以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、発音器を車両におけるフロント側のナンバープレートの裏側、つまりナンバープレートとフロントバンパーとの間に取り付ける場合について説明する。
発音器は、筐体内に配置される発音体にて発音を行うものである。本実施形態では、発音器を放音方向が一方向のみとなる構造とし、この発音器を車両の前方に取り付けることで、決められたマイク位置に近付けつつ音を出す経路を確保することで、低出力でも法規制の要求する音圧レベルが得られるようにする。まず、この発音器の具体的な構造について、図1~図11を参照して説明する。
図1~図6に示すように、発音器Sの筐体1は、それぞれ樹脂製のベース2とケース3との2部品で構成されている。
ベース2は、略長円筒状のベース筒部21を備え、このベース筒部21の軸方向の一端側の開口部を覆うように、保護壁22が形成されていると共に、他端側の開口部を覆うように長円板状のケース3が嵌合され、接着にて気密的に接合されている。後述する発音体7は、ベース筒部21の他端側の開口部に組み付けられるが、この開口部に長円形状のケース3が気密的に接着されることで、発音体7が組み付けられている側の防水・気密性が確保されている。
保護壁22は、図6に示すように、ベース筒部21の外縁のうちの一方向を除く部分に沿って立設された立壁23によってベース筒部21と連結されており、ベース筒部21の一端側の端面を構成する隔壁24の一面24aとの間に所定の寸法Yaの隙間を設けて配置されている。この保護壁22によってベース筒部21の一端側開口部、より詳しくは一端側開口部の内側に位置している発音体7が正面方向(図1の法線方向)から直視できないように覆われることで、発音体7への水や雪および飛び石などの異物の侵入を抑制される。
そして、図6、図7に示すように、ベース筒部21内の空間は、ベース筒部21内に設けられた隔壁24により2分割されている。具体的には、隔壁24には、発音体7が発生させた音を導く放音孔25およびその周囲の梁部26が備えられており、放音孔25および梁部26を覆うように発音体7が配置されることで、ベース筒部21内の空間が2分割されている。そして、ベース筒部21と隔壁24および発音体7に備えられるダイヤフラム72によって第1空間4が形成され、ベース筒部21と隔壁24とケース3およびダイヤフラム72によって第2空間5が形成されている。
さらに、第1空間4は、保護壁22および立壁23によって構成される後述する放音空間6とも連通しており、第1空間4に発せられた音が放音空間6を通じて図1の下方に備えられる放出孔61より出力されるようになっている。この放出孔61からの音の出力方向が放音方向に相当する。
図1および図8に示すように、隔壁24は略長円形状によって構成されており、その外縁部において保護壁22と反対側に突出すようにベース筒部21が設けられている。そして、ベース筒部21および隔壁24の外周であって、長円形状を長径に沿って区画した半分に沿うように立壁23が形成され、さらに長円形状の長手方向の両端から接線方向、換言すれば放出方向に向かって立壁23が延設されている。
本実施形態の場合、保護壁22および立壁23は、ベース筒部21よりも放出方向側に突出すように延設されている。また、図2、図7に示すように、この保護壁22のうちベース筒部21から突出すように延設された部分と対向するように、ベース筒部21を挟んで保護壁22と反対側に対向壁27が形成されている。そして、保護壁22と立壁23および対向壁27が振動方向に交差する一方向において開口されている。これにより、図2に示すように保護壁22、立壁23および対向壁27によって囲まれた放出孔61が構成され、さらに放出孔61よりも筐体1の内側に保護壁22と立壁23および隔壁24で囲まれた放音空間6が構成されている。放出孔61は、図2に示すように、所定幅W1を有し、かつ、その幅方向と直交する方向を長手方向とする扁平形状で構成されることで、車両への適用が容易になっている。つまり、放出孔61は、立壁23の方が保護壁22よりも短くされることで、立壁23で構成される方が短手方向、保護壁22で構成される方が長手方向となる横長形状とされている。このため、ダイヤフラム72の振動方向を短手方向とすることで製品の厚みを小さくできるようにしつつ、横長形状であっても音圧を出すために必要な開口面積が確保できるようにしている。
なお、図5に示すように、保護壁22と立壁23および対向壁27がベース筒部21よりも所定長さP1だけ突き出す構造とされているが、突き出していなくても良い。ただし、これらを突き出す構造とすると、その長さを調整することで、音の共鳴効果が得られたり、共鳴周波数の調整による音質、音圧を可変させられたりするという効果が得られる。また、保護壁22と立壁23および対向壁27がベース筒部21よりも突き出す構造とされているため、対向壁27を備えてあるが、突き出す構造とされないのであれば、対向壁27についてはなくても良い。
