特許法第30条第2項適用 平成30年6月21日に以下のウェブサイトで公開。https://www.sanki.co.jp, https://www.sanki.co.jp/news/2018/, https://www.sanki.co.jp/news/release/article254.html
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施による熱中症見守りシステムの全体構成を示している。本実施例の熱中症見守りシステムは、WBGT値に関する測定を行う複数の環境測定機1と、該環境測定機1との通信を行うと共にネットワーク8に接続するゲートウェイ機30と、対象区域における作業や管理に関わる人員6が個別に携行する携帯端末7とを備えている。各携帯端末7は、例えばスマートフォンやタブレットといった情報通信機器であり、個別にネットワーク8との通信が可能である。
また、本実施例の熱中症見守りシステムは、環境測定機1において取得された測定データを管理する管理端末5を備えている。管理端末5は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報通信機器であり、ルータ4から図示しないサーバを介してインターネット等であるネットワーク8に接続している。
環境測定機1は、対象区域内の適宜位置に設置され、各位置においてWBGT値に関する測定を行い、測定データをゲートウェイ機30を通じてネットワーク8に送信する。管理端末5では、前記測定データをネットワーク8から受信し、管理するようになっている。
また、環境測定機1は互いに通信を行い、取得した測定データや、あるいは管理端末5からネットワーク8を通じて各環境測定機1に送信される信号など、各種のデータを環境測定機1同士で互いに送受信するようになっている。こうして、複数の環境測定機1は、図1に示す如きメッシュ型の通信網を構築する。このようにすると、近い位置にある環境測定機1同士が相互に通信を行い、各種のデータをマルチホップ式に次々と伝達していくことで、ゲートウェイ機30から遠い環境測定機1により取得された測定データであっても確実にゲートウェイ機30へ届けることができ、また、管理端末5から送られるデータ等についても、ゲートウェイ機30から遠い環境測定機1まで確実に届けることができる。
本実施例の如き熱中症見守りシステムは、例えば建築現場などに適用されることが想定されるが、こうした現場においては、各機器同士の距離が離れていたり、各機器間に多数の障害物等が存在し、良好な通信状態を得ることが難しい場合がある。そういった場合に、本実施例のように各環境測定機1同士でデータをやりとりできるようにすれば、安定した通信を確保することができるのである。
例えば、図2は本発明の参考例による熱中症見守りシステムの全体構成を示している。本参考例の熱中症見守りシステムでは、ツリー型の通信網を採用しており、各環境測定機1同士は相互に通信を行わず、親機2または中継機3と通信するようになっている。親機2は、ネットワーク8に接続すると共に各環境測定機1との通信を行う装置であり、中継機3は、親機2と環境測定機1との通信を中継する装置である。親機2と環境測定機1の距離が離れている場合や、親機2と環境測定機1の間に障害物があるなど、親機2と環境測定機1の間で直接電波をやりとりすることが困難な場合に、中継機3を介することで通信状態を確保するための構成である。しかしながら、実際の建築現場等においては、このように中継機3を用いたとしてもなかなか良好な通信状態が得られない場合がある。そして、仮に一個の中継機3において何らかの通信障害が発生した場合、その下流にあたる環境測定機1の全台にデータが届かないという弱点も抱えている。そこで、図1に示す実施例の如く、環境測定機1同士で通信を行うメッシュ型の通信網を採用すると、仮に一部の環境測定機1間に通信障害が発生しても、別の環境測定機1によりデータを送受信することが可能である。こうして、通信網に冗長性を持たせ、通信の確実性をいっそう高めることができる。
本実施例では、図1に示す如く、熱中症管理の対象区域として、対象区域A1~A3を設定している。各対象区域A1,A2,A3では、携帯端末7を携行した人員6が各種の活動を行うと共に、各対象区域A1,A2,A3内にそれぞれ環境測定機1が配置される。
対象区域A1~A3としては、例えば工事現場や農場のような屋外であっても良いし、上述した建設現場や工場、医療施設等の各フロアあるいは各部屋等、種々の作業場所を想定することができる。無論、例えば対象区域A1~A3のうち、一部が屋外、その他が屋内であっても良い。また、対象区域の数はここに示した数に限定されず、対象区域として任意の数ないし種類の領域を設定することができる。
本実施例の場合、対象区域A1に環境測定機1a~1dの4台の環境測定機1を配置し、対象区域A2,A3にはそれぞれ環境測定機1e及び環境測定機1fの1台ずつの環境測定機1を配置している。また、対象区域A1には携帯端末7a~7eをそれぞれ携行した5人の人員6a~6eが、対象区域A2には携帯端末7f,7gをそれぞれ携行した2人の人員6f,6gが、対象区域A3には携帯端末7hを携行した1人の人員6hが配置されている。
各人員6は、携わる業務の内容により互いに区分される。ここでは、各人員6に付された階級、及び各人員6の所属グループが、「区分」の具体例に相当する。そして、本実施例の熱中症見守りシステムでは、各人員6に付された業務上の区分に、システムにおける区分を対応させている。
