JP7193121B2 - マクロファージの機能低下抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、マクロファージの機能低下抑制剤に関する。より詳細には、本発明は、細胞老化関連分泌現象(SASP)因子の活性又は発現を阻害する物質を有効成分として含有する、マクロファージの機能低下抑制剤に関する。
生体には、外部から侵入してきた細菌、ウイルス、抗原などに対する防御機構である免疫系が備わっており、免疫系は、大別すると「自然免疫」と「獲得免疫」とに分類される。「自然免疫」は、主にマクロファージ、好中球などの顆粒球、NK細胞といった食細胞が、侵入してきた病原体や異常な自己の細胞などの異物を攻撃して排除する免疫反応である。これに対し、「獲得免疫」は、T細胞(ヘルパーT細胞やキラーT細胞)が主体となる細胞性免疫とB細胞が産生する抗体が主体となる液性免疫があり、T細胞の指令によりB細胞により産生された抗体が、生体内に侵入した異物(抗原)を特異的に認識して、記憶し、同じ病原体が侵入してきたときに攻撃する免疫反応で、適応免疫とも呼ばれている。自然免疫の免疫担当細胞の代表格であるマクロファージは、外部から侵入してきた様々な異物に対して食作用を有することから、貪食細胞とも呼ばれる。マクロファージは、種々の組織や末梢血に存在し、組織マクロファージには、結合組織の組織球、肝臓のクッパー細胞、肺の肺マクロファージ、皮膚のランゲルハンス細胞、骨の破骨細胞などがある。よって、マクロファージは、体内の全ての場所に存在し、異物を処理する重要な免疫細胞であることから、近年、マクロファージを活性化させることによって、感染症やがんなどを治療するマクロファージ活性化療法が注目を集めている。
マクロファージは、異物(病原体)のセンサーとして機能し、体内に侵入してきた病原体を排除するほか、異物を分解してヘルパーT細胞に提示する抗原提示細胞としての役割、損傷組織の修復など免疫系において重要な役割を果たすが、年齢とともにその機能が低下し、それに伴って、自然免疫及び獲得免疫の機能も低下し、高齢者の感染症やがんへの罹患性が高まり、予防的ワクチンヘの応答性も減少することが知られている(非特許文献1)。
一方、最近の研究から、細胞老化に伴って、炎症性サイトカインや増殖因子などの様々な因子が老化細胞から分泌され、周囲の組織を傷害する「細胞老化関連分泌現象(Senescence Associated Secretory Phenomenon : SASP)」と呼ばれる現象が起こることがわかってきた(非特許文献2)。生体において、SASP因子は組織修復などの生理作用に関係する一方で、組織微小環境においてはがんの進展などの不利益な病態を引き起こすことも明らかになってきている。よって、細胞老化は個体老化に関連し、SASPが様々な病態にも関係することから、SASPを制御することで、がんや老化関連疾患などを予防できることが期待される。
貪食活性促進を含むマクロファージ機能の活性化については、これまでβ-ガラクトシダーゼで処理されたムチンを含有するマクロファージ活性化組成物(特許文献1)、カツオ削粉抽出物を有効成分とするマクロファージ活性化剤(特許文献2)、コリアンダーの抽出物を有効成分として含むことを特徴とするマクロファージ活性化剤(特許文献3)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.) に属する微生物を培養して得られる培養物を有効成分として含有することを特徴とするマクロファージ貪食能活性化組成物(特許文献4)等が報告されている。しかしながら、SASPを介したマクロファージの機能調節剤についてはこれまで報告がない。
特許第6178162号公報 特開2017-075105号公報 特開2018-043942号公報 WO2011/068226号公報
Plowden J et al., Innate immunity in aging: impact onmacrophage function, Aging Cell. 2004, Aug; 3 (4): 161-7 Ohtani N et al., Roles and mechanisms of cellular senescence in regulation of tissue homeostasis. Cancer sci. 2013;104(5):525-30
以上のことから加齢等に伴う免疫機能低下の改善のためには、マクロファージの機能低下の抑制が有効であると考えられる。
本発明は、上述した実情に鑑み、マクロファージの機能低下を抑制できる新たな因子を見出し、マクロファージの機能低下に関連する疾患又は症状の治療及び/又は予防に有効な製剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、老化した線維芽細胞から分泌される炎症性サイトカインなどのSASP因子が、マクロファージの貪食能の低下に関連することを見出し、SASP因子を阻害することによって、低下したマクロファージの貪食能を回復させることができることを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)細胞老化関連分泌現象(SASP)因子の活性又は発現を阻害する物質を有効成分として含有する、マクロファージの機能低下抑制剤。
(2)前記SASP因子が、IL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFから成る群より選択される1種又は2種以上である、(1)に記載のマクロファージの機能低下抑制剤。
(3)前記SASP因子の活性を阻害する物質が、SASP因子に対する中和抗体又はその断片である、(1)又は(2)に記載のマクロファージの機能低下抑制剤。
(4)前記SASP因子の発現を阻害する物質が、SASP因子に対するRNAi誘導性核酸、アンチセンス核酸、又はリボザイムである、(1)又は(2)に記載のマクロファージの機能低下抑制剤。
(5)前記マクロファージの機能が、マクロファージの貪食能である、(1)~(4)のいずれかに記載のマクロファージ機能低下抑制剤。
