以下、本発明を実施するための形態例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素は、同一の符号を付し、構成要素の重複説明は省略する。
<画像形成システムの構成>
まず、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの構成例について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成システム1000の構成例を示す概要図である。
図1に示すように、画像形成システム1000は、画像形成装置1、給紙装置2、画像測定装置3及び後処理装置4を備える。
[給紙装置]
給紙装置2は、画像形成装置1の上流に配置され、給紙トレイ201~203と、搬送経路204と、レジスト部205と、用紙通過検出センサ2061~2063、207とを備える。
給紙トレイ201~203は、用紙Shの紙種、紙長さ、紙質等が異なる様々な用紙Shが収容されるトレイである。なお、本実施形態では、給紙トレイが3つある例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。給紙トレイは1つであっても、4つ以上であってもよい。
搬送経路204は、用紙Sh(記録材の一例)を給紙トレイ201~203の各給紙口(図示略)から画像形成装置1まで搬送する経路である。
レジスト部205は、搬送経路204における画像形成装置1との接続部分の近傍に配置され、レジストローラー対2051及びループローラー対2052を備える。レジストローラー対2051は、レジストローラー2051a及びレジスト従動ローラー2051bよりなる。レジストローラー2051aは、搬送経路204の下面に配置され、不図示のレジストローラー搬送モーターにより搬送方向又は搬送方向の逆方向に回転駆動される。また、レジストローラー2051aは、不図示のレジストローラー揺動モーターによって駆動されることにより、用紙Shの幅方向に移動(揺動)する。
レジスト従動ローラー2051bは、レジストローラー2051aに対して圧着及び離間可能な形態で搬送経路204の上面に配置される。レジスト従動ローラー2051bは、レジストローラー2051aに圧着された状態においては、レジストローラー2051aの回転動作に従動して回転する。
ループローラー対2052は、ループローラー2052a及びループ従動ローラー2052bよりなる。ループローラー2052aは、搬送経路204の下面に配置され、不図示のループローラー搬送モーターにより搬送方向に回転駆動される。
ループ従動ローラー2052bは、ループローラー2052aに対して圧着及び離間可能な形態で搬送経路204の上面に配置される。ループ従動ローラー2052bは、ループローラー2052aに圧着された状態においては、ループローラー2052aの回転動作に従動して回転する。
上述のレジスト部205によって、給紙装置2内での用紙Shの曲がりの補正や、タイミング調整等を目的としたプレレジストが行われる。プレレジストは、レジストローラー2051a及びレジスト従動ローラー2051bが互いに圧着された状態でレジストローラー2051aの回転を停止し、圧着により形成されるニップ部に、搬送経路204上を搬送される用紙Shの先端を突き当てることにより行われる。プレレジストの実施中は、用紙Shの搬送は停止される。
画像形成装置1側での用紙Shの受け入れが許可となったタイミングで、レジストローラー2051aが再起動されることにより、用紙Shが画像形成装置1に送り込まれる。
用紙通過検出センサ2061は、給紙トレイ201の給紙口近傍に配置され、用紙通過検出センサ2062は、給紙トレイ202の給紙口近傍に配置され、用紙通過検出センサ2063は、給紙トレイ203の給紙口近傍に配置される。用紙通過検出センサ207は、ループローラー対2052の上流の位置に配置される。用紙通過検出センサ2061~2063、207は、例えば反射型の光電センサ等で構成され、センサの位置に搬送されてきた用紙Shの先端の通過タイミングを検出する。
より詳細には、用紙通過検出センサ2061~2063は、給紙トレイ201~203から給紙された用紙Shの通過タイミングを検出し、用紙通過検出センサ207は、ループローラー対2052の手前(上流)の位置を用紙Shが通過するタイミングを検出する。用紙通過検出センサ2061~2063、207で検出された用紙の先端の通過タイミングの情報は、後述する用紙搬送時間計測部107(図2参照)に供給される。
[画像形成装置]
画像形成装置1は、給紙装置2から搬送された用紙Shに画像を形成する。画像形成装置1は、静電気を用いて画像の形成を行う電子写真方式を採用しており、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を重ね合わせるタンデム形式のカラー画像形成装置である。なお、画像形成装置1が扱うトナーの色は4色に限定されず、5色以上であってもよい。
画像形成装置1は、画像形成装置本体10と、操作表示部11(表示部の一例)とを備える。
操作表示部11は、液晶パネル等からなる表示部、及び、タッチセンサ等からなる操作部で構成される。表示部及び操作部は、例えばタッチパネルとして一体に形成される。操作表示部11は、操作部に入力されたユーザーからの操作の内容を表す操作信号を生成し、該操作信号を後述の制御部100(図2参照)に供給する。例えば、ユーザーより、画像形成処理の開始を指示する操作が入力された場合には、画像形成処理を開始させる信号を生成して、制御部100に供給する。また、操作表示部11は、制御部100から供給される表示信号に基づいて、後述する表示制御部105(図2参照)による制御に基づいて、表示部に、ユーザーによる操作内容や設定情報等を表示する。なお、操作部をマウスやタブレットなどで構成し、表示部とは別体で構成することも可能である。
画像形成装置本体10には、給紙装置2から給紙された用紙Shを画像測定装置3まで搬送する搬送経路21が形成される。搬送経路21には、用紙Shを搬送するための複数のローラー(搬送ローラー)(図示略)が設けられる。また、搬送経路21には、両面印刷時に使用される両面経路22が形成される。
