以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る液体接触用部材は、金属基材と、その外面の少なくとも一部を被覆する熱収縮テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)の被覆層を備える。そして、金属基材と被覆層との間に接着性PFAの接着層が液密に設けられている。
接着性PFAは、熱収縮PFAと接着性が良好で、しかも、金属基材との接着性も他のフッ素樹脂よりも良好である。そのため、接着性PFAを接着層として用いることで、金属基材と熱収縮PFAの被覆層との間を液密に封止することが可能である。その結果、毛細管現象の発生を防止することができるため、被覆層が設けられている部分において金属基材と液体との接触を防止し、不具合の発生を防止することができる。
金属基材としては、少なくとも外表面が金属製のものであれば特に限定はない。例えば、液体の特性又は存否を測定するための検出部を構成する部材、ステンレス、鉄、アルミ、銅等が挙げられる。ここで、液体の存否の測定には、容器内の液面の高さの測定を含むものとする。検出部を構成する部材としては、各種のセンサーの検出部を構成する部材が例示でき、センサーとしては、例えば、液面の高さを測定する液面センサー、液体の温度を測定する温度センサー等が挙げられる。液面センサーの検出部としては、静電容量式液面レベルセンサーの電極等が挙げられる。
金属基材の少なくとも外表面を構成する金属の種類としては、例えば、ステンレス、鉄、アルミ、銅等が挙げられる。このうち、耐腐食性という点からステンレスが好ましい。金属基材の表面は接着性向上のため、表面処理が施されていてもよい。金属基材の形状は、各種の用途に応じて適宜決定することができる。例えば、棒状形状、平板状、多面体形状、球状形状等が挙げられる。棒状形状としては、筒形状、中実の柱形状等が挙げられる。筒形状としては、円筒形状、角筒形状等が挙げられる。柱形状としては、円柱形状、角柱形状等が挙げられる。各種センサーの場合は、一般的には、円筒形状が採用される場合が多い。金属基材の大きさは、用途に応じて適宜決定することができる。
熱収縮PFAの被覆層は、熱収縮性PFAの部材を加熱して熱収縮させた状態のPFAの部材により構成される。熱収縮性PFAの部材は、例えば、原料であるPFAを用いて押出成形し、次いで、得られた押出成形体を所定方向に延伸する方法により得ることができる。延伸倍率は所望の熱収縮率に応じて適宜設定することができる。一般的には1.1~2.0倍である。熱収縮性PFAチューブの場合は、例えば、原料であるPFAをチューブ状に押出成形し、得られたチューブを定法に従って拡径すると同時と長さ方向に引っ張って二軸延伸することで得ることができる。延伸倍率は拡径方向及び長さ方向とも一般的には1.1~2.0倍である。
熱収縮PFAの被覆層の形状及び被覆層の金属基材の外表面への適用範囲は、金属基材の形状、用途等に応じて適宜決定することができる。金属基材が、例えば、外周面の周方向1周全体を液体と接触させることのあるセンサーの検出部を構成する場合は、検出部となる金属基材の外周面の1周全体を被覆する観点から、両端で開口する筒形状を適用することができる。被覆層の長さは、検出部を構成する金属基材が長軸を有する棒状の形状の場合は、その長軸の全長又はその一部を被覆可能な長さであればよい。また、一部を被覆する場合の被覆箇所は、用途等に応じて適宜決定することができ、1カ所でもよいし、2カ所以上であってもよい。また、検出部である金属基材の一部を被覆する場合は、被覆層は、金属基材の外表面上に端部を有することになる。被覆層が金属基材の外表面上に端部を有する場合、液体との接触がその端部で起こるため、被覆層と金属基材との間に液体が侵入するのを防止するという効果を享受し易い。
熱収縮性PFAとしては、市販のテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体を使用することができる。例えば、三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製の451HP、351HP、950HPなどのHPシリーズ、AGC社製の802UPなどが挙げられる。また、熱収縮性PFAの部材は、前述のテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体を用いて押出成形してもよいし、市販品を用いてもよい。熱収縮性のチューブの市販品としては、例えば、淀川ヒューテック株式会社製のPFA7000など、グンゼ株式会社製のGRCシリーズなどが挙げられる。
熱収縮性PFAの部材の厚みは、用途等に応じて適宜選択可能であるが、通常0.3~0.8mmである。熱収縮性PFAチューブの場合は、その内径は、用途等に応じて適宜選択可能であるが、通常20~150mmである。熱収縮性PFAチューブの内径は、被覆する金属基材の外径に対して、例えば0.5~5%、好ましくは1~3%大きくなるように調整することができる。熱収縮性PFAの熱収縮率は、試料を150~200℃の恒温槽中(乾熱雰囲気中)に1~30分間放置して測定したとき、通常3~25%である。測定試料としては、熱収縮性PFAチューブを縦方向(機械方向)と横方向に沿って10cm四方の大きさに切り取ったものを用いてもよいし、チューブをそのまま用いてもよい。縦方向及び横方向の熱収縮率が共に上記範囲内となる熱収縮性PFAチューブを使用することができる。