図1、図7、図8に示すように、保護壁22、立壁23および対向壁27の先端は、同一平面上において終端されている。以下、この保護壁22、立壁23および対向壁27の先端が構成する一面を放出面62という。本実施形態の場合、放出面62は、図7に示すように、ダイヤフラム72の振動方向と平行な平面とされ、かつ、図8に示すように、ベース筒部21の長手方向とも平行な平面とされている。放出孔61より出力される音は、この放出面62の法線方向を中心として放出されて外部に伝えられる。このため、放出孔61の位置や放出面62の法線方向に基づいて音の放出方向が特定されている。
また、隔壁24の中央部近辺の領域を電気信号に基づいて音を発生させる発音体7が配置される放音領域として、放音領域には、図1、図8に示すように、隔壁24に貫通孔を形成することで構成した放音孔25が複数形成されている。そして、図6、図7に示すように、発音体7が、放音孔25を塞ぐようにして第2空間5に配置されている。より詳しくは、放音孔25は、発音体7に備えられたダイヤフラム72によって塞がれている。このため、第2空間5は、ダイヤフラム72によって第1空間4と隔てられる。
なお、ダイヤフラム72等によって第1空間4と第2空間5との間の気密性が確保されている。このため、温度変化によりダイヤフラム72に加わる圧力の変動を抑制するために、図1、図8に示すように、隔壁24には、放音領域とは異なる場所に、両空間を連通させる通気孔241を形成してある。通気孔241には、空気を通しつつ水を遮断する材質で構成された通気膜242が貼られており、この通気膜242によってダイヤフラム72に加わる圧力変動を調整している。
図1、図6~図8に示すように、放音領域のうち放音孔25以外の部分は、梁部26とされ、梁部26のうちのダイヤフラム72側の一面には梁部26が部分的に突出させられて構成されたストッパー261が形成されている。図1および図8に示すように、本実施形態の場合、梁部26は、放音領域の中心から放射状に延びる径方向梁262と同心円状に配置された円形梁263とを有した構成とされている。また、本実施形態の場合、円形梁263は、3つ備えられている。
本実施形態では、径方向梁262を6本等間隔に備えている。そのうちの120°の角度で等間隔に3本が円形梁263のうち最も内側に位置しているものから放音領域の外周まで形成され、残りの3本が円形梁263のうち二番目のものから放音領域の外周まで形成されている。
梁部26は、放音領域のうち放音孔25以外の領域を覆っていることから、走行時の被水や飛び石が発音体7に到達することを抑制し、水や石の接触による発音体7の破損を防止する。本実施形態では、梁部26を含む隔壁24のうち保護壁22と対向する一面24aは平坦面とされているが、凹凸を有していても良い。ただし、樹脂成形によってベース2全体を一度に製造する場合、この一面24aと保護壁22との間にスライド型が配置されることから、スライド型の型抜きが行える形状とされる。
また、ストッパー261は、気密検査の際にダイヤフラム72が変位したとき、ダイヤフラム72に接触し、振動方向へのダイヤフラム72の変位を制限するものである。これにより、ダイヤフラム72の過度な変形による破損が抑制される。図6、図7に示すように、ストッパー261は、ダイヤフラム72に対向するように配置されており、ダイヤフラム72に対応した形状とされている。
具体的には、ストッパー261は、径方向梁262と3つの円形梁263のうちの中心から二番目のものをダイヤフラム72側に突出させることにより構成されている。ストッパー261のうち円形梁263から突出させられた部分は、円形梁263に沿って円形状に突き出させられた円筒部261aを構成している。また、ストッパー261のうち径方向梁262から突出させられた部分は、円筒部261aを中心として径方向外方に向かって傾斜させられた傾斜部261bを構成している。ストッパー261のうち一面24aからの距離を高さとすると、円筒部261aは、全周同じ高さとされていると共に最も高くされている。また、傾斜部261bは、円筒部261aと連結されている部分では円筒部261aと同じ高さとされ、円筒部261aから離れると徐々に高さが低くされている。
なお、傾斜部261bは、径方向梁262の全部に形成されているが、一部だけ、例えば二番目の円形梁263から放音領域の外周まで形成されているもののみ、逆に、一番内周側の円形梁263から放音領域の外周まで形成されているもののみに形成されていても良い。
図1~4、図6~図9に示すように、ベース筒部21の外側には、発音体7を後述する図12に示す車両側のコネクタ1020およびワイヤハーネス1021に電気的に接続するための略四角筒状のコネクタ29が形成されている。コネクタ29は、ダイヤフラム72の振動方向と交差し、立壁23の外側で隔壁24と平行な方向に沿って備えられていて、製品の厚みが小さくできる構造とされている。図6に示すように、ベース筒部21のうちコネクタ29が形成された部分には、ベース筒部21を貫通してコネクタ29の内部と第2空間5とを接続する貫通孔291が形成されており、この貫通孔291を通るようにターミナル9が圧入されている。