(6)IL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFから成る群より選択される1種又は2種以上のSASP因子の活性又は発現の阻害を指標とする、マクロファージ機能低下抑制剤のスクリーニング方法。
本発明によれば、細胞老化関連分泌現象(SASP)因子の活性又は発現の阻害に基づくマ
クロファージの機能低下抑制剤が提供される。加齢等によるマクロファージの機能低下、特に貪食能低下は、異物の排除の停滞により生体に様々な疾患をもたらす。よって、本発明のマクロファージの機能低下抑制剤は、病原体の侵入に対する生体防御機構を向上させ、全身の免疫力を改善させることができるので、感染症などのマクロファージの貪食能低下に関連する疾患の発症の予防と症状の緩和に有効である。
以下に、本発明について詳細に述べる。
1.マクロファージの機能低下抑制剤
本発明のマクロファージの機能低下抑制剤は、細胞老化関連分泌現象(Senescence Associated Secretory Phenomenon:SASP) 因子(以下、本明細書において「SASP因子」と記載する)の活性又は発現を阻害する物質を有効成分として含有する。ここで、SASP因子の活性又は発現の阻害は、SASP因子の低減、抑制、無効化を意味する。
SASPとは、細胞老化を起こした細胞から、IL-6やIL-1βなどの炎症性サイトカイン、IL-8などのケモカイン、細胞外マトリックス分解酵素やエラスターゼなどのプロテアーゼ類、増殖因子などの様々な生理活性因子が分泌される現象をいう。本発明において、SASP因子には、IL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFから成る群より選択される1種又は2種以上が包含される。IL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFは、老化細胞から分泌されるSASP因子であり、本発明では、これらの活性又は発現を阻害することにより、加齢に伴うマクロファージの機能低下を抑制することが可能となる。
上記のSASP因子のうち、IL-1α(interleukin 1 alpha)、IL-1β(interleukin 1 beta)、IL-8(C-X-C motif chemokine ligand 8, interleukin 8)、IFN-γ(interferon gamma)、TNF-α(tumor necrosis factor alpha)は、炎症性サイトカインとして知られており、主に生体内の様々な炎症反応、炎症の病態形成に関与する。GM-CSF(granulocyte-macrophage colony stimulating factor)も炎症性サイトカインの1種であるが、骨髄幹細胞に働き、白血球分化を促す造血性のサイトカインとして知られており、顆粒球、マクロファージの前駆細胞に作用し、その増殖と分化を促進する。MMP-1(matrix metalloproteinase 1)は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP:別名コラゲナーゼ)の一種で、I型、II型、III型コラーゲンのへリックス部位を特異的に切断し、組織破壊や組織再構築に関与する。MMP-2(matrix metalloproteinase 2)は、MMP-1と同様に、マトリックスメタロプロテアーゼの一種で、細胞外マトリックスの構成成分であるゼラチン、IV、V、VII、X、XI 型コラーゲンやフィブロネクチン、エラスチンの分解活性を有し、組織破壊や癌の浸潤、転移に関与する。PAI-2(serpin family B member 2 (SERPINB2), Plasminogen activator inhibitor-2)は、主に絨毛細胞から分泌され、分泌型のPAI-2はウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ(uPA)の阻害作用を有し、その発現細胞である絨毛細胞や単球等の組織線溶と細胞浸潤等に関与していると考えられている。MIF (macrophage migration inhibitory factor)は、活性化Tリンパ球より分泌される最初のリンフォカインとして報告され、TNF-α、IL-1βなどの炎症性サイトカインの産生を促し、炎症及び免疫応答を惹起する機能を有する。
上記のSASP因子の遺伝子及びタンパク質の配列情報は、例えばヒトの場合は、IL-1α(GenBank number: Nucleotide NM_000575; Protein NP_000566)、IL-1β(GenBank number: Nucleotide NM_000576; Protein NP_000567)、IL-8(GenBank number: Nucleotide NM_000584; Protein NP_000575)、GM-CSF(GenBank number: Nucleotide M11220; Protein AAA52578)、TNF-α(GenBank number: Nucleotide NM_000594; Protein NP_000585)、IFN-γ(GenBank number: Nucleotide NM_000619; Protein NP_000610)、MMP-1(GenBank number: Nucleotide NM_002421; Protein NP_002412)、MMP-2(GenBank number: Nucleotide NM_004530; Protein NP_004521)、PAI-2(GenBank number: Nucleotide NM_001143818; Protein NP_001137290)、MIF(GenBank number: Nucleotide NM_002415; Protein NP_002406)として登録されている。