JP7190102B2 - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents
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Description
駆動用電動モータのうち三相誘導モータ(SRモータともいう)は、ステータコイル(固定子)に三相交流電流を流すことで回転磁界を発生させる一方、電磁誘導作用によりロータ(回転子)に誘導電流を発生させる。この回転磁界と誘導電流によって電磁力が生じてロータが回転している。この三相誘導モータは、永久磁石を用いるPMモータに比べて、コギングトルクが発生しない点、空走時の誘導起電力が発生しない点等の優位性があるため、車両用インホイールモータに適している。
車両がバウンド或いはリバウンドした場合やステアリングホイールが操舵された場合、車輪が大きく上下運動或いは回転運動するため、給電線に許容値以上の引張力が作用することがあり、給電線の損傷や経年劣化が懸念される。
そこで、車両の走行状態に伴う車輪の運動に拘らず、給電線の信頼性を確保する技術が提案されている。
インホイールモータを支持するナックル部材は、アッパアームとロアアームとに上下方向に延びる仮想キングピン軸回りに回動可能に保持され、更に、アッパアームとロアアームは、前後方向に延びる揺動軸回りに揺動可能に支持されている。
それ故、給電線は、キングピン軸回りの回動と揺動軸回りの揺動とに連動するインホイールモータの変位に追随する必要があり、変位を許容する最低限の線長確保と耐久性とが要求される。
特許文献1の技術は、前述したように、給電線が長尺化すると共に給電線の途中部をインホイールモータ支持部材と車体とに取り付けるための第1,第2取付部を夫々設けているため、バネ下重量の増加を招いている。このバネ下重量の増加は、バネ下固有振動数の低下によって車輪の路面追従性を低下させるため、結果的に、乗員による車両の操縦性を阻害することになる。
即ち、インホイールモータ駆動装置において、給電線の信頼性を確保しつつ、同時に車両の操縦性を確保することは容易ではない。
この構成によれば、回転接点機構の設置スペースを容易に確保することができる。
この構成によれば、路面からの飛散物による回転接点機構の破損を防止することができる。
この構成によれば、別途取付部を必要とすることなく、必要十分な給電線を確保することができる。
この構成によれば、給電線とタイロッドとの干渉を回避することができる。
本実施例の車両は、インホイールモータ駆動装置Dが搭載されたハイブリッド自動車である。この車両は、車体前部に内燃機関であるエンジン(図示略)が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪(図示略)を駆動するFR(Front engine Rear drive)車である。
また、主駆動輪の後輪は、エンジンの代わりに主駆動モータ(図示略)によっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪1は、副駆動モータであるインホイールモータ(以下、IWMという)20によって所定の運転領域にのみ駆動されている。
エンジンと主駆動モータは、クラッチ(図示略)を介して締結解除可能に接続されている。
尚、この前部車体構造は左右対称であるため、右側前輪1について主に説明する。
また、図において、矢印F方向を前方向とし、矢印L方向を左方向とし、矢印U方向を上方向とする。
図1に示すように、この車両の前部車体構造は、前後に延びる閉断面状のフロントサイドフレーム2と、このフロントサイドフレーム2よりも右側且つ上側に配設された閉断面状のホイールエプロンレインフォースメント(以下、エプロンレインと略す)3と、フロントサイドフレーム2とエプロンレイン3を連結するパネル状のホイールエプロン4と、インホイールモータ駆動装置D等を主な構成要素として備えている。
ホイールエプロン4には、フロントサスペンション装置を支持する支持部4aと、車幅方向内方に部分椀状に膨出したホイールハウス4bとが形成されている。
フロントサスペンション装置は、ホイールハウス4bの右側に収容されている。
図1~図3に示すように、本実施例のフロントサスペンション装置は、ダブルウィッシュボーン型であって、アッパアーム5と、このアッパアーム5の下方に配置されたロアアーム6と、アッパアーム5とロアアーム6とに回転自在に支持されたナックル部材7と、上下方向に延びる緩衝装置8等を備えている。