ターミナル9は、ベース筒部21の内部において、接着剤によってベース筒部21に固定されており、ターミナル9を配置するために形成された貫通孔291は、この接着剤とターミナル9とによって塞がれている。ターミナル9は、第2空間5において後述するリードピン78に接続されている。
ターミナル9は、図6に示すように、一方向を長手方向とする平板棒状の端子部91と、リードピン78に接続される接続部92とを有している。端子部91は、貫通孔291に挿し込まれる部分であり、一端が第2空間5側に位置し、他端がコネクタ29の内部に位置するように配置される。接続部92は、端子部91のうち第2空間5側に位置させられる一端に接続され、端子部91の長手方向に対して交差する方向、本実施形態では直交する方向に屈曲した形状とされている。
図6、図7、図9に示すように、発音体7は、フレーム71と、ダイヤフラム72と、ダイヤフラム72を振動させる駆動部73とを備えている。
フレーム71は、略段付円筒状とされ、樹脂製とされている。フレーム71は、軸方向の両端部において開口しており、一方の開口部を構成する開口幅が広い方の円筒部711と、他方の開口部を構成する開口幅が狭い方の円筒部712と、円筒部711と円筒部712とを繋ぐ円盤状の段付部713とを有している。円筒部711が構成する開口部は、ダイヤフラム72によって塞がれている。そして、フレーム71は、ダイヤフラム72によって開口部が塞がれた側の端部において、隔壁24に接着にて気密的に接合されることでベース2に固定されている。
また、図6、図9に示すように、段付部713に、フレーム71の内部と外部とを連通させる貫通孔714が形成されており、貫通孔714を通じてフレーム71の内外で連通した第2空間5が構成されている。そして、第2空間5は、隔壁24およびダイヤフラム72によって第1空間4と隔てられている。
ダイヤフラム72は、振動板を構成するもので、振動させられることによって音を発生させる。図6に示すように、ダイヤフラム72の内周部721は、第1空間4側に向かって凸となる凸面状とされている。また、ダイヤフラム72の外周部722は、第1空間4側に傾斜している。具体的には、外周部722は、内周部721の外縁から第1空間4側に向かって広がる中空の円錐台形状とされている。
内周部721と外周部722との円形の境界部とストッパー261の円筒部261aとは、同径とされていて対向配置されている。また、外周部722の傾斜と傾斜部261bとは、同じ形状とされていて対向配置されている。さらに、図6に示すように、内周部721と外周部722との円形の境界部において、ダイヤフラム72には円筒部261aに対向していてダイヤフラム72の変位時にダイヤフラム72の振動方向に最も変位する円形端部723が形成されている。気密検査の際にダイヤフラム72が変位したときには、図10、図11に示すように円形端部723に円筒部261aが当接すると共に、外周部722に傾斜部261bが当接するようになっている。この円形端部723は、駆動部73側で発音体7に備えられるボビン74の一端が接着剤で固定され、ボビン74とダイヤフラム72とが一体化されている。このため、ダイヤフラム72の中でも強度が高い部分となり、円筒部261aが硬く強度の高い部分と当接させられるようにできる。
後述するように、発音体7では、ダイヤフラム72の振動によって音が発生する。音圧が十分に大きい音を発生させるためには、ダイヤフラム72とストッパー261との距離をある程度大きくすることが必要となる。このため、ダイヤフラム72のうちストッパー261に接触する面と、ストッパー261のうちダイヤフラム72に接触する面との距離は、発音動作によってはダイヤフラム72がストッパー261に接触しないように、発音動作によるダイヤフラム72の変位量よりも大きくされている。そして、気密検査の際には、発音動作の際よりもダイヤフラム72が大きく変位してストッパー261に当接するようになっている。
例えば、ダイヤフラム72のうちストッパー261に接触する面と、ストッパー261のうちダイヤフラム72に接触する面との間の距離が1mm~3mm程度とされている。
また、外周部722のうち内周部721とは反対側の端部には、外周部722の軸方向から見た形状がリング状とされ、半径方向に沿った断面がS字状とされたばね部724が接続されている。ダイヤフラム72は、ばね部724の端部においてフレーム71に接着されている。本実施形態では、内周部721、外周部722、円形端部723、ばね部724は、一枚の薄膜で形成されている。
駆動部73は、フレーム71の2つの開口部のうち開口幅が狭い方の円筒部712を塞ぐように配置されている。図6に示すように、駆動部73は、ボビン74と、ボイスコイル75と、磁気回路部76とを備えている。
