JP2006234467A - マイクロチップ用の温度制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 取り扱いが容易であり、マイクロチップの被温度調節部の温度を高精度かつ局所的に制御するマイクロチップ用の温度制御装置を提供する。
【解決手段】 温度制御装置1は、マイクロチップ40の被温度調節部を第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20により上方および下方から挟み込んでいる。そのため、マイクロチップ40の被温度調節部では、板厚方向において温度勾配が低減する。また、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20はそれぞれコイルばね14またはコイルばね24で支持されている。これにより、第一温度調節ユニット10の温度調節部11および第二温度調節ユニット20の温度調節部21は、マイクロチップ40の被温度調節部に密着する。
【選択図】 図1
【解決手段】 温度制御装置1は、マイクロチップ40の被温度調節部を第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20により上方および下方から挟み込んでいる。そのため、マイクロチップ40の被温度調節部では、板厚方向において温度勾配が低減する。また、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20はそれぞれコイルばね14またはコイルばね24で支持されている。これにより、第一温度調節ユニット10の温度調節部11および第二温度調節ユニット20の温度調節部21は、マイクロチップ40の被温度調節部に密着する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、マイクロチップ用の温度制御装置に関し、特にマイクロチップの微細な流路または所定領域ごとに温度を制御するマイクロチップ用の温度制御装置に関する。
マイクロチップでは、薄い板状のチップ上に微細な流路または槽領域などが形成されている。このマイクロチップ上の流路または槽領域において、試料の分離、合成あるいは観察、または細胞の培養などが行われる。このようなマイクロチップでは、流路または槽領域などの被温度調節部ごとに、異なる温度で高精度かつ局所的に温度を制御する必要がある。
上記のようにマイクロチップの被温度調節部の温度を制御する技術として、例えば特許文献1、2または非特許文献1、2に開示されている技術が公知である。特許文献1では、マイクロチップの分析電極ごとに分析電極を加熱する加熱電極を備えている。これにより、マイクロチップの分析電極は個別に温度調節される。また、特許文献2では、熱伝導体で構成される複数のアイランドを個別に温度調節する温度調節器を備えている。これにより、アイランドごとに温度調節が可能となり、アイランドに接するサンプル溶液の温度が制御される。さらに、非特許文献1では、被温度調節部を有するチップの一方の面側に微小のペルチェ素子を有するヒートシンクが設置されている。これにより、チップの被温度調節部はペルチェ素子によって温度調節が行われる。非特許文献2では、チップの両面側にペルチェ素子を設置している。これにより、チップの被温度調節部における迅速な温度調節を図っている。
しかしながら、特許文献1に開示されている発明の場合、分析電極には加熱電極が設置されるのみである。そのため、分析電極を冷却することは困難である。その結果、設定温度が雰囲気温度に近いとき、精密な温度調節は困難である。また、特許文献2に開示されている発明も、特許文献1と同様にアイランドは加熱されるのみである。そのため、アイランドと接するサンプル容器の冷却は困難であり、精密な温度調節は困難である。さらに、特許文献1に開示されている発明の場合、チップと一体に分析電極および加熱電極が設置されている。そのため、チップを分析電極および加熱電極と分離して交換することは困難である。
一方、非特許文献1に開示されている発明の場合、ペルチェ素子を用いることにより、被温度調節部は加熱だけでなく冷却も可能となる。また、チップとペルチェ素子とは分離しているため、チップのみを容易に交換することができる。しかしながら、薄い板状のチップに流路および反応領域を形成する場合、チップには反りが生じやすい。そのため、非特許文献1に開示されている発明の場合、チップの被温度調節部にペルチェ素子が密着せず、高精度かつ局所的な温度調節は困難である。また、チップの反りが微小な場合でも、複数のペルチェ素子の被温度調節部に接する面を同一の平面上に設置することは困難である。また、チップを局所的に温度制御すると、チップには反りが生じる。そのため、すべてのペルチェ素子をチップに均一に密着させることは困難である。したがって、非特許文献1に開示されている発明では、チップの高精度かつ局所的な温度制御は困難になるおそれがある。
これら、特許文献1、2および非特許文献1は、いずれも温度調節部がチップの一方の面側に設置されている。そのため、チップの被温度調節部には、温度勾配が生じる。特に、被温度調節部を比較的高温に制御する場合、チップとチップ外部の雰囲気との間で熱の収受が発生する。そのため、被温度調節部の迅速な加熱は困難である。非特許文献2に開示されている発明の場合、チップは両側から温度調節部に挟まれている。しかし、チップを加熱または冷却するペルチェ素子とチップとの間には熱を伝達するためのオイルが介在している。そのため、装置の維持が煩雑であるとともに、チップの局所的な温度調節は困難である。
そこで、本発明の目的は、取り扱いが容易であり、マイクロチップの被温度調節部の温度を高精度かつ局所的に制御するマイクロチップ用の温度制御装置を提供することにある。
