JP7197471B2 - 偏光素子、並びにこれを用いた偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ヨウ素とアゾ化合物を含有する偏光素子、偏光板、及び液晶表示装置に関する。
偏光素子は一般に、二色性色素であるヨウ素又は二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させ製造されている。この偏光素子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介してトリアセチルセルロースなどからなる保護フィルムを貼合することにより、偏光板が製造される。偏光板は、液晶表示装置などに用いられる。二色性色素としてヨウ素を用いた偏光素子はヨウ素系偏光素子と呼ばれる。一方、二色性色素として二色性染料を用いた偏光素子は染料系偏光素子と呼ばれる。この偏光素子の少なくとも片面に接着剤層を介してトリアセチルセルロースなどからなる保護フィルムを貼合して偏光板とし、液晶表示装置などに用いられる。
これらのうち染料系偏光板は、耐熱性、湿熱耐久性、安定性に優れ、また、配合による色の選択性が高いという特徴がある。しかし、その一方で、同じ偏光度を有するヨウ素系偏光板と比較すると透過率が低い、すなわち、コントラストが低いという問題点があった。そのため、高い耐久性を有し、色の選択性が多様であって、より高い透過率と高い偏光特性を有する偏光素子の開発が望まれている。
ヨウ素系偏光板は、染料系偏光板に比べ、高透過率で高偏光度、すなわち高コントラストを示すことから、一般的な液晶モニター、液晶テレビ、携帯電話、PDAなどに広く用いられている。しかしながら、ヨウ素系偏光板は光学特性の面では染料系偏光板に勝っているものの、光学耐久性の面では染料系偏光板に劣っており、例えば、ヨウ素系偏光板を高温多湿下に放置すると、脱色により透過率が上昇し、偏光度が低下するなどの問題が生じていた。
透過率及び偏光度が高く、高コントラストで、かつ、耐熱性及び耐湿熱性にも優れる偏光板が求められている。この要望に対する発明として、特許文献1、特許文献2に記載されているように保護フィルムによる改善方法や、特許文献3、特許文献4に記載されているようにトリアセチルセルロースの保護フィルムを接着する接着剤を改質する方法によって湿熱耐久性を向上させることが知られている。また、保護フィルムや接着剤による耐久性の向上ではなく、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理することによってヨウ素系偏光板として耐久性を向上させている例もある。その一つとして酸処理やpH制御による耐久性向上が特許文献5、6及び7に記載されている。例えば、特許文献5では、ホウ素化合物含有ポリビニルアルコール系樹脂フィルムより製膜されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを酸性水溶液に浸漬し、延伸したポリビニルアルコール系樹脂延伸フィルムを用いて耐久性を向上した偏光フィルムについて開示されている。また、特許文献6には、ポリビニルアルコール系樹脂よりなるフィルムをアルカリ金属のヨウ化物を含有させた過酸化水素等の酸化剤を含む酸化浴中で酸化処理する耐湿熱性に優れた偏光フィルムの製造方法が開示されている。また、特許文献7には、pHが4.5以下であるホウ酸水溶液で、一軸延伸及びヨウ素の吸着配向処理が施されたポリビニルアルコールフィルムを処理して耐湿熱性を向上させたヨウ素系偏光フィルムの製造方法が開示されている。こういった耐久性に向けた検討を行っているが、ヨウ素系偏光板の製造においてコストが高く、また、十分な耐久性を付与するには至っていない。
しかしながら、色の選択性が多様である染料系偏光板であっても、従来の偏光板を用いた場合、吸収軸方向が互いに平行になるよう2枚重ねた状態(平行位)で、白色を示すように構成しても、実際には黄色みがかった白色を呈する傾向があった。また、吸収軸方向が互いに直交するように2枚重ねた状態(直交位)で、黒色を示すように構成しても、実際には青みがかった黒色を呈する傾向があった。そこで、平行位で無彩色の白色を示し、直交位で無彩色の黒色を示す偏光素子の開発が求められていた。
無彩色を示す偏光素子を得るためには、平行位と直交位のいずれにおいても、透過率の波長依存性がなく、透過率が各波長で一定であることが必要である。平行位で黄色みを帯び、直交位で青みを帯びる理由は、平行位と直交位で透過率の波長依存性が異なり、かつ、透過率が各波長で一定でないためである。
ここで、ヨウ素系偏光板における波長依存性について説明する。ポリビニルアルコール(以下、「PVA」という)を基材として、二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、一般的に、480nmと600nmを中心とした吸収を有する。480nmの吸収は、ポリヨウ素I とPVAの錯体、600nmの吸収はポリヨウ素I とPVAとの錯体に起因すると言われている。また、ポリヨウ素I とPVAとの錯体に基づく600nmにおける偏光度より、ポリヨウ素I とPVAの錯体に基づく480nmにおける偏光度の方が高い。これにより、直交位において各波長の透過率を一定にしようとすると、平行位において600nmの透過率が480nmの透過率より高くなり、平行位で黄色く着色する現象が起きていた。逆に、平行位において各波長の透過率を一定にしようとすると、直交位において600nmの透過率が480nmの透過率より低くなり、直交位で青く着色する現象が起きていた。さらに、人間の視感度が最も高い550nmに基づく吸収がないため、色の制御が難しいという問題があった。すなわち、各波長の偏光度(二色比)が一定でないために、波長依存性が生じてしまっていた。なお、二色性色素としてヨウ素を用いた場合だけでなく、二色性を有するアゾ化合物を用いた場合にも、平行位と直交位で波長依存性が生じる。一般的に、平行位と直交位で同じ色相を示す色素は知られていない。従来の一般的に知られている二色性を有するアゾ化合物の中には、平行位で黄色、直交位で青色を示すなど、平行位と直交位で波長依存性が全く異なるアゾ化合物も存在する。また、偏光を有することからも分かるように、直交位と平行位では、人に与える明暗の感度も異なることから、仮に色補正をするとしても、人の感度に適した色補正が必要であった。
上記のとおり、平行位と直交位で各波長の透過率が一定であって、波長依存性がない状態を作り出すことは困難である。さらに、透過率が高く、かつ、コントラストが高い偏光素子を得るためには、各波長の偏光度(二色比)が一定でなければならない。二色性色素を1種類用いて偏光素子を製造する場合にも、平行位と直交位における透過率を制御することは難しく、複数の二色性色素を配合して偏光素子を製造する場合に、それぞれの二色性色素の平行位と直交位における透過率と二色性の関係を精密に制御することは極めて困難である。したがって、無彩色を示す偏光素子を得ることが非常に難しく、単に色の三原色を適用すれば達成しうるものではない。平行位と直交位における各波長の透過率を一定に制御するということは、各波長の偏光度も同じでなければならず、非常に困難である。よって、従来技術では、単体透過率が35%以上で、平行位で無彩色の白色を示し、直交位で無彩色の黒色を示す偏光素子を製造するには至っていない。
例えば、特許文献8及び特許文献9には、偏光板の色相を改善する方法が開示されている。具体的に、特許文献8には、平行色相と直交色相とから計算されるニュートラル係数の絶対値が0以上3以下の範囲にある偏光板が開示されている。また、特許文献9には、波長410~750nmにおける分光透過率がその平均値の±30%以内であり、さらに二枚の偏光膜を重ねて偏光軸を直交した際の波長410~750nmの透過率が2%以下である防眩性眼鏡用偏光膜が開示されている。また、特許文献8及び特許文献9における技術課題を解決したものとして、特許文献10には、JIS Z 8729に従って求められる色相のa*値及びb*値において、単体透過率測定時のa*値及びb*値の絶対値が1以内であって、該基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定して得られるa*値及びb*値の絶対値が2以内であって、該基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定して得られるa*値及びb*値の絶対値が2以内であり、単体透過率が35%以上である偏光素子が開示されている。
しかしながら、特許文献8に開示されている実施例によれば、ニュートラル係数が低くても、JIS Z 8729から求められる平行色相のa*値が-1.67~-1.32であり、b*値が2.66~3.51であることから、平行位で黄緑色に呈していることが分かる。また、直交色相のa*値は0.49~0.69であるが、b*値が-3.40~-1.81であることから、直交位で青色に呈していることが分かる。
また、特許文献9に開示されている偏光膜は、偏光膜1枚で測定したときのUCS色空間における色の座標値a、bの絶対値が2以下であるという偏光膜であり、偏光膜2枚を重ねた平行位と直交位での無彩色を達成したものではなかった。さらに、特許文献9に開示されている実施例によれば、偏光膜の単体透過率は31.95%、31.41%と低い。そのため、高い透過率かつ高いコントラストが求められる分野、特に、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンスなどの分野に適用できるものではなかった。
特許文献10は、特許文献8及び特許文献9における技術課題を解決したものであるが、平行位及び直交位で無彩色を示す偏光素子としてさらなる性能向上が求められている。
特開平8-5836号公報 特開2001-272534号公報 特開2004-12578号公報 特開平9-269413号公報 特開平6-254958号公報 特開平7-104126号公報 特開2001-83329号公報 特開2002-169024号公報 特開平10-133016号公報 国際公開第2014/162633号
機能性色素の応用第1刷発行版,(株)CMC出版, 入江正浩監修,p98~100
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ヨウ素系偏光板の高い透過率と高いコントラストを有しながらも、高い耐久性を有する偏光素子、偏光板、及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
また、本発明の目的の一つは、偏光素子2枚を吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねた場合に無彩色の白色を表現でき、かつ、偏光素子2枚を吸収軸方向が互いに直交するように重ねた場合に無彩色の黒色を表現できる偏光素子、偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のアゾ化合物を基材に含有させた偏光板を作製することにより、高い偏光度及び高い透過率を有しつつ、高い耐久性を示す偏光素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨構成は以下に示すとおりである。
[1]
ヨウ素及び下記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有する基材からなる偏光素子:
Figure 0007197471000001

