JP7181133B2 - 感知センサ - Google Patents

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Description

本発明は、圧電振動子の周波数変化により被感知物質を感知する感知センサに関する。
ガス中に含まれる物質を感知するための手法として、水晶振動子を用いたQCM(Quartz crystal microbalance)が知られている。このようなQCMの一つとして、感知センサを真空容器内に配置し、当該感知センサを構成するセンサモジュールに含まれる水晶振動子を冷却して比較的低い温度とすると共に、ガス化した試料(試料ガス)を真空容器内に供給して当該水晶振動子に付着させた後、水晶振動子の温度を徐々に上げてガスを脱離させる測定手法が知られている。この測定手法によれば、試料ガスの脱離前後の周波数変化量を検出することで試料ガスの付着量が検出され、試料ガスが脱離する温度を検出することで試料ガスの成分を特定することができる。
上記のように真空容器内にて水晶振動子の温度を変化させて測定を行うQCMとして、CQCM(Cryogenic QCM)が知られている。このCQCMに用いられる感知センサとしては、真空容器内にて例えば-196℃の極低温の液体窒素が供給される部材(シュラウド)に取り付け用金具を介してセンサモジュールが接続され、当該金具を介してセンサモジュールが冷却される構成とされる。しかし、そのような極低温の液体窒素を扱うことは手間がかかるし、感知センサの構成が大掛かりとなってしまう。
そこで手軽に測定を行うために、上記のCQCMに代りTQCM(Thermoelectric QCM)と呼ばれる手法を用いることが検討されている。このTQCMに用いられる感知センサを構成するセンサモジュールには、水晶振動子の温度変更を能動的に行うためにペルチェ素子が内蔵される。特許文献1には、そのようにペルチェ素子を含むセンサモジュールについて記載されている。
2011-215024号公報
ところで、TQCM及びCQCMで測定を繰り返し行うにあたり、先の測定の試料ガスが、後の測定の開始直前に真空容器内に残留している懸念が有る。また、真空容器を開放したときに真空容器内に外部からガスが流入するおそれが有る。つまり、測定対象となる試料ガス以外のガス(説明の便宜上、異物ガスとする)が、測定開始直前に真空容器内に含まれた状態となるおそれが有る。ただし、CQCM用の感知センサについては、シュラウドに極低温の液体窒素が供給されるため、感知センサを構成する各部位のうちこのシュラウドの表面の温度が最低温度となる。そのため、上記の異物ガスはシュラウドに接すると固化物となって付着し、測定中はシュラウドに付着し続ける。
しかし、TQCM用の感知センサについては上記のシュラウドが設けられておらず、既述のように測定を行うために水晶振動子を冷却したときに、当該水晶振動子が当該感知センサにおいて最も温度が低い部位となるため、異物ガスが当該水晶振動子に接して固化物となって付着してしまう。そして、水晶振動子の温度を上昇させて測定を行うにあたり、この固化物が再度異物ガスとなって水晶振動子から脱離することで、試料のガスについての測定を正確に行えないおそれが有る。例えば、真空容器の内壁を液体窒素などで冷却して、水晶振動子よりも低い温度にすることによってそのような問題を解決することが考えられるが、手軽に測定を行えるというTQCMの利点が損なわれてしまう。上記の特許文献1には、このような問題の解決手法については記載されていない。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電振動子の温度を上昇させて当該圧電振動子に付着した被感知物質を気体として脱離させ、当該圧電振動子の発振周波数の変化に基づいて前記被感知物質を感知するための感知センサについて、精度高く感知を行うことである。
本発明の感知センサは、圧電振動子の温度を上昇させて当該圧電振動子に付着した被感知物質を気体として脱離させ、当該圧電振動子の発振周波数の変化に基づいて前記被感知物質を感知するための感知センサにおいて、
前記圧電振動子と、前記発振周波数を取得する下限温度に冷却された当該圧電振動子の温度を上昇させて前記被感知物質を脱離させるための温度調整部と、を備えるセンサモジュールと、
前記センサモジュールを冷却する第1の冷却部と、
前記圧電振動子が前記下限温度に冷却される前に当該下限温度以下の温度に冷却され、前記センサモジュールが置かれる雰囲気の異物であるガスを固化させて捕集するための異物捕集部と、
