JP7180260B2 - 化粧シート表面の補修方法 - Google Patents

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本発明は、化粧シート表面の補修方法に関するものである。特に、経時によって表面が劣化した家具や住宅内装材、外装材に用いられる、化粧シート表面を補修する方法に関するものである。
印刷技術を、建築材料とくに内装・外装材料に応用することは、すでに20世紀後半から広く行なわれてきた。現代の住宅あるいは店舗などの建築材料においては、床、天井、壁、家具などは天然の材料を表面に用いたものに比べ、印刷技術を応用して意匠性を施したものが大半を占めているといっても過言ではない。
このような用途において、化粧シートにはその最表面に表面保護層を設けることが一般的に行なわれている。その目的としては、耐候性、耐傷性、および耐汚染性の向上、表面光沢の調節などが挙げられるが、なかでも耐久消費財の観点からは、耐候性の向上は表面保護層の最も大きな役割であるともいえる。
また、近年住宅の長期保証が常識となっているなかで、化粧シートの耐候性向上はひとつの課題となっている。化粧シートの耐候性向上のためには、表面保護層自体も耐候性に優れている必要があるため、表面保護層の材料としてアクリル系樹脂を用いることが多く、さらに耐候性を向上させるために、表面保護層には耐候性向上を目的として、紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤を用いることもある。
たとえば、特許文献1、あるいは特許文献2には、そういった耐候性向上のための添加成分の提案が記載されている。しかしながら、耐候性をより向上させるためには、それらの添加量を増やす必要がある。
しかしながら、それらの添加材の種類によっては、化粧シート表面にブリードアウトするおそれもあり、化粧シートのコストアップにもつながるため、限界があるのが実情である。
またそれらを回避できたとしても、経時によって、あるいは環境条件による劣化は発生しうるのであって、表面保護層自体、あるいは耐候性向上のための添加剤自体が分解して、初期の性能か失われ、期待に反する結果となることも多い。
経年劣化には、表面光沢の変化などの外観の変化や、表面保護層にクラックが発生したり、耐候性向上のための添加剤成分が減少して、耐候性能が低下することなどの現象が挙げられる。
特開2008-238444号公報 特開2007-118584号公報
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、化粧部材の表面に貼り合せて用いられる化粧シートにおいて、施工してから年月が経ち、あるいは環境条件によって劣化した
化粧シートの表面にコート層を形成することで、劣化した化粧シート表面を補修し、化粧部材を再生または化粧部材の延命をする方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
化粧シート表面の補修方法であって、
対象とする化粧シートは、プラスチックフィルムを基材として熱可塑性樹脂層を有し、
熱可塑性樹脂層の表面には、表面保護層を設けて最外層とした積層体であって、
表面保護層はフッ素樹脂系、もしくはアクリル樹脂系の樹脂組成物を主成分としてなり、
補修は、化粧シート表面の補修をしようとする部分に対し、表面を研磨して表面保護層を一定量除去し、表面保護層の下に位置する熱可塑性樹脂層を露出させた後、
補修用ベースコート層、および補修用トップコート層をこの順で設けるものであり、
補修用ベースコート層には、補修用ベースコート層を、5~100μmの厚さで形成し、
補修用トップコート層には、フッ素系、アクリル系、シリコン系、ウレタン系のいずれかの樹脂を主成分とする補修用トップコート層を、5~100μmの厚さで形成することを特徴とする、化粧シート表面の補修方法である。
また、請求項2に記載の発明は、
前記補修用ベースコート層、および補修用トップコート層は、どちらか一方もしくは両方にフィラーを含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の化粧シート表面の補修方法である。
また、請求項3に記載の発明は、
前記熱可塑性樹脂層の露出は、熱可塑性樹脂層に対して1~20μmの深さにまで研磨することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の化粧シート表面の補修方法である。
また、請求項4に記載の発明は、
前記研磨は、240番手~400番手の研磨紙を用いて行なうことを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の化粧シート表面の補修方法である。
