JP7184979B2 - 光学フィルタ - Google Patents
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また、本発明の別態様にかかる光学フィルタは、基材と、前記基材の少なくとも一方の主面側に設けられ、波長600nmにおける消衰係数k 600 が0.12以上かつ1310~1350nmの波長領域における最小消衰係数k 1310-1350MIN が0.01以下となる膜を有し、少なくとも異なる2層の膜が積層された誘電体多層膜と、を備え、400~680nmの波長領域における最大透過率T 400-680MAX が6%以下かつ、400~680nmの波長領域における最大反射率R 400-680MAX および平均反射率R 400-680AVE の少なくとも一方が10%以下であり、1310~1350nmの光を透過する。
また、本発明の別態様にかかる光学フィルタは、基材と、前記基材の少なくとも一方の主面側に設けられ、波長600nmにおける消衰係数k 600 が0.12以上かつ800~1000nmの波長領域における最小消衰係数k 800-1000MIN が0.01以下となる膜を有し、少なくとも異なる2層の膜が積層された誘電体多層膜と、を備え、400~680nmの波長領域における最大透過率T 400-680MAX が6%以下かつ、400~680nmの波長領域における最大反射率R 400-680MAX および平均反射率R 400-680AVE の少なくとも一方が10%以下であり、800~1000nmの光を透過する。
消衰係数は、石英基板に成膜した単層膜の反射率と透過率そして膜厚を測定し、光学薄膜計算ソフトを用いて測定できる。
スピン密度は電子スピン共鳴装置を用いて測定できる。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
本発明の一実施形態の光学フィルタ(以下、「本フィルタ」ともいう)は、基材と、基材の少なくとも一方の主面側に最外層として積層された誘電体多層膜とを備える光学フィルタである。
図1に示す光学フィルタ1Aは、基材10の一方の主面側に誘電体多層膜30を有する例である。なお、「基材の主面側に特定の層を有する」とは、基材の主面に接触して該層が備わる場合に限らず、基材と該層との間に、別の機能層が備わる場合も含む。
本フィルタにおいて、誘電体多層膜は、基材の少なくとも一方の主面側に最外層として積層される。
また、多層膜を構成する材料によって消衰係数は異なる。消衰係数が大きいほど光の吸収が大きく、透過率が低下する。
本発明では、各多層膜の屈折率と消衰係数を考慮することで目的の光学特性を有する光学フィルタを設計する。
(i-1)波長600nmにおける消衰係数k600が0.12以上
(i-2A)1530~1570nmの波長領域における最小消衰係数k1530-1570MINが0.01以下
(i-2B)1310~1350nmの波長領域における最小消衰係数k1310-1350MINが0.01以下
(i-2C)800~1000nmの波長領域における最小消衰係数k800-1000MINが0.01以下
光学特性(i-2A)に関し、1530~1570nmの波長領域における最小消衰係数k1530-1570MINが0.01以下であることで、1530~1570nm付近の近赤外光を十分透過できる。k1530-1570MINは、好ましくは0.002以下である。
光学特性(i-2B)に関し、1310~1350nmの波長領域における最小消衰係数k1310-1350MINが0.01以下であることで、1310~1350nm付近の近赤外光を十分透過できる。k1310-1350MINは、好ましくは0.005以下である。
光学特性(i-2C)に関し、800~1000nmの波長領域における最小消衰係数k800-1000MINが0.01以下であることで、800~1000nm付近の近赤外光、特に880~920nmの領域を十分透過できる。k800-1000MINは、好ましくは0.005以下である。一方、k600の値を適度に大きくし、600nm付近の赤色光を、反射によらず吸収により遮断できる観点から、k800-1000MINは好ましくは0.0005以上である。
(i-3)800~1000nmの波長領域における最小消衰係数k800-1000MINが0.0005以上
k800-1000MINが0.0005以上であることで、k600の値を適度に大きくし、600nm付近の赤色光を、反射によらず吸収により遮断できる。k800-1000MINは好ましくは0.001以上、また、好ましくは0.1以下である。
高屈折率膜は、好ましくは、屈折率が3.5以上であり、より好ましくは4.0以上である。
低屈折率膜は、好ましくは、屈折率が2.5以下であり、より好ましくは1.5以下である。