を備えることを特徴とする。
本発明によれば、感知センサを構成する圧電振動子が置かれる雰囲気の異物であるガスが、冷却された当該圧電振動子に付着することが抑制される。従って、感知センサによる感知精度を高くすることができる。
本発明の実施形態に係る感知センサを含む感知装置の側面図である。 感知センサの上面図である。 前記感知センサにおける熱の移動を示す模式図である。 前記感知センサに含まれるセンサモジュールの縦断側面図である。 前記センサモジュールの分解斜視図である。 前記センサモジュールを構成する水晶振動子の概略縦断側面図である。 前記センサモジュールにおける熱の移動を示す模式図である。 前記感知装置のブロック図である。 前記感知装置による測定手順を示す工程図である。 前記感知装置による測定手順を示す工程図である。 前記感知装置による測定手順を示す工程図である。 前記感知装置による測定手順を示す工程図である。 感知センサの他の構成例を示す側面図である。
本発明の一実施形態であるTQCMを行うための感知装置1について、縦断側面図である図1を参照しながら説明する。感知装置1は、真空容器11と、セル12と、感知センサ2と、制御機器4と、を備えており、真空容器11内にセル12及び感知センサ2が設けられている。真空容器11内は排気機構13により排気され、内部が所望の圧力の真空雰囲気となる。真空容器11内の上部側にセル12が設けられており、セル12には感知対象(測定対象)である固体の試料が貯留されている。セル12は当該試料を加熱して気化させて試料ガスとして、感知センサ2に供給できるように構成されている。
続いて感知センサ2について、図2の平面図も参照しながら説明する。感知センサ2は、取り付け用金具21、ペルチェ素子22、冷却プレート23、積層ペルチェ素子24、トラッププレート25及びセンサモジュール3を備えている。センサモジュール3については、背景技術の項目で述べたように水晶振動子と、当該水晶振動子の温度を変更するためのペルチェ素子と、が含まれている。取り付け用金具21、ペルチェ素子22、冷却プレート23、積層ペルチェ素子24、トラッププレート25については、この順に下方から上方に積層されている。
取り付け用金具21は真空容器11内に水平に設けられた矩形板であり、その一端部はペルチェ素子22の冷却面である下面に接している。また、取り付け用金具21の他端部には開口部21Aが設けられており、センサモジュール3は後述の突起57がこの開口部21Aに差し込まれて、当該取り付け用金具21上に設置されている。
そして、ペルチェ素子22の放熱面である上面に接するように、ヒートシンクである冷却プレート23が水平に設けられている。当該冷却プレート23内には、冷媒として例えば冷却水が通流する流路が形成されている。図中21A、21Bは各々冷却プレート23に一端が接続される冷却水の供給管、冷却水の排出管であり、これら供給管23A、排出管23Bの各他端は、真空容器11の外側に設けられた図示しない冷却水温調機構に接続されている。当該冷却水温調機構、冷却プレート23、供給管23A、排出管23Bはチラーを構成しており、従ってこれらの各部材によって形成される循環路を冷却水が流通する。冷却プレート23の流路には冷却水温調機構により、例えば-20℃に冷却された冷却水が供給され、当該冷却プレート23の表面が同様に-20℃に冷却される。
冷却プレート23上の積層ペルチェ素子24については、例えば3段に積み重ねられたペルチェ素子により構成されている。つまり、上段側のペルチェ素子の放熱面と下段側のペルチェ素子の吸熱面とが接するように3つのペルチェ素子が互いに積層されて構成されているが、図中では積層ペルチェ素子24を構成する各個のペルチェ素子の表示は省略している。積層ペルチェ素子24の放熱面、吸熱面は夫々下方、上方に向けられている。より詳しく述べると、積層ペルチェ素子24を構成する3つのペルチェ素子のうちの最下段のペルチェ素子の放熱面は下方に向けられ、積層ペルチェ素子24を構成する3つのペルチェ素子のうちの最上段のペルチェ素子の吸熱面は上方に向けられている。
トラッププレート25については水平に設けられた矩形状の板であり、既述の異物ガスを冷却して付着させるための部材である。トラッププレート25の一端部が、上記のように積層ペルチェ素子24上に積層されている。そして、トラッププレート25の他端部には開口部26が形成されており、当該開口部26はセンサモジュール3上に位置すると共にセル12の下方に配置されている。上記のように開口部26が設けられることで、平面で見ると、センサモジュール3は周囲をトラッププレート25に囲まれている。そのような構成とすることで、センサモジュール3の周囲に亘って異物ガスをトラッププレート25に付着させることができるようにし、異物ガスのセンサモジュール3への付着が、より確実に抑制されるようにしている。
