JP7193833B2 - 繊維のめっき方法 - Google Patents
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非金属繊維をシランカップリング剤水溶液に浸漬するシランカップリング処理工程と、
オキシデーション処理工程及びシランカップリング処理工程を経た非金属繊維を、めっきの核となる触媒を含有する触媒含有物の水溶液に浸漬するキャタライズ処理工程と、
キャタライズ処理工程を経た非金属繊維に無電解めっきする無電解めっき工程とを含むことを特徴とする繊維のめっき方法。
非金属繊維をタンニン酸水溶液に浸漬するタンニン酸処理工程と、
非金属繊維をシランカップリング剤水溶液に浸漬するシランカップリング処理工程と、
オキシデーション処理工程、タンニン酸処理工程及びシランカップリング処理工程を経た非金属繊維を、めっきの核となる触媒を含有する触媒含有物の水溶液に浸漬するキャタライズ処理工程と、
キャタライズ処理工程を経た非金属繊維に無電解めっきする無電解めっき工程とを含むことを特徴とする繊維のめっき方法。
オキシデーション処理工程により、繊維表面が親水性となり、めっき工程でめっき液が繊維表面に付きやすくなる。シランカップリング処理工程により、触媒がシランカップリング剤を介して繊維表面に強く固着する。さらに上記[2]の手段では、タンニン酸処理工程により、触媒がタンニン酸を介しても繊維表面に強く固着する。これらの作用により、めっき膜の繊維表面への固着性を十分に向上させることができる。また、オキシデーション処理工程、シランカップリング処理工程、タンニン酸処理工程及びキャタライズ処理工程が、いずれも水系の流体を用いるものであり、めっきの連続ラインに組み込みやすい。
非金属繊維としては、次の(ア)(イ)を例示できるところ、本発明では上記のとおり液晶ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維及びパラ系アラミド繊維から選ばれる非金属繊維とした。
(ア)有機繊維
・合成繊維:ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維等)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維等)、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリカ―ボネート繊維、ポリアセタ―ル繊維、アクリル繊維、ポリアミド系繊維、アラミド繊維等を例示できる。電線として用いるめっき繊維の繊維には、高抗張力であるパラ系アラミド繊維、PBO(poly(p-phenylenebenzobisoxazole))繊維、ポリアリレート繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等が好ましい。また、抗張力が15cN/dtex以上の繊維が好ましいが、抗張力が例えば6~8cN/dtexと低い繊維でも繊度が100dtex以上と太い繊維を使うことによって対応することができる。
・天然繊維:綿、麻、絹、竹等を例示できる。
(イ)無機繊維
ガラス繊維、鉱物繊維、セラミック繊維、シリカ繊維等を例示できる。
以下、各処理工程の態様を例示する。なお、以下の例において%はいずれも質量%である。
以下の処理工程のうち(3)オキシデーション処理工程と(4)タンニン酸処理工程と(5)シランカップリング処理工程の順序は、特に限定されないが、(3)の処理工程を最先に行うことが好ましい。
また、これら(3)(4)(5)で最先に行う処理工程の前に、(1)アルカリエッチング処理工程と(2)中和処理工程をこの順で行うことができる。
また、(7)無電解めっき工程の後に、(8)電気めっき工程を行うことができる。
非金属繊維をアルカリ水溶液に浸漬して、繊維表面の洗浄、精錬及びエッチングを同時に行う。
アルカリとしては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等を例示できる。
NaOH、KOH等の水溶液の濃度は、特に限定されないが、100~300g/Lが好ましい。
アルカリ水溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、5~20分が好ましい。
アルカリエッチング処理後の非金属繊維を酸水溶液に浸漬して、中和させる。
酸としては、特に限定されないが、硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)、固形酸(NH4HF2等)を例示できる。
酸水溶液の濃度は、特に限定されないが、5~20%が好ましい。
酸水溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、1~5分が好ましい。
