以下、図面を参照して、本発明に係る車両制御システムの実施形態について説明する。以下では、本発明に係る車両制御システムを、左側走行を採用する国又は地域において走行している車両を制御するシステムに適用した例について説明を行う。
図1に示すように、車両制御システム1は、車両に搭載された車両システム2に含まれている。車両システム2は、推進装置3、ブレーキ装置4、ステアリング装置5、外界認識装置6、車両センサ7、通信装置8、ナビゲーション装置9(地図装置)、運転操作装置10、乗員監視装置11、HMI12(Human Machine Interface)、自動運転レベル切替スイッチ13、車外報知装置14、及び制御装置15を有している。車両システム2の各構成は、CAN16(Controller Area Network)等の通信手段によって信号伝達可能に互いに接続されている。
推進装置3は車両に駆動力を付与する装置であり、例えば動力源及び変速機を含む。動力源はガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関及び電動機の少なくとも一方を有する。ブレーキ装置4は車両に制動力を付与する装置であり、例えばブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダとを含む。ブレーキ装置4はワイヤケーブルによって車輪の回転を規制するパーキングブレーキ装置を含んでもよい。ステアリング装置5は車輪の舵角を変えるための装置であり、例えば車輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータとを有する。推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5は、制御装置15によって制御される。
外界認識装置6は車外の物体等を検出する装置である。外界認識装置6は、車両の周辺からの電磁波や光を捉えて車外の物体等を検出するセンサ、例えば、レーダ17、ライダ18(LIDAR)、及び車外カメラ19を含む。外界認識装置6は、その他、車外からの信号を受信して、車外の物体等を検出する装置であってもよい。外界認識装置6は検出結果を制御装置15に出力する。
レーダ17はミリ波等の電波を車両の周囲に発射し、その反射波を捉えることにより、物体の位置(距離及び方向)を検出する。レーダ17は車両の任意の箇所に少なくとも1つ取り付けられている。レーダ17は、少なくとも車両の前方に向けて電波を照射する前方レーダ、車両の後方に向けて電波を照射する後方レーダ、車両の側方に向けて電波を照射する左右一対の側方レーダを含むことが好ましい。
ライダ18は赤外線等の光を車両の周囲に照射し、その反射光を捉えることにより、物体の位置(距離及び方向)を検出する。ライダ18は車両の任意の箇所に少なくとも1つ設けられている。
車外カメラ19は車両の周囲に存在する物体(例えば、周辺車両や歩行者)や、ガードレール、縁石、壁、中央分離帯、道路の形状や道路に描かれた道路標示等を含む車両の周囲を撮像する。車外カメラ19は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラであってよい。車外カメラ19は、車両の任意の箇所に少なくとも1つ設けられる。車外カメラ19は少なくとも車両の前方を撮像する前方カメラを含み、更に車両の後方を撮像する後方カメラ及び車両の左右側方を撮像する一対の側方カメラを含んでいるとよい。車外カメラ19は、例えばステレオカメラであってもよい。
車両センサ7は、車両の速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両の向きを検出する方位センサ等を含む。ヨーレートセンサは、例えばジャイロセンサである。
通信装置8は制御装置15及びナビゲーション装置9と車外に位置する周辺車両やサーバとの間の通信を媒介する。制御装置15は通信装置8を介して周辺車両との間で無線通信を行うことができる。また、制御装置15は通信装置8を介して、交通規制情報の提供を行うサーバと通信を行うことができる。更に、制御装置15は通信装置8を介して車両の外部に存在する人が所持する携帯端末との通信することができる。また、制御装置15は通信装置8を介して車両からの緊急通報を受け付ける緊急通報センタとの通信することができる。
ナビゲーション装置9は車両の現在位置を取得し、目的地への経路案内等を行う装置であり、GNSS受信部21、地図記憶部22、ナビインタフェース23、経路決定部24を有する。GNSS受信部21は人工衛星(測位衛星)から受信した信号に基づいて車両の位置(緯度や経度)を特定する。地図記憶部22は、フラッシュメモリやハードディスク等の公知の記憶装置によって構成され、地図情報を記憶している。ナビインタフェース23は乗員からの目的地などの入力を受け付けると共に、乗員に表示や音声によって各種情報を提示する。ナビインタフェース23は例えばタッチパネルディスプレイや、スピーカ等を含むとよい。他の実施形態では、GNSS受信部21は通信装置8の一部として構成されていてもよい。また、地図記憶部22は制御装置15の一部として構成されてもよく、通信装置8を介して通信可能なサーバ装置の一部として構成されてもよい。
地図情報は、高速道路、有料道路、国道、都道府県道といった道路の種別、道路の車線数、各車線の中央位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、道路区画線や車線の境界等の道路標示の形状、歩道や縁石、さく等の有無、交差点の位置、車線の合流及び分岐ポイントの位置、非常駐車帯の領域、各車線の幅員、道路に設けられた標識等の道路情報を含む。また、地図情報は、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報等を含んでもよい。
経路決定部24は、GNSS受信部21により特定された車両の位置と、ナビインタフェース23から入力された目的地と、地図情報とに基づいて目的地までの経路を決定する。また、経路決定部24は、経路を決定するときに、地図情報の車線の合流及び分岐ポイントの位置を参照して、車両が走行すべき車線である目標車線も含めて決定するとよい。
