JP2010248663A - 金めっきされた繊維またはその構造体、およびその製造方法 - Google Patents

金めっきされた繊維またはその構造体、およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】繊維、特に産業用繊維に対して、金めっき層の密着性が良く、有機繊維を強度劣化させるエッチング工程を持たず、環境や人体に優しい、有毒なシアン化合物を用いない無電解金めっき技術で金めっきされた繊維またはその構造体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】繊維表面に被覆剤を塗布、重合させた後、該繊維を白金系コロイド溶液に浸漬処理し、続いて過酸化水素と金(III)ハロゲン化塩を含有する金めっき浴に浸漬して繊維表面に金粒子を析出させることにより、金めっきされた繊維またはその構造体を製造する。めっき層の密着性を発現させるために、あらかじめ被覆剤で処理した繊維を用いるため、金めっきされた繊維またはその構造体は、繊維の表面と金めっき層が繊維の被覆層を介して密着しており、エッチング工程を持たないため繊維の強度保持率が高い。
【選択図】なし

Description

本発明は、金めっきされた繊維またはその構造体、およびその製造方法に関する。詳細には、シアン化合物を使わない無電解金めっき反応で金めっきされた繊維またはその構造体、およびその製造方法に関するものである。本発明の製造方法は、繊維表面とめっき層の間の密着性を向上させるために従来一般的であったエッチング処理を行わないため、繊維の強度がめっき後も保たれ、かつ、金めっきに従来一般的であったシアン化合物を使わないため、環境に優しい方法である。
無電解めっきは、通電することなく、素材をめっき液に浸漬するだけで素材の種類や形状に関係なく、均一な厚みの被膜を得ることができる方法である。プラスチックや有機繊維などの絶縁材料に金属めっきを施す方法として、電機製品、自動車部品(ホイールキャップや内装部品など)や日用品(事務用品、食器など)などに用いられており、産業界に必須の技術となっている。
めっき用の金属には種々あるが、中でも金は最もイオン化傾向の小さい、つまり最も安定で錆びにくい金属であって、電気伝導性に優れており、かつハンダ接合可能なことから電子工業分野に広く用いられている。例えば置換金めっきは、プリント基板の回路やICパッケージの実装部分や端子部分などの最終表面処理として幅広く使用されている。
その他にも、耐薬品性、光反射性、高い装飾的価値などから常に一定の需要があり、産業界のみならずアクセサリーや美術的な分野においても信頼性の高い、高級感のある被膜として利用されてきた。
無電解金めっきは、パラジウムに代表される金属粒子を一旦基材の表面に核として析出させ、続いてめっき液に浸漬し、イオン化傾向の差を利用して金を置換析出させる方法が一般的である。金めっき液としては、金化合物の水溶液を用いる必要があり、シアン化金カリウムに代表される、毒性の強いシアン化合物を使用するため、廃液の管理や労働環境の汚染、環境への負荷などの問題があった。さらに、基材への密着性を高めるために煩雑な前処理が必要であり、工程の複雑さが問題となっていた。
金めっきに限らず、繊維や樹脂、フィルムなどに金属めっきを施す際には、材料表面とめっき層の密着性を向上させるため、めっきに先立って表面をエッチング(粗化)させるのが従来一般的である。エッチングの方法としては、クロム酸酸化などの厳しい条件が多く用いられる。よってこの方法は、産業用繊維の様な、材料としての強度が求められる用途には不向きである。
プラズマやコロナ放電などの処理により、表面に極性基を導入することで密着性を向上させる方法もあるが、窒素やアルゴンなどのガスを用いるため、付帯設備を含めた設備が高価なことや、生産性に難があること、また一般に処理の効果が比較的短期間しか続かないなどの問題がある。
