JP7196317B2 - 歯付ベルトを用いた伝動システム及びそれに使用される歯付ベルト - Google Patents

歯付ベルトを用いた伝動システム及びそれに使用される歯付ベルト Download PDF

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Description

本発明は、歯付ベルトを用いた伝動システム及びそれに使用される歯付ベルトに関する。
カーボン繊維製の心線を用いた歯付ベルトが知られている。例えば、特許文献1には、ゴム製のベルト本体にカーボン繊維製の心線が埋設された歯付ベルトが開示されている。
特開2005-24075号公報
本発明の課題は、位置決め精度が優れる歯付ベルトを提供することである。
本発明は、エラストマー製のベルト本体と、前記ベルト本体に埋設されるとともにベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように設けられたカーボン繊維製の心線と、を備えた歯付ベルトであって、前記ベルト本体は、断面横長矩形の平帯部と、該平帯部の内周側に一体に設けられた複数の歯部とを有し、ベルト伸張率0.2%時のベルト幅1mm当たりのベルト張力T0.2が70N/mm以上であるとともに、歯付プーリとのバックラッシュ量は、0.10mm以上0.75mm以下であり、上記ベルト本体の硬度は、JIS K 6253 デュロメータ タイプAで、89°以上であり、表面動摩擦係数は、1.5以下である。
前記ベルト本体は、好ましくは、熱硬化性エラストマーで形成され、より好ましくは熱硬化性ポリウレタン樹脂で形成されている。
前記心線を構成するカーボン繊維の総フィラメント本数は、好ましくは6000本以上48000本以下である。
前記心線は、好ましくはカーボン繊維のフィラメント束を一方向に撚った片撚り糸である。
前記片撚り糸の心線の長さ10cm当たりの撚り数は、好ましくは4回/10cm以上12回/10cm以下である。
上記ピッチは、好ましくは、8mm以上14mm以下である。
本発明によれば、ベルト張力T0.2が70N/mm以上であるとともに、歯付プーリとのバックラッシュ量は0.10mm以上0.75mm以下であり、ベルト本体の硬度はJIS K 6253 デュロメータ タイプAで、89°以上であり、表面動摩擦係数は1.5以下であることにより、ずれ量が小さく、位置決め精度が優れる歯付ベルトを得ることができる。
実施形態に係る歯付ベルトの一片の斜視図である。 実施形態に係る歯付ベルトの一部分の縦断面図である。 ベルト引張試験機の構成を示す図である。 実施形態に係る歯付ベルトの製造方法の第1の説明図である。 実施形態に係る歯付ベルトの製造方法の第2の説明図である。 実施形態に係る歯付ベルトの製造方法の第3の説明図である。 ベルトずれ量計測試験機のプーリレイアウト図である。 駆動プーリ及び駆動プーリを示す一部拡大正面図である。 動摩擦係数変化試験機のプーリレイアウト図である。 実施例及び比較例1~5の歯付ベルトの構成を示す図である。
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
図1A及び図1Bは、実施形態に係る歯付ベルトBを示す。実施形態に係る歯付ベルトBは、噛み合い歯付ベルトであり、例えば、工作機械、印刷機械、繊維機械、射出成形機等の高負荷伝動用途に好適に用いられる。実施形態に係る歯付ベルトBのベルト長さは、例えば500mm以上3000mm以下である。ベルト幅は、例えば10mm以上200mm以下である。ベルト厚さ(最大)は、例えば3mm以上20mm以下である。
実施形態に係る歯付ベルトBは、ポリウレタン樹脂で形成されたエラストマー製のエンドレスの歯付ベルト本体11を備える。歯付ベルト本体11は、断面横長矩形の平帯部111と、その内周側に一体に設けられた複数の歯部112とを有する。複数の歯部112は、ベルト長さ方向に一定ピッチで間隔をおいて設けられている。
