はじめに、本願の開示する技術の一実施形態に係る飛翔機の構成を詳細に説明する。
図1~図4に示されるように、本実施形態に係る飛翔機10は、機体11を備える。この機体11は、フレーム20と、複数の回転翼40A~40Dと、複数のモータ41A~41Dと、一対の車輪50を有する。
各図に示される矢印FR、矢印UP、矢印RHは、機体11の前後方向前側、機体11の上下方向上側、機体11の左右方向右側をそれぞれ示している。機体11の前側は、「機体の水平方向の第一側」の一例であり、機体11の後側は、「機体の水平方向の第一側と反対の第二側」の一例である。機体11の左右方向は、「機体の第一側及び第二側に沿う方向」の一例であり、機体11の前後方向は、「機体の第一側及び第二側が対向する方向」の一例である。
フレーム20は、内側フレーム21と、外側フレーム31とを有する。内側フレーム21は、上面視で枠状を成している。この内側フレーム21は、機体11の前後方向に延びる一対の前後連結メンバ22と、機体11の左右方向に延びる一対の左右連結メンバ23とを有する。
一対の左右連結メンバ23の左右両端部は、一対の前後連結メンバ22に連結されている。一対の左右連結メンバ23は、一対の前後連結メンバ22との連結部で一対の前後連結メンバ22と交差している。一対の左右連結メンバ23と一対の前後連結メンバ22との連結部は、交差部24A~24Dに相当する。内側フレーム21には、合計で四か所の交差部24A~24Dが形成されている。この複数の交差部24A~24Dは、機体11の前後左右に並んでいる。
外側フレーム31は、機体11の左右方向を軸方向として延びる複数の連結ロッド32A~32Fと、複数の連結ロッド32A~32Fの軸方向の両端部にそれぞれ接続された一対の円環部材33とを有する筒形に形成されている。つまり、このフレーム20は、機体11の左右方向を軸方向とする筒形である。一対の円環部材33は、機体11の左右方向周りに円環状を成している。一対の円環部材33の内側には、複数のスポーク34A~34Fが設けられている。複数のスポーク34A~34Fは、円環部材33の中心部を中心にして放射状に形成されている。
外側フレーム31には、機体11の左右方向に延びる支持ロッド36と、この支持ロッド36に回転可能に支持された回転部材37とが設けられている。支持ロッド36は、一対の円環部材33の中心部(複数のスポーク34A~34Fの中心部)の上方に配置されている。この支持ロッド36は、複数のスポーク34A~34Fのうち上側の一対のスポーク34C、34Dの間に配置され、この上側の一対のスポーク34C、34Dに固定されている。支持ロッド36の両端部は、一対の円環部材33の内側を貫通しており、一対の円環部材33よりも機体11の左右両側に突出している。
回転部材37は、一対の側方ロッド38と、一対の側方ロッド38の先端部を連結する中央ロッド39とを有する矩形アーチ状に形成されている。一対の側方ロッド38は、一対の円環部材33よりも機体11の左右両側に配置されており、一対の円環部材33の径方向に延びている。一対の側方ロッド38の基端部は、支持ロッド36の左右両端部にそれぞれ回動可能に連結されている。一対の側方ロッド38は、中央ロッド39が一対の円環部材33の径方向外側を周回し得る長さに形成されている。中央ロッド39には、給電用及び信号送受信用のケーブルや、飛翔機10の落下防止や移動範囲を制限するためのワイヤ等が接続される。
複数の回転翼40A~40Dは、上述の四か所の交差部24A~24Dに二つずつ上下に並んで配置されている。すなわち、右前側の交差部24Aには、右前側の回転翼40Aが上下に並んで配置されており、左前側の交差部24Bには、左前側の回転翼40Bが上下に並んで配置されている。また、右後側の交差部24Cには、右後側の回転翼40Cが上下に並んで配置されており、左後側の交差部24Dには、左後側の回転翼40Dが上下に並んで配置されている。
複数の回転翼40A~40Dが、四か所の交差部24A~24Dに二つずつ上下に並んで配置されることにより、右前側の回転翼40A、左前側の回転翼40B、右後側の回転翼40C、及び、左後側の回転翼40Dは、機体11の前後左右に並んでいる。この複数の回転翼40A~40Dは、いずれも機体11の上下方向を軸方向として配置されている。
前側の回転翼40A、40Bと後側の回転翼40C、40Dとは、前後に対称に配置されており、右側の回転翼40A、40Cと左側の回転翼40C、40Dとは、左右に対称に配置されている。複数の回転翼40A~40Dは、機体11の重心を中心に点対称に配置されている。機体11の重心は、機体11の上下方向に延びるヨー軸Ay上に位置する。
複数のモータ41A~41Dは、上述の四か所の交差部24A~24Dに二つずつ上下に並んで固定されている。この複数のモータ41A~41Dは、いずれも機体11の上下方向を軸方向として配置されている。複数のモータ41A~41Dの出力軸には、上述の複数の回転翼40A~40Dがそれぞれ固定されている。複数のモータ41A~41Dは、複数の回転翼40A~40Dをそれぞれ回転させるように作動する。この複数のモータ41A~41Dは、複数の回転翼40A~40Dの回転数を独立して調節可能となっている。
右前側の回転翼40A及び左後側の回転翼40Dは、同じ方向に回転し、左前側の回転翼40B及び右後側の回転翼40Cは、右前側の回転翼40A及び左後側の回転翼40Dの回転方向と反対方向に回転する。つまり、複数の回転翼40A~40Dのうち機体11の前後方向又は左右方向に隣り合う回転翼は、互いに異なる方向に回転する。
一対の車輪50は、機体11の左右方向に対向して配置されている。各車輪50は、円環部材33に沿う円環状に形成されている。一対の車輪50は、それぞれ円環部材33に装着されることにより全周に亘って円環部材33に回転可能に支持されている。この一対の車輪50は、円環部材33に支持されることにより、複数の回転翼40A~40Dの左右両側に配置されている。この一対の車輪50の前端部は、機体11の側面視で複数の回転翼40A~40Dの前方に突出している。後に詳述するように、一対の車輪50は、壁面を走行し、一対の車輪50の前端部は、壁面に接触する接触部51に相当する。
また、機体11は、上記構成に加えて、一対の垂直板60A、60Bと、一対の駆動部61A、61Bを備える(図5も参照)。右側の垂直板60Aは、右後側の回転翼40Cの下方に配置されており、左側の垂直板60Bは、左後側の回転翼40Dの下方に配置されている。右側の垂直板60A及び左側の垂直板60Bは、機体11のヨー軸Ayに対して機体11の左右方向にそれぞれずれて配置されている。右側の駆動部61Aは、右側の垂直板60Aを前後方向に傾斜させると共に前後方向にスライドさせるように作動し、左側の駆動部61Bは、左側の垂直板60Bを前後方向に傾斜させると共に前後方向にスライドさせるように作動する。
ここで、図5には、右側の垂直板60A及び駆動部61Aが二面図(上面図及び左側面図)で示されている。図5に示されるように、垂直板60Aは、駆動部61Aの左右方向に延びる平板状に形成されている。駆動部61Aは、支持部材62と、ボールネジ機構66と、スライド用モータ70と、傾斜用モータ72と、ガイドレール74とを有する。
支持部材62は、駆動部61Aの前後方向に対向する一対の対向壁63と、一対の対向壁63を連結する側壁部64とを有する。ボールネジ機構66は、ネジ軸67と、ナット68とを有する。ネジ軸67は、駆動部61Aの前後方向に延びており、一対の対向壁63に回転可能に支持されている。ナット68は、ネジ軸67に螺合されている。スライド用モータ70は、一例として、後側の対向壁63に固定されている。このスライド用モータ70の出力軸71には、ネジ軸67が一体に設けられている。
傾斜用モータ72は、ナット68に固定されている。側壁部64には、駆動部61Aの前後方向に延びるスリット65が形成されており、傾斜用モータ72の出力軸73は、スリット65に挿入されている。ガイドレール74は、側壁部64に沿って設けられており、垂直板60Aは、側壁部64とガイドレール74との間に配置されている。垂直板60Aは、通常、垂直に配置される。