接着性PFAの接着層は、熱収縮PAFの被覆層及び金属基材との接着性が良好なものであれば特に限定はない。このような接着層を構成する接着性PFAとしては、例えば、特許第4424246号公報、特許第5365939号公報、特許第5263269号公報に記載のものが挙げられる。これらの接着性PFAを以下に示す。
接着性PFAは、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)及び/又はクロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEという。)に基づく繰り返し単位(a)、ジカルボン酸無水物基を有しかつ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位(b)及びその他のモノマー(ただし、繰り返し単位(a)、(b)と重複する場合は、そのモノマーを除く。)に基づく繰り返し単位(c)を含有する。
接着性PFAにおいて、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)の合計モル量に対して、繰り返し単位(a)が50~99.89モル%であり、繰り返し単位(b)が0.01~5モル%であり、繰り返し単位(c)が0.1~49.99モル%である。好ましくは繰り返し単位(a)が50~99.47モル%、繰り返し単位(b)が0.03~3モル%であり、繰り返し単位(c)が0.5~49.97モル%、より好ましくは繰り返し単位(a)が50~98.95モル%、繰り返し単位(b)が0.05~2モル%であり、繰り返し単位(c)が1~49.95モル%である。繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)のモル%がこの範囲にあると、接着性PFAは、耐熱性、耐薬品性に優れる。さらに、繰り返し単位(b)のモル%がこの範囲にあると、接着性PFAは、熱収縮PFAの被覆層及び金属基材との接着性に優れる。繰り返し単位(c)のモル%がこの範囲にあると、接着性PFAは、成形性に優れ、耐ストレスクラック性等の機械物性に優れる。
前述の「ジカルボン酸無水物基を有しかつ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマー」(以下、単に環状炭化水素モノマーと略称する)は、1つ以上の5員環又は6員環からなる環状炭化水素であって、しかもジカルボン酸無水物基と環内重合性不飽和基を有する重合性化合物をいう。環状炭化水素としては1つ以上の有橋多環炭化水素を有する環状炭化水素が好ましい。すなわち、有橋多環炭化水素からなる環状炭化水素、有橋多環炭化水素の2以上が縮合した環状炭化水素、又は有橋多環炭化水素と他の環状炭化水素が縮合した環状炭化水素であることが好ましい。また、この環状炭化水素モノマーは環内重合性不飽和基、すなわち炭化水素環を構成する炭素原子間に存在する重合性不飽和基、を1つ以上有する。この環状炭化水素モノマーはさらにジカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)を有し、ジカルボン酸無水物基は炭化水素環を構成する2つの炭素原子に結合していてもよく、環外の2つの炭素原子に結合していてもよい。好ましくは、ジカルボン酸無水物基は上記環状炭化水素の環を構成する炭素原子であってかつ隣接する2つの炭素原子に結合する。さらに、環状炭化水素の環を構成する炭素原子には、水素原子の代わりに、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、その他の置換基が結合していてもよい。
その具体例としては、式(1)~(8)で表されるものである。ここで、式(2)、(5)~(8)におけるRは、炭素原子数1~6の低級アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択されるハロゲン原子、前記低級アルキル基中の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基を示す。
上記環状炭化水素モノマーとしては、好ましくは、式(1)で表される、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、NAHという。)、式(3)、(4)で表される酸無水物である環状炭化水素モノマー、式(2)及び式(5)~(8)において、置換基Rがメチル基である環状炭化水素モノマーある。より好ましくはNAHである。
その他のモノマーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、VdFという。)、CTFE(但し、繰り返し単位(a)として使用される場合を除く。)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという。)、CF2=CFORf1(ここで、Rf1は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基。)、CF2=CFORf2SO2X1(Rf2は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、X1はハロゲン原子又は水酸基。)、CF2=CFORf2CO2X2(ここで、Rf2は前記と同じ、X2は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基。)、CF2=CF(CF2)pOCF=CF2(ここで、pは1又は2。)、CH2=CX3(CF2)qX4(ここで、X3及びX4は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子、qは2~10の整数。)、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素数2~4のオレフィン、酢酸ビニル等のビニルエステル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。その他のモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