繊維に金めっきを施す方法が、以下の特許文献に記載されている。特許文献1には、繊維表面にスズイオンを吸着させた後、パラジウム系核材を形成させ、次いで金めっきする方法が示されている。特許文献2には、エッチング処理した繊維に、核材を固着させる効率を高めるためにシランカップリング剤を用いて、パラジウムなどの核材を固着させ、ニッケルなどでめっきを施し、次いで金めっきをする方法が示されている。しかし、これらの文献に示されているのはいずれも人体への毒性および環境負荷の大きいシアン化金化合物を用いる方法である。また、パラジウム系核材は有機繊維への付着効率が良くないため、コスト的な面でも課題がある。
特許文献3には、有機パラジウム錯体などの金属錯体を含む超臨界流体で繊維を処理し、還元処理によりパラジウムなどを金属として析出させることで、該金属を核材として繊維に付着させ、次いで金属めっきする方法が示されている。しかしながら、パラジウム系核材は、上記のように有機繊維への付着効率が良くないという問題があり、さらに超臨界流体を用いる方法では、設備導入にかかるコストが大きいという問題がある。特許文献4には、シアン化金化合物を用いない方法が提案されているが、高コストで付着効率の良くないパラジウム系の核材を使っている問題点がある。
一方、非特許文献1には有毒なシアン化金化合物を用いず、かつ付着効率の高い白金系核材を用い、ポリエステル布やポリイミドフィルムを無電解金めっきする技術が記載されているが、これをアラミドなどの高強度高弾性率繊維に適用すると、繊維と金めっき層の密着性の悪いものしか得られない問題点がある。
特許3635542号公報 特開2003−171869号公報(段落[0020]) 特開2007−056287号公報 特開2008−019457号公報
独立行政法人産業技術総合研究所2008年9月18日発表プレスリリース
本発明はかかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、繊維、特に産業用繊維に対して、金めっき層の密着性が良く、有機繊維を強度劣化させるエッチング工程を持たず、環境や人体に優しい、有毒なシアン化合物を用いない無電解金めっき技術で金めっきされた繊維またはその構造体、およびその製造方法を提供する。
発明者等は、かかる課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の通りである。
(1)繊維表面に被覆剤を塗布、重合させた後、該繊維を白金系コロイド溶液に浸漬処理し、続いて過酸化水素と金(III)ハロゲン化塩を含有する金めっき浴に浸漬することにより、繊維表面に金粒子を析出させることを特徴とする、金めっきされた繊維またはその構造体の製造方法。
(2)前記の被覆剤が、エポキシ化合物、ウレタン化合物、ポリエステル系化合物、アクリル系化合物、RFL処理剤、シランカップリング剤のうちから選ばれる物質であることを特徴とする前記(1)に記載の、金めっきされた繊維またはその構造体の製造方法。
(3)前記の繊維がパラ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維から選ばれるうちの1つであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の、金めっきされた繊維またはその構造体の製造方法。
(4)繊維の表面と金めっき層が、繊維の被覆層を介して密着していることを特徴とする、強度保持率が高い金めっきされた繊維またはその構造体。
(5)前記の被覆層が、エポキシ化合物、ウレタン化合物、ポリエステル系化合物、アクリル系化合物、RFL処理剤、シランカップリング剤のうちから選ばれる物質の重合物であることを特徴とする前記(4)に記載の、金めっきされた繊維またはその構造体。
(6)前記の繊維がパラ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維から選ばれるうちの1つであることを特徴とする前記(4)又は(5)に記載の、金めっきされた繊維またはその構造体。
本発明の金めっきされた繊維は、めっき層と繊維表面の間の密着性が高く、高電導性であり、かつ高強度、高弾性率繊維を使用した場合にはめっき層の耐久性も高く、同じ重量の金属線を使用した場合と比べて強度が高い。さらに美観に優れているため、電子材料や装飾品などに好適な素材となりうる。
めっき反応は常温において短時間で進行し、めっき層と繊維表面との間の密着性は高い。設備的にも繊維加工やめっき関連の一般的なもので十分対応可能であるため、設備導入コストを抑えることができる。