垂直板60Aの上端部には、傾斜用モータ72の出力軸73が固定されている。出力軸73の先端部は、ストッパ部材75等によりガイドレール74に移動可能に連結されている。また、出力軸73は、側壁部64及びガイドレール74に回転可能に支持されている。垂直板60Aは、出力軸73に固定されることにより、支持部材62に前後方向に回転可能かつ前後方向にスライド可能に支持されている。
そして、この駆動部61Aでは、スライド用モータ70が作動し、出力軸71が第一の方向に回転すると、ネジ軸67の回転に伴い、ナット68がネジ軸67に沿って後側にスライドする。また、スライド用モータ70が作動し、出力軸71が第二の方向に回転すると、ネジ軸67の回転に伴い、ナット68がネジ軸67に沿って前側にスライドする。傾斜用モータ72及び垂直板60Aは、ナット68と共に前後方向にスライドする。
また、この駆動部61Aでは、傾斜用モータ72が作動し、出力軸73が第一の方向に回転すると、垂直板60Aが後側に傾斜し、出力軸73が第二の方向に回転すると、垂直板60Aが前側に傾斜する。本実施形態において、傾斜用モータ72の出力軸73を支点に垂直板60Aの下端部が後側へ移動するように垂直板60Aが傾斜することは、垂直板60Aが後側へ傾斜することに相当する。また、傾斜用モータ72の出力軸73を支点に垂直板60Aの下端部が前側へ移動するように垂直板60Aが傾斜することは、垂直板60Aが前側へ傾斜することに相当する。
図1~図4に示されるように、左側の垂直板60B及び駆動部61Bの構成及び配置は、右側の垂直板60A及び駆動部61Aと左右対称であり、その説明を省略する。この右側の垂直板60A及び左側の垂直板60Bは、独立して前後方向に傾斜可能、かつ、独立して前後方向にスライド可能となっている。一例として、図6には、左側の垂直板60Bが垂直な状態から後側に傾斜する様子が示されている。また、図7には、左側の垂直板60Bが後側に傾斜した状態で前端位置から後側にスライドする様子が示されている。
図8に示されるように、前側の連結ロッド32Aは、機体11の前側に配置されており、後側の連結ロッド32Bは、機体11の後側に配置されている。連結ロッド32A、34Bは、いずれも機体11の左右方向に貫通するパイプ状に形成されている。前側の連結ロッド32Aは、「機体の第一側に沿って延びる第一パイプ」の一例であり、後側の連結ロッド32Bは、「機体の第二側に沿って延びる第二パイプ」の一例である。
前側の連結ロッド32Aの付近を通る横風、すなわち、機体11の前側に沿って機体11の左右方向に吹く第一横風W1は、前側の連結ロッド32Aの内側を通過する。一方、後側の連結ロッド32Bの付近を通る横風、すなわち、機体11の後側に沿って機体11の左右方向に吹く第二横風W2は、後側の連結ロッド32Bの内側を通過する。第一横風W1及び第二横風W2は、それぞれ機体11の左側から右側に吹く場合と、機体11の右側から左側に吹く場合がある。
前側の連結ロッド32Aの内側には、第一風向風速計91が配置されており、後側の連結ロッド32Bの内側には、第二風向風速計92が配置されている。第一風向風速計91は、前側の連結ロッド32Aの内側を通過する第一横風W1の風向及び風速に応じた出力をするように構成されている。同様に、第二風向風速計92は、後側の連結ロッド32Bの内側を通過する第二横風W2の風向及び風速に応じた出力をするように構成されている。一例として、第一風向風速計91及び第二風向風速計92は、それぞれ回転方向と回転速度を検出するロータリーエンコーダ93と、ロータリーエンコーダ93に取り付けられたプロペラ94とを有している。
前側の連結ロッド32Aには、第一絞り部35Aが設けられ、後側の連結ロッド32Bには、第二絞り部35Bが設けられている。第一絞り部35Aは、前側の連結ロッド32Aの軸方向の中央部に位置し、第二絞り部35Bは、後側の連結ロッド32Bの軸方向の中央部に位置する。第一絞り部35Aは、前側の連結ロッド32Aの内径よりも小さい内径を有する筒状であり、前側の連結ロッド32Aの内側に設けられている。第二絞り部35Bは、後側の連結ロッド32Bの内径よりも小さい内径を有する筒状であり、後側の連結ロッド32Bの内側に設けられている。
前側の連結ロッド32Aの内側に第一絞り部35Aが設けられることにより、前側の連結ロッド32Aの内側の流路は、局所的に狭くなっている。同様に、後側の連結ロッド32Bの内側に第二絞り部35Bが設けられることにより、後側の連結ロッド32Bの内側の流路は、局所的に狭くなっている。第一風向風速計91は、第一絞り部35Aの内側に配置されており、第二風向風速計92は、第二絞り部35Bの内側に配置されている。
図9に示されるように、本実施形態に係る飛翔機10は、上記構成に加えて、一対の接触センサ81と、複数のカメラ84と、バッテリ85と、制御部86とを備える。
一対の接触センサ81は、一対の車輪50の前端部である接触部51が前方の壁面に接触したことを検出するためものである。接触センサ81は、接触部51が前方の壁面に接触したことを検出した場合に、接触検出信号を制御部86に出力する。接触センサ81には、例えば、歪ゲージが適用される。接触センサ81に歪ゲージが適用された場合、接触センサ81は、接触部51の近傍位置、例えば、前側のスポーク34Aの前端部(図1参照)に設置される。
複数のカメラ84は、飛翔機10の前方を撮影するためのものであり、機体11の左右両側に前方を向いて配置されている。複数のカメラ84は、一例として、支持ロッド36の中央部と両端部(図1参照)にそれぞれ固定されている。
制御部86は、コンピュータの一例であり、CPU(Central Processing Unit)121、ROM(Read Only Memory)122、RAM(Random Access Memory)123、及び、ストレージ124を有する。CPU121、ROM122、RAM123、及び、ストレージ124は、相互に通信可能に接続されている。ROM122又はストレージ124には、プログラム125が記憶されている。CPU121は、中央演算処理ユニットであり、ROM122又はストレージ124に記憶されているプログラム125を読み出し、このプログラム125をRAM123に展開して実行する。
この制御部86は、一対の接触センサ81、複数のカメラ84、複数のモータ(飛翔用モータ)41A~41D、一対のスライド用モータ70、及び、一対の傾斜用モータ72と電気的に接続されている。また、この制御部86は、操作機87からの操作信号を受信可能に構成されている。この制御部86の動作については、後述する。
バッテリ85は、一対の接触センサ81、複数のカメラ84、複数のモータ41A~41D、一対のスライド用モータ70、一対の傾斜用モータ72、及び、制御部86に給電可能に構成されている。なお、制御部86及びバッテリ85は、機体11に搭載されても良く、また、操作者の近くに設置される操作装置に搭載されても良い。制御部86及びバッテリ85が操作者の近くに設置される操作装置に搭載される場合、制御部86及びバッテリ85は、機体11に搭載された中継基板に例えばケーブル等を介して電気的に接続される。
次に、本実施形態に係る飛翔機10の使用方法の一例と問題点について説明する。
図10には、本実施形態に係る飛翔機10の使用方法の一例として、図1の飛翔機10を用いて橋脚101を点検する様子の一例が示されている。なお、図10には、飛翔機10の詳細な構造が示されていないので、以下の説明において、飛翔機10の詳細な構造については、図1~図9を適宜参照することとする。
図10に示されるように、本実施形態に係る飛翔機10の使用方法では、一例として、橋100に設けられた橋脚101の垂直な壁面102に向けて飛翔機10が飛翔し、一対の車輪50を壁面102に接触させて飛翔機10が壁面102を移動する。本実施形態では、一例として、制御部86及びバッテリ85が橋桁103の上に置かれており、制御部86及びバッテリ85と機体11とは、ケーブル88を介して接続されている。
