JP7128437B2 - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents
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Description
駆動用電動モータのうち三相誘導モータ(SRモータともいう)は、ステータコイル(固定子)に三相交流電流を流すことで回転磁界を発生させる一方、電磁誘導作用によりロータ(回転子)に誘導電流を発生させる。この回転磁界と誘導電流によって電磁力が生じてロータが回転している。この三相誘導モータは、永久磁石を用いるPMモータに比べて、コギングトルクが発生しない点、空走時の誘導起電力が発生しない点等の優位性があるため、車両用インホイールモータに適している。
車両がバウンド或いはリバウンドした場合やステアリングホイールが操舵された場合、車輪が大きく上下運動或いは回転運動するため、給電線に許容値以上の引張力が作用することがあり、給電線の断線等が懸念される。
そこで、車両の走行状態に伴う車輪の運動に拘らず、給電線の信頼性を確保する技術が提案されている。
しかし、特許文献1の技術では、車両の操縦性を悪化させる虞がある。
特許文献1の技術は、給電線が長尺化すると共に給電線の途中部をインホイールモータ支持部材と車体とに取り付けるための第1,第2取付部を夫々設けているため、バネ下重量の増加を招いている。このバネ下重量の増加は、バネ下固有振動数の低下によって車輪の路面追従性を低下させるため、結果的に、乗員による操縦性を阻害することになる。
即ち、インホイールモータ駆動装置において、給電線の信頼性を確保しつつ、同時に車両の操縦性を確保することは容易ではない。
前記サスペンションを収容するホイールハウスの内壁部から延びて前記上部支持部材に係止された車体側接続部に至る車体側給電線を有しているため、路面からの飛散物による車体側接続部の破損を防止することができる。
前記車体側接続部から車幅方向外向き且つ下方に延びて前記モータ側接続部に至る可撓性の可動給電線を有し、前記可動給電線は、前記モータ側接続部において3本の前記モータ側給電線を1本に束ねた集合電線を形成すると共に、車両前後方向において前記モータ側接続部から前記タイロッドの連結部に向かう方向と反対方向に延びているため、別途取付部を必要とすることなく、必要十分な可動給電線を確保することができ、バネ下重量の増加を抑制することができる。
この構成によれば、車輪の転舵に伴うモータ側給電線の回転移動変位を最小限に抑制することができる。
この構成によれば、アウタロータタイプの三相誘導モータであっても、給電線の信頼性と車両の操縦性とを確保することができる。
この構成によれば、給電線とヒートパイプとの干渉を回避することができる。
図1に示すように、本実施例の車両Vは、インホイールモータ駆動装置Dが搭載されたハイブリッド自動車である。
インホイールモータ駆動装置Dの説明に当り、車両Vの前提構造について説明する。
この車両Vは、車体前部に内燃機関であるエンジン3が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪2を駆動するFR(Front engine Rear drive)車である。
また、主駆動輪の後輪2は、エンジン3の代わりに主駆動モータ4によっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪1は、副駆動モータであるインホイールモータ(以下、IWMという)5によって所定の運転領域に駆動されている。
エンジン3と主駆動モータ4は、クラッチ(図示略)を介して締結解除可能に接続されている。
動力伝達機構6は、プロペラシャフト6aと、クラッチ6bと、後輪2に車軸(図示略)を介して接続された有段変速機としてのトランスミッション6c等を備えている。
主駆動モータ4は、例えば、48Vで駆動される25kWの永久磁石同期モータ(PMモータ)によって構成され、48Vのバッテリ8(例えば、3.5kWhのリチウムイオンバッテリ等)の電流を変換するインバータ7から交流電流が供給されている。
この主駆動モータ4は、エンジン3と直列に接続され、主駆動モータ4が発生した駆動力は、エンジン3の駆動力と同様に、動力伝達機構6を介して後輪2に伝達される。
IWM5は、例えば、120Vで駆動される17kWの三相誘導モータ(SRモータ)によって構成され、キャパシタ10aの電流を変換するインバータ10dから交流電流が供給されている。
図1に示すように、キャパシタ10aの近傍には、電圧変換器である高圧DC/DCコンバータ10bと低圧DC/DCコンバータ10cが夫々配設されている。
これらキャパシタ10a、高圧DC/DCコンバータ10b、低圧DC/DCコンバータ10c、インバータ10dはユニット化され、統合ユニット10を構成している。
また、減速時、主駆動モータ4とIWM5は、発電機として機能し、運動エネルギーを回生して電力を生成する。主駆動モータ4によって回生された電力は、バッテリ8に蓄積され、IWM5によって回生された電力は、キャパシタ10aに蓄積されている。
