以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
電磁弁(特に電磁比例弁)には、ポジティブタイプの電磁弁と、ネガティブタイプの電磁弁とが存在する。駆動部に印加する励磁電流が増大するに従って、出力される圧油の圧力(すなわち油圧)が増大する電磁弁はポジティブタイプの電磁弁に分類され、出力される圧油の圧力が低下する電磁弁はネガティブタイプの電磁弁に分類される。
本発明は、ポジティブタイプの電磁弁及びネガティブタイプの電磁弁のいずれにも応用可能である。以下では、まずポジティブタイプの電磁弁及びネガティブタイプの電磁弁の概略構成について説明し、その後、ポジティブタイプの電磁弁及びネガティブタイプの電磁弁の具体的な構成例について説明する。
[電磁弁の概略構成]
図1は、ポジティブタイプの電磁弁10の概略構成を示す断面図である。図2は、ネガティブタイプの電磁弁10の概略構成を示す断面図である。図1及び図2に示す各要素は概念的に図示されており、各要素の形状及びサイズ等は図1及び図2に示す形状及びサイズ等には限定されない。
図1及び図2の示す電磁弁10の各々は、弁本体部11、駆動部12、スプール13及びスリーブ14を備える。
弁本体部11は、駆動部12、スプール13及びスリーブ14を支持する。図1及び図2に示す電磁弁10において、駆動部12は、図示しない連結部材を介して弁本体部11に取り付けられている。スリーブ14(特にスリーブ本体部15)は、ストッパーとして働く留め具31(例えばC形状止め輪)と弁本体部11とに挟まれることにより、弁本体部11に対して固定されている。スプール13は、スリーブ14が有する収容スペースに位置しつつスリーブ14によりスライド自在に保持されており、スリーブ14を介して弁本体部11により支持されている。ただし弁本体部11は、他の支持態様によって、駆動部12、スプール13及びスリーブ14を支持してもよい。
駆動部12は、弁本体部11に対して固定され、スプール13を駆動する。図示の駆動部12は、ソレノイド部20及びプランジャー(可動鉄心)21を有する。ソレノイド部20及びプランジャー21は、弁本体部11のハウジング部によって覆われ且つ取り囲まれている。ソレノイド部20は、印加される電流に応じた磁力を発生する磁力発生デバイスであり、ソレノイドコイルによって構成されている。ソレノイド部20に印加される電流に応じて、プランジャー21の軸方向D1に関する位置が変えられ、プランジャー21のソレノイド部20からの移動量が変動する。プランジャー21は、軸方向D1に延びる電磁弁10の中心軸線(図示省略)上に位置し、ソレノイド部20からの磁力の影響を受けて軸方向D1へ往復移動可能に設けられている。このように軸方向D1は、プランジャー21が移動する方向に対応する。
駆動ロッドとして働くプランジャー21は、単一部材によって構成されていてもよいし、複数の部材が組み合わされて構成されていてもよい。単一部材によってプランジャー21が構成される場合、ソレノイド部20からの磁力の影響を受けたプランジャー21は、直接的に、スプール13に接触することが可能である。複数の部材によってプランジャー21が構成される場合、ソレノイド部20からの磁力の影響を直接的に受ける部材と、スプール13に接触する部材とを異ならせることが可能である。この場合、スプール13に接触するプランジャー21の部材は、ソレノイド部20からの磁力の影響を直接的に受けるプランジャー21の部材から力を受けて、スプール13側に移動することが可能である。
ソレノイド部20及びプランジャー21の具体的な構成は限定されない。駆動部12は、主としてソレノイド部20によってもたらされる磁力によりプランジャー21を動作させる方式(いわゆるプル型駆動方式)を採用してもよい。また駆動部12は、ソレノイド部20によってもたらされる磁力とプッシュバーから加えられる物理的な力とのバランスに応じてプランジャー21を動作させる方式(いわゆるプッシュ型駆動方式)を採用してもよい。