歯部112の側面視の歯形としては、例えば、両側が外側に円弧状に膨出したSTS歯形や台形歯形等が挙げられる。歯部112の歯数は、例えば30個以上400個以下である。歯幅(ベルト長さ方向の最大寸法)は、例えば2mm以上10mm以下である。歯高さは、例えば2mm以上8mm以下である。配設ピッチは、例えば8mm以上14mm以下である。
歯付ベルト本体11を形成する材料は、熱硬化性エラストマーが好ましい。より好ましくは、熱硬化性ポリウレタン樹脂である。このポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーに、硬化剤、可塑剤等の配合剤が配合されたウレタン組成物が加熱及び加圧されて硬化したものである。
ウレタンプレポリマーは、イソシアネート成分とポリオール成分との反応により得られる末端に複数のNCO基を有する比較的低分子量のウレタン化合物である。イソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。ポリオール成分としては、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等が挙げられる。ウレタンプレポリマーは、単一のウレタン化合物で構成されていても、複数のウレタン化合物が混合されて構成されていても、どちらでもよい。
硬化剤としては、例えば、1,4-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノトルエン、1,5-ナフタレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)などのアミン化合物等が挙げられる。硬化剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。アミン化合物の硬化剤は、硬化剤中のNH基のモル数のウレタンプレポリマー中のNCO基のモル数に対する比であるα値(NH基/NCO基)が0.70以上1.10以下となるように配合されていることが好ましい。
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート(DBP)やジオクチルフタレート(DOP)などのジアルキルフタレート;ジオクチルアジペート(DOA)などのジアルキルアジペート;ジオクチルセバケート(DOS)などのジアルキルセバケート等が挙げられる。可塑剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。可塑剤の配合量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して例えば3質量部以上20質量部以下である。
なお、その他の配合剤としては、例えば、着色剤、消泡剤、安定剤等が挙げられる。
歯付ベルト本体11を形成するポリウレタン樹脂の硬度は、89°以上100°以下である。このポリウレタン樹脂の硬度は、JIS K 6253 デュロメータ タイプAに基づいて測定されるが、ベルト本体側面部から測定されてもよい。このとき、ベルト幅は10mm以上とする。
実施形態に係る歯付ベルトBは、歯付ベルト本体11の平帯部111に埋設されたカーボン繊維製の心線12を備える。心線12の外径は、高負荷伝動での優れた耐久性を得る観点から、好ましくは0.6mm以上2.2mm以下、より好ましくは0.8mm以上1.2mm以下である。
心線12を構成するカーボン繊維は、高負荷伝動での優れた耐久性を得る観点から、PAN系カーボン繊維であることが好ましい。カーボン繊維のフィラメント径は、同様の観点から、好ましくは4μm以上9μm以下、より好ましくは6μm以上8μm以下である。
心線12を構成するカーボン繊維の総フィラメント本数は、高負荷伝動での優れた耐久性を得る観点から、好ましくは6000本(6K)以上48000本(48K)以下、より好ましくは9000本(9K)以上18000本(18K)、更に好ましくは12000本(12K)である。心線12を構成するカーボン繊維の繊度は、同様の観点から、好ましくは400tex以上3200tex以下、より好ましくは600tex以上1200tex以下、更に好ましくは800texである。