運転操作装置10は、運転者が車両を制御するために行う入力操作を受け付ける。運転操作装置10は、例えば、ステアリングホイール、アクセルペダル、及びブレーキペダルを含む。また、運転操作装置10は、シフトレバーやパーキングブレーキレバー等を含んでもよい。各運転操作装置10には、操作量を検出するセンサが取り付けられている。運転操作装置10は操作量を示す信号を制御装置15に出力する。
乗員監視装置11は車室内の乗員の状態を監視する。乗員監視装置11は例えば、車室内のシートに着座する乗員を撮像する室内カメラ26、及びステアリングホイールに設けられた把持センサ27を有する。室内カメラ26は例えばCCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。把持センサ27は運転者がステアリングホイールを把持しているか否かを検出し、把持の有無を検出信号として出力するセンサである。把持センサ27は例えば、ステアリングホイールに設けられた静電容量センサや圧電素子によって形成されているとよい。乗員監視装置11はステアリングホイール又はシートに設けられた心拍センサやシートに設けられた着座センサを含んでもよい。乗員監視装置11はその他、乗員に着用され、着用した乗員の心拍数及び血圧の少なくとも一方を含むバイタル情報を検出可能なウェアラブルデバイスであってもよい。このとき、乗員監視装置11は公知の無線による通信手段によって、制御装置15と通信可能に構成されているとよい。乗員監視装置11は撮像された画像及び検出信号を制御装置15に出力する。
車外報知装置14は車外に音や光によって報知する装置であり、例えば、警告灯やホーンを含む。前照灯(フロントライト)や尾灯(テールライト)、ブレーキランプ、ハザードランプ、車内灯が警告灯として機能してもよい。
HMI12は、乗員に対して表示や音声によって各種情報を報知すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI12は、例えば、液晶や有機ELを含むタッチパネルや表示灯等の表示装置31、ブザーやスピーカ等の音発生装置32、及びタッチパネル上のGUIスイッチや機械スイッチ等の入力インタフェース33の少なくとも1つを含む。ナビインタフェース23がHMI12として機能するように構成されていてもよい。
自動運転レベル切替スイッチ13は、自動運転の実行開始の指示を乗員から受け付けるスイッチである。自動運転レベル切替スイッチ13は機械スイッチやタッチパネル上に表示されるGUIスイッチであってよく、車室内の適所に配置される。自動運転レベル切替スイッチ13は、HMI12の入力インタフェース33によって構成されてもよく、ナビインタフェース23によって構成されていてもよい。
制御装置15は、CPU、ROM、及びRAM等から構成される電子制御装置(ECU)である。制御装置15はCPUでプログラムに沿った演算処理を実行することで、各種の車両制御を実行する。制御装置15は1つのハードウェアとして構成されていてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されていてもよい。また、制御装置15の各機能部の少なくとも一部は、LSIやASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
制御装置15は各種の車両制御を組み合わせて、少なくともレベル0~レベル3の自動運転制御(以下、自動運転)を行う。レベルはSAE J3016の定義に基づくものであって、運転者の運転操作及び車両周辺監視への介入の度合いに関連して定められている。
レベル0の自動運転では制御装置15は車両の制御を行わず、運転者が全ての運転操作を行う。すなわち、レベル0の自動運転はいわゆる手動運転を意味する。
レベル1の自動運転では制御装置15は一部の運転操作を行い、運転者が残りの運転操作を行う。例えば、レベル1の自動運転には定速走行及び車間距離制御(ACC;Adaptive Cruise Control)や車線維持支援制御(LKAS;Lane Keeping Assistance System)が含まれる。レベル1の自動運転は、レベル1の自動運転の実行に要する各種装置(例えば、外界認識装置6や車両センサ7)に異常がないという条件を満たすときに実行される。
レベル2の自動運転では制御装置15が全ての運転操作を行う。レベル2の自動運転は、運転者が車両周辺監視を行い、車両が予め定められた領域内にあり、且つ、レベル2の自動運転の実行に要する各種装置に異常がないという条件を満たすときに実行される。
レベル3の自動運転では制御装置15が全ての運転操作を行う。レベル3の自動運転は、運転者が必要に応じて車両周辺監視を行うことのできる姿勢であり、車両が予め定められた領域内にあり、且つ、レベル3の自動運転の実行に要する各種装置に異常がないという条件を満たすときに実行される。レベル3の自動運転が実行される条件には、例えば、車両が渋滞中の道路を走行しているときが含まれている。車両が渋滞中の道路上を走行しているか否かは車外のサーバから提供される交通規制情報に基づいて判定されてもよく、また、車速センサによって取得される車速が所定の時間に渡って、所定の徐行判定値(例えば、30km/h)以下であることに基づいて判定されてもよい。
このように、レベル1~レベル3の自動運転では、制御装置15が操舵、加速、減速、及び周辺監視の少なくとも1つを実行する。制御装置15は自動運転モードにあるときに、レベル1~レベル3の自動運転を実行する。以下では、必要に応じて、操舵、加速及び減速を運転操作と記載し、運転操作及び周辺監視を運転と記載する。
本実施形態では、自動運転レベル切替スイッチ13において、制御装置15は自動運転の実行指示を受け付けると、外界認識装置6の検出結果、及びナビゲーション装置9によって取得された車両の位置に基づいて、車両の走行する環境に応じたレベルの自動運転を選択し、レベルの変更を行う。但し、制御装置15は、自動運転レベル切替スイッチ13への入力に応じて、レベルの変更を行ってもよい。