緩衝装置8は、ダンパ及び圧縮コイルスプリングを備え、それらの上端部が支持部4aに固定され、ダンパの下端部がロアアーム6に回転自在に取り付けられている。
ステアリングギアユニットに連動連結されたステアリングホイール(図示略)の操作によってタイロッド10が左右に移動し、ナックル部材7が上下に延びる仮想キングピン軸K回りに回動する。これにより、前輪1が転舵される。
ブレーキキャリパ16は、IWM20の後方に配設されている。
このブレーキキャリパ16は、ナックル部材7の後側部分に固定され、ブレーキディスク15の後側部分を制動可能に構成されている。尚、17は、ブレーキディスク15の左側に設けられた遮熱用保護カバーである。
以上により、リム12の径方向内側空間には、IWM20、ブレーキディスク15、ブレーキキャリパ16等が収容されている。
図4,図5に示すように、インホイールモータ駆動装置Dは、各前輪1に設けられたIWM20と、各IWM20に設けられた冷却機構としてのヒートパイプ30等を備えている。このIWM20は、リム12の径方向内側空間において、ナックル部材7に右側部分が部分的に囲繞された状態でナックル部材7に支持されている。
IWM20は、ステータ23の径方向内側空間に設けられたロータ24が回転するインナロータタイプの誘導電動機である。
ロータ24は、ロータシャフトと、このロータシャフトの周囲に分布巻により取り付けられたロータコイルを有している。これらロータコイルとステータコイルには、電気絶縁性被覆(例えば、エナメル被覆)が施され、ステータコイルが生成する回転磁界により誘導電流が発生するように対向配置されている。
このIWM20には、電気絶縁性を有する作動液にステータコイルを全体的に浸漬するための収容室が形成されている。
図4に示すように、ヒートパイプ30は、パイプ状の上流及び下流通路31,32と、外部への放熱部に相当する熱交換器33と、ステータ33から受熱する受熱部に相当する収容室等により構成されている。このヒートパイプ30では、ステータ23によって加熱された作動液は蒸発潜熱を奪って気化すると共に収容室と熱交換器33との間に圧力差が生じるため、気化した作動液は上流通路31を流れて熱交換器33に移動する。熱交換器33では、気化した作動液が凝縮し、等量の凝縮潜熱を放出する。凝縮した作動液は重力により下流通路32を流れて収容室Rに還流される。作動液の加熱及び冷却に応じて蒸発及び凝縮のサイクルが繰り返されている。
この熱交換器33は、リッド22に所定のブラケットを介して固定され、前輪1のホイール中心(ロータ24の軸心)に対してブレーキキャリパ16と反対側領域、具体的には、ホイール中心よりも前側且つ上側領域に配設されている。熱交換器33の配置スペースを確保すると共に、ブレーキキャリパ16からの受熱を回避するためである。
図1~図3に示すように、給電系は、第1,第2モータ側給電線41,42と、車体側給電線43と、第2モータ側給電線42と車体側給電線43を接続するロータリコネクタ50(回転接点機構)等を備え、車両内部に搭載された車載電源(図示略)からIWM20に電力を供給可能に構成されている。
第1モータ側給電線41は、各相のコイルの取出部に連結されたバスバー(図示略)からアウタケース21の外周壁に沿って夫々後方に延びると共に、IWM20の後端部近傍位置において3本の給電線が1本に束ねられて集合電線を構成している。これにより、第1モータ側給電線41は、前輪1のホイール中心に対して熱交換器33と反対側領域に配設されている。
第2モータ側給電線42は、ロータリコネクタ50に設けられた回転接点45と第1モータ側給電線41とを電気的に連結している。この第2モータ側給電線42は、回転接点45から右側且つ下方に延びた後、上側前方に向けて湾曲した略U字状に形成され、第1モータ側給電線41の接続部に接続されている。
本実施例では、各々のロータリコネクタ50が、ナックル部材7の前側領域に連結されたタイロッド10とIWM20に対して反対側領域になるようにIWM20の後側領域に配置されている。
ケース51には、軸心部分において内外を連通する通電部51aが形成され、通電部51aの一端部に固定接点44が接続されている。