ボビン74は、円筒状とされており、ダイヤフラム72の内周部721の外縁において円形端部723の裏面に接続され、ダイヤフラム72から第2空間5内方に向かって立設されている。ボビン74の外側には、ボイスコイル75が巻かれている。ボビン74は、芯部に相当する。
磁気回路部76は、ボイスコイル75に磁界を印加するためのものであり、一面および他面を有する円板形状の磁石761と、磁石761の一面に接続されたトッププレート762と、磁石761の他面に接続されたヨーク763とを備えている。ヨーク763の底部に磁石761およびトッププレート762が配置されることで磁気回路部76が構成されており、ヨーク763の円筒部と磁石761およびトッププレート762との間に隙間が設けられ、この隙間内にボビン74およびボイスコイル75が入り込むようにして配置されている。ヨーク763は、円筒部における開口入口側から外周部全域において、円筒部712の内側に嵌め込まれ、接着されることで磁気回路部76がフレーム71と一体とされている。
このように構成されることで、ボビン74に巻かれたボイスコイル75には、トッププレート762の側面と、ヨーク763の円筒部の側面との間に発生する磁界が印加されるようになっている。このため、磁界が印加された状態のボイスコイル75に電流を流すと、ボビン74はヨーク763の円筒部に嵌め込まれた状態で軸方向に変位する。これにより、ダイヤフラム72が振動して、音が発生する。
また、発音体7はボイスコイル75と電気的に接続されたリードピン78を備えている。図示していないが、リードピン78は、ボイスコイル75にはんだ付けなどで電気的に接続されており、ボイスコイル75から径方向外側に向かって引き出されている。本実施形態では、リードピン78はフレーム71に一体成型等によって一体化され、フレーム71の外部に延設され、ターミナル9と接するようにレイアウトされている。そして、図9に示すように、リードピン78がターミナル9に形成された接続溝に圧入されることで、ボイスコイル75と外部との電気的接続が可能となっている。
以上のようにして、本実施形態の発音器Sが構成されている。このように構成された発音器Sは、車室外に配置され、後述するように、本実施形態では車両のフロント側のナンバープレートとフロントバンパーとの間に配置される。そして、発音器Sの外部からの音源信号に基づいてボイスコイル75への通電が行われると、図2、図7に示した振動方向にダイヤフラム72が振動し、発音体7より音が発せられる。この音が、第1空間4や放音孔25および放音空間6などを通り、放出孔61から外部に放出される。これにより、電気自動車などの走行音が静かな車両であっても、発音器Sより警報音を発生させることで、周囲に車両の接近を報知することが可能となる。
また、発音器Sの製造工程の1つとして気密検査工程を行っている。この気密検査工程の際には、第1空間4と第2空間5との間に圧力差が発生させられる。具体的には、放出孔61側より通気孔241を通じて空気を送り込むことで第2空間5が加圧されて、第2空間5の圧力が第1空間4の圧力よりも高くなる。これにより、図10、図11に示すように、ばね部724の変形に基づいてダイヤフラム72の内周部721および外周部722が第1空間4に向かって変位し、ダイヤフラム72は第1空間4側に膨らむように変形する。
このとき、変形したダイヤフラム72はストッパー261に接触し、これによりダイヤフラム72の変形が制限される。すなわち、筐体1の内部に配置されたストッパー261が、ダイヤフラム72を押さえる治具の代わりにダイヤフラム72の反転や変形を抑制する。したがって、ダイヤフラム72を押さえる治具を使用せずに気密検査を行うことが可能となる。また、ダイヤフラム72がストッパー261に接触する際に、円形端部723が円筒部261aに当接し、外周部722が傾斜部261bに当接するが、強度の低い内周部721は円筒部261aの内側に位置していてストッパー261に接触しない。このため、ダイヤフラム72を破損から保護できる。
このような構造の発音器Sでは、放音孔25を覆うように保護壁22を備えているため、保護壁22と立壁23および隔壁24等で構成される放音空間6を通じて放出孔61から出力される。すなわち、発音体7が発した音が一方向から出力されるようにできる。このため、必要とされない方向への放音が行われることを抑制でき、不要な音が車室内へ浸透したり伝搬したりすることを抑制できる。
また、発音器Sの正面の位置、つまりダイヤフラム72の振動方向において、放音孔25を覆うように保護壁22を備えている。このため、車両における発音器Sの搭載空間のうち保護壁22と隣接する位置に、音の通り路となるスペースを確保する必要がない。つまり、保護壁22と近接して車両部品を搭載することが可能となり、車両の狭い空間にも発音器Sを配置することが可能になる。したがって、正面の位置に車両部品を近接配置することが可能な発音器Sにできる。