対象区域A1に作業者として配置されている人員6a~6dのうち、人員6a~6cの3人は末端の作業者であり、人員6dは他の人員6a~6cの作業を統括する現場職長である。また、対象区域A2,A3に作業者として配置されている人員6f~6hのうち、人員6f,6hの2人は末端の作業者であり、人員6gは他の人員6f,6hの作業を統括する現場職長である。
人員6eは、対象区域A1~A3における各環境測定機1をはじめとしたシステムの管理運用を統括する管理者である。尚、図1中では人員6eは対象区域A1に配置されているが、管理対象は対象区域A1~A3の全域である。また、対象区域A1~A3外の管理区域M1に配置されている人員6iは、管理区域M1に設置された管理端末5にてシステムの管理運用を行う。管理区域M1としては、例えば対象区域A1~A3の近傍に設置された事務所等が想定される。
ここでは、上述の如く各々階級を付された人員6について、末端の作業者である人員6a~6c及び人員6f,6hを第一レベル人員、該第一レベル人員の作業を統括する作業者である人員6d及び人員6gを第二レベル人員と称する。また、対象区域A1~A3にてシステムの管理運用を行う人員6eを第三レベル人員、管理区域M1にてシステムの管理運用を行う人員6iを第四レベル人員と称することとする。
また、各対象区域A1,A2,A3に作業者として配置されている人員6は、それぞれ担当する対象区域に応じてグループ分けされている。ここでは、対象区域A1に配置されている人員6a~6dの所属グループを第一グループ、対象区域A2に配置されている人員6f,6gの所属グループを第二グループ、対象区域A3に配置されている人員6hの所属グループを第三グループとそれぞれ称することとする。第一グループは人員6dが統括し、第二および第三グループは人員6gが統括する。
尚、ここでは人員6のうち作業者にあたる一部のみをグループ分けした場合を例に説明しているが、作業や管理の規模その他の条件によっては、管理者にあたる人員6をグループ分けすることもできるし、また、関係する人員6の全員について所属グループを設定しても良いことは勿論である。このように、人員6のグループ分けは、現場の態様等に応じて自由に設定して良い。また、階級についても同様である。
また、区分としての階級及びグループ分けは、必ずしも両方が必要なものではなく、業務の態様等によってはいずれか一方のみが設定されていても良い。あるいは、ここに示したような階級やグループによる区分に代えて、もしくは加えて、種々の区分を人員6に対して設定しても良い。
また、対象区域A1~A3内における環境測定機1の設置台数や、対象区域A1~A3内外の携帯端末7ないし人員6の配置数、管理端末5の設置数等は、ここに示した例に限定されず、対象区域の広さやその他の実態に応じて適宜増減し得る。
図3は本実施例におけるシステム系統図である。各環境測定機1は、設置された場所の周辺においてWBGT値に関する測定を行い、取得した測定データを無線でゲートウェイ機30に送信する。ゲートウェイ機30から離れた環境測定機1がある場合、該環境測定機1にて取得された測定データは別の環境測定機1を次々に経由してゲートウェイ機30に送信される。ゲートウェイ機30からは、各環境測定機1から収集した測定データをルータ4を介して管理端末5に無線で送信する。
各環境測定機1の測定するデータは、ここでは温度、相対湿度及び黒球温度であり、後述するように、温度と相対湿度から管理端末5にて乾球温度と湿球温度を求めるようになっている。ただし、センサとしての環境測定機が測定するデータの具体的な内容はこれに限定されない。例えば、乾球と湿球及び黒球を備え、乾球温度、湿球温度及び黒球温度を各自で直接測定するタイプのWBGTセンサを環境測定機として利用しても良い。その他、WBGT値を適切に把握できる限りにおいて、本発明には種々のセンサを利用し得る。例えば、上記特許文献1、2等に記載のセンサを適用しても良い。
パーソナルコンピュータ等の情報通信機器である管理端末5は、ルータ4を介してネットワーク8やゲートウェイ機30との通信を行う通信部9のほか、各種の情報を格納する記憶部10、各種の計算や判定を行う演算部11、各種の情報やユーザインタフェース等を表示する液晶画面等である表示部12、ユーザからの指示を入力するキーボード等である入力部13を備えている。
管理端末5の記憶部10には、各環境測定機1の設置環境に基づいた補正値や、各環境測定機1の所属グループの割り当て等の情報が、環境測定機情報14として予め入力される。
環境測定機情報14は、例えば表示部12に図4に示す如く表示される入力画面にて入力部13から入力することができる。ここに示した例では、環境測定機情報14の入力画面は各環境測定機1の名称ないしIDを主キーとするテーブルにより構成されており、各環境測定機1毎に、所属グループ、設置場所が屋外か屋内か、着衣等の要因によりWBGT値に加算される補正値、各段階の警報を発令するWBGT値(以下、「警報値」と称する)、をそれぞれ入力できるようになっている。以下、順に説明する。
各環境測定機1の所属グループは、上述の作業者として各対象区域A1,A2,A3に配置された人員6のグループに対応している。すなわち、対象区域A1に配置された環境測定機1a~1dは第一グループに、対象区域A2に配置された環境測定機1eは第二グループに、対象区域A3に配置された環境測定機1fは第三グループに、それぞれ属している。図4に示す入力画面では、図示しない別の画面にて設定された選択肢から、プルダウンボタンにて所属グループを選択できるようになっている。