ソレノイド部20に流される電流は、図示しない制御部によって制御される。制御部には、例えば電磁弁10が搭載される油圧装置(例えば建設機械等の作業機械)の操作者によって直接的に操作される操作部(例えば操作レバー部、操作パネル等)が接続されており、操作部の状態に応じた操作指令信号が操作部から入力される。制御部は、操作者により操作部を介して入力される操作指令信号に応じて、ソレノイド部20に流す電流を制御する。このように駆動部12の動作(すなわちプランジャー21の位置)は制御部によって制御され、駆動部12は電磁弁10の流路の構造を変える。
スプール13は、軸方向D1に延びる電磁弁10の中心軸線(図示省略)上に位置し、プランジャー21から受ける力の大きさに応じて軸方向D1へ往復移動可能に設けられている。スプール13は、大径部23及び小径部24を有する。大径部23及び小径部24は、軸方向D1と直角を成す径方向D2に関する外径がお互いに異なっており、大径部23は相対的に大きな外径を有し、小径部24は相対的に小さな外径を有する。図1に示す電磁弁10では、大径部23よりも小径部24の方が駆動部12側(図面の上側)に位置している。一方、図2に示す電磁弁10では、小径部24よりも大径部23の方が駆動部12側に位置している。図1及び図2の各々に示す大径部23及び小径部24は軸方向D1に互いに隣り合っているが、大径部23及び小径部24は必ずしも隣り合っている必要はない。スプール13は、外径がお互いに異なる3以上の部分を有していてもよいし、軸方向D1に関して2以上の箇所で外径が変化していてもよい。
スプール13は、軸方向D1に延びる第1流路C1と、径方向D2に延びる第2流路C2及び第3流路C3とを有する。第1流路C1は、スプール13を貫通しており、大径部23及び小径部24の全体にわたって存在する。第2流路C2及び第3流路C3は、第1流路C1に接続されるとともにスリーブ14(特にスリーブ本体部15)に向かって開口している。図1に示す電磁弁10において第2流路C2及び第3流路C3は大径部23に設けられている。図2に示す電磁弁10において第2流路C2及び第3流路C3は小径部24に設けられている。第1流路C1は、主としてアクチュエータAとの間における圧油の送り出し及び受け入れを行うための流路である。第2流路C2は、主として第1流路C1からタンクTに向けて圧油を排出するための流路である。第3流路C3は、主としてポンプPからの圧油を第1流路C1に供給するための流路である。
径方向D2に関するスプール13の位置は、スリーブ14によって規制されている。一方、軸方向D1に関し、スプール13は、スリーブ14が有する収容スペース(後述の本体収容スペース25及び分割収容スペース26)において軸方向D1へ移動自在に設けられている。スプール13は、ポンプPから電磁弁10に供給される圧油、駆動部12のプランジャー21、及び圧縮ばね17から軸方向D1の力を受け、これらの要素から受ける力が釣り合う位置に配置される。スリーブ14内におけるスプール13の位置に応じて、スプール13が有する流路(特に第2流路C2及び第3流路C3)と、スリーブ14が有する流路(特にスリーブ本体部15が有する第4流路C4及び第5流路C5)との接続及び非接続が切り換えられ、電磁弁10の流路構成が定められる。
スリーブ14はスリーブ本体部15及びスリーブ分割部16を有し、スリーブ本体部15及びスリーブ分割部16はそれぞれ別体の部材によって構成されている。
スリーブ本体部15は、弁本体部11に対して固定されている。図1及び図2に示すスリーブ本体部15は、弁本体部11において固定的に設けられた留め具31に引っ掛けられている。スリーブ本体部15は、スプール13の一部が位置する本体収容スペース25を有し、スプール13をスライド自在に支持している。