また、画像形成装置本体10は、画像形成部30を有する。画像形成部30は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー画像を形成するための、4つの画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kを備える。画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kはそれぞれ、帯電部、LED書き込みユニット(いずれも不図示)、画像担持体としての感光体ドラム32Y,32M,32C,32K、及び、現像部を備える。現像部は、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kの表面(外周部)に潜像を形成するとともに、該潜像に不図示の現像器から供給されたトナーを付着させることにより、感光体ドラム32Y,32M,32C,32K上にトナー画像を形成する。
また、画像形成部30は、中間転写ベルト34及び2次転写部35を備える。中間転写ベルト34は、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kに形成された画像が一次転写されるベルトである。2次転写部35は、中間転写ベルト34上に1次転写された各色のトナー画像を、搬送経路21を介して搬送された用紙Shに2次転写するローラーである。
搬送経路21における2次転写部35の配置位置の上流には、レジストローラー361及びレジスト従動ローラー362よりなるレジストローラー対36が設けられる。レジストローラー361は、不図示のレジストローラー搬送モーターにより搬送方向又は搬送方向の逆方向に回転駆動される。また、レジストローラー361は、不図示のレジストローラー揺動モーターによって駆動されることにより、用紙幅方向に移動する。
レジスト従動ローラー362は、レジストローラー361に対して圧着及び離間可能に配置され、レジストローラー361に圧着された状態においては、レジストローラー361の回転動作に従動して回転する。
レジストローラー対36の配置位置の上流には、ループローラー371及びループ従動ローラー372よりなるループローラー対37が設けられる。ループローラー371は、不図示のループローラー搬送モーターによって、搬送方向に回転駆動される。ループ従動ローラー372は、ループローラー371に対して圧着及び離間可能に配置され、ループローラー371に圧着された状態においては、ループローラー371の回転動作に従動して回転する。
上述のレジストローラー対36及びループローラー対37(用紙矯正部の一例)によって、用紙Shの搬送方向に対する回転方向のずれ(用紙Shの姿勢)を矯正する曲がり補正が行われる。曲がり補正は、レジストローラー361及びレジスト従動ローラー362が互いに圧着された状態でレジストローラー361の回転を停止し、圧着により形成されるニップ部に、搬送経路21上を搬送される用紙Shの先端を突き当てることにより行われる。
用紙Shの先端がニップ部に突き当たった状態で、ループローラー対37がレジストローラー対36の方向に用紙Shを送り込むことにより、用紙Shの先後端間にループ(たわみ)が形成され、用紙Shの弾性により用紙Shの曲がりが矯正される。
また、レジストローラー対36によって、レジスト揺動補正も行われる。レジスト揺動補正は、用紙Shを用紙幅方向に移動させることにより、用紙Sh上に形成された画像の用紙幅方向における位置合わせを行う補正である。さらに、レジストローラー対36によって、レジストローラー361を逆回転させることにより用紙Shの姿勢を矯正するレジスト逆転補正も行われる。
画像形成装置1内における、給紙装置2から用紙Shが挿入される挿入口(図示略)の近傍には、用紙通過検出センサ41が配置され、ループローラー対37の上流の(手前の)位置には、用紙通過検出センサ42が配置される。用紙通過検出センサ41及び42は、上述した給紙装置2内の用紙通過検出センサ2061~2063、207と同様に、センサの下を用紙Shの先端が通過するタイミングを計測する。用紙の先端の通過タイミングの情報は、後述する用紙搬送時間計測部107(図2参照)に供給される。
搬送経路21における2次転写部35の配置位置の下流には、定着部38が設けられる。定着部38は、2次転写部35で用紙Sに転写された画像を、用紙S上に定着させる定着処理を行う。定着部38で定着処理が行われた用紙Shは、画像測定装置3に搬送される。
[画像測定装置]
画像測定装置3は、画像形成装置1によって用紙Shに形成された画像を測定して、その品質を検査することにより、画像が形成された用紙Shが、画像の曲がり等の不良を含む不良紙であるか、不良を含まない良品であるか否かを判定する(以下、該判定を良品判定と称する)。画像測定装置3は、搬送経路301と、搬送経路301上を搬送される表面を測定するインラインスキャナ302aと、裏面を測定するインラインスキャナ302bとを備える。インラインスキャナ302a、インラインスキャナ302bによる用紙Shの読み取り動作は、後述の読み取り制御部303(図2参照)によって制御される。
インラインスキャナ302a、302bで測定された各画像データは、画像形成装置1の制御部100(図2参照)に送信される。また、画像測定装置3による良品判定結果の情報は、後述する画像形成装置1の搬送時間確保部108(図2参照)に送信される。測定が行われた用紙Shは、搬送経路301を介して後処理装置4に搬送される。画像測定装置3による良品判定処理については、後述の図7を参照して詳述する。
なお、本実施形態では、画像形成装置1とは別に画像測定装置3が設けられる例を上げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、画像測定装置3が有するインラインスキャナ302a、302b及び読み取り制御部303を、画像形成装置1の内部に形成してもよい。
[後処理装置]
後処理装置4は、画像測定装置3から搬送された用紙に対して、パンチ、ステープル等の後処理を施す装置である。図1において、これらの処理を行う機構の図示は省略している。後処理が施された用紙Shは、メイントレイ401a(予め出力されることが予定されていたトレイの一例)又はサブトレイ401b(パージトレイ)に排紙される。用紙Shの排紙先をメイントレイ401aとサブトレイ401bとで切り替える制御は、後述の排紙制御部403(図2参照)によって行われる。
[画像形成システムの制御系の構成]