CF2=CFORf1の具体例としては、例えば、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8F等が挙げられる。好ましくは、CF2=CFOCF2CF2CF3である。
CH2=CX3(CF2)qX4の具体例としては、例えば、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H等が挙げられる。好ましくは、CH2=CH(CF2)4F又はCH2=CH(CF2)2Fである。
その他のモノマーとしては、好ましくは、VdF、HFP、CTFE(但し、繰り返し単位(a)として使用される場合を除く。)、CF2=CFORf1、CH2=CX3(CF2)qX4、エチレン、プロピレン及び酢酸ビニルからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、HFP、CTFE(但し、繰り返し単位(a)として使用される場合を除く。)、CF2=CFORf1、エチレン及びCH2=CX3(CF2)qX4からなる群から選ばれる1種以上である。最も好ましくは、HFP又はCF2=CFORf1である。また、CF2=CFORf1としては、Rf1が炭素数1~6のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2~4のペルフルオロアルキル基がより好ましく、ペルフルオロプロピル基が最も好ましい。
接着性PFAの具体例としては、例えば、TFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/NAH共重合体、TFE/HFP/NAH共重合体、TFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/HFP/NAH共重合体、TFE/VdF/NAH共重合体、TFE/CH2=CH(CF2)4F/NAH/エチレン共重合体、TFE/CH2=CH(CF2)2F/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)4F/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)2F/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)2F/NAH/エチレン共重合体等が挙げられる。
接着性PFAの融点は、150~320℃が好ましく、200~310℃がより好ましい。融点は、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)の含有割合を前記範囲内で適宜選定して調節することができる。
接着性含PFAの高分子末端基として、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基、酸無水物残基等の接着性官能基を有すると、熱収縮PFAの被覆層及び金属基材との接着性に優れるので好ましい。接着性官能基を有する高分子末端基は、接着性PFAの製造時に、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜選定することにより導入することができる。
接着性PFAは、その容量流速(以下、Q値という。)は、0.1~1000mm3/秒とすることができる。Q値は、接着性PFAの溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。Q値は、島津製作所製フローテスタを用いて、接着性PFAの融点より50℃高い温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの接着性PFAの押出し速度である。Q値が小さすぎると押出し成形が困難となり、大きすぎると接着性PFAの機械的強度が低下する。接着性PFAのQ値は5~500mm3/秒が好ましく、10~200mm3/秒がより好ましい。
接着性PFAの製造方法は特に制限はなく、ラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合が挙げられ、特に溶液重合が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である温度が0℃~100℃であるラジカル重合開始剤が好ましい。より好ましくは20~90℃である。その具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカ-ボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CF2)rCOO)2(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、rは1~10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
