JP2014038001A - グリース中の金属分析用試料の製造方法、グリース中の金属含有量を測定する方法、グリースの劣化度を判定する方法 - Google Patents

グリース中の金属分析用試料の製造方法、グリース中の金属含有量を測定する方法、グリースの劣化度を判定する方法 Download PDF

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淳一 鈴村
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Abstract

【課題】ごく微量のグリースと金属粉を溶解し、かつ均一な金属分分析用の液体状試料の製造方法。
【解決手段】基油、増ちょう剤及び金属を含むグリース中の金属含有量を評価するための試料の製造方法であって、前記グリース中の基油及び増ちょう剤を第1の溶剤で溶解する第一の工程と、
前記第一の工程で得られた溶液に酸を添加して前記グリース中の金属を溶解する第二の工程と、
前記第二の工程で得られて溶液に前記第1の溶剤と酸の両方に親和性のある第2の溶剤を添加する第三の工程と、を有する試料の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、鉄道車両構成部材に使用されるグリース(半固体状潤滑剤)中の金属分析用試料製造方法、該グリース中の金属含有量を測定する方法、該グリースの劣化度を測定する方法に関する。
労働コストの上昇や将来想定される労働力の不足等の理由から鉄道車両のメンテナンスの省略化の必要性は増大している。また、鉄道車両は、多数の部材で構成されているもののメンテナンス時期は、事実上、他の部材より耐久性の劣る潤滑油、グリース(半固体状潤滑剤)類の寿命を適正に評価することが、車両のメンテナンス時期を適正なものにすることに直結する。
鉄道車両構成部材の中で、潤滑油、グリース類は主として走行安定性に直結する走り装置に使用されていること、劣化形態が複雑なためその寿命を簡易かつ適正に評価するのが困難であったこと等の理由から、従来より車両の要部検査周期期間に合わせて定期的に交換されてきた。しかし、近年では、材料の劣化特性に関する評価法の研究の進歩によって、多岐にわたる潤滑油、グリース類の劣化を比較的少ない測定項目で評価できるようになってきた。こした状況から、車両用潤滑油、グリース類についても、その寿命を適正に評価することにより、従来の要部検査周期期間を超えて使用できる、即ち、メンテナンス周期を延伸できる可能性があると考えられている(たとえば非特許文献1参照)。
潤滑油、グリース類の劣化は、軸受等の摩耗や塵埃の混入等により発生した金属粉の濃度を測定することにより間接的に知ることができる。たとえば、鉄道車両用グリースでは、グリース交換後ある一定距離を走行した車軸軸受や主電動機軸受からグリースを採取して、適切な元素分析法により金属含有量を測定することで、グリース交換周期の妥当性を評価する指標の一つとしている。
また、前記元素分析法としては、エネルギー分散型蛍光X線分析法(以下、「XRF法」という。)、原子吸光分析法(以下、AAS法という。)、誘導プラズマ発光分光分析法(以下「ICP法」という。)等が挙げられる。
鈴木政治、他2名、鉄道総研報告Vol.11,No.9(1997),p.25−30
しかし、XRF法は、試料がごく微量の場合には、正確な測定が困難であり、グリース中の金属粉の粒径により測定結果に影響を及ぼし、正確な金属濃度を分析することが難しいという問題点がある。
また、AAS法やICP法は試料がごく微量の場合にも測定可能であるが、試料を液体状にする必要がある。試料を前処理して液体状にする方法としては、グリースを油溶性有機溶剤で溶解する方法等が考えられるが、金属粉は溶解せずに沈殿するため、粒径が大きい場合には均一な液体状の試料を得ることが難しく、正確に金属濃度を測定することが難しいといった問題点もある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ごく微量のグリース中の金属分析用の均一な液体状試料の製造方法を提供することを課題とする。
上記問題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第一の態様は、基油、増ちょう剤及び金属を含むグリース中の金属含有量を評価するための試料の製造方法であって、前記グリース中の基油及び増ちょう剤を第1の溶剤で溶解する第一の工程と、前記第一の工程で得られた溶液に酸を添加して前記グリース中の金属を溶解する第二の工程と、前記第二の工程で得られて溶液に前記第1の溶剤と酸の両方に親和性のある第2の溶剤を添加する第三の工程と、を有する試料の製造方法である。
本発明においては、前記第1の溶剤が置換基としてアルキル基を有していてもよい炭素数2〜9の飽和脂肪族酸であることが好ましい。
本発明においては、前記酸は、塩酸、硝酸、王水、希硫酸、及びフッ化水素酸からなる群から選択されるいずれか1つ以上であることが好ましい。
