JP7188754B2 - 光学製品の反り予測方法及びプログラム - Google Patents
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Description
かような反りは、光学製品の性能に影響を及ぼすことがあり、典型的には反りがない(反り=0である)状態が望まれる。
従来、反りのない光学製品となる単層膜あるいは多層膜の設計では、まず光学的な機能を満たすものが仮設計され、その仮設計に係る単層膜あるいは多層膜が試験的に基板に対して成膜されて仮の光学製品が形成され、当該仮の光学製品の反りが実測されて、反りがある(反りの絶対値が所定値を超える)場合には反りがフィードバックされた状態で再度別の仮設計が行われ、以降仮の光学製品の形成及び反りの実測が、反りがなくなって設計が確定するまで繰り返される。
下記非特許文献1,2,3では、単層膜の応力による反りδに関するStoneyの式(下記式(1))から、光学製品の反りδを計算することが開示されている。
式(1)において、dは膜厚[m(メートル)]、σは膜の応力[Pa(パスカル)]、bは円盤状の基板の板厚[m]、lは基板の半径[m]、Esは基板のヤング率[Pa]、νsは基板のポアソン比[単位なし]である。
式(2)は、式(1)と同じである。
式(3)~(6)において、dHは高屈折率層の合計膜厚[m]、dLは低屈折率層の合計膜厚[m]、σHは高屈折率層の真応力[Pa]、σLは低屈折率層の真応力[Pa]である。
そこで、本発明の主な目的は、反りの計算が精度良くなされ、仮設計に係る仮の光学製品の作製及びフィードバックという工程の回数が減少し又は0となって光学製品の作製の手間及びコストの低減に資することができる光学製品の反り予測方法及びプログラムを提供することである。
上記目的を達成するため、請求項2に記載の発明は、光学製品の反り予測方法において、フィッティングパラメータを有しており、前記フィッティングパラメータは、第1-1フィッティングパラメータa H 、第1-2フィッティングパラメータa L 、及び第2フィッティングパラメータT d であり、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている後述の式(16)(但し基板の初期反りδ0が考慮されない)を含む式(9)~(17)(式(10)を除く)がコンピュータで計算されることにより、膜付きの基板の反りδが予測されることを特徴とし、ここで、σintは真応力、Efは多層膜のヤング率、EHは高屈折率層のヤング率、ELは低屈折率層のヤング率、νfは多層膜のポアソン比、νHは高屈折率層のポアソン比、νLは低屈折率層のポアソン比、αfは多層膜の線膨張係数、αHは高屈折率層の線膨張係数、αLは低屈折率層の線膨張係数、αsは基板の線膨張係数、Tは室温、dは膜厚、bは基板の板厚、lは基板の半径、Esは基板のヤング率、νsは基板のポアソン比、dHは高屈折率層の合計膜厚、dLは低屈折率層の合計膜厚、σHは高屈折率層の真応力、σLは低屈折率層の真応力である。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、後述の式(7)(但し基板の初期反りδ0が考慮されない)~(15)あるいは式(16)(但し基板の初期反りδ0が考慮されず第3フィッティングパラメータが考慮される)を含む式(9)~(17)(式(10)を除く)が、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ(前記第3フィッティングパラメータを含む)以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている状態でコンピュータで計算されることにより、膜付きの基板の反りδが予測されることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、後述の式(7)(但し第3フィッティングパラメータδsが考慮されない)~(15)あるいは式(16)を含む式(9)~(17)(式(10)を除く)が、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている状態でコンピュータで計算されることにより、膜付きの基板の反りδが予測されることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、後述の式(7)~(15)あるいは式(16)に第3フィッティングパラメータを導入したものを含む式(9)~(17)(式(10)を除く)が、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ(前記第3フィッティングパラメータを含む)以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている状態でコンピュータで計算されることにより、膜付きの基板の反りδが予測されることを特徴とするものである。