本発明のマイクロチップ用の温度制御装置によると、単数または複数の被温度調節部を有する薄板状のマイクロチップを加熱または冷却し、前記被温度調節部の温度を制御するマイクロチップ用の温度制御装置であって、前記マイクロチップの一方の面側から前記被温度調節部に接し、前記被温度調節部を加熱または冷却する第一温度調節ユニットと、前記マイクロチップの他方の面側から前記被温度調節部に接し、前記マイクロチップを挟んで前記第一温度調節ユニットとは反対側から前記被温度調節部を加熱または冷却する第二温度調節ユニットと、を備えることを特徴とする。これにより、マイクロチップの被温度調節部は第一温度調節ユニットおよび第二温度調節ユニットにより両側から加熱または冷却される。そのため、マイクロチップの被温度調節部における温度勾配は低減し、被温度調節部は迅速かつ精密に温度が制御される。また、第一温度調節ユニットおよび第二温度調節ユニットは、直接マイクロチップの被温度調節部に接する。そのため、被温度調節部は第一温度調節ユニットおよび第二温度調節ユニットによって局所的に温度が制御されるとともに、第一温度調節ユニットおよび第二温度調節ユニットとマイクロチップとの間には例えばオイルなどが介在しない。したがって、取り扱いを容易にすることができるとともに、被温度調節部の温度を高精度かつ局所的に制御することができる。
また、本発明のマイクロチップ用の温度制御装置によると、前記第一温度調節ユニットを少なくとも前記マイクロチップの板厚方向へ移動可能に支持するとともに前記マイクロチップへ押し付ける第一弾性体を備える。これにより、第一温度調節ユニットが例えば製造時の寸法のばらつき、および使用時の温度差によって生じる寸法差や変形、あるいはマイクロチップの反りなどがあるときでも、第一弾性体はその位置のずれを吸収する。また、第一弾性体は、第一温度調節ユニットの位置のずれを吸収するとともに、第一温度調節ユニットをマイクロチップ側へ押し付ける。そのため、第一温度調節ユニットは、マイクロチップの被温度調節部に密着する。したがって、被温度調節部の温度を高精度に制御することができる。
さらに、本発明のマイクロチップ用の温度制御装置によると、前記第二温度調節ユニットを少なくとも前記マイクロチップの板厚方向へ移動可能に支持するとともに前記マイクロチップへ押し付ける第二弾性体を備える。これにより、第二温度調節ユニットが例えば製造時の寸法のばらつき、および使用時の温度差によって生じる寸法差や変形、あるいはマイクロチップの反りなどがあるときでも、第二弾性体はその位置のずれを吸収する。また、第二弾性体は、第二温度調節ユニットの位置のずれを吸収するとともに、第二温度調節ユニットをマイクロチップ側へ押し付ける。そのため、第二温度調節ユニットは、マイクロチップの被温度調節部に密着する。したがって、被温度調節部の温度を高精度に制御することができる。
さらにまた、本発明のマイクロチップ用の温度制御装置によると、前記第一温度調節ユニットおよび前記第二温度調節ユニットは、それぞれ熱伝導体から形成され前記被温度調節部に接する温度調節部、前記温度調節部の前記マイクロチップとは反対側に設置され通電することにより前記温度調節部を加熱または冷却するペルチェ素子部、および前記ペルチェ素子部の前記温度調節部とは反対側に設置され前記ペルチェ素子部の加熱または冷却を補助するヒートシンクを有している。これにより、第一温度調節ユニットと第二温度調節ユニットは独立して温度制御される。そのため、マイクロチップの被温度調節部は、内部に生じる温度勾配に応じて第一温度調節ユニットおよび第二温度調節ユニットによって温度が制御される。したがって、被温度調節部の温度を高精度に制御することができる。
さらにまた、本発明のマイクロチップ用の温度制御装置によると、前記マイクロチップは複数の前記被温度調節部を有し、前記第一温度調節ユニットおよび前記第二温度調節ユニットは複数の前記被温度調節部にそれぞれ独立して複数設置されている。これにより、マイクロチップに設置されている複数の被温度調節部は、第一温度調節ユニットおよび第二温度調節ユニットにより個別に独立して局所的に温度が制御される。したがって、被温度調節部の温度を局所的に高精度に制御することができる。
以下、本発明の複数の実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
本発明の第1実施例によるマイクロチップ用の温度制御装置を図1に示す。図1は、本発明の第1実施例による温度制御装置1を適用したマイクロチップ40の断面を示す概略図である。
図1に示すように、第1実施例によるマイクロチップ40用の温度制御装置1は、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20を備えている。第一温度調節ユニット10と第二温度調節ユニット20とは、マイクロチップ40を挟んで対向して設置されている。第一温度調節ユニット10はマイクロチップ40の下方に設置され、第二温度調節ユニット20はマイクロチップ40の上方に設置されている。なお、マイクロチップ40は、第1実施例のように上下に限らず、例えば左右から挟み込む構成など、両面から挟み込むのであればいずれの方向から挟み込んでもよい。
(第1実施例)
本発明の第1実施例によるマイクロチップ用の温度制御装置を図1に示す。図1は、本発明の第1実施例による温度制御装置1を適用したマイクロチップ40の断面を示す概略図である。
図1に示すように、第1実施例によるマイクロチップ40用の温度制御装置1は、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20を備えている。第一温度調節ユニット10と第二温度調節ユニット20とは、マイクロチップ40を挟んで対向して設置されている。第一温度調節ユニット10はマイクロチップ40の下方に設置され、第二温度調節ユニット20はマイクロチップ40の上方に設置されている。なお、マイクロチップ40は、第1実施例のように上下に限らず、例えば左右から挟み込む構成など、両面から挟み込むのであればいずれの方向から挟み込んでもよい。