環境測定機1の設置場所が屋外か屋内かは、WBGT値を算出する計算式に関わる事項であるので、ここで設定しておく。すなわち、環境測定機1の設置場所が屋内であればWBGT値は湿球温度と黒球温度から算出されるが、屋外であれば湿球温度と黒球温度に加えて乾球温度が必要となるので、図4に示す画面にて環境測定機1毎に切り替えられるようになっている。尚、環境測定機1の設置場所が屋外であっても、日照のない場所ないし時間であれば屋内として入力する。図4に示した例では、環境測定機1の設置場所が日照のある屋外である場合にチェックボックスにチェックを入力するようになっている。
補正値は、湿球温度、黒球温度及び乾球温度に基づき算出された値に対し、各環境測定機1の周辺で作業する人員6の着衣等の条件によって加えられる値であり、図4に示す例では、各セルに直接数値を入力できるようになっている。通気性の高い綿や麻製の作業服等であればこの項目の入力値はゼロでよいが、特定の化学繊維製の衣服や不浸透性の作業服等の場合、着衣の種類に応じた補正値を加えて最終的なWBGT値とする必要がある。
警報値は、各環境測定機1の周辺における作業強度や、後述する各警報の送信の有無を判断する閾値であり、作業にあたる人員6における熱順化の有無、作業にあたって気流を感じるか否かといった条件により上下する。WBGT値に関しては、熱中症の注意レベルについて危険度の高い順に「危険」「厳重警戒」「警戒」「注意」「安全」の5段階が基準とされており、WBGT値が高いほど注意レベルは上昇する。そして、前記各段階に相当するWBGT値の範囲は、上記した作業強度、熱順化の有無、気流の有無といった諸要因により上下する。例えば、作業強度の高い重労働であれば、WBGT値自体が比較的低くても注意レベルが「厳重警戒」や「危険」に相当する場合があるし、また、気流を感じる条件下では、気流のない条件と比べて「厳重警戒」や「危険」に相当するWBGT値はやや上昇する。また、作業に従事する人員6が予め相当の期間にわたり暑熱下で作業し、熱に順化している場合、各注意レベルに相当するWBGT値は、順化していない場合と比較して高くなる。
本実施例の場合、WBGT値が「危険」「厳重警戒」「警戒」の各注意レベルにあると判断される場合に、後述する警報を各人員6の携行する携帯端末7に送信する(図1、図3参照)。そして、各注意レベルの警報を送信するにあたり、基準となるWBGT値を、前述の如き諸々の条件を勘案して「危険」「厳重警戒」「警戒」にあたる各セルに直接入力できるようになっている。
このように、本実施例では、各環境測定機1の設定は管理端末5を通して管理することができるようになっている。このため、例えば各環境測定機1を個別に操作して補正値等を入力するような手間は必要ない。
環境測定機情報14(図3参照)としては、この他に、各対象区域A1~A3における各環境測定機1の配置や、各環境測定機1の設置場所を撮影した画像、各環境測定機1に対応した個体情報等の情報が記憶される。また、ここに例示した以外にも、各環境測定機1や、該環境測定機1が設置される場所等に関連する種々の情報を環境測定機情報14として格納することができる。
記憶部10(図3参照)には、環境測定機情報14のほか、各人員6の携行する携帯端末7毎に、該携帯端末7のメールアドレスの情報や、各人員6の階級に関する情報、所属グループの割り当ての情報等が、人員情報15として予め入力される。すなわち、例えば携帯端末7aに関しては、対応する人員6aの階級は第一レベルであり、所属グループは第一グループである、といった情報が記憶されている。
人員情報15の入力は、例えば図5に示す如き入力画面にて入力することができる。ここに示した例において、人員情報15の入力画面は、グループをキーとし、各グループ毎に各人員6の携帯端末7のメールアドレスを入力できるテーブルとして構成されている。メールアドレスを入力する欄には、あわせて人員情報を入力できるようになっている。図5に示す入力画面を構成する表のうち、各行が概ね各人員6(図1参照)の所属グループに対応しており、例えば、第一グループに所属する人員6a~6dに対応する携帯端末7a~7dのメールアドレスが、第一グループに対応する一番上の行に入力されている。ただし、図5に示す入力画面では、所属グループに関しては柔軟性を持たせた設計となっており、各行が必ずしも各携帯端末7の所属グループに完全に対応しているわけではない。例えば、第二グループに所属する第二レベル人員である人員6gの携帯端末7g(図1参照)のメールアドレスが、第二グループに対応する上から二番目の行以外に、第三グループに対応する上から三番目の行にも入力されている。また、管理者である第三レベル人員6e及び第四レベル人員6iは、本実施例ではグループ分けされていないが、これらの人員6e,6iの携行する携帯端末7e,7iに関しては、いずれの行にもメールアドレスが入力されている。すなわち、いずれのグループ宛のメールも受信する設定になっている。このように、図5に示す人員情報15の入力テーブルでは、携帯端末7のメールアドレスをはじめ、同一の人員6に係る人員情報を複数の行にわたって登録することができる。
各携帯端末7のメールアドレスの入力にあたっては、各メールアドレス毎に階級を設定することができる。この階級は、各携帯端末7を携行する人員6の階級に対応している。図5に示す入力画面では、図示しない別の画面にて設定された選択肢から、プルダウンボタンにて各携帯端末7毎に階級を選択できるようになっている。
こうして、人員情報15に登録された各携帯端末7のメールアドレスには、それぞれグループと階級が紐付けられる。そして、管理端末5からネットワーク8を介して各人員6の携行する携帯端末7に各種の情報を送信するにあたっては、情報の内容に応じ、特定のグループや階級に対し、メールにて一斉に送信を行うことができる。例えば、第一グループに所属する第一レベル人員6a~6cに対し何らかの情報を報知する場合には、図5に示す画面の一番上の行に入力されている第一レベル人員6a~6cの携帯端末7a~7cに加え、第二レベル人員6dの携帯端末7d、さらに管理者である第三レベル人員6e及び第四レベル人員6iの携帯端末7e,7iに対してメールが送信される。本実施例の如き熱中症見守りシステムの場合、末端の作業者である第一レベル人員6a~6cに必要な情報を周知する場合は、それ以外に、上位の作業者である第二レベル人員6dや、管理者である第三、第四レベル人員6e,6iでも同じ情報を共有する必要があるからである。
