JP7187120B2 - アルミニウム合金製ドアビーム - Google Patents
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Description
ドアビームでは、衝突時のエネルギーを効率良く吸収するために、曲げ変形時に高い変形荷重を確保するとともに、最大荷重到達後も安定した変形荷重を確保することが求められる。これらの機能を達成するため、ドアビームに対しより高強度な素材の適用が望まれており、アルミニウム合金の中空押出形材なども適用されるようになってきている。
ドアビームの重量増加を抑えて曲げ強度を向上させるという観点からは、曲げの中立軸近傍の断面積を少なく、中立軸から遠い領域の断面積を増やすことが有効である。このため、アルミニウム合金押出形材からなるドアビームでは、断面を構成するウエブをできるだけ薄くしたいという要求が強い。
しかし、ウエブを薄肉化しすぎると、ウエブの座屈が生じやすくなる。衝突時にウエブが座屈変形すると、ウエブ高さが急激に低下し、これに伴い衝突時の変形荷重が低下して、EA性が低下するという問題が生じる。つまり、ウエブの肉厚は、衝突時の座屈変形を抑えて所定のEA量を確保可能な最小肉厚に設定することが望まれる.
このようなアルミニウム合金押出形材11に、より高強度の材料を適用した場合、素材耐力の増加に応じて加工硬化指数(n値)が小さくなるため、衝突時のドアビームの曲げ変形が長手方向の載荷点近傍に集中しやすい。
衝突荷重Pが掛かると、アルミニウム合金押出形材11は載荷点を中心に長手方向に沿って曲げ変形する。この曲げ変形においてウエブ14,15に座屈が生じる場合、図8Bに示すように、ウエブ14,15には断面の外側に膨らむような曲げ変形が生じ、その曲げの頂点は圧縮応力が掛かる領域(断面積中心Oと外側フランジ12の間の領域)のやや断面積中心O寄りの位置となる。ウエブ14,15に上記のような座屈が生じると、押出形材11の断面が潰れ、ドアビームの変形強度及びEA性が大幅に低下する。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、衝突時の曲げ変形においてウエブの座屈が生じにくいアルミニウム合金押出形材を提供することを主たる目的とする。また、本発明は、衝突時の曲げ変形においてウエブが座屈し、さらに外側フランジが座屈した場合でも、外側フランジの溶着部で破断が生じにくいアルミニウム合金押出形材を提供することを他の目的とする。
そして、上記アルミニウム合金押出形材の一形態として、前記押出形材の押出方向に垂直な断面において、前記ウエブが前記外側フランジに接続する外側部と前記内側フランジに接続する内側部からなり、前記外側部は前記押出形材の断面積中心より車体幅方向外側の領域に位置し、前記外側部の肉厚が前記内側部の肉厚より大きいことが挙げられる。
また、上記アルミニウム合金押出形材の他の形態として、前記押出形材の押出方向に垂直な断面において、前記外側フランジの溶着部近傍に他の部位に比べて肉厚が大きい厚肉部が形成されていることが挙げられる。
図1に示すアルミニウム合金押出形材1は、一対のフランジ(外側フランジ2と内側フランジ3)と、両フランジを連結する一対(2つ)のウエブ4,5からなる。外側フランジ2と内側フランジ3は互いに平行であり、ウエブ4,5は両フランジ2,3に対し垂直である。外側フランジ2と内側フランジ3はいずれも板状で、それぞれ幅方向(図1において左右方向)に沿って実質的に均一な厚さを有し、幅方向の略中央部に溶着部6,7を有する。
図1に示すアルミニウム合金押出形材1において、ウエブ4は肉厚の大きい外側部4aとそれより肉厚の小さい内側部4bからなり、外側部4aは外側フランジ2に接続し、内側部4bは内側フランジ3に接続する。ウエブ5は肉厚の大きい外側部5aとそれより肉厚の小さい内側部4bからなり、外側部5aは外側フランジ2に接続し、内側部5bは内側フランジ3に接続する。外側部4a,5a及び内側部4b,5bは、フランジ2,3との接続部フィレットを除き、それぞれ高さ方向(図1において上下方向)に沿って実質的に均一な厚さを有する。
図3に示すアルミニウム合金押出形材1Bは、ウエブ4,5の外側部4a,5aと内側部4b,5bの間に、内側部の4b,5bの一部として板厚が漸減する遷移領域8が形成されている。このアルミニウム合金押出形材1Bは、この点で図2に示すアルミニウム合金押出形材1Aと異なる。本発明に係るアルミニウム合金押出形材においては、このような遷移領域8の存在が許容される。
しかし、本発明に係るアルミニウム合金押出形材(図1~3)は、外側フランジ2に接続する外側部4a,5aが押出形材の断面積中心O(中立軸N)より車体幅方向外側(衝突側)の領域に位置し、内側部4b,5bより厚肉化されている。このため、外側部4a,5aの曲げ強度が高く、ウエブ4,5の座屈(外側部4a,5aが外側に膨らむような曲げ変形)が抑制される。外側部4a,5aの肉厚は、ウエブの座屈を抑制する作用と重量増、及び想定される荷重の大きさを勘案して、適宜決めることができる。ただし、肉厚が大きい外側部4a,5aと小さい内側部4b、5bとの肉厚差が大きすぎると、押出加工時に欠肉が生じやすく、健全な押出形材が得られない可能性がある。このため、外側部4a,5aの肉厚をTw、内側部4b,5bの肉厚をtwとしたとき、肉厚Twは肉厚twの2.5倍を超えないことが好ましい。