第一温度調節ユニット10は、温度調節部11、ペルチェ素子部12およびヒートシンク13を備えている。同様に、第二温度調節ユニット20は、温度調節部21、ペルチェ素子部22およびヒートシンク23を備えている。温度調節部11、21は、例えば銅、アルミニウムまたは各種の金属の合金など、熱伝導体により形成されている。温度調節部11、21は、金属に限らず例えば熱伝導性を有するセラミックスや樹脂などで形成してもよい。温度調節部11、21は、それぞれ図示しない温度検出部が設置されている。温度検出部は、例えばサーミスタなどを有しており、温度調節部11、21の温度を検出する。温度検出部は、検出した温度調節部11、21の温度を信号として図示しない制御部に出力する。温度調節部11、21は、ペルチェ素子部12、22の熱をマイクロチップ40へ伝達する。
ペルチェ素子部12は、温度調節部11のマイクロチップ40とは反対側に接している。同様に、ペルチェ素子部22は、温度調節部21のマイクロチップ40とは反対側に接している。温度調節部11、21とペルチェ素子部12、22とは、例えば接着剤により接着されている。ペルチェ素子部12、22は、通電することにより一方の面が発熱し、他方の面が吸熱するペルチェ素子を有している。ペルチェ素子は、印加される電流の向きによって一方の端面から熱を吸収し、他方の端面に排熱する。これにより、ペルチェ素子に印加する電流の向きおよび大きさを制御することにより、温度調節部11、21は加熱または冷却され、温度調節部11、21は所定の温度に制御される。温度調節部11、21は、図示しない制御部によって制御される。制御部は、図示しない温度検出部で検出された温度に基づいて、ペルチェ素子部12、22に供給する電流の向きおよび大きさ、または電流の断続を制御する。
ヒートシンク13はペルチェ素子部12の温度調節部11とは反対側に設置されている。同様に、ヒートシンク23は、ペルチェ素子部22の温度調節部21とは反対側に設置されている。ペルチェ素子部12、22とヒートシンク13、23とは、例えば接着剤により接着されている。ヒートシンク13、23は、例えば銅、アルミニウムまたは各種の金属の合金など、熱伝導体により形成されている。ヒートシンク13、23は、熱伝導率の大きな熱伝導体で形成することにより、ペルチェ素子部12、22からの排熱を放熱する。なお、ヒートシンク13、23には、例えばファンなどから送風してもよい。これにより、ヒートシンク13、23は放熱が促進される。
なお、第1実施例では、温度調節部11、21とペルチェ素子部12、22、およびペルチェ素子部12、22とヒートシンク13、23とは接着剤により接着する例を説明した。接着剤は、例えばエポキシ樹脂などの熱伝導性の高い接着剤、シリコーン変性ポリマーなどの弾性接着剤、反応形アクリルなどの反応形樹脂系接着剤、α−シアノアクリレートなどの瞬間接着剤、SBS、CR、NBRなどのゴム系溶剤形接着剤、またはEVA、オレフィン、合成ゴムなどのホットメルト系接着剤などを適用することができる。また、温度調節部11、21とペルチェ素子部12、22、およびペルチェ素子部12、22とヒートシンク13、23とは、例えば銀、銅、アルミニウムまたははんだなどの金属のろう材により接着してもよい。
第一弾性体としてのコイルばね14は、一体に組み付けられている温度調節部11、ペルチェ素子部12およびヒートシンク13からなる第一温度調節ユニット10を支持している。コイルばね14は、一方の端部が支持本体15に固定され、他方の端部がヒートシンク13に固定されている。コイルばね14は、ヒートシンク13の周方向において少なくとも二個所以上で一体の温度調節部11、ペルチェ素子部12およびヒートシンク13を支持している。
第二弾性体としてのコイルばね24は、一体に組み付けられている温度調節部21、ペルチェ素子部22およびヒートシンク23からなる第二温度調節ユニット20を支持している。コイルばね24は、一方の端部が支持本体25に固定され、他方の端部がヒートシンク23に固定されている。コイルばね24は、ヒートシンク23の周方向において少なくとも二個所以上で一体の温度調節部21、ペルチェ素子部22およびヒートシンク23を支持している。
コイルばね14、24は、第一温度調節ユニット10または第二温度調節ユニット20を支持するとともに、これらをマイクロチップ40方向へ押し付けている。これにより、第一温度調節ユニット10の温度調節部11は、マイクロチップ40の一方の面40aに押し付けられる。また、第二温度調節ユニット20の温度調節部21は、マイクロチップ40の他方の面40bに押し付けられる。なお、第1実施例では、弾性体としてコイルばね14、24を適用する例について説明している。しかし、弾性体は、コイルばね14、24に限らず、例えば板ばねなどのその他のばね、ゴムなどの弾性体、あるいは気体もしくは液体のダンパなどを適用してもよい。また、弾性体は、例えばシリコーンゲルやシリコーンゴムなどからなるシート状の部材であってもよい。シート状の弾性体を用いる場合、弾性体は一体の第一温度調節ユニット10または第二温度調節ユニット20のマイクロチップ40とは反対側に設置することができる。また、シート状の弾性体は、第一温度調節ユニット10の温度調節部11からヒートシンク13までの間、または第二温度調節ユニット20の温度調節部21からヒートシンク23までの間に設置してもよい。
コイルばね14はヒートシンク13の周方向において少なくとも二個所以上で一体の第一温度調節ユニット10を支持し、コイルばね24はヒートシンク23の周方向において少なくとも二個所以上で一体の第二温度調節ユニット20を支持している。これにより、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20は、マイクロチップ40に対し三次元の方向への移動が許容される。すなわち、一体の第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20は、コイルばね14またはコイルばね24により、マイクロチップ40の板厚方向に限らず、マイクロチップ40の平面方向への自由な移動および傾斜が許容されつつ、マイクロチップ40側へ押し付けられる。
次に、上記の構成による温度制御装置1を用いた温度制御の実験例について説明する。ここでは、マイクロチップ40に形成された被温度調節部である図示しない槽領域における温度変化を測定した。