また、ここに示した例では、第三グループに所属する第一レベル人員6hに対しメールを送信する場合、図5に示す表の上から三番目の行に入力されている第三グループに所属の第一レベル人員6hの携帯端末7hのほか、第二グループに所属する第二レベル人員6gの携帯端末7gにもメールが送信される。本実施例の場合、対象区域A3にて作業を行う人員は第一レベル人員6hのみとなっており、該第一レベル人員6hの作業の監督を第二グループに所属する第二レベル人員6gが担当しているためである。勿論、管理者である第三レベル人員6e及び第四レベル人員6iの携帯端末7e,7iに対しても同様にメールが送信される。
また、対象区域A1に関する情報について、管理者にあたる第三レベル以上の人員6にメールを送信する場合には、図5に示す表の一番上の行に入力されている第三、第四レベル人員6e,6iの携帯端末7e,7iに対してメールが送信される。例えば、対象区域A1に設置した各環境測定機1a~1dが取得した測定データを、特定の時刻に管理端末5にて取得ないし整理し、一部の人員6に報知するように設定されている場合、そうした定時の情報(以下、「定時情報」と称する)は、現場にて作業を行う作業者である第一レベル人員6a~6cや第二レベル人員6dが把握する必要はない。そこで、上位の管理者である第三レベル人員6eや第四レベル人員6iにのみ定時情報を報知するメールを送信するよう設定すれば良い。こうした情報の送信先の設定については、後に再度説明する。
このように、図5に示す入力画面の如き形式にて各携帯端末7毎に人員情報15を管理すれば、情報の送信先を管理するにあたって自由度及び利便性が高く、各人員6のレベル毎に最適化された情報を的確に送信することができる。
上に述べた定時情報の送信時刻は、表示部12(図3参照)に表示される図示しない送信時刻設定画面により設定することができる。定時情報の具体例としては、例えばその時刻における各環境測定機1の測定値やWBGT値、その日のWBGT値の推移をまとめたグラフ、その日にWBGT値が特定の注意レベルに達した環境測定機1やその時刻等、種々の情報が挙げられる。定時情報は、毎日決まった時刻に送信するよう設定しても良いし、また、所定の日時に一回だけ送信するよう設定することもできる。また、ある時間帯に所定の間隔(例えば、1時間)をおいて繰り返し送信するよう設定することもできる。逆に、対象区域A1~A3での作業を行わない日時等、ある日程のある時間帯には定時情報の送信を行わないよう設定することもできる。勿論、これらの設定を適宜併用することも可能である。
尚、ここに例示した以外にも、人員6ないし携帯端末7に関する各種の情報を、人員情報15として記憶部10に格納することができる。その他、記憶部10には、後述する環境情報25のほか、環境測定機情報14や人員情報15以外の種々の図示しないデータを格納することができる。例えば、上述の定時情報の送信時刻の設定等は、図示しないその他のデータに含まれる。
また、ここでは管理端末5から各携帯端末7に対し、各種情報の送信をメールにて行う場合を例に説明したが、携帯端末7への情報の送信は必ずしもメールによらなくても良い。各人員6が必要な情報を受動的に受け取ることができる、プッシュ送信による送信であれば何でも良い。
測定データの取得を行う各環境測定機1としては、例えば図6、図7に記載の如き通信機能を備えたセンサを使用することができる。環境測定機1は、測定を行うセンサ部16と、アンテナを備えてデータの送受信を行う通信部17とで構成されている。センサ部16の外郭を構成する筐体18は、黒色の表面を有する黒球部18aと、略円錐形の複数の羽根板を重ねて構成される通気部18bを備えている。黒球部18aは、外面を黒く塗装された中空の球状の部品であり、内部には測定端子19が配置される。通気部18bは、筐体18の外側から内部への通気を確保しつつ、外側からの光を遮断するようになっており、内部に測定端子20が配置される。そして、測定端子19では黒球温度が測定され、測定端子20では乾球温度および相対湿度を測定するようになっている。
測定端子19,20により測定された黒球温度および温湿度のデータは、通信部17を介してゲートウェイ機30あるいは他の環境測定機1へ送信される(図1、図3参照)。この際、測定端子20の配置された部分では、通気部18bにより外からの光を遮り、測定端子20や該測定端子20周囲の筐体18の温度が光や輻射熱の照射によって上昇することを避けると共に十分な通気を確保することで、乾球温度及び相対湿度を正確に検出することができる。また、通信部17のアンテナは筐体18の外に配置されているので、アンテナを介したデータの送信を筐体18が妨げることはない。
上述の如き環境測定機1では、センサ部16にて取得した温度や相対湿度、黒球温度といった測定データが、通信部17から定期的に送信される。ここで、測定データが管理端末5に送信される際には、管理端末5側で環境測定機1を識別できるよう、各環境測定機1に固有の個体情報が一緒に送信される。測定データを送信する頻度は、要求されるデータの量や、各環境測定機1における消費電力等を勘案して適宜設定すれば良いが、WBGT値を監視するにあたっては、例えば10分おき程度とすれば好適である。
