマ生成装置40の詳細図である。図6は、図5のB-B断面図である。プラズマ生成装置40は、プラズマを生成する際に用いるガスを供給するガス供給管41と、高周波電圧によって、ガス供給管41から供給されたガスよりプラズマを生成する一対の板状導体部51、52とを有している。詳しくは、ガス供給管41は、第1開閉部材20の厚さ方向に第1開閉部材20を貫通しており、ガス供給管取付部材45によって第1開閉部材20に取り付けられている。また、ガス供給管41は、ガス供給管41の延在方向に沿って延在するガス流路42が内部に形成されており、チャンバー10の外側からチャンバー10内にガスを供給することが可能になっている。即ち、ガス供給管41における、第1開閉部材20がチャンバー10の開口部11を閉じた際における外側に位置する側の端部には、プラズマを生成する際に用いるガスをガス供給管41に対して供給するガス供給部44が接続されており、ガス供給管41の他端寄りの位置には、ガス流路42を流れたガスをチャンバー10内に導入する孔であるガス供給孔43が形成されている。ガス供給部44には、質量流量計に流量制御の機能を持たせたマスフローコントローラー(MFC)64を介して、プラズマの生成に用いるガスであるプラズマ生成ガスが供給される。プラズマ生成ガスとしては、例えば、アルゴンや、アルゴンと酸素の混合ガス、酸素或いは窒素の単独ガスや、酸素或いは窒素とアンモニアとの混合ガス等が用いられる。さらには、プラズマ生成ガスには、ヘリウム、二酸化炭素、亜酸化窒素、水素、空気、及びそれらの混合ガスが用いられても良い。
一対の板状導体部51、52は、いずれも平板状に形成されており、アルミニウムなどの金属板、或いはその他の導体板より形成されている。なお、板状導体部51、52は、表面に誘電体膜を有していても良く、一対の板状導体部51、52におけるプラズマガスの導出側の表面は、アーク放電等を避けるため、アルミナ溶射、若しくは硬質陽極酸化処理により誘電体膜が被覆する構成としてもよく、または、板状導体部51、52は、一対の板状導体部51、52のそれぞれ両面に、アルミナ溶射、若しくは硬質陽極酸化処理を施しても良い。
一対の板状導体部51、52は、支持板50によって支持されている。支持板50は、例えば、ガラス、セラミック等の絶縁材料により形成されている。支持板50は、板の一面側の外周付近の全周に亘って凸部が形成された形状で形成されており、換言すると、支持板50は、一面側に支持板50の外周に沿って凹んだ凹部50aが形成された、厚さが厚い板状の形状で形成されている。
このように形成される支持板50は、凹部50aが形成されていない側の面が第1開閉部材20に対向し、凹部50aが形成されている側の面が、第1開閉部材20が位置する側の反対側に位置する向きで配置され、支持部材46によって支持されている。支持部材46は、円筒状の部材と、当該円筒状の部材の両端に位置する取付部材とを有し、一端側の取付部材が第1開閉部材20に取り付けられ、他端側の取付部材が支持板50に取り付けられている。これにより、支持板50は、支持板50と第1開閉部材20との間に配置されて双方に取り付けられる支持部材46により支持されている。
第1開閉部材20を貫通するガス供給管41は、支持部材46における円筒状の部材の内側を通って支持板50の位置まで延び、支持板50を貫通している。これにより、ガス供給管41に形成されるガス供給孔43は、支持板50における凹部50aが形成される部分に配置される。
一対の板状導体部51、52は、支持板50における凹部50aが形成されている側に、凹部50aを覆って配置されている。その際に、一対の板状導体部51、52は、双方の間の外周付近にスペーサ55が配置され、スペーサ55を介して重ねられている。このように、スペーサ55を介して重ねられる一対の板状導体部51、52におけるスペーサ55が配置される部分以外の部分は、板状導体部51と板状導体部52とは互いに離間しており、空隙部56として形成されている。一対の板状導体部51、52同士の間隔は、プラズマ生成装置40において導入するガスや供給する電力の周波数、さらには電極のサイズ等に応じて適宜設定するのが好ましいが、例えば、3mm~12mm程度である。
一対の板状導体部51、52は、スペーサ55を介して重ねられた状態で、板状導体部51、52を保持するための部材である保持部材58によって保持されている。つまり、保持部材58は、板状導体部51、52における支持板50が位置する側の反対側に配置され、保持部材58と支持板50とによって板状導体部51、52を挟む状態で支持板50に取り付けられている。これにより、スペーサ55を介して重ねられる一対の板状導体部51、52は、保持部材58と支持板50とによって挟まれた状態で、保持部材58によって保持されている。
一対の板状導体部51、52は、このように支持板50における凹部50aを覆って配置されており、保持部材58によって保持される状態では、支持板50の凹部50aは、板状導体部51、52とによって空間を形成する。
例えば、重ねて配置される一対の板状導体部51、52のうち、板状導体部52が支持板50側に配置され、板状導体部51が保持部材58側に配置される場合は、この空間は、支持板50の凹部50aと板状導体部52とによって区画される。このように形成される空間は、ガス供給管41により供給されるプラズマ生成ガスが導入されるガス導入部57として形成される。ガス供給管41のガス供給孔43は、ガス導入部57に位置してガス導入部57に開口している。ガス導入部57は、支持板50と板状導体部52とが密接して取り付けられることにより区画されている。
また、一対の板状導体部51、52には、厚さ方向に貫通する貫通孔が53、54が、それぞれ多数形成されている。即ち、ガス供給管41により供給されるプラズマ生成ガスの流入側に位置する板状導体部52には、板状導体部52の厚さ方向に見た場合にマトリクス状に所定の間隔で複数の貫通孔54が形成されており、プラズマ生成ガスより生成されたプラズマガスの流出側に位置する板状導体部51には、板状導体部51の厚さ方向に見た場合にマトリクス状に所定の間隔で複数の貫通孔53が形成されている。
板状導体部51の貫通孔53と板状導体部52の貫通孔54は、それぞれ円筒形状の孔であり、双方の貫通孔53、54は、同軸上に配置されている。即ち、板状導体部51の貫通孔53と板状導体部52の貫通孔54とは、板状導体部51の貫通孔53との中心と板状導体部52の貫通孔54の中心とが揃って配置されている。このうち、板状導体部51の貫通孔53は、ガス流入側の板状導体部52の貫通孔54よりも径が小さくなっている。このように一対の板状導体部51、52には、複数の貫通孔53、54が形成されてホロー電極構造となり、これら複数の貫通孔53、54を介して生成されたプラズマガスが、高密度で流れることになる。
平行平板型の板状導体部51、52の間には、空隙部56が介在するが、空隙部56は、静電容量を有するコンデンサとして機能する。詳しくは、支持板50及び板状導体部51、52には、導電性の部材によって導電部(図示省略)が施されており、導電部によって支持板50は接地63され、板状導体部52も接地63されている。また、高周波電源(RF)61は、一方の端部が接地63され、高周波電源61の他方の端部は、静電容量等を調整してプラズマとの整合性を得るためのマッチングボックス(MB)60を介して板状導体部51と導通する。従って、高周波電源61を稼働させた場合には、例えば13.56MHzなどの所定の周波数で板状導体部51の電位がプラスとマイナスに振れることになる。
<スパッタリング装置70>
図7は、図4に示すスパッタリング装置70の詳細図である。図8は、図7のC-C断面図である。スパッタリング装置70は、冷却水が流れる冷却水管71と、磁界を発生させるマグネット81と、ガス流入部16から流入したガスがマグネット81で発生した磁界によりイオン化し、イオンが衝突することにより成膜に用いられる原子等の粒子がはじき出されるターゲット84と、ターゲット84を冷却する冷却ジャケット82と、マグネット81とターゲット84と冷却ジャケット82とを支持する支持板80とを有している。本実施形態では、ターゲット84には、銅が用いられている。また、冷却水管71は、第2開閉部材30の厚さ方向に第2開閉部材30を貫通しており、冷却水管取付部材75によって第2開閉部材30に取り付けられている。
さらに、冷却水管71には、冷却水管71の延在方向に沿って延在する冷却水路72が内部に形成されており、チャンバー10の外側と、チャンバー10内に配置される冷却ジャケット82との間で、冷却水を循環させることが可能になっている。即ち、冷却水管71における、第2開閉部材30がチャンバー10の開口部11を閉じたにおける外側に位置する側の端部は、冷却水の入り口である水入口73と、冷却水の出口である水出口74とに接続されている。このため、冷却水管71の内部に形成される冷却水路72としては、水入口73に接続される冷却水路72と、水出口74に接続される冷却水路72とが設けられている。一方、冷却水管71における、第2開閉部材30がチャンバー10の開口部11を閉じたにおけるチャンバー10の内側に位置する側の端部は、冷却ジャケット82に接続されている。冷却ジャケット82は、内部に冷却水の流路が形成され、冷却水が流れることが可能になっており、これにより、チャンバー10の外側と、冷却ジャケット82との間で、冷却水を循環させることができる。
支持板80は、マグネット81と冷却ジャケット82とターゲット84とを重ねた状態で支持することが可能になっている。詳しくは、支持板80、マグネット81、冷却ジャケット82、ターゲット84は、いずれも板状の形状で形成されており、マグネット81、冷却ジャケット82、ターゲット84よりも、支持板80の方が、平面視における形状が大きい形状で形成されている。このため、マグネット81と冷却ジャケット82とターゲット84とは、支持板80側からマグネット81、冷却ジャケット82、ターゲット84の順で重ねられた状態で、ターゲット84における冷却ジャケット82側の面の反対側の面の外周付近を保持部材85によって支持されることにより、支持板80と保持部材85によって保持されている。また、保持部材85によって保持されるマグネット81、冷却ジャケット82、ターゲット84は、外周部分も保持部材85に囲まれた状態で保持されている。