図1に示す電磁弁10では、スプール13の大径部23が本体収容スペース25に位置する。本体収容スペース25の径方向D2に関する径(以下、単に「径」とも称する)は、大径部23の径方向D2に関する外径(以下、単に「外径」とも称する)に対応する。すなわち本体収容スペース25の径のサイズは、大径部23の外径のサイズと全く同じ或いは非常に近似しており、例えば本体収容スペース25の径が大径部23の外径よりも僅かに大きくてもよい。これにより、大径部23とスリーブ本体部15との間において基本的に圧油が流通することなく、スプール13は軸方向D1へ移動することができる。このように図1に示すスリーブ本体部15は大径部23を支持し、大径部23は、本体収容スペース25を区画するスリーブ本体部15の内壁面に沿って軸方向D1へスライドすることができる。
なお図1に示す本体収容スペース25は、全体が大径部23の外径に対応する径を有するが、本体収容スペース25のうち、大径部23の移動範囲を含む一部のスペースのみが、大径部23の外径に対応する径を有していてもよい。
図1に示す本体収容スペース25には、スプール13の小径部24の一部も配置される。上述のように本体収容スペース25は、スプール13の大径部23に対応する径を有するため、スプール13の小径部24とスリーブ本体部15との間にはスペース(以下、「ドレーンスペース」とも称する)Sが形成される。このドレーンスペースSは、スプール13及びスリーブ14によって囲まれており、スリーブ本体部15が有する第6流路C6を介してドレーンDに接続されている。スプール13の駆動位置にかかわらずドレーンスペースSの圧油は第6流路C6を介してドレーンDに排出される。そのため、駆動部12によってスプール13が軸方向D1に駆動されている間、スプール13のうちドレーンスペースSに面する部分(すなわちドレーンスペースSを区画する部分)が圧油から受ける力は基本的にゼロである。なおドレーンD及びタンクTは、いずれも電磁弁10から排出される圧油を受け入れる要素であるため、お互いに別体として設けられていてもよいし、共通の要素によってドレーンD及びタンクTの両者が構成されていてもよい。
一方、図2に示す電磁弁10では、スプール13の小径部24が本体収容スペース25に配置されており、スリーブ本体部15は小径部24を支持する。小径部24は、本体収容スペース25を区画するスリーブ本体部15の内壁面に沿って軸方向D1へスライドすることができる。なお図2に示す本体収容スペース25には、スリーブ本体部15の大径部23も部分的に配置されている。
このように図2に示す本体収容スペース25は、径方向D2に関するサイズ(すなわち径)が異なる大径収容スペース25a及び小径収容スペース25bを含む。小径収容スペース25bの径は、スプール13の小径部24の外径と厳密に対応する。そのため小径収容スペース25bにおいてスプール13(特に小径部24)とスリーブ本体部15との間で基本的に圧油が流通することなく、スプール13は軸方向D1へ移動することができる。一方、大径収容スペース25aの径は、スプール13の大径部23の外径と厳密に対応していてもよいが、厳密には対応していなくてもよい。大径収容スペース25aは、大径収容スペース25aにおいてスプール13の軸方向D1の移動がスリーブ本体部15によって阻害されない程度の径を有していればよく、大径部23の外径以上の大きさの径を有しうる。
図1及び図2の各々に示すスリーブ本体部15は、軸方向D1に関してスプール13を介して駆動部12とは反対側において、径方向D2に延びる底部28(すなわち延長部)を有する。径方向D2に形成される底部28は、本体収容スペース25の少なくとも一部を覆う部分を構成する。図1及び図2の各々に示す底部28は、本体収容スペース25を部分的に覆い、且つ、貫通孔29を有する。底部28は、圧縮ばね17の着座部として機能し、圧縮ばね17及びスプール13がスリーブ本体部15から軸方向D1へ脱落するのを防ぐストッパーとしても機能する。貫通孔29はアクチュエータポートとして機能し、電磁弁10が他の機器に取り付けられる際、当該の他の機器のポート及び流路に対して貫通孔29は接続される。図1に示す貫通孔29の径は、スプール13の大径部23の外径よりも小さく、また圧縮ばね17の径方向D2のサイズ(特に外径サイズ)よりも小さい。図2に示す貫通孔29の径は、スプール13の小径部24の外径よりも小さく、また圧縮ばね17の径方向D2のサイズ(特に外径サイズ)よりも小さい。
