JP7192622B6 - セメントクリンカの製造方法及びセメント組成物 - Google Patents

セメントクリンカの製造方法及びセメント組成物 Download PDF

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Description

本発明は、セメントクリンカの製造方法及びセメント組成物に関する。
セメントクリンカ(以下、単に「クリンカ」ということがある。)は、主成分としてCaO、SiO、Al、Feからなっており、石灰石、珪砂、粘土等を混合・粉砕したセメント原料を、仮焼し、該仮焼されたセメント原料をロータリーキルン等の焼成炉で焼成することで製造される。
過去にはアルミニウム源として天然の粘土を使用していたが、近年リサイクル等の観点から、石炭灰や建設発生土等の産業廃棄物の利用が進められている。上記のような産業廃棄物は、アルミニウムを多く含有しているため、これらをセメント原料の一部として利用することにより、クリンカ中のアルミニウム量を調整することができ、現在は天然の粘土に置き換えて使用されている。
しかし、上記のような産業廃棄物の使用量を増加させると、クリンカ中のアルミネート相CA(3CaO・Al)の含有量が増加し、得られるセメントの水和熱の上昇を招く恐れがある。
ところで、セメント原料には、上記以外の材料として、廃石膏等が用いられることがある。
従来から、セメントの初期強度を改善する等の目的から、クリンカ中のSO量を高く調整する方法が知られており、例えば、特許文献1では、クリンカ中のSO量を高めるため、硫黄源として廃石膏ボードを利用して、クリンカに必要なSO量を確保する方法が提案されている。
特開2017-137216号公報
しかし、上述のような廃石膏を用いる場合も、上記のようなアルミニウム源を多く含むクリンカ原料と併用する場合には、クリンカ中のCAの含有量が増加し、得られるセメントの水和熱の上昇を招く恐れがあった。また、廃石膏を用いる場合は、硫黄成分が揮発したり、クリンカ中の硫酸アルカリ量が増加したりする等、操業やクリンカの品質に悪影響を及ぼす恐れがあった。
そこで本発明は、アルミニウム含有廃棄物の使用量が増加しても、セメントの品質を良好に維持でき、クリンカの製造時の操業性を悪化させることがない、セメントクリンカの製造方法及びセメント組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、JIS A 1102:2014に準じて測定した粗粒率が、0.95~4.05である硫黄含有物質を、キルンバーナーから吹き込むことにより、アルミニウム含有廃棄物の使用量が増加しても、セメントの品質を良好に維持でき、クリンカの製造時の操業性を悪化させることがない、セメントクリンカが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] JIS A 1102:2014に準じて測定した粗粒率が0.95~4.05である硫黄含有物質を、キルンバーナーから吹き込む、セメントクリンカの製造方法。
[2] 前記硫黄含有物質が、石膏である、上記[1]に記載のセメントクリンカの製造方法。
[3] 前記硫黄含有物質の粒度が、目開き2.36mmの篩の残分量が5質量%以下であり、且つ目開き0.15mmの篩の通過分量が5質量%以下である、上記[1]又は[2]に記載のセメントクリンカの製造方法。
[4] 上記[1]~[3]のいずれかに記載のセメントクリンカの製造方法で製造されたセメントクリンカを含む、セメント組成物。
本発明によれば、アルミニウム含有廃棄物の使用量が増加しても、セメントの品質を良好に維持でき、セメントクリンカの製造時の操業性を悪化させることがない、セメントクリンカの製造方法及びセメント組成物を提供することができる。
本発明の実施の形態におけるクリンカ製造装置を示す模式図である。
本発明に従うセメントクリンカの製造方法及びセメント組成物の実施形態について、以下で詳細に説明する。
<セメントクリンカの製造方法>
本発明のセメントクリンカの製造方法は、JIS A 1102:2014に準じて測定した粗粒率が0.95~4.05である硫黄含有物質を、キルンバーナーから吹き込むことを特徴とする。
