JP7200646B2 - 浸炭部品、浸炭部品用の素形材、及び、それらの製造方法 - Google Patents
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Description
浸炭部品用の素形材とは、素材に対して、分塊圧延工程、棒鋼圧延工程及び球状化焼鈍工程を実施したものであって、冷間鍛造工程及び浸炭工程を実施していないものである。
本発明の浸炭部品用の素形材は、次の元素を含有する化学組成を有する。
炭素(C)は、浸炭焼入れしたときの部品の芯部硬さを確保し、疲労強度を高める。C含有量が0.13%未満であれば、この効果が得られない。一方、C含有量が0.23%を超えれば、変形抵抗が高くなり、鋼材の冷間鍛造性が顕著に低下する。したがって、C含有量は0.13~0.23%である。C含有量の好ましい下限は0.14%である。C含有量の好ましい上限は0.22%である。
シリコン(Si)は、焼入れ性を高める。Si含有量が0.02%未満であれば、この効果が得られない。一方、その含有量が0.15%を超えれば、変形抵抗が高くなり、鋼材の冷間鍛造性が低下する。したがって、Si含有量は0.02~0.15%である。焼入れ性を高める場合、Si含有量の好ましい下限は0.03%である。Si含有量の好ましい上限は0.14%である。
マンガン(Mn)は、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める。Mnはさらに、疲労強度を高める。Mn含有量が0.55%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が0.95%を超えれば、疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、変形抵抗が高くなり、鋼材の冷間鍛造性が低下する。したがって、Mn含有量は0.55~0.95%である。Mn含有量の好ましい下限は0.60%である。Mn含有量の好ましい上限は0.90%である。
燐(P)は、不純物であり、素形材中に不可避的に含有される。つまり、P含有量の下限は0%超である。Pは粒界に偏析しやすく、粒界を脆化させる。P含有量が0.020%を超えれば、疲労強度が低下する。したがって、P含有量は0.020%以下である。P含有量の好ましい上限は0.015%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。したがって、P含有量の下限は特に限定されない。しかしながら、実際の操業において、P含有量を0.002%未満に低下するには製造コストが過剰に高くなる。したがって、P含有量の好ましい下限は0.002%である。
硫黄(S)は、Mnと結合してMnSを形成し、鋼材の被削性を高める。しかしながら、S含有量が0.030%を超えれば、粗大なMnSが生成する。粗大なMnSは割れの起点となるため、浸炭部品の疲労強度が低下する。したがって、S含有量は0.003~0.030%である。また、Sの含有量が低すぎる場合には被削性の低下を招く。したがって、S含有量の好ましい下限は0.005%である。S含有量の好ましい上限は0.025%である。
クロム(Cr)は、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める。その結果、浸炭部品の疲労強度を高める。Cr含有量が0.85%未満であれば、この効果が得られない。一方、Cr含有量が1.23%を超えれば、疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、変形抵抗が高くなる。その結果、鋼材の冷間鍛造性が低下する。したがって、Cr含有量は0.85~1.23%である。Cr含有量の好ましい下限は0.90%である。Cr含有量の好ましい上限は1.22%である。
モリブデン(Mo)は、焼入れ性を高める。Moはさらに、焼戻し軟化抵抗を高める。その結果、浸炭部品の疲労強度を高める。Mo含有量が0.35%未満ではこの効果が得られない。一方、Mo含有量が0.50%を超えると、疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、変形抵抗が高くなる。その結果、鋼材の冷間鍛造性が顕著に低下する。したがって、Mo含有量は0.35~0.50%である。Mo含有量の好ましい下限は0.36%である。Mo含有量の好ましい上限は0.45%である。
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成する。その結果、浸炭処理時に、旧オーステナイト結晶粒の粗大化が抑制される。Al含有量が0.020%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Al含有量が0.050%を超えれば、鋼材中に粗大なAlNが生成し、かえって旧オーステナイト結晶粒が粗大化する。したがって、Al含有量は0.020~0.050%である。Al含有量の好ましい下限は0.021%であり、さらに好ましくは0.022%である。Al含有量の好ましい上限は、0.045%であり、さらに好ましくは0.040%である。なお、本実施の形態におけるAl含有量とは、鋼中の全Alの含有量を意味する。