図中29はネジであり、積層される取り付け用金具21、ペルチェ素子22、冷却プレート23、積層ペルチェ素子24、トラッププレート25を互いに密着するように固定している。そのように各部材を密着させることで、当該部材間での伝熱が効率良くなされるようにしている。図3は、感知センサ2における熱の流れを矢印で示す模式図である。トラッププレート25は積層ペルチェ素子24により冷却され、その積層ペルチェ素子24の放熱面は冷却プレート23により冷却される。
この積層ペルチェ素子24は、上記のように3つのペルチェ素子の積層体であるために高い冷却作用を有している。さらに冷却プレート23により冷却されることで、当該積層ペルチェ素子24の冷却面の温度は非常に低い温度となる。周波数が取得されて測定が行われる水晶振動子の温度範囲を測定温度範囲とすると、上記のように積層ペルチェ素子24によって冷却されるトラッププレート25の温度は、この測定温度範囲の下限温度よりも低い温度、例えば-90℃になる。なお、この例では測定温度範囲は-80℃~125℃として、測定を行う前に予め設定されている。上記のように冷却されるトラッププレート25は、センサモジュール3が置かれる真空容器11内の雰囲気の異物ガスを固化させて捕集する捕集部本体をなし、積層ペルチェ素子24は、当該トラッププレート25を冷却するための第2のペルチェ素子をなす。
また、取り付け用金具21はペルチェ素子22により冷却され、ペルチェ素子22は冷却プレート23により冷却される。それにより、取り付け用金具21は例えば-40℃と、比較的低い温度に冷却される。それにより、後述のように水晶振動子7を冷却するためにセンサモジュール3で発生する熱を、この取り付け用金具21を介して放熱させることができる。このように第3のペルチェ素子をなすペルチェ素子22及び冷却流路形成部をなす冷却プレート23は、接続部材である取り付け用金具21を介してセンサモジュール3を冷却する第1の冷却部をなす。
続いて、センサモジュール3について図4の縦断側面図及び図5の分解斜視図を参照して説明する。センサモジュール3は、ベース5、回路基板6、ペルチェ素子93、ペルチェ素子94、水晶振動子7を備えるセンサ部8及びカバー9を備えている。センサモジュール3の構造の概略を述べると、ベース5に第1のペルチェ素子であるペルチェ素子93、94、センサ部8、カバー9が各々支持され、カバー9によってベース5上のペルチェ素子93、94及びセンサ部8が覆われる。カバー9は開口しており、水晶振動子7にガスを供給可能に構成されている。
また、水晶振動子7を発振させる発振回路75を備える回路基板6は、ベース5の内部に収納されることで、水晶振動子7と発振回路75との距離が短くなるようにしている。それにより、発振回路75の負性抵抗を大きくし、水晶振動子7の発振余裕度を大きくすると共に、発振回路75と水晶振動子7との間の寄生容量を低減させて水晶振動子7の質量変化と発振周波数の変化とが精度高く対応するようにしている。
上記のベース5について説明する。ベース5は、例えばニッケル鍍金がされた銅により構成されており、互いに嵌合されるベース本体51と蓋部52とにより構成されている。ベース本体51は例えば一体成形された、平面視円形のブロックとして構成されている。当該ベース本体51の一面側の中央部は当該一面側に向けて突出し、平面視円形の突起部53として構成されており、当該突起部53の一面は平坦面53Aを形成している。この平坦面53Aの周縁部から一面側に向けて4つの円筒部54が突出しており、円筒部54は平坦面53Aの周方向に沿って間隔を空けて設けられている。
また、この平坦面53Aには2つの長穴50が平面視左右に離れ、各々左右に直交して伸びるように開口している。ベース本体51の他面側の中央部には凹部が形成されており、上記の長穴50は当該凹部内に開口している。ところで以下の説明では特に記載無い限り、突起部53の突出方向を上方向、2つの長穴50の配列方向を左右方向、当該長穴50の長さ方向を前後方向とする。ただしこの方向については説明の便宜上付すものであり、ここで示す方向となるように使用時のセンサモジュール3の方向が限られるものでは無い。
