JP7198735B2 - 潤滑診断におけるグリス中の非鉄摩耗粉抽出方法 - Google Patents
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Description
このような予知保全には、機械設備の状態を診断する必要があるが、機械設備は運転に伴い潤滑油中に摩耗粉が発生するので、この摩耗粉を分析することで機械設備の状態を診断することができる。
グリスの潤滑診断方法として、摩耗粉を磁力でガラス板上に吸着させて顕微鏡で観察する分析フェログラフィや、摩耗粉を含むグリスを希釈した後、フィルタに通し、摩耗粉を顕微鏡で観察して分析する濾過診断方法ある。
もっとも、摩耗粉が非鉄摩耗粉の場合には、鉄系摩耗粉に乗ってガラス板の上に残っていることもあり、分析フェログラフィでも観察できる時もあるが、判定することは難しい。
したがって、摩耗粉が非鉄摩耗粉の場合には、濾過診断方法を適用することになる。
しかし、グリスは基油(ベースオイル)に添加剤・増ちょう剤が混合されており、濾過診断においては、添加剤・増ちょう剤が濾過フィルタに詰まってしまうという問題がある。濾過フィルタが詰まると、試料油をそれ以上に流すことができないため、診断に必要な規定量の試料油から摩耗粉を採取することができず、適正な診断ができない可能性があった。
この点、油から浮遊物を分離する方法としては、例えば、特許文献1に「遠心分離器内の油内に浮遊している粒子を汚濁した油から取り除く方法」が提案されている。
試料油である非鉄摩耗粉を含むグリスに、希釈液、及び前記非鉄摩耗粉と添加剤・増ちょう剤の間の比重を有する分離補助液を添加して攪拌する攪拌工程と、
攪拌したものを遠心分離機によって遠心分離して、非鉄摩耗粉、分離補助液、添加剤・増ちょう剤及び希釈液の層に分離する分離工程と、
複数の層のうち、添加剤・増ちょう剤、希釈液を廃棄する廃棄工程と、
残った層に希釈液を入れて攪拌後、濾過フィルタを通過させて非鉄摩耗粉を抽出する抽出工程と、を備えたことを特徴とするものである。
以下、各工程を詳細に説明する。
攪拌工程は、試料油である非鉄摩耗粉を含むグリスに、希釈液、及び非鉄摩耗粉と添加剤・増ちょう剤の間の比重を有する分離補助液を添加して攪拌する工程である。
具体的には、例えば試験管等の遠心分離器に装着できる容器に試料油、希釈液、分離補助液を入れて攪拌する。
希釈液は、グリスを希釈できるものであればよく、例えば、機械設備の洗浄液等を用いることができる。
分離補助液の具体例としては、ミクロクリーン(商品名)を水で稀釈したミクロクリーン稀釈液が挙げられる。なお、この分離補助液に加えて、グリスと親和性のある浸透探傷用洗浄液を稀釈液として同時に用いる。浸透探傷用洗浄液は、グリスと親和性があり、油分は溶込むが添加剤、増調剤は溶けないという性質を有する。
他方、浸透探傷用洗浄液は、ミクロクリーン稀釈液とは親和性がない。
浸透探傷用洗浄液、グリス、分離補助液、非鉄摩耗粉(非鉄金属)の成分と比重は下記の表1に示す通りである。
この状態では、「非鉄金属」と「添加剤、増調剤」の層分離が十分でない。
そこで、ミクロクリーン稀釈液及び浸透探傷用洗浄液を同時に用いて遠心分離すると、「非鉄金属」・「ミクロクリーン稀釈液」・「添加剤、増調剤」・「分離補助液(浸透探傷用洗浄液)」の4層が形成され、「非鉄金属」と「添加剤、増調剤」の間に「ミクロクリーン稀釈液」の層が形成されるので、「非鉄金属」と「添加剤、増調剤」の層分離を確実に行うことができる。
分離工程は、攪拌工程で攪拌したものを遠心分離機によって遠心分離する工程である。
試験管内の試料は遠心分離機により遠心分離することで、試験管の底側から非鉄摩耗粉、分離補助液、添加剤・増ちょう剤及び希釈液の順で複数の層に分離する。
廃棄工程は、分離工程で分離した複数の層のうち、下層の非鉄摩耗粉、分離補助液を残して、上層の添加剤・増ちょう剤及び希釈液の層を廃棄する工程である。
抽出工程は、試験管内に残った層に、再度希釈液を入れて攪拌後、濾過フィルタを通過させて非鉄摩耗粉を抽出する工程である。
この抽出工程で、濾過フィルタを通過する液体には、添加剤・増ちょう剤が含まれていないので、濾過フィルタが目詰まりすることがなく、液量が多くても円滑な濾過が可能である。
濾過フィルタには、非鉄摩耗粉が捕捉され、診断に必要な量の非鉄摩耗粉が抽出され、適切な濾過診断が可能となる。
まず、試験管に試料油としてのグリス、希釈液としての浸透探傷用洗浄液、分離補助液としての工場用洗剤(より具体的には、ミクロクリーン(商品名))入れて攪拌した。
ミクロクリーン(商品名)は、原液密度(15℃)1.10g/cm3であり、成分は界面活性剤・防錆剤(ジエタノールアミン、ブチルセロソルブ、水酸化カリウム、ポリ=ノニルフェニルエーテル)を含むものである。
攪拌後には、図2に示すように、均一に混ざった状態となる。
なお、分離補助液を用いずに遠心分離すると、攪拌後の状態は図5(a)に示すように、図2とほぼ同じ状態であるが、遠心分離後には、図5(b)に示すように非鉄摩耗粉と添加剤・増ちょう剤が同じ下層に溜まった状態となり、添加剤・増ちょう剤と非鉄摩耗粉を分離することができない。
Claims (1)
- 機械の運転によりグリス中に発生した摩耗粉を分析して機械の状態を診断する潤滑診断における前記分析の前提として、前記グリス中に発生する非鉄摩耗粉を抽出する方法であって、
試料油である非鉄摩耗粉を含むグリスに、希釈液、及び前記非鉄摩耗粉と添加剤・増ちょう剤の間の比重を有し界面活性剤を含む分離補助液を添加して攪拌する攪拌工程と、
攪拌したものを遠心分離機によって遠心分離して、非鉄摩耗粉、分離補助液、添加剤・増ちょう剤及び希釈液の層に分離する分離工程と、
複数の層のうち、添加剤・増ちょう剤、希釈液を廃棄する廃棄工程と、
残った層に希釈液を入れて攪拌後、濾過フィルタを通過させて非鉄摩耗粉を抽出する抽出工程と、を備えたことを特徴とする潤滑診断におけるグリス中の非鉄摩耗粉抽出方法。
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