本発明に用いる繊維とは汎用の合成繊維、所謂スーパー繊維、天然繊維、などいずれでも良く、例えばナイロン6、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、メタ系芳香族ポリアミド、レーヨン、綿、ウールなどの各繊維を挙げることができる。
本発明の特徴がより有効に生かされるのは所謂スーパー繊維に対してである。スーパー繊維には、パラ系芳香族ポリアミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維などの種類があり、強度、弾性率、耐熱性などにおいて、汎用繊維を圧倒する性能を持つ。これらの用途はほとんどが産業用であり、繊維の強度がそのまま求められる用途である。本発明の技術はエッチング(粗化)工程を持たないため強度が保たれやすい。本発明をこれらスーパー繊維に適用した場合には、スーパー繊維自体が非常に切れにくく、また伸縮性が小さいため、伸縮に伴ってめっき層にかかる歪みが小さく、結果としてめっき層の耐久性が高い。また、所謂スーパー繊維は、炭素繊維やガラス繊維などと比較して可撓性があって、屈曲しても折れにくく、耐衝撃性の点でも優れている。この様な性質は、電子部品用の導線用途などには特に好適となるものである。
スーパー繊維の中では、パラ系芳香族ポリアミド繊維(商品名:ケブラー(登録商標)(東レ・デュポン社製)、商品名:トワロン(帝人テクノプロダクツ社製)、商品名:テクノーラ(帝人テクノプロダクツ社製))が、めっき層の固着性、材料の入手容易性の点で特に好適である。耐熱性も高いため(融点は示さず、熱分解点が約500℃)、高温環境下での使用にも耐えうる。
繊維の側から見ると金めっき層は耐腐食性、耐候性などに優れ、極めて良好な保護層となりうるものである。特にポリアミド系やポリエステル系などの縮合系高分子の繊維は酸やアルカリ、さらに高温では水分の存在のみでも加水分解を起こしやすく、強度低下の懸念があるが、金めっき品はそれに対する防護の役割をはたしうる。また一般に、有機高分子材料には紫外線起因の劣化を起こすものが多く、紫外線吸収剤や酸化防止剤を多量に添加して劣化を防いでいる。しかし、高結晶性の上記「スーパー繊維」はこれら添加剤を入れると強度などの物性が低下する場合が多い。強力な紫外線遮蔽力を持つ金属被膜で被覆すれば、それだけで紫外線劣化を防止または大きく軽減できると考えられ、野外での使用などに道を開くものである。
本発明における繊維の形態は、紡糸したままの長繊維の状態でも良いが、それを撚糸したり、嵩高加工してあったり、織編物としてあったりして、構造体となっているものでも良い。また、紡績糸の状態でも良く、さらにそれを織編物としてあっても良い。強度などの力学的な特性については長繊維が優れているが、一般に繊維は紡績糸の方が安価な場合が多く、どちらを用いるかは用途別の要求特性に従って決めると良い。
本発明の金めっきされた繊維を作製するには、繊維表面を被覆剤で処理した繊維を用いる必要がある。繊維をそのままめっきした場合には金めっき層の密着性が悪く、わずかな外力によって剥がれてしまう場合があるが、繊維を被覆剤で処理した後にめっきすればその様なことがない。被覆剤としては、産業用繊維用の表面処理剤として市販されているものを使用することができ、エポキシ化合物、ウレタン化合物、ポリエステル系化合物、アクリル系化合物、RFL処理剤(レゾルシンとホルムアルデヒドの初期重合物にゴムラテックスを添加したもの)、シランカップリング剤等を使用することができる。中でも、めっき層の密着性、めっき反応におけるめっき層の成長性、被覆処理のしやすさ等の点で、エポキシ化合物およびウレタン化合物が好適であり、エポキシ化合物が最も好適である。
繊維のエポキシ処理には従来公知の技術を用いることができるが、例えば、低分子のエポキシ化合物と硬化剤を、混合された状態で繊維に塗布する方法が挙げられる。低分子のエポキシ化合物と硬化剤は、あらかじめ混合してから塗布しても良いし、逐次塗布しても良い。エポキシ化合物としてはエチレングリコール、グリセリンやソルビトールなどの多糖の水酸基の全部または一部がグリシジル基に置き換わった構造を持つ化合物がしばしば用いられる。また、硬化剤としてはアミン化合物や、アルコールなど水酸基を持つ化合物が好ましく用いられる。エポキシ化合物と硬化剤を重合させるには、アミン化合物の場合は室温でも徐々に反応が進行するが、水酸基をもつ化合物の場合は、酸または塩基触媒の存在下で加熱する必要がある。