さらに、本実施形態の構造の発音器Sでは、筐体1を型成形によって形成できる。例えば、筐体1の保護壁22および立壁23の外壁面を構成するための下型と、ベース筒部21や隔壁24の内壁面を構成するための上型と、放音空間6を構成するためのスライド型を用い、樹脂成形によって筐体1を形成できる。このため、ベース筒部21の一端側についてはケース3で覆う必要があるが、他端側は保護壁22で覆われていることから、その部分をカバーなどで覆う必要がない。したがって、筐体1をベース2とケースの2部品で構成することが可能となり、部品点数の削減、ひいては製品コストの削減を図ることが可能となる。
続いて、図12~図19を参照して、上記のように構成された発音器Sの取付構造について説明する。
発音器Sは、図12~図15に示すように、車両におけるフロント側のナンバープレート1000とフロントバンパー1010との間に配置されている。ナンバープレート1000の裏面側に発音器Sが配置されており、図12および図16に示されるように、ナンバープレート1000によって発音器Sが覆い隠れ、車両前方側からナンバープレート1000を見たときに発音器Sが見えないようになっている。このため、発音器Sが取り付けられることによって意匠性が悪化しないようにできる。
図17および図18に示すように、フロントバンパー1010には凹部1011が形成されており、ナンバープレート1000を取り付ける前の状態においては、凹部1011が露出した状態となっている。例えば、フロントバンパー1010には、フロントバンパー1010の壁面から略長方形状に突き出すようにナンバープレート1000の取付部1012が取り付けられている。そして、その略長方形状とされた取付部1012の下方位置を凹ませて下辺を開口させ、フロントバンパー1010のうち取付部1012の開口部の内側と対応する位置に凹部1011が形成されている。凹部1011の寸法については任意であるが、車両の前後方向での凹み寸法が車両の左右方向や上下方向での凹み寸法よりも小さくされている。ただし、バンパー1010に発音器Sが取り付けられた際に凹部1011内に発音器Sが収まって取付部1012よりも突き出ないように凹部1011の寸法が設定されている。このため、発音器Sが干渉することなく取付部1012にナンバープレート1000の取り付けが可能となっている。上記したように、発音器Sは、ダイヤフラム72の振動方向が短手方向とされていて製品の厚みが小さくされていて薄型とされていることから、車両の前後方向での凹みの寸法については小さくて良い。
図16および図18に示されるように、フロントバンパー1010のうち発音器Sが取り付けられる位置よりも下方部分にはフロントグリル1010aが備えられている。このフロントグリル1010aは、図13、図15および図19に示されるように、車両の前方側の先端が凹部1011の底面よりも内側、つまり車両の後方側に位置している。このため、放出孔61の周囲には放出孔61と対向する部材が存在せず、放出孔61の周囲が開放された開放空間となっている。
フロントバンパー1010のうちの取付部1012よりも外側の部分を表面1013と呼ぶと、凹部1011は、表面1013よりも車両後方に凹ませてあり、取付部1012は表面1013よりも車両前方に突き出させてある。
発音器Sは、本実施形態では凹部1011の底部1011aに取り付けられている。具体的には、図13に示すように、底部1011aには、雌ネジ穴1014aが形成されたネジ締結部1014が備えられている。そして、締結穴1015aが形成されたL字形状のステー1015が底部1011aに配置され、ボルト1016を締結穴1015a内に挿通させると共にネジ締結部1014の雌ネジ穴1014aに螺号させることでステー1015が固定されている。
一方、図17および図18に示すように、発音器Sの筐体1における放出孔61と反対側の立壁23には、ステー1015を両側から挟み込む嵌合部28が形成されている。この嵌合部28にステー1015が圧入されることにより、発音器Sがステー1015にガタつき無く保持されている。
また、図14に示されるように、フロントバンパー1010のうち凹部1011の側面1011bを構成する部分から底部1011aに至る部分に開口部1017が形成されている。この開口部1017は、発音器Sのコネクタ29と対応する位置に形成されており、この開口部1017を通じてフロントバンパー1010の裏側から車両側のコネクタ1020およびワイヤハーネス1021が引き出され、コネクタ1020とコネクタ29との接続が行われている。
取付部1012は、表面1013から突き出した構造とされ、その先端部が平面とされた取付面1012aとされている。この取付面1012aに対向するようにナンバープレート1000が取り付けられている。具体的には、ナンバープレート1000は長方形状とされ、その上方の両隅部に、図13中に破線で示した取付穴1001が形成されている。また、取付部1012のうち取付穴1001と対応する位置には、図17に示すように雌ネジ穴1012bが形成された板金ナット1012cが備えられている。そして、ボルト1018を取付穴1001内に挿通させると共に取付部1012の雌ネジ穴1012bに螺号することでナンバープレート1000が取付部1012に固定されている。