ヒトのIL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFのアミノ酸配列は、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、及び20にそれぞれ示される。本発明において阻害対象となるこれらのSASP因子は、これらと同等な機能及び活性を有する限り、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、及び20の各アミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよく、そのようなホモログタンパク質も、本発明にいうIL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFに包含されるものとする。また、ヒトのIL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFをコードする遺伝子の塩基配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19にそれぞれ示される。これらのSASP因子遺伝子もまた、これらと同等な機能及び活性を有する限り、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19の各塩基配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子であってもよく、そのようなホモログ遺伝子も、本発明にいうSASP因子遺伝子に包含されるものとする。
本発明において、上記SASP因子(IL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFから成る群より選択される1種又は2種以上)の活性阻害が可能な物質としては、SASP因子に対する中和抗体又はその断片、SASP因子に特異的に結合するアプタマー、SASP因子の活性を阻害する化合物等が挙げられる。
前記「SASP因子に対する中和抗体」とは、SASP因子に特異的に結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有し、SASPの活性を阻害する抗体(アンタゴニスト抗体)をいう。
本発明において使用する抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のいずれであってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。また、これらの抗体のアイソタイプについては、特に制限されず、IgG、IgM、IgA、IgD又はIgE等のいずれのアイソタイプであってもよいが、精製の容易性等を考慮するとIgGが好ましい。
SASP因子に対する中和抗体(抗SASP因子抗体)は、上記の各SASP因子又はその部分ポリペプチドを抗原として用い、当業者であれば、公知の方法に従って作製することができる。抗原に用いるSASP因子又はその部分ポリペプチドは、例えばIL-1αであれば配列番号1に示す塩基配列又はその部分配列からなるポリヌクレオチドを発現ベクターに組込み、これを適当な宿主細胞に導入して、形質転換体を作成し、該形質転換体を培養して組み換えタンパク質を発現させ、発現させた組み換えタンパク質を培養体又は培養上清から精製することにより得ることができる。あるいは、配列番号2に示すアミノ酸配列又はその部分配列からなるポリペプチドを化学的に合成し、免疫原として用いることもできる。
モノクローナル抗体は、上記抗原を必要に応じてフロイントアジュバント(Freund's Adjuvant)とともに投与し、感作した哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター等)から抗体産生細胞(脾臓細胞、リンパ節細胞等)を採取して骨髄腫細胞と細胞融合させ、得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から回収することによって調製できる。また、ポリクローナル抗体は、上記と同様にして抗原を感作した哺乳動物(例えば、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス等)から血液を採取し、この血液から公知の方法により血清を分離することにより調製できる。
また、本発明において使用する抗SASP因子抗体(抗IL-1α抗体、抗IL-1β抗体、抗IL-8抗体、抗GM-CSF抗体、抗TNF-α抗体、抗IFN-γ抗体、抗MMP-1抗体、抗MMP-2抗体、抗PAI-2抗体、及び抗MIF抗体)はいずれもR&D system社等の市販品を用いることができる。
また、本発明において使用する抗SASP因子抗体は、SASP因子に特異的に結合し、SASP因子の活性を阻害する限り、その活性断片であってもよい。抗体の活性断片としては、例えば、F(ab')2、Fab、Fab'、cFv(single-chain variable fragment)、disulfide stabilized Fv(dsFv)、dAb (single domain antibody)等が挙げられる。
また、本剤を治療目的でヒトに投与する場合には、前記抗体は、ヒト体内での抗原性が低減されている抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス-ヒトキメラ抗体等が好ましい。
前記「SASP因子に特異的に結合するアプタマー」としては、ペプチドアプタマー、ペプチド核酸アプタマー、核酸アプタマー(DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド)等が挙げられる。標的物質に特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、SELEX(systematic evolution of ligand by exponential enrichment)法等により選別することができる。また、標的物質に特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたツーハイブリッド法等により選別することができる。