心線12は、高負荷伝動での優れた耐久性を得る観点から、撚り糸であることが好ましい。心線12を構成する撚り糸としては、片撚り糸、諸撚り糸、及びラング撚り糸が挙げられる。撚り糸の心線12は、同様の観点から、カーボン繊維のフィラメント束を一方向に撚った片撚り糸であることが好ましい。片撚り糸の心線12の撚り数は、同様の観点から、好ましくは4回/10cm以上12回/10cm以下、より好ましくは6回/10cm以上10回/10cm以下である。片撚り糸の心線12には、S撚り糸が用いられても、Z撚り糸が用いられても、それらの両方が用いられても、いずれでもよい。
心線12は、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように設けられている。心線12は、S撚り糸及びZ撚り糸の2本で構成され、それらが二重螺旋を形成するように設けられていてもよい。心線12は、ベルト幅方向に間隔をおいて並行に延びるように配置されることとなるが、このとき、心線12のベルト幅10mm当たりの本数は、高負荷伝動での優れた耐久性を得る観点から、好ましくは6本/10mm以上10本/10mm以下、より好ましくは7本/10mm以上9本/10mm以下である。
心線12には、成形前に予め液状の接着剤に浸漬した後に乾燥させる等の接着処理が施されていることが好ましい。
実施形態に係る歯付ベルトBは、歯付ベルト本体11におけるベルト厚さ方向の心線12の埋設位置よりも内周側にベルト長さ方向に沿って埋設された不織布13を備える。不織布13は、一枚で構成されていても、複数枚で構成されていても、どちらでもよい。
不織布13は、歯付ベルト本体11を形成するポリウレタン樹脂を含んで、側面視において層を形成するように設けられている。不織布13の歯部112に対応する部分は、側面視において内周側に膨出するように歯部112に入り込んでベルト厚さ方向に厚く広がっている。不織布13の歯部112間に対応する部分は、心線12に接触してベルト厚さ方向に薄く圧縮されている。
不織布13を構成する繊維材料としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリケトン繊維、カーボン繊維等が挙げられる。不織布13は、単一種の繊維で形成されていても、また、複数種の繊維で形成されていても、どちらでもよい。
不織布13には、成形前に予め液状の接着剤に浸漬した後に乾燥させる等の接着処理が施されていることが好ましい。
実施形態に係る歯付ベルトBは、ベルト伸張率0.2%時のベルト幅1mm当たりのベルト張力T0.2が70N/mm以上である。このベルト張力T0.2は、高負荷伝動での優れた耐久性を得る観点から、好ましくは80N/mm以上、より好ましくは90N/mm以上である。ベルト張力T0.2は、曲げ剛性が高くなって耐屈曲疲労性が損なわれるのを回避する観点から、好ましくは140N/mm以下、より好ましくは120N/mm以下である。
実施形態に係る歯付ベルトBは、対応する歯付プーリと完全に噛み合った際の歯付ベルトBと歯付プーリのバックラッシュ量が0.10mm~0.75mmとなっている。すなわち、大きすぎても小さすぎない範囲であれば、ずれ量が適切となる。また、歯付ベルトBの表面動摩擦係数は1.5以下となっている。表面動摩擦係数が高くなりすぎると、歯が変形してしまうからである。
ここで、これらのベルト張力T0.2は、次のようにして求められる。
まず、25℃の雰囲気下において、図2に示すように、実施形態に係る歯付ベルトBを、ベルト引張試験機20のそれぞれプーリ径が95.4mmの一対の平プーリ21に、ベルト背面が接触するように巻き掛ける。
次いで、一方の平プーリ21を他方の平プーリ21から50mm/分の速度で離間させる。このとき、一対の平プーリ21間の変位と、一対の平プーリ21のいずれかを介して検出される張力との関係を記録する。
