JP6609259B2 - 偏光素子および該偏光素子を有する偏光板、並びに該偏光素子又は該偏光板を有する液晶表示装置 - Google Patents
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Description
特許文献1では、ニュートラル係数を算出し、絶対値が0乃至3である偏光板を開示している。しかし、実施例から分かるように、偏光板は、ニュートラル係数(Np)が低くても、JIS・Z・8729(現JIS・Z・8781−4:2013に相当)から求められる平行位の色度は、a*値が−2乃至−1であり、かつ、b*値が2.5乃至4.0であることから、白表示時に黄緑色を呈しており、さらに、直交位の色度は、a*値が0乃至1であるが、b*値が−1.5乃至−4.0であることから、黒表示時に青色を呈していることが分かる。
「[1] アゾ化合物を構成成分として含む基材からなる偏光素子であって、
単体透過率が、35%乃至80%であり、
JIS Z 8781−4:2013に従って自然光の透過率測定時に求められる色度a*値およびb*値の絶対値が、
該偏光素子単体で、ともに1以下であり、
該偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態で、ともに2以下であり、かつ、
該偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに直交するように配置した状態で、ともに2以下であることを特徴とする、偏光素子。
[2] 該偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が直交方向となるように絶対偏光光を照射して測定された各波長の透過率について、複数の波長域で平均透過率を比較した場合に、550nm乃至600nmの平均透過率と400nm乃至460nmの平均透過率との差の絶対値が4%以下であって、かつ、600nm乃至670nmの平均透過率と550nm乃至600nmの平均透過率との差の絶対値が3%以下にあり、
さらに、該偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が平行方向となるように絶対偏光光を照射して測定された各波長の透過率について、複数の波長域で平均透過率を比較した場合に、550nm乃至600nmの平均透過率と400nm乃至460nmの平均透過率との差の絶対値が2%以下であって、かつ、600nm乃至670nmの平均透過率と550nm乃至600nmの平均透過率との差の絶対値が2以下である、上記[1]に記載の偏光素子。
[3] 前記アゾ化合物は、遊離酸の形式で下記式(1)に示される化合物又はその塩と、遊離酸の形式で下記式(2)に示される化合物又はその塩とを含む、上記[1]又は[2]に記載の偏光素子。
[4] 前記アゾ化合物は、前記式(1)に示される化合物又はその塩と、遊離酸の形式で下記式(3)に示される化合物又はその塩とを含む、上記[1]又は[2]に記載の偏光素子。
[5] 前記アゾ化合物は、前記式(1)に示される化合物又はその塩と、前記式(2)に示される化合物又はその塩と、前記式(3)に示される化合物又はその塩とを含む、上記[1]又は[2]に記載の偏光素子。
[6] 前記アゾ化合物は、遊離酸の形式で下記式(4)に示される化合物、その塩又はその金属錯体を含む、上記[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[7] 前記アゾ化合物は、遊離酸の形式で下記式(5)に示される化合物、その塩又はその金属錯体を含む、上記[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[8] 前記式(1)のA1が、置換基を有するフェニル基である、上記[3]乃至[7]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[9] 前記アゾ化合物は、前記式(4)に示される化合物の銅錯体を含む、上記[6]乃至[8]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[10] 前記式(4)のA4が、ニトロ基である、上記[6]乃至[9]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[11] 前記式(3)のA2およびA3が、それぞれスルホ基を有するナフチル基である、上記[4]乃至[10]のいずれか一項の偏光素子。
[12] 前記基材が、前記アゾ化合物を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムである、上記[1]乃至[11]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[13] 前記単体透過率が35%乃至60%であり、
下記に示す式(I)に前記単体透過率を代入して得られる最小偏光度ρymin1の数値以上の偏光度ρyを有する、上記[1]乃至[12]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[14] 前記単体透過率が60%超、80%以下であり、