まず、マイクロチップ40を両面から挟み込んで被温度調節部の温度を制御する第1実施例の温度変化を検証した。比較のため、マイクロチップ40の一方の面40aからのみマイクロチップ40の被温度調節部の温度を制御する温度制御装置を比較例1とした。すなわち、比較例1では、第1実施例における第二温度調節ユニット20が設置されていない。これにより、比較例1では、マイクロチップ40は第一温度調節ユニット10のみによって温度が制御される。
まず、マイクロチップ40を両面から挟み込んで被温度調節部の温度を制御する第1実施例の温度変化を検証した。比較のため、マイクロチップ40の一方の面40aからのみマイクロチップ40の被温度調節部の温度を制御する温度制御装置を比較例1とした。すなわち、比較例1では、第1実施例における第二温度調節ユニット20が設置されていない。これにより、比較例1では、マイクロチップ40は第一温度調節ユニット10のみによって温度が制御される。
図2は、経過時間とマイクロチップ40の任意の被温度調節部における温度との関係を示す概略図である。図2に示すように、マイクロチップ40の被温度調節部の温度は、50℃と70℃との間を繰り返し上昇および降下するように設定されている。このとき、温度制御装置1は、第一温度調節ユニット10の温度調節部11および第二温度調節ユニット20の温度調節部21の温度を調節することにより、マイクロチップ40の被温度調節部の温度を制御している。
第1実施例の場合、温度制御装置1によって制御されたマイクロチップ40の被温度調節部の温度は、図2に示すように設定されている目標温度の上限である70℃と目標温度の下限である50℃との間で温度の上昇および降下を繰り返す。また、第1実施例の温度制御装置1は、目標温度の上限である70℃または目標温度の下限である50℃に到達すると、一定時間所定の温度を維持している。これにより、マイクロチップ40の被温度調節部は、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20で両側から挟み込むことにより、迅速かつ精密に温度制御されていることが分かる。
これに対し、比較例1の場合、マイクロチップ40の被温度調節部は、目標温度の上限である70℃に到達しない。また、比較例1の場合、マイクロチップ40の被温度調節部は、目標温度の下限である50℃よりも低くなる。
これに対し、比較例1の場合、マイクロチップ40の被温度調節部は、目標温度の上限である70℃に到達しない。また、比較例1の場合、マイクロチップ40の被温度調節部は、目標温度の下限である50℃よりも低くなる。
図3(A)に示すように、第一温度調節ユニット10の温度調節部11とペルチェ素子部12とが接する位置を0とし、この位置から温度調節部11とマイクロチップ40とが接する位置までの距離をt1とし、外部雰囲気に接しているマイクロチップ40の温度調節部11とは反対側までの距離をt2とする。このとき、図3(B)に示すようにマイクロチップ40の被温度調節部では、ペルチェ素子部12に近い側ほど温度が高くなり、ペルチェ素子部12から遠い側ほど温度が低くなる。
特に、マイクロチップ40の第一温度調節ユニット10と反対側の面40bは、外部雰囲気に接している。そのため、マイクロチップ40の被温度調節部では、板厚方向に温度勾配が生じる。その結果、第一温度調節ユニット10の温度調節部11の温度が目標温度に到達しても、被温度調節部から外部雰囲気へ熱が放出され、被温度調節部は目標温度に到達しない。また、外部雰囲気に接しているマイクロチップ40の第一温度調節ユニット10と反対側の面40bでは、外部雰囲気との温度差が大きくなるほど、外部へ放出される熱が増大する。そのため、外部雰囲気が室温である場合、目標温度との差は、下限である50℃のときよりも上限である70℃のときの方が拡大する。すなわち、比較例1では、被温度調節部の目標温度が室温に比較して高くなるほど、温度の精密な制御が困難になる。
次に、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20を弾性体であるコイルばね14またはコイルばね24で支持する第1実施例の温度変化を検証した。ここでは、実験例1は、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20を支持する弾性体を省略した比較例2と比較した。
図4は、経過時間とマイクロチップ40の任意の被温度調節部における温度との関係を示す概略図である。図4に示すように、被温度調節部の温度は、55℃と94℃との間を繰り返し上昇および降下するように設定されている。このとき、温度制御装置1は、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20の温度調節部11または温度調節部21の温度を調節することにより、被温度調節部の温度を制御している。
第1実施例の温度制御装置1によって制御されたマイクロチップ40の被温度調節部の温度は、設定されている目標温度の上限である94℃と目標温度の下限である55℃との間で温度の上昇および降下を繰り返している。これにより、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20をコイルばね14またはコイルばね24で支持することにより、温度調節部11および温度調節部21はマイクロチップ40の被温度調節部に密着し、被温度調節部は迅速かつ精密に温度制御されていることが分かる。
これに対し、比較例2の場合、マイクロチップ40の被温度調節部は、目標温度の上限である94℃に到達しない。また、比較例1の場合、マイクロチップ40の被温度調節部は、目標温度の下限である55℃よりも低くなる。比較例2では、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20を支持する弾性体が設置されていない。そのため、第一温度調節ユニット10の温度調節部11および第二温度調節ユニット20の温度調節部21は、マイクロチップ40の被温度調節部に密着しない。その結果、温度調節部11および温度調節部21の温度が目標温度に到達しても、温度調節部11および温度調節部21から被温度調節部へ熱が伝わらず、被温度調節部は目標温度に到達しない。
