以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る車両の要部を模式的に示す構成図である。車両VEは、操舵系10、一対の操舵輪としての一対の前輪21、一対の後輪22、ナビゲーション装置30、センサ群40、及び車両制御装置50を備えている。
操舵系10は、ステアリングホイール11、ステアリング軸12、中間軸13、ラックアンドピニオン機構14、一対のタイロッド15、一対のフロントナックル16、電動モータ17、モータ駆動装置18及び操舵制御装置19を有している。
ステアリングホイール11は、ステアリング軸12に結合されている。ステアリングホイール11は、車両VEの運転者によって操作される。
ステアリング軸12は、中間軸13を介してラックアンドピニオン機構14に接続されている。
ラックアンドピニオン機構14は、図示しないピニオン軸及びラック軸を有している。ピニオン軸は、ステアリング軸12の回転に伴って回転する。ラックアンドピニオン機構14は、ピニオン軸の回転運動を、車両VEの左右方向におけるラック軸の直線運動に変換するとともに、ラック軸とピニオン軸との間において動力を伝達させる。
一対のタイロッド15は、ラック軸の両端にそれぞれ接続されている。各タイロッド15は、左右方向におけるラック軸の移動に伴って左右方向に移動する。
各フロントナックル16は、各前輪21を回転自在に支持している。また、各フロントナックル16は、車両VEの車体フレームに転舵自在に支持されている。さらに、各フロントナックル16は、対応するタイロッド15と連結されている。
このような構成により、運転者のステアリングホイール11の操作によって発生する回転トルクが、ステアリング軸12を回転させる。そして、ラックアンドピニオン機構14によって、ステアリング軸12の回転運動が車両VEの左右方向におけるラック軸及びタイロッド15の直線運動に変換される。
ラック軸及びタイロッド15の直線運動によって、各フロントナックル16が、図示しないキングピンの軸を中心に回転する。各フロントナックル16が回転することにより、対応する前輪21が車両VEの左右方向に転舵する。これにより、運転者は、車両VEを前進又は後進させるときに車両VEの横移動量を操作することができる。
また、電動モータ17の図示しないモータ回転軸は、図示しないギヤを介してステアリング軸12に接続されている。電動モータ17は、モータ回転軸を回転させることによりステアリング軸12を回転させることができる。
モータ駆動装置18は、操舵制御装置19からの電流指令値を目標値として、モータ駆動電流を制御する。モータ駆動電流は、電動モータ17に印加する電流である。従って、モータ駆動装置18は、モータ駆動電流を制御することにより、ステアリング軸12の回転を制御することができる。
操舵制御装置19は、車両制御装置50から出力される目標操舵角に関する情報を、モータ駆動装置18に出力するための電流指令値に変換する。
ナビゲーション装置30は、目的地に対する最適な走行ルートを演算する。目的地は、運転者によって設定される。ナビゲーション装置30は、演算した走行ルートを運転者に提示する。また、ナビゲーション装置30は、走行ルート上の道路情報を記憶している。道路情報としては、例えば、地図ノードデータが用いられる。地図ノードデータは、道路線形を表現したデータである。それぞれの地図ノードデータには、例えば、それぞれのノードにおける絶対位置、区間種別、車線幅、カント角、及び傾斜角に関する情報が含まれる。絶対位置とは、緯度、経度、及び標高である。
センサ群40には、GNSS(Grobal Navigation Satellite System)センサ41、前方カメラ42、複数の周辺レーダ43、車速センサ44、ジャイロセンサ45、加速度センサ46、操舵角センサ47、及び操舵トルクセンサ48が含まれる。
GNSSセンサ41は、複数の測位衛星から送信される複数の電波を受信し、車両VEの絶対位置及び車両VEの絶対方位を演算する。GNSSセンサ41は、車両VEの絶対位置及び車両VEの絶対方位を出力情報として出力する。また、GNSSセンサ41は、出力情報の信頼度を演算する。
GNSSセンサ41は、DOP(Dilution Of Precision)を出力する。DOPは、測位品質及び測位衛星の配置が測位精度へ与える影響度である。そのため、GNSSセンサ41では、通常、測位品質又はDOPに基づいて、出力情報の信頼度が算出される。
前方カメラ42は、車両VEの前方における道路上の区画線を、画像として検出可能な部位に設けられている。前方カメラ42は、検出した画像の情報に基づいて、車両VEの前方環境を検出する。前方環境とは、例えば、車線である。前方カメラ42は、車両VEから見える前方の車線を多項式又はスプライン曲線により近似した結果と、近似した結果に対する信頼度とを出力する。
複数の周辺レーダ43は、車両VEの前側方及び車両VEの後側方の障害物を検知することができるように、例えば、車両VEの4隅にそれぞれ設けられている。各周辺レーダ43は、車両VEの周囲に入射波としての電波を照射し、この入射波に対する反射波を検出する。これにより、各周辺レーダ43は、車両VEの周囲の動的物標との相対位置、動的物標との相対速度、静的物標との相対位置、及び静的物標との相対速度を出力する。動的物標とは、例えば、車両及び歩行者であり、静的物標とは、例えば、側壁及びガードレールである。
車速センサ44は、図示しない複数の車速パルスセンサの出力を、車両VEの車速Vに変換する。複数の車速パルスセンサは、一対の前輪21及び一対の後輪22にそれぞれ設けられている。各車速パルスセンサは、対応する前輪21及び対応する後輪22の回転速度を検出する。
ジャイロセンサ45は、車両VEのヨーレートγを検出する。加速度センサ46は、車両VEの前後加速度及び車両VEの横加速度を検出する。
操舵角センサ47は、ステアリングホイール11の操舵角δを検出する。操舵角センサ47は、検出した操舵角δを、目標操舵角に関する情報として操舵制御装置19に出力する。
操舵トルクセンサ48は、ステアリングホイール11の操舵トルクTdを検出する。操舵トルクセンサ48は、検出した操舵トルクTdを、目標操舵角に関する情報として操舵制御装置19に出力する。
操舵制御装置19では、操舵角δと操舵トルクTdとを用いてフィードバック制御が行われ、モータ駆動装置18に出力するための電流指令値が決定される。操舵角δと操舵トルクTdとを用いたフィードバック制御は、以下、自動操舵制御と呼ばれる。
車両制御装置50には、ナビゲーション装置30及びセンサ群40が接続されている。車両制御装置50は、ナビゲーション装置30及びセンサ群40から得られた情報に基づいて、目標操舵量を決定し、決定した目標操舵量を操舵制御装置19に出力する。従って、車両VEは、運転者によるステアリングホイール11の操作がなくとも、車両制御装置50により、左右方向への移動が可能になっている。
図2は、合流車線と本線車線との合流区間を示す模式図である。図2において、図1の車両VEは、他の車両と区別するため、自車両VLとして表されている。自車両VLは、合流車線91を走行している。合流車線91は、本線車線92に接続されている。本線車線92は、片側2車線の道路として、区画線93によって区画されている。本線車線92の2車線のうち、合流車線91と接していない車線は、追い越し車線である。