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の制御系の構成例について説明する。図2は、画像形成装置1の制御系の構成例を示すブロック図である。なお、図2において、図1と重複する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
図2に示すように、画像形成システム1000は、画像形成装置1、給紙装置2、画像測定装置3及び後処理装置4を備える。
[給紙装置]
給紙装置2は、給紙トレイ201~203からの用紙Shの給紙動作を制御する給紙制御部206を備える。
[画像形成装置]
画像形成装置1は、制御部100と、記憶部104と、表示制御部105と、用紙矯正動作制御部106と、用紙搬送時間計測部107と、搬送時間確保部108と、生産性演算部109と、画像形成部110とを備える。
制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)101と、CPU101が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)102と、CPU101の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)103とを有する。
CPU101は、記憶部104、表示制御部105、用紙矯正動作制御部106、用紙搬送時間計測部107、搬送時間確保部108、生産性演算部109及び画像形成部110のそれぞれと、システムバスBを介して接続される。そして、CPU101は、システムバスBを介して接続されたこれらの各部と通信を行うことにより、各部の動作を制御する。また、CPU101は、システムバスBを介して接続される給紙装置2、画像測定装置3及び後処理装置4を構成する各部の動作も制御する。
記憶部104は、例えば、メモリやHDD(Hard Disc Drive)等で構成され、CPU101の制御に基づいて、不図示の端末装置等から送信された原稿画像の画像データや、出力済みの画像データ等を記憶する。
表示制御部105は、操作表示部11(図1参照)の表示部に対する文字や画像等の表示動作を制御する。
用紙矯正動作制御部106は、画像形成装置1内又は給紙装置2内に設けられた不図示のループローラー搬送モーター、レジストローラー搬送モーターの動作を制御する。用紙矯正動作制御部106によって、これらのモーターの動作が制御されることにより、プレレジスト、曲がり補正、レジスト揺動補正、レジスト逆転補正の実施又は不実施、実施される場合の実施タイミングが調整される。
用紙搬送時間計測部107(記録材搬送時間計測部の一例)は、画像形成装置1内の用紙通過検出センサ41及び42による検出結果に基づいて、給紙装置2から挿入された用紙Shがレジストローラー対36の手前の位置に到達するまでに要した搬送時間を計測する。以下、用紙搬送時間計測部107が計測したこの搬送時間を、「計測時間」とも称する。
搬送時間確保部108は、搬送時間確保処理を行う。搬送時間確保処理では、搬送時間確保部108は、用紙搬送時間計測部107による計測時間が、予め定められた搬送予定時間よりも長いか否かを判定する。そして、計測時間が搬送予定時間よりも長い場合、すなわち、用紙Shの搬送に遅れが生じている場合、搬送時間確保部108は、曲がり補正、レジスト揺動補正、レジスト逆転補正のいずれか又はすべての実施をキャンセルする(実施しない)ことにより、用紙Shの搬送時間を確保する。
搬送時間確保部108による、実施をキャンセルする補正の選択は、搬送予定時間から測定時間を減算した差分の時間として表される遅れ時間や、搬送される用紙Shの紙種(種類、サイズ、坪量)、後段の画像測定装置3によって測定された画像の状態の情報等に基づいて行われる。また、搬送時間確保部108は、補正の実施をキャンセルした場合には、後段の画像測定装置3に対して、画像の測定の実施を指示する。搬送時間確保部108による用紙Shの搬送時間確保処理については、後述の図3~図6を参照して詳述する。
生産性演算部109は、搬送時間確保部108により決定された補正の実施がキャンセルされた場合にも、用紙Shの搬送の遅れが解消されない場合、後処理装置4の排紙制御部403に対して、すでに給紙済みの用紙Shをサブトレイ401bから排紙させるように指示する。そして、生産性演算部109は、用紙Shへの再印字を行うよう画像形成部110に指示する。このとき、生産性演算部109は、再印字時の印刷の生産性(サイクル時間)として、遅れ時間を含む生産性を演算する。再印字時の生産性は、下記の式(1)により算出することができる。
再印字時の生産性(サイクル時間)=1枚を印字する場合における生産性(サイクル時間)+遅れ時間…式(1)
なお、生産性演算部109によって、上記式(1)に基づいて算出された生産性で印字が再開される場合、表示制御部105によって、生産性を落として印字を行う旨を、操作表示部11の表示画面に表示させる制御が行われる。このような制御が行われることにより、ユーザーは、生産性を落として印字が行われていることを認識することができる。
画像形成部30は、CPU101による制御に基づいて、画像形成用又は画像調整用のトナー画像を感光体32Y,32M,32C及び32K(図1参照)上に形成させ、該トナー画像を中間転写ベルト34に1次転写させる。また、画像形成部30は、2次転写部35を駆動制御し、中間転写ベルト34が担持するトナー画像を用紙Shに2次転写させる。さらに、画像形成部30は、定着部38を駆動制御して、トナー画像を用紙Shに定着させる。
[画像測定装置]
画像測定装置3は、インラインスキャナ302a、302bと、読み取り制御部303とを備える。読み取り制御部303は、インラインスキャナ302a、302bによる用紙Sh上の画像の読み取り動作を制御する。
[後処理装置]
後処理装置4は、排紙制御部403を備える。排紙制御部403は、用紙Shの排紙先をメイントレイ401aとサブトレイ401bとで切り替える制御を行う。排紙制御部403は、画像測定装置3によって不良紙と選択された用紙と、生産性演算部109によってサブトレイ401bへの排紙が指示された用紙とを、サブトレイ401bから排紙させる。一方、良品と判断された用紙は、メイントレイ401aから排紙させる。
<搬送時間確保部による用紙の搬送時間確保処理>
次に、搬送時間確保部108による用紙Shの搬送時間確保処理について説明する。用紙Shの搬送時間確保処理の説明を行うにあたり、まず、用紙Shの搬送に遅延が発生していない正常な状態における用紙Shの動作と、遅延が発生している状態における用紙Shの動作とについて説明する。