本発明においては、前記第2の溶剤は、アルコール、ケトン、アルデヒドからなる群から選択されるいずれか1つ以上であることが好ましい。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様の製造方法により製造された試料を分析して、グリース中の金属含有量を測定する方法である。
本発明の第三の態様は、前記第二の態様の方法により測定された金属含有量と基準データとからグリースの劣化度を判定する方法である。
本発明によれば、適切な溶剤と酸を組み合わせることにより、ごく微量のグリースと金属粉を溶解し、かつ均一な金属分分析用の液体状試料の製造方法を提供することができる。
以下、本発明について、詳しく説明する。
本発明の試料の製造方法は基油、増ちょう剤及び金属粉を含むグリース中の金属含有量を評価するための試料の製造方法であって、前記グリース中の基油及び増ちょう剤を第1の溶剤で溶解する第一の工程と、前記第一の工程で得られた溶液に酸を添加して前記グリース中の金属を溶解する第二の工程と、前記第二の工程で得られて溶液に前記第1の溶剤と酸の両方に親和性のある第2の溶剤を添加する第三の工程と、を有することを特徴とする。
本発明におけるグリースは、新品の市販のグリースを鉄道車両構成部材として、鉄道車両の車軸や主電動機の軸受などに使用し、一定距離を走行した前記軸受から採取した軸受内部の摩耗等により発生する金属粉を含む使用後のグリースのことである。
本発明における基油は、特に限定されるものではなく、通常潤滑油の基油として使用されているものであれば鉱油系、合成系を問わず使用することができる。
鉱油系潤滑油基油としては、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系などの油が使用できる。
また、合成系潤滑油基油としては、例えば、ポリα−オレフィン(ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマーなど)、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セパケートなど)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネートなど)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテルなどが使用できる。これらの基油は単独でも、2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明における増ちょう剤は、特に限定されるものではなく、通常増ちょう剤として使用されているものであれば、天然由来、合成を問わず使用することができるが、金属石けん系の増ちょう剤(カルシウム、リチウム、ナトリウム石けんやカルシウム,アルミニウム,リチウム複合石けん等)が好ましい。
本発明における金属は、鉄道車両の車軸やレールの構成成分として含有されている金属及びその酸化物、新品の市販のグリース中に含まれる金属及びその酸化物、外部から混入する金属及びその酸化物であれば特に限定されることはない。
前記鉄道車両の車軸やレールの構成成分として含有される金属としては、Fe,Cr,Mn,Cu,Zn等、前記新品の市販のグリース中に含まれる金属としては、Li,Ca,Na,Al,Mg,Mo等、前記外部から混入する金属としては、Si,Fe,Zn,Ca,Ti,Pb等が挙げられる。
本発明におけるグリースは、前記基油を80〜95質量%と、前記増ちょう剤を5〜20質量%とからなることが好ましい(「潤滑グリースの基礎と応用」、日本トライボロジー学会、グリース研究会編)。
本発明の試料の製造方法は基油、増ちょう剤及び金属を含むグリース中の金属含有量を評価するための試料の製造方法であって、前記グリース中の基油及び増ちょう剤を第1の溶剤で溶解する第一の工程と、前記第一の工程で得られた溶液に酸を添加して前記グリース中の金属を溶解する第二の工程と、前記第二の工程で得られて溶液に前記第1の溶剤と酸の両方に親和性のある第2の溶剤を添加する第三の工程と、を有する。
以下、工程について述べる。
<第一の工程>
第一の工程は、前記グリース中の基油及び増ちょう剤を第1の溶剤で溶解する工程である。前記第一の工程において、グリース中の基油及び増ちょう剤とグリース中の金属粉とが分離される。
第一の溶剤としては、グリース中の基油及び増ちょう剤を溶解するものであれば、特に限定されないが、好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜14の飽和脂肪酸である。
前記炭素数2〜14の直鎖状の飽和脂肪酸としては、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)が挙げられ、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)であることが好ましくブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸であることが最も好ましい。