(式中、Agは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を表し、Bg及びCgは、各々独立に、下記式(2)又は式(3)で表され、少なくともいずれか一方が式(2)を表し、Xgは、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、又は置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基を表す)
Figure 0007197471000002

(式中、Rgは水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表し、kは0~2の整数を表す)
Figure 0007197471000003

(式中、Rg及びRgは各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表す)。
[2]
式(1)で表されるアゾ化合物が下記式(4)で表される[1]に記載の偏光素子:
Figure 0007197471000004

(式中、Ag、Bg、Cg、及びXgは、[1]で定義した通りである)。
[3]
式(1)におけるXgが、アミノ基、フェニルアミノ基、及びベンゾイルアミノ基からなる群から選択される基である[1]又は[2]に記載の偏光素子。
[4]
式(1)で表されるアゾ化合物が、下記式(5)で表される[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の偏光素子。
Figure 0007197471000005

(式中、Agは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を表し、Rg及びRgは各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表し、Xgは置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、又は、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基を表し、k及びkは各々独立に0~2の整数を表す。)
[5]
さらに、下記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有する[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の偏光素子:
Figure 0007197471000006

(式中、Arは置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表し、Rr及びRrは各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表し、Xrは置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、又は置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基を表す)。
[6]
表色系におけるa値及びb値の絶対値が、
前記基材を単体で測定したときに、いずれも1以下であり、
前記基材2枚を吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねて測定したときに、いずれも2以下である
ことを特徴とする[5]に記載の偏光素子。
[7]
前記基材2枚を吸収軸方向が互いに直交するよう重ねて測定したときに、L表色系におけるa値の絶対値が4以下、b値の絶対値が8以下であることを特徴とする[6]に記載の偏光素子。
[8]
偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が直交するように絶対偏光光を照射して測定した各波長の透過率Kyにおいて、
550nm~600nmにおける透過率の平均値と400nm~460nmにおける透過率の平均値との差が5%以下であり、かつ、600nm~670nmにおける透過率の平均値と550nm~600nmにおける透過率の平均値との差が3%以下であることを特徴とする[6]又は[7]に記載の偏光素子。
[9]
偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が平行となるように絶対偏光光を照射して測定した各波長の透過率Kzにおいて
550nm~600nmにおける透過率の平均値と400nm~460nmにおける透過率の平均値との差が2%以下であり、かつ、600nm~670nmにおける透過率の平均値と550nm~600nmにおける透過率の平均値との差が1%以下であることを特徴とする、[6]乃至[8]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[10]
視感度補正単体透過率が35~45%である、[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[11]
基材が、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムである[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[12]
[1]乃至[11]のいずれか一項に記載の偏光素子と、該偏光素子の少なくとも一方の面に形成した透明保護層とを備える偏光板。
[13]
[1]乃至[11]のいずれか一項に記載の偏光素子又は[12]に記載の偏光板を有する液晶表示装置。
本発明の偏光素子は、ヨウ素系偏光板並みの高い透過率と高いコントラストを有しながらも、高い耐久性を実現する。
本発明の一態様において、偏光素子は、偏光素子2枚を吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねた場合に無彩色の白色を表現でき、かつ、偏光素子2枚を吸収軸方向が互いに直交するように重ねた場合に無彩色の黒色を表現できる。
また、本発明の偏光素子は、偏光板及び液晶表示装置に用いることができる。
[偏光素子]
本発明の偏光素子は、ヨウ素及び下記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有する基材を含有することを特徴とする。以下、本発明の偏光素子を詳細に説明する。
(基材)
基材は、ヨウ素及び式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有させることができるものであれば特に限定されず、例えば、親水性高分子から成形される成形体が挙げられる。親水性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸塩系樹脂などが挙げられる。アゾ化合物又はそれらの塩を基材に含有させる場合、加工性、染色性及び架橋性などの観点から、基材としてポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。基材の形状は特に限定されないが、フィルム状であることが好ましい。
(ヨウ素)
基材にヨウ素を含有させる際、ヨウ素のみでは溶媒に溶解しにくく、基材へ含有させにくいため、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化銅、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化亜鉛などのヨウ化物、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウムなどの塩化物をヨウ素と共に含有させる方法が一般的に用いられる。
(式(1)で表されるアゾ化合物)
本発明の偏光素子は式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有する。
Figure 0007197471000007

式(1)において、Agは、置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を表す。Agがフェニル基である場合は、その置換基としてスルホ基又はカルボキシ基を少なくとも1つ有することが好ましい。フェニル基が置換基を2つ以上有する場合は、その置換基の少なくとも1つがスルホ基又はカルボキシ基であり、その他の置換基が、スルホ基、カルボキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基、又は低級アルキルアミノ基置換アミノ基であることが好ましい。その他の置換基は、より好ましくは、スルホ基、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、又はアミノ基であり、特に好ましくはスルホ基、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、又はカルボキシ基である。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシが好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端であることが好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基及び4-スルホブトキシ基であり、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。フェニル基が有する置換基の数は1又は2が好ましく、置換位置は特に限定されないが、4位のみ、2位と4位の組合せ、及び3位と5位の組合せが好ましい。
Agが置換基を有するナフチル基である場合、その置換基としてスルホ基を少なくとも1つ有することが好ましい。ナフチル基が置換基を2つ以上有する場合は、その置換基の少なくとも1つがスルホ基であり、その他の置換基としては、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基が好ましい。ナフチル基は、置換基として2つ以上のスルホ基を有することがより好ましい。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシが好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端であることが好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基及び4-スルホブトキシ基であり、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。ナフチル基が有するスルホ基の数が2である場合、スルホ基の置換位置は好ましくは4,8位の組合せ、及び6,8位の組合せが好ましく、6,8位の組合せがより好ましい。ナフチル基が有するスルホ基の数が3である場合、スルホ基の置換位置は好ましくは1,3,6位の組合せである。
本願において、「置換基を有してもよい」とは、置換基を有していない場合も含まれることを意味する。例えば、「置換基を有してもよいフェニル基」は、非置換の単なるフェニル基と、置換基を有するフェニル基を含む。また、低級アルキル基及び低級アルコキシ基の「低級」とは、炭素数が1~4個(C1~4)であり、好ましくは炭素数が1~3個(C1~3)である。
Bg及びCgは、各々独立に、式(2)又は式(3)で表され、Bg及びCgの少なくとも一方が式(2)で表される。
Figure 0007197471000008