また、高屈折率膜のスピン密度を上記範囲とするには、例えば水素がドープされていないシリコン、または水素がドープされていた場合であってもドープ量が抑制されたシリコンを用いることが挙げられる。
試料の加工は、多層膜を含む光学フィルタを適宜切断後、多層膜が付与されている基材ガラスを研磨により極力除去する。それにより基材ガラス由来のスピン信号の影響を低減できる。また、測定後のピーク分離は、例えばカーブフィッティングにより可能である。シリコンダングリングボンドの信号は、g=2.004~2.007、線幅4~8gaussの等方的信号として観測され、線幅をそろえたガウス関数とローレンツ関数の線形結合関数を使ったカーブフィッティングによるピーク分離の結果としてこのパラメータが得られる。ここでいう線幅は、微分形で得られる電子スピン共鳴スペクトルの、ピークトップとピークボトムの磁場の差を意味する。
本発明では、誘電体多層膜の積層数や膜厚が小さくても可視光領域を十分に遮蔽できる。これは本発明における誘電体多層膜の可視光領域の消衰係数が大きく、吸収により可視光を遮蔽できるためである。
透過色も反射色も黒色となるように、400~680nmの波長領域における最大透過率T400-680MAXが好ましくは6%以下であり、一方の主面側から見た400~680nmの波長領域における最大反射率R400-680MAXが好ましくは10%以下である。
上記波長領域における最小透過率をかかる範囲とするには、当該波長領域における最小消衰係数が上記光学特性(i-2A)~(i-2C)いずれかを満たす多層膜を用い、かつ、当該波長領域における反射率を小さく設計することにより、達成できる。
本フィルタにおける基材は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。また基材の材質としては近赤外光を透過する透明性材料であれば、有機材料でも無機材料でもよく、特に制限されない。また、異なる複数の材料を複合して用いてもよい。
ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス等が挙げられる。
ガラスとしては、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(例えば、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換して得られる化学強化ガラスを使用してもよい。
また基材の厚さは、誘電体多層膜成膜時の反り低減、光学素子低背化、割れ抑制の観点から、0.1mm以上5mm以下が好ましく、より好ましくは2~4mmである。
上記基材と誘電体多層膜を備える本発明の光学フィルタは、可視光を遮断し、近赤外光を透過する、IRバンドパスフィルタとして機能する。
(ii-1A)400~680nmの光を遮蔽し、1530~1570nmの光を透過する
本発明の光学フィルタBは、下記光学特性(ii-1B)を満たす。
(ii-1B)400~680nmの光を遮蔽し、1310~1350nmの光を透過する
本発明の光学フィルタCは、下記光学特性(ii-1C)を満たす。
(ii-1C)400~680nmの光を遮蔽し、800~1000nmの光を透過する
すなわち本フィルタは、下記光学特性(ii-2)~(ii-3)をさらに満たすことが好ましい。
(ii-2)400~680nmの波長領域における最大透過率T400-680MAXが6%以下
(ii-3)400~680nmの波長領域における最大反射率R400-680MAXおよび平均反射率R400-680AVEの少なくとも一方が10%以下
なお、光学フィルタの反射率R400-680AVEは、誘電体多層膜(可視反射防止近赤外透過層)側から測定した値である。
すなわち本フィルタAは、下記光学特性(ii-4A)をさらに満たすことが好ましい。これによりセンサーの感度がより高められる。
(ii-4A)1530~1570nmの波長領域における最小透過率T1530-1570MINが90%以上
T1530-1570MINはより好ましくは95%以上である。
T1530-1570MINを上記範囲とするには、例えば、上述の光学特性(i-2A)を満たす多層膜、すなわち1530~1570nmの波長領域の吸収性が低い多層膜を用い、かつ、1530~1570nmの波長領域における反射率を低く設計した誘電体多層膜を用いることが挙げられる。
すなわち本フィルタBは、下記光学特性(ii-4B)をさらに満たすことが好ましい。これによりセンサーの感度がより高められる。
(ii-4B)1310~1350nmの波長領域における最小透過率T1310-1350MINが90%以上
T1310-1350MINはより好ましくは95%以上である。
T1310-1350MINを上記範囲とするには、例えば、上述の光学特性(i-2B)を満たす多層膜、すなわち1310~1350nmの波長領域の吸収性が低い多層膜を用い、かつ、1310~1350nmの波長領域における反射率を低く設計した誘電体多層膜を用いることが挙げられる。