下記に示す式(II)に前記単体透過率を代入して得られる最小偏光度ρymin2の数値以上の偏光度ρyを有する、上記[1]乃至[12]のいずれか一項に記載の偏光素子。
[15] 上記[1]乃至[14]のいずれか一項に記載の偏光素子の少なくとも片面に、透明保護層を有する、偏光板。
[16] 上記[1]乃至[14]のいずれか一項に記載の偏光素子又は請求項15に記載の偏光板を有する、液晶表示装置。」、に関する。
本発明に係る偏光素子は、アゾ化合物を構成成分として含む基材からなり、単体透過率が、35%乃至80%であり、JIS Z 8781−4:2013 に従って自然光の透過率測定時に求められる色度a*値およびb*値の絶対値が、該偏光素子単体で、ともに1以下であり、該偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態で、ともに2以下であり、かつ、該偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに直交するように配置した状態で、ともに2以下であることを特徴とする。
本発明において、色度a*値およびb*値は、JIS Z 8781−4:2013に従って自然光の透過率測定時に求められる値である。JIS Z 8781−4:2013に定められる物体色の表示方法とは、国際照明委員会(略称 CIE)が定める物体色の表示方法に相当する。このような色度a*値およびb*値の測定は、測定試料(例えば、偏光素子又は偏光板)に自然光を照射して行われる。なお、以下において、測定試料1枚について求められる色度a*値およびb*値はa*−sおよびb*−s、測定試料2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態(白表示時)について求められる色度a*値およびb*値はa*−pおよびb*−p、測定試料2枚をその吸収軸方向が互いに直交するように配置した状態(黒表示時)について求められる色度a*値およびb*値はa*−cおよびb*−cと示す。
また、さらに好ましくは、偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が直交方向となるように絶対偏光光を照射して測定された各波長の透過率について、複数の波長域で平均透過率を比較した場合に550nm乃至600nmの平均透過率と400nm乃至460nmの平均透過率との差の絶対値が1.5%以下であって、かつ、600nm乃至670nmの平均透過率と550nm乃至600nmの平均透過率との差の絶対値が1.5%以下にあり、さらに、偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が平行方向となるように絶対偏光光を照射して測定された各波長の透過率について、複数の波長域で平均透過率を比較した場合に550nm乃至600nmの平均透過率と400nm乃至460nmの平均透過率との差の絶対値が1.5%以下であって、かつ、600nm乃至670nmの平均透過率と550nm乃至600nmの平均透過率との差の絶対値が1.5%以下となるように制御することが望ましい。
本発明において単体透過率は、JIS Z 8722:2009に準拠して求められる、視感度補正後の単体透過率Ysである。このような単体透過率Ysの測定は、測定試料(例えば、偏光素子又は偏光板)1枚について、400乃至700nmの各波長について、5nmまたは10nm毎に分光透過率Ts測定し、これを2度視野(C光源)により、視感度に補正することで求めることができる。
また、実際には反射を制御したいディスプレイ(例えば、反射型液晶ディスプレイやOLED等のディスプレイ)では、偏光素子の輝度と偏光のバランスを考慮して用いることが重要である。特に、反射型液晶ディスプレイでは、偏光素子は、表示時の反射を制御できる程度の偏光度を有していれば十分であり、そのような偏光素子は、高輝度又は高反射率を有するディスプレイへの設計が可能となる。したがって、単体透過率が60%超、80%以下の偏光素子であっても、有効な活用が可能である。
偏光板の性能としては、偏光度がより高いものが求められるが、本実施形態において偏光素子の偏光度(以下、「ρy」と記載することもある。)は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは90%以上あり、特に好ましくは99%以上である。
本実施形態に係る偏光素子の偏光度ρyは、その単体透過率Ys(以下、単に「Ys」と記載することもある。)が35%乃至60%の場合には、下記に示す式(I)に、その単体透過率Ysを代入して得られる最小偏光度ρymin1の数値以上であることが好ましく、その単体透過率Ysが60%超、80%以下の場合には、下記に示す式(II)に、その単体透過率Ysを代入して得られる最小偏光度ρymin2の数値以上であることが好ましい。本発明の偏光素子は、最小偏光度ρymin1又は最小偏光度ρymin2以上の偏光度を有することによって、高い透過率であっても、その透過率に対して、高い偏光度を維持することができる。
本発明の偏光素子は、アゾ化合物を構成成分として含む基材よりなる。