Figure 0007197471000009
式(2)及び式(3)において、Rg乃至Rgは、各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表す。好ましくは、Rgは、水素原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、又はメトキシ基であり、特に好ましくは、水素原子又はメトキシ基である。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシが好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端であることが好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基及び4-スルホブトキシ基であり、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。式(2)において、アゾ基の置換位置を1位及び4位とした場合、Rgの置換位置は2位又は3位が好ましい、Ag側のアゾ基を1位とした場合、Rgの置換位置は3位であることがより好ましい。式(2)において、kは0乃至2の整数を表す。スルホ基がある場合(kが1又は2である場合)には、少なくとも1つのスルホ基の置換位置は6位又は7位が好ましく、7位がより好ましい。また、好ましくは、Rg及びRgは、各々独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、3-スルホプロポキシ基、又は4-スルホプロポキシ基である。
Xgは、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、又は置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基を表す。Xgは、好ましくは、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、又は置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基であり、より好ましくは、アミノ基、フェニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基であり、特に好ましくはフェニルアミノ基である。置換基を有してもよいアミノ基は、好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するアミノ基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、及びスルホ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するアミノ基である。置換基を有してもよいフェニルアミノ基は、好ましくは、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、アミノ基、及び低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するフェニルアミノ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、及びアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するフェニルアミノ基である。置換位置は特に限定されないが、置換基の1つはフェニルアミノ基のアミノ基に対してp位であることが好ましい。フェニルアゾ基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1乃至3つの置換基を有するフェニルアゾ基である。置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1つの置換基を有するベンゾイルアミノ基である。
式(1)で表されるアゾ化合物が式(4)で表されることが、性能が向上するために好ましい。
Figure 0007197471000010
式(1)で表されるアゾ化合物が式(5)で表されることが、性能が向上するためにより好ましい。
Figure 0007197471000011
式(5)中、Agは置換基を有するフェニル基又はナフチル基を表し、Rg及びRgは各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表す。Xgは、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、又は、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基を表す。k及びkは各々独立に0乃至2の整数を表す。
上記偏光素子を作製する際、基材を浸漬させる染料水溶液中の、式(1)、又は、式(1)及び式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩の含有量は、水溶液100重量部に対して、0.0001~5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.001~1重量部である。また、式(1)で表されるアゾ化合物と、式(6)で表されるアゾ化合物の重量比率は、任意で設定可能であるが、5:1~1:5であることが好ましく、5:1~2:1であることがさらに好ましく、3:1~2:1であることが特に好ましい。
式(1)で示されるアゾ化合物又はその塩は、例えば、特開平1-161202号公報、特開平01-172907号公報、特開平01-248105号公報、特開平01-265205号公報、及び特開平01-172907号公報等に記載される方法により合成することができるが、これらに限定されない。
式(1)で表されるアゾ化合物の具体例としては、例えば、
C.I.Direct Blue 34、
C.I.Direct Blue 69、
C.I.Direct Blue 70、
C.I.Direct Blue 71、
C.I.Direct Blue 72、
C.I.Direct Blue 75、
C.I.Direct Blue 78、
C.I.Direct Blue 81、
C.I.Direct Blue 82、
C.I.Direct Blue 83、
C.I.Direct Blue 186、
C.I.Direct Blue 258、
Benzo Fast Chrome Blue FG(C.I.34225)、
Benzo Fast Blue BN(C.I.34120)、
C.I.Direct Green 51、
等が挙げられる。
以下に、式(1)で表されるアゾ化合物の具体例を、遊離酸として示す。
Figure 0007197471000012

Figure 0007197471000013

Figure 0007197471000014

Figure 0007197471000015
(式(6)で表されるアゾ化合物)
一態様において、本発明の偏光素子は式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩をさらに含有してもよい。
Figure 0007197471000016

式(6)中、Arは置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表し、Rr及びRrは各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表し、Xrは置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、又は置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基を表す。
Arは置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を表す。置換基を有してもよいフェニル基は、スルホ基又はカルボキシ基を少なくとも1つ有するフェニル基であることが好ましい。フェニル基が置換基を2つ以上有する場合は、その置換基の少なくとも1つがスルホ基又はカルボキシ基であり、その他の置換基が、スルホ基、カルボキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基又は低級アルキルアミノ基置換アミノ基であることが好ましい。その他の置換基は、スルホ基、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、又はアミノ基がより好ましく、特に好ましくはスルホ基、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基である。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましい。具体的に、3-スルホプロポキシ基、4-スルホブトキシ基がより好ましく、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。置換基を有してもよいフェニル基は、置換基を1つ又は2つ有することが好ましく、置換位置については特に限定されないが、4位置のみ、2-位と4-位、3-位と5-位の組合せが好ましい。
置換基を有してもよいナフチル基は、スルホ基を少なくとも1つ有するナフチル基であることが好ましい。ナフチル基が置換基を2つ以上有する場合は、その置換基の少なくとも1つがスルホ基であり、その他の置換基が、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基であることが好ましい。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましい。具体的に、3-スルホプロポキシ基、4-スルホブトキシ基がより好ましく、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。ナフチル基がスルホ基を2つ有する場合、スルホ基の置換位置として4-位と8-位、6-位と8-位の組合せが好ましく、6-位と8-位の組合せがより好ましい。ナフチル基がスルホ基を3つ有する場合、スルホ基の置換位置としては1-位,3-位,6-位の組合せが好ましい。
Xrは置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基又は置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基を表す。置換基を有してもよいアミノ基は、低級アルキル基、低級アルコキシル基、スルホ基、アミノ基、及び低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するアミノ基であり、好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するアミノ基である。また、置換基を有してもよいフェニルアミノ基は、非置換のフェニルアミノ基、あるいは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するフェニルアミノ基であることが好ましい。また、置換基を有してもよいフェニルアゾ基は、非置換のフェニルアゾ基、あるいは、ヒドロキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1~3つの置換基有するフェニルアゾ基であることが好ましい。置換基を有してもよいベンゾイル基は、非置換のベンゾイル基、あるいは、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1つの置換基を有するベンゾイル基であることが好ましい。置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基は、非置換のベンゾイルアミノ基、あるいは、ヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1つの置換基を有するベンゾイルアミノ基であることが好ましい。より好ましくは、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基である。特に好ましくは、置換基を有してもよいフェニルアミノ基である。置換位置は特に限定されないが、置換基が1つである場合はp-位であることが好ましい。
Rr又はRrは各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表す。好ましくは水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましい。具体的に、3-スルホプロポキシ基、4-スルホブトキシ基がより好ましく、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。
式(6)で表されるアゾ化合物の具体例としては、
C.I.Direct Red 81、
C.I.Direct Red 117、
C.I.Direct Violet 9、
C.I.Drect Red 127、
特開2003-215338号公報、特開平9-302250号公報、国際公開第2000/037973号などに記載されているアゾ化合物
が挙げられる。
より具体的に、式(6)で表されるアゾ化合物の例を、下記に遊離酸の形式で示す。
Figure 0007197471000017