非金属繊維を過酸化物の水溶液又はオゾンナノバブル水に浸漬して、繊維表面を酸化し、親水化する。過酸化物の水溶液も、オゾンナノバブル水も、水系の流体であるので、ラインに組み込むことが容易にできる。
ここで、過酸化物としては、特に限定されないが、過酸化水素(H2O2)、過酸化ナトリウム(Na2O2)、過酸化カリウム(K2O2)、過酸化バリウム(BaO2)等の無機過酸化物や、過酢酸(CH3COOOH )等の有機過酸化物を例示できる。特に過酸化水素水又は過酸化ナトリウム水溶液は、取扱性、作業環境性に優れる。
過酸化水素水の濃度は、上記のとおり18~36%水溶液とする。18%未満だと処理時間がかかりすぎる。
過酸化ナトリウム水溶液の濃度は、特に限定されないが、10~50%水溶液が好ましい。10%未満だと処理時間がかかりすぎる。
過酸化物の水溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、5~30分が好ましい。
オゾンナノバブル水は、気泡径10~1000nm(好ましくは20~500nm、より好ましくは50~300nm)のオゾン気泡を含む水であり、当該気泡径のオゾン気泡を含んでいれば、さらに気泡径1000nm超のオゾン気泡が混じったものでもよい。
オゾンナノバブル水は、オゾン気泡が長時間にわたって水中に安定的に存在し続ける特徴がある。
オゾンナノバブル水のオゾン濃度は、0.1~50mg/dm3 とし、0.5~20mg/dm3 がより好ましい。0.1mg/dm3 未満だと処理時間がかかり、50mg/dm3 超だと作業環境が低下する。
オゾンナノバブル水への浸漬時間は、特に限定されないが、10~120分が好ましい。
その他のオキシデーション処理として酸素プラズマと紫外線照射があるが、いずれも方向性があり、また乾式処理であるとともに主にバッチ処理であるから、水系の流体を用いるめっきの連続ラインに組み込むことが難しいため、本発明におけるオキシデーション処理からは除外される。
非金属繊維をタンニン酸(C76H52O46)の水溶液に浸漬して、非金属繊維の表面にタンニン酸を付ける。次工程の触媒がタンニン酸を介して非金属繊維の表面と固着することになる。
タンニン酸水溶液の濃度は、特に限定されないが、1~10%が好ましい。
タンニン酸水溶液への浸漬時間は、0.5~5分が好ましい。
非金属繊維をシランカップリング剤の水溶液に浸漬して、非金属繊維の表面にシランカップリング剤を付ける。次工程の触媒がシランカップリング剤を介して非金属繊維の表面と固着することになる。
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3ジメチル-プチリデン)プロピルアミンN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を例示できる。
シランカップリング液の濃度は、特に限定されないが、0.05~5%が好ましい。
シランカップリング液への浸漬時間は、特に限定されないが、5~30分が好ましい。
非金属繊維をめっきの核となる触媒を含有する触媒含有物の水溶液に浸漬して、繊維表面に触媒を付与する。
触媒(触媒金属)としては、特に限定されないが、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)等を例示できる。
触媒含有物の水溶液としては、特に限定されないが、錫-パラジウム混合コロイド水溶液、塩化パラジウム-塩酸水溶液等を例示できる。
触媒含有物の水溶液の濃度は、特に限定されないが、1~5%が好ましい。
触媒含有物の水溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、1~10分が好ましい。
キャタライズ処理工程の前に次の(i)プリディップ処理工程を行い、キャタライズ処理工程の後に次の(ii)アクセレーター処理工程を行う。
錫-パラジウム混合コロイド水溶液には塩化第一錫が含まれる。仮に非金属繊維を(プリディップ処理無しで)水洗した後に錫-パラジウム混合コロイド水溶液に浸漬すると、塩化第一錫が酸化されて水酸化第二錫の沈殿が生じる。この現象を防止するために、非金属繊維を酸水溶液に浸漬するプリディップ処理工程を設ける。
酸水溶液は塩酸、塩化ナトリウムなどで建浴する。酸水溶液の塩酸の濃度は、特に限定されないが、錫-パラジウム混合コロイド水溶液に含まれている薬品濃度と同程度が好ましい。
酸水溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、0.5~3分が好ましい。
キャタライズ処理工程を経た非金属繊維を、錫を溶かしてパラジウムを活性化するアクセレーター水溶液に浸漬するアクセレーター処理工程を行う。