この飛翔機10は、操縦者による操作機87の操作に応じて飛翔する。飛翔機10が壁面102を移動する際に、例えば、複数のカメラ84で壁面102が撮影される。このように複数のカメラ84で壁面102を撮影することにより、橋脚101の点検が行われる。
ところで、上述の橋脚101の点検の際に、次のような問題が生じることがある。すなわち、橋脚101の壁面102に機体11が接触しながら飛翔機10が移動(飛翔)しているときに横風が吹くと、一般的に壁面102の付近では風速が低く、壁面102から離れるに従って風速が高くなる傾向にある。このような横風を機体11が受けると、この横風によって機体11のヨー軸周りに回転モーメントが作用し、機体11が壁面102から離れる虞がある。
また、遠隔目視で飛翔機10を操作する操縦者は横風で機体11が壁面102から離れそうになることの予測が難しく、機体11が壁面102から離れた後に機体11を壁面102に接触した状態に戻す操作をする。一般的に、このような操作には高度な操縦技術が必要となる。したがって、横風の強さ(風速)に応じて機体11のヨー軸周りの回転を制御して機体11が壁面102から離れないようにする技術が求められる。
このとき、できるだけ機体11の消費電力を抑える必要がある。なぜなら、機体11が壁面102から離れないような飛翔制御時は機体11の推力を上げる必要があり、消費電力が増大するため、バッテリ85を使用する飛翔機10では、飛翔時間が短くなる問題が発生するからである。したがって、消費電力を抑えつつ、機体11が壁面102から離れることを抑制できるようにすることが求められる。
次に、本実施形態に係る飛翔機10の機体11が横風を受けた場合に機体11のヨー軸周りに作用する回転モーメントを横風のパターン毎に説明する。
上述のように、機体11が壁面102に接触しながら飛翔機10が移動(飛翔)しているときに機体11が横風を受けると、この横風によって機体11のヨー軸周りに回転モーメントが作用する。図11の(A)~(D)には、図1の機体11が横風を受けた場合に機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMが横風のパターン毎に示されている。図11の(A)~(D)は、いずれも平面図である。
図11の(A)では、機体11の前側が受ける第一横風W1及び機体11の後側が受ける第二横風W2は、同じ向きであり、いずれも機体11の左側から吹いている。第二横風W2の風速Vrは、第一横風W1の風速Vfよりも高い。このような横風のパターンの場合、機体11には、ヨー軸Ay周りに上面視で反時計回りの回転モーメントMが作用する。したがって、この場合には、機体11の左前側に剥離力Fが作用し、機体11が上面視で反時計回りに回転して壁面102から離れる虞がある。
図11の(B)では、機体11の前側が受ける第一横風W1及び機体11の後側が受ける第二横風W2は、同じ向きであり、いずれも機体11の右側から吹いている。第二横風W2の風速Vrは、第一横風W1の風速Vfよりも高い。このような横風のパターンの場合、機体11には、ヨー軸Ay周りに上面視で時計回りの回転モーメントMが作用する。したがって、この場合には、機体11の右前側に剥離力Fが作用し、機体11が上面視で時計回りに回転して壁面102から離れる虞がある。
図11の(C)では、機体11の前側が受ける第一横風W1及び機体11の後側が受ける第二横風W2は、異なる向きであり、第一横風W1は、機体11の右側から吹いており、第二横風W2は、機体11の左側から吹いている。第二横風W2の風速Vrは、第一横風W1の風速Vfよりも高い。このような横風のパターンの場合、機体11には、ヨー軸Ay周りに上面視で反時計回りの回転モーメントMが作用する。したがって、この場合には、機体11の左前側に剥離力Fが作用し、機体11が上面視で反時計回りに回転して壁面102から離れる虞がある。
図11の(D)では、機体11の前側が受ける第一横風W1及び機体11の後側が受ける第二横風W2は、異なる向きであり、第一横風W1は、機体11の左側から吹いており、第二横風W2は、機体11の右側から吹いている。第二横風W2の風速Vrは、第一横風W1の風速Vfよりも高い。このような横風のパターンの場合、機体11には、ヨー軸Ay周りに上面視で時計回りの回転モーメントMが作用する。したがって、この場合には、機体11の右前側に剥離力Fが作用し、機体11が上面視で時計回りに回転して壁面102から離れる虞がある。
次に、制御部86に予め記憶される、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMとの関係を説明する。
制御部86は、後述するように、機体11が壁面102に接触している場合に、横風によって機体11のヨー軸Ay周りに回転モーメントMが作用するときには、この回転モーメントMが低減される(打ち消される)ように、機体11を制御する。このように回転モーメントMが低減される制御を行うために、制御部86には、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMとの関係が予め記憶される。
ここで、機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMは、機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルク、又は、機体11に作用する剥離力に比例する。本実施形態では、機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMの代わりに、機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルク、又は、機体11に作用する剥離力を用いる。以下、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルクとの関係、及び、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11に作用する剥離力との関係について順に説明する。
第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルクとの関係は、例えば、以下の要領で得られる。すなわち、図12に示されるように、機体11のヨー軸Ay上に配置されたトルク計110をヨー軸Ayに沿って延びる棒材111を介して機体11の重心に接続する。続いて、トルク計110が接続された機体11に対し、図13に示されるように、送風機112から横風Wを供給する。そして、第一横風W1の風向及び風速を第一風向風速計91で計測し、第二横風W2の風向及び風速を第二風向風速計92で計測する。また、このとき、機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルクを図12に示されるトルク計110で計測する。
以上の計測を第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速を異ならせて複数回行う。送風機112から機体11の右側に横風を供給した場合の計測結果と、送風機112から機体11の左側に横風を供給した場合の計測結果を同じとみなし、どちらか一方の計測は省略してもよい。
そして、複数の計測の結果から、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速Vf、Vrと機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルクTとの関係式である式(1)及び式(2)が得られる。式(1)は第一横風W1及び第二横風W2が同じ向きの場合であり、式(2)は第一横風W1及び第二横風W2が異なる向きの場合である。
T=func1(Vf,Vr)・・・(1)
T=func2(Vf,Vr)・・・(2)