従来、アルミニウム源として産業廃棄物等の使用量を増加させると、クリンカ中のCAの含有量が増加し、得られるセメントの水和熱の上昇を招く問題があった。
本発明者らは、鋭意研究した結果、粒度調整された硫黄含有物質をキルンバーナーから吹き込むことにより、アルミニウムが硫黄と共に、CA以外の鉱物、例えばビーライトCS(2CaO・SiO)に固溶し易くなり、クリンカ中のCAの含有量の増加を抑制できることを見出した。
特に、本発明者らは、投入する硫黄含有物質の硫黄分が、CA以外の鉱物へのアルミニウムの固溶に、十分に寄与するための「粒度」に着目した。
すなわち、硫黄含有物質が、粗粒を多く含む場合、(1)硫黄含有物質がそのまま排出される、(2)硫黄含有物質がCAと反応してアウインCAS(3CaO・Al・CaSO)等の急結成分を生成する、或いは微粒を多く含む場合、(3)硫黄分が揮発する、(4)硫酸アルカリ等の化合物を生成し易くなる等、硫黄含有物質として投入した硫黄分が、CA以外の鉱物へのアルミニウムの固溶に十分に寄与しないため、クリンカ中のCAの含有量の増加を十分に抑制できず、セメントの水和熱の上昇を抑制できないことがわかった。
そこで、本発明者らは、上記知見に基づき、投入する硫黄含有物質の粗粒率を所定の範囲に調整することで、投入する硫黄含有物質の硫黄分が、効果的に、CA以外の鉱物へのアルミニウムの固溶を促すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
このような本発明のセメントクリンカ製造方法によれば、アルミニウム含有廃棄物の使用量を増やしても、クリンカ中のCAの含有量を増加させないため、セメントの水和熱の上昇を抑制できる。
また、微粒を多く含む場合、上記(3)のような問題があり、硫黄分がキルンから予備加熱装置内を循環し、キルンの上流にある予備加熱装置内で析出して、サイクロン閉塞を生じさせる問題もあった。しかし、本発明のセメントクリンカの製造方法によれば、硫黄含有物質の粒度を適切に調整しているため、クリンカの製造時の操業性を悪化させることもない。
なお、硫黄含有物質としては、硫黄を含有する材料であれば適宜使用できるが、例えば、石膏、オイルコークス及び硫酸スラッジ等が挙げられる。中でも、石膏が好ましい。
また、石膏としては、例えば、廃石膏や、排脱二水石膏、天然石膏等を好ましく用いることができる。
上記のような硫黄含有物質は、上記から選択される1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
硫黄含有物質の粗粒率は0.95~4.05であり、好ましくは1.50~3.50である。上記範囲とすることにより、CA以外の鉱物中に硫黄と共にアルミニウムを固溶させることができ、アルミニウム含有廃棄物の使用量を増やしても、クリンカ中のCAの含有量を増加させず、セメントの水和熱の上昇を抑制できる。更に、上記範囲あれば、操業性を悪化させることもなく、セメントの流動性の悪化も抑制でき、高品質のクリンカが得られる。
一方、硫黄含有物質の粗粒率が、上記範囲外であると、クリンカ中のCAの含有量が増加して、セメントの水和熱が上昇する傾向にある。更に、硫黄含有物質の粗粒率が、0.95未満である場合、多段サイクロンの最下層のサイクロンより採取した原料(以下、単に「C1原料」という)中のSO量が増加し、サイクロン閉塞が生じて、操業性を悪化させる可能性があり、或いはクリンカ中の硫酸アルカリの含有量が増加し、セメントの流動性が悪化する可能性がある。また、硫黄含有物質の粗粒率が、4.05超である場合、硫黄含有物質がそのまま排出されたり、CASが生成したりする等、得られるクリンカの品質悪化を招く恐れがある。
なお、ここで粗粒率は、JIS A 1102:2014に準じて測定した値である。
また、硫黄含有物質の粒度は、好ましくは目開き2.36mmの篩の残分量が5質量%以下であり、且つ目開き0.15mmの篩の通過分量が5質量%以下である。上記範囲とすることにより、CA以外の鉱物中に硫黄と共にアルミニウムを固溶させることができ、アルミニウム含有廃棄物の使用量を増やしても、クリンカ中のCAの含有量を増加させず、セメントの水和熱の上昇を抑制できる。更に、上記範囲あれば、操業性を悪化させることもなく、セメントの流動性の悪化も抑制でき、高品質のクリンカが得られる。