Figure 0007197471000018
式(6)で表されるアゾ化合物を得る方法としては、特開2003-215338号公報、特開平9-302250号公報、国際公開第2000/037973号などに記載されている方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記偏光素子は、本願発明の効果に係る性能を損なわない程度に、色の補正として式(1)、又は、式(1)及び式(6)で表されるアゾ化合物以外の他のアゾ化合物を含有してもよい。含有させる他のアゾ化合物としては、特に、二色性の高いものが好ましい。例えば、
非特許文献1に示されるようなアゾ化合物、
C.I.Direct.Yellow12、
C.I.DirectYellow28、
C.I.Direct. Yellow44、
C.I.Direct.Orange26、
C.I.Direct.Orange39、
C.I.Direct.Orange107、
C.I.Direct.Red2、
C.I.Direct.Red31、
C.I.Direct.Red79、
C.I.Direct.Red247、
C.I.Direct.Green80、
C.I.Direct.Green59、
特開昭57-145155号公報、特開平3-12606号公報、特開2001-33627号公報、特開2002-296417号公報、及び特開昭60-156759号公報に記載されたアゾ化合物
等が挙げられる。トリスアゾ構造にフェニルJ酸を有するアゾ化合物を好適に用いることができ、特開平3-12606号公報に記載されるアゾ化合物を、ヨウ素、遊離酸として式(1)、又は、式(1)及び式(6)で表されるアゾ化合物又はそれらの塩とともに偏光素子に用いることが特に好適である。上記他のアゾ化合物としては、遊離酸の他、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アンモニウム塩、又はアミン類の塩として用いることができる。ただし、他のアゾ化合物はこれらに限定されず、公知の二色性を有するアゾ化合物を用いることが出来る。他のアゾ化合物を、遊離酸、その塩、又はその銅錯塩の形式で含有させることで、特に、光学特性が向上する。この他のアゾ化合物は、1種のみで用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
上記偏光素子は、式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩と、式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩とを含有することが好ましい。含有させる際用いる染料水溶液中の式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩と式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩の比率は、任意で設定可能であるが、5:1~1:5であることが好ましく、5:1~2:1であることがより好ましく、3:1~2:1であることが特に好ましい。
(視感度補正単体透過率)
上記偏光素子は、偏光素子の視感度補正単体透過率が35%であれば、液晶表示装置に用いて、十分に明るさを表現することができるがそれに限定されるものではない。視感度補正単体透過率は、好ましくは38%以上、より好ましくは39%以上、特に好ましくは40%以上である。視感度補正単体透過率が45%を超えると、偏光度が低下やコントラストが低下するが、高い透過率を有した偏光板として機能することが出来る。ただし、高い偏光度や高コントラストを求める分野では視感度補正透過率は45%以下が好ましく、さらに好ましくは44%以下、特に好ましくは43.5%以下である
視感度補正単体透過率は、JIS Z 8781-4:2013に記載のC光源 2°視野を用いて視感度補正を行った単体透過率である。視感度補正単体透過率は、測定試料(例えば、偏光素子又は偏光板)1枚について、400~700nmの各波長について、5nm又は10nm毎に単体透過率を算出し、さらに2°視野(C光源)により、視感度補正を行うことで求めることができる。
(偏光度)
上記偏光素子は、偏光度が99%以上であることが好ましい。偏光素子の偏光度が99%以上であれば、液晶表示装置に用いても、偏光機能を表現することができる。偏光度は、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.95%以上である。
(a値及びb値)
表色系は、国際照明委員会(略称CIE)で規定する物体色の表示方法である。この表示方法は、JIS Z 8781-4:2013においても採用されている。本発明において、L表色系におけるa値及びb値は、JIS Z 8781-4:2013に従い算出される。以下では、偏光素子1枚(単体)で測定したときに求められるa値及びb値を、「a-s」及び「b-s」という。また、偏光素子2枚を吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねて測定したときのa値及びb値を、「a-p」及び「b-p」という。また、偏光素子2枚を吸収軸方向が互いに直交するように重ねて測定したときのa値及びb値を、「a-c」及び「b-c」という。
(単体及び平行位の色相)
一態様において、好ましくは上記偏光素子が式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有する態様において、偏光素子は、a-s及びb-sの絶対値が1以下であり、a-p及び -pの絶対値が2以下である。好ましくは、a-p及びb-pの絶対値が1.5以下であり、かつ、a-c及びb-cの絶対値が1.5以下である。さらに好ましくは、a-p及びb-pの絶対値が1.0以下である。a及びbの絶対値が0.5異なるだけでも、人は色の違いが感じることができるため、a及びbを制御することは非常に重要である。特に、a-s、b-s、a-p、b-pの絶対値がいずれも1.0以下であれば、平行位及び直交位で、人が色みを帯びていると感じることはできず、特に良好な偏光素子となる。
(直交位の色相)
一態様において、好ましくは本発明の偏光素子が式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有する態様において、偏光素子は、a-cの絶対値が4以下、及び、b*-cの絶対値が8以下であることが好ましい。より好ましくは、a-cの絶対値が2以下、及び、b-cの絶対値が4.0以下であり、さらに好ましくは、a-cの絶対値が1以下、及び、b-cの絶対値が2.0以下である。特に好ましくはa-c、b-cの絶対値がいずれも1.0以下であり、その場合、平行位及び直交位で偏光素子が色みを帯びていると人が感じることはできず、良好な偏光素子となる。ただし、偏光度が99%以上あると、平行位と直交位の明暗の差が大きく、かつ、暗状態での透過率が低いため、人の感度として直交位での色相はほとんど分からなくなる。そのため、偏光度99%あれば必ずしも直交位の色相はa-cの絶対値が4以下、及び、b*-cの絶対値が8以下である必要はないが、ただし、強い強度を有するバックライト等を用いた場合にはこの限りではないため、a-c及びb-cの絶対値が小さい値であることが良い。
(透過率の設計)
視感度補正単体透過率が任意の透過率である偏光素子において、L表色系におけるa値及びb値の絶対値が、基材を単体で測定したときに、いずれも1以下であり、基材2枚を吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねて測定したときに、いずれも2以下であり、基材2枚を吸収軸方向が互いに直交するよう重ねて測定したときに、いずれも2以下である偏光素子を得るためには、各波長の透過率を制御することが好ましい。
具体的に、偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が直交するように絶対偏光光を照射して測定した各波長の透過率をKy、即ち偏光素子の透過軸(非吸収軸)方向に対して照射した絶対偏光光が平行である時の透過率を示し、、偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が平行となるように絶対偏光光を照射して測定した各波長の透過率をKz、即ち偏光素子の透過軸(非吸収軸)方向に対して照射した絶対偏光光が直交である時の透過率を示す、としたとき、550nm~600nmにおけるKyの平均値と400nm~460nmにおけるKyの平均値との差が5%以下であり、かつ、600nm~670nmにおけるKyの平均値と550nm~600nmにおけるKyの平均値との差が3%以下であることが好ましい。より好ましくは、550nm~600nmにおけるKyの平均値と400nm~460nmにおけるKyの平均値との差が3.5%以下であり、かつ、600nm~670nmにおけるKyの平均値と550nm~600nmにおけるKyの平均値との差が2.5%以下である。特に好ましくは、550nm~600nmにおけるKyの平均値と400nm~460nmにおけるKyの平均値との差が3%以下であり、かつ、600nm~670nmにおけるKzの平均値と550nm~600nmにおけるKzの平均値との差が2%以下である。なお、絶対偏光光とは、偏光度がほぼ100%の偏光板に、標準光源から光を照射した際に、この偏光板を通過してきた偏光光をいい、ほぼ100%の偏光光を意味する。
550nm~600nmにおけるKzの平均値と400nm~460nmにおけるKzの平均値との差が2%以下であり、かつ、600nm~670nmにおけるKzの平均値と550nm~600nmにおけるKzの平均値との差が1%以下であることが好ましい。より好ましくは、550nm~600nmにおけるKzの平均値と400nm~460nmにおけるKzの平均値との差が1.5%以下であり、かつ、600nm~670nmにおけるKzの平均値と550nm~600nmにおけるKzの平均値との差が0.5%以下である。特に好ましくは、550nm~600nmにおけるKzの平均値と400nm~460nmにおけるKzの平均値との差が1%以下であり、かつ、600nm~670nmにおけるKzの平均値と550nm~600nmにおけるKzの平均値との差が0.1%以下である。
[偏光素子の製造方法]
以下、基材として、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを例にして、具体的な偏光素子の製造方法を説明する。偏光素子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の製造、原反フィルムの作製、膨潤処理、染色処理、第1洗浄処理、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる処理、延伸処理、第2洗浄処理、乾燥処理を順に行うことによって製造される。なお、これらの一部の処理は省略することが可能である。
(ポリビニルアルコール系樹脂の製造)
ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは95モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、粘度平均重合度を意味し、当該技術分野において周知の手法によって求めることができる。重合度は、通常1,000~10,000程度、好ましくは1,500~6,000程度である。
(原反フィルムの作製)
次に、ポリビニルアルコール系樹脂を製膜し、原反フィルムを作製する。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法を採用することができる。原反フィルムは、可塑剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコールなどを含有してもよい。可塑剤の含有量は原反フィルム中5~20重量%であり、好ましくは8~15重量%である。原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、5μm~150μm程度であることが好ましく、より好ましくは10μm~100μm程度である。