図1に示すように、制御装置15は自動運転制御部35、異常状態判定部36、状態管理部37、走行制御部38、及び記憶部39を有する。
自動運転制御部35は、外界認識部40、自車位置認識部41、及び行動計画部42を含む。外界認識部40は、外界認識装置6の検出結果に基づいて、車両の周辺に位置する障害物や、道路の形状、歩道の有無、道路標示を認識する。障害物は、例えば、ガードレールや電柱、周辺車両、歩行者等の人物を含む。外界認識部40は外界認識装置6の検出結果から、周辺車両の位置、速度及び加速度等の状態を取得することができる。周辺車両の位置は、周辺車両の重心位置やコーナー位置等の代表点、又は周辺車両の輪郭で表現された領域として認識されるとよい。
自車位置認識部41は、車両が走行している車線である走行車線、及び走行車線に対する車両の相対位置及び角度を認識する。自車位置認識部41は、例えば、地図記憶部22が保持する地図情報とGNSS受信部21が取得する車両の位置とに基づいて、走行車線を認識するとよい。また、路面に描かれた車両の周辺の区画線を地図情報から抽出し、車外カメラ19によって撮像された区画線の形状と比較して、走行車線に対する車両の相対位置、及び角度を認識するとよい。
行動計画部42は、経路に沿って車両を走行させるための行動計画を順次作成する。より具体的には、行動計画部42はまず車両が障害物と接触することなく、経路決定部24により決定された目標車線を走行するためのイベントを決定する。イベントには定速度で同じ走行車線を走行する定速走行イベント、乗員によって設定された設定速度又は車両の走行する環境に基づいて定められる速度以下の速度で、同じ走行車線を走行する前走車両に追従する追従イベント、車両の走行車線を変更する車線変更イベント、前走車両を追い越す追い越しイベント、道路の合流地点で車両を合流させる合流イベント、道路の分岐地点で車両を目的の方向に走行させる分岐イベント、自動運転を終了して手動運転にする自動運転終了イベント、及び、車両の走行中に制御装置15又は運転者による運転の継続が困難であることを示す所定の条件が満たされたときに車両を停止する停車イベントが含まれる。
行動計画部42が停車イベントを決定する条件には、自動運転での走行中に、運転者に対する運転への介入要求(ハンドオーバ要求)に応じた運転者からの室内カメラ26、把持センサ27、又は自動運転レベル切替スイッチ13への入力が検出されない場合が含まれる。介入要求とは、運転者に運転権限の一部が委譲されることを通知して、委譲される運転権限に対応する運転操作及び車両周辺監視の少なくとも一方の実行を運転者に要求する警告である。行動計画部42が停車イベントを決定する条件には、車両の走行中に、運転者が担うべき運転権限に対応する運転操作及び車両周辺監視を実行していないと行動計画部42が判定した場合が含まれているとよい。また、行動計画部42が停車イベントを決定する条件には、車両の走行中に、行動計画部42が、例えば心拍センサや室内カメラ26からの信号に基づいて、運転者が心拍停止状態などの運転操作を実行することができない異常にあると判定した場合が含まれているとよい。
行動計画部42は、これらのイベントの実行中に、車両の周辺状況(周辺車両や歩行者の存在、道路工事による車線狭窄等)に基づいて、障害物等を回避するための回避イベントを決定してもよい。
行動計画部42は、更に決定したイベントに基づいて、車両が将来走行すべき目標軌道を生成する。目標軌道は、車両が各時刻において到達すべき地点である軌道点を順に並べたものである。行動計画部42は、イベントごとに設定された目標速度、及び目標加速度に基づいて目標軌道を生成するとよい。このとき、目標速度及び目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
走行制御部38は、行動計画部42によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに車両が通過するように、推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5を制御する。
記憶部39はROMやRAM等によって構成され、自動運転制御部35、異常状態判定部36、状態管理部37、及び走行制御部38の処理に要する情報が記憶される。
異常状態判定部36は、車両状態判定部51と、乗員状態判定部52とを含む。車両状態判定部51は、実行中のレベルの自動運転に影響を与える各種装置(例えば、外界認識装置6や車両センサ7)の信号を解析し、各種装置に実行中の自動運転の維持に困難な異常が発生したか否かを判定する。
乗員状態判定部52は、乗員監視装置11からの信号に基づいて、運転者の状態が異常状態にあるか否かを判定する。異常状態とは、レベル1以下の運転者が操舵を行う義務がある自動運転においては、運転者が操舵を行うことが困難である状態を含む。運転者が操舵を行うことが困難な状態とは、具体的には運転者が寝ている状態、運転者が病気や怪我により動けない状態又は意識不明な状態、運転者が心停止している状態等を含む。乗員状態判定部52は、レベル1以下の運転者が操舵を行う義務がある自動運転において、把持センサ27への乗員からの入力がないときに、運転者の状態が異常状態にあると判定してもよい。また、乗員状態判定部52は抽出された顔画像から運転者のまぶたの開閉状態を判定する。乗員状態判定部52は運転者のまぶたが閉じられた状態が所定時間継続している場合や単位時間当たりのまぶたが閉じられる回数が所定の閾値以上である場合には、運転者が寝ている、強い眠気を感じている、意識不明である、又は心停止状態にあるとして、運転者が運転操作を行うことが困難な状態であり、運転者の状態が異常状態であると判定してもよい。乗員状態判定部52は更に撮像された画像から運転者の姿勢を取得し、運転者の姿勢が運転操作に適さず、且つ、姿勢が変化しない状態が所定時間に渡って維持されているときには運転者が病気や怪我により動けない状態であり、運転者の状態が異常状態であると判定してもよい。