本実施形態において、アゾ化合物は、二色性染料であることが好ましい。アゾ化合物からなる二色性染料としては、例えば、非特許文献1に示されるような有機化合物を使用することができる。特に、二色性の高いものが好ましい。例えば、シー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド2、シー.アイ.ダイレクト.レッド31、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド247、シー.アイ.ダイレクト.グリーン80およびシー.アイ.ダイレクト.グリーン59、並びに特開2001−33627号公報、特開2002−296417号公報および特開昭60−156759号公報に記載された有機染料等が挙げられる。これらの有機染料は、遊離酸の他、アルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩、又はアミン類の塩として用いることができる。ただし、二色性染料は、これらに限定されず公知の二色性染料を用いることもできる。
また、アゾ化合物を含有する染料は、1種のみで用いてもよいし、他のアゾ化合物と配合して用いてもよく、配合は限定されない。また、これらのアゾ化合物を用いて、基材の透過率等を調整することによって、本発明の偏光素子を実現できる。
また、透過率および偏光度をさらに高め、白表示時の白色および黒表示時の黒色をより無彩色に表現する観点からは、A1は置換基を有するフェニル基であることが好ましい。このとき、好ましい置換基としては、例えばスルホ基、カルボニル基、ヒドロキシル基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基を有する低級アルキル基およびスルホ基を有するアルコキシル基が挙げられるが、中でも、スルホ基又はカルボニル基であることがより好ましい。さらに、フェニル基において、上記のような置換基は、1つでもよいが、2つ以上有していてもよい。なお、本明細書において、低級アルキル基および低級アルコキシ基の「低級」とは、炭素数が1乃至3であることを示す。
また、透過率および偏光度をさらに高め、白表示時の白色および黒表示時の黒色をより無彩色に表現する観点からは、A2およびA3はスルホ基又はカルボニル基を有するナフチル基であることが好ましい。特に、スルホ基を有する場合が好ましく、偏光素子又は偏光板において高コントラストを実現し得る。
また、透過率および偏光度をさらに高め、白表示時の白色および黒表示時の黒色をより無彩色に表現する観点からは、A4はニトロ基であることが好ましく、R9はメトキシ基であることが好ましい。特に、A4がニトロ基であることによって偏光性能が向上する。
また、透過率および偏光度をさらに高め、白表示時の白色および黒表示時の黒色をより無彩色に表現する観点からは、R10およびR11はスルホ基又はカルボニル基であることが好ましい。R10およびR11がスルホ基又はカルボニル基であることによって、白表示時の白色および黒表示時の黒色をより無彩色に表現できる偏光素子が得られる。また、上記式(5)において、末端の置換基は異なることが好ましい。末端の置換基を変えることによって、偏光素子の短波長側の偏光度、特に400nm乃至480nmの偏光度が向上し、偏光板のb*−p又はb*−cがよりゼロに近づく、つまりは、より無彩色に近づく。
さらに、このような材料をフィルム形状とし、延伸等の配向処理によって、上述のような染料およびその配合物をこれに含有させることにより、本発明に係るアゾ化合物を含有した基材を得ることができる。
まず、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムを準備する。
具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルおよびこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合する他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、粘度平均重合度を意味し、当該技術分野において周知の手法によって求めることができ、通常1000〜10000程度が好ましく、より好ましくは重合度1500〜6000程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されず、公知の方法で製膜することができる。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムには、可塑剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール等が含有していてもよい。可塑剤量はフィルム全体の5〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは8〜15重量%である。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、5μm〜150μm程度であることが好ましく、より好ましく10μm〜100μm程度である。