本発明において、上記SASP因子(IL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFから成る群より選択される1種又は2種以上)の発現阻害が可能な物質としては、SASP因子をコードする遺伝子(SASP因子遺伝子)の転写、転写後調節、翻訳、翻訳後修飾等のいずれの段階でSASP因子の発現に対する阻害作用を発揮するものであってもよい。例えば、本発明におけるSASP因子の発現を阻害する物質には、SASP因子遺伝子のmRNAに対してRNA干渉作用を有するRNAi誘導性核酸、SASP因子遺伝子のmRNAの翻訳を抑制する核酸、SASP因子遣伝子の転写を抑制する核酸が包含される。SASP因子遺伝子のmRNAに対してRNA干渉作用を有するRNAi誘導性核酸としては、siRNA、shRNA、dsRNA等が挙げられ、SASP因子遺伝子のmRNAの翻訳を抑制する核酸としては、アンチセンス核酸、miRNA、リボザイム核酸等が挙げられ、SASP因子遺伝子の転写を抑制する核酸としてはデコイ核酸等が挙げられる。また、これらの核酸は、前駆体であってもよい。
前記「RNAi誘導性核酸」とは、細胞内に導入されることにより、RNA干渉を誘導し得る2本鎖構造のRNA分子をいう。RNA干渉とは、mRNAと同一の塩基配列(又はその部分配列)を含む2本鎖構造のRNAが、当該mRNAの発現を抑制する効果をいう。RNAi誘導性核酸としては、siRNA、その一部にステムループ構造を有するshRNA (small hairpin RNA)等が挙げられるが、転写活性抑制の強さからsiRNAが好ましい。
SASP因子に対するsiRNAは、具体的には、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19の塩基配列に対応するmRNAにおける連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖からなるものである。siRNAの長さは、RNA干渉を誘導できる限り特に限定はされないが、通常18~25個程度である。SASP因子に対するsiRNAは、センス鎖、アンチセンス鎖の一方又は双方の5'末端又は3'末端において1~5個程度の付加的塩基を有していてもよい。
SASP因子に対するshRNAは、具体的には、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19の塩基配列における標的領域の配列、ステムループとなるスペーサー配列、前記標的領域の配列に対する相補配列から構成される。
siRNAの設計方法は、当業者に公知であり、siRNAの様々な設計ソフトウエア又はアルゴリズムを用いて、上記塩基配列から適切なsiRNA の塩基配列を選択することができる。siRNAの設計ソフトウエアとしては、例えばBIONEER Turbo SiDesigner等が挙げられる。
前記「アンチセンス核酸」とは、標的遺伝子の転写産物(mRNA) の塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含む核酸であって、標的mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、タンパク質合成を抑制する機能を有するものである。アンチセンス核酸は、DNA、RNA、DNA/RNA キメラのいずれであってもよい。ここで「実質的に相補的である」とは、塩基配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上、最も好ましくは98%以上の相補性を有することをいう。
SASP因子に対するアンチセンス核酸は、具体的には配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19の塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含み、上記の機構によってSASP因子への翻訳を阻害するものであれば長さは特に制限されず、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19の塩基配列の全配列を標的するものでなくても、部分配列を標的とするものでもよい。SASP因子の種類によるが、合成の容易さの観点から、長さは約10塩基~約50塩基が好ましく、約15塩基~約30塩基がより好ましい。このようなアンチセンス核酸の設計は、当技術分野で公知であり、当業者であればSASP因子遺伝子の塩基配列情報に基づいて適宜設計することができる。
前記「miRNA」とは、SASP因子遺伝子の3'非翻訳領域(UTR) に結合し、標的mRNAを不安定化して遺伝子の翻訳を抑制する作用を有する1本鎖RNAをいう。miRNAは、pri-miRNA(primary miRNA)、pre-miRNA(precursor miRNA)、成熟miRNAのいずれでもよいが、成熟miRNAが好ましい。
前記「リボザイム核酸」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいい、SASP因子の転写産物(mRNA) を、コード領域の内部で特異的に切断する。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。
また、上記の核酸(siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンス核酸、リボザイム核酸)は、標的細胞又は組織において発現可能なベクターに挿入したものであってもよい。当該発現ベクターには、発現対象となる核酸と、当該核酸の種類によって適宜選択されたプロモーターを含む。また、当該発現ベクターには、選択マーカー遺伝子を含んでもよい。本発明に使用する発現ベクターとしては、ヒト等の哺乳動物において前記SASP因子の発現を阻害する物質を産生できるものであれば特に制限はされないが、ウイルスベクターが好ましく、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、センダイウイルス等のウイルスベクターが挙げられる。