その際に、支持板80とマグネット81との間には、絶縁材83が配置されており、絶縁材83は、マグネット81の平面視における外周部分にも配置されている。つまり、絶縁材83は、支持板80とマグネット81との間と、マグネット81と保持部材85との間に配置されている。このため、マグネット81は、絶縁材83を介して、支持板80と保持部材85とによって保持されている。
支持板80は、マグネット81等を保持している側の面が、第2開閉部材30が位置する側の反対側に位置し、マグネット81等を保持している側の反対側の面が、第2開閉部材30に対向する向きで配置され、支持部材76によって支持されている。支持部材76は、円筒状の部材と、当該円筒状の部材の両端に位置する取付部材とを有し、一端側の取付部材が第2開閉部材30に取り付けられ、他端側の取付部材が支持板80に取り付けられている。その際に、支持板80は、支持板80を厚さ方向に見た場合における中央部分付近の位置に取り付けられている。これにより、支持板80は、支持板80と第2開閉部材30との間に配置されて双方に取り付けられる支持部材76により支持されている。
なお、一端が冷却ジャケット82に接続される冷却水管71は、支持部材76が配置される位置とは異なる位置で、支持板80におけるマグネット81等を保持する側の面の反対側から、支持板80とマグネット81と絶縁材83とを貫通している。これにより、冷却水管71は、冷却ジャケット82に接続されている。
<収容ユニット支持部材110>
図9、図10は、図1に示す収容ユニット100、収容ユニット支持部材110及び補正板130についての説明図であり、図9は、プラズマ生成装置40がチャンバー10内に位置する状態での説明図、図10は、スパッタリング装置70がチャンバー10内に位置する状態での説明図である。図11は、図9のD-D断面図である。図12は、図10のE-E断面図である。収容ユニット支持部材110は、チャンバー10が有する複数の側壁13のうち、対向する一組の側壁13である支持壁14に、揺動軸111が連結されることにより支持されており、揺動手段であるサーボモータ120から伝達される駆動力によって揺動することが可能になっている。詳しくは、収容ユニット支持部材110は、チャンバー10の内側で長さ方向Yに離間し、支持壁14に平行な向きで配置される一対のサイドプレート112と、長さ方向Yに延びて一対のサイドプレート112同士の間に亘って配置される取付部材113とを有している。各サイドプレート112は、略半円形の板状の形状で形成されており、半円形の平らな部分がチャンバー10の開口部11寄りに位置し、半円形の円弧側の部分がチャンバー10の底部15寄りに位置する向きで配置されている。
また、長さ方向Yにおけるサイドプレート112同士の間隔は、プラズマ生成装置40やスパッタリング装置70がチャンバー10内に位置する状態における、同方向におけるプラズマ生成装置40やスパッタリング装置70の大きさよりも大きくなっている。詳しくは、サイドプレート112は、チャンバー10内での上下方向Zにおける位置が、プラズマ生成装置40やスパッタリング装置70がチャンバー10内に位置する状態における、プラズマ生成装置40やスパッタリング装置70のチャンバー10の底部15側の端部の、上下方向Zにおける位置を含むことのできる位置及び大きさで配置されている。
また、サイドプレート112の半円形の平らな部分の長さは、幅方向Xにおけるプラズマ生成装置40やスパッタリング装置70の幅よりも大きくなっている。換言すると、幅方向Xにおけるサイドプレート112の全幅は、上下方向Zの位置が、プラズマ生成装置40やスパッタリング装置70と、サイドプレート112とで重なる範囲での、幅方向Xにおけるプラズマ生成装置40やスパッタリング装置70の全幅よりも大きくなっている。また、サイドプレート112は、略半円形の形状で形成され、円弧側の部分がチャンバー10の底部15寄りに位置する向きで配置されるため、幅方向Xにおけるサイドプレート112の幅は、上側から下側に向かうに従って小さくなっている。
揺動軸111は、軸心が長さ方向Yに平行になる向きで一対のサイドプレート112ごとに設けられており、サイドプレート112には、それぞれ異なる揺動軸111が連結されている。揺動軸111のうち、収容ユニット100を揺動させるサーボモータ120が位置する側の揺動軸111は、サーボモータ120の出力軸121に連結されて出力軸121と一体となって回動する駆動軸125が、揺動軸111として用いられている。つまり、サーボモータ120は、一組の支持壁14のうち一方の支持壁14に取り付けられている。サーボモータ120は、当該支持壁14における、チャンバー10の外側の面にサーボモータ取付部材122によって取り付けられており、サーボモータ120で発生して駆動力を出力する出力軸121は、支持壁14を貫通して支持壁14からチャンバー10内に延びている。駆動軸125は、チャンバー10内に配置されると共に、チャンバー10内でサーボモータ120の出力軸121に対して相対回転が不可の状態、つまり、出力軸121に対して一体となって回動可能な状態で、出力軸121に連結されている。また、駆動軸125は、サーボモータ120の出力軸121に連結される側の端部の反対側の端部側が、揺動手段軸連結部114によってサイドプレート112に連結されている。これにより、駆動軸125は、揺動軸111として用いられると共に、サーボモータ120で発生した駆動力は、サーボモータ120の出力軸121から駆動軸125に伝達され、駆動軸125から収容ユニット支持部材110のサイドプレート112に伝達することが可能になっている。
揺動軸111のうち、サーボモータ120が位置する側の反対側に位置する揺動軸111は、支持軸116が用いられている。支持軸116は、一端が支持軸支持部材117に支持され、他端が支持軸連結部115によってサイドプレート112に連結されている。支持軸116における、支持軸支持部材117に支持される側の端部付近は、支持壁14を貫通しており、支持壁14におけるチャンバー10の外側の面から、支持軸支持部材117によって回転不可の状態で支持されている。支持軸116における、支持軸連結部115に連結される側の端部付近は、サイドプレート112に取り付けられる支持軸連結部115に支持されており、支持軸連結部115と支持軸116とは、支持軸116の軸心を中心として相対的に回転することが可能になっている。
駆動軸125が連結される側のサイドプレート112と、支持軸116が連結される側のサイドプレート112とは、双方のサイドプレート112同士の間に亘って配置される取付部材113によって連結されている。取付部材113は、長さ方向Yに沿って延びる棒状の部材からなり、両端がそれぞれ異なるサイドプレート112に取り付けられている。また、取付部材113は複数が配置されており、複数の取付部材113は、略半円形の形状で形成されるサイドプレート112における円弧状の部分の外周付近に配置されている。これにより、一対のサイドプレート112は、複数の取付部材113によって互いに連結されている。このため、駆動軸125が連結される側のサイドプレート112がサーボモータ120から伝達される駆動力によって揺動する際には、揺動方向の力が他方のサイドプレート112にも伝達され、一対のサイドプレート112は、一体となって揺動することが可能になっている。
<収容ユニット100>
このように形成される収容ユニット支持部材110は、収容ユニット100を支持することが可能になっている。図13は、図9に示す収容ユニット100の斜視模式図である。収容ユニット100は、被処理材保持壁101と側壁102とにより、籠状の形状で形成されている。このうち、側壁102は、収容ユニット支持部材110によって収容ユニット100を支持する状態において、収容ユニット支持部材110のサイドプレート112の近傍でサイドプレート112に平行に配置される板状の部材からなり、サイドプレート112と同様に一対が配置されている。一対の側壁102の間隔は、一対のサイドプレート112の間隔よりも僅かに狭い間隔になっている。
また、側壁102は、収容ユニット支持部材110に支持されている状態において、幅方向Xにおける幅が、収容ユニット支持部材110のサイドプレート112と同様に、チャンバー10の開口部11側から底部15側に向かうに従って小さくなっている。本実施形態では、側壁102は、略台形の形状で形成されると共に、台形の上底と下底のうち長さが長い側が、収容ユニット支持部材110に支持されている状態において上側に位置し、長さが短い側が下側に位置する向きで配置されている。これにより、側壁102は、幅方向Xにおける幅が、上側から下側に向かうに従って小さくなっている。
さらに、側壁102は、台形の上底と下底のうち上側に位置して長さが長くなっている側の部分が、上側に向かって延長されている。つまり、側壁102は、長さ方向Yに見た場合における形状が、台形の上底と下底のうち長さが長い側に同じ長さの長方形が追加された、略五角形の形状で形成されている。これにより、側壁102は、幅方向Xにおける幅が、上側から下側に向かうに従って小さくなっている。
被処理材保持壁101は、一対の側壁102同士の間で側壁102同士の間に配置されており、側壁102の外周における五角形の上側の辺以外の辺に沿って形成されている。これにより、収容ユニット100は、収容ユニット支持部材110に支持されている状態における、チャンバー10の開口部11側の部分のみが開口しており、この部分は収容ユニット100の開口部103になっている。収容ユニット100は、このように開口部103が形成されることにより、籠状の形状で形成されており、収容ユニット100で収容する被処理材Wは、開口部103から出し入れすることが可能になっている。また、収容ユニット100の開口部103は、プラズマ生成装置40やスパッタリング装置70がチャンバー10内に配置された際に、プラズマ生成装置40の支持板50やスパッタリング装置70の支持板80が入り込むことのできる大きさになっている。