次に、原反フィルムに、膨潤処理を施す。膨潤処理は20℃〜50℃の溶液に、原反フィルムを30秒〜10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。溶液は水が好ましい。延伸倍率は1.00〜1.50倍で調整することが好ましく、より好ましくは1.10〜1.35倍である。なお、偏光素子を製造する時間を短縮する場合には、色素の染色処理時にも膨潤処理を行うため、膨潤工程を省略することもできる。
膨潤工程の後に、染色工程が施される。染色工程では、上記処理後の樹脂フィルムにアゾ化合物を含浸させる。このようにアゾ化合物を含浸させる処理は、樹脂フィルムに色を着色する工程であることから、染色工程としている。
染色工程後、次の工程に入る前に洗浄工程(以降洗浄工程1という)を行うことができる。洗浄工程1とは、染色工程で樹脂フィルムの表面に付着した染料溶媒を洗浄する工程である。洗浄工程1を行うことによって、次の工程で用いられる溶液に染料が移行することを抑制できる。洗浄工程1では、溶媒として、一般的に水が用いられる。洗浄方法は、樹脂フィルムを溶液に浸漬することが好ましいが、溶液を樹脂フィルムに塗布することによって洗浄することもできる。洗浄の時間は、特に限定されないが、好ましくは1〜300秒、より好ましくは1〜60秒である。洗浄工程1での溶媒の温度は、樹脂フィルムを構成する材料(例えば、親水性高分子、ここではポリビニルアルコール樹脂)が溶解しない温度であることが必要となる。一般的には5〜40℃で洗浄処理される。ただし、洗浄工程1の工程がなくとも、性能には問題は出ないため、本工程は省略することもできる。
染色工程又は洗浄工程1の後、架橋剤および/又は耐水化剤を含有させる工程を行うことができる。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウム等のホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒド等の多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型等の多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイト等のチタニウム系化合物等を用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリン等を用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウム等を用いることができる、好ましくはホウ酸が用いられる。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤および/又は耐水化剤を用いて架橋剤および/又は耐水化剤を含有させる工程を行う。
染色工程、洗浄工程1、又は架橋剤および/又は耐水化剤を含有させる工程を行った後に、延伸工程を行う。延伸工程とは、樹脂フィルムを1軸に延伸する工程である。延伸方法は湿式延伸法又は乾式延伸法のどちらでもよい。また、延伸倍率は、3倍以上であることが好ましく、より好ましくは5倍乃至7倍に延伸される。
延伸工程を行った後には、樹脂フィルム表面に架橋剤および/又は耐水化剤の析出、又は異物が付着することがあるため、樹脂フィルム表面を洗浄する洗浄工程(以降洗浄工程2という)を行うことができる。洗浄時間は1秒〜5分が好ましい。洗浄方法は樹脂フィルムを洗浄溶液に浸漬することが好ましいが、洗浄溶液を樹脂フィルムに塗布又は塗工することによって洗浄することもできる。1段で洗浄処理することもできるし、2段以上の多段処理をすることもできる。洗浄工程の溶液温度は、特に限定されないが通常5〜50℃、好ましくは10〜40℃である。
延伸工程又は洗浄工程2の後には、樹脂フィルムの乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるが、より乾燥効率を高めるためにはロールによる圧縮や、エアーナイフ又は吸水ロール等による表面の水分除去等により行うことができ、さらに、必要に応じて送風乾燥により行うこともできる。乾燥処理温度としては、20〜100℃で乾燥処理することが好ましく、60〜100℃で乾燥処理することがより好ましい。乾燥処理時間は30秒〜20分を適用できるが、5〜10分であることが好ましい。
本発明の偏光板は、本発明の偏光素子の少なくとも片面に、透明保護層を設けることによって得られる。なお、偏光板は、偏光素子の両面に透明保護層を設けたものであってもよい。
透明保護層はポリマーによる塗布層として、又はフィルムのラミネート層として設けることができる。透明保護層を形成する透明ポリマー又はフィルムとしては、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマー又はフィルムが好ましい。透明保護層として用いる物質として、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系乃至はノルボルネン骨格を有するポリオレフィン又はその共重合体、主鎖又は側鎖がイミドおよび/又はアミドの樹脂若しくはポリマー、又はこれらのフィルム等が挙げられる。また、透明保護層として、液晶性を有する樹脂又はそのフィルムを設けることもできる。