続いて、一対の平プーリ21間の変位を2倍してベルト伸び量を算出し、それを無負荷状態での実施形態に係る歯付ベルトBのベルト長さで除すことにより、一対の平プーリ21間の変位をベルト伸張率に換算する。また、検出される張力を2で除してベルト張力を算出し、それを実施形態に係る歯付ベルトBのベルト幅で除すことにより、検出される張力をベルト幅1mm当たりのベルト張力に換算する。
そして、これらのベルト伸張率とベルト張力との関係から、ベルト幅1mm当たりのベルト張力が50Nとなる点が起点となるようにゼロ補正し、ベルト張力T0.2を求める。
以上の構成の実施形態に係る歯付ベルトBによれば、ベルト張力T0.2が70N/mm以上であることにより、弾性率が高くピッチラインがずれにくく、ベルト本体の硬度がJIS K 6253 デュロメータ タイプAで89°以上であることで柔らかすぎず、表面動摩擦係数は1.5以下であることで適度に滑り、その上で、歯付プーリとのバックラッシュ量は、0.10mm以上0.75mm以下であることにより、位置決め精度が極めて向上する。
次に、実施形態に係る歯付ベルトBの製造方法について説明する。
まず、図3Aに示すように、円柱状の内金型31に不織布13を被せ、その上から心線12を螺旋状に巻き付ける。このとき、内金型31の外周には、断面が歯部112に対応した形状の軸方向に延びる凹溝32が周方向に間隔をおいて一定ピッチで設けられているとともに、各凹溝32間に軸方向に延びる突条33が構成されていることから、不織布13及び心線12を、それらが突条33で支持されるように設ける。
次いで、図3Bに示すように、内金型31を円筒状の外金型34の中に収容する。このとき、内金型31と外金型34との間に歯付ベルト本体成形用のキャビティCが構成される。
続いて、図3Cに示すように、密閉したキャビティCにウレタンプレポリマーに配合剤を配合した液状のウレタン組成物を注入して充填するとともに加熱する。このとき、ウレタン組成物が流動して硬化することによりポリウレタン樹脂の歯付ベルト本体11が形成される。また、凹溝32では歯部112が形成される。心線12は、その歯付ベルト本体11に接着して埋設される。さらに、不織布13は、ウレタン組成物が含浸して硬化するとともに、歯付ベルト本体11に接着して埋設される。以上のようにして、歯付ベルト本体11、心線12、及び不織布13が一体化して円筒状のベルトスラブSが成型される。
最後に、内金型31及び外金型34からベルトスラブSを脱型し、それを輪切りすることにより実施形態に係る歯付ベルトBが得られる。
なお、上記実施形態では、歯付ベルト本体11、心線12、及び不織布13で構成された歯付ベルトBとしたが、特にこれに限定されるものではなく、歯付ベルト本体の内周側の歯部側表面、及び/又は、歯付ベルト本体の外周側の背面に補強布が設けられていてもよい。
上記実施形態では、歯付ベルト本体がポリウレタン樹脂で形成された歯付ベルトBとしたが、特にこれに限定されるものではなく、ベルト本体が架橋ゴム組成物で形成されていてもよい。
(歯付ベルト)
実施例及び比較例1~5の歯付ベルトを作製した。それぞれの構成は図5に示す。
<実施例>
上記実施形態と同様の構成のSTS歯形の歯付ベルトを実施例とした。
実施例の歯付ベルトは、ベルト長さが800mm、ベルト幅が10mm、ベルト厚さ(最大)が4.8mmであった。歯部は、ISO13050:2014(E)で規定されるS8Mで、配設ピッチが8mmであった。
歯付ベルト本体を形成するためのウレタン組成物には、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、硬化剤の3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン13質量部及び可塑剤のジオクチルフタレート10質量部を配合したものを用いた。歯付ベルト本体を形成するポリウレタン樹脂のJIS K7312に基づいて測定したJIS-A硬度は92°であった。