上記目的を達成するため、請求項7に記載の発明は、光学製品の反り予測プログラムにおいて、フィッティングパラメータを有しており、前記フィッティングパラメータは、第1-1フィッティングパラメータa H 、第1-2フィッティングパラメータa L 、及び第2フィッティングパラメータT d であり、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている後述の式(16)(但し基板の初期反りδ0が考慮されない)を含む式(9)~(17)(式(10)を除く)の記憶を参照可能であり、前記式(16)(但し基板の初期反りδ0が考慮されない)を含む式(9)~(17)(式(10)を除く)を計算することにより膜付きの基板の反りδを予測する制御手段を、実行によりコンピュータにおいて形成することを特徴とし、ここで、σintは真応力、Efは多層膜のヤング率、EHは高屈折率層のヤング率、ELは低屈折率層のヤング率、νfは多層膜のポアソン比、νHは高屈折率層のポアソン比、νLは低屈折率層のポアソン比、αfは多層膜の線膨張係数、αHは高屈折率層の線膨張係数、αLは低屈折率層の線膨張係数、αsは基板の線膨張係数、Tは室温、dは膜厚、bは基板の板厚、lは基板の半径、Esは基板のヤング率、νsは基板のポアソン比、dHは高屈折率層の合計膜厚、dLは低屈折率層の合計膜厚、σHは高屈折率層の真応力、σLは低屈折率層の真応力である。
請求項8に記載の発明は、上記発明において、後述の式(7)(但し基板の初期反りδ0が考慮されない)~(15)あるいは式(16)(但し基板の初期反りδ0が考慮されず第3フィッティングパラメータが考慮される)を含む式(9)~(17)(式(10)を除く)について、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ(前記第3フィッティングパラメータを含む)以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている状態で計算することにより膜付きの基板の反りδを予測する制御手段を、実行によりコンピュータにおいて形成することを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明は、上記発明において、後述の式(7)(但し第3フィッティングパラメータδsが考慮されない)~(15)あるいは式(9)~(17)(式(10)を除く)について、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている状態で計算することにより膜付きの基板の反りδを予測する制御手段を、実行によりコンピュータにおいて形成することを特徴とするものである。
請求項10に記載の発明は、上記発明において、後述の式(7)~(15)あるいは式(16)に第3フィッティングパラメータを導入したものを含む式(9)~(17)(式(10)を除く)について、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている状態で計算することにより膜付きの基板の反りδを予測する制御手段を、実行によりコンピュータにおいて形成することを特徴とするものである。
本発明の第1形態に係る光学製品の反り予測装置(反り予測装置)1は、コンピュータを含み、図1に示されるように、表示手段2と、入力手段4と、記憶手段6と、通信手段7と、制御手段8と、を備えている。
光学製品は、基板の片面又は両面に単層膜又は多層膜が形成されたものであり、例えば、単層膜あるいは光学多層膜(ハードコート膜、反射防止膜、及び減光膜の少なくとも何れか等)付きのレンズ用フィルタ、単層膜あるいは光学多層膜付きの光通過窓カバー(赤外線通信部カバー若しくは赤外線利用近接センサ部のカバー等)、光学多層膜によるミラー、フィルタ等である。
反り予測装置1は、例えば、光学製品メーカーに設置される。