本発明によれば、化粧部材に貼り合せて用いられる化粧シートにおいて、施工してから年月が経ち、あるいは環境条件によって劣化した、化粧シートの表面にコート層を形成することで、劣化した化粧シート表面を補修し、化粧部材を再生または化粧部材の延命をする方法を提供することが可能である。
特に請求項2に記載の発明によれば、補修用ベースコート層、および補修用トップコート層は、どちらか一方もしくは両方にフィラーを含んでいることによって、耐摩耗性においてよりすぐれる化粧シート表面の補修方法とすることができる。
また特に請求項3に記載の発明によれば、熱可塑性樹脂層の露出は、熱可塑性樹脂層に対して表面から1~20μmの深さにまで研磨することによって、補修に用いる塗料の密着をより確実に、また強固にすることが可能である。
また特に請求項4に記載の発明によれば、研磨は240番手~400番手の研磨紙を用いて行なうことによって、研磨作業をより容易かつ安定して行なうことができ、また研磨後の表面の状態が適度な粗面となるために、補修に用いる塗料の密着をより確実に、また
強固にすることが可能である。
図1は本発明に係る、化粧シート表面の補修方法、および実施例を説明するための、化粧部材の部分断面模式図である。
以下、本発明を図1を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって限定されるものである。
図1は本発明に係る、化粧シート表面の補修方法を説明するための、化粧部材の部分断面模式図である。
本発明は化粧シート表面の補修方法であって、対象とする化粧シート(10)は、プラスチックフィルムを基材として熱可塑性樹脂層を有し、熱可塑性樹脂層の表面には、表面保護層を設けて最外層とした積層体である。この化粧シート(10)を接着剤層(9)を介して基材(20)に貼り合せたものが化粧部材(30)である。
図1に示す例において、化粧シートの構成は、着色熱可塑性樹脂層(1)を基材のプラスチックフィルムとして、その表面には絵柄層(2)が設けてある。裏面には、基材(20)との貼り合せのためのプライマー層(8)が設けられている。
絵柄層(2)の上には、接着性樹脂層(3)を介して、熱可塑性樹脂層(4)が設けられており、さらに最表面には表面保護層(5)が設けられている。また、図1に示す例においては、熱可塑性樹脂層(4)に対して、表面に凹凸を形成するエンボス加工が施してある。
化粧シート(10)表面の補修部分(12)は、図中の楕円形で囲まれた部分であって、研磨部分(11)において、表面保護層(5)が除去されており、除去された表面保護層(5)に代わって、補修用ベースコート層(6)、および補修用トップコート層(7)が設けられている。
本発明においては、表面保護層(5)はフッ素樹脂系、もしくはアクリル樹脂系の樹脂組成物を主成分としたものとする。
補修は、化粧シート(10)表面の補修をしようとする部分に対し、表面を研磨して表面保護層(5)を除去し、表面保護層(5)の下に位置する熱可塑性樹脂層(4)を露出させて後、補修用ベースコート層(6)、および補修用トップコート層(7)をこの順で設けるものである。
本発明による化粧シート(10)表面の補修方法おいて、補修用ベースコート層(6)には、ターペン可溶の2液型エポキシ樹脂からなる補修用ベースコート層(6)を、5~100μmの厚さで形成する。
また、補修用トップコート層(7)には、フッ素系、アクリル系、シリコン系、ウレタン系のいずれかの樹脂を主成分とする補修用トップコート層(7)を、5~100μmの厚さで形成するものである。
補修用トップコート層(7)には、たとえば、塗料の商品の例として、ピュアライドU
Vプロテクトクリヤー、ピュアライドUVプロテクト4Fクリヤー、パーフェクトトップ、ファインSi、ファインウレタンU100(日本ペイント株式会社)、アレスアクアグロス、アレスアクアレタン、アレスアクアシリコンAC2、シリコンテックス、ビニデラックス、アクアヤネフッソ、アクアヤネシリコン、セラMレタン、セラMシリコン、セラMシリコン2、ムキフッソ、コスモマイルドシリコン2、ヤネMシリコン、スーパーシリコンルーフペイント(関西ペイント株式会社)、ボンフロン水性UVカットクリヤー、ボンフロン弱溶剤エナメルGT、ボンフロン・マットGT-SR防藻、ボンフロンDEつち主剤(ベース)、ボンフロンパレ主剤(AGCコーテック株式会社)などが使用可能である。
図1を例にして説明した、本発明による化粧シート(10)表面の補修方法によれば、化粧部材の基材(20)表面に貼り合せて用いられる化粧シート(10)において、施工してから年月が経ち、あるいは環境条件によって劣化した、化粧シート(10)の表面に補修用ベースコート層(6)および補修用トップコート層(7)を形成することで、劣化した化粧シート(10)表面を補修し、化粧部材(30)を再生する方法を提供することが可能である。