心線には、フィラメント本数が12000本のカーボン繊維(Tenax-J UTS50 F22 帝人社製、12K、800tex、フィラメント径:7.0μm)のフィラメント束を、長さ10cm当たりの撚り数を6回/10cmとして一方向に撚った片撚り糸を用いた。片撚り糸の心線は、S撚り糸及びZ撚り糸を準備し、それらには、接着剤に浸漬した後に乾燥させる接着処理を施した。S撚り糸及びZ撚り糸の片撚り糸の心線は、それらがベルト幅方向に交互に並んで二重螺旋を形成するように設けた。心線のベルト幅10mm当たりの本数は8本とした。心線の外径は0.9mmであった。
不織布として、ニードルパンチ法により無加圧で製造されたナイロン繊維製のものを用いた。不織布には、接着処理を施さなかった。なお、ニードルパンチ法とは、繊維の方向がある程度揃った繊維ウェブに対し、フックの付いた多数の針を垂直に突き刺したり引き上げたりすることを繰返し、繊維ウェブ中の繊維同士を互いに絡ませることによりシート状にする方法である。
(ベルトずれ量計測試験方法)
図4は、ベルトずれ量計測試験機40のプーリレイアウトを示す。このベルトずれ量計測試験機40は、歯数が24の駆動プーリ41と、その右側方に設けられた歯数が24の従動プーリ42とを有する。従動プーリ42は、左右に可動に設けられて軸荷重を負荷できるように構成されているとともに、負荷トルクも負荷できるように構成されている。
実施例及び比較例1~5のそれぞれの歯付ベルトBについて、室温の雰囲気下において、駆動プーリ41及び従動プーリ42間に巻き掛けた。ベルトサイズは、ベルト長さが800mm、ベルト幅が10mm、及び配設ピッチが8mmで、1800rpmの回転速度とする。従動プーリ42に300Nの固定軸荷重(SW)を負荷して歯付ベルトBに張力を与えるとともに、10N・mの負荷トルクを負荷し、その状態で、駆動プーリ41を1800rpmの回転数で回転させた。正回転(時計回り)で10回転、逆回転(反時計回り)で10回転だけ駆動軸モータを回転させ、駆動軸モータが元の位置に戻ってきたときの、従動軸のずれ角度を計測し、ベルトずれ量を計算した。
(バックラッシュ測定方法)
負荷トルクは、なしで、従動プーリ42に441N(45kgf)の荷重DWを加え、ベルトサイズは、図4と同様で、ベルト長さが800mm、ベルト幅が10mm、及び配設ピッチが8mm、室温でベルト静止時に測定した。図5に、駆動プーリ41及び駆動プーリ42の一部拡大図を示す。
実施例及び比較例1~5のそれぞれの歯付ベルトBについて、室温の雰囲気下において、駆動プーリ41及び従動プーリ42間に巻き掛けた。手回しで3回転させ、従動プーリ42の噛み合い歯数、6歯目のバックラッシュを計測した。計測場所は、歯高さの1/2の場所を計測した。左右にバックラッシュがある場合は、左右の大きい数値を採用した。r=3の平均値をそのベルトとプーリのバックラッシュとした。
(動摩擦係数変化測定方法)
図6は、歯付ベルトBの動摩擦係数測定装置60の構成を示す。
この動摩擦係数測定装置60は、縦壁に取付固定されたロードセル61と、その側方に設けられた平プーリ62とからなる。平プーリの材質はSUS304、表面粗さは6.3S以下とする。
実施例1及び比較例1~5のそれぞれの歯付ベルトBについて、長さ600mm、幅10mmの短冊状のテストピースを切り出し、その一端をロードセル61に固定すると共に水平に延ばして直径60mmの平プーリ62に、歯先と平プーリ62と接触するように巻き掛け、他端に1.75kgのウエイト63を吊り下げて17.2Nの荷重を負荷し、その状態でロードセル61を引っ張る方向に平プーリ62を42rpmの回転数で回転させた。回転開始から30秒後のロードセル値を読み取り、動摩擦係数μ’を算出する。なお、動摩擦係数μ’は、下記式に基づいて算出した。r=3の平均値を算出した。T1はロードセル61の測定値で張側張力を示す。T2は、ウエイト63の荷重で、緩み側張力を示す。
Figure 0007196317000001
(試験結果)
図5に試験結果を示す。実施例の歯付ベルトのベルト張力T0.2は100N/mmであった。歯付プーリとのバックラッシュ量は、0.16mmである。表面動摩擦係数は、0.65であり、ずれ量は、0.72mmであった。
<比較例1>