アクセレーター水溶液としては、錫を溶かしてパラジウムを溶かさないものであれば特に限定されず、酸水溶液(塩酸、硫酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸等)、アルカリ水溶液等を例示できる。酸水溶液の濃度は、特に限定されないが、5~20%が好ましい。
アクセレーター水溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、3~10分が好ましい。
塩化パラジウム-塩酸水溶液には塩化第一錫が含まれないから、上記プリディップ処理工程を行う必要はない。
また、錫を溶かす上記アクセレーター処理工程を行う必要もない。無電解めっきの際に塩化パラジウムが還元される。
無電解めっきの主目的は、導電化である。
無電解めっきの金属は、特に限定されないが、銅、ニッケル、銀等が好ましい。
無電解めっきのめっき液及びめっき条件は、特に限定されず、公知の一般的なものでもよいそれを改良したものでもよい。
無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、特に限定されないが、0.1~3μmが好ましい。
電気めっきの主目的は、抵抗値の低減である。
電気めっきの金属は、特に限定されないが、銅、ニッケル、銀等が好ましい。
電気めっきのめっき液及びめっき条件は、特に限定されず、公知の一般的なものでもそれを改良したものでもよい。
電気めっきによるめっき膜の膜厚は、特に限定されないが、0.5~4μmが好ましい。
本発明で作製されためっき繊維の用途は、特に限定されないが、電線が好適であり、さらに布(織布、編物、不織布等)に加工して電磁シールド布、静電気防止布、導電性布、遮光性布にも使用することができる。
繊維として、実施例1,2及び比較例1,2ではポリエステル繊維束(繊度84dtex-36f)を、実施例3,4及び比較例3,4ではポリアリレート繊維束(繊度440dtex-80f)を、実施例5,6及び比較例5,6では液晶ポリエステル繊維束(繊度440dtex-96f)を、実施例7,8及び比較例7,8ではパラ系アラミド繊維束(繊度440dtex-267f)を、それぞれ使用した。
・繊維を過酸化水素水(濃度29%、30℃)に10分浸漬した。
・繊維を過酸化ナトリウム水溶液(濃度30%、30℃)に10分浸漬した。
・繊維をオゾンナノバブル水(オゾン濃度10mg/dm3 、30℃)に30分浸漬した。
・繊維を3-アミノプロピルトリエトキシシラン2%水溶液(40℃)に15分浸漬した。
・繊維を3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン2%水溶液(40℃)に15分浸漬した。
・繊維を3-アミノプロピルトリメトキシシラン2%水溶液(40℃)に15分浸漬した。
Claims (5)
- 液晶ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維及びパラ系アラミド繊維から選ばれる非金属繊維を過酸化水素の濃度18~36%水溶液(但し、硫酸を含む酸性過酸化水素水溶液を除く。)又は過酸化ナトリウムの濃度10~50%水溶液に浸漬して、繊維表面を酸化し、親水化するオキシデーション処理工程と、
非金属繊維をシランカップリング剤の水溶液に浸漬するシランカップリング処理工程と、
オキシデーション処理工程及びシランカップリング処理工程を経た非金属繊維を、めっきの核となる触媒を含有する触媒含有物の水溶液に浸漬するキャタライズ処理工程と、
キャタライズ処理工程を経た非金属繊維に無電解めっきする無電解めっき工程とを含むことを特徴とする繊維のめっき方法。 - 液晶ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維及びパラ系アラミド繊維から選ばれる非金属繊維を過酸化水素の濃度18~36%水溶液(但し、硫酸を含む酸性過酸化水素水溶液を除く。)又は過酸化ナトリウムの濃度10~50%水溶液に浸漬して、繊維表面を酸化し、親水化するオキシデーション処理工程と、
非金属繊維をタンニン酸の水溶液に浸漬するタンニン酸処理工程と、
非金属繊維をシランカップリング剤の水溶液に浸漬するシランカップリング処理工程と、
オキシデーション処理工程、タンニン酸処理工程及びシランカップリング処理工程を経た非金属繊維を、めっきの核となる触媒を含有する触媒含有物の水溶液に浸漬するキャタライズ処理工程と、
キャタライズ処理工程を経た非金属繊維に無電解めっきする無電解めっき工程とを含むことを特徴とする繊維のめっき方法。 - 前記触媒は、パラジウムである請求項1又は2記載の繊維のめっき方法。
- 前記触媒含有物の水溶液は、錫-パラジウム混合コロイド水溶液である請求項1又は2記載の繊維のめっき方法。
- 前記触媒含有物の水溶液は、塩化パラジウム-塩酸水溶液である請求項1又は2記載の繊維のめっき方法。
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