また、本発明による化粧シート(10)表面の補修方法は、補修用ベースコート層(6)、および補修用トップコート層(7)は、どちらか一方もしくは両方にフィラーを含んだものとすることができる。フィラーを含んだ層とすることによって、表面光沢などの意匠調整や耐摩耗性においてより優れる化粧シート(10)表面の補修方法とすることができる。
また補修において、熱可塑性樹脂層(4)の露出は、熱可塑性樹脂層(4)に対して1~20μmの深さにまで研磨することがより好ましい。こうして、露出を完全なものにすることにより、補修に用いる塗料、すなわち補修用ベースコート層(6)、および補修用トップコート層(7)の密着をより確実、かつ強固にすることが可能である。
また、補修作業において研磨は、240番手~400番手の研磨紙を用いて行なうことができる。この方法によれば、研磨作業をより容易かつ安定して行なうことができ、熱可塑性樹脂層(4)の表面を、適度な粗面に仕上げることが可能であって、補修用ベースコート層(6)、および補修用トップコート層(7)を形成する際に、アンカー効果を現わすことが可能である。すなわち補修用ベースコート層(6)、および補修用トップコート層(7)の密着を、より確実、かつ強固にすることが可能である。
補修作業において、補修用ベースコート層(6)、および補修用トップコート層(7)を形成する手段、方法には特段の制約を加えるものではないが、たとえばこれらの補修用塗料を刷毛塗りした後、乾燥させる方法をとることができ、あるいは、スプレイ等による吹きつけの方法によることも可能である。
このように、本発明による補修方法によれば、化粧部材の表面に貼り合せて用いられる化粧シートにおいて、施工してから年月が経ち、あるいは環境条件によって劣化した化粧シートの表面にコート層を形成することで、劣化した化粧シート表面を補修し、化粧部材を再生または化粧部材の延命をする方法を提供することが可能である。
以下本発明による補修方法について、実施例、および比較例によって更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって限定されるものである。
評価用に化粧シートを作成して、基材に貼り付けて化粧部材とした。
本発明による補修を実施して出来栄え等を評価した。
評価項目は下記のとおりである。
・外観
・密着性
・耐候性。
<実施例1>
化粧シート、および化粧部材の構成は下記のとおりである。
なお、図1は本発明に係る、化粧シート表面の補修方法、および実施例を説明するための、化粧部材の部分断面模式図である。ここでも、図1を参照しながら説明する。
・着色熱可塑性樹脂層(1)
着色ポリエチレン樹脂からなり、一方の面にコロナ放電処理を施した。
・絵柄層(2)
コロナ放電処理をした面に、ウレタン系印刷インキを用いて印刷手法によって絵柄を形成した。
・接着性樹脂層(3)
ウレタン系透明接着性樹脂層とした。
・熱可塑性樹脂層(4)
透明熱可塑性樹脂層とした。
・表面保護層(5)
アクリル系樹脂組成物を主成分とした層とした。
化粧部材(30)は、化粧シート(10)裏面に厚さ1μのプライマー層(8)を設けた後、接着剤層(9)厚さ25μmを介して、アルミ基材(厚さ1mm)に貼り合せ、化粧部材(30)とした。
補修方法は下記のとおりである。
・補修部分(12)に対し、表面保護層(5)を、400番手の研磨紙でこすり、熱可塑性樹脂層(4)に対して、表面から10μmの深さまで研磨し熱可塑性樹脂層(4)を露出させた。
・次に補修用ベースコート層(6)として、ピュアライドUVプロテクト4Fクリヤー(つや有り)(日本ペイント社製)を用いて層形成した。
・続いて、補修用トップコート層(7)として、ピュアライドUVプロテクト4Fクリヤー(3分つや有り)(日本ペイント社製)を重ねて層形成した。
・厚さは補修用ベースコート層(6)、補修用トップコート層(7)のいずれも30μmとした。
<比較例1>
化粧シート、および化粧部材の構成は、実施例1のとおりである。
補修方法は下記のとおりである。
・補修部分(12)に対し、表面保護層(5)を、400番手の研磨紙でこすり、熱可塑性樹脂層(4)に対して、表面から10μmの深さまで研磨し熱可塑性樹脂層(4)を露出させた。
・次に補修用ベースコート層(6)として、ピュアライドUVプロテクト4Fクリヤー(つや有り)(日本ペイント社製)を用いて層形成した。
・続いて、補修用トップコート層(7)として、ピュアライドUVプロテクト4Fクリヤー(3分つや有り)(日本ペイント社製)を重ねて層形成した。