第1実施例では、温度制御装置1はマイクロチップ40の被温度調節部を第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20により上方および下方から挟み込んでいる。そのため、マイクロチップ40の被温度調節部では、板厚方向において温度勾配が低減する。したがって、温度制御装置1は、マイクロチップ40の被温度調節部の温度を局所的に高精度に制御することができる。
また、第1実施例では、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20はそれぞれコイルばね14またはコイルばね24で支持されている。これにより、第一温度調節ユニット10の温度調節部11および第二温度調節ユニット20の温度調節部21は、マイクロチップ40の被温度調節部に密着する。したがって、温度制御装置1は、マイクロチップ40の被温度調節部の温度を局所的に高精度に制御することができる。
さらに、第1実施例では、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20は直接マイクロチップ40の被温度調節部に密着する。そのため、第一温度調節ユニット10または第二温度調節ユニット20との間にオイルなどは介在しない。したがって、取り扱いを容易にすることができる。
(変形例)
本発明の第1実施例による温度制御装置の変形例を図5または図6に示す。
第1実施例では、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20をそれぞれコイルばね14またはコイルばね24で支持する例について説明した。しかし、図5に示すように、第一温度調節ユニット10のみをコイルばね14で支持する構成としてもよい。また、図6に示すように、第二温度調節ユニット20のみをコイルばね24で支持する構成としてもよい。
本発明の第1実施例による温度制御装置の変形例を図5または図6に示す。
第1実施例では、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20をそれぞれコイルばね14またはコイルばね24で支持する例について説明した。しかし、図5に示すように、第一温度調節ユニット10のみをコイルばね14で支持する構成としてもよい。また、図6に示すように、第二温度調節ユニット20のみをコイルばね24で支持する構成としてもよい。
(第2実施例)
本発明の第2実施例による温度制御装置を図7に示す。なお、第1実施例と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第2実施例では、図7に示すように温度制御装置2は第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20を複数備えている。また、マイクロチップ41には、複数の被温度調節部が設定されている。第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20は、マイクロチップ41の複数の被温度調節部にそれぞれ独立して設置される。これにより、マイクロチップ41の複数の被温度調節部は、それぞれ独立して設置される第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20により独立して温度制御される。
本発明の第2実施例による温度制御装置を図7に示す。なお、第1実施例と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第2実施例では、図7に示すように温度制御装置2は第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20を複数備えている。また、マイクロチップ41には、複数の被温度調節部が設定されている。第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20は、マイクロチップ41の複数の被温度調節部にそれぞれ独立して設置される。これにより、マイクロチップ41の複数の被温度調節部は、それぞれ独立して設置される第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20により独立して温度制御される。
第2実施例では、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20は、それぞれ個別にコイルばね14またはコイルばね24で支持本体15または支持本体25に支持されている。図8に示すように、温度制御装置2の第一温度調節ユニット10にマイクロチップ41を搭載しないとき、各第一温度調節ユニット10の温度調節部11はマイクロチップ41側の接触面11aが同一平面状に位置しない。これは、温度調節部11およびペルチェ素子部12の寸法のばらつき、あるいは各第一温度調節ユニット10の温度調節部11の温度差による寸法の変化や変形などが原因となり、第一温度調節ユニット10の図8の上下方向の位置がずれたり、第一温度調節ユニット10が傾斜するためである。すなわち、第一温度調節ユニット10を複数設置する場合、各第一温度調節ユニット10の温度調節部11のマイクロチップ41側の接触面11aは、各部品の寸法および傾きの調整が困難なため、同一の平面上に配置することが困難である。