また、周辺監視義務があるレベルの自動運転、すなわち、レベル2以下の自動運転においては、異常状態とは、運転者が車両周辺監視の義務を怠っている状態を含む。運転者が車両周辺監視の義務を怠っている状態とは、運転者がステアリングホイールを把持していない状態、又は運転者の視線が車両の前方を向いていない状態のいずれか1つを含む。乗員状態判定部52は、例えば、把持センサ27からの信号に基づいて、運転者がステアリングホイールを把持しているか否かを検出し、運転者がステアリングホイールを把持していない場合に運転者が車両周辺監視の義務を怠っている異常状態であると判定する。また、乗員状態判定部52は、室内カメラ26によって撮像された画像に基づいて、運転者の状態が異常状態にあるか否かを判定する。例えば、乗員状態判定部52は撮像された画像から公知の画像解析手段を用いて運転者の顔領域を抽出する。乗員状態判定部52は更に、抽出された顔領域から目頭、目尻、及び瞳孔を含む虹彩部分(以下、黒目)を抽出する。乗員状態判定部52は抽出された目頭、目尻、及び黒目の位置や、黒目の輪郭形状等に基づいて、運転者の視線方向を取得し、運転者の視線が車両の前方を向いていないときに運転者が車両周辺監視の義務を怠っている状態にあると判定する。
また、周辺監視義務がないレベルの自動運転、すなわち、レベル3の自動運転においては、異常状態とは、運転者に対して、運転交代要求が発生した際に、速やかに運転交代ができない状態を意味する。運転交代ができない状態とはシステム監視ができない状態を含み、システム監視ができない状況とは、運転者が警報表示を行う画面表示等を監視することができない状況であり、運転者が寝ている状況、及び後方を見ているという状況を含む。本実施形態では、レベル3の自動運転においては、異常状態には、運転者が車両周辺監視を行うように報知された場合に、車両周辺監視の義務を果たすことができない状態が含まれる。本実施形態では、乗員状態判定部52はHMI12の表示装置31に所定の画面を表示させ、運転者に表示装置31を見るように指示を行う。その後、乗員状態判定部52は室内カメラ26によって運転者の視線を検知し、運転者の視線がHMI12の表示装置31に向かっていないと判定したときに、車両周辺監視の義務を果たすことができない状態にあると判定する。
乗員状態判定部52は、例えば、把持センサ27からの信号に基づいて、運転者がステアリングホイールを把持しているか否かを検出し、運転者がステアリングホイールを把持していない場合に運転者が車両周辺監視の義務を怠っている異常状態であると判定する。また、乗員状態判定部52は、室内カメラ26によって撮像された画像に基づいて、運転者の状態が異常状態にあるか否かを判定する。例えば、乗員状態判定部52は撮像された画像から公知の画像解析手段を用いて運転者の顔領域を抽出する。乗員状態判定部52は更に、抽出された顔領域から目頭、目尻、及び瞳孔を含む虹彩部分(以下、黒目)を抽出する。乗員状態判定部52は抽出された目頭、目尻、及び黒目の位置や、黒目の輪郭形状等に基づいて、運転者の視線方向を取得し、運転者の視線が車両の前方を向いていないときに運転者が車両周辺監視の義務を怠っている状態にあると判定する。
状態管理部37は自車位置、自動運転レベル切替スイッチ13の操作、及び異常状態判定部36の判定結果の少なくとも1つに基づいて、自動運転のレベルを決定する。更に、状態管理部37は決定したレベルに基づいて行動計画部42を制御することによって、各レベルに応じた自動運転を行う。例えば、状態管理部37はレベル1の自動運転であって定速走行制御を実行するときには、行動計画部42において決定されるイベントを定速走行イベントのみに制限する。
状態管理部37は設定されたレベルに応じた自動運転の実行に加えて、レベルの上昇及び下降を行う。
より具体的には、状態管理部37は移行後のレベルの自動運転を行う条件が満たされ、且つ、自動運転レベル切替スイッチ13に自動運転のレベルの上昇を指示する入力が行われたときに、レベルを上昇させる。
実行中のレベルの自動運転を行う条件が満たされないとき、又は自動運転レベル切替スイッチ13にレベルの下降を指示する入力が行われたときに、状態管理部37は介入要求処理を行う。介入要求処理において、状態管理部37は最初にハンドオーバ要求を運転者に通知する。運転者への通知は表示装置31へのメッセージや画像の表示や、音発生装置32からの音声や警告音の発生によって行われるとよい。運転者への通知は介入要求処理が開始された後、所定時間に渡って継続するように構成してもよい。また、運転者への通知は入力が乗員監視装置11によって検出されるまで継続されるように構成してもよい。
実行中のレベルの自動運転を行う条件が満たされないときには、車両が現在実行中のレベルよりも低いレベルの自動運転のみが実行可能な領域に移動したときや、異常状態判定部36が運転者又は車両に自動運転を継続するために困難な異常が発生したと判定したときが含まれる。
運転者への通知の後、状態管理部37は室内カメラ26又は把持センサ27に運転者から運転への介入を示す入力があったかを検出する。入力の有無の検出方法は移行後のレベルに依存して定められる。レベル2に移行するときには、状態管理部37は室内カメラ26によって取得された画像から運転者の視線方向を抽出し、運転者の視線が車両の前方を向いている場合に、運転者から運転への介入を示す入力があったと判定する。レベル1又はレベル0に移行するときには、状態管理部37は把持センサ27によって運転者のステアリングホイールの把持を検出したときに運転への介入を示す入力があったと判定する。すなわち、室内カメラ26及び把持センサ27は運転者からの運転への介入を検知する介入検知装置として機能する。また、状態管理部37は自動運転レベル切替スイッチ13への入力に基づいて、運転への介入を示す入力があったかを検出してもよい。
状態管理部37は介入要求処理の開始から所定の時間内に、運転への介入を示す入力が検出された場合に、レベルを下降させる。このとき、下降後の自動運転のレベルはレベル0であってもよく、実行可能な範囲で最も高いレベルであってもよい。