すなわち本フィルタCは、下記光学特性(ii-4C)をさらに満たすことが好ましい。これによりセンサーの感度がより高められる。
(ii-4C)880~920nmの波長領域における最小透過率T880-920MINが90%以上
T880-920MINはより好ましくは92%以上である。
T880-920MINを上記範囲とするには、例えば、上述の光学特性(i-2C)を満たす多層膜、すなわち800~1000nmの波長領域の吸収性が低い多層膜を用い、かつ、880~920nmの波長領域における反射率を低く設計した誘電体多層膜を用いることが挙げられる。
実施例における光学フィルタの分光透過率曲線と分光反射率曲線は、光学薄膜計算ソフトによるシミュレーションにて算出した。
実施例におけるアモルファスシリコンの消衰係数は石英基板に成膜した単層膜の反射率と透過率そして膜厚を測定し、光学薄膜計算ソフトを用いて測定した。
実施例におけるアモルファスシリコンのスピン密度は、消衰係数k600を元に図7の近似式を用いて算出した。
透明基板として白板ガラスの一方の主面に、真空蒸着法で、アモルファスシリコン(屈折率4.5)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に24層積層して、厚さ1.0μmの誘電体多層膜からなる可視吸収近赤外透過層を形成した。次に、ガラス板の他方の主面に、真空蒸着法で、アモルファスシリコン(屈折率4.5)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に24層積層して、厚さ1.0μmの誘電体多層膜からなる可視反射防止近赤外透過層を形成し、光学フィルタ1を得た。
透明基板として白板ガラスの一方の主面に、スパッタ法で、アモルファスシリコン(屈折率4.7)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に13層積層して、厚さ0.7μmの誘電体多層膜からなる可視吸収近赤外透過層を形成した。次に、ガラス板の他方の主面に、スパッタ法で、アモルファスシリコン(屈折率4.7)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に14層積層して、厚さ1.0μmの誘電体多層膜からなる可視反射防止近赤外透過層を形成し、光学フィルタ2を得た。
透明基板として白板ガラスの一方の主面に、スパッタ法で、水素をドープしたアモルファスシリコン(屈折率4.3)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に21層積層して、厚さ1.1μmの誘電体多層膜からなる可視吸収近赤外透過層を形成した。次に、ガラス板の他方の主面に、スパッタ法で、水素をドープしたアモルファスシリコン(屈折率4.3)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に19層積層して、厚さ0.8μmの誘電体多層膜からなる可視反射防止近赤外透過層を形成し、光学フィルタ3を得た。
透明基板として白板ガラスの一方の主面に、スパッタ法で、アモルファスシリコン(屈折率4.7)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に11層積層して、厚さ1.3μmの誘電体多層膜からなる可視吸収近赤外透過層を形成した。次に、ガラス板の他方の主面に、スパッタ法で、アモルファスシリコン(屈折率4.7)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に23層積層して、厚さ1.8μmの誘電体多層膜からなる可視反射防止近赤外透過層を形成し、光学フィルタ4を得た。
透明基板として白板ガラスの一方の主面に、スパッタ法で、アモルファスシリコン(屈折率4.7)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に9層積層して、厚さ1.1μmの誘電体多層膜からなる可視吸収近赤外透過層を形成した。次に、ガラス板の他方の主面に、スパッタ法で、アモルファスシリコン(屈折率4.7)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に22層積層して、厚さ1.5μmの誘電体多層膜からなる可視反射防止近赤外透過層を形成し、光学フィルタ5を得た。
透明基板として白板ガラスの一方の主面に、スパッタ法で、アモルファスシリコン(屈折率4.7)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に21層積層して、厚さ0.9μmの誘電体多層膜からなる可視吸収近赤外透過層を形成した。次に、ガラス板の他方の主面に、スパッタ法で、アモルファスシリコン(屈折率4.7)とSiO2(屈折率1.5)とを交互に11層積層して、厚さ0.3μmの誘電体多層膜からなる可視反射防止近赤外透過層を形成し、光学フィルタ6を得た。