圧縮ばね17は、本体収容スペース25のうちの底部28とスプール13との間の部分によって構成されている第7流路C7に位置しており、底部28及びスプール13によって挟まれて軸方向D1に圧縮されている。スプール13の軸方向D1の位置に応じて、第7流路C7の軸方向D1のサイズは変わり、スプール13に加えられる圧縮ばね17からの力(弾性力)は変動する。第7流路C7は、第1流路C1及び貫通孔29につながっている。したがって、第1流路C1の圧油は、第7流路C7及び貫通孔29を介してアクチュエータAに供給され、アクチュエータAの圧油は、貫通孔29及び第7流路C7を介して第1流路C1に戻される。
スリーブ分割部16は、軸方向D1に関して弁本体部11とスリーブ本体部15とに挟まれ、弁本体部11とスリーブ本体部15との間に固定されている。図1及び図2の各々に示すスリーブ分割部16は、スリーブ本体部15に対して固定されている。スリーブ分割部16は、軸方向D1に延びる貫通孔により構成されている分割収容スペース26を有する。分割収容スペース26は、本体収容スペース25よりも駆動部12側に位置し、本体収容スペース25に接続されている。図示のスリーブ分割部16は、リング状の断面を有する管状形状を有し、スリーブ本体部15の端部を構成する凹状の着座部15aに嵌め込まれている。スリーブ分割部16と弁本体部11との間にはOリングRが配置されている。このOリングRは、スリーブ分割部16及び弁本体部11に挟まれて径方向D2に圧縮されており、スリーブ分割部16と弁本体部11との間を液密にシールする。
着座部15aの径は、スリーブ分割部16の外径に厳密に対応していてもよいが、厳密には対応していなくてもよい。着座部15aの径がスリーブ分割部16の外径に厳密に対応している場合、着座部15aがスリーブ分割部16の径方向D2の位置を定める。一方、着座部15aの径がスリーブ分割部16の外径に厳密には対応していない場合、弁本体部11とスリーブ分割部16との間に位置するOリングRが、スリーブ分割部16の径方向D2の位置を定める。このようにスリーブ分割部16は、スリーブ本体部15(特に着座部15a)又はOリングRによって所望位置に配置され、弁本体部11及びスリーブ本体部15に対して固定されている。
分割収容スペース26には、スプール13の一部(特に大径部23又は小径部24)が位置する。分割収容スペース26の径は、分割収容スペース26に配置されるスプール13の大径部23又は小径部24の外径に対応する。具体的には、図1に示す分割収容スペース26の径は、スプール13の小径部24の外径に対応する。図2に示す分割収容スペース26の径は、スプール13の大径部23の外径に対応する。そのため、分割収容スペース26においてスリーブ分割部16とスプール13との間で基本的に圧油が流通することなく、スプール13は軸方向D1へ移動することができる。
このようにスリーブ分割部16は、スプール13のうち分割収容スペース26に配置される部分を軸方向D1へスライド自在に支持している。図1に示す分割収容スペース26にはスプール13の小径部24が部分的に配置されており、スリーブ分割部16は、スプール13の小径部24をスライド自在に支持している。一方、図2に示す分割収容スペース26にはスプール13の大径部23が部分的に配置されており、スリーブ分割部16は、スプール13の大径部23をスライド自在に支持している。
上述のように複数の部材を組み合わせてスリーブ14を構成することにより、スプール13の大径部23及び小径部24のそれぞれの外径に厳密に対応する収容スペースを、別々の部材によって実現することができる。すなわち、スリーブ本体部15に形成される本体収容スペース25の径は、大径部23及び小径部24のうちの一方の外径に対してのみ厳密に対応させればよい。またスリーブ分割部16に形成される分割収容スペース26の径は、大径部23及び小径部24のうちの他方の外径に対してのみ厳密に対応させればよい。したがって、単一のスリーブに形成される2つの収容スペースをスプール13の大径部23及び小径部24の外径のそれぞれに対して厳密に対応させる場合に比べ、スリーブ14に対する収容スペースの加工形成を簡単にすることができる。