ベース5を構成する蓋部52は、ベース本体51の下方側から上記の凹部を塞いで、上記の回路基板6などを収納する密閉された収納空間55を形成する円形の板状体56と、当該板状体56の下方に突出する突起57と、を備えている。突起57には、図示しない電極が設けられている。また、上記の板状体56の上面側の左右に離れた各位置は隆起し、前後に細長で扁平な支持突起59を形成している。なお図4中、上記の凹部の底面を、収納空間55から見た天井面55Aとして示している。ベース本体51が下方側に凹部を備え、下方側から当該凹部をベース本体51により塞いで収納空間55が形成されるようにすることで、天井面55Aと平坦面53Aとの間の壁部を肉厚にして熱容量を高くすると共に、この肉厚の壁部から上記の凹部の側壁への伝熱が良好になされるようにしている。それにより、後述のように平坦面53A上に配置されるペルチェ素子93、94からベース5の下方側への放熱が効率良く行われるようにしている。
続いて、回路基板6について説明する。回路基板6は上面側の中央部、下面側の中央部に各々集積回路62を備えている。回路基板6の上面側の左右の各端部には、上下方向に伸びる筒状のソケット63が複数ずつ、前後方向に並べて形成される。ソケット63は導電性であり、回路基板6に設けられる電極に電気的に接続されている。
上記のベース5の収納空間55には、回路基板6と共に、2つのスペーサー65及び2つのガイド部材67が収納されている。スペーサー65及びガイド部材67は、ベース5から回路基板6への伝熱を抑制するために、熱伝導率が低い材料例えばテフロン(登録商標)により構成される。スペーサー65は回路基板6の下面の左右の各端部と支持突起59とに挟まれ、これら回路基板6の端部、支持突起59に各々密着している。ガイド部材67は回路基板6の上面の左右の各端部と、収納空間55を形成する天井面55Aとに挟まれる共に、これら回路基板6の端部、天井面55Aに各々密着している。そのようにスペーサー65及びガイド部材67に密着することで回路基板6の上下の位置が固定され、回路基板6の上面側の集積回路62、下面側の集積回路62は、天井面55A、ベース5の蓋部52から夫々離れている。また、回路基板6の側面は収納空間55を形成する側壁から離れている。
続いてセンサ部8について説明する。図6は当該センサ部8を構成する圧電振動子である水晶振動子7の概略縦断側面図であり、水晶振動子7は、例えばATカットされた圧電片である円板状の水晶片70を備えている。水晶片70の上面側には励振電極71、72が離間して設けられ、水晶片70の下面側には励振電極73、74が離間して設けられる。励振電極71~74は円形であり、例えば金(Au)により構成されている。励振電極71、73は対をなし、水晶片70を挟んで互いに重なり、これらの励振電極71、73を第1の励振電極とする。励振電極72、74は対をなし、水晶片70を挟んで互いに重なり、これらの励振電極72、74を第2の励振電極とする。水晶片70の一面側における第1の励振電極71、第2の励振電極72は、夫々ガスを付着させる反応電極、ガスを付着させない参照電極である。励振電極71~74の周の一部は水晶片70の縁部へ引き出されて、図示しない引き出し電極を形成している。
センサ部8は、その中央部に上記の水晶振動子7を保持する基板80を備えている。当該基板80の上面には、水晶振動子7の下面側の第1の励振電極73及び第2の励振電極74を収納する凹部81が形成されており、水晶振動子7の周縁部は、当該凹部81の開口縁部に支持されている。また、基板80の上面には、水晶振動子7の温度を検出するための温度検出部82が設けられている(図4、図5参照)。
この温度検出部82及び上記の各励振電極71~74から延出される引き出し電極については、基板80に形成される図示しない配線パターンや基板80に設けられる図示しない導電性クリップなどの導電性部材を介して、導電性のピン83の上端部に電気的に接続されている。ピン83は、基板80の左右の端部に複数ずつ設けられて、前後方向に配列されており、基板80の下方に伸び出している。そして、当該ピン83は、ベース5の長穴50、ガイド部材67に形成される孔、ソケット63の孔、基板31に形成される孔、スペーサー65に形成される孔66に順に挿通されており、その下端はベース5の蓋部52の支持突起59の側方に位置する。