状態管理部37は、介入要求処理の実行から所定の時間内に運転者の運転への介入に応じた入力が検出されなかった場合に、行動計画部42に停車イベントを生成させる。停車イベントは、車両制御を縮退させつつ、車両を安全な位置(例えば、非常駐車帯、路側帯、路肩、パーキングエリア等)に停車させるイベントである。ここでは、この停車イベントにおいて実行される一連の手順をMRM(Minimal Risk Maneuver)という。
停車イベントが生成されると、制御装置15は自動運転モードから自動停車モードに移行し、行動計画部42が停車処理を実行する。以下、図2を参照して、停車処理の概要を説明する。
停車処理では最初に報知処理が実行される(ST1)。報知処理では、行動計画部42は車外報知装置14を作動させて車外への報知を行なう。例えば、行動計画部42は車外報知装置14に含まれるホーンを作動させ、周期的に警告音を発生させる。報知処理は停車処理が終了するまで継続する。行動計画部42は報知処理が終了した後、状況に応じてホーンを作動させ、警告音を発生させ続けてもよい。
次に、縮退処理が実行される(ST2)。縮退処理は、行動計画部42が生成可能なイベントを制限する処理である。縮退処理は、例えば、追い越し車線への車線変更イベントや、追い越しイベント、合流イベント等の生成を禁止する。また、縮退処理は、各種イベントにおいて、停車処理を実行していない場合に比べて車両の上限速度及び上限加速度を制限してもよい。
次に、停車領域決定処理が実行される(ST3)。停車領域決定処理は、自車位置に基づいて地図情報を参照し、自車の走行方向における路肩や退避スペース等の停車に適した領域である停車領域を複数抽出する。そして、停車領域の大きさや停車領域と自車位置との距離等に基づいて、複数の停車領域から1つの停車領域を選択する。
次に、移動処理が実行される(ST4)。移動処理では、停車領域に到達するための経路を決定し、経路を走行するための各種イベントを生成すると共に、目標軌道を決定する。走行制御部38は行動計画部42によって決定された目標軌道に基づいて推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5を制御する。これにより、車両は経路に沿って走行して停車領域に達する。
次に、停車位置決定処理が実行される(ST5)。停車位置決定処理では外界認識部40によって認識された車両の周辺に位置する障害物や、道路標示等に基づいて、停車位置を決定する。なお、停車位置決定処理では周辺車両や障害物の存在によって、停車領域内に停車位置を決定できない場合がある。停車位置決定処理において停車位置を決定することができない場合(ST6の判定がNo)には、停車領域決定処理(ST3)、移動処理(ST4)、及び停車位置決定処理(ST5)を順に繰り返す。
停車位置決定処理において停車位置を決定することができた場合(ST6の判定がYes)には、停車実行処理が実行される(ST7)。行動計画部42は、停車実行処理において、車両の現在地と、停車位置とに基づいて、目標軌道を生成する。走行制御部38は行動計画部42によって決定された目標軌道に基づいて推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5を制御する。これにより、車両は停車位置に向かって移動し、停車位置に停止する。
停車実行処理が実行された後に停車維持処理が実行される(ST8)。停車維持処理において、走行制御部38は行動計画部42からの指令に応じてパーキングブレーキ装置を駆動させ、車両を停車位置に維持させる。その後、行動計画部42は、通信装置8によって緊急通報を緊急通報センタに送信してもよい。停車維持処理が完了すると、停車処理が終了する。
本実施形態に係る車両制御システム1はナビゲーション装置9(地図装置)、乗員監視装置11、及び制御装置15を備え、車両が高速道路の本線車道を走行しているときに停車イベントが生成されると、ナビゲーション装置9に記憶された走行予定の経路(以下、走行予定経路)に基づいて車両を適切な位置に停止させる停車処理を行う。
高速道路とは、通行が自動車などの車両に制限された道路であり、車両が高速で走行することができる道路を指す。高速道路には高速自動車国道と、首都高速道路等の都市高速道路と、高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路と、一般国道の自動車専用道路とを含む。
図5(A)に示すように、高速道路は本線車道と支線とを含む。本線車線は往復の車線を含む。以下では、本線車道のうち往路(上り)のみの車線からなる部分又は復路(下り)のみの車線からなる部分を本線Xと記載する。また、以下では、自車進行方向と対向する車線を対向車線と記載する。より詳細には、対向車線とは、車両が走行している車線と、反対方向の走行方向の車線に相当する。例えば、車両が往路のみの車線を走行しているとき、対向車線とは復路のみの車線を意味する。左側走行を採用する国又は地域においては、対向車線は車両の走行方向右側に位置している。よって、左側走行を採用する国又は地域においては自車進行方向と対向する車線側とは右側を意味し、自車進行方向と対向する車線から離れる側とは左側を意味する。
支線は車両が本線Xに出入りするときに通過する出入路である。例えば図5(B)に示すように、支線は主に本線Xの走行方向左側(対向車線から離れる側)に接続される。首都高速道路等の都市高速道路ではそれには限定されず、支線は本線Xの走行方向右側(対向車線から近づく側)に接続されていることもある。以下では、本線Xの走行方向右側(以下、右側)に接続された支線を右側支線R、本線Xの走行方向左側(以下、左側)に接続された左側支線Lと記載する。
車両が高速道路の本線車道を走行しているときに停車イベントが生成されると、行動計画部42は停車処理における加速度及び速度を縮退させる加速度縮退処理と、走行予定経路に基づいて停車領域を決定する停車領域決定処理とを含む停車処理とを実行する。以下では、まず、図3を参照して、加速度縮退処理の詳細を説明する。