例えば、図1に示すポジティブタイプの電磁弁10では、スリーブ本体部15の本体収容スペース25をスプール13の大径部23に対応させて、スリーブ分割部16の分割収容スペース26を小径部24に対応させればよく、厳密に位置合わせされた段差部をスリーブ本体部15に形成する必要がない。また図2に示すネガティブタイプの電磁弁10では、スリーブ本体部15の本体収容スペース25(特に小径収容スペース25b)をスプール13の小径部24に対応させて、スリーブ分割部16の分割収容スペース26をスプール13の大径部23に対応させればよい。なお図2に示すスリーブ本体部15は、小径収容スペース25bだけではなく大径収容スペース25aも有するが、大径収容スペース25aの径はスプール13の大径部23の外径に必ずしも厳密には対応している必要はない。そのためスリーブ本体部15に対する大径収容スペース25aの形成には、必ずしも高度な加工精度は要求されない。同様に、図1及び図2に示すスリーブ本体部15は着座部15aを有するが、上述のように着座部15aの径はスリーブ分割部16の外径に必ずしも厳密には対応している必要はない。
また図1及び図2に示す電磁弁10では、スプール13の大径部23及び小径部24のそれぞれが別部材(すなわちスリーブ本体部15及びスリーブ分割部16)によってスライド自在に支持されている。したがって、スリーブ本体部15及びスリーブ分割部16の組み合わせを変えることによって、大径部23及び小径部24の外径の相対関係が異なる様々なスプール13に柔軟に対応することが可能である。
特に、スリーブ本体部15及びスリーブ分割部16のうちの一方を共通に使用しつつ、他方のみを変えることによって、大径部23及び小径部24のサイズ比(特に径方向D2に広がる面積の比)の異なる様々なスプール13に対応することが可能である。例えば、スリーブ本体部15を共通使用しつつ、スリーブ分割部16(特に分割収容スペース26の径)のみを変えることによって、特性の異なる様々な電磁弁10を簡単に実現することが可能である。このようにスリーブ本体部15を共通で使用する場合、想定される複数の特性のそれぞれに応じた複数のスリーブ分割部16を用意しておけば、迅速且つ簡単に所望の特性を有する電磁弁10を作ることが可能である。特に図1及び図2に示す電磁弁10のように、スリーブ分割部16のサイズをスリーブ本体部15のサイズよりも小さくすることによって、分割収容スペース26の加工に要する労力を小さくすることができ、複数のスリーブ分割部16の保存スペースを小さくすることができる。
このように、複数の部材を組み合わせてスリーブ14を構成することにより、様々な特性の電磁弁10を簡単且つ柔軟に実現することができ、高度な加工精度が要求される専用の単一スリーブを作製及び準備する必要がない。
また、スリーブ14(特にスリーブ本体部15)が径方向D2に延びる底部28(延長部)を一体的に有することによって、圧縮ばね17及びスプール13の脱落を防ぐ蓋部材を別個に設ける必要がない。したがって、そのような蓋部材をスリーブ14に装着することが不要であり、圧縮ばね17及びスプール13を一方側からスリーブ本体部15の本体収容スペース25に挿入するだけで、スプール13、スリーブ14及び圧縮ばね17を適切に組み立てることができる。このようにスリーブ本体部15の一部によって底部28を形成することにより、スリーブ14の構成を簡素化しつつ、圧縮ばね17及びスプール13の脱落を確実に防ぐことができ、組み立ても簡単である。
なおスリーブ14に底部28(延長部)が設けられない場合、圧縮ばね17及びスプール13の脱落を防ぐために、蓋部材をスリーブ14の端部に取り付ける必要がある。そのような蓋部材はスリーブ14に対して確実に取り付けられ、簡単にはスリーブ本体部15から取り外せない。しかしながら、使用期間の経過とともにスリーブ14に対する蓋部材の固定が緩む可能性がゼロではなく、また蓋部材は圧縮ばね17から力を受ける。そのため、蓋部材がスリーブ14から脱落する可能性は、非常に小さいながらも、ゼロではない。一方、図1及び図2に示す電磁弁10では、スリーブ本体部15の一部によって構成される底部28(延長部)が実質的に蓋部材として働くため、圧縮ばね17及びスプール13の脱落の懸念はない。