また上記各例1~3で得られた光学フィルタの分光透過率曲線(入射角0度)を図3に、分光反射率曲線(入射角0度)を図4にそれぞれ示す。上記各例4~6で得られた光学フィルタの分光透過率曲線(入射角0度)を図5に、分光反射率曲線(入射角0度)を図6にそれぞれ示す。なお、分光反射率曲線は誘電体多層膜(可視反射防止近赤外透過層)側から測定した。また、反射率R400-680は誘電体多層膜(可視反射防止近赤外透過層)側から測定し、反射率R880-920、R1310-1350、R1530-1570は誘電体多層膜(可視吸収近赤外透過層)側から測定した値である。
例1、2、4、5、6が実施例であり、例3が比較例である。
一方、高屈折率膜の消衰係数k600が0.12以上ではない例3の光学フィルタは、400~680nmの可視光領域の遮蔽性が低い結果となった。
Claims (8)
- 基材と、
前記基材の少なくとも一方の主面側に設けられ、波長600nmにおける消衰係数k600が0.12以上かつ1530~1570nmの波長領域における最小消衰係数k1530-1570MINが0.01以下となる膜を有し、少なくとも異なる2層の膜が積層された誘電体多層膜と、
を備え、近赤外光を用いるセンサーモジュールのカバーとして用いられる光学フィルタであって、
400~680nmの波長領域における最大透過率T400-680MAXが6%以下かつ、400~680nmの波長領域における最大反射率R400-680MAXおよび平均反射率R400-680AVEの少なくとも一方が10%以下であり、1530~1570nmの光を透過する光学フィルタ。 - 基材と、
前記基材の少なくとも一方の主面側に設けられ、波長600nmにおける消衰係数k600が0.12以上かつ1310~1350nmの波長領域における最小消衰係数k1310-1350MINが0.01以下となる膜を有し、少なくとも異なる2層の膜が積層された誘電体多層膜と、
を備え、近赤外光を用いるセンサーモジュールのカバーとして用いられる光学フィルタであって、
400~680nmの波長領域における最大透過率T400-680MAXが6%以下かつ、400~680nmの波長領域における最大反射率R400-680MAXおよび平均反射率R400-680AVEの少なくとも一方が10%以下であり、1310~1350nmの光を透過する光学フィルタ。 - 基材と、
前記基材の少なくとも一方の主面側に設けられ、波長600nmにおける消衰係数k600が0.12以上かつ800~1000nmの波長領域における最小消衰係数k800-1000MINが0.01以下となる膜を有し、少なくとも異なる2層の膜が積層された誘電体多層膜と、
を備え、近赤外光を用いるセンサーモジュールのカバーとして用いられる光学フィルタであって、
400~680nmの波長領域における最大透過率T400-680MAXが6%以下かつ、400~680nmの波長領域における最大反射率R400-680MAXおよび平均反射率R400-680AVEの少なくとも一方が10%以下であり、800~1000nmの光を透過する光学フィルタ。 - 1530~1570nmの波長領域における最小透過率T1530-1570MINが90%以上である請求項1に記載の光学フィルタ。
- 1310~1350nmの波長領域における最小透過率T1310-1350MINが90%以上である請求項2に記載の光学フィルタ。
- 880~920nmの波長領域における最小透過率T880-920MINが90%以上である請求項3に記載の光学フィルタ。
- 前記誘電体多層膜の膜厚が2.0μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
- 前記波長600nmにおける消衰係数k600が0.12以上かつ1530~1570nmの波長領域における最小消衰係数k1530-1570MINが0.01以下となる膜、前記波長600nmにおける消衰係数k600が0.12以上かつ1310~1350nmの波長領域における最小消衰係数k1310-1350MINが0.01以下となる膜、前記波長600nmにおける消衰係数k600が0.12以上かつ800~1000nmの波長領域における最小消衰係数k800-1000MINが0.01以下となる膜、のいずれかが、スピン密度が5.0E+10以上(個/(nm*cm2))であるシリコン膜である請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
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