分岐鎖状の飽和脂肪酸としては、分岐鎖であるアルキル基部分に直鎖状、分岐鎖状又は環状の1価の飽和炭化水素基を有するものであれば特に限定されないが、炭素数1〜5の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
なかでも、工業上の入手の容易さから、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
これらの飽和脂肪族酸は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
第一の溶剤の添加量としては、グリース試料10〜20mgに対し、0.5g〜3.5gが好ましく、1.0g〜3.0gがより好ましく、1.5g〜2.5gが最も好ましい。
第一の工程において、第一の溶剤の添加方法としては、特に限定されることはないが、試験管内部に塗布されたグリースに第一の溶剤を添加する方法が挙げられる。
第一の工程の溶解条件としては、グリース中の基油及び増ちょう剤を溶解できる条件であれば、特に限定されることはなく、溶解温度は室温でも良いし、加熱しても良い。
また、反応中は撹拌をすることが好ましい。
<第二の工程>
第二の工程は、前記第一の工程で得られた溶液に酸を添加して前記グリース中の金属を溶解する工程である。
前記酸としては、グリース中の金属を溶解するものであれば、特に限定されないが、塩酸、硝酸、王水、希硫酸、及びフッ化水素酸からなる群から選択されるいずれか1つ以上であることが好ましく、塩酸、硝酸、王水、希硫酸であることがより好ましく、塩酸、硝酸であることが最も好ましい。
これらの酸は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
酸の添加量としては、グリース試料10〜20mgに対し、0.5g〜3.0gが好ましく、0.75g〜2.5gがより好ましく、1.0g〜2.0が最も好ましい。
また、前記酸は市販の酸溶液としては、例えば、塩酸は市販の濃塩酸(HCl濃度;37質量%)、硝酸は市販の濃硝酸(HNO濃度;60又は70質量%)を用いることができる。
第二の工程において、酸の添加方法としては、特に限定はされないが、突沸を防ぐために、ピペット等を用いて第一の工程で添加した第1の溶剤にグリースを懸濁して得られた懸濁液に少量の酸を添加する方法が挙げられる。ここでいう、「懸濁液」とは、グリース中の基油及び増ちょう剤が溶解した溶液と溶解せずに沈殿した金属粉が存在する溶液のことをいう。
第二の工程の溶解条件としては、グリース中の金属を溶解できる条件であれば、特に限定されることはなく、溶解温度は室温でも良いし、加熱しても良い。
また、溶解中は撹拌をすることが好ましい。
<第三の工程>
第三の工程は、前記第二の工程で得られて溶液に前記第1の溶剤と酸の両方に親和性のある第2の溶剤を添加する工程である。
前記第2の溶剤としては、第1の溶剤と酸の両方に親和性のあるものであれば特に限定されないが、のアルコール、ケトン、アルデヒドからなる群から選択されるいずれか1つ以上であることが好ましい。
これらの水溶性のアルコール、ケトン、アルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
炭素数1〜5のアルコールとしては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、エチレングリコール、グリセリンが挙げられ、メタノール、エタノール、2−プロパノールが好ましい。
前記ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、2−ヘプタノンなどが挙げられ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
前記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ビニルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ペリルアルデヒドなどが挙げられ、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドが好ましい。
第二の溶剤の添加量としては、グリース試料10〜20mgに対し、0.5g〜6.0gが好ましく、1.0g〜5.5gがより好ましく、1.5g〜5.0gが最も好ましい。
第三の工程の条件としては、前記第1の溶剤に基油と増ちょう剤が溶解した溶液と前記酸に金属が溶解した溶液が混合され、均一な溶液とすることが好ましく、温度は室温でも良いし、加熱しても良い。
また、反応中は撹拌をすることが好ましい。
<試料測定方法>