通電部52aは、他端部が回転接点45に接続され、一端部が複数のローラ集電子54を介して通電部51aの一端部と電気的に接続されている。
これにより、固定接点44と回転接点45は、回転軸52が回転した場合、回転するローラ集電子54を介して電気的接続を維持することが可能である。
図7(a)に示すように、前輪1が左側に転舵されたとき、平面視にて、IWM20(各相のコイルの取出部)がロータリコネクタ50から最も離隔している。
しかし、図7(b)に示す中立状態のとき、第2給電線42が車幅方向に対して略U字状に形成されているため、下端部が上昇変位されることで第2給電線42の転舵追随性を担保している。
図7(c)に示すように、前輪1が右側に転舵されたとき、平面視にて、IWM20がロータリコネクタ50に最も接近している。
しかし、第1,第2給電線41,42がホイール中心に対してタイロッド10と反対側に配設されているため、第1,第2給電線41,42とタイロッド10の干渉を生じることなく下端部を下降変位させて第2給電線42可動給電線53の転舵追随性を担保している。
このインホイールモータ駆動装置Dでは、給電線41~43の途中部に、前後に延びた回動軸を有すると共にサスペンションアーム5,6による揺動軸回りの揺動に起因した変位を吸収するロータリコネクタ50を設けているため、揺動軸回りの揺動に連動するIWM20の変位をロータリコネクタ50により吸収することができ、モータ変位に伴う変形を最小限に抑えると共に給電線41~43の線長を短縮化することができる。
1〕前記実施例においては、FR車の前輪にIWMを装着した例を説明したが、FF車の後輪にIWMを装着しても良い。また、IWMとして、SRモータの例を説明したが、少なくとも、三相誘導モータであれば良く、PMモータを採用しても良い。
この場合、各相のコイルの取出部を固定部であるリッドに形成する。
4b ホイールハウス
5 アッパアーム
6 ロアアーム
7 ナックル部材
12 リム
20 IWM
41 第1モータ側給電線
42 第2モータ側給電線
43 車体側給電線
50 ロータリコネクタ
52 回転軸
D インホイールモータ駆動装置
Claims (5)
- 車輪を回転可能に支持するナックル部材と、このナックル部材を上下方向に延びるキングピン軸回りに回動可能に保持すると共に車体に対して前後方向に延びる揺動軸回りに揺動可能に支持されたサスペンションアームと、前記車輪のリムの内周側空間に設けられ且つホイールハウスの内壁部から延びた給電線を介して給電されるインホイールモータとを備えたインホイールモータ駆動装置において、
前記サスペンションアームは上部支持部材と下部支持部材とで構成され、
前記サスペンションアームを車体に取り付けるサブフレームを設け、
前記給電線の途中部に、前後方向に延びた回動軸を有すると共に前記上部支持部材による前記揺動軸回りの揺動に起因した変位を吸収する回転接点機構を設け、
前記回転接点機構は、前記上部支持部材の揺動軸と略同軸上において前記サブフレームに立設された支持部に支持され、
前記給電線は、前記インホイールモータのコイルの取出部から前記回転接点機構に延びるモータ側給電線とを含み、
前記モータ側給電線は、他の取付部に固定することなく前記インホイールモータと前記回転接点機構とによって支持されたことを特徴とするインホイールモータ駆動装置。 - 前記回転接点機構の回動軸が、前記サスペンションアームの揺動軸と略同軸上に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
- 前記サスペンションアームが上部支持部材と下部支持部材とを有し、
前記回転接点機構の回動軸が、前記上部支持部材の揺動軸と略同軸上に配置されたことを特徴とする請求項2に記載のインホイールモータ駆動装置。 - 前記給電線が、前記回転接点機構から車幅方向外向き且つ下方に延びることを特徴とする請求項3に記載のインホイールモータ駆動装置。
- 前記ナックル部材の前記インホイールモータよりも前後方向一端側領域に連結されたタイロッドを有し、
前記回転接点機構が、前記インホイールモータに対して前記タイロッドと前後方向他端側領域に配置されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のインホイールモータ駆動装置。
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