合流車線91及び本線車線92に印されている複数のドットは、複数の地図ノードNMを表している。各地図ノードNMには、各地図ノードNMにおける絶対位置情報、即ち、各地図ノードNMの緯度、各地図ノードNMの経度、及び各地図ノードNMの標高が割り当てられている。
合流区間S1は、合流開始点P1と合流終了点P2との間の区間として定義されている。本線車線92の方向と平行な方向において、合流終了点P2の位置は、合流車線91の終端位置P3の位置と等しい。合流区間S1において、合流車線91と本線車線92とは接している。従って、自車両VLは、合流区間S1の間のいずれの地点においても、合流車線91から本線車線92へ移動可能である。つまり、合流区間S1は、自車両VLが、合流車線91から本線車線92に車線変更する区間である。
また、合流車線91の幅は、合流区間S1の途中から徐々に狭くなり、終端位置P3において、消失する。通行可能領域A1は、合流車線91の終端部において、自車両VLが通行走行可能な領域である。図2では、通行可能領域A1は、合流車線91の幅が狭くなり始める地点から、終端位置P3までの範囲の合流車線91上の三角形の領域として定義されている。
なお、図示しないが、三角形の領域内に停車車両、障害物等が存在する場合、停車車両、障害物等によって自車両VLが通行できない領域は、通行可能領域A1から除外される。
車両制御装置50は、操舵制御装置19を用いて、自車両VLを車線変更させることができる。この場合、車線変更とは、自車両VLの合流車線91から本線車線92へ移動のことである。車両制御装置50による車線変更は、以下、合流制御とも呼ばれる。
図3は、実施の形態1に係る車両走行経路生成装置を示すブロック図である。図3において、図1に示した要素と同一の要素には、同一の符号が付されている。
実施の形態1に係る車両走行経路生成装置60は、機能ブロックとして、合流区間情報取得部61と、測位部62と、地図情報取得部63とを備えている。また、車両走行経路生成装置60は、合流区間走行検知部64と、合流完了判定部65と、終端到達時間予測部66と、通行可能領域算出部67と、本線車線情報取得部68と、目標合流経路生成部69とを備えている。さらに、車両走行経路生成装置60は、合流車線追従経路生成部70と、走行軌跡推定部71と、車両状態量取得部72とを備えている。
合流区間情報取得部61は、合流区間情報を取得する。合流区間情報は、合流区間S1の状況に関する情報である。例えば、合流区間情報取得部61は、前方カメラ42の出力信号及び周辺レーダ43の出力信号に基づいて、合流区間S1における道路上に設けられている区画線を検知する。また、合流区間情報取得部61は、自車両VLの周辺に存在する地物の種類及び地物の大きさを検知する。また、合流区間情報取得部61は、自車両VLと地物との間の距離を検知する。
測位部62は、GNSSセンサ41の出力信号及び走行軌跡推定部71の出力信号に基づいて、自車両VLの位置を測位する。測位部62は、測位した結果を、測位情報として、合流区間走行検知部64、合流完了判定部65、終端到達時間予測部66、通行可能領域算出部67、本線車線情報取得部68、目標合流経路生成部69、及び合流車線追従経路生成部70に出力する。
地図情報取得部63は、ナビゲーション装置30から、自車両VLの走行ルートに関する情報及び地図ノードデータを取得する。走行ルートとは、例えば、今回のトリップにおいて、自車両VLが出発地から目的地までを走行するときの経路である。
合流区間走行検知部64は、自車両VLの位置情報、地図ノードデータ、自車両VL周辺の区画線に関する情報、地物の種類に関する情報、及び自車両VLと地物との間の距離に関する情報に基づいて、自車両VLが、合流区間S1を走行していることを検知する。
合流区間走行検知部64は、例えば、地図ノードデータの区間種別及び地図ノードデータによる道路形状から、合流開始点及び合流終了点の地図上における座標を特定する。合流区間走行検知部64は、特定された座標と自車両VLの位置とに基づいて、自車両VLが合流区間を走行していることを検知する。
また、合流区間走行検知部64は、合流車線91の区画線と本線車線92の区画線との間の位置関係に基づいて、自車両VLが合流区間を走行していることを検知してもよい。さらに、合流区間走行検知部64は、合流車線91と本線車線92との間の区画線の種類又は合流車線91と本線車線92との間のゼブラゾーンの種類に基づいて、自車両VLが合流区間を走行していることを検知してもよい。
合流完了判定部65は、自車両VLが、車線変更を完了したか否かを判定する。
また、合流完了判定部65は、合流進行度を検知する。合流進行度とは、自車両VLが、合流開始位置から合流完了位置までの間において、合流のための車両制御が、どの程度進行しているかを表す指数である。例えば、合流進行度は、自車両VLの位置に関する情報、地図ノードデータ、自車両VL周辺の区画線に関する情報、及び自車両VL周辺の地物に関する情報に基づいて算出される。また、合流開始位置とは、自車両VLが合流開始点P1を通過したときの自車両VLの位置である。合流完了位置とは、自車両VLが合流終了点P2を通過したときの自車両VLの位置である。
また、合流完了判定部65は、合流進行度だけでなく、合流開始位置及び合流完了位置を検知する。合流完了判定部65は、自車両VLの位置情報と、地図ノードデータと、自車両VL周辺の区画線に関する情報と、自車両VL周辺の地物に関する情報とに基づいて、自車両VLの合流開始位置及び自車両VLの合流完了位置を検知する。
終端到達時間予測部66は、自車両VLの位置情報と、地図ノードデータと、自車両VL周辺の区画線に関する情報と、自車両VL周辺の地物に関する情報と、自車両VLの速度と、自車両VLの加速度とに基づいて、終端到達時間を予測する。終端到達時間は、自車両VLが、現在走行している位置から合流区間S1の終端位置P3に到達するまでの時間である。
より具体的に述べると、終端到達時間予測部66は、まず、終端位置P3の位置及び自車両VLと終端位置P3との間の距離を特定する。終端位置P3の位置及び自車両VLと終端位置P3との間の距離の特定は、自車両VLの位置と、地図ノードデータと、自車両VL周辺の区画線に関する情報と、自車両VL周辺の地物の種類と、自車両VLと自車両VL周辺の地物との間の距離に基づく。
次に、終端到達時間予測部66は、自車両VLと終端位置P3との間の距離と、自車両VLの速度と、自車両VLの加速度とに基づいて、終端到達時間を予測する。終端到達時間は、例えば、運動方程式から予測される。運動方程式は、自車両VLの運動を、等速運動又は等加速度運動と仮定することにより得られる。
通行可能領域算出部67は、合流区間情報に基づいて、通行可能領域A1を算出する。合流区間情報には、自車両VLの位置情報、地図ノードデータ、自車両VL周辺の区画線に関する情報、自車両VL周辺の地物の種類に関する情報、及び自車両VLと自車両VL周辺の地物との間の距離が含まれる。