行動計画部42はステップST11において、左方向(すなわち、対向車線から離れる方向)への車線変更を行うときの車両の横方向の移動速度に関する上限値を第1上限値に設定する。但し、横方向の移動速度には、車線の走行方向に対して直交する方向の速度、加速度、及び加加速度(躍度)の少なくとも1つが含まれ、0以上の正の値として定義されている。本実施形態では、行動計画部42はステップST11において、横加速度の上限値を所定の値である第1横加速度上限値に設定する。
また、行動計画部42は右方向(すなわち、対向車線に近づく方向)への車線変更を行うときの車両の横方向の移動速度に関する上限値を第2上限値に設定する。第1上限値及び第2上限値はそれぞれ、自動運転モードにおける車両の横方向の移動速度に関する上限値のいずれよりも小さい。本実施形態では、行動計画部42は横加速度の上限値を第1横加速度上限値よりも大きな第2横加速度上限値に設定する。これにより、例えば、車両が本線Xの左端に設けられる第1走行車線から、第1走行車線の右側に設けられる第2走行車線に車線変更するときの横加速度の上限値は第2横加速度上限値に設定される。また、車両が第2走行車線から第1走行車線に車線変更するときの横加速度の上限値は第1横加速度上限値に設定される。すなわち、行動計画部42は、第1走行車線から第2走行車線に車線変更するときには、第2走行車線から第1走行車線に車線変更するときに比べて、車両の横加速度の上限値を大きく設定する。
車線変更の左方向及び右方向への横加速度の設定が完了すると、行動計画部42はステップST12を実行する。
行動計画部42はステップST12において、車両が走行する道路における車線毎の縦方向の移動速度に関する上限値の設定を行う。但し、縦方向の移動速度には、車線の走行方向の速度、加速度、及び加加速度(躍度)の少なくとも1つが含まれ、0以上の正の値として定義されている。本実施形態では、行動計画部42はステップST12において、車両が走行する道路における車線毎の縦加速度の上限値の設定を行う。このとき、行動計画部42は右側(すなわち、対向車線に近づく側)に位置する車線ほど、縦方向の移動速度、を大きく設定する。本実施形態では、行動計画部42は右側に位置する車線縦加速度の上限値を高く設定する。縦加速度の上限値の設定が完了すると、行動計画部42はステップST13を実行する。
行動計画部42はステップST13において、車線変更を行うときの車両の縦方向の移動速度に関する上限値を車線変更後の車線の車両の縦方向の移動速度に関する上限値に設定する。本実施形態では、行動計画部42はステップST13において、縦加速度の上限値を車線変更後の車線の縦加速度の上限値に設定する。これにより、例えば、車両が第1走行車線から第2走行車線に車線変更が行われるときには、行動計画部42は縦加速度の上限値を第2走行車線の縦加速度の上限値に設定する。車両が第2走行車線から第1走行車線に車線変更が行われるときには、行動計画部42は縦加速度の上限値を第1走行車線の縦加速度の上限値に設定する。行動計画部42はステップST14を実行する。
行動計画部42はステップST14において、先行車と車両との車間距離が所定の閾値以上であるときの縦方向の移動速度に関する下限値を車線毎に設定する。本実施形態では、行動計画部42は縦方向の車速の下限値を車線毎に設定する。このとき、行動計画部42は、縦方向の移動速度に関する下限値を速度域の高い車線を走行させるときには、速度域の低い車線を走行させるときに比べて大きく設定する。より具体的には、行動計画部42は、対向車線に近づく側に位置する車線ほど、縦方向の移動速度に関する下限値を大きく設定する。本実施形態では、行動計画部42は、縦方向の車速の下限値を道路の右側(すなわち、対向車線に近づく側)に位置する車線ほど大きく設定する。縦方向の車速の下限値の設定が完了すると、加速度縮退処理を終える。
次に、図4を参照して、停車領域決定処理について詳細に説明する。
行動計画部42は停車領域決定処理の最初のステップST21において、地図情報を用いて、走行予定経路に沿って車両の左前方の道路左端の路肩を探索し、車両を停止させることのできる領域を抽出する。その後、その領域の中から、車両の現在地から最も近接した領域を選択して停車可能領域とする。例えば、車両が道路の左端の車線を走行しているときには、行動計画部42はまず、車両の現在地から適切な減速度で減速して道路左端の路肩に停止するまでに必要となる車両の走行距離(以下、停止距離t。例えば、図6(A)を参照)を算出する。その後、車両の走行する道路左端の路肩上にあり、且つ、車両の現在地から停止距離tだけ走行したときの領域を停止可能な領域として抽出するとよい。抽出が完了すると、行動計画部42はステップST22を実行する。
行動計画部42はステップST22において、車両がステップST21によって決定された停車可能領域が退出不能領域外にあるか否かを判定する。退出不能領域Zとは、道路上の走行予定経路上の支線L、Rに到達することのできない本線Xの左側の領域である。例えば、走行予定経路が本線Xから右側支線Rに到達しているときには、退出不能領域Zは図5(A)のハッチングで示される領域となる。走行予定経路が本線Xから左側支線Lに到達しているときには、退出不能領域Zは図5(B)のハッチングで示される領域となる。退出不能領域Zは、本線X及び支線R、Lの分岐地点からの距離、車両の大きさ等に基づいて定められてもよく、また、高速道路の混雑具合や各車線の平均速度等に基づいて定められてもよい。停車可能領域が退出不能領域外にあるときには、ステップST23を実行し、退出不能領域内にあるときにはステップST24を実行する。
行動計画部42はステップST23において、停車可能領域を停車領域に決定する。決定が完了すると、行動計画部42は停車領域決定処理を終える。
行動計画部42はステップST24において、経路に沿って支線L、R上、又は、支線L、Rよりも走行経路前側を探索し、停止可能な領域を抽出する。その後、行動計画部42は抽出した停止可能な領域を停車領域に決定する。停車領域の決定が完了すると、行動計画部42は停車領域決定処理を終える。