一方、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11に作用する剥離力との関係は、例えば、以下の要領で得られる。すなわち、図14に示されるように、機体11と壁面102との間にフォースゲージ114を接続する。このとき、フォースゲージ114は、機体11の左右方向のどちらか一方側に接続する。続いて、送風機112を用い、機体11に対し、送風機112から横風Wを供給する。そして、第一横風W1の風向及び風速を第一風向風速計91で計測し、第二横風W2の風向及び風速を第二風向風速計92で計測する。また、このとき、機体11に作用する剥離力Fをフォースゲージ114で計測する。
以上の計測を第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速を異ならせて複数回行う。送風機112から機体11の右側に横風を供給した場合の計測結果と、送風機112から機体11の左側に横風を供給した場合の計測結果を同じとみなし、どちらか一方の計測は省略してもよい。
そして、複数の計測の結果から、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速Vf、Vrと機体11に作用する剥離力Fとの関係式である式(3)及び式(4)が得られる。式(3)は第一横風W1及び第二横風W2が同じ向きの場合であり、式(4)は第一横風W1及び第二横風W2が異なる向きの場合である。
F=func1(Vf,Vr)・・・(3)
F=func2(Vf,Vr)・・・(4)
そして、制御部86には、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速Vf、Vrと機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMとの関係として、上述の式(1)及び式(2)、又は、式(3)及び式(4)が記憶される。
次に、本実施形態に係る飛翔機10の制御方法を説明する。
機体11が壁面102に接触していることが接触センサ81によって検出されるか、又は、操作機87において壁面接触維持モードが選択される操作が行われることにより、制御部86は、壁面接触維持モードに移行する。制御部86は、壁面接触維持モードになると、以下のステップS1~ステップS4を実行する。図15には、ステップS1~ステップS4が示されている。
ステップS1では、制御部86が、第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力を取得する。つまり、機体11が壁面102に接触しているときに、機体11の前側に沿って吹く第一横風W1は、前側の連結ロッド32Aの内側を通過し、機体11の後側に沿って吹く第二横風W2は、後側の連結ロッド32Bの内側を通過する。前側の連結ロッド32Aの内側を通過する第一横風W1の風向及び風速は、第一風向風速計91で計測され、後側の連結ロッド32Bの内側を通過する第二横風W2の風向及び風速は、第二風向風速計92で計測される。第一風向風速計91は、第一横風W1の風向及び風速に応じた出力をし、第二風向風速計92は、第二横風W2の風向及び風速に応じた出力をする。第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力は、制御部86によって取得される。
ステップS2では、制御部86が、機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMを推定する。つまり、制御部86には、上述の通り、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速Vf、Vrと機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMとの関係が予め記憶されている。そして、制御部86は、予め記憶した関係に基づいて、上述の第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力から、機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMを推定する。具体的には、制御部86は、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速Vf、Vrと機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルクTとの関係式である式(1)及び式(2)を予め記憶している場合には、トルクTを算出する。一方、制御部86は、第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速Vf、Vrと剥離力Fとの関係である式(3)及び式(4)を予め記憶している場合には、剥離力Fを算出する。
ステップS3では、制御部86が、回転モーメントMを低減するための機体11の制御量を計算する。つまり、制御部86には、回転モーメントMと、その回転モーメントMを打ち消す機体11の制御量との関係が予め記憶される。そして、制御部86は、予め記憶した回転モーメントMと機体11の制御量との関係に基づいて、上述の回転モーメントMの推定結果から、機体11の制御量を計算する。機体11の制御量は、例えば、以下に説明するように、複数の回転翼40A~40Dの回転数、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度、及び、一対の垂直板60A、60Bのスライド距離のいずれかに相当する。
ステップS4では、制御部86が、回転モーメントMが低減されるように、機体11を制御する。つまり、制御部86は、ステップS3で計算した制御量になるように機体11を制御する。以下、機体11の制御量として、複数の回転翼40A~40Dの回転数を調節する場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度を調節する場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度及びスライド距離を調節する場合に分けて説明する。
(第一制御例)
第一制御例では、機体11の制御量として、複数の回転翼40A~40Dの回転数を調節する。すなわち、制御部86は、回転モーメントMが低減されるように、第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力に基づいて、複数のモータ41A~41Dを制御して複数の回転翼40A~40Dの回転数を調節する。
以下では、一例として、複数の回転翼40A~40Dのうち、第一の対角線上にある一対の回転翼の回転数を維持したまま、第二の対角線上にある一対の回転翼の一方の回転数を上げて他方の回転数を下げる。制御部86には、回転数を上げる方の回転翼の回転数及び回転数を下げる方の回転翼の回転数と、横風により機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントとの関係が予め記憶される。
制御部86が第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルクTとの関係式である式(1)及び式(2)を予め記憶している場合、式(5)及び式(6)が制御部86に予め記憶される。式(5)及び(6)において、N1は回転数を上げる方の回転翼の回転数、N2は回転数を下げる方の回転翼の回転数、N0は回転数をN1又はN2に変化させる前の回転数、α1、α2は予め得られる定数である。
N1=N0+α1×T・・・(5)
N2=N0+α2×T・・・(6)
一方、制御部86が第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11に作用する剥離力Fとの関係式である式(3)及び式(4)を予め記憶している場合、式(7)及び式(8)が制御部86に予め記憶される。式(7)及び式(8)において、N1は回転数を上げる方の回転翼の回転数、N2は回転数を下げる方の回転翼の回転数、N0は回転数をN1又はN2に変化させる前の回転数、α3、α4は予め得られる定数である。