本線車線情報取得部68は、自車両VL周辺の区画線に関する情報と、本線車両VRの位置と、本線車両VRの速度と、自車両VLの位置情報と、地図ノードデータとに基づいて、本線車線情報を取得する。本線車両VRは、本線車線92を走行している他車両である。本線車線情報は、本線車両VRの位置情報、本線車両VRの速度情報、及び本線車両VRの向きに関する情報を含む情報である。
目標合流経路生成部69は、合流期間において、以下の情報に基づいて、目標合流経路を周期的に生成する。目標合流経路は、目標となる車線変更の経路である。また、目標合流経路生成部69は、生成した目標合流経路を、出力経路切替部82を介して操舵量演算部83に出力する。
合流期間は、合流区間走行検知部64によって自車両VLが合流車線91を走行していることが検知されてから、合流完了判定部65によって自車両VLが車線変更を完了したと判定されるまでの期間である。
目標合流経路の生成に用いられる情報には、自車両VL周辺における区画線の位置、自車両VL周辺における区画線の種類、自車両VLの位置、地図ノードデータ、及び自車両VLが合流車線91を走行していることについての検知結果が含まれる。目標合流経路の生成に用いられる情報には、さらに、合流進行度、終端到達時間、通行可能領域A1、及び本線車線情報が含まれる。
また、目標合流経路の形状及び目標合流経路の性質は、終端到達時間と、通行可能領域A1と、本線車線情報とに基づいて変更される。
目標合流経路の性質は、例えば、終端到達時間に影響を受ける。車線変更に要する時間は、終端到達時間が短いほど、短くされる必要がある。例えば、自車両VLを加速させることなしに、車線変更に要する時間を短くするには、操舵角をより大きくする必要がある。従って、目標合流経路は、終端到達時間が短い場合、操舵角が比較的大きいという性質を有する。
また、目標合流経路の性質は、例えば、本線車線情報に影響を受ける。自車両VLに対し、本線車両VRが並走している状況では、本線車両VRを避けるように車線変更する必要があるため、目標合流経路は、自車両VLの位置と本線車両VRの位置とに応じて変化し易いという性質を有する。
より具体的に述べると、目標合流経路を生成するために、目標合流経路生成部69には、経路切替時間が設定されている。経路切替時間は、終端到達時間の長さに応じて、目標合流経路の形状及び目標合流経路の性質を切り替えるための基準となる時間である。目標合流経路生成部69は、終端到達時間が経路切替時間よりも短い場合、より短い時間で車線変更が完了するように、経路生成パラメータを変更して目標合流経路を生成する。経路生成パラメータには、例えば、操舵角δが挙げられる。
なお、経路生成パラメータは、終端到達時間が経路切替時間よりも短い場合において、終端到達時間が短いほど、車線変更に要する時間が短くなるように変更されてもよい。
また、目標合流経路生成部69は、本線車線情報に基づいて、本線車両VRを避けるように目標合流経路を生成する。目標合流経路を生成するための手法については、例えば、補間曲線の適用、グラフサーチ、サンプルベース、及び数値最適化が挙げられるが、経路生成手法としては、いずれの手法が用いられてもよい。
また、車線変更を行っている途中において、終端到達時間、通行可能領域A1、及び本線車線情報の少なくともいずれか1つが変化した場合、目標合流経路生成部69は、異なった性質又は異なった形状の目標合流経路を生成する。
目標合流経路生成部69は、合流進行度に基づいて、変化が発生した時刻の前後において、整合性のとれた目標合流経路を生成する。ただし、合流進行度が判定進行度を超えている場合、目標合流経路生成部69は、目標合流経路の性質及び目標合流経路の形状を変更しない。これにより、自車両VLの乗員に違和感を与えることなく、自車両VLの車線変更が行われる。
合流車線追従経路生成部70は、自車両VL周辺における区画線の位置情報と、自車両VL周辺における区画線の種類に関する情報と、自車両VLの位置情報と、地図ノードデータとに基づいて、合流車線追従経路を生成する。合流車線追従経路は、合流車線91の形状に沿った走行経路である。つまり、合流車線追従経路は、合流車線91についての地図ノードNMに沿った走行経路である。
合流車線追従経路を生成するための手法については、目標合流経路を生成するための手法と同様である。
走行軌跡推定部71は、合流区間情報取得部61から取得される情報又は車両状態量取得部72から取得される情報に基づいて、自車両VLの走行軌跡を推定する。
合流区間情報取得部61から取得される情報に基づいた自車両VLの走行軌跡の推定方法は、以下の通りである。例えば、走行軌跡推定部71は、前方カメラ42による区画線の検知結果と、地図ノードデータに含まれる区画線情報とを比較することで、自車両VLの走行軌跡を推定する。
また、走行軌跡推定部71は、周辺レーダ43による道路縁の検知結果と、地図ノードデータに含まれる道路縁情報とを比較することで、自車両VLの走行軌跡を推定してもよい。道路縁は、例えば、道路の側壁及びガードレールである。
一方、車両状態量取得部72から取得される情報に基づいた自車両VLの走行軌跡の推定方法は、以下の通りである。走行軌跡推定部71は、車速センサ44、ジャイロセンサ45、加速度センサ46、及び操舵角センサ47からの出力に基づいて、自車両VLのヨーレート及び自車両VLの走行速度を取得する。そして、走行軌跡推定部71は、カルマンフィルタを用いて自車両VLのヨーレート及び自車両VLの走行速度から自車両VLの移動量を算出し、算出した自車両VLの移動量から自車両VLの走行軌跡を推定する。
車両状態量取得部72は、車速センサ44、ジャイロセンサ45、加速度センサ46、及び操舵角センサ47から、自車両VLの車両状態量を取得する。車両状態量には、例えば、車速V、前後加速度、横加速度、ヨーレート、及び操舵角が含まれる。
合流可否判定部81は、終端到達時間と、本線車線情報と、目標合流経路とに基づいて、合流可能であるか、又は合流不可であるかを判定する。合流可能とは、合流のための車両制御、即ち、車線変更が実行可能であることを意味する。また、合流不可とは、車線変更が実行不可能であることを意味する。
車両走行経路生成装置60には、合流判定有効時間が設定されている。合流判定有効時間は、合流可否判定部81による合流可否の判定が有効な時間と無効な時間との間のしきい値となる時間である。合流可否判定部81は、あるタイミングにおいて、合流不可と判定した場合であっても、終端到達時間が、合流判定有効時間を下回らない限り、次回の演算実行タイミングにおいて、再度、合流可否の判定を行う。
より具体的に述べると、合流可否判定部81は、本線車線情報から本線車両VRの位置及び本線車両VRの速度、及び本線車両VRの向きを取得し、将来における本線車両VRの位置を予測する。
合流可否判定部81は、目標合流経路上に、仮想的なスペースを設ける。この仮想的なスペースの一部が、本線車両VRの予測位置と重なっている場合、目標合流経路に基づく合流可否の判定を合流不可とする。
出力経路切替部82には、合流車線追従経路生成部70により生成された合流車線追従経路の情報と、目標合流経路生成部69により生成された目標合流経路の情報と、合流可否判定部81による合流可否の判定の結果とが入力される。出力経路切替部82は、合流車線追従経路と、目標合流経路と、合流可否の判定の結果とに基づいて、車両制御装置50が出力する出力経路を切り替える。