これに対し、第一温度調節ユニット10をそれぞれコイルばね14で支持することにより、第一温度調節ユニット10にマイクロチップ41を搭載したとき、各第一温度調節ユニット10の温度調節部11の位置のずれはコイルばね14が弾性変形することによって吸収する。その結果、各第一温度調節ユニット10の温度調節部11の接触面11aは、図7に示すように常にマイクロチップ41の第一温度調節ユニット10側の面41aに接する。これにより、各第一温度調節ユニット10の温度調節部11の接触面11aが同一平面上に位置していないときだけでなく、マイクロチップ41に反りが生じたり、マイクロチップ41が変形しているときでも、各第一温度調節ユニット10の温度調節部11はマイクロチップ41の一方の面41aに密着する。
また、第二温度調節ユニット20も、第一温度調節ユニット10と同様に個別にコイルばね24で支持されている。そのため、各第二温度調節ユニット20の温度調節部21は、マイクロチップ41の第一温度調節ユニット10とは反対側の面41bに密着する。
また、第二温度調節ユニット20も、第一温度調節ユニット10と同様に個別にコイルばね24で支持されている。そのため、各第二温度調節ユニット20の温度調節部21は、マイクロチップ41の第一温度調節ユニット10とは反対側の面41bに密着する。
第2実施例では、マイクロチップ41の複数の被温度調節部にはそれぞれ第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20が密着する。第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20は、それぞれコイルばね14またはコイルばね24によって独立して支持されている。これにより、各第一温度調節ユニット10または各第二温度調節ユニット20の寸法差もしくは傾斜、またはマイクロチップ41の反りもしくは寸法のばらつきなどに関わらず、第一温度調節ユニット10および第二温度調節ユニット20はマイクロチップ41の被温度調節部に密着する。したがって、被温度調節部の温度を高精度かつ局所的に制御することができる。
次に、上述の第2実施例による温度制御装置を用いた実験例について説明する。
(第1実験例)
第1実験例に用いるマイクロチップ50は、図9に示すように基板51を備えている。なお、基板51には、図示しないカバーを設置してもよい。基板51は、図9に示すように槽領域としての反応槽53および生成槽54と、管路55とを備えている。基板51は、例えばガラス、シリコン、セラミックス、金属、プラスチック、シリコンゴムなどのゴム、あるいはこれらの複合材料によって矩形状に形成されている。基板51には、例えばエッチング加工などにより、反応槽53、生成槽54および管路55が形成されている。
(第1実験例)
第1実験例に用いるマイクロチップ50は、図9に示すように基板51を備えている。なお、基板51には、図示しないカバーを設置してもよい。基板51は、図9に示すように槽領域としての反応槽53および生成槽54と、管路55とを備えている。基板51は、例えばガラス、シリコン、セラミックス、金属、プラスチック、シリコンゴムなどのゴム、あるいはこれらの複合材料によって矩形状に形成されている。基板51には、例えばエッチング加工などにより、反応槽53、生成槽54および管路55が形成されている。
反応槽53は、平面視において略矩形の凹状に形成されている。反応槽53には、注入された試料が蓄えられる。反応槽53では、蓄えられた試料が反応可能である。生成槽54は、反応槽53と同様に平面視において略矩形の凹状に形成されている。生成槽54は、反応槽53における反応によって生成した物質が蓄えられる。管路55は、反応槽53と生成槽54とを接続している。管路55は、反応槽53における反応によって生成した物質が生成槽54へ移動する。管路55から分岐する分岐管路56の端部には、開口部57が形成されている。開口部57からは、管路55において不要となる気体が外部へ排出される。
マイクロチップ50の下方には第一温度調節ユニット10が複数設置されている。また、マイクロチップ50の上方には第二温度調節ユニット20が複数設置されている。本実験例の場合、反応槽53の下方に第一温度調節ユニット10aが設置され、反応槽53の近傍における管路55の下方に第一温度調節ユニット10bが設置され、反応槽53と生成槽54との間における管路55の下方に第一温度調節ユニット10cが設置され、生成槽54の近傍における管路55の下方に第一温度調節ユニット10dが設置されている。また、反応槽53の上方に第二温度調節ユニット20aが設置され、反応槽53の近傍における管路55の上方に第二温度調節ユニット20bが設置され、反応槽53と生成槽54との間における管路55の上方に第二温度調節ユニット20cが設置され、生成槽54の近傍における管路55の上方に第二温度調節ユニット20dが設置されている。
これらマイクロチップ50において第一温度調節ユニット10a、第一温度調節ユニット10b、第一温度調節ユニット10cおよび第一温度調節ユニット10d、ならびに第二温度調節ユニット20a、第二温度調節ユニット20b、第二温度調節ユニット20cおよび第二温度調節ユニット20dによって温度調節される部位が被温度調節部である。第一温度調節ユニット10a、10b、10c、10dおよび第二温度調節ユニット20a、20b、20c、20dは、それぞれ個別にマイクロチップ50の被温度調節部の温度を調節する。
次に、上記の構成のマイクロチップ50を適用し、溶解度の差を利用して物質を生成する例を説明する。ここでは、石英ガラスで形成されたマイクロチップ50を適用して、エステル交換反応を実施する場合について説明する。
反応槽53には、プロピオン酸メチル(CH3CH2COOCH3)およびエタノール(CH3CH2OH)を注入した。また、反応槽53には、触媒としてp−トルエンスルホン酸を加えた。そして、第一温度調節ユニット10aおよび第二温度調節ユニット20a、第一温度調節ユニット10bおよび第二温度調節ユニット20b、ならびに第一温度調節ユニット10cおよび第二温度調節ユニット20cの各ペルチェ素子部12、22に通電し、それぞれ70℃まで加熱した。一方、第一温度調節ユニット10dおよび第二温度調節ユニット20dの各ペルチェ素子部12、22に通電し、20℃に制御した。これにより、プロピオン酸メチルとエタノールとを反応させた。その結果、生成槽54にはメタノール(CH3OH)が生成するとともに、反応槽53にはプロピオン酸エチル(CH3CH2COOCH2CH3)が生成した。