また、収容ユニット100が有する被処理材保持壁101は、パンチングプレート等の、多数の孔があいた板状の部材より形成されている。収容ユニット100は、被処理材保持壁101が多数の孔があいた部材より形成されることにより、収容ユニット100の内側と外側との間で、被処理材保持壁101を介して通気性を有している。
収容ユニット100における被処理材保持壁101の外面側には、収容ユニット支持部材110で収容ユニット100を支持する際に用いる取付板104が配置されている。取付板104は、厚さ方向が側壁102の厚さ方向と同じ方向になる向きで、被処理材保持壁101の外面側に複数が配置されており、本実施形態では、取付板104は、一対の側壁102同士の間の2箇所に配置されている。取付板104には、長さ方向Yに見た場合において、収容ユニット支持部材110が有する取付部材113が配置されている位置に、取付部材113が通る切欠き(図示省略)が形成されている。このため、収容ユニット支持部材110で収容ユニット100を支持する際には、収容ユニット100の取付板104に形成される切欠きに、収容ユニット支持部材110の取付部材113を入り込ませることが可能になっている。これにより、収容ユニット支持部材110が揺動する方向における収容ユニット支持部材110に対する収容ユニット100の相対移動を規制することができる状態で、収容ユニット支持部材110によって収容ユニット100を支持することができる。
<補正板130>
また、表面処理装置1は、収容ユニット100と、プラズマ生成装置40及びスパッタリング装置70との少なくともいずれか一方に配置され、被処理材Wが配置される範囲を制限する補正板130を有している。本実施形態では、補正板130としては、プラズマ生成装置40及びスパッタリング装置70に取り付けられる装置側補正板131が設けられている。このうち、プラズマ生成装置40に取り付けられる装置側補正板131は、収容ユニット100が配置されるチャンバー10内にプラズマ生成装置40が位置する場合における、収容ユニット100の側壁102に平行な向きで、一対の装置側補正板131が一対の側壁102の間に配置されている。即ち、一対の装置側補正板131は、互いに対向する向きで配置されている。
一対の装置側補正板131は、それぞれ取付部132を有しており、プラズマ生成装置40に取り付けられる装置側補正板131の取付部132は、プラズマ生成装置40の保持部材58の下面に取り付けられている。即ち、取付部132は、幅方向Xに装置側補正板131を見た場合における装置側補正板131の上端に位置しており、取付部132は、厚さ方向が上下方向Zになる板状の形状で形成されている。装置側補正板131は、このように形成される取付部132を、プラズマ生成装置40の保持部材58の下面に取り付けることにより、プラズマ生成装置40の下面に取り付けられている。また、装置側補正板131は、プラズマ生成装置40の保持部材58に取り付けることにより、装置側補正板131同士の間隔は、長さ方向Yにおけるプラズマ生成装置40の支持板50の幅と同程度の大きさになっている。具体的には、プラズマ生成装置40に取り付けられる一対の装置側補正板131同士の間隔は、プラズマ生成装置40が有するガス導入部57の、長さ方向Yにおける幅と同程度の大きさになっている。
また、プラズマ生成装置40に取り付けられる装置側補正板131の、幅方向Xにおける幅は、同方向におけるプラズマ生成装置40の支持板50の幅と同程度の大きさになっている。また、装置側補正板131の上下方向Zにおける高さは、収容ユニット100が収容ユニット支持部材110で支持されるチャンバー10内にプラズマ生成装置40を位置させた際に、装置側補正板131を収容ユニット100から上下方向Zに離間させることのできる高さになっている。
スパッタリング装置70に取り付けられる装置側補正板131も同様に、取付部132がスパッタリング装置70の保持部材85の下面に取り付けられることにより、スパッタリング装置70の下面に取り付けられている。スパッタリング装置70に取り付けられる装置側補正板131同士の間隔は、長さ方向Yにおけるスパッタリング装置70の支持板80の幅と同程度の大きさになっている。具体的には、スパッタリング装置70に取り付けられる一対の装置側補正板131同士の間隔は、スパッタリング装置70が有するマグネット81の、長さ方向Yにおける幅と同程度の大きさになっている。
また、スパッタリング装置70に取り付けられる装置側補正板131の、幅方向Xにおける幅は、同方向におけるスパッタリング装置70の支持板80の幅と同程度の大きさになっている。また、装置側補正板131の上下方向Zにおける高さは、収容ユニット100が収容ユニット支持部材110で支持されるチャンバー10内にスパッタリング装置70を位置させた際に、装置側補正板131を収容ユニット100から上下方向Zに離間させることのできる高さになっている。
図14は、図11に示す収容ユニット100及び収容ユニット支持部材110が揺動した状態を示す説明図である。図15は、図12に示す収容ユニット100及び収容ユニット支持部材110が揺動した状態を示す説明図である。プラズマ生成装置40に取り付けられる装置側補正板131と、スパッタリング装置70に取り付けられる装置側補正板131とは、形状がほぼ同じ形状になっており、チャンバー10内に位置する際におけるチャンバー10内での配置位置が、実質的に同じ位置になっている。また、装置側補正板131は、収容ユニット100が揺動軸111を中心として収容ユニット支持部材110と一体となって揺動した際に、収容ユニット100に当接しないように、幅方向Xにおける両側の辺と下端の辺との間にかけて、面取りが施されている。
なお、本実施形態に係る表面処理装置1では、揺動軸111を中心として収容ユニット支持部材110が揺動する際における揺動の角度は、収容ユニット支持部材110が中立となる位置から、揺動方向における両側にそれぞれ約50°ずつ、合計で約100°の揺動角度になっている。ここでいう収容ユニット支持部材110が中立となる位置は、収容ユニット支持部材110に収容ユニット100を装着した際に、収容ユニット100の開口部103が真上を向く状態となる位置をいう。
<ポンプユニット140>
図16は、図1に示すポンプユニット140の詳細図である。図17は、図16のF-F方向から見た、昇降軸162、ウォームジャッキ161部詳細図である。図18は、図16の断面模式図である。図19は、図18に示す昇降バルブ153が開口部152を開いた状態を示す説明図である。チャンバー10の底部15に取り付けられるポンプユニット140は、流量調整バルブ150と、ターボ分子ポンプ170とを有している。流量調整バルブ150は、流体が流れる流路部151と、流路部151の一端に形成される開口部152を開閉する昇降バルブ153と、昇降バルブ153の開閉動作を行わせる駆動手段であるサーボアクチュエータ160とを有している。また、ターボ分子ポンプ170は、流量調整バルブ150が有する流路部151を流れる流体を吸引するポンプになっている。
詳しくは、流量調整バルブ150の流路部151は、ポンプユニット140をチャンバー10に取り付けるための取付フランジ141に形成されており、ターボ分子ポンプ170は、ターボ分子ポンプ170が有するポンプフランジ171が取付フランジ141に取り付けられることにより、取付フランジ141に取り付けられている。取付フランジ141は、板状の部材になっており、流路部151は、取付フランジ141の厚さ方向に貫通する孔として形成されている。流路部151の開口部152は、このように取付フランジ141を貫通する流路部151の一端側に位置しており、ターボ分子ポンプ170は、取付フランジ141における、流路部151の開口部152が位置する側の面の反対側の面に取り付けられている。これにより、ターボ分子ポンプ170は、流路部151における開口部152が形成される側の端部の反対側に配置されている。
ポンプユニット140は、取付フランジ141がチャンバー10の底部15の下面に取り付けられることにより、チャンバー10に取り付けられている。取付フランジ141は、流路部151の開口部152が位置する側の面がチャンバー10側に位置し、ターボ分子ポンプ170が取り付けられる側の面がチャンバー10の反対側に位置する向きで取り付けられる。これにより、取付フランジ141は、流路部151に流体が流れる際における流れ方向が上下方向Zとなり、開口部152が流路部151の上端に位置する向きで取り付けられる。換言すると、流路部151は、開口部152の開口方向が上下方向Zになる向きで配置される。取付フランジ141がチャンバー10の底部15に取り付けられた状態では、流路部151の開口部152は、チャンバー10内に対して開口しており、流路部151は、チャンバー10内に連通している。
流量調整バルブ150が有する昇降バルブ153は、チャンバー10内に配置されており、流路部151の開口部152側、即ち、開口部152の上側に配置されている。昇降バルブ153は、開口部152との上下方向Zの距離dが変化することにより、開口部152を開閉することが可能になっている。つまり、昇降バルブ153は、開口部152を閉じる際には、開口部152の全域を覆うことによって閉じることができ、開口部152を開く際には、開口部152から開口部152の開口方向、即ち、上下方向Zに離間することにより、開口部152を開くことができる。これらの開口部152と昇降バルブ153は、開口部152の開口方向に見た場合における形状が、いずれも略円形になっており、開口部152よりも昇降バルブ153の方が径が大きくなっている。この場合における略円形とは、製造時における寸法誤差や僅かな凹凸の有無に関わらず、実質的に円形の形状で形成されることを意味している。
昇降バルブ153を開閉させるサーボアクチュエータ160は、昇降バルブ153を開口部152の開口方向、即ち、上下方向Zに移動させることにより、昇降バルブ153に対して開口部152の開閉動作を行わせることが可能になっている。サーボアクチュエータ160は、取付フランジ141におけるターボ分子ポンプ170が取り付けられる面側に配置され、駆動手段支持部143によって支持されている。即ち、サーボアクチュエータ160は、駆動手段支持部143を介して取付フランジ141に取り付けられている。