より具体的に述べると、合流可否の判定の結果が「合流可能」である場合、出力経路切替部82は、目標合流経路の情報を操舵量演算部83に出力する。一方、合流可否の判定の結果が「合流不可」である場合、出力経路切替部82は、合流車線追従経路の情報を操舵量演算部83に出力する。
操舵量演算部83は、出力経路切替部82から出力される出力経路に自車両VLを追従させるための目標操舵角を演算する。目標操舵角の演算方法としては、公知の演算方法が用いられる。公知の演算方法には、例えば、前方注視点における横偏差のフィードバックによる演算方法及びMPC(Model Predictive Control)による演算方法が挙げられる。
制御停止部84は、操舵制御装置19における自動操舵制御を停止させる。より具体的に述べると、制御停止部84は、電動モータ17に対するモータ電流指令値に乗じるための補正係数を演算する。ここで、補正係数は、0から1までの値をとる係数である。
モータ電流指令値は、操舵制御装置19において演算される操舵角δを目標操舵角δ*に追従させるための指令値である。従って、モータ電流指令値に、1よりも小さい補正係数を乗じることにより自動操舵制御を停止させる。例えば、補正係数の値が1のとき、モータ電流指令値は維持され、自動操舵制御は継続される。また、補正係数が0のとき、モータ電流指令値は0となり、自動操舵制御は完全に停止される。
制御停止部84は、合流可否の判定の結果が「合流不可」となった場合、補正係数の値を1から0へ漸減させる。これにより、制御停止部84は、自動操舵制御を、違和感無く停止させることができる。
例えば、図2に示すように、合流車線91から本線車線92への合流が存在する地点では、前方カメラ42及び周辺レーダ43によって、本線車両VRを検知し、検知結果に基づいて、合流可否の判定を行う必要がある。
しかし、合流車線91上の位置において合流可否の判定及び目標合流経路の生成を行う場合、自車両VLが合流車線91を走行した場合に発生し得る本線車線92における状況の変化に対応できないと、自動合流の実行可能性を低下させることにつながる。
図4は、自車両VLが合流車線91上の合流区間に進入したとき、本線車線92上を本線車両VRが走行している状況を示す模式図である。この例では、生成された目標合流経路TRが、本線車両VRの未来における予測位置VRPと重なっている。この場合、車両走行経路生成装置60は、合流不可と判定するか、又は、本線車両VRを避けるような目標合流経路を生成する必要がある。
図5は、自車両VLが合流車線91上の合流区間に進入した後、本線車両VRが本線車線92の追い越し車線側へ移動を開始している状況を示す模式図である。このように、実際の交通状況においては、本線車両VRの運転者が、自車両VLの合流区間への進入を認識し、本線車両VRを追い越し車線側へ移動させることが考えられる。また、図示しないが、本線車両VRの運転者が、自車両VLの合流区間への進入を認識し、本線車両VRを加速又は減速させることも考えられる。
このように、目標合流経路生成部69は、本線車線92の状況が変化し、実際には合流制御が実行可能な状況になったとしても、図4に示した時点における合流可否の判定に従うことなく、より適切な合流可否の判定及びより適切な目標合流経路の生成が可能である。
また、図4に示した時点において、本線車両VRを避けるように生成された目標合流経路TRの性質は、本線車両VRが存在しない場合に生成される目標合流経路TRの性質とは異なる。従って、本線車線92の状況が変化し、目標合流経路TRの生成において考慮すべき本線車両が存在しなくなったにもかかわらず、本線車両を避けるように生成された目標合流経路を自車両VLが追従したとすると、自車両VLの乗員に違和感を与える可能性がある。
しかし、実施の形態1に係る車両走行経路生成装置60によれば、自車両VLが車線変更を行っていても、目標合流経路を周期的に生成するので、一旦、本線車両VRを避けるように生成された目標合流経路は、その後の状況の変化に応じて変更される。従って、自車両VLの乗員に与える違和感を低減させることができる。
図6は、図3の車両走行経路生成装置60が実行する目標合流経路生成ルーチンを示すフローチャートである。図6のルーチンは、例えば、自車両VLのイグニッションスイッチがオンされることにより開始され、一定時間が経過する毎に実行されるようになっている。
また、以下において、合流区間走行フラグX1の値及び合流未完了フラグX2の値は、イグニッションスイッチがオンになったときにそれぞれ「0」に初期化される。
図6のルーチンが開始されると、車両走行経路生成装置60は、ステップS101において、合流区間走行フラグX1の値が「0」であるか否かを判定する。現時点において、合流区間走行フラグX1の値は「0」である。従って、次に、車両走行経路生成装置60は、ステップS102において、合流未完了フラグX2の値が「0」であるか否かを判定する。
現時点において、合流未完了フラグX2の値は「0」である。従って、車両走行経路生成装置60は、ステップS103において、自車両VLが合流区間S1を走行しているか否かを判定する。
自車両VLが合流区間S1を走行していない場合、車両走行経路生成装置60は、本ルーチンを一旦終了する。つまり、この場合、目標合流経路は生成されない。
自車両VLが合流車線91を走行している場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS104において、合流区間走行フラグX1の値を「1」に設定する。次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS105において、終端到達時間が経路切替時間未満であるか否かを判定する。
終端到達時間が経路切替時間以上である場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS107において、経路生成パラメータを第1パラメータに設定する。終端到達時間が経路切替時間未満である場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS106において、経路生成パラメータを第2パラメータに設定する。
第2パラメータは、第1パラメータよりも、自車両VLを、より短い時間で車線変更させることができるように設定される。例えば、経路生成パラメータが操舵角δであった場合、第2パラメータとしての操舵角δ2は、第1パラメータとしての操舵角δ1よりも大きい。
次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS108において、第1パラメータ又は第2パラメータを用いて目標合流経路を生成する。そして、車両走行経路生成装置60は、ステップS109において、生成された目標合流経路を出力経路切替部82に出力する。
次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS110において、合流進行度が判定進行度以上であるか否かを判定する。合流進行度が判定進行度未満である場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS110において、「No」と判定し、本ルーチンを一旦終了する。