キャパシタ10aの電荷が不足する場合、バッテリ8の電圧を昇圧してキャパシタ10aに充電し、キャパシタ10aの端子間電圧が過剰に上昇した場合、キャパシタ10aの電荷を降圧してバッテリ8に充電している。
このフロントサスペンション装置は、1対の前輪1に夫々対応して形成されたホイールハウス(図示略)の車幅方向外側に収容されている。
図2,図3に示すように、本実施例のフロントサスペンション装置は、ダブルウィッシュボーン型であって、上方車体部材(図示略)に上下回動自在に軸支されたアッパアーム11と、サブフレームの前側部材(図示略)に上下回動自在に軸支されたロアアーム12と、アッパアーム11とロアアーム12とに回転自在に取り付けられたナックル部材13と、上下方向に延びる緩衝装置14等を備えている。
尚、前輪1及びこの前輪1を支持するフロントサスペンション装置は左右対称構造であるため、以下、右側の構造について主に説明する。
また、図において、矢印F方向を前方向とし、矢印L方向を左方向とし、矢印U方向を上方向として説明する。
このフロントサスペンション装置は、車幅方向に延びるステアリングギアユニット(図示略)、及びこのステアリングギアユニットから車幅方向外側に延びてナックル部材13の前側部分に回動自在な連結部を介して取り付けられたタイロッド15を有している。
ステアリングギアユニットに連動連結されたステアリングホイール(図示略)の操作によってタイロッド15が左右に移動し、ナックル部材13を介して前輪1が転舵される。
ハブ24の車幅方向外側には、中空円盤状のブレーキディスク25が固定されている。
ブレーキキャリパ26は、IWM5の後方に配設されている。
このブレーキキャリパ26は、ナックル部材13の後側部分に固定され、ブレーキディスク25の後側部分を制動可能に構成されている。尚、27は、ブレーキディスク25の車幅方向内側に設けられた遮熱用保護カバーである。
以上により、リム22の径方向内側空間には、IWM5、ブレーキディスク25、ブレーキキャリパ26等が収容されている。
インホイールモータ駆動装置Dは、各前輪1に設けられたIWM5と、各IWM5に対応して設けられた冷却機構としてのヒートパイプ40等を備えている。
このIWM5は、右側端部が有底とされた略筒状のアウタケース31と、このアウタケース31の左側端部を閉塞するリッド32と、固定子であるステータ33と、前輪1を回転駆動する回転子としてのロータ34と、シール部材35を主な構成要素としている。
このIWM5は、ステータ33の径方向内側空間に設けられたロータ34が回転するインナロータタイプの誘導電動機である。
電極端子取出部31u,31v,31wは、後述するモータ側給電線51が夫々電気的に接続され、2対の取付部31dは、締結部材を介してナックル部材13の左側壁部に夫々締結固定されている。外周壁31cの左端部には、径方向外側に張り出したフランジ部31fが形成され、このフランジ部31fにリッド32が締結固定されている。
ステータ33は、外周壁31cの内周に分布巻により取り付けられたU相コイル、V相コイル及びW相コイルからなるステータコイル33aを有している。
ロータ34は、ロータシャフト34sと、このロータシャフト34sの周囲に分布巻により取り付けられたロータコイル34aを有している。ロータコイル34aとステータコイル33aには、電気絶縁性被覆(例えば、エナメル被覆)が施されている。
ロータコイル34aは、ステータコイル33aが生成する回転磁界により誘導電流が発生するようにステータコイル33aに対向配置されている。
ロータシャフト34sは、左側部分が左右1対のベアリングb1によってアウタケース31に支持され、右側部分がハブ24に一体形成されたインナレース24aに連結されている。インナレース24aは、ベアリングb2及びアウタレース24bを介してナックル部材13に回転自在に支持されている。
この収容室Rには、電気絶縁性を有する作動液、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、がステータコイル33aを全体的に浸漬するために充填されている。
本実施例では、シール部材35が収容室Rの径方向内端壁と左端壁を形成し、アウタケース31が収容室Rの径方向外端壁と右端壁を形成している。
また、シール部材35として、弱磁性体材料であるステンレスを用いることも可能である。
図4,図9に示すように、ヒートパイプ40は、パイプ状の上流及び下流通路41,42(還流通路)と、外部への放熱部に相当する熱交換器43と、ステータ33(ステータコイル33a)から受熱する受熱部に相当する収容室R等により構成されている。
このヒートパイプ40では、ステータ33によって加熱された作動液は蒸発潜熱を奪って気化すると共に収容室Rと熱交換器43との間に圧力差が生じるため、気化した作動液は上流通路41を流れて熱交換器43に移動する。熱交換器43では、気化した作動液が凝縮し、等量の凝縮潜熱を放出する。凝縮した作動液は重力により下流通路42を流れて収容室Rに還流される。作動液の加熱及び冷却に応じて蒸発及び凝縮のサイクルが繰り返されている。