N1=N0+α3×F・・・(7)
N2=N0+α4×F・・・(8)
そして、回転数を上げる方の回転翼の回転数は、式(5)又は式(7)により算出され、この算出された回転数N1に調節される。また、回転数を下げる方の回転翼の回転数は、式(6)又は式(8)により算出され、この算出された回転数N2に調節される。
具体的には、例えば、図11の(A)に示されるように、第一横風W1及び第二横風W2が、いずれも機体11の左側から吹いている場合、複数の回転翼40A~40Dの回転数は、次のように調節される。すなわち、左前側の回転翼40B及び右後側の回転翼40Cの回転数は維持される。また、右前側の回転翼40Aの回転数は式(5)又は式(7)で算出された回転数N1に上げられ、左後側の回転翼40Dの回転数は式(6)又は式(8)で算出された回転数N2に下げられる。これにより、上面視で時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、例えば、図11の(B)に示されるように、第一横風W1及び第二横風W2が、いずれも機体11の右側から吹いている場合、複数の回転翼40A~40Dの回転数は、次のように調節される。すなわち、右前側の回転翼40A及び左後側の回転翼40Dの回転数は維持される。また、左前側の回転翼40Bの回転数は式(5)又は式(7)で算出された回転数N1に上げられ、右後側の回転翼40Cの回転数は式(6)又は式(8)で算出された回転数N2に下げられる。これにより、上面視で反時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、例えば、図11の(C)に示されるように、第一横風W1が機体11の右側から吹いており、第二横風W2が機体11の左側から吹いている場合、複数の回転翼40A~40Dの回転数は、次のように調節される。すなわち、左前側の回転翼40B及び右後側の回転翼40Cの回転数は維持される。また、右前側の回転翼40Aの回転数は式(5)又は式(7)で算出された回転数N1に上げられ、左後側の回転翼40Dの回転数は式(6)又は式(8)で算出された回転数N2に下げられる。これにより、上面視で時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、例えば、図11の(D)に示されるように、第一横風W1が機体11の左側から吹いており、第二横風W2が機体11の右側から吹いている場合、複数の回転翼40A~40Dの回転数は、次のように調節される。すなわち、右前側の回転翼40A及び左後側の回転翼40Dの回転数は維持される。また、左前側の回転翼40Bの回転数は式(5)又は式(7)で算出された回転数N1に上げられ、右後側の回転翼40Cの回転数は式(6)又は式(8)で算出された回転数N2に下げられる。これにより、上面視で反時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、この第一制御例では、回転モーメントMの大きさに応じて複数の回転翼40A~40Dの回転数を調節するので、機体11が壁面102から離れることを抑制するために、複数の回転翼40A~40Dが常に最大推力を発生しなくて済む。これにより、複数の回転翼40A~40Dを回転させる複数のモータ41A~41Dの電力効率が向上するので、バッテリ85の消費電力を抑えることができる。
(第二制御例)
第二制御例では、機体11の制御量として、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度を調節する。すなわち、制御部86は、回転モーメントMが低減されるように、一対の駆動部61A、61Bの傾斜用モータ72を制御して一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度を調節する。
以下では、一例として、一対の垂直板60A、60Bのうち、一方の垂直板を垂直に維持したまま、他方の垂直板の傾斜角度を調節する。制御部86には、傾斜角度を調節する方の垂直板の傾斜角度と横風により機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントとの関係が予め記憶される。
制御部86が第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルクTとの関係式である式(1)及び式(2)を予め記憶している場合、式(9)が制御部86に予め記憶される。式(9)において、θは傾斜させる方の垂直板の傾斜角度、α5は予め得られる定数である。
θ=θ0+α5×T・・・(9)
一対の垂直板60A、60Bは、飛翔機10が上下に移動する場合には、垂直に保たれるが、例えば機体11を前傾姿勢で壁面102に接触させるために後側に傾斜される場合がある。θ0は傾斜角度をθに変化させる前の垂直板の傾斜角度であり、傾斜角度は、垂直板が垂直である場合を0とした角度である。
一方、制御部86が第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11に作用する剥離力Fとの関係式である式(3)及び式(4)を予め記憶している場合、式(10)が制御部86に予め記憶される。式(10)において、θは傾斜させる方の垂直板の傾斜角度、θ0は傾斜角度をθに変化させる前の垂直板の傾斜角度、α6は予め得られる定数である。
θ=θ0+α6×F・・・(10)
そして、傾斜させる方の垂直板の傾斜角度は、式(9)又は式(10)により算出され、この算出された傾斜角度θに調節される。
具体的には、例えば、図11の(A)に示されるように、第一横風W1及び第二横風W2が、いずれも機体11の左側から吹いている場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度は、次のように調節される。すなわち、右側の垂直板60Aが垂直に維持されたまま、左側の垂直板60Bが式(9)又は(10)で算出された傾斜角度θに調節される。このように、右側の垂直板60Aが垂直に維持されたまま、左側の垂直板60Bが後側へ傾斜すると、この左側の垂直板60Bに回転翼40Dによる下向きの風が当たることにより、左側の垂直板60Bに前側への力が作用する。これにより、上面視で時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、例えば、図11の(B)に示されるように、第一横風W1及び第二横風W2が、いずれも機体11の右側から吹いている場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度は、次のように調節される。すなわち、左側の垂直板60Bが垂直に維持されたまま、右側の垂直板60Aが式(9)又は(10)で算出された傾斜角度θに調節される。このように、左側の垂直板60Bが垂直に維持されたまま、右側の垂直板60Aが後側へ傾斜すると、この右側の垂直板60Aに回転翼40Cによる下向きの風が当たることにより、右側の垂直板60Aに前側への力が作用する。これにより、上面視で反時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、例えば、図11の(C)に示されるように、第一横風W1が機体11の右側から吹いており、第二横風W2が機体11の左側から吹いている場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度は、次のように調節される。すなわち、右側の垂直板60Aが垂直に維持されたまま、左側の垂直板60Bが式(9)又は(10)で算出された傾斜角度θに調節される。このように、右側の垂直板60Aが垂直に維持されたまま、左側の垂直板60Bが後側へ傾斜すると、この左側の垂直板60Bに回転翼40Dによる下向きの風が当たることにより、左側の垂直板60Bに前側への力が作用する。