一定時間の経過後、再び、本ルーチンが開始されると、車両走行経路生成装置60は、ステップS101において、合流区間走行フラグX1の値が「0」であるか否かを判定する。現時点において、合流区間走行フラグX1の値は「1」に設定されているので、車両走行経路生成装置60は、ステップS101において「No」と判定する。
次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS105において、終端到達時間が経路切替時間未満であるか否かを判定する。
終端到達時間が経路切替時間以上である場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS107において、経路生成パラメータを第1パラメータに設定する。一方、終端到達時間が経路切替時間未満である場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS106において、経路生成パラメータを第2パラメータに設定する。
その後、車両走行経路生成装置60は、ステップS108において、目標合流経路を生成し、ステップS109において、生成した目標合流経路を出力経路切替部82に出力する。
このように、合流進行度が判定進行度未満である場合、車両走行経路生成装置60は、一定時間が経過する毎に、経路生成パラメータの設定、目標合流経路の生成、及び生成した目標合流経路の出力を繰り返す。
一方、合流進行度が判定進行度以上である場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS110において、「Yes」と判定し、ステップS111において、合流区間走行フラグX1の値を「0」に設定する。
次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS112において、合流が完了したか否かを判定する。合流が完了していない場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS112において、「No」と判定する。次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS114において、合流未完了フラグX2の値を「1」に設定して、本ルーチンを一旦終了する。
一定時間の経過後、再び、本ルーチンが開始されたとき、合流区間走行フラグX1の値は「0」であり、合流未完了フラグX2の値は「1」である。従って、車両走行経路生成装置60は、ステップS101において「Yes」と判定し、ステップS102において「No」と判定する。
次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS108において、目標合流経路を生成し、ステップS109において、生成した目標合流経路を出力経路切替部82に出力する。このように、合流進行度が判定進行度以上であり、且つ合流が完了していない場合、一定時間が経過する毎に、同一の経路生成パラメータを用いた目標合流経路の生成及び生成した目標合流経路の出力を繰り返す。
また、車両走行経路生成装置60は、ステップS112において、合流完了と判定すると、ステップS113において、合流未完了フラグX2の値を「0」に設定し、本ルーチンを一旦終了する。
次に、実施の形態1に係る車両制御装置50について説明する。実施の形態1に係る車両制御装置50では、合流可否判定部81において、合流不可と判定された場合でも、合流可能となるまで、一定時間が経過する毎に合流可否の判定が繰り返し行われる。言い換えると、合流可否の判定が保留される。
より具体的に述べると、合流可否判定部81は、以下の処理を一定時間が経過する毎に繰り返し実行する。
合流可否判定部81は、本線車線92の状況が合流可能条件を満たしている場合、出力経路切替部82に、目標合流経路生成部69によって生成された目標合流経路を操舵量演算部83に出力させる。ここで、合流可能条件とは、自車両VLの車線変更が可能な条件であり、合流可否判定部81によって、合流可能と判定される条件である。
また、合流可否判定部81は、本線車線92の状況が合流可能条件を満たしておらず、且つ終端到達時間が合流判定有効時間以上である場合、出力経路切替部82に、合流車線追従経路を出力させる。なお、合流判定有効時間は、自車両VLの合流可否の判定に関する値である。合流判定有効時間は、経路切替時間よりも短い時間に設定される。
また、合流可否判定部81は、本線車線92の状況が合流可能条件を満たしておらず、且つ終端到達時間が合流判定有効時間未満である場合、制御停止部84に、自動操舵制御を停止させる。
図7は、図3の車両制御装置50が実行する合流制御ルーチンを示すフローチャートである。図7のルーチンは、例えば、自車両VLのイグニッションスイッチがオンされることにより開始され、一定時間が経過する毎に実行されるようになっている。
図7のルーチンが開始されると、車両制御装置50は、ステップS301において、自車両VLが合流区間S1を走行しているか否かを判定する。
自車両VLが合流区間S1を走行していない場合、車両制御装置50は、本ルーチンを一旦終了する。つまり、この場合、車両制御装置50は、合流制御を実行しない。
自車両VLが合流区間S1を走行している場合、車両制御装置50は、ステップS302において、現在地点から合流可能であるか否かを判定する。現在地点から合流可能である場合、車両制御装置50は、ステップS303において、生成された目標合流経路を出力経路切替部82に出力し、本ルーチンを一旦終了する。つまり、この場合、車両制御装置50は、自車両VLの車線変更を実行する。
一方、現在地点から合流可能ではない場合、車両制御装置50は、ステップS304において、終端到達時間が合流判定有効時間未満であるか否かを判定する。
終端到達時間が合流判定有効時間以上である場合、車両制御装置50は、ステップS306において、生成された合流車線追従経路を出力経路切替部82に出力し、本ルーチンを一旦終了する。つまり、この場合、車両制御装置50は、合流不可と判定し、自車両VLの車線変更を実行しない。また、この場合、車両制御装置50は、一定時間の経過後に、合流可否の判定を行う。つまり、目標合流経路の出力を次の演算周期まで保留する。
また、終端到達時間が合流判定有効時間未満である場合、車両制御装置50は、ステップS305において、自動操舵制御を停止し、本ルーチンを一旦終了する。つまり、この場合、目標合流経路の出力が中止される。そして、自車両VLは、別途実行される安全走行制御に従って走行する。
以上のように、実施の形態1に係る車両走行経路生成装置60は、合流区間走行検知部64と、本線車線情報取得部68と、合流完了判定部65と、目標合流経路生成部69とを備えている。目標合流経路生成部69は、合流区間走行検知部64によって自車両VLが合流区間S1を走行していることが検知されてから、合流完了判定部によって自車両VLが車線変更を完了したと判定されるまで、目標合流経路を周期的に生成する。目標合流経路生成部69は、生成した目標合流経路を、操舵量演算部に出力する。