(膨潤処理)
上記により得られた原反フィルムには、さらに膨潤処理が施される。膨潤処理は原反フィルムを20~50℃の溶液に30秒~10分間浸漬させることによって行われる。溶液は水溶液が好ましい。延伸倍率は1.00~1.50倍で調整することが好ましく、より好ましくは1.10~1.35倍である。後述する染色処理においても膨潤するため、偏光素子を作製する時間を短縮する場合には、この膨潤処理を省略してもよい。
(染色処理)
膨潤処理の後の原反フィルムに(又は膨潤処理が省略された原反フィルムに)、染色処理が施される。染色処理は、膨潤処理後のフィルムを、ヨウ素、並びに、式(1)、又は、式(1)及び式(6)で表されるアゾ化合物又はそれらの塩を用いて染色する処理である。ヨウ素による染色は、例えば、膨潤処理後のフィルムをヨウ素及びヨウ化物を含有した染色用溶液に浸漬させることによって行われる。ヨウ化物としては特に限定されないが、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化亜鉛などが挙げられ、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウムが好ましい。またこれらヨウ化物は、単独、又は複数を組合せて用いることが可能である。染色用溶液におけるヨウ素の濃度は、好ましくは0.0001重量%~0.5重量%であり、より好ましくは0.001重量%~0.4重量%であり、特に好ましくは0.0001重量%~0.3重量%である。
また、式(1)、又は、式(1)及び式(6)で表されるアゾ化合物又はそれらの塩による染色は、例えば、膨潤処理後のフィルムを、遊離酸の形式で式(1)、又は、式(1)及び式(6)で表されるアゾ化合物又はそれらの塩を含有した染色用溶液に浸漬させることによって行われる。
染色処理での溶液温度は、5~60℃が好ましく、20~50℃がより好ましく、35~50℃が特に好ましい。溶液に浸漬させる時間は適度に調節できるが、30秒~20分が好ましく、1~10分がより好ましい。染色用溶液は、水溶液であることが好ましい。
染色方法は、染色用溶液に浸漬させる方法が好ましいが、膨潤処理後のフィルムに染色用溶液を塗布する方法を採用することもできる。染色用溶液は、染色助剤として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどを含有してもよい。染色助剤の含有量は、二色性染料の染色性による時間、温度によって任意に調整できるが、0~5重量%が好ましく、0.05~2重量%がより好ましい。
ヨウ素による染色と、アゾ化合物による染色は、同時に行ってもよいが、ヨウ素による染色の後にアゾ化合物による染色を行うか、又は、アゾ化合物による染色の後にヨウ素による染色を行うことが、染色液の管理や生産性などの観点から好ましい。式(1)、又は、式(1)及び式(6)で表されるアゾ化合物は、遊離酸として用いてもよく、塩として用いてもよい。塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、又は、アンモニウム塩やアルキルアミン塩などが挙げられる。好ましくは、ナトリウム塩である。
(第1洗浄処理)
染色処理の後、次の処理を行う前に洗浄処理(以下、「第1洗浄処理」という)を行うことができる。第1洗浄処理とは、染色処理でフィルム表面に付着した染色用溶液を洗浄する処理である。第1洗浄処理を行うことによって、次の処理で使用する溶液中に染料が混入するのを抑制することができる。第1洗浄処理では、一般的に洗浄液として水が用いられる。洗浄方法は、染色処理後のフィルムを洗浄液に浸漬させる方法が好ましいが、染色処理後のフィルムに洗浄液を塗布する方法を採用することもできる。洗浄時間は、特に限定されないが、好ましくは1~300秒、より好ましくは1~60秒である。第1洗浄処理での洗浄液の温度は、染色処理後のフィルムが溶解しない温度であることが必要となる。一般的には5~40℃で洗浄される。ただし、第1洗浄処理を行わなくても性能に問題は出ないため、この第1洗浄処理を省略してもよい。
(架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる処理)
第1洗浄処理の後(又は染色処理後)、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる処理を行うことができる。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物が挙げられ、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどが挙げられる。耐水化剤としては、例えば、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられる。これらの内、ホウ酸が最も好ましい。架橋剤、耐水化剤は1種のみ用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
第1洗浄処理後の(又は染色処理後の)フィルムを、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液に浸漬させる方法が好ましいが、第1洗浄処理後の(又は染色処理後の)フィルムに、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液を塗布する方法を採用することもできる。溶液は水溶液であることが好ましい。溶液中の架橋剤及び/又は耐水化剤の含有量は、ホウ酸を例にして示すと、0.1~6.0重量%が好ましく、1.0~4.0重量%がより好ましい。溶液の温度は、5~70℃が好ましく、5~50℃がより好ましい。処理時間は30秒~6分が好ましく、1~5分がより好ましい。ただし、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させることは必須でなく、時間を短縮したい場合、架橋処理又は耐水化処理が不必要な場合には、この処理を省略してもよい。
(延伸処理)
架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる処理を行った後に、延伸処理を行う。延伸処理とは、フィルムを1軸に延伸する処理である。延伸方法は湿式延伸法又は乾式延伸法のどちらでもよい。延伸倍率は3倍以上、好ましくは5~7倍である。
乾式延伸法の場合には、延伸加熱媒体が空気媒体であるとき、空気媒体の温度は常温~180℃であることが好ましい。また、湿度20~95%RH(相対湿度)の雰囲気中で処理するのが好ましい。加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、その延伸方法は限定されるものではない。
フィルムを1段で延伸することもできるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
湿式延伸法の場合には、水、水溶性有機溶剤、又はその混合溶液中で延伸する。第1洗浄処理後のフィルムを、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中に浸漬させながら延伸処理を行うことが好ましい。架橋剤、耐水化剤としては、上記のものが挙げられる。溶液中の架橋剤及び/又は耐水化剤の含有量は、ホウ酸を例にして示すと、0.5~15重量%が好ましく、2.0~8.0重量%がより好ましい。延伸倍率は2~8倍が好ましく、5~7倍がより好ましい。溶液の温度は40~60℃が好ましく、45~58℃がより好ましい。延伸時間は通常30秒~20分であり、2~5分が好ましい。フィルムを1段で延伸することもできるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
(第2洗浄処理)
延伸処理を行った後には、フィルム表面に架橋剤及び/又は耐水化剤が析出するか、又は異物が付着することがあるため、フィルム表面を洗浄する洗浄処理(以下、「第2洗浄処理」という)を行うことができる。洗浄方法は、延伸処理後のフィルムを洗浄液に浸漬させる方法が好ましいが、延伸処理後のフィルムに洗浄液を塗布する方法を採用することもできる。1段で洗浄処理することもできるし、2段以上の多段処理をすることもできる。洗浄時間は1秒~5分が好ましい。洗浄液の温度は特に限定されないが、通常5~50℃、好ましくは10~40℃である。
上記第1及び第2洗浄処理で用いる溶媒として、例えば、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミン及びジエチレントリアミン等のアミン類、などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、1種以上のこれら溶媒の混合物を用いることもできる。最も好ましい溶媒は水である。第2洗浄処理としては、ヨウ化カリウム水溶液を用いることが好ましい。
(乾燥処理)
上記工程の後に、フィルムを乾燥させる乾燥処理を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができる。乾燥効率をより高めるために、ロールを用いて圧縮したり、エアーナイフ又は吸水ロール等によって表面の水分を除去してもよく、送風乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、20~100℃が好ましく、60~100℃がより好ましい。乾燥時間は30秒~20分が好ましく、より好ましくは5~10分である。
上記方法により、ヨウ素及び式(1)、又は、式(1)及び式(6)で表されるアゾ化合物又はそれらの塩を含有する基材からなり、高い透過率とコントラストと高い耐久性を有する偏光素子を得ることができる。
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光素子と、偏光素子の少なくとも一方の面、すなわち片面又は両面に形成した透明保護層とを備える。偏光素子の少なくとも一方の面にポリマーを塗布した後、乾燥又は熱処理を行うことにより、偏光素子の少なくとも一方の面に透明保護層を設けることができる。また、ポリマーをフィルム状に成形したものを透明保護層とし、透明保護層を偏光素子の少なくとも一方の面と貼り合わせた後、乾燥又は熱処理を行うことにより、偏光素子の少なくとも一方の面に透明保護層を設けることができる。
透明保護層を形成するポリマーとして、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマーが好ましい。このようなポリマーとして、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースなどのセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ノルボルネンなどの環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー樹脂、ノルボルネン骨格を有するポリオレフィン又はその共重合体、主鎖又は側鎖にイミド基及び/又はアミド基を有する樹脂が挙げられる。また、透明保護層を形成するポリマーは、液晶ポリマーであってもよい。透明保護層の厚みは、例えば、0.5μm~200μm程度である。