また、SASP因子の活性又は発現を阻害する物質は、SASPに作用してその活性又は発現を阻害する機能を有する限り、低分子化合物、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質(酵素等)、脂質、炭水化物(糖等)、ステロイド、動・植物組織抽出物、微生物培養物等であってもよい。
上記のSASP因子の活性又は発現を阻害する物質(以下、「SASP因子阻害物質」という)は、マクロファージの機能低下、例えば、マクロファージの貪食能の低下を抑制することができる。マクロファージの貪食能とは、マクロファージが、生体内の有害物質を取り込み、これらを分解する機能であり、食作用又はファゴサイトーシスとも呼ばれる。マクロファージが貪食する有害物質としては、ウイルス又は細菌などの病原体、がん細胞、加齢により組織や臓器に蓄積する老化細胞、分化能や増殖能が低下した老化幹細胞、損傷細胞、死細胞、老廃物(酸化悪玉コレステロール、認知症の原因となるアミロイドβ、メラニン)等が知られている。よって、本発明のマクロファージの機能低下抑制剤は、上記のマクロファージが貪食する有害物質の生体内処理(クリアランス)の低下に起因又は関連する疾患や症状の治療、改善、予防、進行の遅延に有効である。このようなマクロファージの貪食能低下に関連する疾患や症状としては、例えば、加齢に伴い蓄積される老化細胞の分泌物質による臓器や組織の破壊や機能低下に関連する様々な加齢性疾患(皮膚の光老化、動脈硬化症、変形性関節症、白内障、加齢黄斑変性症等)、感染症(インフルエンザ、肺炎、結核)、アレルギー性疾患(花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性胃腸炎、蕁麻疹、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎等)、創傷治癒の遅延(褥瘡等)、自己免疫性疾患(関節リウマチ、多発性筋炎、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎等)、がん、炎症性腸疾患、認知症(アルツハイマー型認知症等)、神経障害性疼痛、代謝異常及び低下等が挙げられる。
SASP因子阻害物質は、そのまま使用することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物とともに、上記のマクロファージの機能低下に関連する疾患又は症状の治療若しくは改善、又は予防を目的とした、マクロファージの機能低下抑制用の医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品等の各種組成物に配合して提供することができる。なお、本発明の医薬品には、動物に用いる薬剤、即ち獣医薬も包含されるものとする。
SASP因子阻害物質を医薬品に配合する場合は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて、適宜選択した製剤用基材や担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、噴射剤、着色剤、甘味料剤、矯味剤、香料等を適宜添加し、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。本発明の医薬品を上記の各形態で提供する場合、通常当業者に用いられる製法、たとえば日本薬局方の製剤総則[2]製剤各条に示された製法等により製造することができる。
経口投与用製剤には、例えば、デンプン、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、ソルビトール、マンニトール、結晶セルロース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、又はデキストリン等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、又はヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール、又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤などを用いることができるが、これらに限定はされない。
非経口投与用製剤には、蒸留水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、ミョウバン水、植物油等の溶剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトール等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤などを用いることができるが、これらに限定はされない。
また、上記の製剤において、有効成分が核酸分子である場合は、当該核酸分子が標的細胞又は組織に移行され易いように、核酸導入補助剤と共に製剤化されていることが望ましい。核酸導入補助剤としては、具体的には、リポフェクタミン、オリゴフェクタミン、RNAiフェクト、リポソーム、ポリアミン、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム、デンドリマー等が挙げられる。