なお、目開き2.36mmの篩の残分量は、より好ましくは2質量%以下である。また、目開き0.15mmの篩の通過分量は、より好ましくは2質量%以下である。
目開き2.36mmの篩の残分量及び目開き0.15mmの篩の通過分量は、実施例に記載の方法により測定したものである。
以下、本実施形態に係るセメントクリンカの製造方法の具体的な一例を説明する。
本実施形態のセメントクリンカの製造方法は、セメント原料を調製する原料調製工程と、調製されたセメント原料を予備加熱する予備加熱工程と、予備加熱されたセメント原料を焼成してセメントクリンカとする焼成工程とを備えることが好ましい。
まず原料調製工程について説明する。
原料調製工程では、まず、石灰石、粘土、珪石、鉄原料等の原料を、ミル等を用いて粉砕する。
この時、各原料として、汚泥、スラッジ、高炉スラグ、焼却灰、鋳物砂、石炭灰、建設発生土等の各種産業廃棄物を混合してもよい。
特に、アルミニウム源としては、例えば石炭灰、建設発生土、アルミドロス及びアルミスラッジ等のアルミニウム含有廃棄物や、ボーキサイト及び粘土等の天然鉱物が挙げられる。中でも、原料におけるリサイクル性を高める観点から、アルミニウム源としては、アルミニウム含有廃棄物を用いることが好ましい。
アルミニウム含有廃棄物は、アルミニウムを含有するものであれば特に限定されないが、例えば上記のような産業廃棄物が挙げられ、中でも石炭灰や、建設発生土が好ましい。上記のような産業廃棄物は、アルミニウムを多く含有しているものが多く、これらをアルミニウム源として用いることにより、リサイクル性を高めることができる。したがって、本発明の製造方法では、セメント原料は、少なくともアルミニウム含有廃棄物を含有することが好ましい。
各原料は、所望の目標組成となるように調合し、混合粉砕した後に、エアブレンディングサイロに導入する。
エアブレンディングサイロでは、攪拌用の空気を導入して内部の原料が空気によって攪拌されることが好ましい。これにより、均一なセメント原料に混合される。
混合されたセメント原料は原料サイロ中に貯留する。
なお、本発明の製造方法は、クリンカ中のアルミニウム量を高める場合に好適であるため、クリンカの目標組成として、Alの含有量が、好ましくは5.70質量%以上であり、より好ましくは5.90質量%以上である場合により好適である。上記のような目標組成のクリンカを製造する場合、従来の製造方法では、特にCAの生成量が増える等の問題があったが、本発明の製造方法によれば、CAの生成量を効果的に抑制することができ、Alの含有量が高く、且つ高品質のクリンカが得られる。
次に、セメント原料を予備加熱する予備加熱工程について、図1を用いて説明する。
図1は本実施形態で用いるクリンカ製造装置10の一部である、予備加熱装置4、焼成炉としてのキルン5及びクリンカクーラー7を示す概略図である。
図1に示されるように、原料サイロ1に貯留したセメント原料は、多段サイクロン2a~2eと仮焼炉3とを備えた予熱加熱装置4を用いて、熱交換および仮焼によって予備加熱する。
次に、焼成工程について説明する。
セメント原料を、シュート6から窯尻5aを通しキルン5内へ導入する。
キルン5には石炭などの燃料を噴出させるバーナーが設けられており、このバーナーによって、キルン5内のセメント原料を焼成する。
なお、焼成条件は、公知の条件とすることができる。例えば、キルン5内の温度は、1400~1500℃とすればよい。
更に、本発明の製造方法では、石炭などの燃料を噴出させるバーナーから、所定の粗粒率の硫黄含有物質を吹き込むことを特徴とする。
これにより、アルミニウム含有廃棄物の使用量が増加しても、クリンカ中のCAの含有量は増加せず、セメントの水和熱の上昇を抑制できる。更に、所定の粗粒率の硫黄含有物質を用いれば、操業性を悪化させることもなく、セメントの流動性の悪化も抑制でき、高品質のクリンカが得られる。
硫黄含有物質の粒度の調整方法は、特に限定されないが、例えばハンマクラッシャ、ジョークラッシャ、竪型ミル等の粉砕機にて粉砕した後に、振動篩、トロンメル等により予定の粒度まで篩い分ける方法が挙げられる。