これにより、上面視で時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、例えば、図11の(D)に示されるように、第一横風W1が機体11の左側から吹いており、第二横風W2が機体11の右側から吹いている場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度は、次のように調節される。すなわち、左側の垂直板60Bが垂直に維持されたまま、右側の垂直板60Aが式(9)又は(10)で算出された傾斜角度θに調節される。このように、左側の垂直板60Bが垂直に維持されたまま、右側の垂直板60Aが後側へ傾斜すると、この右側の垂直板60Aに回転翼40Cによる下向きの風が当たることにより、右側の垂直板60Aに前側への力が作用する。これにより、上面視で反時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、この第二制御例では、回転モーメントMの大きさに応じて一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度を調節するので、機体11が壁面102から離れることを抑制するために、複数の回転翼40A~40Dが常に最大推力を発生しなくて済む。これにより、複数の回転翼40A~40Dを回転させる複数のモータ41A~41Dの電力効率が向上するので、バッテリ85の消費電力を抑えることができる。
(第三制御例)
第三制御例では、機体11の制御量として、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度及びスライド距離を調節する。すなわち、制御部86は、回転モーメントMが低減されるように、一対の駆動部61A、61Bの傾斜用モータ72及びスライド用モータ70を制御して一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度及びスライド距離を調節する。
以下では、一例として、一対の垂直板60のうち、一方の垂直板を垂直に維持したまま、他方の垂直板の傾斜角度及びスライド距離を調節する。制御部86には、傾斜角度及びスライド距離を調節する方の垂直板の傾斜角度及びスライド距離と横風により機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントとの関係が予め記憶される。
制御部86が第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11のヨー軸Ay周りに作用するトルクTとの関係式である式(1)及び式(2)を予め記憶している場合、上述の式(9)に加えて式(11)が制御部86に予め記憶される。式(11)において、Lはスライドさせる方の垂直板のスライド距離、α7は予め得られる定数である。
L=L0+α7×T・・・(11)
一対の垂直板60A、60Bは、飛翔機10が上下に移動する場合には、機体11の前後方向中央側の前端位置で垂直に保たれるが、例えば機体11を前傾姿勢で壁面102に接触させるために後側に傾斜及びスライドされる場合がある。L0はスライド距離をLに変化させる前の垂直板のスライド距離であり、スライド距離は、垂直板が前端位置にある場合を0とした距離である。
一方、制御部86が第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速と機体11に作用する剥離力Fとの関係式である式(3)及び式(4)を予め記憶している場合、上述の式(10)に加えて式(12)が制御部86に予め記憶される。式(12)において、Lはスライドさせる方の垂直板のスライド距離、L0はスライド距離をLに変化させる前の垂直板のスライド距離、α8は予め得られる定数である。
L=L0+α8×F・・・(12)
そして、垂直板の傾斜角度は、式(9)又は式(10)により算出され、この算出された傾斜角度θに調節される。また、垂直板のスライド距離は、式(11)又は式(12)により算出され、この算出されたスライド距離Lに調節される。
具体的には、例えば、図11の(A)に示されるように、第一横風W1及び第二横風W2が、いずれも機体11の左側から吹いている場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度及びスライド距離は、次のように調節される。すなわち、右側の垂直板60Aが垂直に維持されたまま、左側の垂直板60Bが式(9)又は(10)で算出された傾斜角度θに調節されると共に式(11)又は式(12)で算出されたスライド距離Lに調節される。このように、右側の垂直板60Aが垂直に維持されたまま、左側の垂直板60Bが後側へ傾斜すると共にスライドすると、この左側の垂直板60Bに回転翼40Dによる下向きの風が当たることにより、左側の垂直板60Bに前側への力が作用する。これにより、上面視で時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、例えば、図11の(B)に示されるように、第一横風W1及び第二横風W2が、いずれも機体11の右側から吹いている場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度及びスライド距離は、次のように調節される。すなわち、左側の垂直板60Bが垂直に維持されたまま、右側の垂直板60Aが式(9)又は(10)で算出された傾斜角度θに調節されると共に式(11)又は式(12)で算出されたスライド距離Lに調節される。このように、左側の垂直板60Bが垂直に維持されたまま、右側の垂直板60Aが後側へ傾斜すると共にスライドすると、この右側の垂直板60Aに回転翼40Cによる下向きの風が当たることにより、右側の垂直板60Aに前側への力が作用する。これにより、上面視で反時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、例えば、図11の(C)に示されるように、第一横風W1が機体11の右側から吹いており、第二横風W2が機体11の左側から吹いている場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度及びスライド距離は、次のように調節される。すなわち、右側の垂直板60Aが垂直に維持されたまま、左側の垂直板60Bが式(9)又は(10)で算出された傾斜角度θに調節されると共に式(11)又は式(12)で算出されたスライド距離Lに調節される。このように、右側の垂直板60Aが垂直に維持されたまま、左側の垂直板60Bが後側へ傾斜すると共にスライドすると、この左側の垂直板60Bに回転翼40Dによる下向きの風が当たることにより、左側の垂直板60Bに前側への力が作用する。これにより、上面視で時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、例えば、図11の(D)に示されるように、第一横風W1が機体11の左側から吹いており、第二横風W2が機体11の右側から吹いている場合、一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度及びスライド距離は、次のように調節される。すなわち、左側の垂直板60Bが垂直に維持されたまま、右側の垂直板60Aが式(9)又は(10)で算出された傾斜角度θに調節されると共に式(11)又は式(12)で算出されたスライド距離Lに調節される。このように、左側の垂直板60Bが垂直に維持されたまま、右側の垂直板60Aが後側へ傾斜すると共にスライドすると、この右側の垂直板60Aに回転翼40Cによる下向きの風が当たることにより、右側の垂直板60Aに前側への力が作用する。これにより、上面視で反時計回りの回転モーメントが機体11のヨー軸Ay周りに発生し、この回転モーメントにより回転モーメントMが低減されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制できる。