窒素(N)は、Al、Nb、V及びTiと結合してAlN、NbN、VN及びTiNを形成する。これらの析出物により、旧オーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する。N含有量が0.010%未満であれば、この効果が得られない。一方、N含有量が0.025%を超えれば、特に熱間圧延工程において、圧延材の表面に疵が発生し、安定して量産することが難しくなる。したがって、N含有量は0.010~0.025%である。N含有量の好ましい下限は0.011%超であり、さらに好ましくは0.012%である。N含有量の好ましい上限は0.024%であり、さらに好ましくは0.023%である。
ニオブ(Nb)はC及びNと結合して、析出物であるNbC、NbN及びNb(CN)を形成する。これらの析出物は、旧オーステナイト結晶粒の粗大化を防止する。Nbの含有量が、0.010%未満では、この効果が得られない。一方、Nb含有量が0.060%を超えると、析出物が粗大になる。その結果、旧オーステナイト結晶粒が粗大化する。したがって、Nb含有量は、0.010~0.060%である。Nb含有量の好ましい下限は、0.015%であり、さらに好ましくは0.020%である。Nb含有量の好ましい上限は0.058%であり、さらに好ましくは0.055%である。
本発明の実施の形態による浸炭部品用の素形材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Cu、Ni、Pb、Ca、Bi、Ti、B、V及びZrからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素は任意元素である。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。含有される場合、Cuは焼入れ性を高めて、疲労強度を高める。Cuが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Cu含有量が0.30%を超えれば、上記の効果が飽和するだけでなく、変形抵抗が高くなる。その結果、鋼材の冷間鍛造性が低下する。したがって、Cu含有量は0~0.30%である。上記効果を安定して得るためのCu含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.05%である。Cu含有量の好ましい上限は0.20%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ni含有量は0%であってもよい。含有される場合、Niは焼入れ性を高めて、疲労強度を高める。Niが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Ni含有量が0.25%を超えれば、上記の効果が飽和するだけでなく、変形抵抗が高くなる。その結果、鋼材の冷間鍛造性が低下する。したがって、Ni含有量は0~0.25%である。上記効果を安定して得るためのNi含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.05%である。Ni含有量の好ましい上限は0.20%である。
鉛(Pb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Pb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Pbは、被削性を高める。このため、冷間加工で成形した部品の内面などをさらに精密切削して仕上げたい場合などに、疲労強度よりも被削性を重視する場合は必要に応じて含有させてもよい。Pbが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Pb含有量が0.30%を超えれば、疲労強度が顕著に低下する。したがって、Pb含有量は0~0.30%である。上記効果を安定して得るためのPb含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Pb含有量の好ましい上限は0.25%である。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ca含有量は0%であってもよい。含有される場合、Caは、Pbと同様に被削性を高める。このため、Pbと同じく、冷間加工で成形した部品の内面などをさらに精密切削して仕上げたい場合などのように、疲労強度よりも被削性を重視する場合は必要に応じて含有させてもよい。Caが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Ca含有量が0.005%を超えれば、粗大な酸化物を形成して、疲労強度を低下させる。したがって、Ca含有量は0~0.005%である。上記効果を安定して得るためのCa含有量の好ましい下限は0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。Ca含有量の好ましい上限は0.004%である。