図8を参照して説明したとおり、アルミニウム合金押出形材11が高強度材料からなる場合、アルミニウム合金押出形材11(ドアビーム)が衝突荷重により曲げ変形したとき、ウエブ14,15及び外側フランジ12が座屈しやすく、その際、外側フランジ12に断面幅方向への引張応力が生じる。この引張応力が外側フランジ12の溶着部16の破断限界を超えると、溶着部16が破断する。そして、アルミニウム合金押出形材11が高強度材料からなる場合、溶着部16の破断限界にばらつきが出て、溶着部16の破断限界が比較的低くなっていることもあり得る。
厚肉部2aの肉厚Tfは、外側フランジ2に引張応力が負荷されたとき、厚肉部2a以外の部位が優先的に塑性変形するだけの大きさとする必要がある。溶着部6の強度低下は、押出条件が悪い場合でも通常部(溶着部6以外の箇所)の強度の10%以下に留まるから、外側フランジ2の厚肉部2aの肉厚Tfは、厚肉部2a以外の部位の肉厚tfに比べて10%以上大きくしておくことが好ましい(Tf≧tf×1.1)。一方、厚肉部2aと厚肉部2a以外の部位の肉厚差が大きすぎると、押出加工時に欠肉が生じやすく、健全な押出形材が得られない可能性があるから、厚肉部2aの肉厚Tfは厚肉部2a以外の部位の肉厚tfの2.5倍を超えないことが好ましい(Tf≦tf×2.5)。
このように、ウエブが3個以上の場合でも、外側フランジの溶着部はウエブ間に存在し、各ウエブの外側部(厚肉化した部分)の高さhはH×2/3以上、H以下の範囲内が好ましく、外側フランジの厚肉部の幅Wは、3mm以上、D×1/3以下の範囲内が好ましい。また、ウエブの外側部の肉厚Twは、twを超え、tw×2.5以下の範囲内が好ましく、外側フランジの厚肉部の肉厚Tfは、tf×1.1以上、tf×2.5以下の範囲内が好ましい。なお、ウエブが3個以上の場合でも、溶着部はウエブ間の中央付近に位置することが好ましいが、特に限定的ではない。
2 外側フランジ
2a 外側フランジの厚肉部
3 内側フランジ
4,5 ウエブ
4a,5a ウエブの外側部
4b,5b ウエブの内側部
6,7 溶着部
N 曲げの中立軸
O 断面積中心
h 外側部4a,5aの高さ
Tw 外側部4a,5aの肉厚
W 厚肉部2aの幅
Tf 厚肉部2aの肉厚
Claims (7)
- 長手方向に沿って溶着部を有する中空断面構造のアルミニウム合金押出形材からなり、前記アルミニウム合金押出形材が車体幅方向外側に配置される外側フランジと車体幅方向内側に配置される内側フランジ、及び前記両フランジを連結する少なくとも2つのウエブを備え、前記溶着部が前記外側フランジに設けられ、前記押出形材の押出方向に垂直な断面において、前記ウエブが前記外側フランジに接続する外側部と前記内側フランジに接続する内側部からなり、前記外側部は前記押出形材の断面積中心より車体幅方向外側の領域に位置し、前記外側部の肉厚が前記内側部の肉厚より大きいことを特徴とするアルミニウム合金製ドアビーム。
- 前記押出形材の押出方向に垂直な断面において、前記ウエブの前記外側フランジから前記押出形材の断面積中心までの高さをHとしたとき、前記外側部の高さが2/3H~Hの範囲であることを特徴とする請求項1に記載されたアルミニウム合金製ドアビーム。
- 前記外側フランジの溶着部近傍に他の部位に比べて肉厚が大きい厚肉部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載されたアルミニウム合金製ドアビーム。
- 前記押出形材の押出方向に垂直な断面において、前記外側フランジの溶着部の両側に接続する2つのウエブの間隔をDとしたとき、前記厚肉部は、幅が3mm以上、1/3D以下の範囲であり、肉厚が他の部位の肉厚の1.1~2.5倍の範囲であることを特徴とする請求項3に記載されたアルミニウム合金製ドアビーム。
- 前記アルミニウム合金押出形材が耐力450MPa以上の7000系アルミニウム合金押出形材であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載されたアルミニウム合金製ドアビーム。
- 長手方向に沿って溶着部を有する中空断面構造のアルミニウム合金押出形材からなり、前記アルミニウム合金押出形材が車体幅方向外側に配置される外側フランジと車体幅方向内側に配置される内側フランジ、及び前記両フランジを連結する少なくとも2つのウエブを備え、前記溶着部が前記外側フランジに設けられ、前記押出形材の押出方向に垂直な断面において、前記外側フランジの溶着部近傍に他の部位に比べて肉厚が大きい厚肉部が形成され、前記外側フランジの溶着部の両側に接続する2つのウエブの間隔をDとしたとき、前記厚肉部は、幅が3mm以上、1/3D以下の範囲であり、肉厚が他の部位の肉厚の1.1~2.5倍の範囲であることを特徴とするアルミニウム合金製ドアビーム。
- 前記アルミニウム合金押出形材が耐力450MPa以上の7000系アルミニウム合金押出形材であることを特徴とする請求項6に記載されたアルミニウム合金製ドアビーム。
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