また、この第三制御例では、回転モーメントMの大きさに応じて一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度及びスライド距離を調節するので、機体11が壁面102から離れることを抑制するために、複数の回転翼40A~40Dが常に最大推力を発生しなくて済む。これにより、複数の回転翼40A~40Dを回転させる複数のモータ41A~41Dの電力効率が向上するので、バッテリ85の消費電力を抑えることができる。
また、垂直板60が後側へスライドすることにより、回転モーメントMを打ち消すための回転モーメントを大きくすることができるので、回転モーメントMをより迅速に低減することができる。
なお、上述の第一制御例における複数の回転翼40A~40Dの回転数を調節する制御と、第二制御例における一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度を調節する制御は、組み合わされてもよい。また、上述の第一制御例における複数の回転翼40A~40Dの回転数を調節する制御と、第三制御例における一対の垂直板60A、60Bの傾斜角度及びスライド距離を調節する制御は、組み合わされてもよい。
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
以上詳述した通り、機体11の前側が壁面102に接触している場合には、第一横風W1及び第二横風W2によって機体11のヨー軸Ay周りに回転モーメントMが作用する場合がある。しかしながら、本実施形態では、この回転モーメントMが低減されるように、第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力に基づいて、機体11が制御される。このように、回転モーメントMの大きさに応じて機体11が制御されるので、機体11が壁面102から離れることを抑制するために、複数の回転翼40A~40Dが常に最大推力を発生しなくて済む。これにより、複数の回転翼40A~40Dを回転させる複数のモータ41A~41Dの電力効率が向上するので、バッテリ85の消費電力を抑えることができる。
また、機体11の前側が壁面102に接触している場合には、上述のように、回転モーメントMが低減されるように、機体11が自動的に制御される。したがって、高度な操作技術を有する熟練者でなくても、機体11を壁面102に安定して接触させた状態に維持できる。
また、機体11のフレーム20は、機体11の前側に沿って延びる前側の連結ロッド32Aと、機体11の後側に沿って延びる後側の連結ロッド32Bとを有する。そして、第一風向風速計91は、前側の連結ロッド32Aの内側に配置され、第二風向風速計92は、後側の連結ロッド32Bの内側に配置されている。したがって、複数の回転翼40A~40Dが回転している場合でも、この複数の回転翼40A~40Dの回転によって生ずる風の影響が第一風向風速計91及び第二風向風速計92に及ぶことを抑制できる。これにより、第一風向風速計91及び第二風向風速計92によって第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速を精度良く計測できるので、機体11に作用する回転モーメントMを精度良く算出できる。この結果、機体11が壁面102から離れないように機体11を適切に制御することができる。
また、前側の連結ロッド32Aには、前側の連結ロッド32Aの内側の流路を局所的に狭くする第一絞り部35Aが設けられ、後側の連結ロッド32Bには、後側の連結ロッド32Bの内側の流路を局所的に狭くする第二絞り部35Bが設けられている。そして、第一風向風速計91は、第一絞り部35Aの内側に配置され、第二風向風速計92は、第二絞り部35Bの内側に配置されている。したがって、第一絞り部35A及び第二絞り部35Bの内側では、第一横風W1及び第二横風W2の流速がそれぞれ高まるので、第一風向風速計91及び第二風向風速計92の感度を高めることができる。これにより、第一風向風速計91及び第二風向風速計92によって第一横風W1及び第二横風W2の風向及び風速をより一層精度良く計測できる。
また、フレーム20は、機体11の左右方向を軸方向として延びる複数の連結ロッド32A~32Fと、この複数の連結ロッド32A~32Fの軸方向の両端部にそれぞれ接続された一対の円環部材33とを有する筒形に形成されている。そして、一対の車輪50は、一対の円環部材33にそれぞれ装着されることにより、この一対の円環部材33にそれぞれ回転可能に支持されている。したがって、例えば、一対の車輪50を棒状の車軸を介してフレーム20に支持する構成に比して、一対の車輪50の支持剛性を高めることができる。また、第一風向風速計91及び第二風向風速計92が内側に配置された前側の連結ロッド32A及び後側の連結ロッド32Bは、フレーム20を形成する複数の連結ロッド32A~32Fに含まれる。したがって、第一風向風速計91及び第二風向風速計92を配置するための専用の部材を用いる場合に比して、フレーム20の構造を簡素化することができる。
次に、本実施形態の変形例を説明する。
上記実施形態において、飛翔機10は、4か所に配置された回転翼40A~40Dを有するが、4か所以上に配置された回転翼を有していてもよい。
また、制御部86は、第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力に基づいて、機体11のヨー軸Ay周りに作用する回転モーメントMを推定し、この回転モーメントMを低減するための機体11の制御量を計算する。しかしながら、制御部86は、第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力と機体11の制御量との関係を予め記憶していてもよい。そして、制御部86は、第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力と機体11の制御量との関係に基づいて、第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力から、機体11の制御量を計算してもよい。また、第一風向風速計91の出力及び第二風向風速計92の出力から機体11の制御量を求めるために、人工知能が用いられてもよい。
また、制御部86は、回転モーメントMが低減されるように、一対の垂直板60A、60Bの一方を後側に傾斜させる。しかしながら、回転モーメントMが低減されるように、一対の垂直板60A、60Bの他方を前側に傾斜させてもよく、また、一対の垂直板60A、60Bの一方を後側に傾斜させて他方を前側に傾斜させてもよい。
また、一対の駆動部61A、61Bは、垂直板60A、60Bを傾斜させる構成とスライドさせる構成を備えるが、垂直板60A、60Bをスライドさせる構成は省かれてもよい。また、飛翔機10は、一対の垂直板60A、60B及び一対の駆動部61A、61Bを有するが、一対の垂直板60A、60B及び一対の駆動部61A、61Bは省かれてもよい。
また、第一風向風速計91及び第二風向風速計92は、前側の連結ロッド32A及び後側の連結ロッド32Bにそれぞれ配置されている。しかしながら、前側の連結ロッド32A及び後側の連結ロッド32Bとは別に専用に設けられた第一パイプ及び第二パイプの内側に配置されてもよい。
また、前側の連結ロッド32A及び後側の連結ロッド32Bには、第一絞り部35A及び第二絞り部35Bが設けられているが、前側の連結ロッド32A及び後側の連結ロッド32Bの内側の流路は、軸方向の全長に亘って一定の断面で形成されていてもよい。そして、第一風向風速計91及び第二風向風速計92は、軸方向の全長に亘って一定の断面の流路を有する前側の連結ロッド32A及び後側の連結ロッド32Bの内側にそれぞれ配置されてもよい。
また、前側の連結ロッド32A及び後側の連結ロッド32Bには、別部材である第一絞り部35A及び第二絞り部35Bがそれぞれ設けられている。しかしながら、前側の連結ロッド32A及び後側の連結ロッド32Bの軸方向中央部が絞り形状とされることにより、前側の連結ロッド32A及び後側の連結ロッド32Bに第一絞り部35A及び第二絞り部35Bが一体に形成されていてもよい。