図10に示すように、収容室Rは、ステータコイル33aとの間に微小な隙間が形成されている。ステータコイル33aの左端、右端、及び径方向内側端には、例えば、3mmの隙間が形成され、気化した作動液は、この隙間を通り収容室Rの上端部分に移動している。
上流通路41の通路長は、下流通路42の通路長よりも短く形成されている。
上流通路41が長い場合、気化した作動液が熱交換器43に到達する前に凝縮し、上流通路41を逆流する虞があり、ヒートパイプ40の冷却サイクルを循環方向に正常に機能させるためである。
この熱交換器43は、前輪1のホイール中心(ロータ34の軸心)に対してブレーキキャリパ26と反対側領域、具体的には、ホイール中心よりも前側且つ上側領域に配設されている。熱交換器43の配置スペースを確保すると共に、ブレーキキャリパ26からの受熱を回避するためである。
上部容積室43aは、上部ブラケット44によってナックル部材13の前側上部に支持され(図11参照)、下部容積室43bは、下部ブラケット45によってリッド32の前側部分に支持されている。
図2~図4,図6,図7,図11に示すように、給電系は、モータ側給電線51と、車体側給電線52と、モータ側給電線51と車体側給電線52を接続する可動給電線53等を備え、車載電源(図示略)からIWM5に電力を供給可能に構成されている。
モータ側給電線51は、取出部31u,31v,31wに連結されたバスバー36u,36v,36wから外周壁31cに沿って夫々後方に延びると共に、IWM5の後端部近傍位置に配置された第1接続部54(モータ側接続部)において3本の給電線が1本に束ねられ、集合電線を構成している。これにより、モータ側給電線51は、前輪1のホイール中心に対してヒートパイプ40と反対側領域に配設されている。
本実施例では、図2,図3に示すように、第2接続部55は、アッパアーム11の揺動軸と同軸上に形成された揺動軸を有し、揺動自在に構成されている。
可動給電線53は、可撓性材料で形成され、第1,第2接続部54,55に接続可能な集合電線に構成されている。この可動給電線53は、第2接続部55から右側且つ下方に延びた後、上側前方に向けて湾曲した略U字状に形成され、第1接続部54に接続されている。
第2接続部55が、アッパアーム11の揺動軸と同軸上に配設されているため、車両Vのバウンドやリバウンドに拘らず、第2接続部55の揺動により第1,第2接続部54,55の離隔距離を略一定に維持している。
しかし、図11(b)に示す中立状態のとき、可動給電線53が車幅方向に対して略U字状に形成されているため、下端部が上昇変位されることで可動給電線53の転舵追随性を担保している。
図11(c)に示すように、前輪1が右側に転舵されたとき、平面視にて、第1接続部54が第2接続部55に最も接近している。
しかし、第1接続部54がホイール中心に対してタイロッド15と反対側に配設されているため、可動給電線53とタイロッド15の干渉を生じることなく下端部を下降変位させて可動給電線53の転舵追随性を担保している。
このインホイールモータ駆動装置Dでは、IWM5から延びてホイール中心に対してIWM5のタイロッド15の連結部と反対側位置に設置された第1接続部54に至るモータ側給電線51を有しているため、タイロッド15とモータ側給電線51との干渉を回避することができる。サスペンションを収容するホイールハウスの内壁部から延びてアッパアーム11に係止された第2接続部55に至る車体側給電線52を有しているため、路面からの飛散物による第2接続部55の破損を防止することができる。
第2接続部55から車幅方向外向き且つ下方に延びて第1接続部54に至る可撓性の可動給電線53を有しているため、別途取付部を必要とすることなく、必要十分な可動給電線53を確保することができ、バネ下重量の増加を抑制することができる。
実施例1では、ステータ33の径方向内側空間に設けられたロータ34が回転するインナロータタイプのIWM5であったのに対し、実施例2では、ステータ63の径方向外側に設けられたアウタケース61が回転するアウタロータタイプのIWM5Aである。
尚、実施例1と同様の部材には、同じ符号を付している。
図13~図15に示すように、IWM5Aは、右側端部が有底とされた略筒状のアウタケース61と、このアウタケース61に収容されたインナ部材62と、固定子であるステータ63と、アウタケース61の左端部分を閉塞する端壁部64と、シール部材65を主な構成要素としている。このIWM5Aは、ステータ63の径方向外側に設けられたアウタケース61が回転するアウタロータタイプの誘導電動機である。
ロータコイル61aは、外周壁61bの内周に分布巻により取り付けられている。
このロータコイル61aは、後述するステータコイル63aが生成する回転磁界により誘導電流が発生するようにステータコイル63aに対向配置されている。