サーボアクチュエータ160で発生する駆動力は、ウォームジャッキ161と、昇降軸162と、連結部材163とを介して昇降バルブ153に伝達され、昇降バルブ153は、これらを介して伝達された駆動力によって上下方向Zに移動し、開口部152を開閉することが可能になっている。このうち、ウォームジャッキ161は、サーボアクチュエータ160から伝達された駆動力によって昇降軸162を当該昇降軸162の軸方向に移動させることが可能になっており、昇降軸162は、軸方向が上下方向Zに沿った向きで配置されている。このため、サーボアクチュエータ160からの駆動力がウォームジャッキ161より伝達された際には、昇降軸162は、この駆動力によって上下方向に移動する。昇降軸162は、チャンバー10の底部15と取付フランジ141を貫通して配置されており、上端がチャンバー10内に位置し、下端はチャンバー10の外側で、取付フランジ141の下側に位置している。
なお、昇降軸162が取付フランジ141を貫通する部分は、気密になっており、取付フランジ141を貫通する部分の両側で流体が流れないようになっている。また、昇降軸162は、チャンバー10の底部15を貫通している。
ウォームジャッキ161は、昇降軸162の下端寄りの位置に連結され、サーボアクチュエータ160から伝達された駆動力を、昇降軸162の下端寄りの位置から昇降軸162に伝達し、昇降軸162を上下方向Zに移動させる。
連結部材163は、チャンバー10内に配置され、昇降軸162の上端と昇降バルブ153とを連結している。即ち、連結部材163は、昇降バルブ153における流路部151の開口部152を開閉する面の反対側の面と、昇降軸162の上端との間に亘って配置されており、双方に連結されることにより、昇降軸162の上端と昇降バルブ153とを連結している。これにより、昇降軸162が上下方向Zに移動した際には、昇降軸162と共に連結部材163も上下方向Zに移動し、昇降バルブ153も上下方向Zに移動することが可能になっている。昇降バルブ153は、このようにサーボアクチュエータ160から伝達される駆動力によって上下方向Zに移動することにより、流路部151の開口部152を開閉することができる。
チャンバー10には、昇降バルブ153の開閉動作をガイドするバルブガイド165が設けられており、昇降バルブ153には、バルブガイド165と係合するガイド係合部166が取り付けられている。バルブガイド165は、昇降バルブ153が開閉動作をする際に移動する方向である上下方向Zに延びる棒状の形状で形成されており、チャンバー10の底部15の内面における、昇降バルブ153が位置する部分の近傍に配置されている。
具体的には、バルブガイド165は、昇降バルブ153に対して、昇降軸162が位置する側の反対側に配置されている。ガイド係合部166は、昇降バルブ153の上面側に取り付けられており、昇降バルブ153の上面から、バルブガイド165の位置に亘って形成されている。ガイド係合部166には、バルブガイド165が通る貫通孔が形成されており、バルブガイド165は、ガイド係合部166に形成される貫通孔を貫通している。
ガイド係合部166は、昇降バルブ153に取り付けられているため、昇降バルブ153が移動する際には、ガイド係合部166も一体となって移動する。その際に、ガイド係合部166に形成される貫通孔には、上下方向Zに延びるバルブガイド165が貫通しているため、昇降バルブ153と共にガイド係合部166が移動する際には、ガイド係合部166は、バルブガイド165に沿って移動する。これにより、バルブガイド165は、ガイド係合部166が取り付けられる昇降バルブ153の上下方向Zの移動をガイドすることができる。
昇降バルブ153は、上下方向Zに移動することにより、流路部151の開口部152を開閉することができるが、昇降バルブ153が開口部152を開いた際には、チャンバー10内と流路部151との間では、流体は、昇降バルブ153の外周部と取付フランジ141との間の部分から流れる。
つまり、昇降バルブ153が開口部152と閉じる際には、昇降バルブ153の下面が取付フランジ141の上面に接触することにより、昇降バルブ153は開口部152と閉じる。この場合、チャンバー10内と流路部151との間の流体の経路は、昇降バルブ153の下面と取付フランジ141の上面との接触部分によって遮られる。昇降バルブ153が開口部152を開く際には、昇降バルブ153は上方に移動するため、昇降バルブ153の下面は、取付フランジ141の上面から離れる。これにより、チャンバー10内と流路部151との間では、流体は、昇降バルブ153の下面と取付フランジ141の上面との間の部分から、チャンバー10内と流路部151との間を流れることが可能になる。
このため、昇降バルブ153が開口部152を開いた際における、チャンバー10内と流路部151との間を流れる流体の経路の実質的な開口部は、昇降バルブ153の下面の外周部と、取付フランジ141の上面との間の部分になる。昇降バルブ153の下面と取付フランジ141の上面とは、昇降バルブ153を上下方向Zに移動させることにより距離dが変化するため、昇降バルブ153の下面の外周部と、取付フランジ141の上面との間に形成される開口部は、昇降バルブ153を上下方向Zに移動させることにより開口面積が変化する、調整開口部155として形成されている。
調整開口部155は、チャンバー10と開口部152との間で流体が流通する際における開口部になっており、調整開口部155の開口面積は、チャンバー10と開口部152との間で流体が流通する際における流通面積DAになっている。調整開口部155の流通面積DAは、昇降バルブ153の下面の外周部の長さと、昇降バルブ153の下面と取付フランジ141の上面との距離dを積算することにより算出される値になっており、昇降バルブ153と取付フランジ141との距離dに応じて変化する。つまり、流通面積DAは、昇降バルブ153と取付フランジ141との距離d、即ち、流路部151の開口部152と昇降バルブ153との距離dが大きくなるに従って大きくなり、開口部152と昇降バルブ153との距離dが小さくなるに従って流通面積DAも小さくなる。このため、昇降バルブ153は、開口部152の開口方向における、昇降バルブ153と開口部152との距離dが変化することにより、開口部152に対する流通面積DAを変化させることが可能になっている。
流通面積DAを変化させることができる昇降バルブ153は、サーボアクチュエータ160によって上下方向Zに移動するが、サーボアクチュエータ160は、所定の検出値に基づいて昇降バルブ153を上下方向Zに移動させる。具体的には、サーボアクチュエータ160は、真空計180で検出したチャンバー10内の圧力に基づいて昇降バルブ153を移動させることが可能になっている。これにより、サーボアクチュエータ160は、真空計180(図1参照)で検出したチャンバー10内の圧力に基づいて、流通面積DAを変化させることができる。
<表面処理装置1の動作>
本実施形態に係る表面処理装置1は、以上のような構成を含み、以下、その作用について説明する。図20は、図1に示す収容ユニット100に被処理材Wを収容した状態を示す説明図である。実施形態に係る表面処理装置1では、例えば、通常のめっき処理では金属薄膜を表面に形成し難い樹脂材料等の難めっき材料からなる被処理材Wに対して、めっき処理によって金属薄膜を表面に形成し易くなるように表面処理を行う。本実施形態に係る表面処理装置1で表面処理を行う被処理材Wは、大きさが比較的小さな部材を想定しており、表面処理装置1は、大きさが小さい多数の被処理材Wに対してまとめて表面処理を行うのに適している。
なお、表面処理装置1で表面処理を行う被処理材Wは、収容ユニット100の被処理材保持壁101に多数形成される孔よりは大きさが大きく、収容ユニット100の被処理材保持壁101に形成される孔を通らない大きさの部材になっている。
図21は、実施形態に係る表面処理装置1で被処理材Wの表面処理を行う際の手順を示すフロー図である。表面処理装置1で被処理材Wに対して表面処理を行う場合には、まず、被処理材Wを収容ユニット100に収容する(ステップST11)。即ち、収容ユニット100の開口部103から、収容ユニット100内に複数の被処理材Wを入れる。
次に、被処理材Wを収容した収容ユニット100を、チャンバー10内に配置する(ステップST12)。チャンバー10内への収容ユニット100の配置は、被処理材Wを収容した収容ユニット100を、チャンバー10内の収容ユニット支持部材110に装着することにより行う。即ち、第1開閉部材20と第2開閉部材30との双方が開いた状態のチャンバー10内に対して、被処理材Wを収容した収容ユニット100を入り込ませ、収容ユニット100を収容ユニット支持部材110に取り付ける。これにより、被処理材Wをチャンバー10の内部に収容する。
被処理材Wをチャンバー10の内部に収容したら、ヒンジ部21を中心として第1開閉部材20を回動させることにより、チャンバー10の開口部11を第1開閉部材20によって閉じる(ステップST13)。これにより、第1開閉部材20に取り付けられているプラズマ生成装置40の一部を、チャンバー10内に位置させる(図3、図9参照)。この場合、少なくともプラズマ生成装置40の支持板50に支持されている板状導体部51、52をチャンバー10内に位置させ、板状導体部51、52は、チャンバー10内に配置される収容ユニット100の開口部103から収容ユニット100内に入り込ませる。これにより、プラズマ生成装置40が有する板状導体部51、52を、収容ユニット100に収容される被処理材Wの上方で、被処理材Wの比較的近傍に位置させる。
ここで、プラズマ生成装置40には、被処理材Wが配置される範囲を制限する補正板130である一対の装置側補正板131が取り付けられている。装置側補正板131は、プラズマ生成装置40の板状導体部51、52よりも下側に配置されるため、板状導体部51、52を収容ユニット100の開口部103から収容ユニット100内に入り込ませる状態にした際には、装置側補正板131も収容ユニット100内に入り込む。これにより、収容ユニット100に収容される被処理材Wは、収容ユニット100内に位置する一対の装置側補正板131同士に間に位置する状態になる。