環境測定機1の電源としては、図示しない電池等を筐体18に内蔵しても良いし、光発電パネルやバッテリ装置を外付けしても良い。また、設置される対象区域の状況によっては、外部電源に接続できるよう、環境測定機1に電源ケーブルを備えても良い。
また、環境測定機1には、信号送信スイッチ24が設けられている。信号送信スイッチ24を押下すると、通信部17から、環境測定機1の個体情報を表示する指示信号がゲートウェイ機30(また、必要な場合には他の環境測定機1)を介して管理端末5へ送信される。この指示信号は、後述するように管理端末5において対象の環境測定機1を強調表示する際に使用される。
管理端末5では、上述の如き各環境測定機1にて測定された測定データを通信部9から受信し、乾球温度と相対湿度から湿球温度を求め、乾球温度、湿球温度及び黒球温度から、各環境測定機1周辺のWBGT値を算出する(図3参照)。WBGT値の算出にあたっては、環境測定機情報14から、各環境測定機1の設置場所が屋外か屋内か、及び、各環境測定機1毎に必要に応じて加えられる補正値を読み出して計算に用いる。この際、管理端末5は、記憶部10に格納された環境測定機情報14から、各環境測定機1の個体情報を読み出し、各環境測定機1から測定データと共に送信された個体情報と照合して環境測定機1を特定し、該環境測定機1と、該環境測定機1の取得した測定データや、該測定データから算出されるWBGT値とを紐付ける。測定データやWBGT値は、各環境測定機1と紐付けられ、時系列により整理されたテーブルで構成される環境情報25として記憶部10に格納される。
演算部11では、記憶部10に格納された環境情報25を随時読み出し、表やグラフを適宜作成して表示部12に表示させることができる。また、各環境測定機1の測定データから算出されるWBGT値が所定の各注意レベルに達した場合に、通信部9からネットワーク8を介して上述の如く各携帯端末7に対し警報を送信するほか、各種の情報を送信することができる。
管理端末5から各携帯端末7に送信すべき情報としては、例えば図8に示す如く、WBGT値に基づく「危険」「厳重警戒」「警戒」の注意レベルに応じた警報や、各環境測定機1にて定時に測定された測定値等を報知する定時情報、測定データに基づき管理端末5にて作成されたグラフ等の図表、後述する図10の如き状態表示画面の画像等の添付情報、各対象区域における環境測定機1の配置図、また、システムに何らかのエラー等が生じた際の警報(以下、「エラー情報」と称する)等が想定できる。そして、本実施例では、情報の内容や性質に応じ、特定のグループや階級に情報を振り分けて送信することができる。
例えば、対象区域A1(図1参照)に設置された環境測定機1a~1dのいずれかに関し、測定データから算出されたWBGT値が、予め設定された「危険」又は「厳重警戒」警報値(図4参照)以上に達した場合、図5にメールアドレスを示す各携帯端末7のうち、一番上の第一グループに対応する第一レベル以上の人員6の携帯端末7に対して警報が送信される。警報は、対象区域A1(図1参照)に作業者として配置された第一、第二レベル人員6a~6d、及び、管理者である第三、第四レベル人員6e,6iにメールで送信される。また、WBGT値が「警戒」警報値に達した場合の警報は、第二レベル以上の人員6の携帯端末7に送信されるようになっている。注意レベル「警戒」は、注意レベル「危険」及び「厳重警戒」と比較して緊急性は低いためである。尚、ここでは階級ないし所属グループに基づき、一部の人員6に対して警報を送信する場合を例に説明したが、対象区域の広さや作業の性質その他の条件によっては、関係する全人員に対して警報を送信するように設定しても良い。
警報のメールは、例えば図9に示す如き内容である。図9に示すメールでは、対象区域A1に設置された環境測定機1において注意レベルが「厳重警戒」に達したため、対象区域A1で作業を行う作業者に対し、熱中症への対策措置を行うよう勧告するメッセージが表示されている。このほか、各環境測定機1a~1dにおける測定データやWBGT値を表示する表、それらの数値を時系列で示すグラフ等をも添付することができるが、こうしたデータについては作業者である第一及び第二レベル人員6a~6dに知らしめる必要はない。したがって、対象区域A1で作業を行う第一及び第二レベル人員6a~6dに対しては本文のみを記載したメールを、管理者である第三及び第四レベル人員6e,6iに対しては添付ファイルとして図表をも含むメールを送信するといった使い分けもできる(図8参照)。
一方、例えばエラー情報は、現場である対象区域A1~A3や管理区域M1に配置された人員6a~6hではなく、最上位の第四レベル管理者6iが把握すべき情報である。システムにおいて何らかの障害等が発生した場合には、その発生箇所にかかわらず、第四レベル人員6iにのみシステム警報がメールで送信される(図8参照)。また、定時情報に関しては、作業者が把握する必要はないので、管理者である第三及び第四レベル人員6e,6iに対してのみ送信される。
環境測定機1の配置図とは、例えば、各対象区域A1~A3の見取図に、各環境測定機1の位置を手書き等により記入した画像である。この配置図を添付したメールは、末端の人員6や、他の対象区域の人員6が把握する必要はないので、該当の対象区域に配置された第二レベル人員(対象区域A1であれば、人員6d)と、第三及び第四レベル人員6e,6iに送信される。このような環境測定機1の配置に関するメールは、例えば、対象区域A1~A3における作業開始に先立ち、対象の人員6に送信しても良いし、例えば、警報のメールに添付する形で送信することもできる。
管理端末5から各携帯端末7への警報の送信に係るシステム上の具体的な手順を、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