入力手段4は、各種の情報の入力を受け付けるものであり、例えばキーボード及びポインティングデバイスの少なくとも一方である。
表示手段2と入力手段4とは、タッチパネルのように一体化されていても良い。
通信手段7は、各種の情報を外部機器との間で通信するものであり、ここではローカルエリアネットワーク(LAN)に接続された機器と通信するものである。
制御手段8は、これらの手段を制御するものであり、例えば中央演算装置(CPU)である。制御手段8は、記憶手段6に記憶された反り予測プログラムを逐次読み出して、当該プログラムに従い反りの定量的な予測に係る処理を行う。
式(7)~(15)において、σintは真応力[Pa]、Efは多層膜のヤング率[Pa]、EHは高屈折率層のヤング率[Pa]、ELは低屈折率層のヤング率[Pa]、νfは多層膜のポアソン比[単位なし]、νHは高屈折率層のポアソン比[単位なし]、νLは低屈折率層のポアソン比[単位なし]、αfは多層膜の線膨張係数[/K(毎ケルビン)]、αHは高屈折率層の線膨張係数[/K]、αLは低屈折率層の線膨張係数[/K]、αsは基板の線膨張係数[/K]、Tは室温[K(ケルビン)]、δ0は基板の成膜前の反り(初期反り)[m]、dHは高屈折率層の合計膜厚[m]、dLは低屈折率層の合計膜厚[m]、σHは高屈折率層の真応力[Pa]、σLは低屈折率層の真応力[Pa]、aは第1フィッティングパラメータ(膜成長)、Tdは第2フィッティングパラメータ(温度影響)、δsは第3フィッティングパラメータ(系統誤差等)である。各種の応力及び反りδの符号が正であると引張応力(成膜面側に凹)、負であると圧縮応力(成膜面側に凸)である。尚、単位[K]は、単位[℃]とされても良く、他の単位についても適宜同等のものに変更されても良い。又、式(7)~(15)は高屈折率材料と低屈折率材料の2材料が念頭に置かれたものであるが、3材料以上に拡張されても良い。
式(7)は、式(1)に対し、新たに第3フィッティングパラメータδsが導入されたものであり、式(A4)に対応する。
式(8)は、式(1)について特に応力に関する精度向上(実態に即したモデル式の導入)を目的として、式(1)の応力σを新規に拡張するために新たに導入されたものである。式(8)において、第1フィッティングパラメータa及び第2フィッティングパラメータTdが用いられている。式(8)は、式(B1)に対応する。
式(9)は、式(3)と同じであり、式(C)に対応する。
式(10)は、式(4)の応力σについて、熱応力の影響を式(8)で別途考慮するために真応力σintに置き換えたものであり、式(D)に対応する。
式(11),(12)は、式(5),(6)と同じであり、順に式(E),(F)に対応する。
式(13),(14),(15)は、式(8)の一部(熱応力の各パラメータ)を示すものとして新たに導入されたものであり、順に式(G),(H),(I)に対応する。
以下、まず高屈折率材料である五酸化二タンタルTa2O5と低屈折率材料である二酸化ケイ素SiO2とを交互に蒸着して多層膜を成膜する成膜装置D1における第1~第3フィッティングパラメータの最適化が説明される。成膜装置D1では、蒸着に係るチャンバの真空度は5×10-4Pa程度とされ、基板は別途加熱されず、チャンバ内に酸素(O2)ガスが一定の流量で導入される。かような成膜条件は、以下成膜条件Iと呼ばれる。
又、設計された各サンプルについて、第1,第2,第3フィッティングパラメータがa=1、Td=T、δs=0とされた状態(背景技術に記載の式(2)~(6)とδ0を除いて同等の状態,初期状態)の式(7)~(15)で、反り予測装置1(制御手段8)によって仮に反りδ(PV計算値)が算出される(ステップS2)。PVはPeak to Valleyであり、ここでは、反りδは、最上端(基板面内で最も高い点,Peak)の高さと最下端(基板面内で最も低い点,Valley)の高さの差で把握される。フィッティングパラメータ以外の各種の値は、各サンプルの設計に基づいて入力手段4から入力される。ここで、真応力は、高屈折率層でσH=-270.5[MPa(メガパスカル)]とされ、低屈折率層でσL=-588.0[MPa]とされる。尚、反り予測装置1が膜設計装置と一体化され、即ち同じコンピュータに反り予測プログラムと膜設計プログラムとがインストールされ、膜設計プログラムで決定された各種の値が自動的に反り予測プログラムに渡されても良い。又、反りδは、PV以外のPower値等により把握されても良い。更に、初期状態において、各フィッティングパラメータの少なくとも何れかが上述の値と異なっていても良い。