本発明の前記試料の製造方法で製造された試料を測定する方法としては、前記試料の金属元素及び前記金属含有量を測定できれば特に限定することはないが、数10mg程度のごく微量のグリース試料を溶解させた液体状の試料中の金元素及び前記金属含有量を測定できることから、ICP法及びAAS法が好ましく、複数の金属元素を同時に測定でき、試料中に含まれている物質の形状の違いが測定結果に影響を及ぼす可能性がないことから、ICP法が最も好ましい。
前記ICP法は、液体試料を高温のプラズマ中に噴霧させ、分解された試料中の原子の発光波長を分光器で測定することにより、試料中に含まれている元素の種類を解析する分析手法である。また、発光の強度から各元素の濃度を定量することができる。ICP法では、周期表のほとんどの元素(約90元素)を高感度(ほとんどの元素の定量下限値は1〜2ppm)で検出することができるため、極微量の試料の分析も可能である。また、試料は全て液体の状態に処理したうえで測定を実施するため、一般的には測定結果に影響を及ぼす可能性はない。
<グリースの劣化度判定方法>
本発明の前記試料の測定方法で測定された金属含有量からグリースの劣化度を判定する方法としては、グリースの劣化度を判定できる方法であれば特に限定されることはないが、鉄道車両の軸受等で使用されたグリースの劣化状況や継続使用の可否を判断する目安として、以下表1で表されるグリースの管理項目とそれに対応する管理基準値を用いることが好ましい。
Figure 2014038001
*1)ちょう度はグリースの硬さ、柔らかさを示す尺度で、値が大きいほど柔らかいことを意味する。
*2)金属含有量はグリースの中に含まれている鉄および銅の量であり、主に軸受しゅう動部や保持器の摩耗により発生したものである。銅に関しては、保持器に銅が含有されている場合のみに対象とする。
*3)水分含有量は使用グリース中に外部から混入した水分量である。
*4)酸価は主に熱的影響により生じたグリースの酸化劣化を示す尺度で、グリース中の劣化生成物の量を代表的な酸であるオレイン酸量として求めたものである。
*5)油分離率は使用グリース中の基油分の減少率である。
*6)滴点変化値は使用グリースの滴点(グリースが液状になる最低温度で、グリースの耐熱性を示す尺度)を、新グリースの滴点と比較した場合の変化値(温度差)である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<グリース試料作製方法>
(グリース試料1〜8)
基油として精製鉱油を85質量%、増ちょう剤としてリチウム複合せっけんを15質量%含む新品グリース(商品名:ユニマックスR No.2、協同油脂社製)と市販の純鉄粉(関東化学製、粒径約10μm)を鉄分量が以下表2に示すように配合したグリース試料作製を準備した。
Figure 2014038001
(グリース試料8〜9)
新品グリース(商品名:ユニマックスR No.2、協同油脂社製)を在来線車両用車軸軸受JT−12に充填し、一般的にグリースの劣化が生じる走行距離に相当する条件で回転試験を実施したのち、A列側保持器柱およびB列側保持器柱に付着したグリースを15mg採取した。
<評価試料の調製及び鉄分測定>
(実施例1)
上記で調製した各参考グリース試料1,2及びグリース試料1〜9を15mg試験管の内壁に薄く塗布し、約2.0gの2−エチルヘキサン酸を加えて攪拌し、グリースの増ちょう剤を完全に溶解させた。これに約1.5gの塩酸を加えて沈殿した鉄を溶解させた。さらに約4.0gの2−プロパノールを加えて希釈し、攪拌して溶液を均一にした後、ICP法により鉄分測定を実施した。
検量線用標準試料としては、ブランク試料(ユニマックスR No.2新品約15mg+2−エチルヘキサン酸約2.0g+塩酸約1.5g+2−プロパノール約4.0g)と、ユニマックスR No.2に油溶解鉄標準試料を添加して鉄分0.301質量%に調整した試料(表2の参考グリース試料2)約15mgを2−エチルヘキサン酸約2.0g、塩酸約1.5g、2−プロパノール約4.0gで希釈した濃度既知の試料の2点の試料を使用した。
結果を表3に示す。
(実施例2)
実施例1と同様にして評価試料を調製し、ICP法により鉄分測定を実施した。
検量線用標準試料としては、ブランク試料(2−エチルヘキサン酸約2.0g+塩酸約1.5g+2−プロパノール約4.0g)と、10000ppmの油溶解鉄標準試料約25mgを2−エチルヘキサン酸約2.0g、塩酸約1.5g、2−プロパノール約4.0gで希釈した濃度既知の試料の2点の試料を使用した。
結果を表3に示す。
(比較例1)
上記で調製した各参考グリース試料1,2及びグリース試料1〜9約0.15gをホルダに入れ、定量XRF法により鉄分測定を実施した。
定量分析のための検量線用標準試料として、鉄分0%(ユニマックスR No.2新品)、および新品グリースに油溶解鉄標準試料を添加して作製した、鉄分0.05質量%、鉄分0.1質量%、鉄分0.3質量%の4点の試料を使用した。
結果を表3に示す。
(比較例2)