なお、上記の表面処理は長繊維あるいは紡績糸の状態で施しても良く、また織編物や嵩高糸などの加工糸の状態で行っても良い。
長繊維に対するめっきの場合、ロール状に巻いた原糸を連続的に引き取って途中めっき浴に浸漬し、処理後の糸をロール状に巻き取る方式でも良いが、これはある程度多量の糸を処理するのに適した方法である。一方、長繊維を一旦編物としてからめっきを施し、それを取り出してほどくという方法も存在する。めっきにむらがある場合には、再び編んでめっきすれば良い。この方法は小規模なバッチ式めっきにも好適である。
本発明のめっきされた繊維またはその構造体を製造する場合、めっき工程においては、エポキシ化合物やウレタン化合物などの被覆剤を塗布、重合させた繊維を白金系コロイド溶液に浸漬し、繊維の表面に、まず白金微粒子の核材を付着させる。白金系コロイド溶液中に、エポキシ処理などにより被覆層が形成された繊維を浸漬することで、効果的に白金微粒子を付着させることができる。本発明で用いる白金系コロイド溶液は、例えば、塩化白金酸の希薄水溶液に、ポリビニルピロリドンなどの保護コロイド水溶液を添加し、次いで水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤水溶液を添加し、静置することで、白金微粒子を析出させることで得られる。
続いて、過酸化水素と金(III)ハロゲン化塩を含有する金めっき浴に浸漬することにより、繊維表面に金粒子を析出させる。この金めっき浴は、過酸化水素と金(III)ハロゲン化塩を含む水溶液である。ここで用いる金(III)ハロゲン化塩は、過酸化水素によって還元されて金と塩化水素酸や臭化水素酸に変換する水溶性の金(III)ハロゲン化塩が用いられ、特に塩化金(III)酸および塩化金(III)酸塩が好ましく用いられる。塩としては、カリウムやナトリウムなどのアルカリ金属塩が好ましい。過酸化水素と金(III)ハロゲン化塩の使用割合には、特に制限はないが、金(III)ハロゲン化塩の全てを金に還元する場合には、金(III)ハロゲン化塩に対して、過酸化水素をモル比で1.5以上用いることが好ましい。
繊維は多くの場合、単糸が多数合糸されたマルチフィラメントヤーンとなっており、その場合、単糸同士が接触している部分ではめっきのむらが生じやすい。織物や編物としてめっきする場合には尚更そうである。そのような場合には上記の金めっき液に界面活性剤を、めっき反応を阻害しない範囲で加えることが有効である。界面活性剤の例としてはドデシル硫酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールエーテルなどの非イオン性界面活性剤が挙げられる。また、必要に応じてゼラチンやポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物、各種pH緩衝剤を用いることができる。
本発明の金めっき液は処理直前に調製することが好ましく、そのためには例えば塩化金(III)酸水溶液と過酸化水素水溶液を別々に作っておき、この両者を使用直前に混合するのが便利である。このめっき浴に白金コロイド液に浸漬処理して白金粒子を表面に析出せしめた繊維を浸漬する。その際の温度は0℃以上80℃以下、より好ましくは15℃以上40℃以下とする。
めっき層を繊維表面の被覆層に固着させるため、本発明ではめっき浴での処理が終了した後に熱処理を行う必要がある。熱処理を行う温度は被覆層の融点以下、ガラス転移点以上の温度が好ましい。エポキシ化合物重合物の様に、熱分析で明確なガラス転移点を示さない被覆剤でも熱処理で固着性の高まる場合があり、その場合には融点(または分解点)以下の温度で適当な温度を探す必要がある。なお、エポキシ化合物重合物の場合、好適な熱処理の条件は温度が100℃以上250℃以下、時間は1分以上60分以下の範囲である。