図3は、用紙Shの搬送に遅延が発生していない正常な状態における搬送経路上の用紙Shの位置と時間との対応を示す動作線図である。図3の動作線図の縦軸は、用紙Shの搬送距離を示し、横軸は時間を示す。用紙Shが給紙装置2から給紙された時点t0から所定の時間が経過した時点t1において、画像形成部110(図2参照)による画像形成(作像)が開始される。その後、用紙Shが給紙装置2のレジストローラー対2051の手前(上流)の位置(以下、プレレジスト待機位置と称する)に到達した時点t2から、用紙Shに対するプレレジストが行われる。
プレレジストでは、所定の待機時間が経過するまでの間、用紙Shの搬送が停止される。そして、待機時間が経過した時点t3から、用紙Shの搬送が再開される。用紙Shが画像形成装置1内のレジストローラー対36の手前(上流)の位置(以下、曲がり補正待機位置と称する)に到達した時点t4から時点t6までの間、用紙Shに対する曲がり補正が実施される。曲がり補正が終了した時点t6から時点t7までの間、レジスト揺動補正が行われ、レジスト揺動補正が終了した時点t7から時点t8までの間は、レジスト逆転補正が行われる。そして、レジスト逆転補正が終了した時点t8から用紙Shの搬送が再開され、時点t9において、用紙Shが画像の2次転写位置(図においては「用紙・画像合流ポイント」と表記)に到達する。2次転写位置は、中間転写ベルト34(図1)上に1次転写された各色のトナー画像が用紙Shに2次転写される位置である。
この時点t9が訪れるまでの間に、用紙Shが2次転写位置に到達していない場合、用紙Sh上に形成される画像の形成位置が、正常な位置からずれてしまう。
図4は、用紙Shの搬送に遅延が発生している状態における搬送経路上の用紙Shの位置と時間との対応を示す動作線図である。図4の動作線図の縦軸は、用紙Shの搬送距離を示し、横軸は時間を示す。図4において、図3に示した正常な状態における用紙Shの動作を一点鎖線で示す。
図4に示す例では、プレレジストが終了した時点t13から再開された用紙Shの搬送に遅れが生じていることにより、曲がり補正の開始時点t14が、図3に示した正常な状態における例(図4の一点鎖線で示す動作における時点t14′)と比較して遅延している。図4には、この遅延の影響で、以降の各補正の実施タイミングにも遅れが生じ、用紙・画像合流ポイント(2次転写位置)に用紙Shが到達すべき時点t19において、用紙Shは2次転写位置に到達していないことが示されている。
図5は、搬送時間確保部108による搬送時間確保処理が行われた場合における搬送経路上の用紙Shの位置と時間との対応を示す動作線図である。図5の動作線図の縦軸は、用紙Shの搬送距離を示し、横軸は時間を示す。
図5に示す例では、図4に示した例と同様に、用紙Shの搬送に遅延が発生している。この場合、搬送時間確保部108(図2参照)は、用紙Shに対するプレレジストが終了する時点t13から用紙Shが曲がり補正待機位置に到達する時点t14までの時間を計測する。そして、計測時間が搬送予定時間に対して長い(用紙Shの搬送に遅れが生じている)ことを検知したため、搬送時間確保部108は、曲がり補正の実施をキャンセルすることを決定する。なお、曲がり補正の実施をキャンセルすることを決定した場合、搬送時間確保部108は、曲がり補正に対応するキャンセル実施フラグ(図11~図13参照)をセットする。一方、曲がり補正の実施をキャンセルしない場合、すなわち、曲がり補正が実施されることが決定された場合、搬送時間確保部108は、曲がり補正に対応付けられた補正実施許可フラグ(図11~図13参照)をセットする。
図5には、曲がり補正の実施がキャンセルされたことにより、用紙Shの搬送の遅れが解消され、用紙・画像合流ポイントに用紙Shが到達しているべき時点t18に、用紙Shが用紙・画像合流ポイントに到達している様子が示されている。
図6は、図4に示した例よりも用紙Shの遅延量がさらに大きい場合において、搬送時間確保部108による搬送時間確保処理が行われた場合における搬送経路上の用紙Shの位置と時間との対応を示す動作線図である。図6の動作線図の縦軸は、用紙Shの搬送距離を示し、横軸は時間を示す。
図6に示す例においても、搬送時間確保部108は、用紙Shに対するプレレジストが終了する時点t13から用紙Shが曲がり補正待機位置に到達する時点t14までの時間を計測する。図6に示す例では、図4に示した例よりも用紙Shの遅延量がさらに大きいため、搬送時間確保部108は、曲がり矯正の実施をキャンセルしたのみでは、用紙Shの搬送の遅れを解消できないと判断する。この結果、搬送時間確保部108は、曲がり補正、レジスト揺動補正及びレジスト逆転補正の実施をキャンセルすることを決定する。このとき、搬送時間確保部108は、曲がり補正、レジスト揺動補正及びレジスト逆転補正のそれぞれに対応する各キャンセル実施フラグをセットする。
一方、レジスト揺動補正の実施をキャンセルしない場合、すなわち、レジスト揺動補正が実施されることが決定された場合、搬送時間確保部108は、レジスト揺動補正に対応付けられた補正実施許可フラグをセットする。レジスト逆転補正の実施をキャンセルしない場合も同様に、搬送時間確保部108は、レジスト逆転補正に対応付けられた補正実施許可フラグをセットする。
図6には、曲がり補正、レジスト揺動補正及びレジスト逆転補正の実施がキャンセルされたことにより、用紙・画像合流ポイントに用紙Shが到達しているべき時点t17において、用紙Shが用紙・画像合流ポイントに到達している様子が示されている。
なお、図6に示す例では、曲がり補正、レジスト揺動補正及びレジスト逆転補正の実施がキャンセルされたことにより、時点t17が訪れるまでの間に用紙Shが用紙・画像合流ポイントに到達してしまうことが見込まれる。よって、搬送時間確保部108は、レジスト待機時間(時点t15から時点t16までの間の時間)を長めに確保することにより、用紙Shが用紙・画像合流ポイントに到達する時間を、時点t17に合致させる制御を行っている。レジスト待機時間を延長する場合、搬送時間確保部108は、レジスト待機時間延長実施フラグ、及び、レジスト待機時間をセットする。
その補正をキャンセルすることにより、搬送時間の確保時間が遅れ時間を上回ることを可能とするような補正の種類を選択できなかった場合、つまり、搬送時間の確保が難しいと判定した場合、搬送時間確保部108は、搬送時間確保不可フラグをセットする。