次に、このように構成した車両制御システム1の動作、及び効果について、図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7において、第1走行車線L1及び第2走行車線L2を有する本線Xを走行している車両Sにおいて、停車処理が実行されたものとする。第1走行車線L1は第2走行車線L2の左側に設けられている。
図6(A)には、車両Sが第1走行車線L1を走行中であり、右側支線Rから退出する走行予定経路が設定されている場合であって、停車可能領域が退出不能領域Z外となった例が示されている。このとき、ステップST22において停車可能領域が退出不能領域Z外にあると判定され、車両Sは停車可能領域、すなわち走行予定経路に沿って道路左側の路肩に停止される。これにより、運転者は運転を再開するときに適宜、走行車線の変更(以下、車線変更)を行って、車両Sを右側支線Rに到達させることができる。その後、運転者は走行予定経路に沿って車両Sを走行させることができる。
図6(B)には、車両Sが第1走行車線L1を走行中であり、右側支線Rから退出する走行予定経路が設定されている場合であって、停車可能領域が退出不能領域Z内となった例が示されている。このとき、ステップST22において停車可能領域が退出不能領域Z内にあると判定されて、ステップST23の処理が実行される。これにより、車両Sは予定された走行予定経路に沿って右側支線Rに侵入した後に停止される。よって、退出不能領域Zに車両Sが停止されず、運転者は車両Sを走行予定経路に容易に復帰させることができる。
図7(A)には、車両Sが第2走行車線L2を走行中であり、左側支線Lから退出する走行予定経路が設定されている場合であって、停車可能領域が退出不能領域Z外となった例が示されている。このとき、車両Sは、図6(A)と同様に、走行予定経路に沿って道路左側の路肩に停止される。これにより、運転者は車両Sを左端車線に戻すことによって、車両Sを予定された経路に復帰させて、走行経路に沿って走行させることができる。
図7(B)には、車両Sが第2走行車線L2を走行中であり、左側支線Lから退出する走行予定経路が設定されている場合であって、停車可能領域が退出不能領域Z内となった例が示されている。このとき、図6(A)と同様に、車両Sは予定された走行予定経路に沿って左側支線Lに侵入した後に停止される。よって、退出不能領域Zに車両Sが停止されず、運転者は車両Sを走行予定経路に容易に復帰させることができる。
図6(B)の矢印の実線に示すように、車両Sを本線Xから右側支線Rに侵入させるとき、制御装置15は車両Sに適宜右側に車線変更を行わせる必要がある。一方、図7(B)の実線の矢印に示すように、車両Sを本線Xから左側支線Lに侵入させるとき、制御装置15は車両Sに適宜右側に車線変更を行わせる必要がある。高速自動車国道等の複数の車線を有する高速道路等では、各車線を走行する車両の平均速度である速度域が高い車線は、道路を走行する車両の自車車幅方向の一方向に設けられ、速度域が低い車線は自車車幅方向の他方向に設けられている。より具体的には、高速自動車国道等の複数の車線を有する高速道路等では、道路右側を走行する車両の速度域は道路左側を走行する車両の速度域よりも高い。これにより、各車線を走行する車両の速度が均一になり易くなり、車間距離が一定に保たれ易くなる。更に、追い抜き、追い越し時の車両の安全性が高められる。
行動計画部42は加速度縮退処理のステップST11において、自車進行方向と対向する車線側に車線変更するときには、自車進行方向と対向する車線から離れる方向に車線変更するときに比べて、横方向の移動速度に関する上限値を大きく設定する。より具体的には、行動計画部42は横加速度の上限値を第1横加速度上限値に、右方向への横加速度の上限値を第2横加速度上限値に設定する。よって、右方向への車線変更を行うときの横加速度の上限値が左方向への車線変更を行うときに比べて大きく設定される。これにより、右側の車線への車線変更が左側の車線への車線変更に比べてより迅速に行われ易くなり、速度域に合わせた車線変更を行うことが可能となる。よって、車両Sによって周辺車両の交通の流れを阻害することが防止され、停車処理中の車両Sの安全性が高められる。
行動計画部42は加速度縮退処理のステップST12において、車両が走行する道路における車線毎の縦方向の移動速度に関する上限値の設定を設定する。本実施形態では、行動計画部42は車両が走行する道路における車線毎の縦加速度の上限値を設定する。このとき、行動計画部42は右側に位置する車線ほど、縦方向の移動速度に関する上限値(本実施形態では縦加速度の上限値)を大きく設定する。より具体的には、例えば、行動計画部42は、第2走行車線L2の縦加速度の上限値を、第1走行車線L1の縦加速度の上限値よりも高く設定する。これにより、第1走行車線L1を走行するときの車速が、第2走行車線L2を走行するときの車速よりも高くなり易くなる。よって、車速が走行車線の速度域に合致し易くなる。これにより、速度域に合わせた車両Sの走行が可能となり、停車処理中の車両の安全性を高めることができる。
行動計画部42は加速度縮退処理のステップST13において、車両の縦方向の移動速度に関する上限値を車線変更後の車線の車両の縦方向の移動速度に関する上限値に設定する。より具体的には、行動計画部42は縦加速度の上限値を車線変更後の車線の縦加速度の上限値に設定する。これにより、車両の縦方向の移動速度が車線変更前に高められるため、車速が車線変更後の車線の速度域に合致し易くなる。これにより、停車処理中の車両の安全性を高めることができる。
行動計画部42は加速度縮退処理のステップST14において、車両の縦方向の移動速度に関する下限値を道路の右側に位置する車線ほど高く設定する。本実施形態では、行動計画部42は縦方向の車速の下限値を道路の右側に位置する車線ほど高く設定する。すなわち、行動計画部42は、第2走行車線L2の縦方向の車速の下限値を、第1走行車線L1の縦加速度の上限値よりも高く設定する。これにより、第1走行車線L1を走行するときの車速が、第2走行車線L2を走行するときの車速よりも高くなり易くなる。これにより、車速が走行車線の速度域に合致し易くなり、速度域に合わせた車両Sの走行が可能となる。