被処理材Wを収容した収容ユニット100をチャンバー10内に配置し、第1開閉部材20を閉じることによりプラズマ生成装置40をチャンバー10内に位置させたら、ポンプユニット140によってチャンバー10内を減圧する(ステップST14)。その際に、スパッタリングを行う際に用いるガスをチャンバー10内に流入するガス流入部16の経路は閉じ、ガス流入部16からはガスが流入しないようにする。チャンバー10内をポンプユニット140によって減圧する際には、ターボ分子ポンプ170を作動させることにより、ターボ分子ポンプ170によって吸引する流体であるチャンバー10内のガスを、ターボ分子ポンプ170で吸引してチャンバー10の外に排出する。また、ポンプユニット140は、チャンバー10内のガスをターボ分子ポンプ170によって吸引している状態で、流量調整バルブ150を作動させることにより、チャンバー10内からターボ分子ポンプ170側に流れるガスの流量を調整する。つまり、ポンプユニット140は、ターボ分子ポンプ170の吸引量と流量調整バルブ150の開度とにより、チャンバー10内からターボ分子ポンプ170側に流れるガスの流量を調整する。その際に、ある程度の流量の調整は、ターボ分子ポンプ170の回転数を調整することにより行い、微細な流量の調整は、流量調整バルブ150の開度を調整することによって行う。これにより、チャンバー10内の圧力を調整する。
詳しくは、ポンプユニット140の作動時は、チャンバー10内の流体であるガスは、流量調整バルブ150に形成される流路部151(図19参照)を通って、ターボ分子ポンプ170の吸引力によってターボ分子ポンプ170側に流れる。流量調整バルブ150は、サーボアクチュエータ160によって昇降バルブ153を上下方向Zに移動させ、流路部151の開口部152との距離dを変化させることにより、チャンバー10内から流路部151側に流れるガスの流量を調整する。即ち、チャンバー10内のガスがチャンバー10内から流路部151に流れる際には、昇降バルブ153の下面の外周部と、取付フランジ141の上面との間に形成される開口部である調整開口部155(図19参照)を通ってチャンバー10内から流路部151に流れる。チャンバー10内から流路部151側に流れるガスが通る調整開口部155は、昇降バルブ153が上下方向Zを移動させ、昇降バルブ153と取付フランジ141との距離dを変化させることにより、調整開口部155の開口面積である流通面積DAを変化させることができる。
図22は、昇降バルブ153と取付フランジ141との距離dと流通面積DAとの関係を示す説明図である。調整開口部155の流通面積DAは、昇降バルブ153の下面の外周部の長さと、昇降バルブ153の下面と取付フランジ141の上面との距離dを積算することにより算出される値になっている。このため、流通面積DAは、昇降バルブ153と取付フランジ141との距離dに比例する。従って、流量調整バルブ150は、流通面積DAを、昇降バルブ153の上下方向Zにおける移動量に比例して変化させることができ、昇降バルブ153を上下方向Zに移動させて流通面積DAを変化させることにより、チャンバー10内から流路部151側に流れるガスの流量を調整することができる。
チャンバー10内から流路部151側に流れるガスの流量を調整する際に上下方向Zに移動させる昇降バルブ153は、サーボアクチュエータ160で発生する駆動力によって上下方向Zに移動する。つまり、昇降バルブ153を移動させる際には、サーボアクチュエータ160で発生した駆動力がウォームジャッキ161を介して昇降軸162に伝わることにより、昇降軸162を上下方向Zに移動させ、昇降軸162の上下方向Zの移動が連結部材163によって昇降バルブ153に伝わることにより、昇降バルブ153も上下方向Zに移動する。これにより、流量調整バルブ150は、サーボアクチュエータ160で発生する駆動力によって昇降バルブ153を移動させ、流通面積DAを変化させることができる。
サーボアクチュエータ160で発生する駆動力によって昇降バルブ153を移動させる際には、サーボアクチュエータ160は、真空計180で検出したチャンバー10内の圧力の検出値に基づいて作動する。例えば、真空計180で検出したチャンバー10内の圧力が、設定圧力よりも高い場合には、サーボアクチュエータ160は、昇降バルブ153を上昇させる方向に作動する。これにより、昇降バルブ153はサーボアクチュエータ160の駆動力により上方に移動するため、流通面積DAは大きくなり、チャンバー10内のガスは、ターボ分子ポンプ170に吸引力によって流通面積DAが大きい調整開口部155を通って大量のガスが流路部151の開口部152から流路部151内に流れる。このため、チャンバー10内の圧力は、急速に低下する。
これに対し、真空計180で検出したチャンバー10内の圧力が、設定圧力に近かったり、設定圧力よりも低かったりする場合には、サーボアクチュエータ160は、昇降バルブ153を下降させる方向に作動する。これにより、昇降バルブ153はサーボアクチュエータ160の駆動力により下方に移動するため、流通面積DAは小さくなり、チャンバー10内のガスは、ターボ分子ポンプ170に吸引力によって流通面積DAが小さい調整開口部155を通って少量のガスが流路部151の開口部152から流路部151内に流れる。このため、チャンバー10内の圧力は、低下速度が緩やかになったり、圧力が維持されたりする。
その際に、流量調整バルブ150は、調整開口部155の流通面積DAが、昇降バルブ153と取付フランジ141との距離dに比例して変化するため、昇降バルブ153と取付フランジ141との距離dを調整することにより、チャンバー10内から流路部151側に流れるガスの流量を、容易に調整することができる。従って、真空計180で検出したチャンバー10内の圧力に基づいて、昇降バルブ153と取付フランジ141との距離dを調整することにより、チャンバー10内の圧力を、例えば一定の圧力に容易に保持することができる。
ポンプユニット140は、このように真空計180で検出するチャンバー10内の圧力に基づいて昇降バルブ153を上下方向Zに移動させて調整開口部155の流通面積DAを調節し、チャンバー10内から流路部151側に流れるガスの流量を調整することにより、チャンバー10内の圧力を、所定の設定圧力まで減圧する。なお、この場合における設定圧力は、プラズマ生成装置40でプラズマを生成して被処理材Wに対して表面改質を行うのに適した圧力として設定される圧力になっており、例えば、10Pa~300Pa程度の圧力になっている。ポンプユニット140は、設定圧力に従ってチャンバー10内の圧力を10Pa~300Pa程度の圧力に調整することにより、チャンバー10内を低真空から中真空の状態にする。
チャンバー10内を設定圧力まで減圧したら、被処理材Wに対してプラズマ生成装置40によって表面改質を行う(ステップST15)。プラズマ生成装置40によって表面改質を行う際には、ガス導入部57(図5、図6参照)にプラズマ生成ガスを供給しつつ、平行平板型の板状導体部51、52(図5、図6参照)の間の空隙部56を高周波放電状態とし、プラズマを生成する。ガス導入部57へのプラズマ生成ガスの供給は、プラズマ生成ガスをガス供給部44からガス流路42に供給し、ガス流路42の一端側に形成されるガス供給孔43からガス導入部57にプラズマ生成ガスを放出することにより行う。また、板状導体部51、52の間の空隙部56を高周波放電状態にする際には、高周波電源61を稼働させることにより行う。空隙部56には、ガス導入部57に供給されたプラズマ生成ガスが、板状導体部52に形成される貫通孔54を通って流れるため、空隙部56に流れたプラズマ生成ガスは高周波放電状態の空隙部56でプラズマ化される。即ち、チャンバー10内は、ポンプユニット140によってプラズマを生成するのに適した圧力に減圧されているため、空隙部56にプラズマ生成ガスを流しつつ、空隙部56を高周波放電状態とすることにより、空隙部56では効率良くプラズマが生成される。
板状導体部51、52の間の空隙部56では、このようにプラズマが生成されるが、ガス導入部57にはプラズマ生成ガスが供給し続けられ、板状導体部52に形成される貫通孔54を通って空隙部56にプラズマ生成ガスが流れ続けるため、空隙部56では、プラズマが生成され続ける。このため、空隙部56で生成されたプラズマは、板状導体部51に形成される貫通孔53を通って、板状導体部52が位置する側の反対側に向かって空隙部56から流出する。即ち、空隙部56で生成されたプラズマは、板状導体部51の貫通孔53を通って、上下方向Zにおける下側に流出する。
その際に、板状導体部51の貫通孔53の径は、板状導体部52に形成される貫通孔54の径より小さくなっている。このため、空隙部56でプラズマ化したガスであるプラズマガスは、比較的に速い流速で、貫通孔53から上下方向Zにおける下側に流出する。上下方向Zにおける板状導体部51の下側には、収容ユニット100に収容される被処理材Wが位置するため、板状導体部51の貫通孔53から流出したプラズマガスは、収容ユニット100に収容される被処理材Wに吹き付けられる。被処理材Wは、このようにプラズマ生成装置40で生成されるプラズマにより表面改質が行われる。即ち、被処理材Wは、プラズマにより表面処理が行われる。
プラズマにより行われる表面処理は、具体的には、プラズマガス中のイオンが被処理材Wに衝突することによって被処理材Wの表面が荒らされる、表面粗面化が行われる。また、プラズマにより行われる他の表面処理としては、プラズマによる被処理材Wの表面の洗浄や、プラズマによって被処理材Wの表面に親水性の官能基を生成することも、プラズマによって被処理材Wに対して行われる表面処理として挙げられる。プラズマ生成装置40で生成するプラズマにより行われるこれらの表面処理は、本実施形態では総称して表面改質と称することがある。