接着性PFAのQ値を制御する場合、連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。接着性PFAの高分子末端に接着性官能基を導入するための連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
接着性PFAの重合条件は特に限定されず、重合温度は0~100℃が好ましく、20~90℃がより好ましい。重合圧力は0.1~10MPaが好ましく、0.5~3MPaがより好ましい。重合時間は1~30時間が好ましい。
重合中の環状炭化水素モノマーの濃度は、全モノマーに対して0.01~5モル%が好ましく、0.1~3モル%がより好ましく、0.1~1モル%が最も好ましい。環状炭化水素モノマーの濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向となる。前記範囲にあると製造時の重合速度が低下せず、かつ、接着性PFAは接着性に優れる。重合中、環状炭化水素モノマーが重合で消費されるに従って、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、環状炭化水素モノマーの濃度をこの範囲に維持することが好ましい。
上記のような製造方法で得られた接着性PFAは、定法に従って、ペレット、粉体、その他の形態として得ることができる。この接着性PFAは、成形性に優れるため、射出成形、押出成形が可能であり、所望の形状に成形することが可能である。また、接着性PFAは、柔軟性に優れているため、熱収縮PFAの剥離を抑制できる。
前記接着性PFAは、前述のようにして製造することもできるが、市販のものを用いることができる。例えば、AGC株式会社製のEA-2000等が挙げられる。
原料としての接着性PFAの形態は、特に限定はなく、例えば、紛体、ペースト、液体、シート等が挙げられる。作業性の観点からは、シートが好ましい。
接着性PFAの接着層の厚みは、液密性をより良好に確保する観点から、0.01~1.0mmが好ましく、0.03~0.2mmがより好ましい。
次に、液体接触用部材の製造方法の実施形態について説明する。以下では、被覆層を構成する部材として熱収縮性PFAチューブを用いる場合について説明するが、これに限定されるわけではない。
実施形態に係る液体接触用部材の製造方法は、金属基材の外表面に沿って接着性テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)を筒状又は環状に配置する工程、接着性PFAの表面に熱収縮性PFAチューブを配置する工程、加熱により熱収縮性PFAチューブを収縮させ、接着性PFAを介して熱収縮PFAチューブを金属基材の外表面の少なくとも一部を被覆して、熱収縮PFAチューブの被覆層を金属基材の表面に液密に設ける工程を含む。
金属基材の外表面に沿って接着性PFAを筒状又は環状に配置する工程においては、先ず金属基材を用意し、その外表面に所望の形態の接着性PFAを配置する。金属基材は、その用途に応じて所望の形態のものを用いればよいが、熱収縮性PFAチューブにより外表面を良好に被覆する観点からは、長軸を有する棒状の形状を有するのが好ましく、円筒形状や円柱形状であるのがより好ましい。接着性PFAの形態は、特に限定はないが、金属基材の外表面に均等に接着層を設ける観点からは、円筒形状のチューブ、シートが好ましい。シートの場合は、金属基材の外表面に巻き付けて筒状又は環状に配置すればよい。接着性PFAの配置場所は、用途等に応じて適宜決定することができる。金属基材外表面全体でもよいし、その一部でもよい。一部の場合は、1カ所でもよいし、2カ所以上でもよい。接着性PFAの接着層は、被覆層と金属基材の間に液体が侵入するのを防止することができればよいため、被覆層の端部にのみ設けることもできる。この場合、後述する熱収縮性PFAチューブの両端部に位置するように環状に接着性PFAを配置することができる。もっとも、熱収縮PFAの被覆層を金属基材に安定して固定する観点からは、被覆層の全長に亘り接着層が形成されるように接着性PFAが配置されるのが好ましい。
金属基材の外表面に接着性PFAを配置した後、接着性PFAの表面に熱収縮性PFAチューブを配置する。その後、加熱して熱収縮性PFAチューブを収縮させ、接着性PFAを介して金属基材の外表面に熱収縮PFAの被覆層を液密に設ける。熱収縮性PFAチューブは前述のものを用いる。加熱条件は、熱収縮性PFAチューブが収縮するとともに、接着性PFAが溶融する温度であればよい。このような条件は、各PFAの種類等に応じて適宜決定することができる。例えば、300~350℃で0.5~1時間で焼成することで、液密に被覆層を金属基材の外表面に設けることができる。
このように、接着性PFAを用い、熱収縮性PFAチューブを用いることで、熱収縮PFAの被覆層を液密に金属基材の表面に簡便に設けることができる。
次に、本願発明の実施形態に係る液体用センサーについて説明する。
実施形態に係る液体用センサーは、前述の液体接触用部材を備えるものであるが、金属基材が長軸を有する棒状の形状を有し、液体の特性又は存否を測定するための検出部を構成するものであり、被覆層は、両端で開口する筒形状を有する。また、液体接触用部材が液面に対して金属基材の長軸が交差するように設置されるものである。
