JP7197246B2 - インクジェット印刷物の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
(1)準備工程
印刷用の紙基材を準備する。
紙基材は、パルプを含む原料を抄紙して得られる。紙基材には、印刷用紙および板紙等が含まれる。印刷用紙は、書籍、雑誌等の印刷用として製造された紙であり、ここでは、ラベル、タグ、シール等に用いられる紙を含む。板紙は、パルプ、古紙などを原料として製造されて厚い紙の総称であり、例えば、段ボール紙等が含まれる。
非塗工印刷用紙は、抄紙工程および乾燥工程の後、顔料および/または各種コート剤の塗布が行われていない印刷用紙である。非塗工印刷用紙は、JIS P 0001に従えば、化学パルプの含有量によって、印刷用紙A、B、CおよびDのグレードに分けられる。印刷用紙A(いわゆる上質紙)は化学パルプ含有量が100%であり、印刷用紙Bは化学パルプ含有量が70%以上であり、印刷用紙Cは化学パルプ含有量が40%以上70%未満であり、印刷用紙D(いわゆるザラ紙)は化学パルプ含有量が40%未満である。
紙基材の第1主面にコロナ放電処理を行う。
コロナ放電処理により、第1主面に極性基(例えば、ヒドロキシ基、カルボニル基等)が付加されて、親水性が向上する。よって、インクの第1主面に対する濡れ性が向上する。コロナ放電処理は、第1主面に加えて、第1主面の反対側の第2主面にも行ってよい。
紙基材のコロナ放電処理された第1主面に、インクジェット法によりインクを付着させて、第1主面に、文字および/または画像を印刷する。印刷には、従来公知のインクジェットプリンタを使用することができる。
インクは、着色剤および水を含む。
水は、インクの主溶媒であり、溶媒全体の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上を占める。
準備工程の後、印刷工程の前に、紙基材を加熱する乾燥工程を備えてもよい。これにより、紙基材の水分率が低く(例えば、4質量%以下)なって、インクが紙基材の内部に浸透し易くなる。よって、滲みがさらに抑制され得る。
生産性の観点から、上記の各工程は、インライン方式で行われてもよい。インライン方式では、搬送機によって搬送されている紙基材の第1主面に対してコロナ放電処理が行われ、引き続き、搬送機によって搬送されているコロナ放電処理された第1主面に対してインクが付与される。この場合、例えば、準備工程の後、紙基材を搬送機の上流に供給し、下流に向けて搬送する搬送工程が付加される。
インクジェット印刷物を製造する方法は、例えば、印刷用の紙基材を搬送機の上流に供給する紙基材供給部と、紙基材供給部の下流に配置され、紙基材の第1主面にコロナ放電処理を行う表面処理部と、表面処理部の下流に配置され、コロナ放電処理された第1主面に、インクジェット法によりインクを付着させる印刷部と、を具備する製造装置により実施される。製造装置は、紙基材供給部の下流であって、かつ、印刷部の上流に配置され、紙基材を加熱する乾燥部をさらに備えてもよい。
製造装置100の最上流には、供給リール121に捲回された紙基材10を備える紙基材供給部120が設けられている。紙基材供給部120は、供給リール121を回転させて、紙基材10を搬送機110に供給する。搬送機110は、例えば、複数の搬送ローラ111と、搬送ローラ111で張架される搬送ベルト112とを備える。少なくとも1本の搬送ローラ111が回転駆動することにより、搬送ベルト112が回転し、紙基材10が搬送される。
紙基材10は、搬送機110により表面処理部130に搬送される。
表面処理部130は、コロナ放電装置131を備える。表面処理部130では、紙基材10のコロナ放電装置131に対向する第1主面10Xが、コロナ放電処理される。
紙基材10は、コロナ放電処理された後、搬送機110により印刷部140に搬送される。
印刷部140は、インクジェットプリンタ141を備える。印刷部140では、紙基材10のコロナ放電処理された第1主面10Xに、インクジェットプリンタ141によりインクが付与されて、インクジェット印刷物20が得られる。
製造装置100は、乾燥部を備えていてもよい。乾燥部は、紙基材供給部120の下流であって、かつ、印刷部140の上流に配置される。図示例では、乾燥部(加熱装置160)は、表面処理部130における搬送機110の内部に収容されており、搬送機110を加熱することにより、間接的に紙基材10を加熱する。
最後に、印刷部140からインクジェット印刷物20を搬出し、より下流側に配置されている回収部150に搬送する。回収部150は、インクジェット印刷物20を捲き取る回収リール151を内蔵しており、インクジェット印刷物20は回収リール151に巻き取られて回収される。
上質紙にコート剤が塗布された塗工印刷用紙(キャスト紙、水分率5.7質量%、86.5g/m2、厚み91μm)、および、ブラック(K、着色剤:カーボンブラック)、シアン(C、着色剤:フタロシアニン顔料)、マゼンタ(M、着色剤:キナクリドン)、イエロー(Y、着色剤:有機顔料)の4色のインクを準備した。
コロナ放電処理の放電量を87.4W・分/m2にしたこと以外は、実施例1と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図2に示す。ブラックのインクとコロナ放電処理後の第1主面との接触角は、15.3度であった。
コロナ放電処理の放電量を121.8W・分/m2にしたこと以外は、実施例1と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図2に示す。ブラックのインクとコロナ放電処理後の第1主面との接触角は、15.1度であった。
コロナ放電処理の放電量を153.8W・分/m2にしたこと以外は、実施例1と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図2に示す。ブラックのインクとコロナ放電処理後の第1主面との接触角は、15.5度であった。
コロナ放電処理の放電量を192.3W・分/m2にしたこと以外は、実施例1と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図2に示す。ブラックのインクとコロナ放電処理後の第1主面との接触角は、14.2度であった。
コロナ放電処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図2に示す。ブラックのインクと第1主面との接触角は、26.6度であった。
コロナ放電処理の放電量を21.9W・分/m2にしたこと以外は、実施例1と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図2に示す。ブラックのインクとコロナ放電処理後の第1主面との接触角は、18.1度であった。