めっき層の、繊維表面への固着性を評価する手段として、現状JISには、板状材料における密着性の評価方法は定められているが、繊維については定められていない。板状材料についての試験方法であるJIS H8504(引きはがし試験方法、テープ試験方法)を基に繊維に適用可能な試験法とした例が、下記の論文に示されているので、該方法にて密着性を評価することもできる。
「密着強度を向上させた無電解めっき処理繊維の開発」:都筑、金山、鹿野、小林、尾張繊維技術センター報告(2006)
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例における各特性値の測定方法は次の通りである。
[繊維へのめっき密着性評価]
JIS H8504(引きはがし試験方法、テープ試験方法)に準拠し、次のようにして評価する。試料表面の6cm以下の面積を、へらしごき工具を使用し、約15秒間、素早く、均一に摩擦する。押付け圧力は、各ストロークともめっきに光沢を与えるに十分なものとするが、めっきを切断しないようにする。判定方法は、試験箇所を目視によって観察し、めっきの剥離または膨れが明らかなときは、密着不良とする。明らかなめっきの剥離または膨れがないときは、密着良好とする。
〔破断強度〕
JIS L1013(化学繊維フィラメント試験法)に準拠。
(製造例1)
白金コロイド液を以下のようにして調製した。20mM−塩化白金(IV)酸水溶液25mlを純水で940mlに希釈し、室温下で攪拌しながら、1%ポリビニルピロリドンK−30(重量平均分子量40,000)水溶液10mlおよび40mM水素化ホウ素ナトリウム水溶液50mlを順次加え、3日間放置して、暗褐色透明な白金系コロイド溶液(Pt−PVP、1000ml)を得た。
(実施例1)
パラ系アラミド繊維束(東レ・デュポン社製“ケブラー”(登録商標)、1670dtex)を、市販のソルビトール系エポキシ系処理剤(硬化剤を含有)に含浸し、60℃×2日間熱処理し乾燥して、繊維表面にエポキシ樹脂の被覆層を形成した。
次いで、上記のエポキシ処理された繊維(5.5m、乾燥重量910mg)を0.1%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液100ml中に浸漬し、直ちに引き上げ水洗し、さらに、(製造例1)で調製されたPt−PVP(100ml)中に2分間浸漬した後、水洗した。この0.1%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液およびPt−PVPによる処理をもう一度繰り返した後、水洗し乾燥し、150℃で10分間加熱し、白金微粒子を吸着させた。
等体積の20mM塩化金(III)酸水溶液と40mM過酸化水素水溶液を混合して無電解金メッキ液を調製し、この無電解金メッキ液(40ml)中に、白金微粒子を吸着させた繊維を、室温下で揺すりながら30分間浸漬して繊維表面に金のめっき皮膜を形成させ、水洗、乾燥後、150℃で20分間加熱して、金めっきしたパラ系アラミド繊維(1237mg)を得た。めっきによる重量増から計算した金の含量は26.4%であった。
得られた繊維について強度ならびに、上記の評価方法に従ってめっき層の密着性を評価した結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1で用いたパラ系アラミド繊維束を、溶液1リッター中に無水クロム酸350g、硫酸200mlを含む溶液に、65℃で5分浸漬し、水洗した。この表面粗化糸を用い、実施例1と同様にして金めっきを行った。
(比較例2)
実施例1で用いたパラ系アラミド繊維束を用い、エポキシ処理剤に浸漬することを省略し、その他は実施例1と同様にして金めっきを行った。
比較例1〜2で得られた繊維について、強度ならびに密着性を測定した結果を、実施例1と併せて表1に示す。
Figure 2010248663
表1から、本発明のめっき繊維は、エッチング処理を行わないため、繊維の強度が金めっき後にも保たれ、強度保持率が高い(90%以上)ことがわかる。これに対し、エッチング処理を行った表面粗化糸の金めっき繊維は、繊維の強度が低く、めっき前の繊維の強度が保持されなかった。未処理糸の金めっき繊維は、金めっきの密着性不良であった。
(実施例2)