透明保護層の厚みは、例えば、0.5〜200μm程度である。その中の同種又は異種の樹脂又はフィルムを片面、若しくは両面に1層以上設けることによって偏光板を作製する。
ここから分かるように、反射色を補正するためには、偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態で測定して求められたa*値の値を調整し、若干、赤色を呈することがより好ましい。偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態で測定して求められたa*値の好ましい範囲としては、−0.5乃至1.7、より好ましくは0乃至1.5、さらに好ましくは0.3乃至1.2である。
まず、実施例で使用した染料と、その合成方法又は入手方法について説明する。
・染料(1): 上記式(1)の化学構造を有するアゾ化合物を含む染料。特許第4033443号公報の実施例1に準じて作製した。
・染料(2):上記式(2)の化学構造を有するアゾ化合物を含む染料。以下の合成例1に示す方法で作製した。
・染料(3):上記式(3)の化学構造を有するアゾ化合物を含む染料。国際公開第2012/165223号の合成例1に準じて製造した。
・染料(4):上記式(4)の化学構造を有するアゾ化合物を含む染料。特開2013−057909号公報の実施例3に準じて製造した。
・染料(5):上記式(5)の化学構造を有するアゾ化合物を含む染料。市販品であるC.I.Direct Orange 39(日本化薬社製 カヤラス・スープラ・オレンジ2GL)を用いた。
2−ニトロ−4−スルホアニリン 17.9重量部を水145重量部に溶かし、35質量%の塩酸26重量部を含む水140重量部中に加え、15〜20℃で、さらに、亜硝酸ナトリウム6.9重量部を加え、1時間かけてジアゾ化した。
次いで、これを、N,N−ビス(1‐ヒドロキシ‐3‐スルホ‐6‐ナフチル)アミン(慣用名:ジJ酸)31.5重量部と、水125重量部と、ソーダ灰11重量部とからなる水溶液中に加え、さらに、この水溶液にソーダ灰溶液を注加しながらpHを8.5〜9.5に保ち、20℃で3時間かけて、斑点テストでジスアゾ化合物が認められなくなるまでカップリングを行い、ジスアゾ化合物を得た。
その後、得られた溶液に対して、サヌキ塩を25重量%加えて、塩析しろ過し、60℃で蒸発乾固させ、上記式(2)の化学構造を有する化合物例12を得た。
厚みが40μm、ケン化度99%以上、平均重合度2400のポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF−PS)を、45℃の温水に2分間浸漬し、膨潤処理を適用し、延伸倍率を1.30倍とした。
その後、得られたフィルムを、70℃で9分間乾燥処理して、厚さ13μmの偏光素子を得た。
膨潤処理したフィルムを、水 1500重量部、トリポリリン酸ナトリウム 1.5重量部、無水芒硝 1.5重量部、染料(1) 0.038重量部、染料(3) 0.16重量部、染料(4) 0.105重量部および染料(5) 0.13重量部を混合してなる水溶液に、45℃で3分00秒間浸漬して染料を含有させた以外は、実施例1と同様の方法で測定試料を作製した。
膨潤処理したフィルムを、水 1500重量部、トリポリリン酸ナトリウム 1.5重量部、無水芒硝 1.5重量部、染料(1) 0.038重量部、染料(2) 0.17重量部、染料(3) 0.16重量部、染料(4) 0.105重量部および染料(5) 0.13重量部を混合してなる水溶液に、45℃で4分00秒間浸漬して染料を含有させた以外は、実施例1と同様の方法で測定試料を作製した。
膨潤処理したフィルムを、水 1500重量部、トリポリリン酸ナトリウム 1.5重量部、無水芒硝1.5重量部、染料(1) 0.023重量部、染料(2) 0.13重量部、染料(3) 0.16重量部、染料(4) 0.12重量部および染料(5) 0.10重量部を混合してなる水溶液に、45℃で3分00秒浸漬して染料を含有させた以外は、実施例1と同様の方法で測定試料を作製した。
膨潤処理を適用するフィルムとして、平均重合度2400のポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF−PS)に代えて、平均重合4000のポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF−XH#7500)を用い、膨潤処理したフィルムを、水 1500重量部、トリポリリン酸ナトリウム 1.5重量部、無水芒硝 1.5重量部、染料(1) 0.035重量部、染料(2) 0.15重量部、染料(3) 0.16重量部、染料(4) 0.11重量部および染料(5) 0.12重量部を混合してなる水溶液に、45℃で任意の時間で各々浸漬して染料を含有させた以外は、実施例1と同様の方法で測定試料を作製した。
実施例3の染色工程において、膨潤処理したフィルムを染色溶液に浸漬させる時間を任意に調節し、透過率の異なる偏光素子を作製した以外は、実施例1と同様の方法で測定試料を作製した。