搬送時間確保部108によって、補正の実施がキャンセルされた場合、搬送時間確保部108から画像測定装置3に対して、画像の測定の実施が指示される。
<画像測定装置による良品判定処理>
次に、図7を参照して、画像測定装置3による良品判定処理の例について説明する。図7Aは、曲がり補正の実施がキャンセルされた場合における、画像測定装置3による良品判定処理を説明する図である。
画像測定装置3は、良品判定において、参照用に用紙Shに予め印字された参照用のトンボマーク(図中に実線で表記)と、画像形成部110により印字されたトンボマーク(図中に破線で表記)とを比較する。
曲がり補正の実施がキャンセルされた場合、画像測定装置3は、実線で示す参照用のトンボマークに対する、破線で示す印字されたトンボマークの、用紙平面の回転方向におけるズレ幅を測定する。測定したズレ幅が、予め定められた規定の仕様値の範囲内の値であれば、画像測定装置3は、用紙Shは良品であると判定する。一方、測定したズレ幅が、予め定められた仕様値の範囲外の値である場合には、画像測定装置3は、用紙Shは不良紙であると判定する。
図7Bは、レジスト揺動補正の実施がキャンセルされた場合における、画像測定装置3による良品判定処理を説明する図である。レジスト揺動補正の実施がキャンセルされた場合、画像測定装置3は、参照用のトンボマークに対する印字されたトンボマークの、用紙幅方向におけるズレ幅を測定する。測定したズレ幅が、予め定められた所定の仕様値の範囲内の値であれば、画像測定装置3は、用紙Shは良品であると判定し、仕様値の範囲外の値であれば、用紙Shは不良紙であると判定する。
図7Cは、用紙Shの曲がり量が仕様値の範囲内である場合における、画像測定装置3の処理を説明する図である。図7Cに示す例では、印字されたトンボマークは、参照用のトンボマークに対して回転方向にずれた位置に形成されており、画像に曲がりが認められる。しかしながら、そのズレ幅は仕様値(閾値の一例)の範囲内である。このような場合、搬送時間確保部108は、実施をキャンセルする補正として、曲がり補正は選択しない。
つまり、本実施形態では、画像測定装置3は、実施がキャンセルされた補正の種類に応じて、良品判定の方法を切り替えている。
なお、本実施形態において、参照用のトンボマークと比較する対象として、画像形成部110により印字されたトンボマークの代わりに、同一のジョブにおいて所定の期間連続して印字されたトンボマークを読み取って得た画像値の平均値(以下、平均画像値とも称する)を用いてもよい。
平均画像値を用いた良品判定が行われる場合、画像形成部110においては、良品判定が行われた対象の用紙に形成された画像と、その前又は後に印刷される用紙に形成される画像との間における画像形成位置のズレが少なくなるように、画像の形成位置が調整される。
また、トンボマークを用いて良品判定を行う例は一例であり、本発明はこれに限定されない。画像測定装置3は、用紙Shに形成された実際の画像の一部と、記憶部104(図2参照)等に記憶された参照画像の対象箇所とを比較することにより、画像の品質の検査を行ってもよい。
<画像形成システムによる搬送時間確保処理>
次に、図8~図10を参照して、本実施形態に係る画像形成システム1000による搬送時間確保処理について説明する。図8及び図9は、画像形成装置1による搬送時間確保処理の手順を示すフローチャートである。図10は、画像測定装置3による搬送時間確保処理の手順を示すフローチャートである。
まず、給紙装置2による用紙Shの搬送が開始される(図8のステップS1)。次いで、画像形成装置1のCPU101は、用紙Shの先端が不図示の作像開始ポイントに到達したか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2で、用紙Shは作像開始ポイントに到達していないと判定された場合(ステップS2がNO判定の場合)、CPU101は、ステップS2の判定を繰り返す。
一方、ステップS2で、用紙Shは作像開始ポイントに到達したと判定された場合(ステップS2がYES判定の場合)、CPU101は、画像形成部110に画像形成を開始させる(ステップS3)。次いで、CPU101は、用紙Shがプレレジスト待機位置に到達したか否かを判定する(ステップS4)。プレレジスト待機位置は、上述したように、給紙装置2内におけるレジストローラー対2051の手前(上流)の位置である。
ステップS4で、用紙Shはプレレジスト待機位置に到達していないと判定された場合(ステップS4がNO判定の場合)、CPU101は、ステップS4の判定を繰り返す。一方、ステップS4で、用紙Shはプレレジスト待機位置に到達したと判定された場合(ステップS4がYES判定の場合)、用紙Shの搬送が停止される(ステップS5)。用紙Shの搬送の停止は、CPU101による制御に基づいて、用紙矯正動作制御部106がレジストローラー対2051及びループローラー対2052の回転を停止することにより実施される。
次いで、CPU101は、予め定められた待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6で、待機時間は経過していないと判定された場合(ステップS6がNO判定の場合)、CPU101は、ステップS6の判定を繰り返す。一方、ステップS6で、待機時間は経過したと判定された場合(ステップS6がYES判定の場合)、CPU101は、用紙Shの搬送を再開させる(ステップS7)。
次いで、画像形成装置1の用紙搬送時間計測部107は、搬送時間の計測を開始する(ステップS8)。次いで、用紙搬送時間計測部107は、用紙通過検出センサ41及び42の検出結果に基づいて、用紙Shが曲がり補正待機位置に到達したか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9で、用紙Shは曲がり補正待機位置に到達していないと判定された場合(ステップS9がNO判定の場合)、CPU101は、ステップS9の判定を繰り返す。
一方、ステップS9で、用紙Shは曲がり補正待機位置に到達したと判定された場合(ステップS9がYES判定の場合)、CPU101は、用紙搬送時間計測部107による搬送時間の計測を終了させる(ステップS10)。