センサである各環境測定機1では、上述の如く所定時間おき(例えば、10分毎)に測定データを取得し、ゲートウェイ機30あるいは他の環境測定機1を介して管理端末5に送信する(ステップS1)。管理端末5の演算部11(図3参照)では、乾球温度、相対湿度、黒球温度を基に、各環境測定機1におけるWBGT値を算出する。WBGT値の算出にあたっては、テーブルの形で記憶部10に格納された環境測定機情報14(図3、図4参照)から、各環境測定機1の該当する情報を読み出して用いる。算出したWBGT値は、各環境測定機1毎に紐付けられ、時系列によって整理されて環境情報25として記憶部10に書き込まれる(ステップS2)。
続いて、注意レベルの判定に移る。まず、ステップS3にて、対象区域A1~A3に設置された各環境測定機1に関し、算出された直近のWBGT値が「危険」警報値以上に達しているか否かの判定を行う。そして、「危険」警報値以上のWBGT値を示す環境測定機1があった場合、ステップS4に移行し、「危険」警報値以上のWBGT値を示した環境測定機1に対応するグループに所属する作業者である人員6、及びその管理者にあたる人員6が携行する携帯端末7に対し、警報等の情報を送信する。
警報を送信する対象の携帯端末7は、記憶部10に格納された環境測定機情報14を参照して決定する。上述の如く、環境測定機情報14は、図5に示す如きテーブルの形で入力されている。ここで、ステップS3において、対象区域A1(図1参照)に配置されている環境測定機1a~1dのうち少なくとも1台に関し、直近のWBGT値が「危険」警報値以上に達していると判定された場合を想定する。この場合、対象区域A1に対応する第一グループに所属する作業者である第一、第二レベル人員6a~6d、及び管理者である第三、第四レベル人員6e,6iに対して警報が送信される。すなわち、図5に示すテーブルの一番上の行に記載された携帯端末7a~7d,7e,7iのメールアドレスに、注意レベル「危険」を報知するメールが送信される。メールを受け取った各人員6a~6d,6e,6iは、各々熱中症に対して必要な対策を講じることができる。
この際、例えば、第一グループに所属する作業者である第一、第二レベル人員6a~6dの携帯端末7a~7dに対しては、対象区域A1に設置された環境測定機1にてWBGT値が注意レベル「危険」に達した旨や、各環境測定機1における直近のWBGT値を報じると共に、作業を中断して塩分や水分の補給等を行うことを指示する本文のみを送信する。一方、管理者である第三、第四レベル人員6e,6iの携帯端末7e,7iに送信するメールには、上記本文に加え、対象区域A1に設置された各環境測定機1a~1dにおける各測定値やWBGT値の直近の推移を示すグラフ等を添付する。また、現場にてグループを統括する第二レベル人員6d、及び管理者である第三、第四レベル人員6e,6iの携帯端末7d,7e,7iに対しては、対象区域A1における各環境測定機1の設置場所を記載した配置図をメールに添付し、対象区域A1内のどこでWBGT値が高いのかを把握できるようにしても良い。このような人員6の区分に応じた送信内容の割り振りは、上に説明したように図8に示す如き設定による。
ステップS4が終了したら、次回(本実施例の場合、10分後)の測定まで待機し、再度ステップS1から繰り返す。
ステップS3において、対象区域A1~A3に設置された全ての環境測定機1で直近のWBGT値が「危険」警報値未満であると判定された場合には、ステップS5に移行する。ステップS5では、各環境測定機1に関し、算出された直近のWBGT値が注意レベル「厳重警戒」以上に達しているか否かの判定を行う。「厳重警戒」警報値以上のWBGT値を示す環境測定機1があった場合、ステップS6に移行し、所定の携帯端末7に対して警報等の情報を送信する。情報を送信する対象の携帯端末7や、各携帯端末7に送信する情報の内容は、上述のステップS4と同様に決定すれば良い。
ステップS6が終了したら、次回の測定まで待機し、再度ステップS1から繰り返す。
ステップS5において、対象区域A1~A3に設置された全ての環境測定機1で直近のWBGT値が「厳重警戒」警報値未満であると判定された場合には、ステップS7に移行する。ステップS7では、各環境測定機1に関し、算出された直近のWBGT値が「警戒」警報値以上に達しているか否かの判定を行う。「警戒」警報値以上のWBGT値を示す環境測定機1があった場合、ステップS8に移行し、所定の携帯端末7に対して警報等の情報を送信する。
情報を送信する対象の携帯端末7や、各携帯端末7に送信する情報の内容は、上述のステップS4,S6と同様に決定すれば良い。ただし、本実施例の場合、注意レベル「警戒」の警報については、上述の如く第一レベル人員に対しては送信されない設定となっている(図8参照)。したがって、このステップS8では、注意レベル「警戒」の警報を、対象のグループの第二レベル人員と、第三、第四レベル人員6e,6iの携帯端末7に対して送信する。また、図表は第三、第四レベル人員6e,6iの携帯端末7に、環境測定機1の配置図は第二レベル人員及び第三、第四レベル人員6e,6iの携帯端末7に、それぞれ送信される。
ステップS8が終了したら、次回の測定まで待機し、再度ステップS1から繰り返す。こうして、各環境測定機1におけるWBGT値に基づき、注意レベルに応じた警報が特定の階級ないしグループに所属する人員6に報知される。
管理端末5では、上述の如く各携帯端末7に対し各情報をメールにて送信することができるほか、表示部12に図9のメールに添付される如き図表や、各環境測定機1の状態表示画面を表示させることができる。