反応槽53には、プロピオン酸メチル(CH3CH2COOCH3)およびエタノール(CH3CH2OH)を注入した。また、反応槽53には、触媒としてp−トルエンスルホン酸を加えた。そして、第一温度調節ユニット10aおよび第二温度調節ユニット20a、第一温度調節ユニット10bおよび第二温度調節ユニット20b、ならびに第一温度調節ユニット10cおよび第二温度調節ユニット20cの各ペルチェ素子部12、22に通電し、それぞれ70℃まで加熱した。一方、第一温度調節ユニット10dおよび第二温度調節ユニット20dの各ペルチェ素子部12、22に通電し、20℃に制御した。これにより、プロピオン酸メチルとエタノールとを反応させた。その結果、生成槽54にはメタノール(CH3OH)が生成するとともに、反応槽53にはプロピオン酸エチル(CH3CH2COOCH2CH3)が生成した。
また、このマイクロチップ50を適用し、沸点の差を利用して物質を精製する例について説明する。ここでは、例えばシリコンによって形成されたマイクロチップ50を適用して、アルコールの分離を実施する場合について説明する。
あらかじめ開口部57は図示しない栓などにより塞いだ。反応槽53には、エタノール(CH3CH2OH)およびメトキシエタノール(CH3OCH2CH2OH)の混合物を注入した。そして、第一温度調節ユニット10aおよび第二温度調節ユニット20a、ならびに第一温度調節ユニット10bおよび第二温度調節ユニット20bの各ペルチェ素子部12、22に通電し、それぞれ100℃および80℃に加熱した。一方、第一温度調節ユニット10cおよび第二温度調節ユニット20c、ならびに第一温度調節ユニット10dおよび第二温度調節ユニット20dの各ペルチェ素子部12、22に通電し、いずれも10℃に制御した。その結果、生成槽54にはエタノールが分離され、反応槽53にはメトキシエタノールが分離された。
あらかじめ開口部57は図示しない栓などにより塞いだ。反応槽53には、エタノール(CH3CH2OH)およびメトキシエタノール(CH3OCH2CH2OH)の混合物を注入した。そして、第一温度調節ユニット10aおよび第二温度調節ユニット20a、ならびに第一温度調節ユニット10bおよび第二温度調節ユニット20bの各ペルチェ素子部12、22に通電し、それぞれ100℃および80℃に加熱した。一方、第一温度調節ユニット10cおよび第二温度調節ユニット20c、ならびに第一温度調節ユニット10dおよび第二温度調節ユニット20dの各ペルチェ素子部12、22に通電し、いずれも10℃に制御した。その結果、生成槽54にはエタノールが分離され、反応槽53にはメトキシエタノールが分離された。
以上のように、第1実験例では、マイクロチップ50の反応槽53、生成槽54および管路55を任意に温度制御できることが検証された。また、第1実施例では、マイクロチップ50を温度制御することにより、化学反応および物質の精製が行えることが検証された。
(第2実験例)
第2実験例では、図10に示すようにマイクロチップ60は、三つの貯留槽61、62、63と、各貯留槽61、62、63に連通する三本の管路64、65、66とを有している。第2実験例に適用されるマイクロチップ60は、パラフィンバルブ71、72、73を有している。パラフィンバルブ71、72、73は、各管路64、65、66の途中にそれぞれ設置されている。パラフィンバルブ71、72、73は、例えば融点が50℃前後のパラフィンで形成されている。そのため、パラフィンバルブ71、72、73の近傍が室温のとき、パラフィンバルブ71、72、73は固形となって管路64、65、66を閉塞している。一方、パラフィンバルブ71、72、73を融点以上に加熱すると、パラフィンバルブ71、72、73は溶解し、管路64、65、66を開放する。管路64、65、66には、それぞれ途中に拡大部67、68、69が形成されている。三つの貯留槽61、62、63には、図10(A)に示すようにそれぞれ任意の試料が蓄えられている。
第2実験例では、図10に示すようにマイクロチップ60は、三つの貯留槽61、62、63と、各貯留槽61、62、63に連通する三本の管路64、65、66とを有している。第2実験例に適用されるマイクロチップ60は、パラフィンバルブ71、72、73を有している。パラフィンバルブ71、72、73は、各管路64、65、66の途中にそれぞれ設置されている。パラフィンバルブ71、72、73は、例えば融点が50℃前後のパラフィンで形成されている。そのため、パラフィンバルブ71、72、73の近傍が室温のとき、パラフィンバルブ71、72、73は固形となって管路64、65、66を閉塞している。一方、パラフィンバルブ71、72、73を融点以上に加熱すると、パラフィンバルブ71、72、73は溶解し、管路64、65、66を開放する。管路64、65、66には、それぞれ途中に拡大部67、68、69が形成されている。三つの貯留槽61、62、63には、図10(A)に示すようにそれぞれ任意の試料が蓄えられている。
パラフィンバルブ71、72、73の下方には、第一温度調節ユニット10e、10f、10gがそれぞれ設置されている。また、パラフィンバルブ71、72、73の上方には、第二温度調節ユニット20e、20f、20gがそれぞれ設置されている。これにより、第一温度調節ユニット10eおよび第二温度調節ユニット20eは、マイクロチップ60においてパラフィンバルブ71に接し、パラフィンバルブ71の温度を調節する。同様に、第一温度調節ユニット10fおよび第二温度調節ユニット20fはパラフィンバルブ72の温度を調節し、第一温度調節ユニット10gおよび第二温度調節ユニット20gはパラフィンバルブ73の温度を調節する。すなわち、パラフィンバルブ71、72、73は被温度調節部となる。