特開2008−065222号公報の比較例1の方法に従い、アゾ化合物を含まないヨウ素系偏光素子を作製した以外は、実施例1と同様にして測定試料を得た。
特開平11−218611号公報の実施例1の方法に従い、アゾ化合物を含有するものの、偏光素子単体、および偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態および偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに直交となるように配置した状態における、自然光の透過率測定時に求められる色度a*値およびb*値の絶対値の適正化を図っていない染料系偏光素子を作製した以外は、実施例1と同様にして測定試料を得た。
特許第4162334号公報に記載の実施例3の方法に従いアゾ化合物を含有するものの、偏光素子単体、および偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態および偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに直交となるように配置した状態における、自然光の透過率測定時に求められる色度a*値およびb*値の絶対値の適正化を図っていない染料系偏光素子を作製した以外は、実施例1と同様にして測定試料を得た。
染色時間を変えて、単体透過率Ysが約50%の偏光板を作製した以外は、比較例2と同様にして測定試料を得た。
一般的に中性色を示すポラテクノ社製スーパーコントラスト偏光板 SHC−125を入手し、実施例1と同様の方法で測定試料を作製した。
偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態で測定して得られる色目が白色であることを特徴として、一般的に使用されているポラテクノ社製ペーパーホワイト偏光板 SHC−115を入手し、実施例1と同様の方法を作製した。
実施例1〜14および比較例1〜6で得られた測定試料について、以下の測定および評価を行った。なお、測定試料は、上記ラミネート加工前の偏光素子と、実質的に同じ評価結果となることが事前に確認されている(評価2〜4についても同じ。)。
各測定試料について、分光光度計(日立製作所社製“U−4100”)を用いて、各波長における、透過率Ts、TpおよびTcを測定した。
ここで、透過率Tsは、測定試料を1枚で測定した際の各波長の分光透過率である。また、透過率Tpは,測定試料2枚をその吸収軸方向が平行となるように重ねて合わせて測定した際の各波長の分光透過率であり、透過率Tcは,測定試料2枚をその吸収軸方向が直交するように重ねて合わせて測定した際の各波長の分光透過率である。
各測定試料について、単体透過率Ys、平行位透過率Ypおよび直交位透過率Ycをそれぞれ求めた。単体透過率Ys、平行位透過率Ypおよび直交位透過率Ycは、400〜700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは10nm)おきに求めた上記透過率Ts、TpおよびTcのそれぞれについて、JIS Z 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。具体的には、上記透過率Ts、TpおよびTcを下記式(V)〜(VII)に代入して、それぞれ算出した。なお、下記式(V)〜(VII)中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλは2度視野等色関数を表す。また、単体透過率Ysについては、結果を表1に示す。
各測定試料について、波長410〜750nmの平均透過率を求めた。このような平均透過率は、410〜750nmの波長領域における上記透過率Tsを、平均して算出した。結果を表1に示す。
各測定試料について、JIS Z 8781−4:2013に従って、透過率Ts測定時、平行位透過率Tp測定時および直交位透過率Tcの測定時のそれぞれにおける色度a*値およびb*値を測定した。なお、測定装置は上記の分光光度計を使用し、透過色、反射色共に室外側から入射して測定した。光源には、C光源を用いた。結果を表1に示す。なお、表1中、a*−sおよびb*−s、a*−pおよびb*−p並びにa*−cおよびb*−cは、透過率Ts、平行位透過率Tpおよび直交位透過率Tcの測定時おける色度a*値およびb*値にそれぞれ対応する。
各測定試料について、同一の試料を2枚重ねた際の色を観察した。観察は目視で行った。結果を表1に示す。なお、表中、平行位の色とは、同一試料2枚を、その吸収軸方向が互いに平行となるように重ねた状態(白表示時)で色を意味し、直交位の色とは同一試料2枚を、その吸収軸方向が互いに直交するように重ねた状態(黒表示時)での色を意味する。基本的に、偏光色は、平行位の色は「白」、直交位の色は「黒」ではあるが、本実施例では、例えば、黄色味を帯びた白を「黄」又は「黄緑」、紫色味を帯びた黒を「紫」と示す。
[透過率KyおよびKz]