コロナ放電処理の放電量を304.5W・分/m2にしたこと以外は、実施例1と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図2に示す。
インクの液滴量を7plにしたこと以外は、それぞれ実施例1~実施例5と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図3に示す。
インクの液滴量を7plにしたこと以外は、それぞれ比較例1~比較例3と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図3に示す。
インクの液滴量を12plにしたこと以外は、それぞれ実施例1~実施例5と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図4に示す。
インクの液滴量を12plにしたこと以外は、それぞれ比較例1~比較例3と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を図4に示す。
搬送機(搬送ベルト)で搬送される塗工印刷用紙に対して、コロナ放電処理およびインクジェット印刷をこの順に連続して行ったこと以外は、実施例2と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を表1に示す。
コロナ放電処理の前に加熱処理を行ったこと以外は、実施例16と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を表1に示す。なお、加熱処理は、塗工印刷用紙を、70℃に加熱された金属製の搬送機に載置することにより行った。この結果、インクジェット印刷に供される直前の塗工印刷用紙の水分率は、3.6質量%であった。
インクの液滴量を7plにしたこと以外は、それぞれ実施例16および実施例17と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を表2に示す。
インクの液滴量を12plにしたこと以外は、それぞれ実施例16および実施例17と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を表3に示す。
搬送機(搬送ベルト)で搬送される塗工印刷用紙に対して、コロナ放電処理およびインクジェット印刷をこの順に連続して行ったこと以外は、実施例3と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を表4に示す。
上記塗工印刷用紙を70℃に加熱された架台に載置して、加熱処理しながらコロナ放電処理を行ったこと以外は、実施例22と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を表4に示す。この結果、インクジェット印刷に供される直前の塗工印刷用紙の水分率は、3.6質量%であった。
インクの液滴量を7plにしたこと以外は、それぞれ実施例22、実施例23と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を表5に示す。
インクの液滴量を12plにしたこと以外は、それぞれ実施例22、実施例23と同様にして第1主面にドットを形成し、評価した。結果を表6に示す。
紙基材に替えて、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムに対して、実施例1~実施例5、比較例1および比較例2と同様にしてドットを形成し、評価した。結果を図5に示す。
110:搬送機
111:搬送ローラ
112:搬送ベルト
120:紙基材供給部
121:供給リール
130:表面処理部
131:コロナ放電装置
140:印刷部
141:インクジェットプリンタ
150:回収部
151:回収リール
160:乾燥部(加熱装置)
10:紙基材
10X:第1主面
20:インクジェット印刷物
Claims (5)
- 印刷用のコート材層を備える紙基材を準備する準備工程と、
前記紙基材の第1主面にコロナ放電処理を行う表面処理工程と、
前記コロナ放電処理された前記第1主面に、インクジェット法によりインクを付着させる印刷工程と、を備え、
前記準備工程の後、前記印刷工程の前に、前記紙基材を加熱する乾燥工程をさらに備え、
前記インクは、着色剤および水を含み、
前記水は溶媒全体の50質量%以上であり、
前記紙基材の化学パルプ含有量は40質量%以上であり、
前記印刷工程において付着する前記インクのドット径は、前記コロナ放電処理の放電量の増加とともに増加してピークを取った後、減少して一定値に安定する特性を有し、
前記表面処理工程では、前記ドット径が減少する前記放電量であり、かつ100W・分/m2以上、200W・分/m2以下の前記放電量で前記コロナ放電処理を行う、インクジェット印刷物の製造方法。 - 前記紙基材は、コート紙またはキャスト紙である、請求項1に記載のインクジェット印刷物の製造方法。
- 前記印刷工程に供される前記紙基材の水分率は、4質量%以下である、請求項1または2に記載のインクジェット印刷物の製造方法。
- 前記準備工程の後、前記紙基材を搬送機の上流に供給し、下流に向けて搬送する搬送工程をさらに備え、
前記表面処理工程では、前記搬送機によって搬送されている前記紙基材の前記第1主面に前記コロナ放電処理が行われ、
前記印刷工程では、前記搬送機によって搬送されている前記コロナ放電処理された前記第1主面に前記インクを付着させる、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット印刷物の製造方法。 - 印刷用のコート材層を備える紙基材を、搬送機の上流に供給する紙基材供給部と、
前記紙基材供給部の下流に配置され、前記紙基材の第1主面にコロナ放電処理を行う表面処理部と、
前記表面処理部の下流に配置され、前記コロナ放電処理された前記第1主面に、インクジェット法によりインクを付着させる印刷部と、を具備し、
前記紙基材供給部の下流であって、かつ、前記印刷部の上流に配置され、前記紙基材を加熱する乾燥部をさらに備え、
前記インクは、着色剤および水を含み、
前記水は溶媒全体の50質量%以上であり、
前記紙基材の化学パルプ含有量は40質量%以上であり、
前記印刷部が付着させる前記インクのドット径は、前記コロナ放電処理の放電量の増加とともに増加してピークを取った後、減少して一定値に安定する特性を有し、
前記表面処理部は、前記ドット径が減少する前記放電量であり、かつ100W・分/m2以上、200W・分/m2以下の前記放電量で前記コロナ放電処理を行う、インクジェット印刷物の製造装置。
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