これによれば、目標合流経路が設定され、自車両VLの車線変更が開始された場合であっても、その後の本線車線における状況の変化に対応して、合流車線を走行している車両を、より適切に本線車線に移動させることができる。
また、実施の形態1に係る車両走行経路生成装置60は、終端到達時間予測部66をさらに備えている。また、目標合流経路生成部69には、経路切替時間が設定されている。目標合流経路生成部69は、終端到達時間が経路切替時間以上である場合、目標合流経路として、第1目標合流経路を生成する。一方、目標合流経路生成部69は、合流期間において、終端到達時間が経路切替時間未満である場合、目標合流経路として、第2目標合流経路を生成する。第2目標合流経路は、第1目標合流経路に沿って行われる車線変更に要する時間よりも短い時間で車線変更を完了させる経路である。
これによれば、合流車線91を走行している車両が、合流車線91の通行可能領域A1に近付いたとき、車線変更が、より短時間に行われる。このため、合流車線91を走行している車両の乗員に与える違和感を低減させることができる。
また、実施の形態1に係る車両走行経路生成装置60において、目標合流経路生成部69は、終端到達時間が短いほど、車線変更に要する時間を短くするように第2目標合流経路を設定する。このため、合流車線91を走行している車両の乗員に与える違和感を、より一層低減させることができる。
また、実施の形態1に係る車両制御装置50は、車両走行経路生成装置60と、合流可否判定部81とを備えている。また、車両走行経路生成装置60には、合流判定有効時間が設定されている。車両走行経路生成装置60は、合流可否判定部81により合流が可能であると判定されているとき、目標合流経路を操舵量演算部83に出力する。また、車両走行経路生成装置60は、合流可否判定部81により合流が不可であると判定されており、且つ終端到達時間が合流判定有効時間以上であるとき、目標合流経路の操舵量演算部83への出力を次の演算周期まで保留する。また、車両走行経路生成装置60は、合流可否判定部81により合流が不可であると判定されており、且つ終端到達時間が合流判定有効時間未満であるとき、目標合流経路の操舵量演算部83への出力を中止する。
従って、車両制御装置50は、自車両VLが合流区間S1の終端位置P3に接近するまで、合流可否の判定を繰り返し実行することになる。つまり、目標合流経路の出力が次の演算周期まで保留される。従って、実施の形態1に係る車両制御装置50によれば、本線車線92の状況変化及びセンサ群40の検知誤差に対応して、より適切に、自車両VLを本線車線92に移動させることができる。
なお、区画線の検知及び周辺環境の検知は、前方カメラ42及び周辺レーダ43の組合せによる検知に代えて、周辺カメラ及び前方レーダの組合せによって行われてもよい。また、区画線の検知及び周辺環境の検知は、周辺カメラ及びLiDAR(Light Detection and Randing)の組合せによって行われてもよい。
また、合流進行度の判定に用いられる情報は、合流進行度を検知可能な情報であれば、自車両VLの位置に関する情報、地図ノードデータ、自車両VL周辺の区画線に関する情報、及び自車両VL周辺の地物に関する情報に限られない。例えば、合流進行度は、車両状態量取得部72において取得されるヨーレート又は横加速度に基づいて検知されてもよい。また、合流進行度は、合流開始時点からの経過時間に基づいて検知されてもよい。
また、合流区間走行検知部64は、自車両VLが、合流車線91を走行していることを検知してもよい。つまり、自車両VLが合流区間を走行していることは、自車両VLが合流区間S1に進入する前に検知されてもよい。
また、合流開始位置は、自車両VLが合流車線91から本線車線92への移動を開始する位置、即ち、車線変更が開始される位置と定義されてもよい。また、合流完了位置は、自車両VLが本線車線92への移動を完了する位置、即ち、車線変更が完了する位置と定義されてもよい。
また、終端到達時間を予測する方法は、予測モデルを利用した方法でもよい。この場合、予測モデルは、自車両VLの運動に関する車両状態量の過去の履歴から、将来の車両状態量を予測すればよい。
また、経路切替時間及び合流判定有効時間は、予め定められた一定時間であったが、例えば、自車両VLの速度が高いほど短く設定されてもよい。また、経路切替時間と合流判定有効時間とは、等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る車両走行経路生成装置60について説明する。実施の形態2に係る車両走行経路生成装置60では、生成された目標合流経路が、通行可能領域A1から外れている場合、目標合流経路が通行可能領域A1から外れないように目標合流経路を変更する点が、実施の形態1と相違している。
目標合流経路が通行可能領域A1から外れていると判定した場合、目標合流経路が通行可能領域A1から外れないように目標合流経路を変更する点以外の構成は、実施の形態1と同様である。
実施の形態2に係る車両走行経路生成装置60において、目標合流経路生成部69は、算出された通行可能領域A1と、生成された目標合流経路とを比較する。
終端到達時間が経路切替時間未満である場合、目標合流経路生成部69は、経路生成パラメータを第2パラメータに設定したうえで、目標合流経路を生成する。
終端到達時間が経路切替時間以上であり、且つ生成された目標合流経路が通行可能領域A1から外れている場合、目標合流経路生成部69は、経路生成パラメータを第2パラメータに設定したうえで、目標合流経路を再び生成する。つまり、この場合、目標合流経路生成部69は、目標合流経路を変更する。
また、目標合流経路生成部69は、第2パラメータを用いて生成された目標合流経路が、通行可能領域A1から外れている場合、目標合流経路が通行可能領域A1から外れないように、目標合流経路を補正する。
ところで、図2に示す合流車線終端部に自車両VLが過度に接近した場合、自車両VLの乗員に違和感を与えることがある。目標合流経路が、合流車線91の終端位置P3に接近している場合、自車両VLの乗員に対して、自車両VLが、車線が消失する地点に向かって走行しているような感覚を与えてしまい、自車両VLの乗員による車両制御への不用意な介入を招く恐れがある。
しかし、実施の形態2に係る車両走行経路生成装置60によれば、自車両VL周辺の環境情報と、自車両VL周辺の地図情報とに基づいて、通行可能領域A1が算出される。そして、算出された通行可能領域A1に基づいて、生成された目標合流経路が補正される。このため、自車両VLの乗員による車両制御への不用意な介入を招く前に、より適切に目標合流経路を生成することができる。
図8は、実施の形態2に係る車両走行経路生成装置60が実行する目標合流経路生成ルーチンを示すフローチャートである。図8のルーチンは、例えば、自車両VLのイグニッションスイッチがオンされることにより開始され、一定時間が経過する毎に実行されるようになっている。
なお、図8のルーチンにおいて、図6のルーチンと同一のステップには同一のステップ番号が付されている。また、図6のルーチンと同一のステップについては、詳細な説明は省略される。