ビスマス(Bi)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Bi含有量は0%であってもよい。含有される場合、BiはPb及びCaと同様に被削性を高める。このため、Pb及びCaと同じく、冷間加工で成形した部品の内面などをさらに精密切削して仕上げたい場合などのように、疲労強度よりも被削性を重視する場合は必要に応じて含有させてもよい。Biが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Bi含有量が0.30%を超えれば、浸炭部品の疲労強度が低下する。したがって、Bi含有量は0~0.30%である。上記効果を安定して得るためのBi含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Bi含有量の好ましい上限は0.25%である。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは、C及びNとともに炭窒化物を形成する。炭窒化物のピンニング作用により、旧オーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する。Tiが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Ti含有量が0.100%を超えれば、上記の効果が飽和して、製造コストが高まる。Ti含有量が0.100%を超えればさらに、焼入れ性を低下させ、浸炭部品の疲労強度が低下する。したがって、Ti含有量は0~0.100%である。上記効果を安定して得るためのTi含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Ti含有量の好ましい上限は0.09%である。
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、B含有量は0%であってもよい。含有される場合、Bは、鋼の焼入れ性を高める。Bが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、B含有量が0.010%を超えれば、その効果が飽和してコストが高まる。B含有量が0.010%を超えればさらに、かえって焼入れ性が低下する。その結果、疲労強度が低下する。上記効果を安定して得るためのB含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。B含有量の好ましい上限は0.008%である。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、V含有量は0%であってもよい。含有される場合、Vは、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める。Vが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、V含有量が0.20%を超えれば、冷間鍛造前の鋼材の強度が高くなりすぎて、鋼材の冷間鍛造性が低下する。したがって、V含有量は0~0.20%である。上記効果を安定して得るためのV含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。V含有量の好ましい上限は0.15%である。
ジルコニウム(Zr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Zr含有量は0%であってもよい。含有される場合、Zrは、C及び/又はNと結合して、微細な炭化物、窒化物及び炭窒化物を形成する。その結果、旧オーステナイト結晶粒を微細化する。Zrが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Zr含有量が0.10%を超えれば、冷間鍛造前の鋼材の強度が高くなりすぎて、鋼材の冷間鍛造性が低下する。したがって、Zr含有量は0~0.10%である。上記効果を安定して得るためのV含有量の好ましい下限は0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。Zr含有量の好ましい上限は0.07%である。
本発明の実施の形態による浸炭部品用の素形材において、Nb析出物として析出しているNb量が全Nb含有量の80%以上であり、Nb析出物の最大径が200nm未満である。
浸炭部品用の素形材に対して、冷間鍛造工程、及び、浸炭工程を実施することにより、浸炭部品を得ることができる。
浸炭部品の芯部は、浸炭処理による影響を受けない。したがって、本発明の実施の形態による浸炭部品の芯部の化学組成は、浸炭部品用の素形材の化学組成と同じになる。つまり、本発明の実施の形態による浸炭部品の芯部は、質量%で、C:0.13~0.23%、Si:0.02~0.15%、Mn:0.55~0.95%、P:0.020%以下、S:0.003~0.030%、Cr:0.85~1.23%、Mo:0.35~0.50%、Al:0.020~0.050%、N:0.010~0.025%、Nb:0.010~0.060%、Cu:0~0.30%、Ni:0~0.25%、Pb:0~0.30%、Ca:0~0.005%、Bi:0~0.30%、Ti:0~0.100%、B:0~0.010%、V:0~0.20%、及び、Zr:0~0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有する。
[旧オーステナイト結晶粒について]
本発明の実施の形態による浸炭部品のミクロ組織において、旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度番号は4.0以上であり、平均粒度番号と最大粒の結晶粒度番号との差が8.0以下である。したがって、本発明の実施の形態による浸炭部品は、粗大な旧オーステナイト粒を含まず、粒度ばらつきが小さい。その結果、高い疲労強度を有する。