[電磁弁の詳細な具体例]
図3は、ポジティブタイプの電磁弁(電磁比例弁)10の具体例を示す図であって、電磁弁の断面を側方から見た図である。図3に示す電磁弁10において、上述の図1に示された電磁弁10と同一又は類似の要素には同一の符号が付されており、その詳細な説明は省略する。また煩雑さを軽減するため、図3において断面を示すハッチングは示されていない。
図3に示す弁本体部11は、本体取付部41、フランジ部42及びハウジング部43を有する。本体取付部41、フランジ部42及びハウジング部43は、図示しない固定手段によってお互いに固定されている。
本体取付部41には留め具31が固定的に取り付けられている。スリーブ本体部15は、本体取付部41及び留め具31によって軸方向D1に挟まれ、本体取付部41に固定されている。スリーブ分割部16は、本体取付部41及びスリーブ本体部15によって軸方向D1に挟まれ、本体取付部41に固定されている。スリーブ本体部15及びスリーブ分割部16の各々と本体取付部41と間にはOリングRが設けられており、これらのOリングRによって、スリーブ本体部15及びスリーブ分割部16の各々と本体取付部41と間は液密にシールされている。
フランジ部42は継手として機能する。電磁弁10を他の機器に取り付ける際には、ねじ等の固定具を介してフランジ部42が他の機器に固定される。ハウジング部43は、駆動部12のソレノイド部20(図3では図示省略)を包囲する。
スプール13は大径部23及び小径部24を有し、小径部24は第1小径部24a及び第2小径部24bを有する。第1小径部24aは、スプール13の駆動部12側端部を構成し、第2小径部24bは、第1小径部24aと大径部23との間に位置し、第2小径部24bの外径は、第1小径部24aの外径よりも小さい。第1小径部24aの外径は、スリーブ分割部16の内径(すなわち分割収容スペース26の径)に対応しており、第1小径部24aの少なくとも一部がスリーブ分割部16によってスライド自在に支持されている。そのため、分割収容スペース26においてスリーブ分割部16とスプール13(特に第1小径部24a)との間で基本的に圧油が流通することなく、スプール13は軸方向D1へ移動することができる。
本体収容スペース25は、径(すなわち径方向D2のサイズ)が異なる複数のスペースを含む。本体収容スペース25を構成するこれらの複数のスペースのうち、スプール13の大径部23が移動可能な範囲の少なくとも一部を含むスペース(以下、「大径支持スペース25c」とも称する)の径は、大径部23の外径に対応する。そのため大径部23の少なくとも一部は、スリーブ本体部15によってスライド自在に支持されている。また、大径支持スペース25cにおいてスリーブ本体部15とスプール13(特に大径部23)との間で基本的に圧油が流通することなく、スプール13は軸方向D1へ移動することができる。
スリーブ本体部15の外周部には複数のOリングRが設けられている。これらのOリングRは、電磁弁10が他の機器に取り付けられる際に、電磁弁10と他の機器との間を液密にシールする。
図3に示す電磁弁10の他の要素の基本的構成は、図1に示す対応の要素の基本的構成と同じである。図3に示す電磁弁10を構成する各要素の具体的な形状及びサイズは、図1に示す電磁弁10を構成する各要素の具体的な形状及びサイズとは異なっている。しかしながら、各要素間の相対的な位置関係や各要素の基本的構成の大部分は、図3に示す電磁弁10と図1に示す電磁弁10との間で共通する。
図4は、ネガティブタイプの電磁弁(電磁比例弁)10の具体例を示す図であって、電磁弁の断面を側方から見た図である。図4に示す電磁弁10において、上述の図2に示された電磁弁10及び上述の図3に示された電磁弁10と同一又は類似の要素には同一の符号が付されており、その詳細な説明は省略する。また煩雑さを軽減するため、図4において断面を示すハッチングは示されていない。