透明保護層を偏光素子の少なくとも一方の面と貼り合わせるためには接着剤が必要となる。接着剤としては特に限定されないが、ポリビニルアルコールを主成分とする接着剤が好ましい。ポリビニルアルコール系接着剤として、例えば、ゴーセノールNH-26(日本合成化学社製)、エクセバールRS-2117(クラレ社製)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。ポリビニルアルコール系接着剤には、架橋剤及び/又は耐水化剤を混合させることができる。また、ポリビニルアルコール系接着剤は、無水マレイン酸とイソブチレンの共重合体、又はその変性体を含有してもよい。無水マレイン酸とイソブチレンの共重合体としては、例えば、イソバン#18(クラレ社製)、イソバン#04(クラレ社製)が挙げられ、アンモニア変性した無水マレイン酸-イソブチレン共重合体としては、イソバン#104(クラレ社製)、イソバン#110(クラレ社製)が挙げられ、イミド化した無水マレイン酸-イソブチレン共重合体としては、イソバン#304(クラレ社製)、イソバン#310(クラレ社製)が挙げられる。架橋剤には、水溶性多官能エポキシ化合物を用いることができる。水溶性多官能エポキシ化合物としては、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX-521(ナガセケムテック社製))、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(TETRAD-C(三菱ガス化学社製))などが挙げられる。また、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤といった公知の接着剤を用いることもできる。また、接着剤の接着力の向上、又は耐水性の向上を目的として、亜鉛化合物、塩化物、ヨウ化物等の添加物を同時に0.1~10重量%程度の濃度で含有させることもできる。
上記偏光板を、例えば液晶、有機エレクトロルミネッセンス等の表示装置と貼り合わせる場合、後に非露出面となる表面に視野角改善及び/又はコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層を設けることができる。偏光板を、これらの層や表示装置と貼り合せるには粘着剤を用いるのが好ましい。
偏光板を、例えば液晶、有機エレクトロルミネッセンス等の表示装置と貼り合わせる場合、貼り合わせ後に露出面となる表面に反射防止層や防眩層、ハードコート層など、公知の各種機能性層を設けることができる。この各種機能性を有する層を作製するには塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼り合わせることもできる。また、各種機能性層として、例えば、位相差を制御する層が挙げられる。
上記偏光板は、偏光素子と同様の光学特性を有する。
一態様において、L表色系におけるa値及びb値の絶対値は、偏光板を単体で測定したときに、いずれも1以下であり、偏光板2枚を吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねて測定したときに、いずれも2以下であり、偏光板2枚を吸収軸方向が互いに直交するよう重ねて測定したときに、いずれも2以下である。これにより、平行位及び直交位において無彩色が示される。
[液晶表示装置]
上記偏光素子又は偏光板は、液晶表示装置に用いることができる。
本発明の偏光素子又は偏光板を用いた液晶表示装置は、信頼性が高く、長期的に高コントラストを維持し、かつ、高い色再現性を有する液晶表示装置である。
本発明の偏光素子又は偏光板は、必要に応じて保護層又は機能層、及び支持体等を備え、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、偏光レンズ、偏光メガネ、カーナビゲーション、及び屋内外の計測器や表示器等に使用される。特に、反射型液晶表示装置、半透過液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス等において有効に利用される。
本発明の偏光板は、少なくとも一方の面に支持体を備えていてもよい。支持体は偏光板と貼り合わせるため、平面部を有しているものが好ましい。支持体としては、例えば、ガラス、水晶、サファイヤなどの無機材料からなる成形品、アクリル、ポリカーボネート等の有機プラスチック板が挙げられる。光学用途であるため、支持体はガラス成形品が好ましい。ガラス成形品としては、例えばガラス板、レンズ、プリズム(例えば三角プリズム、キュービックプリズム)等が挙げられる。ガラスの材質としては、例えばソーダガラス、ホウ珪酸ガラスが挙げられる。レンズに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクターにおいて偏光板付のコンデンサレンズとして利用し得る。また、プリズムに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクターにおいて偏光板付きの偏光ビームスプリッタや偏光板付ダイクロイックプリズムとして使用し得る。また、偏光板を、液晶セルに貼付してもよい。支持体の厚さ及び大きさは特に限定されない。
ガラスを備えた偏光板の場合、単体透過率をより向上させるために、ガラス又は偏光板の少なくとも一方の面に反射防止層を設けることが好ましい。例えば、支持体の平面部に透明な接着(粘着)剤を塗布した後、この塗布面に本発明の偏光板を貼付する。また、偏光板に透明な接着(粘着)剤を塗布した後、この塗布面に支持体を貼付してもよい。ここで使用する接着(粘着)剤は、例えばアクリル酸エステル系のものが好ましい。なお、この偏光板を楕円偏光板として使用する場合、位相差層を支持体に貼付するのが通常であるが、偏光板を支持体に貼付してもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[測定試料の作製]
(実施例A1)
ケン化度99%以上の平均重合度2400のポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS)を40℃の温水に2分浸漬し、1.30倍になるように膨潤処理を行った。次に、膨潤処理したフィルムを、水1500重量部、トリポリリン酸ナトリウム1.5重量部、無水硫酸ナトリウム1.5重量部、及びC.I.Direct Blue 71(本願化合物例1-9)0.30重量部が溶解した45℃の水溶液に3分30秒間浸漬させて、フィルムにアゾ化合物を含有させた(アゾ化合物染色工程)。次に、得られたフィルムを、ホウ酸(Societa chimica lardrello s.p.a社製)28.6g/L、ヨウ素(純正化学社製)0.25g/L、及びヨウ化カリウム(純正化学社製)17.7g/Lの各濃度となるように調製した100部の水溶液をさらに2000部になるよう水で希釈して30℃の温度とした水溶液に2分間浸漬させて、フィルムにヨウ素化合物を含有させた(ヨウ素化合物染色工程)。次に、得られたフィルムを、ホウ酸水溶液(30.0g/L)中で50℃で5分間、延伸倍率が5.0倍になるように延伸処理を行った。次に、得られたフィルムの緊張状態を保ちつつ、ヨウ化カリウム水溶液(50g/L)中30℃で20秒間浸漬処理を行った(洗浄工程)。次に、得られたフィルムに対して70℃で9分間乾燥処理を行い、偏光素子を得た。
得られた偏光素子に対して、ポリビニルアルコール接着剤を用いて、アルカリ処理したトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製 ZRD-60)をラミネートして偏光板を得た。得られた偏光板は偏光素子の光学特性を維持していた。
偏光板を40mm角にカットし、粘着層(ポラテクノ社製 AD-ROC)を介して、透明板ガラスに貼付することによって、本願の偏光板を用いた耐久性試験サンプルを作製し、実施例A1の測定試料とした。
(実施例A2)
アゾ化合物染色工程において用いたアゾ化合物をC.I.Direct Blue75(本願化合物例1-3)0.30重量部に変えたこと以外は、実施例A1と同様に測定試料を作製した。
(実施例A3)
アゾ化合物染色工程において用いたアゾ化合物を本願化合物例1-14 0.30重量部に変えたこと以外は、実施例A1と同様に測定試料を作製した。
(実施例A4)
アゾ化合物染色工程において用いたアゾ化合物を本願化合物例1-18 0.30重量部に変えたこと以外は、実施例A1と同様に測定試料を作製した。
(実施例A5)
アゾ化合物染色工程において用いたアゾ化合物をC.I.Direct Blue 75(本願化合物例1-3)0.30重量部及びC.I.Direct Red 81(本願化合物例6-12)0.12重量部に変えたこと以外は、実施例A1と同様に測定試料を作製した。
(実施例A6)
アゾ化合物染色工程において用いたアゾ化合物を本願化合物例1-7 0.30重量部及び特開2003-215338号公報に記載の化合物例No.1(本願化合物例6-1)0.12重量部に変えたこと以外は、実施例A1と同様に測定試料を作製した。
(実施例A7)
アゾ化合物染色工程において用いたアゾ化合物を本願化合物例1-17 0.30重量部及び特開2003-215338号公報に記載の化合物例No.1(本願化合物例6-1)0.12重量部に変えたこと以外は、実施例A1と同様に測定試料を作製した。
(比較例A1)
特開2008-065222号公報に記載の比較例1の処方に従い二色性染料を含まないヨウ素系偏光素子を作製した以外は、実施例1と同様に測定試料を作製した。
(比較例A2)
市販され一般に用いられているヨウ素系偏光板として、ポラテクノ社製ヨウ素系偏光板 SKN-18243Pを使用し以外は、実施例1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B1)
実施例A1のアゾ化合物染色工程において用いたアゾ化合物を本願化合物例1-20 0.30重量部及び特開2003-215338号公報に記載の化合物例No.1(本願化合物例6-1)0.12重量部に変えたこと、ヨウ素化合物染色工程において染色時間を2分間から2分45秒間に変えたこと、並びに洗浄工程においてヨウ化カリウム水溶液の濃度を50g/Lから25g/Lに変えたこと以外は、実施例A1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B2)
第一ヨウ素化合物染色工程おいて染色時間を2分間から2分20秒間に変えた以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B3)
第一ヨウ素化合物染色工程おいて染色時間を2分間から2分10秒間に変えた以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B4)
アゾ化合物染色工程において本願化合物例6-1 0.12重量部をC.I.Direct Red 81(本願化合物例6-12)0.15重量部に変えたこと以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B5)
アゾ化合物染色工程において本願化合物例6-1 0.12重量部を本願化合物例6-9 0.12重量部に変えたこと以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B6)
アゾ化合物染色工程において本願化合物例1-20 0.30重量部を本願化合物例1-6 0.28重量部に変えたこと以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B7)
アゾ化合物染色工程において本願化合物例1-20 0.30重量部を本願化合物例1-15 0.30重量部に変えたこと以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B8)
アゾ化合物染色工程において本願化合物例1-20 0.30重量部を本願化合物例1-7 0.30重量部に変えたこと以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B9)
アゾ化合物染色工程において本願化合物例1-20 0.30重量部を本願化合物例1-17 0.30重量部に変えたこと以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(実施例B10)
第一ヨウ素化合物染色工程おいて、染色時間を2分間から1分30秒間に変えた以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(比較例B1)