次いで、搬送時間確保部108は、搬送時間確保処理を行う(ステップS11)。搬送時間確保処理は、上述したように、用紙Shの搬送に遅れが生じているか否かを判定し、遅れが生じていると判定した場合、曲がり補正、レジスト揺動補正、レジスト逆転補正のいずれか又はすべての実施をキャンセルすることにより、用紙Shの搬送時間を確保する処理である。搬送時間確保部108による搬送時間確保処理の具体的な実施例については、後述の図10~図12を参照して詳述する。
次いで、CPU101は、曲がり補正に対応する補正実施許可フラグがセットされているか否か(フラグの値が“可”であるか否か)を判定する(ステップS12)。ステップS12で、曲がり補正に対応する補正実施許可フラグがセットされていると判定された場合(ステップS12がYES判定の場合)、曲がり補正が実施される(ステップS13)。
次いで、CPU101は、レジスト揺動補正に対応する補正実施許可フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS14)。ステップS12で、曲がり補正に対応する補正実施許可フラグがセットされていないと判定された場合(ステップS12がNO判定の場合)にも、ステップS14の判定が行われる。
ステップS14で、レジスト揺動補正に対応する補正実施許可フラグは設定されていると判定された場合(ステップS14がYES判定の場合)、レジスト揺動補正が実施される(ステップS15)。次いで、結合子Aによって接続される図9のステップS16の判定が行われる。ステップS16では、CPU101によって、レジスト待機時間延期実施許可フラグがセットされているか否かが判定される。図8のステップS14で、レジスト揺動補正に対応する補正実施許可フラグはセットされていないと判定された場合(ステップS14がNO判定の場合)にも、ステップS16の判定が行われる。
ステップS16で、レジスト待機時間延期実施許可フラグがセットされていると判定された場合(ステップS16がYES判定の場合)、レジスト待機の延長時間が確保される(ステップS17)。次いで、ステップS17で確保された待機延長時間の間、レジスト待機が行われる(ステップS18)。ステップS16で、レジスト待機時間延期実施許可フラグはセットされていないと判定された場合(ステップS16がNO判定の場合)にも、ステップS18の処理が行われる。
次いで、用紙Shの搬送が再開される(ステップS19)。次いで、CPU101は、キャンセル実施フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20で、キャンセル実施フラグがセットされていると判定された場合(ステップS20がYES判定の場合)、CPU101は、給紙装置2に対して、次の用紙Shの搬送を待機するように指示する(ステップS21)。その後、画像形成装置1による搬送時間確保処理は終了する。ステップS20で、キャンセル実施フラグはセットされていないと判定された場合(ステップS21がNO判定の場合)にも、画像形成装置1による搬送時間確保処理は終了する。
次に、図10を参照して、本実施形態に係る画像測定装置3による搬送時間確保処理について説明する。まず、画像測定装置3のインラインスキャナ302a、302bは、画像形成装置1から搬送された用紙Sh上に形成された画像を読み取る(ステップS31)。次いで、CPU101は、搬送時間確保不可フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS32)。ステップS32で、搬送時間確保不可フラグがセットされていると判定された場合(ステップS32がYES判定の場合)、CPU101は、キャンセル実施フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS33)。
ステップS33で、キャンセル実施フラグがセットされていると判定された場合(ステップS33がYES判定の場合)、画像測定装置3は、良品判定処理を行う(ステップS34)。次いで、画像測定装置3は、ステップS34で行った良品判定処理の結果、用紙Shが良品と判定されたか否かを判定する(ステップS35)。ステップS35で、用紙Shは良品であると判定された場合(ステップS35がYES判定の場合)、CPU101は、給紙装置2に対して、次の用紙Shの搬送を許可する指示を行う(ステップS36)。ステップS33で、キャンセル実施フラグはセットされていないと判定された場合(ステップS33がNO判定の場合)にも、ステップS36の処理が行われる。そして、ステップS36の処理後、画像測定装置3による搬送時間確保処理は終了する。
ステップS32で、搬送時間確保不可フラグはセットされていないと判定された場合(ステップS32がNO判定の場合)、CPU101の制御に基づいて、後処理装置4の排紙制御部403が、用紙Shの排出先を、不良紙が排紙されるサブトレイ401bに切り替える(ステップS37)。ステップS35で、用紙Shは良品ではない、すなわち、不良紙であると判定された場合(ステップS35がNO判定の場合)にも、ステップS37の処理が行われる。
ステップS37の処理後、CPU101は、画像形成部110に対して、再印刷の実行を指示する(ステップS38)。ステップS38の処理後、画像測定装置3による搬送時間確保処理は終了する。
<搬送時間確保処理の実施例>
次に、図11~図13を参照して、搬送時間確保部108による搬送時間確保処理の具体的な実施例について説明する。図11は、実施例1における、各補正に対応する補正の実施時間、補正実施許可フラグのセットの有無、キャンセル実施フラグのセットの有無の各情報を示すグラフである。図12は、実施例2における、各補正に対応する補正の実施時間、補正実施許可フラグのセットの有無、キャンセル実施フラグのセットの有無の各情報を示すグラフである。図13は、実施例3における、各補正に対応する補正の実施時間、補正実施許可フラグのセットの有無、キャンセル実施フラグのセットの有無の各情報を示すグラフである。なお、図11~図13のそれぞれにおいて、フラグは「F」と表記する。
実施例1~3のいずれの例においても、曲がり補正の実施に要する時間(実施時間)は70msであり、レジスト揺動補正の実施時間は60msであり、レジスト逆転補正の実施時間は50msであるものとする。
(実施例1)
実施例1においては、曲がり補正に対して、キャンセル実施フラグがセットされているものとする。そして、搬送予定時間から、確保時間を減算して得られる遅れ時間が、例えば、65msであるとする。確保時間は、その補正の実施をキャンセルすることにより確保可能な時間である。この場合、搬送時間確保部108は、以下の式(2)を満たすことを可能とする補正を選択する。