本発明の医薬品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、液剤、丸剤、乳剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤などの経口剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、座剤、軟膏剤、ローション剤、点眼剤、噴霧剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤などの非経口剤などが挙げられる。また、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよく、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。また、マクロファージの機能低下に関連する疾患又は症状で、皮膚関連の疾患又は症状を治療、改善、又は予防するための医薬品として用いる場合に適した形態は外用製剤であり、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤、貼付剤(パップ剤、プラスター剤)、フォーム剤、スプレー剤、噴霧剤などが挙げられる。軟膏剤は、均質な半固形状の外用製剤をいい、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏を含む。ゲル剤は、水不溶性成分の抱水化合物を水性液に懸濁した外用製剤をいう。液剤は、液状の外用製剤をいい、ローション剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤等を含む。
SASP因子阻害物質を化粧品や医薬部外品に配合する場合は、その剤形は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油二層系、又は水-油-粉末三層系等のいずれでもよい。また、当該化粧品や医薬部外品は、SASP因子阻害物質とともに、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであってもよい。皮膚外用組成物の配合成分としては、例えば、油脂類(オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等)、ロウ類(ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ等)、炭化水素類(流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ワセリン等)、脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)、高級アルコール類(ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等)、有機酸類(クエン酸、乳酸、α-ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等)、糖類(マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン等)、蛋白質及び蛋白質の加水分解物、アミノ酸類及びその塩、ビタミン類、植物・動物抽出成分、種々の界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等が挙げられる。
化粧品や医薬部外品の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、クリーム、パック、マスク、洗顔料、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、浴用剤、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、育毛剤等が挙げられる。
SASP因子阻害物質を上記の組成物(医薬品、医薬部外品、化粧品)に配合する場合、その含有量は特に限定されず、組成物の種類や形態、一般的な使用量、効能・効果などを考慮して適宜設定・調整すればよい。また、製剤化における有効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加してもよく、作業性を考えて適宜選択すればよい。
また、医薬品等とした場合の投与量は、SASP因子阻害物質の種類、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度などに応じて、SASP因子の活性又は発現の阻害が可能な範囲で適宜設定することができる。
また、SASP因子阻害物質は、飲食品にも配合できる。本発明において、飲食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は健康増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などを表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品、ならびに科学的根拠に基づいた機能性について消費者庁長官に届け出た内容を表示できる機能性表示食品が含まれる。また特別用途食品には、特定の対象者や特定の疾患を有する患者に適する旨を表示する病者用食品、高齢者用食品、乳児用食品、妊産婦用食品等が含まれる。ここで、飲食品に付される特定の保健の効果や栄養成分の機能等の表示は、製品の容器、包装、説明書、添付文書などの表示物、製品のチラシやパンフレット、新聞や雑誌等の製品の広告などにすることができる。
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。特に、上記の健康食品等の場合の形状としては、例えば、タブレット状、丸状、カプセル状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等が好ましい。
飲食品の種類としては、パン類、麺類、菓子類、乳製品、水産・畜産加工食品、油脂及び油脂加工食品、調味料、各種飲料(清涼飲料、炭酸飲料、美容ドリンク、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など)及び該飲料の濃縮原液及び調整用粉末等が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生法上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、プドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、デンプン等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