特開2008-065222号公報に記載の比較例1の処方に従い二色性染料を含まないヨウ素系偏光素子を作製した以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
(比較例B2)
特開平11-218611号公報に記載の実施例1の方法を参考とし、C.I.Direct Orange 39 0.04重量%、C.I.Direct Red 81 0.02重量%、下記式(7)のアゾ化合物0.06重量%、及び下記式(8)のアゾ化合物0.04重量%を含有する染色液によって得られた二色性染料のみを用いて偏光素子を作製した以外は、実施例B1と同様に定試料を作製した。
Figure 0007197471000019
(比較例B3)
特開2001-033627号公報に記載の実施例3の方法を参考とし、下記式(9)のアゾ化合物0.04重量%、C.I.Direct Orange 39 0.03重量%、上記式(7)のアゾ化合物0.04重量%、及び上記式(8)のアゾ化合物0.03重量%を含有する染色液によって得られた二色性染料のみを用いて偏光素子を作製した以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
Figure 0007197471000020
(比較例B4)
特開2004-251962号公報に記載の実施例1の方法を参考とし、C.I.Direct Orange 39 0.020重量%、下記式(10)のアゾ化合物のナトリウム塩0.028重量%、及び下記式(11)のアゾ化合物のナトリウム塩0.013重量%を含有する染色液によって得られた二色性染料のみを用いて偏光素子を作製した以外は、実施例B1と同様に測定試料を作製した。
Figure 0007197471000021
[評価方法]
(1)視感度補正単体透過率
上記にて作製した測定試料の単体での各波長の透過率を単体透過率Tsとした。また、測定試料を2枚用いて、吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねて測定した際の各波長の透過率を平行透過率Tpとし、2枚の測定試料を吸収軸方向が互いに直交するように重ねて測定した際の各波長の透過率を直交透過率Tcとした。
単体透過率Ts、平行透過率Tp、及び直交透過率Tcを、分光光度計〔日立製作所社製“U-4100”〕を用いて測定した。5nm間隔で各透過率を測定した。JIS Z 8781-4:2013(C光源2°視野)に基づき各光学特性(透過率、偏光度、色相等)を算出した。
C光源2°視野等色度関数に基づいて視感度補正を行うことにより、視感度補正単体透過率Ys、視感度補正平行透過率Yp、及び視感度補正直交透過率Ycを算出した。
(2)偏光度
偏光度ρyは、視感度補正平行透過率Yp及び視感度補正直交透過率Ycから、下記計算式により求めた。
ρy={(Yp-Yc)/(Yp+Yc)}1/2×100
(3)コントラスト
コントラスト(CR)は、視感度補正平行透過率Yp及び視感度補正直交透過率Ycから、下記計算式により求めた。
CR=Yp/Yc
(4)a値、b
表色系におけるa値及びb値を分光光度計〔日立製作所社製“U-4100”〕を用いて測定した。a-s及びb-sは、それぞれ測定試料1枚で測定したときのa値及びb値である。a-p及びb-pは、それぞれ測定試料2枚を吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねて測定したときのa値及びb値である。a-c及びb-cは、測定試料2枚を吸収軸方向が互いに直交するよう重ねて測定したときのa値及びb値である。
(5)410~750nmの平均透過率
各測定試料について、波長410~750nmの平均透過率を求めた。平均透過率は、410~750nmの波長領域における上記単体透過率Tsを、平均して算出した。
(6)色の観察
色の観察として、平行位の色及び直交位の色をそれぞれ観察した。平行位の色とは、測定試料2枚を吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねた状態で観察した色を意味する。また、直交位の色とは、測定試料2枚を吸収軸方向が互いに直交するよう重ねた状態で観察した色を意味する。なお、上記L表色系では、a値、b値のそれぞれがゼロに近いほど色相がニュートラル色を示すことを表している。一般的にa値がプラスになると赤味を示し、マイナスになると緑色を示し、b値がプラスになると黄味を示し、マイナスになると青味を示す。
(7)Ky、Kz
絶対偏光光照射時の透過率を、分光光度計〔日立製作所社製“U-4100”〕を用いて測定し、JIS Z 8781-4:2013(C光源2°視野)に基づき各光学特性(透過率、偏光度、色相等)を算出した。透過率を測定するにあたり、光源と測定試料との間に、視感度補正透過率43%で偏光度99.99%のヨウ素系偏光板(ポラテクノ社製 SKN-18043P)を絶対偏光板として設置し、絶対偏光光を測定試料に入射できるようにした。なお、SKN-18043Pの保護層は紫外線吸収能のないトリアセチルセルロースである。
測定試料の吸収軸方向と絶対偏光板の吸収軸方向とが互いに平行になるように重ねて、絶対偏光光を照射して測定した各波長の透過率Kyを測定し、及び、測定試料の吸収軸方向と絶対偏光板の吸収軸方向とが互いに直交するように重ねて、絶対偏光光を照射して測定した各波長の透過率Kzを測定した。400nm~460nmにおけるKyの平均値及びKzの平均値、550nm~600nmにおけるKyの平均値及びKzの平均値、600nm~670nmにおけるKyの平均値及びKzの平均値を算出した。
また、400nm~460nmにおけるKyの平均値と550nm~600nmにおけるKyの平均値との差の絶対値、400nm~460nmにおけるKzの平均値と550nm~600nmにおけるKzの平均値との差の絶対値、550nm~600nmにおけるKyの平均値と600nm~670nmにおけるKyの平均値との差の絶対値、及び550nm~600nmにおけるKzの平均値と600nm~670nmにおけるKzの平均値との差の絶対値を算出した。
下記表1には、実施例A1~A7並びに比較例A1及びA2で得られた測定試料の、初期の視感度補正単体透過率(Ys-s)、初期の視感度補正直交透過率(Yc-s)、及び初期の偏光度(ρ-s)と、耐久性試験として、相対湿度93%及び65℃条件下で1000時間経過した後の、視感度補正単体透過率(Ys-e)、視感度補正直交透過率(Yc-e)、及び偏光度(ρ-e)を示す。さらに表1には、初期から耐久性試験後の単体透過率と偏光度のそれぞれの変化量を示す。
Figure 0007197471000022
表1に示すように、実施例A1~A7は、比較例A1及びA2と比較して、同程度の透過率と高い偏光度を有していることが分かる。しかしながら、相対湿度93%及び65℃条件下で1000時間経過した後において、従来のヨウ素系偏光板に比べて極めて高い耐久性を有していることが分かる。すなわち、本発明の偏光素子を用いて得られる偏光板は、ヨウ素系偏光板と同程度の透過率と高い偏光度及びコントラストを実現しながらも、高い温度及び湿度を適用した環境下でも高い耐久性を維持していることが分かる。本結果から、本発明の偏光素子又は偏光板を用いた液晶表示装置は、高輝度、高コントラストに加え、信頼性が高い、長期的に高コントラストを維持し得る液晶表示装置となることが分かる。
下記表2には、実施例B1~B10並びに比較例B1~B4で得られた測定試料の、Ys、Yp、及びYc、ρy、CR、a-s、b-s、a-p、b-p、a-c、及びb-c、410~750nmの平均透過率、並びに平行位の色と直交位の色の目視評価結果を示す。
Figure 0007197471000023
表2に示すように、実施例B1~B10では、視感度補正単体透過率Ysが35~45%である場合を示しているが、a-s及びb-sの絶対値が1以下であり、a-p及びb-pの絶対値が2以下であることにより、偏光板は平行位において無彩色の白色を示すことが分かる。
加えて、本発明の偏光板はほぼ同等の平均透過率を有する比較例と比較して良好なコントラスト(CR)を示すことが分かる。
さらに偏光度が99%以上を有することによって、直交位において無彩色の黒色を示すことが分かる。
また、偏光素子に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、透明保護層として、アルカリ処理したトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製 ZRD-60)をラミネートした偏光板においても、偏光素子の光学特性を維持していることが分かった。すなわち、本発明の偏光素子を用いて得られる偏光板は、本発明の偏光素子と同様の性能を有する。
また、表2に示すように、実施例B1~B10では、410nm~750nmの平均透過率は40.5%を超えており、特許第3357803号公報の実施例1及び2に記載されている31~32%の偏光板よりも高い透過率を有していることが分かった。また、平均透過率が40%を超えると、L値も70を超えることから、良好な偏光素子である。
これに対して、比較例B1では、遊離酸として式(1)及び式(6)で表されるアゾ化合物又はそれらの塩を含有していないため、a-p及びb-pの絶対値が2を超えており、平行位で黄緑色に呈することが分かった。また、比較例B2~B4では染料系偏光板であるにも関わらずb-pの絶対値が2を大きく超えており、平行位で黄色又は黄緑色に呈することが分かった。このことから染料系偏光板であっても、特定の構造を有する偏光板でなければ本願の偏光板の効果は発揮出来ないことを示している。
これらのことから、本願の偏光板は、平行位で無彩色の白色、直交位で無彩色の黒色を示し、これまでの無彩色偏光板よりも性能が向上していることが分かる。
下記表3には、実施例B1~B10並びに比較例B1~B4で得られた測定試料の、400nm~460nmにおけるKyの平均値及びKzの平均値、550nm~600nmにおけるKyの平均値及びKzの平均値、並びに600nm~670nmにおけるKyの平均値及びKzの平均値を示す。
さらに表3には、400nm~460nmにおけるKyの平均値と550nm~600nmにおけるKyの平均値との差の絶対値、400nm~460nmにおけるKzの平均値と550nm~600nmにおけるKzの平均値との差の絶対値、550nm~600nmにおけるKyの平均値と600nm~670nmにおけるKyの平均値との差の絶対値、及び550nm~600nmにおけるKzの平均値と600nm~670nmにおけるKzの平均値との差の絶対値を示す。
Figure 0007197471000024
表3に示すように、実施例B1~B10では、550nm~600nmにおけるKyの平均値と400nm~460nmにおけるKyの平均値との差が5%以下であり、かつ、600nm~670nmにおけるKyの平均値と550nm~600nmにおけるKyの平均値との差が3%以下であり、550nm~600nmにおけるKzの平均値と400nm~460nmにおけるKzの平均値との差が2%以下であり、かつ、600nm~670nmにおけるKzの平均値と550nm~600nmにおけるKzの平均値との差が1%以下である。
これらのことから、本願の偏光板は、高い透過率を有しながらも、平行位で無彩色の白色を表現でき、かつ、直交位で無彩色の黒色を表現できる。また、本発明の偏光素子又は偏光板を用いた液晶表示装置は、高輝度、高コントラストなだけでなく、信頼性が高い、長期的に高コントラストで、かつ、高い色再現性を有する液晶表示装置となる。
特定のアゾ化合物を基材に含有させたヨウ素系偏光板を作製することにより、高い偏光度及び高い透過率を有しながらも、高い耐久性を示す偏光素子が得られることを見出した
一態様において、特定の2種類のアゾ化合物を組合せて基材に含有させたヨウ素系偏光板を作製することにより、高い透過率を有しながらも、平行位で無彩色の白色を表現でき、かつ、直交位で無彩色の黒色を表現できることを見出した。
本偏光素子を用いることにより実用性に優れた液晶表示装置を得る可能となり非常に有用である。