まず、合流区間走行フラグX1及び合流未完了フラグX2の値がともに「0」である場合、即ち、自車両VLが合流車線91を走行していない場合について説明する。この場合、図8のルーチンが開始されると、車両走行経路生成装置60は、ステップS103において、自車両VLが合流区間S1を走行中であるか否かを判定する。
次に、合流区間走行フラグX1の値が「1」である場合、即ち、自車両VLが合流区間S1を走行している場合について説明する。この場合、図8のルーチンが開始されると、車両走行経路生成装置60は、ステップS105において、終端到達時間が経路切替時間未満であるか否かを判定する。
終端到達時間が経路切替時間以上である場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS105において、「No」と判定し、ステップS107において、経路生成パラメータを第1パラメータに設定する。次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS203において、第1パラメータに基づいて、目標合流経路を生成する。
次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS204において、目標合流経路が通行可能領域A1から外れているか否かを判定する。目標合流経路が通行可能領域A1から外れていない場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS204において、「No」と判定し、ステップS109において、生成した目標合流経路を出力経路切替部82に出力する。
一方、目標合流経路が通行可能領域A1から外れている場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS204において、「Yes」と判定し、ステップS106において、経路生成パラメータを第2パラメータに設定する。次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS108において、第2パラメータに基づいて、目標合流経路を生成する。
次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS201において、目標合流経路が通行可能領域A1から外れているか否かを判定する。目標合流経路が通行可能領域A1から外れていない場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS201において、「No」と判定し、ステップS109において、生成した目標合流経路を出力経路切替部82に出力する。
一方、目標合流経路が通行可能領域A1から外れている場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS201において、「Yes」と判定し、ステップS202において、目標合流経路を補正する。そして、車両走行経路生成装置60は、ステップS109において、補正した目標合流経路を出力する。
次に、合流区間走行フラグX1の値が「0」であり、且つ合流未完了フラグX2の値が「1」である場合、即ち、前回実行されたルーチンにおいて、合流進行度が判定進行度以上であるが、合流は未だ完了していないと判定された場合について説明する。この場合、図8のルーチンが開始されると、車両走行経路生成装置60は、ステップS203において、最後に設定された経路生成パラメータに基づいて、目標合流経路を生成する。
次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS204において、目標合流経路が通行可能領域A1から外れているか否かを判定する。目標合流経路が通行可能領域A1から外れていない場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS204において、「No」と判定し、ステップS109において、生成した目標合流経路を出力経路切替部82に出力する。
一方、目標合流経路が通行可能領域A1から外れている場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS204において、「Yes」と判定し、ステップS106において、経路生成パラメータを第2パラメータに設定する。次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS108において、第2パラメータに基づいて、目標合流経路を生成する。
次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS201において、目標合流経路が通行可能領域A1から外れているか否かを判定する。目標合流経路が通行可能領域A1から外れていない場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS201において、「No」と判定し、ステップS109において、生成した目標合流経路を出力経路切替部82に出力する。
一方、目標合流経路が通行可能領域A1から外れている場合、車両走行経路生成装置60は、ステップS201において、「Yes」と判定し、ステップS202において、目標合流経路を補正する。次いで、車両走行経路生成装置60は、ステップS109において、補正された目標合流経路を出力経路切替部82に出力する。
ステップS110からステップS114までの各処理は、図6のルーチンにおける処理と同様であるため、これらの処理についての説明は省略される。
以上のように、実施の形態2に係る車両走行経路生成装置60は、目標合流経路が通行可能領域A1から外れているか否かを判定する。経路生成パラメータが第1パラメータに設定され、且つ目標合流経路が通行可能領域A1から外れている場合、車両走行経路生成装置60は、経路生成パラメータを第2パラメータに設定したうえで、目標合流経路を生成する。また、経路生成パラメータが第2パラメータに設定され、且つ目標合流経路が通行可能領域A1から外れている場合、車両走行経路生成装置60は、目標合流経路を補正する。
以上のように、実施の形態2に係る車両走行経路生成装置60は、合流区間情報取得部61と、通行可能領域算出部67とをさらに備えている。目標合流経路生成部69は、終端到達時間が経路切替時間以上であっても、生成した第1目標合流経路が、通行可能領域A1から外れている場合、第2目標合流経路を生成する。
障害物、工事等により通行可能領域A1の形状が一時的に変更されている場合、生成した第1目標合流経路が、通行可能領域A1から外れてしまうことが考えられる。これによれば、通行可能領域A1の形状が一時的に変更されている場合には、目標合流経路として、第2目標合流経路が生成され、自車両VLは、第2目標合流経路に沿って車線変更を行う。このため、合流車線91を走行している車両の乗員に与える違和感を、より低減させることができる。
さらに、目標合流経路生成部69は、生成した第2目標合流経路が、通行可能領域A1から外れている場合、通行可能領域A1のみを通るように第2目標合流経路を補正する。これにより、第2目標合流経路が、通行可能領域A1から外れることを抑制する。従って、合流車線91を走行している車両の乗員に与える違和感を、より低減させることができる。