更に、設計に基づいて各サンプルを実際に作製し、更に作製された各サンプルの反りδ(PV測定値)が反り測定装置で実測される(ステップS3)。
次の[表1]において、成膜条件Iにおける各サンプル(20例,No.1~20)が示される。尚、PV計算値及びPV測定値共に、λ=633nmが基準とされるところ、λは他の値とされても良い。
[表1]の各サンプルの初期のPV計算値について最小二乗法で決定された直線(初期の参照直線)では、PV計算値をxとし、PV測定値をyとすると、y=0.8488x-0.0983となり、y=x(一致直線)から離れている。
第1フィッティングパラメータaは、真応力(単層膜の応力)を定数倍するものであり、成膜時の膜成長の度合に対応し得るものである。
図4に示されるように、第1フィッティングパラメータaが増減されると、PV計算値が初期のものから第1調整段階のものに変化し、上述の参照直線の傾きが変化するので、制御手段8は参照直線の傾きが可及的に1に近づくような第1フィッティングパラメータaを決定する。ここでは、制御手段8は、a=0.849と決定する。このとき、参照直線はy=1.0000x-0.0983となり、一致直線に近づく。
尚、多層膜に拡張された真応力aσ=σ~(本来であれば“~”は“σ”の真上に表記されるところ表現上の制約により適宜“σ~”と記載される)となり、高屈折率層に係るσ~ H=-229.6[MPa]となり、低屈折率層に係るσ~ L=-499.1[MPa]となる。
第2フィッティングパラメータTdは、膜応力に係る温度依存項に対応する熱応力項に関するものであり、温度影響を示すものである。第2フィッティングパラメータTdが考慮されること(室温Tと等しくならないこと)は、膜応力に熱応力項が導入されることに対応し、かような熱応力項の導入により、基板の種類による影響が緩和される。
図5に示されるように、第2フィッティングパラメータTdが増減されると、PV計算値が第1調整段階のものから第2調整段階のものに変化し、上述の参照直線の傾きが変化するので、制御手段8は参照直線の傾きが更に1に近づきあるいは1となるような第2フィッティングパラメータTdを決定する。ここでは、制御手段8は、a=0.864,Td=70[℃]と決定する。このとき、参照直線はy=1.0001x-0.0695となり、更に一致直線に近づく。
第3フィッティングパラメータδsは、基板の影響を始めとする系統誤差を示すものである。
図6に示されるように、第3フィッティングパラメータδsが増減されると、PV計算値が第2調整段階のものから第3調整段階のものに変化し、上述の参照直線の切片が変化するので、制御手段8は参照直線の切片が0となるような第3フィッティングパラメータδsを決定する。ここでは、制御手段8は、δs=-0.0695と決定する。このとき、参照直線はy=1.0000x-0.00004となり、更に一致直線に近づく。
尚、ステップS6が省略され、即ち第3フィッティングパラメータδsの最適化が行われなくても良い。
即ち、図7に示されるように、成膜前の基板の初期反りδ0を反り測定装置で実測する(ステップS11)。以後、初期反りδ0を有する基板に対して、膜応力が変形力成分を変化させるものとして基板の反りδが計算される。尚、ステップS11は省略されても良い。
次に、事前に各フィッティングパラメータが定められることで最適化された式(7)~(15)に対し、各設計値あるいは特性値が代入されて、基板の反りδ(PV計算値)が計算される(ステップS12)。特に、式(8)の右辺第2項のように熱応力が考慮されているため、加熱成膜による反りδへの影響が反映され、一層正確な反りδの計算がなされる。
そして、算出された基板の反りδ(PV計算値)は、表示手段2における表示等により、ユーザに報知される(ステップS13)。尚、ステップS13に代えて、あるいはステップS13と共に、通信手段7を介して他の装置に算出された基板の反りδ(PV計算値)を発信するステップが設けられても良い。
図8は、算出される反りδ(PV計算値)の正確性(予測精度)に関するグラフである。即ち、上記[表1]の「反り測定」欄に示された実測に係るPV測定値から、最適化された式(7)~(15)に対して同表の各設計値(No.1~20)を代入して得られたPV計算値を引いた差は、当該差を縦軸とし、No.1~20を横軸とした図8に示されるように、±0.1λに収まっている。
この場合の画面表示例が、図9に示される。