環境測定機1の状態表示画面は、例えば図10に示す如く表示される。ここに示す例では、状態表示画面は表形式にて表示され、各行が各対象区域に対応している。各行のセルにはそれぞれ、各対象区域に設置された環境測定機1における最新のWBGT値が表示される。各セルの背景色は、各環境測定機1における最新のWBGT値に応じて色が変わるようにし、例えば、対応する環境測定機1にて算出されたWBGT値に基づく注意レベルが高いセルほど赤色に近い暖色で表示され、対応する環境測定機1における注意レベルの低いセルほど青色に近い寒色で表示すると良い。画面の右下には、各注意レベルに対応する背景色を示す凡例が表示されている(尚、図10では、色そのものについては図示を省略している)。こうして、状態表示画面では各環境測定機1におけるWBGT値が一覧表示され、状態表示画面を一見しただけで各対象区域A1~A3におけるWBGT値の状況が直感的に把握できるようになっている。尚、図10に示す如き状態表示画面は、特定のレベルの人員6の携帯端末7に対しメールにて送信しても良い(図5、図8参照)。
また、上述の如く、環境測定機1に備えた信号送信スイッチ24(図6参照)を押下すると、環境測定機1の個体情報を表示する指示信号が管理端末5へ入力される。その際、管理端末5の表示部12に図10に示す状態表示画面が表示されていると、管理端末5に入力された指示信号に対応するセルの色が変化する。例えば、環境測定機1aの信号送信スイッチ24を押下すると、該当の環境測定機1aに対応するセルが強調表示される。図10では、環境測定機1aに対応した左上のセルをハッチングにて図示しているが、この他にも、対応する環境測定機1のセルの色を変更したり、表示されている文字を太字にする等、強調表示の方法としては種々の方式を採用し得る。
このようにすると、図4に示す如き入力画面にて各環境測定機1の設定等を管理するにあたり、環境測定機1の実機と、状態表示画面とを対応させやすい。例えば、環境測定機1を移設するような場合には、該環境測定機1の所属グループを変更する必要が生じることがあるが、そうした場合に、信号送信スイッチ24の操作によって画面上の環境測定機1を実機と対応させることができ、便利である。
尚、各携帯端末7に対して通知する情報の内容や、管理端末5における表示は、上に説明した例に限定されず、適宜変更や追加、削除が可能である。図4、図5や図8、図10に示す如き画面や図表の具体的な仕様については、本発明を実施するにあたって適宜設計すれば良い。
このように、本実施例の熱中症見守りシステムでは、各所に設置した環境測定機1により、対象区域を一括で監視するようにしている。各人員が携行し又は対象区域に設置したセンサを個別に管理するような従来の仕組みでは、各センサから個別に測定データを読み取り、記録する必要があったため、データの収集に手間と時間がかかり、即時的な監視や対応が難しいという難点があった。本実施例によれば、例えば図10に示す如き状態表示画面を一見するだけで、対象区域全体の状況をほぼリアルタイムで把握することができ、個別のセンサの値を確認する手間や、各センサの設置場所を見て回るような手間は不要である。したがって、対象区域A1~A3内において熱中症が危惧されるような状況が生じた場合、管理者側から作業者側に対して迅速な対応を行うことが可能である。
また、現場の状況をリアルタイムで把握するのみならず、環境測定機1にて随時収集した測定データを時系列に沿って分析し、必要に応じて図表等にて把握することができる。こうすることで、管理者側でWBGT値の変動を予測し、実際にWBGT値が「厳重警戒」や「危険」といった注意レベルに達する前に、作業者を休ませたり、給水させる等の対策を取ることも可能である。また、各対象区域における環境測定機1の配置図と、各環境測定機1におけるWBGT値を互いに参照することで、設置場所に応じたWBGT値の高低や変動に関する傾向を把握するといったこともできる。環境測定機1では定期的に自動で測定データを取得しているので、蓄積した測定データを分析し、後の予測に繋げることが容易である。
一方、本実施例では、携帯端末7を携行する各人員6について階級やグループを設定し、該階級やグループに応じた情報をメールにて通知するようになっている。作業者にとっては、管理者や他のグループにのみ必要となるような情報は通知されず、自分自身あるいは自身の担当するグループの安全に関する情報を的確に受け取ることができる。作業者は不要な情報に煩わされることなく目的の作業を実行することができるので、作業効率を低下させるような心配がない。
また、作業者が自身でセンサを携行し、該センサの検出値を自ら確認するような従来の熱中症管理では、作業者が目先の作業に集中してセンサのチェックが疎かになってしまうような場合もあることが考えられる。本実施例の場合、WBGT値の監視自体は各人員6ではなく、各対象区域に設置された環境測定機1で行い、各人員6への注意喚起は携帯端末7へのプッシュ送信により行われる。各人員6にとっては自らWBGT値を監視するような手間もなく、注意レベルの上昇時には警報が携帯端末7に報知されるので、熱中症の回避に必要な処置を適時に講じることが容易である。
本実施例において、管理端末5の記憶部10に格納した環境情報25は、環境測定機情報14や人員情報15、その他の各種のデータと合わせ、表計算ソフト等を用いて適宜分析し、あるいは図表等を作成することができる。各環境測定機1の測定データを一つ一つ収集してデータに起こすような手間をかけることなく、僅かな操作で報告書等の管理資料を作成することができる。簡単な日報程度であれば、日毎に自動で作成するようにしても良い。