以上のようにして本実施形態にかかる発音器Sの取付構造が構成されている。このように、フロントバンパー1010に対して凹部1011を形成し、この凹部1011内に発音器Sが配置されるようにしている。そして、凹部1011の下方が開口させられるようにすると共に、発音器Sの放出孔61からの音の放出方向を凹部1011の開口方向と一致させるようにしている。つまり、放出孔61からの音の放出方向では、凹部1011が開口させられることで音の通り路となる隙間が構成されている。これにより、発音器Sから接近通報音などの発音が行われた際に、発音器Sから発した音が他の部材によって遮られることなく、ナンバープレート1000とバンパー1010との間を通じて放出され、その周囲に伝えられるようにできる。
例えば、車両接近通報の法規制においては、車両の前端の両側方において前端中央から2m離れた位置をマイク位置として、発音器Sから発音を行い、マイク位置での音圧レベルが所望のレベルに達しているか否かが確認される。これに対して、本実施形態のように、発音器Sの一方向から音が放出されるようにし、かつ、凹部1011の開口方向と発音器Sの放出孔61からの音の放出方向を一致させていることから、発音器Sから発した音があまり減衰されること無くマイクに伝えられる。
したがって、発音器Sの出力を高すぎる状態にしなくても、マイク位置での音圧レベルが所望のレベルに達するようにできる。このため、発音器Sの低出力化が可能になるのに加えて、発音器Sから様々な方向に発音が為されないため、より車室内騒音を少なくすることも可能となる。よって、より車室内騒音を少なくできると共に、決められたマイク位置において所望の音圧レベルを得ることができる発音器の取付構造および発音器を取り付けた車両とすることが可能となる。
また、発音器Sが一方向から音が出る構成とされ、発音器Sの搭載空間のうち保護壁22と隣接する位置に音の通り路となるスペースを確保する必要がないため、バンパー1010やナンバープレート1000が隣接配置されていても良好に放音を行える。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して発音器Sの取り付け位置を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図20~図28を参照して、本実施形態にかかる発音器Sの取付構造について説明する。
図20~図28に示すように、本実施形態では、ナンバープレート1000がバンパー1010に対してナンバープレートブラケット(以下、単にブラケットという)1100を介して取り付けられており、そのブラケット1100に発音器Sを取り付けている。ナンバープレート1000がブラケット1100を介してバンパー1010に取り付けられることから、ナンバープレート1000によって発音器Sが隠れ、車両前方側からナンバープレート1000を見たときに発音器Sが見えないようになっている。バンパー1010には、第1実施形態で説明した取付部1012が取り付けられておらず、ブラケット1100が取付部1012の役割を果たすようになっている。
ブラケット1100は、ナンバープレート1000が取り付けられる取付面1101を有し、取付面1101の外形がナンバープレート1000と同等寸法の略長方形状とされている。
取付面1101の上方の両隅部には、図21に示すように取付穴1102aが形成された支持部1102が形成されている。また、バンパー1010の表面1013のうち取付穴1102aと対応する位置には、雌ネジ穴1013aが形成されたネジ締結部1013bが備えられている。そして、ボルト1110をブラケット1100の支持部1102の取付穴1102aに挿通させると共に、ネジ締結部1013bの雌ネジ穴1013aに螺号することでブラケット1100がフロントバンパー1010に固定されている。
また、図25および図26に示すように、ブラケット1100のうち両支持部1102よりも内側に雌ネジ穴1105aが形成されたネジ締結部1105が形成されている。そして、ボルト1018をナンバープレート1000に形成された取付穴1001を挿通させつつネジ締結部1105の雌ネジ穴1105aに螺号することでナンバープレート1000がブラケット1100を介してバンパー1010に固定されている。