金属基材は、長軸を有する棒状の形状を有すればよい。金属基材の外表面が検出電極部を構成してもよいし、内部に検出電極部やプローブ等を設けてもよい。内部に検出電極部やプローブを設ける場合は、筒形状とすることができる。内部に検出電極部やプローブ等を設ける場合には、必要に応じて、内部と外部と連通する孔を1カ所以上設けてもよい。また、金属基材の長軸方向の基端側には、測定対象となる液体が充填されている容器に設けるための固定手段等が設けられてもよい。また、その長軸方向の基端部には、液面レベルを計測するための制御部が設けられてもよい。或いは、液面レベルを計測するための制御部と電気的に接続可能な端子が設けられていてもよい。制御部には表示装置等が設けられていてもよい。
被覆層は両端で開口する筒形状を有する。必要に応じて、金属基材の長軸方向の液体と接触する部分全体に亘って設けてもよいし、一部に設けられていてもよい。
液体接触用部材は、液面に対して金属基材の長軸が交差するように設置されるが、液面センサーとして使用される場合は、液面に対して垂直方向、即ち、長軸が鉛直方向と平行になるように設置されるのが好ましい。
以下、液体接触用部材を備える静電容量式液面レベルセンサーの実施例について図面を参照しつつ説明する。
図1に示す実施例は、液面レベルセンサーを構成する液体接触用部材1を模式的に示した正面図である。液体接触用部材1は、両端で開口する円筒形状の金属基材10、その一部を被覆する円筒形状の熱収縮PFAの被覆部20、21を有する。金属基材10は、基端側から順に、外部接続部11、フランジ部12、基端側検出部13、先端側検出部14を備える。これらは何れも金属(ステンレス)製である。先端側検出部14には、その内側と外側とを連通する貫通孔15、16が、その基端側と先端側に設けられている。外部接続部11の基端からフランジ部12の先端までは、500mm以内であり、基端側検出部13の基端から先端側検出部14の先端までは、1500mm以内である。基端側検出部13の外径は、8~20mmであり、先端側検出部14の外径は、8~12mmである。貫通孔15、16は、2つの場合を例示しているが、3つ以上であってもよい。基端側検出部13と先端側検出部14は一体でもよいし、別々の部材を接合してもよい。接合方法は溶接、ネジによる螺合等従来公知の方法を採用することができる。
被覆部20は、基端側検出部13の基端側末端から伸び、全体が接着性PFAの接着層を介して液密に基端側検出部13と接合されている。被覆部20の長さは、80~150mmである。被覆部21は、先端側検出部14の先端から1100mm以内の位置に先端を配置し、全体が接着性PFAの接着層を介して液密に先端側検出部14と接合されている。被覆部20の熱収縮PFAは、グンゼ株式会社製、製品名「GRC」の熱収縮性PFAチューブ(内径12mm、肉厚0.3mm、収縮率22.2%)を用いた。被覆部21の熱収縮PFAは、グンゼ株式会社製、製品名「GRC」の熱収縮性PFAチューブ(内径12mm、肉厚0.3mm)を用いた。また、接着性PFAは、何れも、AGC製、製品名「EA-2000」のシート(厚み0.05mm)を用い、3重に巻き回したものを使用した。
液体接触用部材1は、以下のようにして製造することができる。金属基材10の外表面を定法に従って脱脂した後、基端側検出部13と先端側検出部14の所望の位置に、前述の接着性PFAのシートを巻き付ける。これを、所定長さの前述の熱収縮性PFAチューブの内側に挿通し、接着性PFAのシートを熱収縮性PFAチューブで覆う。これを、300~330℃で0.5~2時間焼成することで、所望の液体接触用部材1が得られる。
以上のようにして得られた液体接触用部材1は、図2に示すように、液体33が充填されたタンク30の内部に設置して、液面レベルセンサー2の構成部材として使用することができる。図2に示す例では、液体接触用部材1は、タンク30の内部の側壁に設けられた2つのクランプ部31、32により、鉛直方向に支持されるとともに、フランジ部12の先端側に面する面で、タンク30の上面と当接して支持されている。液体接触用部材1は、タンク30の内側に基端側検出部13と先端側検出部14が配置され、タンク30の外側に外部接続部11とフランジ部12が配置されている。外部接続部11は制御部17と電気的に接続され、制御部17において、基端側検出部13又は先端側検出部14で検出した信号に基づき液面レベルを測定する。
図2に示す液面レベルセンサー2は、静電容量式レベルセンサーで、液体33が液体窒素である場合の例を示したものである。この実施例に示す液体接触用部材1は、基端側検出部13と先端側検出部14の合計全長が長いため、安定して計測する観点から、液体接触用部材1の基端側と先端側をクランプ部31、32で固定している。また、液体窒素は極低温であるため、タンク30及びクランプ部31、32は、金属製である。そして、静電容量式レベルセンサーの場合、その検出部は互いに絶縁された検出電極と接地電極から構成され、接地電極は金属タンクの壁に電気的に導通される。したがって、クランプ部31、32により基端側検出部13と先端側検出部14を支持するには、絶縁被膜として、被覆層20、21が必須である。そして、接着層を介さず、被覆層20、21のみの場合は、金属基材10と被覆層20、21との間に液体窒素が毛細管現象により侵入することで、被覆層20、21よりも鉛直下の位置に液体窒素液面が存在するにも関わらず、未だ液面レベルが被覆層20、21の辺りであると計測される不具合が生ずる。しかし、接着性PFAの接着層を液密になるように設けることで、このような不具合の発生を防止することができる。