即ち、膜設計プログラムに係る画面左部の「光学薄膜設計」ウィンドウの「0」タブにおいて、膜物質A(SiO2)と膜物質B(Ta2O5)の全5層の交互膜(反射防止膜)が、「N」欄の屈折率及び「D」欄の物理膜厚[nm]を有する状態で、数値等の入力により設計され、更に基板に関する情報である物質の種類(画面では「a」即ちBK7)及び板厚「D」[mm]が入力されると、「0」タブでの設計である「設計0」に係るものとして、画面右上の「反射率」ウィンドウにおいて、反射防止膜に係る可視波長域での反射率分布が、制御手段の計算に基づき表示されると共に、画面右下の「応力・反り」ウィンドウにおいて、反射防止膜に係る真応力[MPa],熱応力[MPa],平均全応力[MPa],反り(λ=633nm),曲率半径[m]が、反り予測プログラムを実行する制御手段の計算に基づき表示される。曲率半径は、反りと基板の大きさとから算出可能である。
又、ユーザは、「0」タブに対する入力を保持したまま、新たに生成した「1」タブに対して同様に入力すれば、「応力・反り」ウィンドウにおいて、「設計0」に係る反り等と「設計1」に係る反り等とを見比べることができる。更に、ユーザは、新たに生成した「2」タブ等に同様に入力していけば、3種以上の設計に係る反り等を見比べることができる。
更に、ユーザは、「光学薄膜設計」ウィンドウの「裏面考慮」ボックスにチェックを入れれば、裏面に考慮した反射率分布及び反り等を確認することができる。表面の膜の設計は図9にもあるように「SIDE1」に入力可能であり、裏面の膜の設計は新たに生成される「SIDE2」に入力可能である。
「光学薄膜設計」ウィンドウ下辺部における「媒質」は、光学製品を取り巻く物質のことであり、図9では媒質の屈折率N=1.000即ち空気が指定されている。
尚、屈折率は、「膜物質」欄の入力に応じ、自動的に設定されても良い。又、反射率ウィンドウの処理及び表示は、省略されても良い。
成膜条件IIにおけるフィッティングパラメータの最適化は、成膜条件Iの場合と同様に、各サンプルの設計値(ステップS1)からPV計算値が算出されると共に(ステップS2)、設計値通りに基板上に多層膜が成膜されて作製された光学製品の反りが実測されてPV測定値が得られ(ステップS3)、各サンプルにおけるPV測定値にPV計算値がフィットするように各フィッティングパラメータが決定されることで行われる(ステップS4~S6)。
次の[表2]において、成膜条件IIにおける各サンプル(9例,No.1~9)が示される。尚、PV計算値及びPV測定値共に、λ=633nmが基準とされる。
かように成膜条件IIにおいて最適化された式(7)~(15)により、以後成膜条件IIで成膜される基板の定量的な反りδが正確に予測される(ステップS11~13)。
図11は、成膜条件IIにおいて算出される反りδ(PV計算値)の正確性(予測精度)に関するグラフである。即ち、上記[表2]の「反り測定」欄に示された実測に係るPV測定値から、最適化された式(7)~(15)に対して同表の各設計値(No.1~9)を代入して得られたPV計算値を引いた差は、当該差を縦軸とし、No.1~9を横軸とした図11に示されるように、±0.1λに収まっている。
成膜条件IIIにおけるフィッティングパラメータの最適化は、成膜条件I,IIの場合と同様に、各サンプルの設計値(ステップS1)からPV計算値が算出されると共に(ステップS2)、設計値通りに基板上に多層膜が成膜されて作製された光学製品の反りが実測されてPV測定値が得られ(ステップS3)、各サンプルにおけるPV測定値にPV計算値がフィットするように各フィッティングパラメータが決定されることで行われる(ステップS4~S6)。
次の[表3]において、成膜条件IIIにおける各サンプル(21例,No.1~21)が示される。尚、PV計算値及びPV測定値共に、λ=633nmが基準とされる。
かように成膜条件IIIにおいて最適化された式(7)~(15)により、以後成膜条件IIIで成膜される基板の定量的な反りδが正確に予測される(ステップS11~13)。
図13は、成膜条件IIIにおいて算出される反りδ(PV計算値)の正確性(予測精度)に関するグラフである。即ち、上記[表3]の「反り測定」欄に示された実測に係るPV測定値から、最適化された式(7)~(15)に対して同表の各設計値(No.1~21)を代入して得られたPV計算値を引いた差は、当該差を縦軸とし、No.1~21を横軸とした図13に示されるように、±0.1λに収まっている。