ここで、プラズマ生成装置40には、被処理材Wが配置される範囲を制限する補正板130である一対の装置側補正板131が取り付けられている。このため、板状導体部51の貫通孔53から流出したプラズマガスは、一対の装置側補正板131同士の間を流れる。収容ユニット100に収容される被処理材Wは、一対の装置側補正板131同士に間に位置しているため、プラズマガスが一対の装置側補正板131同士の間を流れることにより、プラズマガスは、被処理材Wが位置する以外の方向にはあまり流れず、多くのプラズマガスが被処理材Wに向けて流れる。これにより、板状導体部51の貫通孔53から流出したプラズマガスの大部分が、被処理材Wに向けて流れ、被処理材Wは、これらのプラズマガスにより、効率良く表面処理が行われる。
このように、プラズマ生成装置40によって被処理材Wに表面処理を行う際には、収容ユニット100を揺動させながら行う。収容ユニット100の揺動は、収容ユニット100を揺動させる揺動手段であるサーボモータ120を駆動させることにより行う。収容ユニット100の揺動させる際に、サーボモータ120を駆動させると、サーボモータ120で発生した駆動力がサーボモータ120の出力軸121から駆動軸125を介して収容ユニット支持部材110に伝達される。サーボモータ120からの駆動力が伝達された収容ユニット支持部材110は、駆動軸125と支持軸116とより構成される収容ユニット支持部材110の揺動軸111を中心として揺動する。これにより、収容ユニット支持部材110に支持される収容ユニット100も、収容ユニット支持部材110と一体となって揺動する。即ち、収容ユニット100は、収容ユニット支持部材110が揺動軸111を中心として揺動することができる揺動角度の範囲内で、収容ユニット支持部材110と一体となって、揺動軸111を中心とする揺動方向において往復で揺動する。
収容ユニット100が揺動すると、収容ユニット100に収容されている被処理材Wには、収容ユニット100が揺動方向において往復で揺動することにより慣性力が発生する。収容ユニット100に収容されている被処理材Wは、この慣性力により収容ユニット100内で移動したり、被処理材W同士が衝突して被処理材Wがひっくり返ったりする。
なお、サーボモータ120で発生する駆動力により収容ユニット100を揺動させる場合は、速度や加速度を急激に変化させる動作も含ませるのが好ましい。収容ユニット100を揺動の速度や加速度を急激に変化させることにより、被処理材Wを収容ユニット100内で移動させたり、ひっくり返らせたりし易くなる。
収容ユニット100に収容される被処理材Wに対してプラズマ生成装置40から吹き付けられるプラズマガスは、収容ユニット100の揺動によって被処理材Wが収容ユニット100内で移動したりひっくり返ったりすることにより、各被処理材Wの全面に到達する。つまり、収容ユニット100に収容される被処理材Wは、収容ユニット100が揺動することにより、全面が万遍なくプラズマに曝される。これにより、収容ユニット100に収容される複数の被処理材Wは、プラズマによって各被処理材Wの全面に表面処理が施され、被処理材Wの形状が複雑な形状である場合でも、複雑な形状の被処理材Wの全面に万遍なく、表面処理が施される。
プラズマ生成装置40による表面改質が所定の時間行われたら、プラズマ生成装置40でのプラズマの生成を停止し、収容ユニット支持部材110も中立位置で停止する。プラズマ生成装置40でのプラズマの生成を停止し、収容ユニット支持部材110も停止したら、チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにする(ステップST16)。チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにする際には、ポンプユニット140を停止し、チャンバー10に設置される圧力調整用のバルブ(図示省略)を開くことにより、チャンバー10の周囲の空気をチャンバー10内に取り込む。これにより、減圧されていたチャンバー10内を増圧し、チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにする。
チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにしたら、第1開閉部材20を開き、第2開閉部材30を閉じる(ステップST17)。チャンバー10内の圧力は、チャンバー10の外の大気圧とほぼ同じ大きさになっているため、第1開閉部材20は、ヒンジ部21を中心として回動させることにより容易に開くことができる。第1開閉部材20を開いたら、チャンバー10の開口部11付近における第1開閉部材20とは異なる位置に取り付けられている第2開閉部材30を閉じる。
第2開閉部材30を閉じる際には、第1開閉部材20と同様に、ヒンジ部31を中心として第2開閉部材30を回動させることにより、チャンバー10の開口部11を第2開閉部材30によって閉じる。これにより、第2開閉部材30に取り付けられているスパッタリング装置70の一部を、チャンバー10内に位置させる(図4、図10参照)。この場合、少なくともスパッタリング装置70の支持板80に支持されているターゲット84をチャンバー10内に位置させ、ターゲット84は、チャンバー10内に配置される収容ユニット100の開口部103から収容ユニット100内に入り込ませる。これにより、スパッタリング装置70が有するターゲット84を、収容ユニット100に収容される被処理材Wの上方で、被処理材Wの比較的近傍に位置させる。
その際に、スパッタリング装置70には、プラズマ生成装置40と同様に、被処理材Wが配置される範囲を制限する補正板130である一対の装置側補正板131が取り付けられている。装置側補正板131は、スパッタリング装置70が有するターゲット84よりも下側に配置されるため、ターゲット84を収容ユニット100の開口部103から収容ユニット100内に入り込ませる状態にした際には、装置側補正板131も収容ユニット100内に入り込む。これにより、収容ユニット100に収容される被処理材Wは、第2開閉部材30を閉じた場合においても、第1開閉部材20を閉じた場合と同様に、収容ユニット100内に位置する一対の装置側補正板131同士に間に位置する状態になる。
第2開閉部材30を閉じることによりスパッタリング装置70をチャンバー10内に位置させたら、ポンプユニット140によってチャンバー10内を減圧する(ステップST18)。チャンバー10内の減圧は、第1開閉部材20を閉じることによりプラズマ生成装置40をチャンバー10内に位置させた状態で、ポンプユニット140を用いて行う減圧(ステップST14)と同様の手法で行う。即ち、チャンバー10内の圧力を、スパッタリング装置70で被処理材Wに対してスパッタリングを行うのに適した設定圧力まで減圧する。これにより、チャンバー10内を、設定圧力に従って中真空から低真空の状態にする。
チャンバー10内を設定圧力まで減圧したら、被処理材Wに対してスパッタリング装置70によってスパッタリングを行う(ステップST19)。スパッタリング装置70によってスパッタリングを行う際には、チャンバー10に配置されるガス流入部16から、スパッタリングに用いるガスをチャンバー10内に流入しつつ、スパッタリング装置70のマグネット81で磁界を発生してガス流入部16から流入したガスをイオン化し、ターゲット84にイオンを衝突させることにより、ターゲット84の粒子をはじき出す。その際に、チャンバー10内は、ポンプユニット140によってスパッタリングを行うのに適した圧力に減圧されているため、スパッタリングに用いるガスをガス流入部16からチャンバー10内に流入しつつ、マグネット81で磁界を発生することにより、スパッタリング装置70のターゲット84の近傍では、ガス流入部16から流入したガスが効率良くイオン化される。
本実施形態では、ターゲット84には銅が用いられているため、ターゲット84の近傍でイオン化されたガスのイオンがターゲット84に衝突した際には、ターゲット84からは、銅の粒子がはじき出される。ターゲット84にイオンを衝突させることにより、ターゲット84からはじき出された粒子は、上下方向Zにおいてマグネット81が位置する側の反対側である下側に向かう。上下方向Zにおけるターゲット84の下側には、収容ユニット100に収容される被処理材Wが位置するため、ターゲット84からはじき出された粒子は、収容ユニット100に収容される被処理材Wに向かって移動して被処理材Wに付着し、被処理材Wの表面に堆積する。これにより、被処理材Wの表面には、ターゲット84を形成する物質によって薄膜が形成され、即ち、被処理材Wの表面には、銅の薄膜が形成される。
その際に、被処理材Wの表面は、プラズマ生成装置40によって表面改質が行われているため、スパッタリング装置70により、ターゲット84を形成する物質で被処理材Wの表面に成膜を行う場合、被処理材Wの表面に対する薄膜の密着度を高めることができる。即ち、スパッタリング装置70は、表面改質が行われた被処理材Wの表面に対して、スパッタリングによって成膜を行うため、高い密着度で被処理材Wの表面に薄膜を形成することができる。
ここで、スパッタリング装置70には、被処理材Wが配置される範囲を制限する補正板130である一対の装置側補正板131が取り付けられている。このため、ターゲット84からはじき出された粒子は、一対の装置側補正板131同士の間を通る。収容ユニット100に収容される被処理材Wは、一対の装置側補正板131同士に間に位置しているため、ターゲット84からはじき出された粒子が一対の装置側補正板131同士の間を通ることにより、ターゲット84からはじき出された粒子は、被処理材Wが位置する以外の方向にはあまり向かわず、ターゲット84から多くの粒子が被処理材Wに向かう。これにより、ターゲット84からはじき出された粒子の大部分が、被処理材Wに向かい、被処理材Wの表面には、この粒子により、効率良く薄膜が形成される。
このようにスパッタリング装置70によってスパッタリングを行う場合も、プラズマ生成装置40によって被処理材Wに対して表面改質を行う場合と同様に、収容ユニット100を揺動させながら行う。即ち、収容ユニット100が装着される収容ユニット支持部材110を、サーボモータ120で発生する駆動力によって揺動軸111を中心として揺動させる。これにより、被処理材Wが収容される収容ユニット100を、揺動軸111を中心として揺動させる。