本発明の飲食品が一般的な飲食品の場合は、その飲食品の通常の製造工程においてSASP因子阻害物質を添加する工程を含めることによって製造することができる。また健康食品の場合は、前記の医薬品の製造方法に準じればよく、例えば、タブレット状のサプリメントでは、SASP因子阻害物質に、賦形剤等の添加物を添加、混合し、打錠機等で圧力をかけて成形することにより製造することができる。また、必要に応じてその他の材料(例えば、ビタミンC、ビタミンB、ビタミンB等のビタミン類、カルシウムなどのミネラル類、食物繊維等)を添加することもできる。
本発明の飲食品におけるSASP因子阻害物質の配合量は、SASP因子の活性又は発現の阻害効果を発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性及びコストなどを考慮して適宜設定すればよい。
2.マクロファージの機能低下抑制剤のスクリーニング方法
本発明によれば、IL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFから成る群より選択される1種又は2種以上のSASP因子の活性又は発現の阻害を指標とする、マクロファージの機能低下抑制剤のスクリーニング方法が提供される。
本発明のスクリーニング方法は、SASP因子の活性又は発現の評価に適切な細胞を用いる方法であれば、特に限定されないが、典型的には、細胞におけるSASP因子遺伝子の発現量やSASP因子(タンパク質)の発現量を測定する方法が挙げられる。より具体的には、本発明のスクリーニング方法は、被験物質の存在下で上記SASP因子を発現する細胞を培養し、同細胞におけるSASP因子の発現量を測定する工程、被験物質の非存在下(対照)における同細胞におけるSASP因子の発現量を測定する工程、被験物質の存在下で測定した発現量が、被験物質の非存在下で測定した発現量に比べて有意に減少した場合に、当該被験物質をマクロファージの機能低下抑制剤の候補物質として選択する工程を行うことにより行うことができる。
本発明において、被験試料及び対照試料におけるSASP因子遺伝子の発現量は、当業者に公知の任意の方法により測定することができ、また、測定は、各方法の常法に従って実施すればよい。遺伝子の発現量とは、遺伝子の転写産物であるmRNA量をいう。mRNA量の測定は、所望のmRNA量を測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、SASP因子遺伝子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとした遺伝子増幅法、又は、SASP因子遺伝子にハイブリダイズするオリゴ(ポリ)ヌクレオチドをプローブとしたハイブリダイゼーション法を利用することができる。具体的には、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法、マイクロアレイ法、ノーザンプロット法、ドットブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法などが挙げられる。上記の方法に用いるプライマーやプローブは、標識し、当該標識のシグナル強度を調べることによりmRNA量を測定することができる。なかでも、リアルタイムRT-PCR法はRNAを直接サンプルに使用でき、遺伝子増幅過程を光学的に測定することで増幅に必要な温度サイクルの回数から遺伝子定量が可能である上で好ましい。なお、上記の方法に用いるプライマー及びプローブは前記の各SASP因子遺伝子の塩基配列(配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び19)に基づいて当業者であれば適宜設計し、調製することができる。各方法について様々なプロトコルが報告されており、当業者であれば公知のプロトコルに従い、又は公知のプロトコルを適宜修正や変更を行い実施することができる。
タンパク質の発現量の測定は、例えば、各SASP因子に対する抗体又は抗体断片を用いて免疫学的に測定する方法を用いることができる。具体的には、ブロッティング法、ドットブロット法、プロテインアレイ、免疫沈降法、酵素免疫測定法(ELISA) 、放射線免疫測定法(RIA) 、蛍光抗体法、免疫細胞染色等を挙げることができる。これらの方法についても、常法のプロトコル、又は常法のプロトコルを適宜修正・変更したプロトコルによって実施することができる。
また、本発明のスクリーニング方法の別の態様として、SASP因子を発現する細胞として、レポーター遺伝子をSASP因子の転写調節領域に作動可能に連結したプラスミドを導入した細胞を用い、レポーター遺伝子の発現量を測定してもよい。レポーター遺伝子としては、例えばGFP遺伝子、GUS遺伝子、LUS遺伝子等が挙げられる。
また、本発明のスクリーニング方法のさらなる別の態様として、SASP因子の生理活性を測定してもよい。SASP因子の生理活性の測定は、SASP因子の種類により異なるが、各SASP因子で知られた生理活性(酵素活性、細胞増殖活性、細胞の分化誘導活性、物質分泌活性等)の変化を測定することにより行うことができる。
本発明のスクリーニング方法を、前記の細胞におけるSASP因子遺伝子の発現量やSASP因子(タンパク質)の発現量を測定することにより行う場合、発現の阻害は、mRNA量又はタンパク質量が、対照と比較して統計学的に有意に減少した場合に、SASP因子の発現が阻害されたと判断することができ、例えば、対照に対して80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下に減少することをいう。
本発明の方法に用いる上記各SASP因子の発現量を測定するための試薬を予め組み合わせてキット化することもできる。例えば、キットには、PCRに用いるプライマーセット、プローブとして用いるポリ(オリゴ)ヌクレオチド、又は抗体のいずれかを少なくとも含んでいればよい。また、該キットには、必要に応じて、RNA抽出用試薬、PCR用緩衝液やDNAポリメラーゼ等のPCR用試薬、染色剤や電気泳動用ゲル等の検出用試薬、固定化担体、標識物質、標識の検出に用いられる基質化合物、陽性や陰性の標準試料、キットの使用方法を記載した指示書等を含めることもできる。なお、キット中の試薬は溶液でも凍結乾燥物でもよい。