又、反り予測プログラムが、膜設計プログラムに組み込まれ、あるいは膜設計プログラムと連携可能とされて、膜の設計値(高屈折率材料の種類及び高屈折率層の合計膜厚並びに低屈折率材料の種類及び低屈折率層の合計膜厚)を参照可能とされれば、膜設計プログラムに対する設計値の入力に応じて反りδを計算して表示手段2等に表示させることができ、便利である。
尚、成膜条件I~IIIでは、応力が圧縮応力で反りδが成膜面側に凸であったところ、応力が引張応力で反りδが成膜面側に凹である場合においても、並びに応力として圧縮応力と引張応力とが混在して反りδがそのバランスにより決まる場合においても、応力及び反りδの符号により、反りδが同様に算出される。
又、式(7)で第3フィッティングパラメータδs及び基板の初期反りδ0が考慮されなくても(特許請求の範囲の式(A1)に対応)、応力が真応力に加え熱応力についても式(8)及び第1,第2フィッティングパラメータで反映されることとなり、従来より正確な基板の反りδが予測可能である。同様に、第3フィッティングパラメータδsが考慮されて基板の初期反りδ0が考慮されなくても(特許請求の範囲の式(A2)に対応)、第3フィッティングパラメータδsの導入により、従来より正確な基板の反りδが予測可能である。又、基板の初期反りδ0が考慮されて第3フィッティングパラメータδsが考慮されなくても(特許請求の範囲の式(A3)に対応)、板の初期反りδ0の導入により、従来より正確な基板の反りδが予測可能である。
又、式(7)で第3フィッティングパラメータδs及び基板の初期反りδ0が考慮されなくても(特許請求の範囲の式(A1)に対応)、応力が真応力に加え熱応力についても式(8)及び第1,第2フィッティングパラメータで反映されることとなり、従来より正確な基板の反りδが予測可能な制御手段8がコンピュータにおいて形成される。同様に、第3フィッティングパラメータδsが考慮されて基板の初期反りδ0が考慮されなくても(特許請求の範囲の式(A2)に対応)、第3フィッティングパラメータδsの導入により、従来より正確な基板の反りδが予測可能な制御手段8がコンピュータにおいて形成される。又、基板の初期反りδ0が考慮されて第3フィッティングパラメータδsが考慮されなくても(特許請求の範囲の式(A3)に対応)、板の初期反りδ0の導入により、従来より正確な基板の反りδが予測可能な制御手段8がコンピュータにおいて形成される。
又、基板の両面に膜が形成される場合の反りδが計算されても良く、この場合に各面における反りが別個に計算されたうえで総合的な反りδが合成されても良い。例えば、上述の動作例と同様に算出された基板の第1面の反りδ1=2λであり、又同様に算出された基板の第2面の反りδ2=2λである場合、基板の双方の面に対する成膜により第1面の反りδ1と第2面の反りδ2とが打ち消されるために総合的な反りδ=0と計算されても良い。
本発明の第2形態に係る反り予測装置、反り予測プログラム及び反り予測方法は、記憶手段6に記憶された反りδの算出式及び反りδの算出方法を除き、第1形態と同様に成る。
第2形態では、第1形態の式(7)が、第3フィッティングパラメータを考慮しない式(16)(式(A3)に対応)に代えられている。尚、第2形態において、第3フィッティングパラメータが考慮されても良いし、初期反りδ0が考慮されなくても良い。
又、第2形態では、第1形態の式(8),(10)(順に式(B1),(D)に対応)が統合されたうえで、第1フィッティングパラメータaが第1-1フィッティングパラメータaHと第1-2フィッティングパラメータaLとに分けられ、第1-1フィッティングパラメータaHがσHd~ Hに乗算され、第1-2フィッティングパラメータaLがσLd~ Lに乗算された式(17)(式(B2)に対応)に代えられている。
次に、式(9)~(17)(式(10)を除く)が示される。
以下、高屈折率材料である五酸化二タンタルTa2O5と低屈折率材料である二酸化ケイ素SiO2とを交互に蒸着して多層膜を成膜する成膜装置D1における第1-1~第2フィッティングパラメータの最適化が説明される。第2形態の成膜装置D1では、上述の成膜条件Iにおいて成膜された。
又、設計された各サンプルについて、第1-1,第1-2,第2フィッティングパラメータがaH=1、aL=1、Td=Tとされた状態(初期状態)の式(9)~(17)(式(10)を除く)で、仮に反りδ(PV計算値)が算出される(ステップS2)。
更に、設計に基づいて各サンプルを実際に作製し、更に作製された各サンプルの反りδ(PV測定値)が反り測定装置で実測される(ステップS3)。