本発明の実施の形態による浸炭部品の芯部硬さにおいて、ビッカース硬さがHV260以上である。ビッカース硬さがHV260未満の場合、浸炭部品として必要な疲労強度が得られない。芯部硬さの好ましい下限はHV280である。芯部硬さの上限は特に限定されないが、たとえば、HV500である。
本発明の実施の形態による浸炭部品の芯部において、Nb析出物として析出しているNb量が全Nb含有量の60%以上であり、Nb析出物の最大径が230nm未満である。
本発明の実施の形態による浸炭部品用の素形材の製造方法及び浸炭部品の製造方法を説明する。本発明の実施の形態による浸炭部品の製造方法のフロー図を、図1に示す。
本発明の実施の形態による浸炭部品用の素形材の製造方法は、上記化学組成を有する素材を1300℃以上に加熱して圧延することにより鋼片を製造する工程(分塊圧延工程:S1)と、製造した鋼片を800~1075℃に加熱して圧延することにより棒鋼を製造する工程(棒鋼圧延工程:S2)と、棒鋼圧延工程後の棒鋼に対して球状化焼鈍を実施して素形材を製造する工程(球状化焼鈍工程:S3)とを備える。以下、各工程について詳述する。
初めに、上記化学組成を有する素材を準備する。たとえば、素材は次の方法で製造される。上述の化学組成を有する溶鋼を、転炉及び電気炉等を用いて製造する。溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片を製造する。又は、溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造する。
分塊圧延工程により製造された鋼片に対してさらに熱間圧延を実施して、棒鋼を製造する。ここでの圧延はたとえば、水平ロールスタンド、垂直ロールスタンドが交互に一列に配列されたタンデム式の圧延機列を用いた、連続圧延である。
製造した棒鋼に対して球状化焼鈍を実施する。球状化焼鈍を実施することにより、鋼中に、析出物を微細にかつ多数析出できる。これにより、析出物のピンニング効果を十分に発揮できる。球状化焼鈍の方法は特に限定されず、一般的なものでよい。球状化焼鈍はたとえば、長時間加熱法、繰返し加熱冷却法、徐冷法及び等温変態法である。
上記の浸炭部品用の素形材を用いた浸炭部品の製造方法を説明する。浸炭部品の製造方法は、球状化焼鈍工程後の素形材に対して冷間鍛造を実施して冷間鍛造品を製造する工程(冷間鍛造工程:S4)と、冷間鍛造工程後の冷間鍛造品に対して浸炭処理を実施する工程(浸炭工程:S5)とを含む。以下、それぞれの工程について説明する。
浸炭部品用の素形材を用いて、周知の方法で冷間鍛造を実施して、中間品を製造する。冷間鍛造工程前に、伸線加工工程を実施してもよい。伸線加工は、一次伸線のみであってもよいし、二次伸線等、複数回の伸線加工を実施してもよい。
製造された中間品に対して、浸炭処理を実施する。浸炭処理後の中間品に対して焼戻しを実施してもよい。焼戻し後の中間品に対してさらに、機械加工(切削加工等)を実施してもよい。以上の製造工程により、浸炭部品が製造される。
[旧オーステナイト結晶粒径測定]
上記により得られた小野式回転曲げ疲労試験片のノッチ底を含む横断面を切り出した。切断面を鏡面研磨し、界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液で腐食した。光学顕微鏡を用いて倍率100倍で観察して、JIS G 0551(2005)に準じて、結晶粒度標準図との比較による評価方法により、旧オーステナイト結晶粒の粗大化発生状況を調査した。試験面を全面観察し、最大粒の粒度を測定した。結果を表3及び表4の「最大粒」欄に示す。粒度番号が4未満の旧オーステナイト結晶粒が認められた場合、粗粒発生と判断した。粒度番号4未満の粒が認められなかった場合、粗粒の発生なしと判断した。
上記により得られた小野式回転曲げ疲労試験片を、ノッチ底を含む横断面で切り出した。切断面を鏡面研磨し、JIS Z 2244(2009)に準拠した方法で、表面より2mm位置の硬さを測定した。試験力は2.94Nとした。結果を表3及び表4の「芯部硬さHV」欄に示す。
小野式回転曲げ疲労試験片の芯部より10mm立方の抽出残渣試験片を採取した。一般的な条件である、10%AA溶液を用いて、電流密度250~350A/m2で抽出(電気分解)した。抽出した溶液をメッシュサイズ0.2μmのフィルターでろ過して、ろ過物について一般的な化学分析を行った。化学分析により、析出物として析出しているNbの量を求めた。上記の方法により、試験片のNb含有量に対するNb析出率(%)を求めた。結果を表3及び表4の「Nb析出率」欄に示す。
上記により得られた小野式回転曲げ疲労試験片を疲労試験に供した。小野式回転曲げ疲労試験における試験片本数は1応力条件につき3本とした。小野式回転曲げ疲労試験片を用いて、室温、大気雰囲気中にて、JIS Z 2274(2011)に準拠した小野式回転曲げ疲労試験を実施した。回転数を3000rpmとした。3本とも繰り返し数1×107まで破断しなかったうちでもっとも高い応力を疲労強度(MPa)とした。一般的に浸炭ギヤ・シャフト等に求められる疲労強度は450MPa程度であるので、450超~475MPaをC、475超~500MPaをB、500MPa超をAとし、450MPa以下を×と評価した。結果を表3及び表4の「疲労強度」欄に示す。