また、機体11は、壁面102に接触する一対の車輪50を有するが、一対の車輪50以外に壁面102に接触する接触部を有していてもよい。
また、フレーム20は、機体11の左右方向を軸方向として延びる複数の連結ロッド32A~32Fと、この複数の連結ロッド32A~32Fの軸方向の両端部にそれぞれ接続された一対の円環部材33とを有する筒形に形成されている。しかしながら、フレーム20は、筒形以外の形状でもよい。
また、一対の接触センサ81には、歪ゲージが用いられているが、例えば、タッチセンサ、圧電素子、近接センサ等のセンサが用いられてもよい。
また、機体11を制御する上記構成は、壁面に接触する機体11の前側を「機体の第一側」とし、機体11の後側を「機体の第二側」とする飛翔機10に適用されている。しかしながら、機体11を制御する上記構成は、壁面に接触する機体の右側を「機体の第一側」とし、機体の左側を「機体の第二側」とする飛翔機に適用されてもよい。また、機体11を制御する上記構成は、壁面に接触する機体の左側を「機体の第一側」とし、機体の右側を「機体の第二側」とする飛翔機に適用されてもよい。
また、飛翔機10は、橋脚101の点検に用いられているが、垂直な壁面を有する構造物に対して、検査、観測、記録、点検、運搬、塗装、マーキング、及び、その他の作業を行うために用いられてもよい。
また、上記複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜、組み合わされて実施されても良い。
以上、本願の開示する技術の一実施形態を説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
なお、上述の本願の開示する技術の一実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
複数の回転翼と、前記複数の回転翼をそれぞれ回転させる複数のモータとを有する機体と、
前記機体の水平方向の第一側に配置され、前記機体の第一側に沿って吹く第一横風の風向及び風速に応じた出力をする第一風向風速計と、
前記機体の水平方向の第一側と反対の第二側に配置され、前記機体の第二側に沿って吹く第二横風の風向及び風速に応じた出力をする第二風向風速計と、
前記機体の第一側が壁面に接触している場合に、前記第一横風及び前記第二横風によって前記機体のヨー軸周りに回転モーメントが作用するときには、前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記機体を制御する制御部と、
を備える飛翔機。
(付記2)
前記機体は、前記複数のモータが固定されたフレームを有し、
前記フレームは、前記機体の第一側に沿って延びる第一パイプと、前記機体の第二側に沿って延びる第二パイプとを有し、
前記第一風向風速計は、前記第一パイプの内側に配置され、
前記第二風向風速計は、前記第二パイプの内側に配置されている、
付記1に記載の飛翔機。
(付記3)
前記第一パイプには、前記第一パイプの内側の流路を局所的に狭くする第一絞り部が設けられ、
前記第二パイプには、前記第一パイプの内側の流路を局所的に狭くする第二絞り部が設けられ、
前記第一風向風速計は、前記第一絞り部の内側に配置され、
前記第二風向風速計は、前記第二絞り部の内側に配置されている、
付記2に記載の飛翔機。
(付記4)
前記フレームは、前記機体の第一側及び第二側に沿う方向を軸方向として延びる複数の連結ロッドと、前記複数の連結ロッドの軸方向の両端部にそれぞれ接続された一対の円環部材とを有する筒形に形成され、
前記機体は、前記一対の円環部材にそれぞれ装着され、前記一対の円環部材に回転可能に支持された一対の車輪を有し、
前記複数の連結ロッドは、前記第一パイプ及び前記第二パイプを含む、
付記2又は付記3に記載の飛翔機。
(付記5)
前記制御部は、前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記複数のモータを制御して前記複数の回転翼の回転数を調節する、
付記1~付記4のいずれか一項に記載の飛翔機。
(付記6)
前記機体は、
前記複数の回転翼の下方に配置された垂直板と、
前記垂直板を傾斜可能に支持する支持部材と、
前記垂直板を傾斜させる傾斜用モータと、
を有し、
前記制御部は、前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記傾斜用モータを制御して前記垂直板の傾斜角度を調節する、
付記1~付記5のいずれか一項に記載の飛翔機。
(付記7)
前記機体は、
前記機体の第一側及び第二側に沿う方向に並ぶ一対の前記垂直板と、
前記一対の垂直板をそれぞれ傾斜可能に支持する一対の前記支持部材と、
前記一対の垂直板をそれぞれ傾斜させる一対の前記傾斜用モータと、
を有し、
前記制御部は、前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記一対の傾斜用モータを制御して前記一対の垂直板の傾斜角度を調節する、
請求項6に記載の飛翔機。
(付記8)
前記支持部材は、前記機体の第一側及び第二側が対向する方向に前記垂直板をスライド可能に支持し、
前記機体は、前記垂直板をスライドさせるスライド用モータを有し、
前記制御部は、前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記傾斜用モータ及び前記スライド用モータを制御して前記垂直板の傾斜角度及びスライド距離を調節する、
付記6又は付記7に記載の飛翔機。
(付記9)
複数の回転翼と、前記複数の回転翼をそれぞれ回転させる複数のモータとを有する機体と、
前記機体の水平方向の第一側に配置され、前記機体の第一側に沿って吹く第一横風の風向及び風速に応じた出力をする第一風向風速計と、
前記機体の水平方向の第一側と反対の第二側に配置され、前記機体の第二側に沿って吹く第二横風の風向及び風速に応じた出力をする第二風向風速計と、
を備える飛翔機を用い、
前記機体の第一側が壁面に接触している場合に、前記第一横風及び前記第二横風によって前記機体のヨー軸周りに回転モーメントが作用するときには、前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記機体を制御する、
ことを含む飛翔機の制御方法。
(付記10)
前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記複数のモータを制御して前記複数の回転翼の回転数を調節する、
付記9に記載の飛翔機の制御方法。
(付記11)
前記機体は、
前記複数の回転翼の下方に配置された垂直板と、
前記垂直板を傾斜可能に支持する支持部材と、
前記垂直板を傾斜させる傾斜用モータと、
を有し、
前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記傾斜用モータを制御して前記垂直板の傾斜角度を調節する、
付記9又は付記10に記載の飛翔機の制御方法。
(付記12)
前記機体は、
前記機体の第一側及び第二側に沿う方向に並ぶ一対の前記垂直板と、
前記一対の垂直板をそれぞれ傾斜可能に支持する一対の前記支持部材と、
前記一対の垂直板をそれぞれ傾斜させる一対の前記傾斜用モータと、
を有し、
前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記一対の傾斜用モータを制御して前記一対の垂直板の傾斜角度を調節する、
付記11に記載の飛翔機の制御方法。
(付記13)
前記支持部材は、前記機体の第一側及び第二側が対向する方向に前記垂直板をスライド可能に支持し、
前記機体は、前記垂直板をスライドさせるスライド用モータを有し、
前記回転モーメントが低減されるように、前記第一風向風速計の出力及び前記第二風向風速計の出力に基づいて、前記傾斜用モータ及び前記スライド用モータを制御して前記垂直板の傾斜角度及びスライド距離を調節する、
付記11又は付記12に記載の飛翔機の制御方法。