実施例1〜14および比較例1〜6で得られた測定試料について、上記の分光光度計を用いて、絶対偏光光を照射した際の各波長における、透過率KyおよびKzを測定した。測定は、JIS Z 8722:2009(C光源2度視野)に従って行った。具体的には、分光光度計の光源側に、視感度補正後の単体透過率Ysが43%、偏光度ρyが99.99%のヨウ素系偏光板(ポラテクノ社製 SKN−18043P。ただし、保護層は、紫外線吸収能のないトリアセチルセルロースである。)を設置し、このヨウ素系偏光板を通過してきた偏光光を、測定試料に照射し、分光透過率の測定を行った。
各測定試料について、絶対平行透過率Kyおよび絶対直交透過率Kzの各波長域([A]400nm乃至460nm、[B]550nm乃至600nmおよび[C]600nm乃至670nmの)における平均透過率[A]、[B]、[C]を求めた。これらの平均透過率は、3つの波長域における絶対平行透過率Kyおよび絶対直交透過率Kzを、各々平均して算出した。さらに、上記絶対平行透過率Kyおよび絶対直交透過率Kzについて、平均透過率[A]と平均透過率[B]の差の絶対値および平均透過率[A]と平均透過率[B]の差の絶対値を、各々算出した。それぞれ表2に示す。なお、表2中、絶対平行透過率Kyに対応する値を「平行位」、絶対直交透過率Kzに対応する値を「直交位」として示す。
実施例3−1〜3−14で得られた測定試料について、評価1と同様に、透過率Ts、TpおよびTcを測定し、視感度補正後の単体透過率Ysおよび偏光度ρyを算出した。
実施例1〜14および実施例3−1〜3−14で得られた各測定試料について、最小偏光度ρymin1又は最小偏光度ρymin2を求めた。最小偏光度ρymin1は、上記単体透過率Ysが35%乃至60%の各測定試料について求められ、下記式(I)に上記単体透過率Ysを代入して算出した。最小偏光度ρymin2は、上記単体透過率Ysが60%超、80%以下の各測定試料について求められ、下記式(II)に上記単体透過率Ysを代入して算出した。また、結果を表3に示す。なお、表3中、実施例1〜14の単体透過率Ysおよび偏光度ρyは、表1に示したと同じである。
[耐久性試験]
実施例1〜14および比較例1〜6で得られた偏光板を、85℃、相対湿度85%RHの環境に240時間に適用し、このような処理を経た偏光板について、実施例1と同様の方法で測定試料をそれぞれ作製した。さらに、得られた各測定試料について、評価1と同様の評価を行った。
Claims (14)
- アゾ化合物を構成成分として含む基材からなる偏光素子であって、
単体透過率が、35%乃至80%であり、
JIS Z 8781−4:2013に従って自然光の透過率測定時に求められる色度a*値およびb*値の絶対値が、
該偏光素子単体で、ともに1以下であり、
該偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態で、ともに2以下であり、かつ、
該偏光素子2枚をその吸収軸方向が互いに直交するように配置した状態で、ともに2以下であり、
前記アゾ化合物は、遊離酸の形式で下記式(1)に示される化合物又はその塩と、遊離酸の形式で下記式(2)に示される化合物又はその塩とを含むことを特徴とする、偏光素子。
- 該偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が直交方向となるように絶対偏光光を照射して測定された各波長の透過率について、複数の波長域で平均透過率を比較した場合に、550nm乃至600nmの平均透過率と400nm乃至460nmの平均透過率との差の絶対値が4%以下であって、かつ、600nm乃至670nmの平均透過率と550nm乃至600nmの平均透過率との差の絶対値が3%以下にあり、
さらに、該偏光素子の吸収軸方向に対して光の振動方向が平行方向となるように絶対偏光光を照射して測定された各波長の透過率について、複数の波長域で平均透過率を比較した場合に、550nm乃至600nmの平均透過率と400nm乃至460nmの平均透過率との差の絶対値が2%以下であって、かつ、600nm乃至670nmの平均透過率と550nm乃至600nmの平均透過率との差の絶対値が2以下である、請求項1に記載の偏光素子。 - 前記式(3)のA 2 およびA 3 が、それぞれスルホ基を有するナフチル基である、請求項3に記載の偏光素子。
- 前記アゾ化合物は、前記式(4)に示される化合物の銅錯体をさらに含む、請求項5に記載の偏光素子。
- 前記式(4)のA 4 が、ニトロ基である、請求項5又は6に記載の偏光素子。
- 前記式(1)のA1が、置換基を有するフェニル基である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の偏光素子。
- 前記基材が、前記アゾ化合物を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の偏光素子。
- 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の偏光素子の少なくとも片面に、透明保護層を有する、偏光板。
- 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の偏光素子又は請求項13に記載の偏光板を有する、液晶表示装置。
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