上記で調製した各参考グリース試料1,2及びグリース試料1〜9約15mgを試験管の内壁に薄く塗布し、約2.5gの2−エチルヘキサン酸を加えて攪拌し、グリースの増ちょう剤を完全に溶解させた。さらに約2.5gのキシレンを加えて希釈し、ICP法により鉄分測定を実施した。
検量線用標準試料としては、ブランク試料(2−エチルヘキサン酸約2.5g+キシレン約2.5 g)と、10000ppmの油溶解鉄標準試料約25mgを2−エチルヘキサン酸約2.5g、キシレン約2.5gで希釈した濃度既知の試料の2点の試料を使用した。
結果を表3に示す。
(比較例3)
グリース試料約15mgを試験管の内壁に薄く塗布し、約1.5gの塩酸を加え、数日間静置してグリース中の鉄を溶解させた。攪拌後、約2.0gの純水で希釈、溶解せずに残った残渣を除去し、ICP法により鉄分測定を実施した。
検量線用標準試料としては、ブランク試料(塩酸約1.5g+純水約2.0 g)と、100ppmの水溶性鉄標準試料約0.5gを塩酸約1.5gと純水約2.0gで希釈した濃度既知の試料の2点の試料を使用した。
結果を表3に示す。
Figure 2014038001
*1)新品グリースに対して添加した油溶性鉄標準試料または純鉄粉の量。
*2)検量線作製のための標準試料として使用。
*3)沈殿が多く、ICPの試料導入部(ネブライザ)を詰まらせる恐れがあるため、測定を中止した。
表3の結果で示されるように、本発明の製造方法で調製した評価試料は、ごく微量のグリースを用いた場合であっても、鉄分量を正確に測定することが出来た。
また、実施例1では、標準試料と測定試料の粘度を揃えるために、標準試料にグリースを添加しているが、実施例1と実施例2の測定値を比較すると、鉄粉を約10質量%添加したグリース試料7では、やや実施例1の測定値の方が鉄粉添加量に近い値となったものの、両者の測定値に顕著な違いは見られなかった。したがって、ICP法で測定する際の、標準試料と測定試料の粘度の違いによる測定結果への影響は、試料グリースの量が微量であればほとんど無視することができると考えられる。
一方、XRF法を用いた比較例1では、鉄分の測定値が、鉄粉の添加量よりも15〜65%程度少なくなる傾向が見られた。特に、5%以上鉄粉を添加した試料では、鉄粉添加量と測定値との差が大きくなっていた。
また、グリースを有機溶剤で溶解し、酸を添加しないでICP法で測定した比較例2では、鉄分の測定値は、鉄粉の添加量のわずか数%程度の値となった。これは、グリースを溶解した際に、グリース中に含まれていた大部分の鉄粉は直ちに沈殿するため、ICP測定部に導入されなかったと考えられる。
また、グリースを有機溶剤に溶解せずに、塩酸で処理してICP法で測定した比較例3では、鉄分の測定値は、鉄粉の添加量の60〜80%程度の値となる傾向が見られたことから、グリース中の鉄粉は塩酸により完全に溶解されていなかったと考えられる。
以上から、グリース中に鉄が粉末の状態で含まれる試料については、比較例2および比較例3の方法は、鉄分測定法として適していないと考えられる。

Claims (6)

  1. 基油、増ちょう剤及び金属を含むグリース中の金属含有量を評価するための試料の製造方法であって、
    前記グリース中の基油及び増ちょう剤を第1の溶剤で溶解する第一の工程と、
    前記第一の工程で得られた溶液に酸を添加して前記グリース中の金属を溶解する第二の工程と、
    前記第二の工程で得られた溶液に前記第1の溶剤と酸の両方に親和性のある第2の溶剤を添加する第三の工程と、
    を有する試料の製造方法。
  2. 前記第1の溶剤が置換基としてアルキル基を有していてもよい炭素数2〜9の飽和脂肪族酸である請求項1に記載の試料の製造方法。
  3. 前記酸は、塩酸、硝酸、王水、希硫酸、及びフッ化水素酸からなる群から選択されるいずれか1つ以上である請求項1または2に記載の試料の製造方法。
  4. 前記第2の溶剤は、アルコール、ケトンまたはアルデヒドからなる群から選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の試料の製造方法。
  5. 前記請求項1〜4のいずれか一項の製造方法により製造された試料を分析して、グリース中の金属含有量を測定する方法。
  6. 前記請求項5に記載の方法で測定された金属含有量と基準データとからグリースの劣化度を判定する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111220516A (zh) * 2018-11-27 2020-06-02 中国航发商用航空发动机有限责任公司 一种检测航空工作液中颗粒污染物含量方法
JP2021032830A (ja) * 2019-08-29 2021-03-01 Jfeプラントエンジ株式会社 潤滑診断におけるグリス中の非鉄摩耗粉抽出方法
CN114460126A (zh) * 2021-12-30 2022-05-10 辽宁省计量科学研究院 一种润滑脂滴点自动测定器、试管组件及其测定方法

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