図12は本発明の実施による熱中症見守りシステムの別の配置例を示している。本配置例の場合、上述の如き対象区域A1~A3と管理区域M1とに設置された熱中症見守りシステム(図1参照)を1つの単位として、複数の現場に設置したシステムを現場横断的に管理するようになっている。すなわち、本配置例では、熱中症見守りシステムを設置する現場として、上述の対象区域A1~A3と管理区域M1のほか、対象区域B1~B4と管理区域M2、対象区域C1,C2と管理区域M3を設定しており、これら複数の現場のシステムを、管理区域M0に配置された管理端末50及び人員6j,6kにより統括している。尚、図12では、各現場に配置された環境測定機1やゲートウェイ機30、人員6や携帯端末7(図1参照)については図示を省略している。
管理端末50は、ネットワーク8を介して各現場の管理区域M1,M2,M3に設置された管理端末5,52,53と接続されており、各管理端末5,52,53を管理区域M0にて一元的に管理できるようになっている。すなわち、管理端末50は、各現場にて得た各種の情報を各管理端末5,52,53から吸い上げることができるほか、各管理端末5,52,53に対して各種のデータや指令等を送信することができる。あるいは、管理端末50が各現場の管理端末5,52,53を介することなく、各現場の環境測定機1やゲートウェイ機30(図1、図3参照)に対しネットワーク8を介して直接アクセスできるようにすることも可能である。
人員6j,6kは、必要に応じて携帯端末7j,7kを携行し、管理端末50から必要な情報が携帯端末7j,7kに対しプッシュ送信により通知されるようにしても良い。
また、管理端末50では、図10に示す如き状態表示画面に代えて、あるいは加えて、各行が各現場に対応し、各セルがそれぞれの現場における区域やグループに対応する状態表示画面を設定しても良い。
管理端末5に格納された環境情報25(図3参照)のほか、各現場から回収したデータは、ネットワーク8上のクラウドに保存しておけば、複数の現場を横断的に管理し、分析や支援等を上位の管理者側から行うことができる。環境情報25は容易に長期保存できるので、年度をまたぐような長いスパンにわたる分析も行いやすい。
以上のように、上記本実施例においては、対象区域A1~A3に設置され、周辺環境のWBGT値に関する測定を行い、且つマルチホップ式の通信により互いにデータを送受信する複数の環境測定機1と、該環境測定機1の測定した測定データを管理する管理端末5と、該管理端末5とネットワーク8を介して接続された携帯端末7とを備え、該携帯端末7を携行し、対象区域A1~A3における作業又は管理に関わる各人員6を区分し、携帯端末7に対し、該携帯端末7を携行する人員6の区分に応じてプッシュ送信により情報を送信するよう構成されると共に、環境測定機1における周辺環境のWBGT値が所定の注意レベルに達した際に、管理端末5から携帯端末7の少なくとも一部に対し警報を送信するよう構成されている。対象区域A1~A3各所に設置した環境測定機1により、対象区域A1~A3を一括で監視できるので、対象区域A1~A3全体の状況をほぼリアルタイムで把握することができ、個別のセンサの値を確認する手間や、各センサの設置場所を見て回るような手間は不要である。そして、対象区域A1~A3内において熱中症が危惧されるような状況が生じた場合には、管理者側から作業者側に対して迅速な対応を行うことが可能である。一方、作業者としての人員6にとっては、必要な情報を的確に受け取ることができ、不要な情報に煩わされることなく目的の作業を実行することができる。また、自らWBGT値を監視するような手間もなく、注意レベルの上昇時には警報が携帯端末7へのメールにより報知されるので、熱中症の回避に必要な処置を適時に講じることが容易である。また、環境測定機1同士の通信網をメッシュ型として通信に冗長性を持たせ、通信の確実性を高めることができる。
また、本実施例においては、前記区分として、階級及びグループの両方、又は階級とグループのいずれか一方を人員6に設定し、各携帯端末7に対し、該携帯端末7を携行する人員6の所属グループ又は階級に応じてプッシュ送信により情報を送信するよう構成されているので、各人員6にとっては、自分自身あるいは自身の担当するグループの安全に関する情報を的確に受け取ることができる。
また、本実施例において、管理端末5は、各環境測定機1におけるWBGT値を一覧表示する状態表示画面を表示可能に構成されているので、状態表示画面を一見するだけで、対象区域A1~A3全体の状況をほぼリアルタイムで把握することができる。
また、本実施例においては、環境測定機1に備えた信号送信スイッチ24を操作することにより、管理端末5に表示された状態表示画面において該当の環境測定機1を強調表示するよう構成されているので、環境測定機1の実機と状態表示画面とを容易に対応させることができ、便利である。
また、本実施例においては、管理端末5から携帯端末7の少なくとも一部に対し、特定の時刻に定時情報を送信するよう構成されているので、WBGT値に応じた警報に加え、定時情報を特定の人員6に報知することができる。
また、本実施例において、環境測定機1は、黒色の表面を有する黒球部18aと、外側から内部への通気を確保しつつ外側からの光を遮断するよう構成された通気部18bとを備えた筐体18と、黒球部18aの内部に配置された測定端子19と、通気部18bの内部に配置された測定端子20と、データの送受信を行う通信部17とを備えて構成されているので、安価な構成のセンサにより精度良くWBGT値を得ることができる。
したがって、上記本実施例によれば、熱中症管理に関する情報への的確なアクセスを可能にし得る。
尚、本発明の熱中症見守りシステムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。