次の[表4]において、成膜条件Iにおける各サンプル(15例,No.1~15)が示される。尚、PV計算値及びPV測定値共に、λ=633nmが基準とされる。
図14に示されるように、「計算条件」に示される各種の値(例えばσH=-313.8,σL=-625.1)によって式(9)~(17)(式(10)を除く)が最適化されると(同図左のグラフ参照)、各フィッティングパラメータは、「フィッティングパラメータ」で示される値となる。最適化後、同図右下に示されるように、高屈折率層の真応力aHσHは-220.8[MPa]となり、高屈折率層の真応力aLσLは-583.8[MPa]となり、実効成膜温度Tdは68.9[℃]となる。尚、Quartzは合成石英であり、R2は決定係数である。
そして、各サンプルに係るPV測定値-PV計算値は、当該値を縦軸とし、No.1~15を横軸とした図8と同様である図15に示されるように、±0.1λに収まっている。横軸では、サンプルが、左端をNo.1として右方へ順に並んでいる。
更に、この場合において、各サンプルに係るPV測定値-PV計算値は、図15と同様である図17に示されるように、±0.1λに収まっている。
即ち、第1-1,第1-2フィッティングパラメータaH,aLが設けられることにより、σH,σLが異なる値であっても(σHとσLとの比率が互いに異なった状態で最適化されても)、σH,σLが同様の値となり、フィッティングにより、高屈折率層,低屈折率層の各膜応力が一意的に決まる。そして、多層膜の真応力、熱応力、成膜時の実効基板加熱温度も一意的に決定される。
更に、この場合においても、各サンプルに係るPV測定値-PV計算値は、図15,図17と同様である図19に示されるように、±0.1λに収まっている。
やはり、第1-1,第1-2フィッティングパラメータaH,aLが設けられることにより、σH,σLが異なる値であっても、σH,σLが同様の値となり、フィッティングにより、高屈折率層,低屈折率層の各膜応力が一意的に決まって、多層膜の真応力、熱応力、成膜時の実効基板加熱温度も一意的に決定される。
尚、第2形態の成膜条件Iにおいても、応力が圧縮応力で反りδが成膜面側に凸であったところ、応力が引張応力で反りδが成膜面側に凹である場合においても、並びに応力として圧縮応力と引張応力とが混在して反りδがそのバランスにより決まる場合においても、応力及び反りδの符号により、反りδが同様に算出される。
又、式(16)で基板の初期反りδ0が考慮されなくても(特許請求の範囲の式(A1)に対応)、応力が真応力に加え熱応力についても式(16)及び第1-1,第1-2,第2フィッティングパラメータで反映されることとなり、従来より正確な基板の反りδが予測可能で、各種値が一意に決定される。同様に、式(16)で更に第3フィッティングパラメータδsが考慮されても(特許請求の範囲の式(A4)に対応)、第3フィッティングパラメータδsの導入により、従来より正確な基板の反りδが予測可能で、各種値が一意に決定される。又、式(16)で基板の初期反りδ0が考慮されず第3フィッティングパラメータδsが考慮されても(特許請求の範囲の式(A2)に対応)、従来より正確な基板の反りδが予測可能である。
又、式(16)で基板の初期反りδ0が考慮されなくても(特許請求の範囲の式(A1)に対応)、応力が真応力に加え熱応力についても式(16)及び第1-1,第1-2,第2フィッティングパラメータで反映されることとなり、従来より正確な基板の反りδが予測可能であり各種値が一意に決定可能である制御手段8がコンピュータにおいて形成される。同様に、式(16)で更に第3フィッティングパラメータδsが考慮されても(特許請求の範囲の式(A4)に対応)、第3フィッティングパラメータδsの導入により、従来より正確な基板の反りδが予測可能であり各種値が一意に決定可能である制御手段8がコンピュータにおいて形成される。又、式(16)で基板の初期反りδ0が考慮されず第3フィッティングパラメータδsが考慮されても(特許請求の範囲の式(A2)に対応)、従来より正確な基板の反りδが予測可能であり各種値が一意に決定可能である制御手段8がコンピュータにおいて形成される。
Claims (10)
- フィッティングパラメータを有しており、前記フィッティングパラメータは、第1フィッティングパラメータa、及び第2フィッティングパラメータT d であり、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている下記式(A1)~(I)