硫黄含有物質の吹き込み方法は、特に限定されないが、例えばキルンバーナーへ導入される石炭、廃プラスチック、木屑、重油等の供給ルートを用いて、吹き込む方法が挙げられる。
キルン5で焼成されたセメント原料をキルン5からクリンカクーラー7へ移送し、クリンカクーラー7で焼成されたセメント原料を冷却してクリンカを製造する。
冷却されたクリンカは、さらに高炉スラグや、石膏などと混合し、ミルなどで粉砕してセメントとして製造される。
<セメント組成物>
本発明のセメント組成物は、本発明の製造方法により得られたクリンカを含む。
このようなセメント組成物は、高強度で、水和熱の上昇及び流動性の低下が抑制される。
本発明のセメント組成物は、上記クリンカの他に、石膏や、石灰石等の少量混合成分を適宜含有していてもよく、具体的な配合は、JISR5210:2009「ポルトランドセメント」の規格に従い、適宜調製することが好ましい。
また、原料の混合方法は、特に限定されるものではなく、各原料を同時混合した後に粉砕してもよいし、各原料を別々に粉砕した後に混合してもよい。なお、混合手段及び粉砕手段は公知の手段とすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(参考例1)
まず、得られるセメントクリンカの組成が表1に示す目標組成Aになるように、セメント原料として、原単位で、石灰石:1200kg/t、珪石:20kg/t、石炭灰:110kg/t、高炉二次灰:20kg/tを調合し、これを多段サイクロンにて900℃に加熱した後、仮焼炉で1000℃に仮焼し、キルン(ロータリーキルン)へ導入した。その後、キルンにて、1450℃で焼成し、クリンカクーラーで冷却して、セメントクリンカを得た。
Figure 0007192622000001
なお、表1の諸係数H.M.、S.M.及びI.M.は、それぞれ水硬率、ケイ酸率及び鉄率であり、化学組成に基づき、下記計算式により算出される値である。
水硬率(H.M.)=CaO/(SiO+Al+Fe
ケイ酸率(S.M.)=SiO/(Al+Fe
鉄率(I.M.)=Al/Fe
(実施例1)
実施例1では、得られるセメントクリンカの組成が表1に示す目標組成Cになるように、石炭灰の原単位を、参考例1よりも12kg/t分増加させると共に、キルンバーナーから、表2に示す廃石膏Cを原単位で10kg/t吹き込んで、セメントクリンカの焼成を行った以外は、参考例1と同様の方法でセメントクリンカを得た。
(実施例2~5)
実施例2~5では、廃石膏Cに替えて、表2に示す廃石膏D~Gをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の方法でセメントクリンカを得た。
(比較例1)
比較例1では、得られるセメントクリンカの組成が表1に示す目標組成Bになるように、石炭灰原単位を、参考例1よりも12kg/t分増加させた以外は、参考例1と同様の方法でセメントクリンカを得た。
(比較例2及び3)
比較例2及び3では、廃石膏Cに替えて、廃石膏A及びBをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の方法でセメントクリンカを得た。
Figure 0007192622000002
なお、表2に示される廃石膏A~Gは、株式会社テクノプラント製の廃石膏粉である。各廃石膏粉は、複数のバイブレーティングスクリーン、ハンマクラッシャ及びパルベライザを用い、適宜粒度調整をされたものである。
また、表2に示す廃石膏の粒度の測定は、目開き4.75mm、2.36mm、118mm、0.6mm、0.3mm及び0.15mmの各篩を用いて行った。また、粗粒率は、JISA1102:2014に準拠して測定された値である。
(評価)
上記実施例及び比較例に係るセメントクリンカについて、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りである。なお、参考例1は、従来の操業状態を再現したリファレンスであるため、下記の測定及び分析は実施例及び比較例と同じ条件で行ったが、各種評価及び総合評価は行わなかった。結果を表3に示す。