このようにピン83が各部材に挿通されることで、センサ部8、ガイド部材67、回路基板6、スペーサー65の各々の横方向における位置が固定され、且つセンサ部8を構成する各部と、回路基板6に設けられる電極とが、ピン83及びソケット63を介して電気的に接続されている。なお、当該回路基板6に設けられる電極は、図示しない配線によりベース5の突起57に設けられる電極に接続されている。当該突起57の電極は配線を介して例えば真空容器11の外側に設けられる制御機器4に接続されており、後述するように制御機器4により、水晶振動子7の温度調整及び水晶振動子7の周波数の測定を行うことができる。また、上記のようにピン83が差し込まれた基板80は、上記のベース5の円筒部54に支持され、ベース5の平坦面53Aに対向する。なお、図5中84は基板80を、ベース5の円筒部54に固定するためのねじである。
続いてカバー9について説明する。このカバー9は、有天井の起立した円筒として構成されており、当該カバー9の下端部はベース5の突起部53の側周面を囲み、当該ベース5に係合されている。カバー9の天井部には、水晶振動子7の第1の励振電極71に重なるように開口部91が設けられ、当該第1の励振電極71にガスを導入することができる。開口部91の開口縁は下方へと延伸され、筒状のガイド92を形成しており、ガイド92の下端は水晶振動子7から僅かに離間している。
また、上記のセンサ部8の基板80の下面とベース5の平坦面53Aとの間には、上方(他方)から下方(一方)に向けて熱伝導シート95、ペルチェ素子93、ペルチェ素子94、熱伝導シート96が、この順番で互いに密着して設けられている。また、熱伝導シート95、96は、基板80の下面、平坦面53Aに夫々密着している。温度調整部であるペルチェ素子93、94については、その上面及び下面が放熱面及び冷却面をなし、供給される電流の方向が切り替えられることで、この放熱面と冷却面とが互いに切り替えられる。具体的に述べると、センサ部8を冷却する際にはペルチェ素子93、94共にその上面が冷却面となり、その下面が放熱面となる。センサ部8を加熱する際にはペルチェ素子93、94共にその上面が放熱面となり、その下面が冷却面となる。
図7は、以上に述べたセンサモジュール3において水晶振動子7を冷却する際の熱の流れを、矢印で示している。上段側のペルチェ素子93の冷却面(上面)の温度が低下する一方で、当該ペルチェ素子93の放熱面(下面)を冷却するためにペルチェ素子94の放熱面(下面)の温度が上昇する。そして、このペルチェ素子94からベース5の下方側へと伝熱され、この熱は既述した取り付け用金具21へと向かって放熱される。ペルチェ素子93、94により冷却されること、及び上記のようにペルチェ素子94からベース5の下方への伝熱が効率良く行われることで、上記したように水晶振動子7の温度を-80℃という低い温度に低下させることができる。なお、このようにベース5への放熱が行われる際に、回路基板6とベース5の収納空間55の壁部との間には断熱部であるスペーサー35及びガイド部材37が介在しているため、ベース5の熱が回路基板6に伝導することが抑制される。従って、回路基板6の温度上昇が抑制され、当該温度上昇に起因する出力の変化が抑制される。
続いて、図8を用いて上記の回路基板6についてさらに説明すると共に、制御機器4について説明する。回路基板6の集積回路62は、発振回路75、及び発振回路75に供給される電圧を調整するためのレギュレータ76と、スイッチ77、78と、を含む。水晶振動子7における上面側の第1の励振電極71及び第2の励振電極72が、集積回路62に設けられたスイッチ77を介して発振回路75に接続され、水晶振動子7における下面側の第1の励振電極73及び第2の励振電極74が、集積回路62に設けられたスイッチ78を介して発振回路75に接続される。なお、図中79は回路基板6に設けられるヒーター抵抗である。制御機器4から供給される電力によって発熱して、回路基板6の温度を調整し、回路基板6を構成する半導体素子が機能し得る温度とする役割を有する。
制御機器4は、上記のレギュレータ76及びヒーター抵抗79が並列に接続される電源部41を備えている。電源部41により、発振回路75にレギュレータ76を介して駆動電圧が印加される。また制御機器4は、周波数測定部42、制御部43、及び出力調整部44を備えている。周波数測定部42は発振回路75に接続され、発振回路75から出力される周波数を測定し、周波数測定部42にて測定された周波数についてのデータ信号が、制御部43に入力される。出力調整部44は温度検出部82に接続され、当該温度検出部82にて検出された水晶振動子7の温度に基づいて、ペルチェ素子93、94へ供給される電流の向き及び供給電力を調整して、水晶振動子7の温度を調整する。この出力調整部44の動作は制御部43により制御され、後述のように水晶振動子7の温度を所定の温度から所定の速度で昇温させることができる。また、出力調整部44により、ペルチェ素子22、積層ペルチェ素子24への給電が制御される。