スパッタリング装置70によってスパッタリングを行いながら収容ユニット100を揺動させる際には、プラズマ生成装置40で表面改質を行いながら収容ユニット100を揺動させる場合と同様に、速度や加速度を急激に変化させる動作も含ませるのが好ましい。収容ユニット100を揺動の速度や加速度を急激に変化させることにより、被処理材Wを収容ユニット100内で移動させたり、ひっくり返らせたりし易くなる。
スパッタリング装置70でスパッタリングを行うことにより被処理材Wの表面に付着する、ターゲット84からはじき出された粒子は、収容ユニット100の揺動によって被処理材Wが収容ユニット100内で移動したりひっくり返ったりすることにより、各被処理材Wの全面に付着する。つまり、ターゲット84からはじき出された粒子は、収容ユニット100が揺動することにより、収容ユニット100に収容される被処理材Wの全面に万遍なく付着し、ターゲット84を形成する物質が堆積することにより形成される薄膜は、被処理材Wの全面に形成される。これにより、収容ユニット100に収容される複数の被処理材Wの表面には、ターゲット84を形成する物質による薄膜が全面に形成され、被処理材Wの形状が複雑な形状である場合でも、複雑な形状の被処理材Wの全面に万遍なく、薄膜が形成される。
スパッタリング装置70によるスパッタリングが所定の時間行われたら、スパッタリング装置70でのスパッタリングを停止し、収容ユニット支持部材110も中立位置で停止する。スパッタリング装置70でのスパッタリングを停止し、収容ユニット支持部材110も停止したら、チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにする(ステップST20)。チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにする際には、ポンプユニット140を停止し、チャンバー10に設置される圧力調整用のバルブ(図示省略)を開くことにより、チャンバー10の周囲の空気をチャンバー10内に取り込む。これにより、減圧されていたチャンバー10内を増圧し、チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにする。
チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにしたら、第2開閉部材30を開き、収容ユニット100を取り出す(ステップST21)。チャンバー10内の圧力は、チャンバー10の外の大気圧とほぼ同じ大きさになっているため、第2開閉部材30は、ヒンジ部31を中心として回動させることにより容易に開くことができる。第2開閉部材30を開いたら、チャンバー10内に収容されている収容ユニット100を、チャンバー10の開口部11から取り出す。即ち、チャンバー10内に収容されている収容ユニット100を、被処理材Wが収容されている状態で収容ユニット支持部材110から取り外し、チャンバー10の外に取り出す。これにより、プラズマ生成装置40で表面改質を行った後、スパッタリング装置70でスパッタリングを行うことにより、密着度が高い薄膜が表面に形成された被処理材Wをチャンバー10内から取り出す。
表面処理装置1では、これらのようにして、難めっき材料からなる被処理材Wの表面に、密着度が高い薄膜を形成する。表面に薄膜が形成された被処理材Wは、後の工程でめっき処理が行われる。後の工程で行われるめっき処理では、例えば、電解めっきや無電解めっき、溶融めっき等の手法が用いられる。これらのめっき処理は、ターゲット84を形成する物質による薄膜が高い密着度で表面に形成された被処理材Wに対して行われるため、めっき処理によって表面に被覆する金属の薄膜も、被処理材Wの表面に形成された薄膜の表面に対して、高い密着度で被覆することができる。
<実施形態の効果>
以上の実施形態に係る表面処理装置1は、チャンバー10の開口部11をそれぞれ開閉自在にチャンバー10に取り付けられる第1開閉部材20と第2開閉部材30とを有しており、第1開閉部材20には、第1処理装置であるプラズマ生成装置40が配置され、第2開閉部材30には、第2処理装置であるスパッタリング装置70が配置されている。これらの第1開閉部材20と第2開閉部材30とのうち、第1開閉部材20は、第2開閉部材30が開口部11を閉じていない状態において開口部11を閉じることにより、プラズマ生成装置40をチャンバー10内に位置させることができる。また、第2開閉部材30は、第1開閉部材20が開口部11を閉じていない状態において開口部11を閉じることにより、スパッタリング装置70をチャンバー10内に位置させることができる。これにより、プラズマ生成装置40用のチャンバー10と、スパッタリング装置70用のチャンバー10を設けることなく、1つのチャンバー10で、プラズマ生成装置40を用いたプロセスと、スパッタリング装置70プロセスとを行うことができる。この結果、装置全体の大型化を抑制しつつ複数のプロセスを行うことができる。
また、第1開閉部材20と第2開閉部材30とは、チャンバー10に対して回動自在に取り付けられることにより、開口部11を開閉するため、チャンバー10の開口部11を第1開閉部材20や第2開閉部材30で開閉することによりチャンバー10内に位置させる装置を入れ替える際に、容易に入れ替えることができる。この結果、装置全体の大型化を抑制しつつ、複数のプロセスを容易に行うことができる。
また、第1開閉部材20に配置される第1処理装置は、プラズマを生成するプラズマ生成装置40であり、第2開閉部材30に配置される第2処理装置は、スパッタリングを行うスパッタリング装置70であるため、プラズマ生成装置40による表面改質と、スパッタリング装置70によるスパッタリングとを、1つのチャンバー10内で容易に行うことができる。これにより、難めっき材料からなる被処理材Wに対して、表面に密着度の高い金属薄膜を成膜し易くなる表面改質のプロセスと、表面に金属薄膜を成膜するスパッタリングのプロセスとを、それぞれ専用のチャンバー10を用いることなく、1つのチャンバー10内で容易に行うことができる。この結果、装置全体の大型化を抑制しつつ、複数のプロセスを容易に行うことができる。
[変形例]
<補正板130の変形例>
なお、上述した実施形態に係る表面処理装置1では、被処理材Wが配置される範囲を制限する補正板130としては、プラズマ生成装置40とスパッタリング装置70とに取り付けられる装置側補正板131が用いられているが、補正板130は、装置側補正板131以外が用いられていてもよい。図23は、実施形態に係る表面処理装置1の変形例であり、プラズマ生成装置40がチャンバー10内に位置する状態での補正板130についての説明図である。図24は、図23のJ-J断面図である。補正板130は、図23、図24に示すように、プラズマ生成装置40やスパッタリング装置70(図10参照)に取り付けられる装置側補正板131の他に、収容ユニット100に取り付けられる収容ユニット側補正板133を有していてもよい。収容ユニット側補正板133は、収容ユニット100の内側における、収容ユニット100の底部に取り付けられる補正板130になっている。
なお、図23、図24を用いて行う収容ユニット側補正板133についての説明では、プラズマ生成装置40に取り付けられる装置側補正板131と収容ユニット側補正板133との相対関係について説明するが、スパッタリング装置70に取り付けられる装置側補正板131と収容ユニット側補正板133との相対関係についても、同様の関係になっている。
収容ユニット側補正板133は、収容ユニット100の内側に一対が配置されており、一対の収容ユニット側補正板133は、長さ方向Yに離間している。また、一対の収容ユニット側補正板133は、長さ方向Yにおける間隔が、一対の装置側補正板131の間隔より僅かに大きい間隔になっている。
また、収容ユニット側補正板133は、上下方向Zにおける高さがほぼ一定の高さで、幅方向Xに延在して形成されている。収容ユニット側補正板133の高さは、収容ユニット側補正板133の上端の位置が、プラズマ生成装置40がチャンバー10内に位置する場合における装置側補正板131の下端の位置よりも上側に位置する高さになっている。このため、一対の収容ユニット側補正板133は、プラズマ生成装置40がチャンバー10内に位置する状態では、長さ方向Yにおける両側から一対の装置側補正板131を挟んだ状態で、上下方向Zにおける収容ユニット側補正板133の上端付近が、装置側補正板131の下端付近にオーバーラップしている。
収容ユニット側補正板133が取り付けられる収容ユニット100は、揺動軸111を中心として収容ユニット支持部材110と一体となって揺動することが可能になっているが、収容ユニット側補正板133は、収容ユニット100の揺動の角度に関わらず、装置側補正板131に対してオーバーラップすることができる。即ち、収容ユニット側補正板133は、収容ユニット100が揺動することに伴う、装置側補正板131に対する相対的な角度の変化に関わらず、装置側補正板131に対して継続的にオーバーラップ可能に配置されている。
このように、収容ユニット100に収容ユニット側補正板133を取り付けた場合、被処理材Wに対して表面処理を行うために被処理材Wを収容ユニット100に収容する際に、被処理材Wを、収容ユニット100における一対の収容ユニット側補正板133同士に間に収容することができる。この状態で、第1開閉部材20や第2開閉部材30を閉じた場合、一対の装置側補正板131は、収容ユニット100に配置されている一対の収容ユニット側補正板133の間に入り込む。
詳しくは、一対の装置側補正板131の間隔は、収容ユニット100に配置されている一対の収容ユニット側補正板133の間隔よりも僅かに小さくなっている。このため、第1開閉部材20や第2開閉部材30を閉じた際には、一対の装置側補正板131は、一対の収容ユニット側補正板133の間に入り込む。これにより、収容ユニット100に収容されて一対の収容ユニット側補正板133同士に間に位置する複数の被処理材Wは、一対の装置側補正板131の間に入り込む。換言すると、一対の装置側補正板131は、収容ユニット100に収容されている被処理材Wを、長さ方向Yにおける両側から覆う状態になる。