図26~図28に示すように、ブラケット1100は、取付面1101から車両後方に向けて立設された隔壁1103を備え、ブラケット1100のうちの略上半分において隔壁1103の先端形状が表面1013の表面形状に対応した形状とされている。このため、ナンバープレート1000と共にブラケット1100がバンパー1010に取り付けられると、隔壁1103の先端が表面1013と隙間無く接し、ガタつき無く取り付けられるようになっている。そして、バンパー1010に取り付けられたブラケット1100は、略下半分が表面1013の下方に位置し、表面1013よりも下方に発音器Sが配置できるようになっている。
また、図28等に示されるように、隔壁1103のうちの下方に位置する部分となる下方隔壁1103aには、発音器Sの取付部1104が備えられている。取付部1104は、下方隔壁1103aから上方に向けて長方形状に立設された構成とされ、そのうちの一辺が取付面1101によって構成されている。下方隔壁1103aには、図21~23、図26および図27に示されるように、取付部1104の内側において長方形状に開口させられた下向きの開口部1103bが形成されており、この開口部1103bを通じて発音器Sが発した音が外部に向けて放出されるようになっている。
取付部1104のうちの取付面1101で構成された一面以外の3面には、図21、図23に示されるように、取付部1104の内側に張出部1104aが形成されており、開口部1103bは張出部1104aによって囲まれた構成とされている。この張出部1104aに発音器Sの先端面、つまり保護壁22や立壁23および対向壁27における放出面62を構成する先端面が当接させられている。また、図21、図23および図28に示されるように、取付部1104のうちの取付面1101で構成された一面以外の3面にスナップフィット1104bが形成され、発音器Sの保護壁22や立壁23の先端には突起部22a、23aが形成されている。
そして、スナップフィット1104bと突起部22a、23aとの係合によって、発音器Sが取付部1104に固定されている。すなわち、発音器Sを取付部1104内に挿入すると、スナップフィット1104bが突起部22a、23aによって押し広げられる。また、発音器Sの先端面が張出部1104aに当接させられると、スナップフィット1104bが突起部22a、23aを乗り越え、スナップフィット1104bの復元力によってスナップフィット1104bと突起部22a、23aとが係合させられる。これにより、発音器Sが取付部1104に固定されている。
また、図23に示すように、張出部1104aからの取付部1104の高さは、発音器Sにおける放出面62からコネクタ29までの距離よりも小さくされており、取付部1104とコネクタ29とが干渉しないようになっている。そして、取付部1104よりも上方においてコネクタ29が車両側のコネクタ1020と接続されている。
なお、図27に示すように、取付部1104のうち取付面1101で構成された一面は、張出部1104a側において開口させられており、発音器Sの先端面側では、発音器Sを取付部1104が3面で囲む構造とされている。これにより、発音器Sの取付部1104への挿入が容易に行えるようになっている。また、バンパー1010のうち表面1013の下方位置には、図25に示すように開口部1017が形成されており、この開口部1017を通じてフロントバンパー1010の裏側から車両側のコネクタ1020およびワイヤハーネス1021が引き出され、コネクタ1020とコネクタ29との接続が行われている。
以上のようにして本実施形態にかかる発音器Sの取付構造が構成されている。このように、ナンバープレート1000とフロントバンパー1010との間に配置されるブラケット1100に対して発音器Sを取り付けている。そして、ブラケット1100の下方位置に取付部1104を備えると共に取付部1104の内側に開口部1103bを形成し、開口部1103bを通じて放音が為されるようにしている。このようにしても、発音器Sから接近通報音などの発音が行われた際に、発音器Sから発した音が他の部材によって遮られることなく、ナンバープレート1000とバンパー1010との間を通じて放出され、その周囲に伝えられるようにできる。このため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対して発音器Sの取り付け位置を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図29~図35を参照して、本実施形態にかかる発音器Sの取付構造について説明する。
図29~図35に示すように、本実施形態では、バンパー1010の裏面のうちナンバープレート1000と対応する位置に発音器Sを取り付けている。発音器Sがナンバープレート1000の裏面に配置されていることから、図29および図33に示すように、ナンバープレート1000によって発音器Sが隠れ、車両前方側からナンバープレート1000を見たときに発音器Sが見えないようになっている。バンパー1010には、第1実施形態で説明した取付部1012が取り付けられていて、取付部1012にナンバープレート1000が取り付けられている。