上記のスイッチ77、78が切り替えられることで、発振回路75に接続される励振電極を、反応電極(第1の励振電極71、73)と、参照電極側(第2の励振電極72、74)との間で切り替える。この切り替えにより周波数測定部42においては、反応電極側の第1の発振周波数F1と、参照電極側の第2の発振周波数F2とが夫々測定される。また上記の制御部43は、例えば第1の発振周波数F1、第2の発振周波数F2、F1とF2との差分の各々についての経時変化を示すグラフを、制御機器4に設けられる表示部(図示は省略している)に表示する。つまり、装置のユーザーが被感知物質の検出を行うことができるように、F1、F2、F1-F2についての各時系列データが表示される。
以下、既述した感知装置1を用いた測定について説明する。真空容器11内が排気され、所定の圧力の真空雰囲気とされる。このとき図9に示すように、真空容器11内には、既述した異物ガス101が残留している。そして、冷却プレート23に冷却水が供給された状態で、ペルチェ素子22及び積層ペルチェ素子24が動作し、既述したようにトラッププレート25の温度が設定温度である-90℃となり、取り付け用金具21の温度が-40℃となる。
異物ガス101は、このように冷却されたトラッププレート25に接すると固化し、その固化物はトラッププレート25に付着する(図10)。その後、図6で説明したようにペルチェ素子93、94の作用により水晶振動子7の温度が低下する。この水晶振動子7の降温中も、トラッププレート25の温度の方が水晶振動子7の温度よりも低いため、異物ガス101はトラッププレート25に接して固化物となり、当該トラッププレート25に付着する。従って、異物ガス101が触れると当該異物ガス101が固化する温度にまで水晶振動子7の温度が達するときには、真空容器11内の異物ガス101は既に固化物となり、トラッププレート25に付着した状態となっている。従って、水晶振動子7に異物ガス101が付着することが抑制される。
水晶振動子7の温度が測定温度範囲の下限である-80℃に達すると、セル12中の試料が試料ガス102として放出されて水晶振動子7、より詳しくは水晶振動子7の第1の励振電極71にて冷却されて固化物として付着する(図11)。そして、回路基板6のスイッチ77、78が高速で切り替えられ、制御部43により反応電極(第1の励振電極71、73)の発振周波数F1と、参照電極側(第2の励振電極72、74)の発振周波数F2と、が交互に時分割で取得される。この発振周波数F1、F2の取得を行いながらペルチェ素子93、94の作用により、水晶振動子7の温度を例えば1℃/分の速度で上昇させる。
水晶振動子7の昇温により、第1の励振電極71に付着した固化物が試料ガス102となって脱離すると(図12)、この脱離した試料ガス102の量に対応する分、発振周波数F1が変化する。一方で、参照電極側の第2の励振電極72においては試料ガス102が付着していないため、このような脱離による質量変化が起こらないので第2の発振周波数F2はほとんど変化しない。水晶振動子7が測定温度範囲の上限である125℃に達すると、昇温が停止する。このように水晶振動子7の昇温する間、トラッププレート25の温度は-90℃に保たれ、異物ガス101の固化物は当該トラッププレート25に付着したままとなっている。ユーザーは、この水晶振動子7の昇温中に取得された第1の発振周波数F1と第2の発振周波数F2との差分の時系列データに基づき、試料ガス102の付着量、試料ガスの成分の特定を行う。
この感知センサ2によれば、センサモジュール3における水晶振動子7の温度を測定温度範囲の下限温度に低下させて測定を開始する前に、当該下限温度よりも低い設定温度とされるトラッププレート25を設けて、異物ガス101を当該トラッププレート25にて固化させて付着させることにより、当該水晶振動子7における異物ガス101の固化及び付着を抑制することができる。従って、水晶振動子7を昇温させて測定を行うにあたり、水晶振動子7から試料ガス102以外のガスの脱離が抑制されるため、精度高く測定を行うことができる。なお、トラッププレート25の設定温度は、例えば水晶振動子7の測定温度範囲の下限温度と同じ-80℃であってもよいが、この下限温度よりも低い温度とすることで、より確実に異物ガス101をトラッププレート25に付着させることができる。