遅れ時間≦確保時間…式(2)
実施例1では、遅れ時間が65msであるため、上記式(2)を満たすことができる補正の種類は、実施時間が70msである曲がり補正となる。したがって、搬送時間確保部108は、実施をキャンセルする補正として、曲がり補正を選択する。
なお、選択された補正をキャンセルすることにより、確保時間に余りが生じる場合、搬送時間確保部108は、その余りの時間をレジスト待機時間の延長時間に割り当てる。確保時間の余り時間、すなわち、レジスト待機時間延長時間は、以下の式(3)により算出することができる。
確保時間-遅れ時間=レジスト待機時間延長時間…式(3)
実施例1においては、レジスト待機時間延長時間は、70ms-65ms=5msとなる。そして、搬送時間確保部108は、レジスト待機時間延長時間を5msとすることにより、用紙Shに2次転写が行われるタイミングと、2次転写位置(図3~図5の用紙・画像合流ポイント)に用紙Shが到達するタイミングとを一致させることができる。
(実施例2)
実施例2においても、遅れ時間は65msであるものとする。この遅れ時間に基づいて、実施をキャンセル可能な補正を選択する場合、搬送時間確保部108は、その補正に対応する補正実施許可フラグがセットされているか否かを確認する。図12に示す実施例2においては、曲がり補正と対応づけられた補正実施許可フラグはセットされていない(フラグの値が“不可”である)。したがって、搬送時間確保部108は、曲がり補正以外の補正であるレジスト揺動補正、レジスト逆転補正の中から、上記式(2)を満たすことを可能とする補正を選択する。
実施例2では、遅れ時間は65msであるため、上記式(2)を満たすことができる補正の種類は、実施時間が60msであるレジスト揺動補正、及び、実施時間が50msであるレジスト逆転補正の両方となる。したがって、搬送時間確保部108は、実施をキャンセルする補正として、レジスト揺動補正及びレジスト逆転補正を選択する。
実施例2では、上記式(3)により求まるレジスト待機時間延長時間は、(60ms+50ms)-65ms=45msとなる。よって、搬送時間確保部108は、レジスト待機時間延長時間に45msを設定する。
なお、曲がり補正と対応づけられた補正実施許可フラグの値に“不可”が設定されるのは、図7Cに示したように、不良紙と判定されるまでには至らないが、画像に曲がりが認められる場合である。このような場合に、搬送時間確保のために曲がり補正の実施がキャンセルされてしまうと、画像の曲がりが補正される機会がなくなり、曲がりが累積していってしまう可能性がある。
本実施形態では、画像に曲がりの傾向が認められる場合には、曲がり補正と対応する補正実施許可フラグの値は“可”に設定されないため、曲がりが累積して不良紙と判定されるレベルに達してしまうことを防ぐことができる。
同様の理由により、画像に用紙幅方向におけるずれの傾向が認められる場合に、搬送時間確保部108が、レジスト揺動補正を、実施をキャンセルする補正として選択しない制御を行ってもよい。
(実施例3)
実施例3においても、遅れ時間は65msであるものとする。この遅れ時間に基づいて、実施をキャンセル可能な補正を選択する場合、搬送時間確保部108は、その補正に対応する補正実施許可フラグがセットされているか否かを確認する。図13に示す実施例3においては、曲がり補正及びレジスト揺動補正と対応づけられた各補正実施許可フラグはセットされていない(フラグの値が“不可”である)。したがって、搬送時間確保部108は、その補正の実施をキャンセルすることによって搬送時間を確保可能な補正として、レジスト逆転補正を選択できるか否かを判定する。
レジスト逆転補正の実施時間は50msであり、これを上記式(2)に当てはめた場合、遅れ時間:65ms>確保時間:50msとなってしまい、式(2)は満たされない。したがって、搬送時間確保部108は、式(2)を満たさない補正は、実施しない補正としては選択できないと判断する。この場合、搬送時間確保部108は、搬送時間確保不可フラグの値に、“不可”を設定する。
その一方で、搬送時間確保部108は、搬送時間の確保を目的として、レジスト逆転補正の実施はキャンセルする。
上述の実施形態では、搬送時間確保部108は、用紙搬送時間計測部107による計測時間に基づいて、用紙Shの搬送に遅れが生じていると判定した場合、実施しない(キャンセルする)補正の種類を選択する。そして、用紙矯正動作制御部106が、搬送時間確保部108で選択された補正を実施しないように、レジストローラー対36及びループローラー対37の動作を制御する。したがって、本実施形態によれば、実施が行われなかった補正の実施時間の分だけ、用紙Shの搬送の遅れが解消されるため、用紙Shの搬送の遅れに起因するジャムの発生を防ぐことができる。
また、上述の実施形態では、搬送時間確保部108は、レジストローラー対36及びループローラー対37が行う補正のうち、実施しないことによって遅れ時間を解消することが可能な補正を、実施しない補正として選択する。したがって、本実施形態によれば、用紙Shの遅れが確実に解消されるため、用紙Shの搬送の遅れに起因するジャムの発生を防ぐことができる。
また、上述の実施形態では、搬送時間確保部108は、搬送中の用紙Shの種類の情報に基づいて、実施しない補正を選択する。つまり、本実施形態によれば、塗光紙、薄紙、厚紙、長尺紙等の用紙Shの種類に応じて、実施しない補正が選択される。したがって、本実施形態によれば、曲がりやすい特性を有する用紙Shに対しては、用紙Shの姿勢のずれを矯正するための補正の実施がキャンセルされない(実施される)ため、不要なジャムの発生を防ぎつつ、出力物(印刷物)に求められる品質を保つことができる。
また、上述の実施形態では、搬送時間確保部108は、レジスト揺動補正による補正量が所定の閾値を超えている場合、実施しない補正の選択対象から、レジスト揺動補正を外す。これにより、レジスト揺動補正は実施される。したがって、本実施形態によれば、不要なジャムの発生を防ぎつつ、用紙幅方向へのずれを有する傾向にある用紙Shに対するレジスト揺動補正も実施することができる。つまり、出力物に求められる品質を保つことができる。
また、上述の実施形態では、搬送時間確保部108は、曲がり補正による補正量が所定の閾値を超えている場合、実施しない補正の選択対象から、曲がり補正を外す。これにより、曲がり補正は実施される。したがって、本実施形態によれば、不要なジャムの発生を防ぎつつ、回転方向へのずれを有する傾向にある用紙Shに対する曲がり補正も実施することができる。つまり、出力物に求められる品質を保つことができる。