ベルト張力T0.2が50N/mmと低く、バックラッシュ量が0.1mmであることを除いて実施例と同一構成の歯付ベルトを比較例1とした。
比較例1の歯付ベルトのずれ量は、1.56mmとなった。したがって、比較例1の歯付ベルトは、弾性率が低すぎ、ベルトが伸びてずれ量が大きくなり、位置決め精度が悪いことが分かった。
<比較例2>
バックラッシュ量が、0.08mmと小さいことを除いて実施例と同一構成の歯付ベルトを比較例2とした。
比較例2の歯付ベルトでは、ずれ量が4.21mmと極めて大きいことが分かる。このように、バックラッシュ量が小さすぎると、ベルトがプーリに噛み合わず、プーリに乗り上げることが分かった。
<比較例3>
バックラッシュ量が、0.65mmと大きいことを除いて実施例と同一構成の歯付ベルトを比較例3とした。
比較例3の歯付ベルトのようにバックラッシュ量を大きくしすぎると、ずれ量が1.35と大きくなり、位置決め精度が悪化した。
<比較例4>
ゴム硬度が87と低いことを除いて実施例と同一構成の歯付ベルトを比較例4とした。
比較例4の歯付ベルトのようにゴム硬度を低くしすぎると、歯が変形してしまい、位置決め精度が悪化することが分かった。
<比較例5>
表面動摩擦係数が1.65と高いことを除いて実施例と同一構成の歯付ベルトを比較例5とした。
比較例5の歯付ベルトのように表面動摩擦係数を高くしすぎると、歯が変形してしまい、位置決め精度が悪化することが分かった。
このように、実施例が比較例1~5よりもずれ量が小さく、位置決め精度が非常に優れることが分かった。
B 歯付ベルト
C キャビティ
S ベルトスラブ
11 歯付ベルト本体(ベルト本体)
111 平帯部
112 歯部
12 心線
13 不織布
20 ベルト引張試験機
21 平プーリ
31 内金型
32 凹溝
33 突条
34 外金型
40 ベルトずれ量計測試験機
41 駆動プーリ
42 従動プーリ
60 動摩擦係数測定装置
61 ロードセル
62 平プーリ
63 ウエイト

Claims (5)

  1. エラストマー製のベルト本体と、前記ベルト本体に埋設されるとともにベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように設けられたカーボン繊維製の心線と、を備えた歯付ベルト及び該歯付ベルトに噛み合う歯付プーリを用いた伝動システムであって、
    前記ベルト本体は、断面横長矩形の平帯部と、該平帯部の内周側に一体に設けられた複数の歯部とを有し、
    前記心線が前記心線を構成するカーボン繊維のフィラメント束を一方向に撚った片撚り糸であり、前記片撚り糸の心線の長さ10cm当たりの撚り数が4回/10cm以上12回/10cm以下であり、
    ベルト伸張率0.2%時のベルト幅1mm当たりのベルト張力T0.2が70N/mm以上であるとともに、前記歯付プーリとのバックラッシュ量は、0.10mm以上0.65mmよりも小さく、上記ベルト本体の硬度は、JIS K 6253 デュロメータ タイプAで、89°以上であり、表面動摩擦係数は、1.5以下である歯付ベルトを用いた伝動システム。
  2. 請求項1に記載された歯付ベルトを用いた伝動システムにおいて、
    前記ベルト本体が熱硬化性エラストマーで形成されている歯付ベルトを用いた伝動システム。
  3. 請求項2に記載された歯付ベルトを用いた伝動システムにおいて、
    前記ベルト本体が熱硬化性ポリウレタン樹脂で形成されている歯付ベルトを用いた伝動システム。
  4. 請求項1から3のいずれか1つに記載された歯付ベルトを用いた伝動システムにおいて、
    前記心線を構成するカーボン繊維の総フィラメント本数が6000本以上48000本以下である歯付ベルトを用いた伝動システム。
  5. 請求項1から4のいずれか1つに記載された歯付ベルトを用いた伝動システムにおいて、
    上記ピッチは、8mm以上14mm以下である歯付ベルトを用いた伝動システム。
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