図4に示す弁本体部11は、図3に示す弁本体部11と同様の本体取付部41、フランジ部42及びハウジング部43を有する。
図4に示すスプール13は大径部23及び小径部24を有し、小径部24は第1小径部24a及び第2小径部24bを有する。第1小径部24aは、大径部23及び第2小径部24bよりも、圧縮ばね17側(すなわち底部28側)に位置し、第2小径部24bは、大径部23と第1小径部24aとの間に位置する。大径部23の外径は、スリーブ分割部16の内径(すなわち分割収容スペース26の径)に対応しており、大径部23の少なくとも一部がスリーブ分割部16によってスライド自在に支持されている。そのため、分割収容スペース26においてスリーブ分割部16とスプール13(特に大径部23)との間で基本的に圧油が流通することなく、スプール13は軸方向D1へ移動することができる。第2小径部24bの外径は、第1小径部24aの外径よりも小さい。
本体収容スペース25は、径方向D2のサイズ(すなわち径)が異なる複数のスペースを含む。本体収容スペース25を構成するこれらの複数のスペースのうち、スプール13の第1小径部24aが移動可能な範囲の少なくとも一部を含むスペース(以下、「小径支持スペース25d」とも称する)の径は、第1小径部24aの外径に対応する。そのため第1小径部24aの少なくとも一部は、スリーブ本体部15によってスライド自在に支持されている。また、小径支持スペース25dにおいてスリーブ本体部15とスプール13(特に第1小径部24a)との間で基本的に圧油が流通することなく、スプール13は軸方向D1へ移動することができる。
上述の構成を有する図3及び図4に示す電磁弁10において、ソレノイド部20に印加する電流の大きさをコントロールしてプランジャー21の軸方向D1位置が調整され、スプール13の軸方向D1の位置が変えられる。スプール13の位置に応じて、第1流路C1に対するポンプP及びタンクTの接続状態が変えられ、第1流路C1から第7流路C7及び貫通孔29を介してアクチュエータAに供給される圧油の圧力が変えられる。
例えば、第2流路C2を第4流路C4から遮断しつつ、第3流路C3を第5流路C5に接続するように、スプール13の位置を調整することができる。この場合、第5流路C5及び第3流路C3を介してポンプPから第1流路C1に圧油が供給され、第1流路C1からタンクTに圧油は排出されない。したがって、第1流路C1からアクチュエータAに供給される圧油の圧力は徐々に上がり、高圧の圧油をアクチュエータAに供給することができる。一方、第2流路C2を第4流路C4に接続しつつ、第3流路C3を第5流路C5から遮断するように、スプール13の位置を調整することができる。この場合、ポンプPから第1流路C1には圧油が供給されず、第1流路C1の圧油は第2流路C2及び第4流路C4を介してタンクTに排出される。したがって、第1流路C1からアクチュエータAに供給される圧油の圧力は徐々に下がり、最終的にはゼロになる。
[応用例]
上述の電磁弁10は、各種の装置(例えば油圧装置)に搭載することが可能である。例えば、方向切換弁が上述の電磁弁10を備えていてもよい。また油圧ショベル等の建設機械やその他の作業機械が、上述の電磁弁10を具備する方向切換弁を備えていてもよい。
[方向切換弁]
図5は、方向切換弁90の一例を示す断面図である。図5に示す方向切換弁90は既知の構造を有し、例えば特開平08-170353号公報を参考にすることによって、図5に示す方向切換弁90の具体的な構成及び動作を容易に理解することができる。したがって本明細書では、図5に示す方向切換弁90の詳細な説明は省略する。