また、上述の実施形態では、生産性演算部109は、搬送時間確保部108が選択した補正の実施が行われなかった場合においても、遅れ時間を解消することができないと判断した場合に、すでに給紙済みの用紙Shを画像形成装置の外に排出させる制御を行う。また、生産性演算部109は、遅れ時間の情報に基づいて、画像形成部110が再印字を行う場合のサイクル時間である生産性を算出する。さらに、生産性演算部109は、算出された生産性に基づいて、再印字を行うよう画像形成部110に指示する。
ここで生産性演算部109が算出する生産性は、1枚の用紙Shに印字を行う場合における生産性に、遅れ時間を加算することにより算出される時間である。したがって、本実施形態によれば、例えば、搬送ローラーの経時変化等に基づいて用紙Shの搬送時間が慢性的に遅れてしまう場合等に、その都度、実施しない補正の種類を判断する処理が行われることを防ぐことができる。
また、上述の実施形態では、表示制御部105は、遅れ時間が加算された生産性で画像形成部110が再印字を行う場合に、生産性を落として印字を行う旨を表示部に表示させる制御を行う。したがって、本実施形態によれば、ユーザーは、生産性を落として印字が行われていることを認識することができる。
また、上述の実施形態では、画像測定装置3は、画像形成部110で画像が形成された用紙Sh上の画像を測定して、画像の品質の検査を行うことにより、画像が形成された用紙が良品であるかの良品判定を行う。そして、画像測定装置3は、用紙矯正動作制御部106の制御に基づいて、いずれかの補正が実施されなかった場合に、補正が実施されなかった画像の品質を検査する。したがって、本実施形態によれば、補正が実施されなかった出力物の品質も確保することができる。
また、上述の実施形態では、排紙制御部403は、補正が実施されなかった用紙Shが良品であると判定された場合、予め出力されることが予定されていたメイントレイ401aへ用紙Shを排出させる。一方、良品でないと判定された用紙Shは、予め出力されることが予定されていたメイントレイ401a以外のサブトレイ401bに排出させる制御を行う。したがって、本実施形態によれば、補正が実施されなかった用紙Shに対して画像測定装置3による良品判定が行われるため、補正が実施されなかった出力物の品質も確保することができる。
また、上述の実施形態では、画像測定装置3は、搬送時間確保部108によって実施をとりやめる補正として選択されたことにより実施がキャンセルされた補正の種類に応じて、良品判定の方法を切り替える。したがって、本実施形態によれば、補正が実施されなかった用紙Shに対する画像測定装置3による良品判定が、適切に実施されるため、補正が実施されなかった出力物の品質も確保することができる。
また、上述の実施形態では、画像測定装置3は、同一のジョブにおいて所定の期間連続して印字された画像を読み取って得た画像値の平均値と、参照用の画像とを比較することにより良品判定を行う。したがって、該良品判定の結果に基づいて、前後に印字される用紙Shとの画像値のズレが少なくなるように画像形成部110により画像形成位置が調整されることにより、搬送時間の遅れが検知される都度、実施しない補正の種類を判断する処理が行われることを防ぐことができる。
さらに、上述の実施形態では、画像形成部110は、画像測定装置3による良品判定が完了するまでの間、次の用紙Shに対する印字は実施しない。したがって、本実施形態によれば、良品と判定されない見込みである出力物が無駄に生成されてしまうことを防ぐことができる。
[各種変形例]
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得る。例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために装置(画像形成システム1000、画像形成装置1、給紙装置2、画像測定装置3、後処理装置4)の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、図2中に実線又は矢印で示した制御線又は情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線又は情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
上述した実施形態では、用紙矯正部としてのレジストローラー対36及びループローラー対37が複数の補正(曲がり矯正、レジスト揺動補正、レジスト逆転補正)を行う例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。用紙矯正部が行う補正の種類が1種類である画像形成装置に対しても、本発明を適用することが可能である。用紙矯正部が行う補正の種類が1種類である場合、搬送時間確保部108は、用紙Shの搬送の遅れを解消するために、その補正を実施しない補正として選択する。
また、上述した実施形態では、給紙装置2内にプレレジストを行うレジスト部205が設けられた例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明は、プレレジストが行われない給紙装置を含む画像形成システムに適用されてもよい。
また、上述した実施形態では、給紙装置2内のレジスト部205が、プレレジスト(用紙Shの搬送の停止及び再起動)を毎回行う例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。レジスト部205は、用紙Shの種類に応じて、プレレジストを実施するか否かを判定してもよい。例えば、曲がりやすい特性を有する用紙Shに対しては、必ずプレレジストを実施し、それ以外の用紙に対しては、プレレジストを実施しないように構成してもよい。レジスト部205がこのような制御を行う場合、用紙搬送時間計測部107による搬送時間の計測は、プレレジストが実施された場合にのみ行ってもよい。
また、上述の各実施形態では、本発明の画像形成システムを構成する画像形成装置を、電子写真方式を用いた画像形成装置に適用した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明の画像形成装置は、インクジェット方式等の他の方式で画像形成を行う画像形成装置に適用されてもよい。