これにより、プラズマ生成装置40で表面改質を行った場合には、プラズマ生成装置40からのプラズマガスは、一対の装置側補正板131の間を通ってより確実に大部分が被処理材Wに向けて流れ、被処理材Wは、プラズマガスにより効率良く表面処理が行われる。同様に、スパッタリング装置70でスパッタリングを行った場合、ターゲット84からはじき出された粒子は、一対の装置側補正板131同士の間を通ってより確実に大部分が被処理材Wに向かい、被処理材Wの表面には、この粒子により、効率良く薄膜が形成される。これらの結果、被処理材Wに対して、より確実に所望の処理を施すことができる。
<ロードロック室195を有する変形例>
また、上述した実施形態に係る表面処理装置1では、チャンバー10内を減圧してプラズマ生成装置40によって被処理材Wの表面処理を行った後、第1開閉部材20を開く際には、チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにしてから開いているが、チャンバー10内の圧力を大気圧より低くした状態で、第1開閉部材20を開けるようにしてもよい。
図25は、実施形態に係る表面処理装置1の変形例であり、チャンバー10内を開口部11側と底部15側とを隔離する開閉扉190を有する場合の説明図である。チャンバー10は、図25に示すように、チャンバー10内における開口部11側と、チャンバー10内における底部15側とにチャンバー10内を隔離することができる開閉扉190を有していてもよい。開閉扉190を有する変形例では、チャンバー10内には、チャンバー10内における開口部11側と底部15側との間に、開口部11と底部15に対して略平行に形成される隔壁191が配置されている。隔壁191は、厚さ方向が上下方向Zとなる板状の形状で形成されており、収容ユニット100がチャンバー10内に配置された際におけるチャンバー10内の収容ユニット100よりも、チャンバー10の開口部11側に位置している。即ち、隔壁191は、上下方向Zにおける位置が、チャンバー10の開口部11と収容ユニット100との間に位置している。
このように形成される隔壁191には、隔壁191を上下方向Zに貫通する孔である開閉部192が形成されている。開閉部192は、上下方向Zに見た場合における大きさが、収容ユニット100を上下方向Zに見た場合における大きさよりも大きくなっている。開閉扉190は、隔壁191に形成される開閉部192を開閉することが可能になっている。
詳しくは、開閉扉190は、厚さ方向が上下方向Zとなる板状の部材で形成されており、上下方向Zに見た場合における大きさが、隔壁191に形成される開閉部192の大きさよりも大きくなっている。このように形成される開閉扉190は、隔壁191に隣接して隔壁191に沿って配置され、サーボモータ等の駆動手段(図示省略)により、隔壁191に沿って相対移動することが可能になっている。これにより、開閉扉190は、隔壁191に形成される開閉部192を開放する状態と、開閉部192を塞ぐ状態(図26参照)とに切り替えることが可能になっている。即ち、開閉扉190は、隔壁191に形成される開閉部192を開閉することが可能になっており、チャンバー10内における開口部11側と底部15側とを隔離する状態と、開口部11側と底部15側とを連通する状態とに切り替え可能に配置されている。チャンバー10内における、隔壁191よりも底部15側に位置する部分は、チャンバー10内を減圧した状態で開閉扉190によって開閉部192を閉じることにより、減圧状態を維持することができる、ロードロック室195になっている。
また、第1開閉部材20に配置されるプラズマ生成装置40は、第1開閉部材20の厚さ方向、即ち、第1開閉部材20を閉じた状態における上下方向Zに、第1開閉部材20における配置位置が、サーボモータ等の駆動手段(図示省略)によって移動可能になっている。同様に、第2開閉部材30に配置されるスパッタリング装置70は、第2開閉部材30の厚さ方向、即ち、第2開閉部材30を閉じた状態における上下方向Zに、第2開閉部材30における配置位置が、サーボモータ等の駆動手段(図示省略)によって移動可能になっている。
このように、チャンバー10が開閉扉190を有する場合、第1開閉部材20を閉じてプラズマ生成装置40によって被処理材Wの表面処理を行う際には、開閉扉190は、隔壁191の開閉部192を開いた状態にし、チャンバー10内における開口部11側と底部15側とを連通する。チャンバー10の開口部11を閉じた第1開閉部材20に配置されるプラズマ生成装置40は、上下方向Zにおける下側に下げることにより、支持板50を隔壁191の開閉部192を通して隔壁191よりも下側に位置させ、収容ユニット100に収容する被処理材Wの近傍に位置させる。表面処理装置1は、このようにチャンバー10内の開口部11側と底部15側とを連通して、プラズマ生成装置40を収容ユニット100内の被処理材Wの近傍に位置させた状態でチャンバー10内を減圧し、プラズマ生成装置40によって被処理材Wの表面処理を行う。
図26は、図25に示す開閉扉190を閉じた状態を示す説明図である。プラズマ生成装置40による被処理材Wの表面処理が完了したら、チャンバー10内の減圧状態は維持したままプラズマ生成装置40を上下方向Zにおける上側に移動させ、プラズマ生成装置40を隔壁191の開閉部192よりも上側に位置させる。この状態で、開閉扉190を駆動手段によって移動させ、隔壁191の開閉部192を閉じる。
開閉扉190によって開閉部192を閉じたら、チャンバー10内における隔壁191よりも開口部11側に位置する部分の圧力を、大気圧と同じ大きさにする。つまり、この場合、チャンバー10内の圧力を大気圧と同じ大きさにする際に用いる圧力調整用のバルブ(図示省略)は、チャンバー10内における隔壁191よりも開口部11側に配置されている。チャンバー10は、開閉扉190によって開閉部192を閉じた状態で、圧力調整用のバルブを開くことにより、チャンバー10内における隔壁191よりも開口部11側に位置する部分の圧力を、大気圧と同じ大きさにする。
一方、チャンバー10内における隔壁191よりも底部15側に位置するロードロック室195は、隔壁191よりも開口部11側に位置する部分と連通する開閉部192が、開閉扉190によって閉じられており、隔壁191よりも開口部11側に位置する部分とロードロック室195とは、隔離されている。このため、隔壁191よりも開口部11側に位置する部分の圧力を大気圧と同じ大きさにしても、開口部11側に位置する部分からの空気は、ロードロック室195には流れなくなっている。これにより、隔壁191よりも開口部11側に位置する部分の圧力を大気圧と同じ大きさにしても、ロードロック室195は圧力が変化せずに、減圧状態が維持される。
チャンバー10内に位置させる装置を、プラズマ生成装置40からスパッタリング装置70に切り替える際には、このように、ロードロック室195の減圧状態を維持しつつ、隔壁191よりも開口部11側に位置する部分の圧力を大気圧と同じ大きさにした状態で、まず、第1開閉部材20を開く。第1開閉部材20を開いたら、入れ替わりで第2開閉部材30を閉じ、開口部11側に位置する部分を減圧する。次に、開閉扉190を駆動手段によって移動させることにより、隔壁191の開閉部192を開く。これにより、隔壁191よりも開口部11側に位置する部分とロードロック室195とを開閉部192によって連通し、チャンバー10内全体を、スパッタリング装置70での減圧に適した減圧状態にする。
また、チャンバー10の開口部11を閉じた第2開閉部材30に配置されるスパッタリング装置70は、上下方向Zにおける下側に下げることにより、支持板50を隔壁191の開閉部192を通して隔壁191よりも下側に位置させる。これにより、スパッタリング装置70を、収容ユニット100に収容する被処理材Wの近傍に位置させる。表面処理装置1は、このようにチャンバー10内の開口部11側と底部15側とを連通してチャンバー10内全体を減圧状態にし、スパッタリング装置70を収容ユニット100内の被処理材Wの近傍に位置させた状態で、スパッタリング装置70によってスパッタリングを行う。
チャンバー10内を隔離することができる開閉扉190を設けた場合、開閉扉190は、これらのように、第1開閉部材20と第2開閉部材30とが開口部11を開いている状態では、チャンバー10内における開口部11側と底部15側とを隔離することができるため、プラズマ生成装置40とスパッタリング装置70とを入れ替える際に、被処理材Wが、チャンバー10の外の外気に曝されることを抑制できる。これにより、プラズマ生成装置40によって行われた被処理材Wの表面処理が、外気に曝されることによって改質されることなく、スパッタリング装置70によってスパッタリングを行うことができるため、より確実に、高い密着度で被処理材Wの表面に薄膜を形成することができる。
また、上述した実施形態に係る表面処理装置1では、第1開閉部材20に配置される第1処理装置にはプラズマ生成装置40が用いられ、第2開閉部材30に配置される第2処理装置にはスパッタリング装置70が用いられているが、第1処理装置や第2処理装置は、これ以外の装置であってもよい。
また、上述した実施形態に係る表面処理装置1では、第1処理装置、第2処理装置を設けた形態について説明したが、さらに第3処理装置、第4処理装置を設けてもよい。その場合は、各処理装置のヒンジ部は、処理装置やチャンバー10の形状等に応じて、異なる処理装置に取り付けられるヒンジ部同士で適当な間隔を空けてチャンバー10に配置されていればよい。即ち、ヒンジ部を介してチャンバー10に開閉自在に取り付けられる複数の処理装置を、それぞれ交代でチャンバー10内に位置させることができ、且つ、処理装置がチャンバー10の外に位置する状態では、他の処理装置と干渉することなくチャンバー10外に位置させることができればよい。