第一温度調節ユニット10eおよび第二温度調節ユニット20e、第一温度調節ユニット10fおよび第二温度調節ユニット20f、ならびに第一温度調節ユニット10gおよび第二温度調節ユニット20gの各ペルチェ素子部12、22への通電を停止しているとき、パラフィンバルブ71、パラフィンバルブ72およびパラフィンバルブ73は室温に近似する温度となっている。そのため、図10(A)に示すように、パラフィンバルブ71は管路64を閉塞し、パラフィンバルブ72は管路65を閉塞し、パラフィンバルブ73は管路66を閉塞している。
ここで貯留槽62に連通する管路65を開放するとき、パラフィンバルブ72の温度を調節する第一温度調節ユニット10fおよび第二温度調節ユニット20fの各ペルチェ素子部12、22に通電し、パラフィンバルブ72を加熱した。一方、パラフィンバルブ71の温度を調節する第一温度調節ユニット10eおよび第二温度調節ユニット20eの各ペルチェ素子部12、22、およびパラフィンバルブ73の温度を調節する第一温度調節ユニット10gおよび第二温度調節ユニット20gの各ペルチェ素子部12、22にも逆方向に通電し、パラフィンバルブ71およびパラフィンバルブ73を冷却した。マイクロチップ60のように、微小なチップの場合、管路64と管路65および管路65と管路66との距離は数mm程度である。そのため、管路65のパラフィンバルブ72を加熱したとき、熱伝導により隣接するパラフィンバルブ71およびパラフィンバルブ73も加熱され、パラフィンバルブ71およびパラフィンバルブ73は溶融するおそれがある。そこで、第2実験例では、第一温度調節ユニット10fおよび第二温度調節ユニット20fによりパラフィンバルブ72が加熱されるとき、隣接するパラフィンバルブ71およびパラフィンバルブ73は、第一温度調節ユニット10eおよび第二温度調節ユニット20e、または第一温度調節ユニット10gおよび第二温度調節ユニット20gにより融点以下に冷却した。
パラフィンバルブ72を融点以上に加熱すると、パラフィンバルブ72は溶融し、図10に示すように管路65は開放した。管路65において溶融したパラフィンは、拡大部68で捕集した。一方、管路64のパラフィンバルブ71および管路66のパラフィンバルブ73は冷却されるため、融点以上の温度に達しない。そのため、管路64および管路66は閉塞状態を維持した。したがって、管路65のみが開放され、貯留槽62に蓄えられた試料は管路65を通して図示しない所定の部位へ供給された。
以上のように、第2実施例では、各管路64、65、66の各パラフィンバルブ71、72、73に、それぞれ第一温度調節ユニット10eおよび第二温度調節ユニット20e、第一温度調節ユニット10fおよび第二温度調節ユニット20f、ならびに第一温度調節ユニット10gおよび第二温度調節ユニット20gが接している。そのため、各パラフィンバルブ71、72、73は個別に高精度に温度制御された。したがって、マイクロチップ60のように各管路64、65、66の間隔が小さなときでも、各パラフィンバルブ71、72、73の開閉を精密に制御することができた。
1、2 温度制御装置、10、10a〜10g 第一温度調節ユニット、11、21 温度調節部、12、22 ペルチェ素子部、13、23 ヒートシンク、14 コイルばね(第一弾性体)、20、20a〜20g 第二温度調節ユニット、24 コイルばね(第二弾性体)、40、41、50、60 マイクロチップ、40a、41a 面、40b、41b 面、53 反応槽(被温度調節部)、54 生成槽(被温度調節部)、55 管路(被温度調節部)、71、72、73 パラフィンバルブ(被温度調節部)
Claims (5)
- 単数または複数の被温度調節部を有する薄板状のマイクロチップを加熱または冷却し、前記被温度調節部の温度を制御するマイクロチップ用の温度制御装置であって、
前記マイクロチップの一方の面側から前記被温度調節部に接し、前記被温度調節部を加熱または冷却する第一温度調節ユニットと、
前記マイクロチップの他方の面側から前記被温度調節部に接し、前記マイクロチップを挟んで前記第一温度調節ユニットとは反対側から前記被温度調節部を加熱または冷却する第二温度調節ユニットと、
を備えることを特徴とするマイクロチップ用の温度制御装置。 - 前記第一温度調節ユニットを少なくとも前記マイクロチップの板厚方向へ移動可能に支持するとともに前記マイクロチップへ押し付ける第一弾性体を備えることを特徴とする請求項1記載のマイクロチップ用の温度制御装置。
- 前記第二温度調節ユニットを少なくとも前記マイクロチップの板厚方向へ移動可能に支持するとともに前記マイクロチップへ押し付ける第二弾性体を備えることを特徴とする請求項1または2記載のマイクロチップ用の温度制御装置。
- 前記第一温度調節ユニットおよび前記第二温度調節ユニットは、それぞれ熱伝導体から形成され前記被温度調節部に接する温度調節部、前記温度調節部の前記マイクロチップとは反対側に設置され通電することにより前記温度調節部を加熱または冷却するペルチェ素子部、および前記ペルチェ素子部の前記温度調節部とは反対側に設置され前記ペルチェ素子部の加熱または冷却を補助するヒートシンクを有していることを特徴とする請求項1、2または3記載のマイクロチップ用の温度制御装置。
- 前記マイクロチップは複数の前記被温度調節部を有し、
前記第一温度調節ユニットおよび前記第二温度調節ユニットは複数の前記被温度調節部にそれぞれ独立して複数設置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載のマイクロチップ用の温度制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005046861A JP2006234467A (ja) | 2005-02-23 | 2005-02-23 | マイクロチップ用の温度制御装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2005
- 2005-02-23 JP JP2005046861A patent/JP2006234467A/ja active Pending
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