上記の球状化焼鈍後の素形材から、直径14mm、長さ21mmの模擬素形材を採取した。また、上記の模擬素形材に代えて、さらに920℃で60分保持した後、室温まで放冷する焼きならしを行った焼きならし材も作成して、円柱の高さ方向で70%の圧縮加工を実施し、冷間鍛造性を調査した。各鋼について、焼きならし材の変形抵抗値を「100」として規格化した場合の、模擬素形材の変形抵抗値の相対値を求めた。表3及び表4の「冷鍛性」欄に結果を示す。上記の相対値が90以下の場合に、球状化焼鈍後の変形抵抗が低く、冷間鍛造性に優れていると判断した。結果を表3及び表4の「冷鍛性」欄に示す。
なお、本発明の実施の形態による浸炭部品は、機械部品として使用するための製品であるため、量産可否についても検討した。製鋼工程、熱間圧延工程で特に問題なく製造できるものを量産に最適であると判断し、表3及び表4の「量産可否」欄に「○」で示した。製鋼工程、熱間圧延工程においてコストや生産性等の課題があり、歩留まりが低下する可能性があるものを、最適ではないが量産可能であると判断し、表3及び表4の「量産可否」欄に「△」で示した。
表1~表4を参照して、試験番号1~17、20~25、28~33、36~49及び51~54の化学組成は本発明の範囲内であり、さらに、浸炭試験片の最大粒の結晶粒度番号が4.0以上であり、平均粒度番号と最大粒の結晶粒度番号との差が8.0以下であり、芯部硬さがHV260以上であり、Nb析出物として析出しているNb量が全Nb含有量の60%以上であり、Nb析出物の最大径が230nm未満であった。その結果、粒度ばらつきが抑制されたため、疲労強度が高かった。また、浸炭部品用の素形材において、Nb析出物として析出しているNb量が全Nb時含有量の80%以上であり、Nb析出物の最大径が200nm未満であった。そして、冷間鍛造性評価試験において、相対値が90以下であり、優れた冷間鍛造性を示した。
Claims (4)
- 浸炭層と、前記浸炭層よりも内部の芯部とを備え、
前記芯部は、質量%で、
C:0.13~0.23%、
Si:0.02~0.15%、
Mn:0.55~0.95%、
P:0.020%以下、
S:0.003~0.030%、
Cr:0.85~1.23%、
Mo:0.35~0.50%、
Al:0.020~0.050%、
N:0.010~0.025%、
Nb:0.010~0.060%、
Cu:0~0.30%、
Ni:0~0.25%、
Pb:0~0.30%、
Ca:0~0.005%、
Bi:0~0.30%、
Ti:0~0.100%、
B:0~0.010%、
V:0~0.20%、及び、
Zr:0~0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、
ミクロ組織において、最大の結晶粒径を有する最大粒の結晶粒度番号が4.0以上であり、
平均粒度番号と前記最大粒の結晶粒度番号との差が8.0以下であり、
芯部硬さがHV260以上であり、
Nb析出物として析出しているNb量が全Nb含有量の60%以上であり、
前記Nb析出物の最大径が230nm未満である、浸炭部品。 - 請求項1に記載の浸炭部品であって、
前記芯部の前記化学組成は、
Cu:0.02~0.30%、
Ni:0.02~0.25%、
Pb:0.01~0.30%、
Ca:0.0003~0.005%、
Bi:0.01~0.30%、
Ti:0.005~0.100%、
B:0.0001~0.010%、
V:0.005~0.20%、及び、
Zr:0.0003~0.10%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、浸炭部品。 - 質量%で、
C:0.13~0.23%、
Si:0.02~0.15%、
Mn:0.55~0.95%、
P:0.020%以下、
S:0.003~0.030%、
Cr:0.85~1.23%、
Mo:0.35~0.50%、
Al:0.020~0.050%、
N:0.010~0.025%、
Nb:0.010~0.060%、
Cu:0~0.30%、
Ni:0~0.25%、
Pb:0~0.30%、
Ca:0~0.005%、
Bi:0~0.30%、
Ti:0~0.100%、
B:0~0.010%、
V:0~0.20%、及び、
Zr:0~0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、
Nb析出物として析出しているNb量が全Nb含有量の80%以上であり、
前記Nb析出物の最大径は200nm未満である浸炭部品用の素形材。 - 請求項3に記載の浸炭部品用の素形材であって、
前記化学組成は、
Cu:0.02~0.30%、
Ni:0.02~0.25%、
Pb:0.01~0.30%、
Ca:0.0003~0.005%、
Bi:0.01~0.30%、
Ti:0.005~0.100%、
B:0.0001~0.010%、
V:0.005~0.20%、及び、
Zr:0.0003~0.10%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、浸炭部品用の素形材。
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