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係る車両制御システム101は、運転者を監視する乗員監視装置11を更に含み、運転者の状態に応じて停車領域を変更する。以下に、行動計画部42によって実行される停車領域決定処理について、図8を参照して説明する。
図8に示すように、第2実施形態に係る車両制御システム101が実行する停車領域決定処理は、第1実施形態に比べて、ステップST21の前にステップST31が設けられている点と、更に、ステップST31が設けられている点とが異なる。それ以外については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
行動計画部42は停車領域決定処理の最初のステップST31において、乗員監視装置11によって取得される運転者からの情報に基づいて、運転者の健康状態を判定し、健康状態に異常がないかを判定する。本実施形態では、行動計画部42は運転席に設けられた心拍センサからの信号に基づいて運転者の心拍数を取得し、心拍数が所定値以下であるときに運転者の健康状態に異常があると判定するとよい。より具体的には、行動計画部42は運転者の心拍数が毎分40回以下の場合には健康状態に異常があると判定する。行動計画部42は運転者の健康状態に異常があると判定したときにはステップST32を実行し、健康状態に異常がないと判定したときには、ステップST21を実行する。
行動計画部42はステップST32において、車両Sの走行車線上の停止距離t前方に停車領域を決定する。停車領域の決定が完了すると、行動計画部42は停車領域決定処理を終える。
次に、このように構成した車両制御システム101の動作、及び効果について説明する。運転者の心拍数が極めて低い場合には、ステップST21において運転者の健康に異常があると判定されて、ステップST32において車両Sが走行車線上に停止する。これにより、運転者への救護の必要性が高いときに、車両の走行が継続されないため、運転者を早期に救護することができる。
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係る車両制御システム201が実行する停車領域決定処理は、第2実施形態に比べて、ステップST31の代わりに、ステップST41を実行し、ステップST32の代わりに、ステップST42を実行する点が異なる。
行動計画部42は停車領域決定処理の最初のステップST41において、ナビゲーション装置9において走行予定経路が記憶されているか否かを判定する。走行予定経路が記憶されていない場合には、ステップST42を実行し、走行予定経路が記憶されているときにはステップST12を実行する。
行動計画部42はステップST42において、本線の左側において車両に最も近接した停止可能な位置を抽出し、抽出された停止可能な位置を停車領域に決定する。停車領域の決定が完了すると、行動計画部42は停車領域決定処理を終える。
次に、このように構成した車両制御システム201の動作、及び効果について説明する。ナビゲーション装置9において走行予定経路が記憶されていないときには、本線の左側において車両に最も近接した停止可能な位置に車両が停止される。これにより、車両をより迅速に停止させることができる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、ステップST11において、行動計画部42は左方向への車線変更を行うときの車両の横加速度の上限値を第1上限値に、右方向への車線変更を行うときの車両の横加速度の上限値を第2上限値にそれぞれ設定していたが、この態様には限定されない。行動計画部42は停車処理において右側に車線変更するときには、左側に車線変更するときに比べて、横方向の移動速度に関する上限値を大きく設定すればよい。例えば、行動計画部42は右側に車線変更するときには、横速度、横加速度、及び、横加加速度の少なくとも1つの上限値を、左側に車線変更するときに比べて大きく設定すればよい。また、行動計画部42は、車両が走行する車線の位置に応じて第1上限値及び第2上限値を変更するように構成してもよい。より具体的には、行動計画部42は、車両が走行する車線の速度域が高くなると、第1上限値及び第2上限値の少なくとも一方を大きくするように構成してもよい。
ステップST12において、行動計画部42は車線毎の縦加速度の上限値をそれぞれ設定していたが、この態様には限定されない。行動計画部42は車線毎の縦速度、縦加速度、及び、縦加加速度の少なくとも1つの上限値を右側に位置する車線ほど大きくなるように設定すればよい。
ステップST13において、行動計画部42は縦加速度の上限値を車線変更後の車線の縦加速度の上限値に設定していたが、この態様には限定されない。行動計画部42は縦速度、縦加速度、及び、縦加加速度の少なくとも1つの上限値を車線変更後の車線の縦加速度の上限値に設定してもよい。
ステップST13において、行動計画部42は縦方向の車速の下限値を道路の右側に位置する車線ほど高く設定していたが、この態様には限定されない。行動計画部42は縦速度、縦加速度、及び、縦加加速度の少なくとも1つの下限値を道路の右側に位置する車線ほど高く設定してもよい。
上記第2実施形態では、健康状態を運転席に設けられた心拍センサに基づいて判定していたが、この態様には限定されない。例えば、行動計画部42は室内カメラ26によって撮像された運転者の画像に基づいて、運転者の瞼が開かれている状態が所定時間継続しているかを判定することで、運転者の健康状態に異常がないかを判定してもよい。
上記実施形態では、車両Sは左側通行を採用する国又は地域を走行していることを想定したが、この態様には限定されない。車両が右側通行を採用する国又は地域を走行しているときには、車両制御システム1は上記実施形態の左右を入れ替えた態様で車両を制御するとよい。