図5に示す方向切換弁90では、弁ブロック95のスプール孔96における方向切換スプール91の位置(すなわち図5の左右方向の位置)に応じて、弁ブロック95が有する流路(特に第1負荷通路92及び第2負荷通路93)における作動油の流れ及び流れ方向が変えられる。例えば、共通の油圧機器(例えば油圧モータ、油圧ピストン等)に対して第1負荷通路92及び第2負荷通路93が接続されている状態で、弁ブロック95に対する方向切換スプール91の位置を変えることによって、油圧機器に対する作動油の供給及び排出を切り換えられるだけではなく、油圧機器の駆動状態を順方向駆動と逆方向駆動との間で切り換えることもできる。
この方向切換スプール91の位置は、方向切換スプール91の両端に対して加えられるパイロット圧のバランスによって決められる。図示の方向切換弁90の弁ブロック95には、第1パイロット圧導入部98及び第2パイロット圧導入部99が取り付けられている。第1パイロット圧導入部98の内側には、圧縮ばね等によって構成される駆動弾性体94が設けられている。駆動弾性体94は、第1パイロット圧導入部98及び方向切換スプール91から力を受けて圧縮されている。方向切換スプール91の一端部(図5の右側の端部)に対しては、第1パイロット圧導入部98に供給される圧油の圧力と、駆動弾性体94の弾性力と、が加えられる。方向切換スプール91の他端部(図5の左側の端部)に対しては、第2パイロット圧導入部99に供給される圧油の圧力が加えられる。
したがって、第1パイロット圧導入部98及び第2パイロット圧導入部99のうちの少なくとも一方に対して上述の電磁弁10を取り付けて、電磁弁10を電気的に制御することによって、方向切換スプール91の位置を調整することが可能である。すなわち、上述の電磁弁10の貫通孔29(アクチュエータポート)を介して第1パイロット圧導入部98及び/又は第2パイロット圧導入部99に供給される圧油の圧力を、方向切換スプール91を移動させるためのパイロット圧として利用することで、スプール孔96において方向切換スプール91を所望位置に配置することが可能である。なお、第1パイロット圧導入部98及び第2パイロット圧導入部99のうちの一方にのみ電磁弁10が取り付けられる場合、電磁弁10が取り付けられない他方の導入部には、通常の配管を介し、パイロット圧を提供する圧油を導入することが可能である。
なお上述の電磁弁10を搭載可能な方向切換弁は、図5に示される方向切換弁90には限定されない。また方向切換弁以外の油圧機器やその他の機器に対しても、上述の電磁弁10を搭載することが可能である。
[油圧ショベル]
図6は、油圧ショベル110の典型的な構成例の概略を示す外観図である。油圧ショベル110は、一般に、クローラを具備する下部フレーム144と、下部フレーム144に対して旋回可能に設けられる上部フレーム145と、上部フレーム145に取り付けられるブーム147と、ブーム147に取り付けられるアーム148と、アーム148に取り付けられるバケット149とを備える。アクチュエータとしての油圧シリンダ167、168、169は、ブーム用、アーム用、バケット用の油圧シリンダであり、それぞれブーム147、アーム148及びバケット149を駆動する。旋回モータ146によって上部フレーム145が旋回させられるように、上部フレーム145には旋回モータ146からの回転駆動力が伝達される。また走行モータ151によりクローラが駆動されて油圧ショベル110が走行するように、下部フレーム144のクローラには走行モータ151からの回転駆動力が伝達される。
この油圧ショベル110において、例えば油圧シリンダ167、168、169、旋回モータ146及び/又は走行モータ151に含まれ或いは接続される油路のうちの適切な箇所に、上述の電磁弁10を備える方向切換弁90が設置されていてもよい。
本発明は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。例えば、上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよいし、実施形態及び変形例が部分的に組み合わせられてもよい。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、具体的な構成に応じた特有の効果が発揮される。