1.セメントクリンカの製造
上記実施例及び比較例に係るセメントクリンカの製造について、以下の評価を行った。
<操業性>
操業性は、C1原料のSO量で評価した。
C1原料として、多段サイクロンの最下層(図2のサイクロン2eに対応)より、測定用サンプルを採取した。
SO量は、蛍光X線分析装置(サイマルティックス14、株式会社リガク製)を用いて、検量線法により成分分析を行い、硫黄量から酸化物換算で求めた。
測定試料は、自動粉砕装置(HP-MA、ハルツォク社製)を用いて、上記測定用サンプルを前処理粉砕したものを用い、加圧成型法にて粉末プレスして作製した。
本実施例では、SO量が2.8質量%以下である場合を良好「○」、2.8質量%超である場合を不良「×」と評価した。
2.セメントクリンカの組成
上記実施例及び比較例に係るセメントクリンカについて、以下の方法で組成を分析、評価した。
<蛍光X線分析(XRF)>
蛍光X線分析は、JIS R 5204:2002「セメントの蛍光X線分析方法」に準拠して行った。
測定装置としては、蛍光X線分析装置(同上)を使用した。
また、測定試料は、自動粉砕装置(同上)を用いて、得られたセメントクリンカを前処理粉砕したものを用い、ガラスビード法により作製した。なお、ガラスビードは、オートビードサンプラー(BS8B、株式会社リガク製)により作製した。
表3において、Al及びSは、分析された各元素の原子量に基づいて、それぞれ酸化物に換算した値を示す。
<粉末X線回折測定(XRD)>
粉末X線回折測定は、粉末X線回析装置(D8 ADVANCE、Bruker社製)を用いて行った。測定条件は、管球Cu(Kα線:波長1.542Å)、管電圧40kV-管電流40mA、測定範囲2θ=10~70°、ステップ幅0.025°、計数時間0.6s/stepとした。なお、測定試料は、自動粉砕装置(同上)を用いて、予め微粉砕したものを用いた。
得られたX線回析プロファイルについて、解析ソフト(TOPAS ver4.2、Bruker社製)を用いてリートベルト解析を実施し、CAの含有量を算出した。また、硫酸アルカリ、石膏及びCASの各鉱物については、結晶ピークの同定を行った。
本実施例では、CAの含有量が参考例の値以下であり、硫酸アルカリ、石膏及びCASのいずれも検出されなかった場合を良好「○」、CAの含有量が参考例の値を超えるか、硫酸アルカリ、石膏及びCASの少なくとも1種が検出された場合を不良「×」と評価した。
3.セメントの特性評価
上記実施例及び比較例に係るセメントクリンカを用いて、セメントを作製し、以下の特性を評価した。
セメントは、上記各セメントクリンカに、排脱二水石膏(住友大阪セメント株式会社栃木工場受入品)をセメント中のSO含有量が2.0質量%となるように添加し、更に少量混合成分としての石灰石(住友大阪セメント株式会社製)をセメント中の含有量が4質量%となるように配合し、得られるセメントのブレーン比表面積が3300cm/gになるまで仕上ミルにて粉砕して作製した。
<モルタル圧縮強さ>
モルタル圧縮強さは、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準拠し、材齢28日の圧縮強さを測定した。
本実施例では、モルタル圧縮強さが60N/mm以上である場合を良好「○」、60N/mm未満である場合を不良「×」と評価した。
<水和熱>
上記セメントの水和熱は、JIS R 5203:2015「セメントの水和熱測定方法(溶解熱方法)」に準拠して、測定した。
本実施例では、水和熱が385J/g以下である場合を優「◎」、385J/g超400J/g以下である場合を良好「○」、400J/g超である場合を不良「×」と評価した。
<ペーストフロー>
上記セメント200gに、混和剤(マスターグレニウムSP8SBS、BASF社製)2.4gを配合し、該混和剤の配合量と注水した水の量との合計が70g(水セメント比:0.35)になるように注水して、以下の条件で練混ぜを行った。
条件:注水終了→低速(自転速度:毎分140±5回転、公転速度:毎分62±5回転)60秒間練→掻落15秒+静止15秒→高速(自転速度:毎分285±10回転、公転速度:毎分125±10回転)90秒練(計3分練)