スクリーニングに用いる被験物質は、主に医薬品及び/又は化粧品に利用できる成分を対象とし、例えば、動・植物組織の抽出物もしくは微生物培養物等の複数の化合物を含む混合物、またそれらから精製された標品;天然に生じる分子(例えば、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、脂質、ステロイド、糖タンパク質、プロテオグリカンなど);あるいは天然に生じる分子の合成アナログ又は誘導体(例えば、ペプチド擬態物など);及び天然に生じない分子(例えば、コンビナトリアルケミストリー技術等を用いて作製した低分子有機化合物);ならびにそれらの混合物などを挙げることができる。また、被験物質としては単一の被験物質を独立に試験しても、いくつかの候補となる被験物質の混合物(ライブラリーなどを含む)について試験をしてもよい。複数の被験物質を含むライブラリーとしては、合成化合物ライブラリー、ペプチドライブラリーなどが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
1.実験方法
<実験1> SASP因子のマクロファージ貪食能に対する影響
ヒト単球性白血球株THP-1細胞をRPMI1640培地(ThermoFisher社製)にて必要数まで培養した。培養したTHP-1細胞を12well plateに播種し、PMA (ホルボールエステル-12-ミリステート-13-アセテート)を160nM含有するRPMI1640培地を用いて3日間刺激することより、マクロファージヘ分化させ、THP-1由来マクロファージを得た。
SASP因子のマクロファージ貪食能に対する影響の解析は、マクロファージをSASP因子で刺激し、血清飢餓(serum starvation)によって死滅させた血球細胞(A6細胞)に対する該マクロファージの貪食能を以下のようにして測定することによって行った。
まず、SASP因子としてIL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIF(いずれもPeprotec社製)を終濃度がlOng/mLになるようにRPMI1640培地へ添加し、mCitrine遺伝子を導入した上記THP-1由来マクロファージを24時間刺激した。また、各因子の併用の影響を見るために、IL-1αとIL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、又はMIFとを混合し、混合した終濃度がlOng/mL(各因子の濃度は5ng/mL)になるように同培地へ添加した系についても同様にしてマクロファージの刺激を行った。
その後、Propidium Iodide(PI)で標識した死滅血球細胞を加え、更に16時間共培養した後、培地中の死滅血球細胞を除き、THP-1由来マクロファージを回収した。THP-1由来マクロファージの回収にはトリプシン-EDTA溶液を用いた。貪食能は、mCitrineとPIの波長をFACSaria(日本BD社製)にてそれぞれ測定し、その測定値から総マクロファージに対する死滅血球細胞を貪食したマクロファージの比を求めることによって評価した。
<実験2> SASP因子阻害によるマクロファージ貪食能に対する影響
SASP因子(IL-1α、IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIF)の培地への添加と同時に、各SASP因子に対する抗体(抗IL-1α抗体、抗IL-1β抗体、抗IL-8抗体、抗GM-CSF抗体、抗TNF-α抗体、抗IFN-γ抗体、抗MMP-1抗体、抗MMP-2抗体、抗PAI-2抗体、及び抗MIF抗体)(いずれもR&D system社製)を終濃度がlOOng/mLになるように添加し、実験1と同様にして貪食能を評価した。
2.結果
上記実験1及び実験2の評価結果を表1に示す。結果は、SASP因子未添加(コントロール)におけるマクロファージの貪食能を100%とし、SASP因子添加におけるマクロファージの相対貪食能を算出した値を示す。
Figure 0007193121000001
表1に示すように、SASP因子添加によりTHP-1由来マクロファージの貪食能が低下した。また、IL-1αと他の因子を混合した場合、マクロファージの貪食能がより低下する傾向が認められ、特に、IL-1αとIL-1β、IL-1αとTNF-αの混合系においてマクロファージの貪食能の低下が著しかった(表1、「抗SASP因子抗体なし」の欄)。
これに対し、抗SASP因子抗体をSASP因子と同時に添加することによりTHP-1由来マクロファージの貪食能の低下が回復した(表1、「抗SASP因子抗体あり」の欄)。
本発明は、マクロファージの機能低下に関連する疾患又は症状の治療又は予防を目的とした医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品の製造分野において利用できる。

Claims (2)

  1. 細胞老化関連分泌現象(SASP)因子に対する中和抗体を有効成分として含有する、マクロファージの貪食能低下抑制剤であって、該中和抗体が、下記の(A)及び(B)の組み合わせである、上記マクロファージの貪食能低下抑制剤
    (A)IL-1αに対する中和抗体
    (B)IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFから成る群より選択される1種に対する中和抗体
  2. (A)IL-1αと、(B)IL-1β、IL-8、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、MMP-1、MMP-2、PAI-2、及びMIFから成る群より選択される1種とのSASP因子の組み合わせの活性又は発現の阻害を指標とする、マクロファージ貪食能低下抑制剤のスクリーニング方法。
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