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る車両走行経路生成装置について説明する。実施の形態3に係る車両走行経路生成装置60では、目標合流経路生成部69は、自車両VLが目標合流経路を走行するときに発生すると予想される自車両VLの状態量が、制限値を超えないように目標合流経路を生成する点において、実施の形態1と相違している。
上記相違点を除き、実施の形態3に係る車両走行経路生成装置60は、実施の形態1と同様である。
車両走行経路生成装置60には、自車両VLの状態量である車両状態量の制限値が設定されている。制限値は、例えば、急加速及び急ハンドルによって、自車両VLの乗員に違和感を与えないよう、車両状態量に設けられる上限値である。
目標合流経路生成部69は、以下の情報に基づいて、自車両VLが合流車線91から本線車線92への車線変更を行うための目標合流経路を生成する。目標合流経路の生成に用いられる情報には、自車両VL周辺における区画線の位置、自車両VL周辺における区画線の種類、自車両VLの位置、地図ノードデータ、及び自車両VLが合流車線91を走行していることについての検知結果が含まれる。目標合流経路の生成に用いられる情報には、さらに、合流進行度、終端到達時間、通行可能領域A1、本線車線情報、及び車両状態量が含まれる。
生成される経路は、終端到達時間と、通行可能領域A1と、本線車線情報とに基づいて、経路の形状及び経路の性質を変更する機能を有する。
図9は、実施の形態3に係る車両走行経路生成装置の目標合流経路生成部69による処理を説明するための模式図である。図9において、自車両VLは、合流開始点P1と、終端到達時間が経路切替時間と等しくなる地点P4との間の地点を走行している。
図10は、実施の形態3に係る車両走行経路生成装置の目標合流経路生成部69による処理を説明するための模式図である。図10において、自車両VLは、終端到達時間が経路切替時間と等しくなる地点P4と、終端到達時間が制限切替時間と等しくなる地点P5との間の地点を走行している。目標合流経路TR2は、図9の目標合流経路TR1と同じ形状及び同じ性質を有している。
目標合流経路生成部69には、制限切替時間と、第1状態量と、第2状態量とが設定されている。制限切替時間は、終端到達時間の長さに応じて、車両状態量の制限値を切り替えるための基準となる時間である。また、第1状態量は、自車両VLの状態量であり、第2状態量は、自車両VLの第1状態量よりも大きい状態量である。
目標合流経路TR3は、目標合流経路TR2に対して、より短い時間で車線変更を完了させることができる経路である。言い換えると、目標合流経路TR3は、車両状態量の制限値を緩和した場合に生成される目標合流経路である。
自車両VLが合流区間S1を走行している場合において、終端到達時間が経路切替時間よりも長い場合、即ち、自車両VLが合流開始点P1と地点P4との間を走行している場合、目標合流経路生成部69は、通常の方法で、目標合流経路TR1を生成する。
終端到達時間が経路切替時間よりも短く、且つ制限切替時間よりも長い場合、即ち、自車両VLが地点P4と地点P5との間を走行している場合、目標合流経路生成部69は、車両状態量の制限値を緩和したうえで、目標合流経路TR3を生成する。
従って、車両状態量として操舵角δの制限値を緩和すると、図10に示したように、目標合流経路TR3の形状は、車線と平行な方向において、目標合流経路TR2の形状よりも縮んだ形状となる。また、車線変更に要する時間が、目標合流経路TR2についての車線変更に要する時間よりも短くされる。
以上のように、実施の形態3に係る車両走行経路生成装置60において、目標合流経路生成部69は、終端到達時間が制限切替時間以上である場合、自車両VLが目標合流経路を走行するときに発生すると予想される車両状態量が、第1状態量を超えないように目標合流経路を生成する。また、目標合流経路生成部69は、終端到達時間が制限切替時間未満である場合、車両状態量が第2状態量を超えないように目標合流経路を生成する。
これによれば、自車両VLが乗員に与える違和感の低減と、自車両VLが乗員に与える快適性の向上とを両立させることができる。
また、実施の形態3に係る車両制御装置50において、車両走行経路生成装置60には、自車両VLの状態量の制限値が設定されている。そして、車両走行経路生成装置60は、自車両VLが目標合流経路を走行するときに発生すると予測される自車両VLの状態量が制限値を超える場合、目標合流経路の操舵量演算部83への出力を中止する。これによれば、自車両VLの状態量が制限値を超えたとき、目標合流経路の出力が中止されるので、自車両VLが乗員に与える違和感をより低減することができる。
なお、実施の形態1~3に係る車両走行経路生成装置60は、ステアリング軸12と、一対の操舵輪としての一対の前輪21とが、ラックアンドピニオン機構14により機械的に連結された操舵系10に適用されていたが、所謂ステアバイワイヤ方式の操舵系に適用されてもよい。
実施の形態1から実施の形態3までの各車両走行経路生成装置は、各機能が適宜組み合わされてもよい。
ここで、実施の形態1、2の操舵制御装置19及び車両制御装置50の各機能は、処理回路によって実現される。図11は、実施の形態1、2に係る操舵制御装置19及び車両制御装置50の各機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。第1の例の処理回路100は、専用のハードウェアである。
また、処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。また、操舵制御装置19及び車両制御装置50の各機能それぞれを個別の処理回路100によって実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路100によって実現してもよい。
また、図12は、実施の形態1、2に係る操舵制御装置19及び車両制御装置50の各機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。第2の例の処理回路200は、プロセッサ201及びメモリ202を備えている。
処理回路200では、操舵制御装置19及び車両制御装置50の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ202に格納される。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
メモリ202に格納されたプログラムは、上述した各部の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ202とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ202に該当する。
なお、上述した各部の機能について、一部を専用のハードウェアによって実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現するようにしてもよい。
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述した各部の機能を実現することができる。