外周壁61bの左端部分には、右側部分に比べて大径で且つ左方に延びるシール部61cが形成されている。
ロータシャフト61sの左半部は、インナ部材62に挿通され、左右1対のベアリングb1を介してインナ部材62に支持されている。
ロータシャフト61sの右半部は、ハブ24に一体形成されたインナレース24aに連結されている。インナレース24aは、ベアリングb2及びアウタレース24bを介してナックル部材13に回転自在に支持されている。
ステータ63は、径方向外側部分に分布巻により取り付けられたU相コイル、V相コイル及びW相コイルからなるステータコイル63aを有している。
端壁部64には、径方向内側部分で且つ仮想キングピン軸に対応した位置に3つの電極端子取出部(図示略)が形成され、モータ側給電線51A(図12参照)がバスバー66u,66v,66w(図14参照)を介して夫々電気的に接続されている。
端壁部64の外側端部には、右方に屈曲してシール部61cと対向するシール部64cが形成されている。このシール部64cとシール部61cは、ダストシール67により挟み込まれて液密状に保持されている。前後2対の取付部64dは、ナックル部材13の左側壁部に締結部材を介して端壁部64(インナ部材62)を固定している。
本実施例では、シール部材65が収容室RAの径方向外端壁と右端壁を形成し、インナ部材62が収容室RAの径方向内端壁と左端壁を形成している。
ヒートパイプ40Aの上流通路41Aに連通された導出部64aは、左側程上方に移行するように形成され、下流通路42Aに連通された導入部64bは、左側程下方に移行するように形成されている。端壁部64の左側には、導出部64a、導入部64b、及びバスバー66u,66v,66wを保護するため、これらの周囲を覆う端子ボックス68が装着されている。
モータ側給電線51Aは、端壁部64から取り出されている、具体的には、取出部に連結されたバスバー66u,66v,66wから夫々後方に延びると共にIWM5Aの後端部近傍位置に配置された第1接続部54Aにおいて3本の給電線が1つに束ねられている。
これにより、アウタロータタイプの三相誘導モータであっても、給電線51~53の信頼性と車両の操縦性とを確保することができる。
1〕前記実施例1,2においては、FR車の前輪にIWMを装着した例を説明したが、FF車の後輪にIWMを装着しても良い。また、IWMとして、SRモータの例を説明したが、少なくとも、三相誘導モータであれば良く、PMモータを採用しても良い。
5,5A IWM
11 アッパアーム
12 ロアアーム
13 ナックル部材
15 タイロッド
22 リム
51,51A モータ側給電線
52 車体側給電線
53 可動給電線
54,54A 第1接続部
55 第2接続部
64 端壁部
D,DA インホイールモータ駆動装置
Claims (4)
- サスペンションを構成する上部支持部材と下部支持部材との間に枢支され且つタイロッドの一端部を連結部を介して連結した転舵可能なナックル部材に支持される三相誘導モータがホイールを駆動するインホイールモータ駆動装置において、
前記三相誘導モータから延びて前記三相誘導モータのロータの軸心を挟んで前記タイロッドの連結部とは車両前後方向において反対側に設置されたモータ側接続部に至るモータ側給電線と、
前記サスペンションを収容するホイールハウスの内壁部から延びて前記上部支持部材に係止された車体側接続部に至る車体側給電線と、
前記車体側接続部から車幅方向外向き且つ下方に延びて前記モータ側接続部に至る可撓性の可動給電線と、を有し、
前記可動給電線は、前記モータ側接続部において3本の前記モータ側給電線を1本に束ねた集合電線を形成すると共に、車両前後方向において前記モータ側接続部から前記タイロッドの連結部に向かう方向と反対方向に延びている ことを特徴とするインホイールモータ駆動装置。 - 前記モータ側給電線は、前記三相誘導モータの車幅方向内側であって前記サスペンションのキングピン軸に対応する部位から取り出されている ことを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
- 前記三相誘導モータが、車幅方向内側の壁部を有し、
前記モータ側給電線は、前記車幅方向内側の壁部から取り出されている ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインホイールモータ駆動装置。 - 前記三相誘導モータのステータを収容する収容室に充填された作動液を冷却可能な熱交換器を備えたヒートパイプを有し、
前記熱交換器が、リム内において前記三相誘導モータのロータの軸心に対して前記モータ側接続部と車両前後方向において反対側に配設された ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のインホイールモータ駆動装置。
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