ことを特徴とする光学製品の反り予測方法。
ここで、σintは真応力、Efは多層膜のヤング率、EHは高屈折率層のヤング率、ELは低屈折率層のヤング率、νfは多層膜のポアソン比、νHは高屈折率層のポアソン比、νLは低屈折率層のポアソン比、αfは多層膜の線膨張係数、αHは高屈折率層の線膨張係数、αLは低屈折率層の線膨張係数、αsは基板の線膨張係数、Tは室温、dは膜厚、bは基板の板厚、lは基板の半径、Esは基板のヤング率、νsは基板のポアソン比、dHは高屈折率層の合計膜厚、dLは低屈折率層の合計膜厚、σHは高屈折率層の真応力、σLは低屈折率層の真応力である。 - フィッティングパラメータを有しており、前記フィッティングパラメータは、第1-1フィッティングパラメータa H 、第1-2フィッティングパラメータa L 、及び第2フィッティングパラメータT d であり、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている下記式(A1)~(I)
ことを特徴とする光学製品の反り予測方法。
ここで、σintは真応力、Efは多層膜のヤング率、EHは高屈折率層のヤング率、ELは低屈折率層のヤング率、νfは多層膜のポアソン比、νHは高屈折率層のポアソン比、νLは低屈折率層のポアソン比、αfは多層膜の線膨張係数、αHは高屈折率層の線膨張係数、αLは低屈折率層の線膨張係数、αsは基板の線膨張係数、Tは室温、dは膜厚、bは基板の板厚、lは基板の半径、Esは基板のヤング率、νsは基板のポアソン比、dHは高屈折率層の合計膜厚、dLは低屈折率層の合計膜厚、σHは高屈折率層の真応力、σLは低屈折率層の真応力である。 - フィッティングパラメータを有しており、前記フィッティングパラメータは、第1フィッティングパラメータa、及び第2フィッティングパラメータT d であり、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている下記式(A1)~(I)
ことを特徴とする光学製品の反り予測プログラム。
ここで、σintは真応力、Efは多層膜のヤング率、EHは高屈折率層のヤング率、ELは低屈折率層のヤング率、νfは多層膜のポアソン比、νHは高屈折率層のポアソン比、νLは低屈折率層のポアソン比、αfは多層膜の線膨張係数、αHは高屈折率層の線膨張係数、αLは低屈折率層の線膨張係数、αsは基板の線膨張係数、Tは室温、dは膜厚、bは基板の板厚、lは基板の半径、Esは基板のヤング率、νsは基板のポアソン比、dHは高屈折率層の合計膜厚、dLは低屈折率層の合計膜厚、σHは高屈折率層の真応力、σLは低屈折率層の真応力である。 - フィッティングパラメータを有しており、前記フィッティングパラメータは、第1-1フィッティングパラメータa H 、第1-2フィッティングパラメータa L 、及び第2フィッティングパラメータT d であり、複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている下記式(A1)~(I)
ことを特徴とする光学製品の反り予測プログラム。
ここで、σintは真応力、Efは多層膜のヤング率、EHは高屈折率層のヤング率、ELは低屈折率層のヤング率、νfは多層膜のポアソン比、νHは高屈折率層のポアソン比、νLは低屈折率層のポアソン比、αfは多層膜の線膨張係数、αHは高屈折率層の線膨張係数、αLは低屈折率層の線膨張係数、αsは基板の線膨張係数、Tは室温、dは膜厚、bは基板の板厚、lは基板の半径、Esは基板のヤング率、νsは基板のポアソン比、dHは高屈折率層の合計膜厚、dLは低屈折率層の合計膜厚、σHは高屈折率層の真応力、σLは低屈折率層の真応力である。 - 前記式(A1)が、第3フィッティングパラメータδs及び基板の成膜前の反りδ0を有する下記式(A4)に代わり、
前記フィッティングパラメータに、前記第3フィッティングパラメータδ s が加えられ、
複数のサンプルにおける前記フィッティングパラメータ以外の値を代入して得られた式が、各前記サンプルにおいて実測された反りに対してフィットするように、前記フィッティングパラメータが成膜条件毎に最適化されている前記式(A4)~(I)について計算することにより膜付きの基板の反りδを予測する制御手段を、実行によりコンピュータにおいて形成する
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