ところで図13には、感知センサ2の変形例である感知センサ20を示している。感知センサ20について、感知センサ2との差異点を中心に説明すると、感知センサ20は、冷却プレート23、ペルチェ素子22、取り付け用金具21、積層ペルチェ素子24、トラッププレート25が下方から上方に向けてこの順に積層されて構成されている。
このように各部材が積層されているため、ペルチェ素子22及び積層ペルチェ素子24の各々について可能な範囲内で最大の電圧を印加し、トラッププレート25を冷却可能な範囲内で最も低い温度としたときには、取り付け用金具21の温度についても冷却可能な範囲内で最も低い温度とされる。従って、これらのトラッププレート25及び取り付け用金具21の各々を最も低い温度となるように制御して感知装置1を運用するにあたり、トラッププレート25及び取り付け用金具21の温度のいずれか一方を温度センサで計測してその温度を管理すればよいので、温度センサの数を抑えて、装置構成が簡単になる利点が有る。ただし、積層ペルチェ素子24の熱が取り付け用金具21を介してセンサモジュール3へ移動してしまい、水晶振動子7の温度を十分に低下させることができなくなるおそれがあるため、水晶振動子7の温度をより低い温度にする観点からは、上記の感知センサ2の構成が好ましい。なお、図13では、図3と同様に各部材における熱の流れを矢印で示している。
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。また、水晶振動子について上記の構成例では検出精度を高めるために反応電極及び参照電極を設けて発振周波数F1、F2が取得できる構成とし、当該発振周波数F1、F2に基づいて検出を行っているが、参照電極を設けずに反応電極のみを設けて発振周波数F1のみを取得し、当該発振周波数F1のみに基づいて検出を行ってもよい。また、トラッププレート25の形状も既述した例には限られないし、異物捕集部をなす捕集部本体を板状とすることにも限られない。
2 感知センサ
21 取り付け用金具
22 ペルチェ素子
23 冷却プレート
24 積層ペルチェ素子
25 トラッププレート
3 センサモジュール
7 水晶振動子
93、94 ペルチェ素子

Claims (7)

  1. 圧電振動子の温度を上昇させて当該圧電振動子に付着した被感知物質を気体として脱離させ、当該圧電振動子の発振周波数の変化に基づいて前記被感知物質を感知するための感知センサにおいて、
    前記圧電振動子と、前記発振周波数を取得する下限温度に冷却された当該圧電振動子の温度を上昇させて前記被感知物質を脱離させるための温度調整部と、を備えるセンサモジュールと、
    前記センサモジュールを冷却する第1の冷却部と、
    前記圧電振動子が前記下限温度に冷却される前に当該下限温度以下の温度に冷却され、前記センサモジュールが置かれる雰囲気の異物であるガスを固化させて捕集するための異物捕集部と、
    を備えることを特徴とする感知センサ。
  2. 前記温度調整部は、第1のペルチェ素子を含むことを特徴とする請求項1記載の感知センサ。
  3. 前記異物捕集部は、異物が固化される捕集部本体と、
    前記捕集部本体を冷却する第2のペルチェ素子と、を含むことを特徴とする請求項1または2記載の感知センサ。
  4. 前記第1の冷却部は、
    前記センサモジュールを冷却するための第3のペルチェ素子と、
    前記第3のペルチェ素子を冷却するための冷媒の流路を備えた冷却流路形成部と、
    を備える請求項3記載の感知センサ。
  5. 前記センサモジュール、前記第3のペルチェ素子に各々接続される接続部材が設けられ、
    前記接続部材、前記第3のペルチェ素子、前記冷却流路形成部、前記第2のペルチェ素子、前記捕集部本体の順で積層されていることを特徴とする請求項4記載の感知センサ
  6. 前記センサモジュール、前記第3のペルチェ素子に各々接続される接続部材が設けられ、
    前記冷却流路形成部、前記第3のペルチェ素子、前記接続部材、前記第2のペルチェ素子、前記捕集部本体の順で積層されていることを特徴とする請求項4記載の感知センサ
  7. 前記捕集部本体は、前記第2のペルチェ素子に重なる位置から離れた位置に、前記センサモジュールに重なる開口部を備えることを特徴とする請求項5または6記載の感知センサ。
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