なお、ペーストの練混ぜは、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」9.2.3で規定された練混ぜ機を用いた。
練混ぜ終了後1分以内に、SLコーン(径50mm、高さ51mm)に詰め、過剰分のセメントペーストを除き、表面を平滑にした。
注水終了4分後に、セメントペーストが充填されたSLコーンを平らな面に置いて、SLコーンを上方に取り去り、ペーストの広がりを観察した。ペーストが広がった後の直径のうち最大の部分の寸法Lを測定し、さらに該最大部分に直行する直径の寸法Lを測定した。この寸法L及びLの平均値を、ペーストフロー値とした。
本実施例では、ペーストフロー値が136mm以上である場合を良好「○」、136mm未満である場合を不良「×」と評価した。
4.総合評価
下記評価基準に基づき総合評価を行った。なお、本実施例では、総合評価でA及びBを合格レベルとした。
A(優):セメントクリンカの製造、セメントクリンカの組成及びセメントの特性評価の各評価が、「良好(○)」又は「優(◎)」である。
B(合格):セメントクリンカの製造、セメントクリンカの組成及びセメントの特性評価の各評価が、全て「良好(○)」である。
C(不合格):セメントクリンカの製造、セメントクリンカの組成及びセメントの特性評価の各評価の少なくとも1つが「不良(×)」評価である。
Figure 0007192622000003
表3に示されるように、実施例1~5では、所定の粗粒率の廃石膏が用いられているため、アルミニウム含有廃棄物である石炭灰の使用量を増やしても、セメントの水和熱の上昇を招かない、セメントクリンカが得られることが確認された。更に、操業性も良好であり、またセメントの流動性の悪化を招くこともなく、高品質のセメントクリンカが得られることが確認された。
これに対し、比較例1は、そもそも廃石膏を用いていないため、石炭灰の使用量を増やした結果、セメントクリンカ中のCAの含有量が増加し、セメントの水和熱が上昇することが確認された。
また、比較例2は、用いた廃石膏の粗粒率が小さすぎたため、廃石膏の硫黄分が揮発し、C1原料のSO量が増加しており、また得られるセメントクリンカにおいて硫酸アルカリが検出されており、投入した廃石膏の硫黄分がアルミニウムのCA以外の鉱物への固溶に十分に寄与していないことが確認された。そのため、石炭灰の使用量を増やした結果、セメントクリンカ中のCAの含有量が増加し、セメントの水和熱が上昇することが確認された。
また、C1原料のSO量の増加により操業性が悪化すること、並びに得られるセメントクリンカが硫酸アルカリを含有することで、セメントの流動性が悪化する等、セメントクリンカの品質悪化が確認された。
また、比較例3は、用いた廃石膏の粗粒率が大きすぎたため、得られるセメントクリンカにおいて石膏やCASが検出されており、投入した廃石膏の硫黄分がアルミニウムのCA以外の鉱物への固溶に十分に寄与していないことが確認された。そのため、石炭灰の使用量を増やした結果、セメントクリンカ中のCAの含有量が増加し、セメントの水和熱が上昇することが確認された。
また、得られるセメントクリンカが石膏やCASを含有することで、セメントクリンカの品質悪化が確認された。
10 クリンカ製造装置
1 原料サイロ
2a~2e サイクロン
3 仮焼炉
4 予備加熱装置
5 キルン
5a 窯尻
6 シュート
7 クリンカクーラー

Claims (1)

  1. JIS A 1102:2014に準じて測定した粗粒率が0.95~4.05である硫黄含有物質を、キルンバーナーから吹き込む、セメントクリンカの製造方法であって、
    前記硫黄含有物質が、石膏であり、
    前記硫黄含有物質の粒度が、目開き2.36mmの篩の残分量が5質量%以下であり、且つ目開き0.15mmの篩の通過分量が5質量%以下である、セメントクリンカの製造方法。
JP2019068830A 2019-03-29 2019-03-29 セメントクリンカの製造方法及びセメント組成物 Active JP7192622B6 (ja)

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