パラ系アラミド繊維束(東レ・デュポン社製“ケブラー”(登録商標)、1670dtex)を、市販のウレタン系処理剤に含浸し、130℃×60分熱処理し乾燥して、繊維表面にウレタン樹脂の被覆層を形成した。
次いで、上記のウレタン処理された繊維(5.5m、乾燥重量1,092mg)に、実施例1と同様の処理を行った後、150℃で10分間加熱し、白金微粒子を吸着させた。
等体積の20mM塩化金(III)酸水溶液と40mM過酸化水素水溶液を混合して無電解金メッキ液を調製し、この無電解金メッキ液(40ml)中に、白金微粒子を吸着させた繊維を、室温下で揺すりながら30分間浸漬して繊維表面に金のめっき皮膜を形成させ、水洗、乾燥後、150℃で20分間加熱して、金めっきしたパラ系アラミド繊維を得た。めっきによる重量増から計算した金の含量は21.3%であった。
(実施例3)
パラ系アラミド繊維束(東レ・デュポン社製“ケブラー”(登録商標)、1670dtex)を、実施例1と同様、市販のエポキシ系処理剤に含浸し、次いでRFL処理剤(レゾルシンとホルムアルデヒドの初期重合物にゴムラテックスを添加したもの)240℃×1分熱処理して、繊維表面にゴム樹脂の被覆層を形成した。次いで、上記のRFL処理された繊維に、実施例1と同様の処理を行い、金めっきしたパラ系アラミド繊維を得た。めっきによる重量増から計算した金の含量は22.5%であった。
(比較例3)
既にミクロボイドのあるパラ系アラミド繊維束(東レ・デュポン社製“ケブラー”(登録商標)、1670dtex)を用い、実施例2と同様にして金めっきを行った。
実施例2〜3および比較例3で得られた繊維について、金めっき(金色外観)ならびに、めっき層の密着性(セロファンテープによる剥離試験)を評価した結果を表2に示す。
Figure 2010248663
表2から、ウレタン処理やRFL処理を行って表面に被覆層を形成した繊維は、金めっき層の密着性に優れている。これに対し、エッチング処理を行っていないが既にミクロボイドのある糸に金めっきしためっき繊維は、金めっきの密着性不良であった。
本発明に係る金めっきされた繊維の製造方法は、人体毒性上、また環境上問題となるシアン化合物を用いず、かつ従来一般的なパラジウムに換わって基材への吸着効率の高い白金を用いるため、コスト的にも有利な方法を提供するものである。本発明の方法で製造された繊維は、強度が高く、めっき層の耐久性も良好であり、電子材料用の導線や装飾品として用いることができる。



Claims (6)

  1. 繊維表面に被覆剤を塗布、重合させた後、該繊維を白金系コロイド溶液に浸漬処理し、続いて過酸化水素と金(III)ハロゲン化塩を含有する金めっき浴に浸漬することにより、繊維表面に金粒子を析出させることを特徴とする、金めっきされた繊維またはその構造体の製造方法。
  2. 前記の被覆剤が、エポキシ化合物、ウレタン化合物、ポリエステル系化合物、アクリル系化合物、RFL処理剤、シランカップリング剤のうちから選ばれる物質であることを特徴とする請求項1に記載の、金めっきされた繊維またはその構造体の製造方法。
  3. 前記の繊維がパラ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維から選ばれるうちの1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の、金めっきされた繊維またはその構造体の製造方法。
  4. 繊維の表面と金めっき層が、繊維の被覆層を介して密着していることを特徴とする、強度保持率が高い金めっきされた繊維またはその構造体。
  5. 前記の被覆層が、エポキシ化合物、ウレタン化合物、ポリエステル系化合物、アクリル系化合物、RFL処理剤、シランカップリング剤のうちから選ばれる物質の重合物であることを特徴とする請求項4に記載の、金めっきされた繊維またはその構造体。
  6. 前記の繊維がパラ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維から選ばれるうちの1つであることを特徴とする請求項4又は5に記載の、金めっきされた繊維またはその構造体。
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