・厚さは補修用ベースコート層(6)、補修用トップコート層(7)のいずれも5μm未満とした。
・この部分が実施例1とは異なる。
<比較例2>
化粧シート、および化粧部材の構成は、実施例1のとおりである。
補修方法は下記のとおりである。
・補修部分(12)に対し、表面保護層(5)を、400番手の研磨紙でこすり、熱可塑性樹脂層(4)に対して、表面から10μmの深さまで研磨し熱可塑性樹脂層(4)を露出させた。
・次に補修用ベースコート層(6)として、ピュアライドUVプロテクト4Fクリヤー(つや有り)(日本ペイント社製)を用いて層形成した。
・続いて、補修用トップコート層(7)として、ピュアライドUVプロテクト4Fクリヤー(3分つや有り)(日本ペイント社製)を重ねて層形成した。
・厚さは補修用ベースコート層(6)、補修用トップコート層(7)のいずれも100μmより厚いものとした。
・この部分が実施例1とは異なる。
評価結果を表1に示す。
Figure 0007180260000001
表1から見て取れるように、本発明による化粧シート表面の補修方法である、実施例1においては、評価項目において異常は見られず、補修用トップコートについても、補修用ベースコートについても良好であり、〇評価であった。
これに対して、補修用トップコート、補修用ベースコートのいずれもが、厚さの点で本発明による方法から薄い方項に逸脱している比較例1においては、耐候性が不十分であり、また密着性も劣る結果となった。
これは、化粧部材表面に貼り合せた化粧シート表面の補修において、補修用塗料が一定の塗布量、すなわち層の厚さを必要として、性能が得られることを示している。
また、補修用トップコート、補修用ベースコートのいずれもが、厚さの点で本発明による方法から厚い方項に逸脱している比較例2においては、いずれもムラが発し外観を損ねる結果となった。
これは、化粧部材表面に貼り合せた化粧シート表面の補修において、補修用塗料が一定の塗布量以上に過剰に塗布されることにより、外観にムラが発生して実用上において好ましくない結果となることを示している。
このように、本発明による補修方法によれば、化粧部材の表面に貼り合せて用いられる化粧シートにおいて、施工してから年月が経ち、あるいは環境条件によって劣化した、化粧シートの表面にコート層を形成することで、劣化した化粧シート表面を補修し、化粧部材を再生または化粧部材の延命をする方法を提供することが可能であることを検証することができた。
1・・・着色熱可塑性樹脂層
2・・・絵柄層
3・・・接着性樹脂層
4・・・熱可塑性樹脂層
5・・・表面保護層
6・・・補修用ベースコート層
7・・・補修用トップコート層
8・・・プライマー層
9・・・接着剤層
10・・・化粧シート
11・・・研磨部分
12・・・補修部分
20・・・基材
30・・・化粧部材

Claims (4)

  1. 化粧シート表面の補修方法であって、
    対象とする化粧シートは、プラスチックフィルムを基材として熱可塑性樹脂層を有し、熱可塑性樹脂層の表面には、表面保護層を設けて最外層とした積層体であって、
    表面保護層はフッ素樹脂系、もしくはアクリル樹脂系の樹脂組成物を主成分としてなり、
    補修は、化粧シート表面の補修をしようとする部分に対し、表面を研磨して表面保護層を一定量除去し、表面保護層の下に位置する熱可塑性樹脂層を露出させた後、
    補修用ベースコート層、および補修用トップコート層をこの順で設けるものであり、
    補修用ベースコート層には、補修用ベースコート層を、5~100μmの厚さで形成し、
    補修用トップコート層には、フッ素系、アクリル系、シリコン系、ウレタン系のいずれかの樹脂を主成分とする補修用トップコート層を、5~100μmの厚さで形成することを特徴とする、化粧シート表面の補修方法。
  2. 前記補修用ベースコート層、および補修用トップコート層は、どちらか一方もしくは両方にフィラーを含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の化粧シート表面の補修方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂層の露出は、熱可塑性樹脂層に対して1~20μmの深さにまで研磨することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の化粧シート表面の補修方法。
  4. 前記研磨は、240番手~400番手の研磨紙を用いて行なうことを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の化粧シート表面の補修方法。
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