図32および図34に示すように、バンパー1010の裏面には支持部1019が備えられており、支持部1019にステー1015を介して発音器Sが固定されている。具体的には、支持部1019には図示しない雌ネジ穴が形成されており、図示しないステー1015の締結穴にボルト1016を挿通させると共に支持部1019の雌ネジ穴に螺号させることで、発音器Sが固定されている。なお、本実施形態の場合、支持部1019が2箇所に備えられており、ステー1015にも2箇所に締結穴が形成されていて、二本のボルト1016を用いてステー1015がバンパー1010に二点支持されるようにしてある。そして、発音器Sには嵌合部28が備えられており、第1実施形態と反対方向、つまり車両の前方から後方に向かう方向からステー1015の一端が嵌合部28に圧入されることで、ステー1015に発音器Sがガタつき無く保持されている。
図30~図32、図35に示すように、バンパー1010における表面1013の下方位置、つまり表面1013のうち発音器Sと対応する位置には、下向きの開口部1013cが形成されており、開口部1013cを通じて放音が可能となっている。本実施形態の場合、開口部1013cが発音器Sの先端面、つまり保護壁22や立壁23および対向壁27における放出面62を構成する先端面よりも大きな寸法とされている。そして、発音器Sの先端面が開口部1013cに入り込ませてある。
なお、本実施形態の場合、バンパー1010の裏面に発音器Sが備えられていることから、その裏面において、コネクタ29が車両側のコネクタ1020と接続されている。
以上のようにして本実施形態にかかる発音器Sの取付構造が構成されている。このように、ナンバープレート1000の裏面におけるバンパー1010の裏面に発音器Sを備えている。そして、バンパー1010のうち発音器Sの放出面62と対応する位置を開口部1013cとしている。このようにしても、発音器Sから接近通報音などの発音が行われた際に、発音器Sから発した音が他の部材によって遮られることなく、ナンバープレート1000の裏面側から放出され、その周囲に伝えられるようにできる。このため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、上記各実施形態で用いた発音器Sの構成については一例を挙げたものであり、発音体7を中心とした振動方向の軸を中心軸として、その中心軸周りの周方向の一方向からのみ放音が為されるようにしたものであれば、発音器Sの構成はどのようなものでも良い。
また、第1、第3実施形態では、バンパー1010に対してステー1015を介して発音器Sを固定し、第2実施形態では、ブラケット1100の取付部1104にスナップフィット1104bを用いて発音器Sを固定した。しかしながら、これらの固定構造については一例を示したに過ぎず、他の固定構造、例えば発音器Sのベース筒部21等に取り付け用の張出部を備えておき、その張出部にボルトを用いてバンパー1010等の取付対象に直接固定しても良い。また、接着剤などを用いて、発音器Sを取付対象に直接貼り付けて固定しても良い。すなわち、発音器Sの放出孔61からの音が遮られることなく放出できる構造、例えば第1実施形態であれば凹部1011の下方が開口され、第2実施形態ではれば取付部1104の内側に開口部1103bが形成され、第3実施形態であれば開口部1013cが形成された構造とされ、そこを通じて放音が行える構造であれば、固定構造はどのようなものであっても良い。
ただし、凹部1011の形状や開口部1103bおよび開口部1013cの形状については任意であり、他の形状であっても構わない。例えば、第3実施形態を例に挙げると、図36に示すように、開口部1013cを発音器Sの放出面62よりも大きなものにするのではなく、複数個に分かれたものとしても良い。第3実施形態においても、発音器Sの放出面62については開口部1013cに入り込んだ状態になっていなくても良いが、図36のように複数個に別れた開口部1013cとする場合には、発音器Sの放出面62が開口部1013cに入り込んでいない状態になる。勿論、第2実施形態についても開口部1103bを長方形状とする必要は無く、図36と同様に、複数個に別れたものとされていても良い。
また、第3実施形態において、発音器Sを開口部1013cに入り込ませない場合、発音器Sがバンパー1010の裏面に当接する構造としても良いし、発音器Sとバンパー1010の間に音通路ダクトとして機能するクッション材を配置することもできる。その場合、クッション材を放出孔61と対応する枠体形状とし、クッション材が発音器Sの放出面62とバンパー1010との間に挟持されるようにする。このような構造にすると、発音器Sからバンパー1010内への音漏れをより抑制することが可能となる。なお、ここで適用しているクッション材は、音漏れ防止を図るための音通路ダクトとして機能することを目的としたものであるため、その目的を果たせるものであればクッション材で構成されている必要は無く、例えばゴムや樹脂などで構成されていても良い。