Claims (12)

  1. ヨウ素及び下記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有する基材からなる偏光素子:
    Figure 0007197471000025

    (式中、Agは置換基としてカルボキシ基を少なくとも1つ有するフェニル基を表し、Bg及びCgは、各々独立に、下記式(2)で表されXgは、置換基を有してもよいフェニルアミノ基を表す)
    Figure 0007197471000026

    (式中、Rgは水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表し、kは0~2の整数を表す)。
  2. 式(1)で表されるアゾ化合物が下記式(4)で表される請求項1に記載の偏光素子:
    Figure 0007197471000027

    (式中、Ag、Bg、Cg、及びXgは、請求項1で定義した通りである)。
  3. 式(1)で表されるアゾ化合物が、下記式(5)で表される請求項1又は2のいずれか一項に記載の偏光素子。
    Figure 0007197471000028

    (式中、Agは請求項1で定義した通りであり、Rg及びRgは各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表し、Xgは請求項1で定義した通りであり、k及びkは各々独立に0~2の整数を表す。)
  4. さらに、下記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の偏光素子:
    Figure 0007197471000029

    (式中、Arは置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表し、Rr及びRrは各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を表し、Xrは置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、又は置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基を表す)。
  5. 表色系におけるa値及びb値の絶対値が、
    前記基材を単体で測定したときに、いずれも1以下であり、
    前記基材2枚を吸収軸方向が互いに平行になるよう重ねて測定したときに、いずれも2以下である
    ことを特徴とする請求項4に記載の偏光素子。
  6. 前記基材2枚を吸収軸方向が互いに直交するよう重ねて測定したときに、L表色系におけるa値の絶対値が4以下、b値の絶対値が8以下であることを特徴とする請求項5に記載の偏光素子。
  7. 偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が直交するように絶対偏光光を照射して測定した各波長の透過率Kyにおいて、
    550nm~600nmにおける透過率の平均値と400nm~460nmにおける透過率の平均値との差が5%以下であり、かつ、600nm~670nmにおける透過率の平均値と550nm~600nmにおける透過率の平均値との差が3%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の偏光素子。
  8. 偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が平行となるように絶対偏光光を照射して測定した各波長の透過率Kzにおいて
    550nm~600nmにおける透過率の平均値と400nm~460nmにおける透過率の平均値との差が2%以下であり、かつ、600nm~670nmにおける透過率の平均値と550nm~600nmにおける透過率の平均値との差が1%以下であることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の偏光素子。
  9. 視感度補正単体透過率が35~45%である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の偏光素子。
  10. 基材が、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムである請求項1乃至9のいずれか一項に記載の偏光素子。
  11. 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の偏光素子と、該偏光素子の少なくとも一方の面に形成した透明保護層とを備える偏光板。
  12. 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の偏光素子又は請求項11に記載の偏光板を有する液晶表示装置。
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