JP7177341B2 - 無試薬式残留塩素測定装置及び無試薬式残留塩素測定方法 - Google Patents
無試薬式残留塩素測定装置及び無試薬式残留塩素測定方法 Download PDFInfo
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Description
一方、結合残留塩素は、水中のアンモニア、アミン類、アミノ酸類と遊離残留塩素が反応して生成するもので、モノクロラミン(NH2Cl)、ジクロラミン(NHCl2)、トリクロラミン(NCl3)の三種類の形態をとる。上水等の通常のpHにおいては、ほとんどの結合残留塩素が、モノクロラミン又はジクロラミンとして存在する。モノクロラミンとジクロラミンは、遊離残留塩素に比較すると圧倒的に弱いものの殺菌力を有している。
また、不連続点処理による効率的な遊離残留塩素濃度の管理において、結合残留塩素と遊離残留塩素を区別して把握することが必要である。
しかし、ポーラログラフ法では、遊離残留塩素と結合残留塩素の双方が還元されてしまうため、両者を区別して測定することが困難である。
そして、検知極として金電極、対極として銀/塩化銀電極を用い、二種以上の異なる電圧として100mVと-100mVを印加した際の電流を測定すると、それぞれの電流に含まれる結合残留塩素の影響分を相殺して遊離残留塩素濃度を求めることができるとされている。
しかし、この条件は、ハロゲン系酸化剤にスルファミン酸又はその塩が添加された水を試料液とする特殊な場合にのみ適用できる条件であった。
しかし、特許文献3で開示されている測定装置は、試料液にハロゲンイオンを含む試薬を添加することが必要な有試薬式の測定装置であり、ランニングコストやメンテナンスの手間がかかる点で不利であった。
[1]試料液に対してハロゲンイオンを含む試薬を添加しない無試薬式残留塩素測定装置であって、
試料液に浸漬される金製の検知極、及び白金製の対極と、
前記検知極と対極との間に、第1の印加電圧V1、第2の印加電圧V2、及び第3の印加電圧V3を順次与える加電圧機構と、
前記検知極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定する電流計と、
演算制御部とを具備し、
第1の印加電圧V1は、-730~-770mVの範囲から、第2の印加電圧V2は-780~-820mVの範囲から、第3の印加電圧V3は-830~-870mVの範囲から、各々選択され、
前記電流計は、前記加電圧機構が第1の印加電圧V1を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第1の酸化還元電流I(V1)と、前記加電圧機構が第2の印加電圧V2を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第2の酸化還元電流I(V2)と、前記加電圧機構が第3の印加電圧V3を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第3の酸化還元電流I(V3)とを、各々測定し、
前記演算制御部は、下記式(1)に基づき、前記試料液の遊離残留塩素濃度Nfを求めることを特徴とする無試薬式残留塩素測定装置。
Nf=A×I(V1)+B×I(V2)+C×I(V3)+D ・・・(1)
(ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。)
[2]前記演算制御部は、さらに、下記式(2)に基づき、前記試料液の全残留塩素濃度Ntを求める[1]に記載の無試薬式残留塩素測定装置。
Nt=E×I(V3)+F・・・(2)
(ただし、式(2)において、E、Fは定数である。)
[3]前記演算制御部は、さらに、下記式(3)に基づき、前記試料液の結合残留塩素濃度Ncを求める[2]に記載の無試薬式残留塩素測定装置。
Nc=Nt-Nf・・・(3)
[4]試料液に対してハロゲンイオンを含む試薬を添加しない無試薬式残留塩素測定方法であって、
試料液に浸漬した金製の検知極と白金製の対極との間に、第1の印加電圧V1を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第1の酸化還元電流I(V1)と、第2の印加電圧V2を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第2の酸化還元電流I(V2)と、第3の印加電圧V3を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第3の酸化還元電流I(V3)とを、各々測定し、
前記第1の印加電圧V1は、-730~-770mVの範囲から、第2の印加電圧V2は-780~-820mVの範囲から、第3の印加電圧V3は-830~-870mVの範囲から、各々選択し、
下記式(1)に基づき、前記試料液の遊離残留塩素濃度Nfを求めることを特徴とする無試薬式残留塩素測定方法。
Nf=A×I(V1)+B×I(V2)+C×I(V3)+D ・・・(1)
(ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。)
[5]さらに、下記式(2)に基づき、前記試料液の全残留塩素濃度Ntを求める[4]に記載の無試薬式残留塩素測定方法。
Nt=E×I(V3)+F・・・(2)
(ただし、式(2)において、E、Fは定数である。)
[6]さらに、下記式(3)に基づき、前記試料液の結合残留塩素濃度Ncを求める[5]に記載の無試薬式残留塩素測定方法。
Nc=Nt-Nf・・・(3)
さらには、ハロゲンイオンを含む試薬を用いることなく、かつ、電極を交換することなくで、遊離残留塩素濃度に加えて、全残留塩素濃度と結合残留塩素濃度も実用に耐える精度で測定可能である。
[装置構成]
本発明の第1実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置について図1を用いて説明する。本実施形態の無試薬式残留塩素測定装置は、センサ部1と本体部20とから概略構成されている。
ポーラログラフ法に用いられる検知極と対極の組み合わせとしては、種々の組み合わせが考えられるところ、本願発明者は、一対の検知極と対極だけで、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度の双方の値を実用に耐える精度で求めることを目的に、種々の検知極と対極の組み合わせで印加電圧を変化させて検討した。その結果、後述の実施例に示すように、金製の検知極と白金製の対極と、特定の異なる3つの電圧を組み合わせた場合に、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度の双方の値を実用に耐える精度で求められることを見いだした。
また、検知極13の清浄を保つため、ビーズ18による機械的研磨に加えて、電解研磨を行うことが好ましい。電解研磨は、検知極と対極との間に測定時とは逆向きに電流が流れるようになっていればよく、適宜周知の方法を採用することができる。
本実施形態の無試薬式残留塩素測定装置は、対極15や検知極13の洗浄を行うための自動洗浄機構を備えていてもよい。その場合、定期的な洗浄を自動的に行うことができる。
電圧を印加する時間は、試料液の特性と応答速度に応じて適宜設定すればよい。一つの値の電圧を印加する時間は、10~120秒であることが好ましい。
なお、第1の印加電圧V1、第2の印加電圧V2、及び第3の印加電圧V3を与える順番に特に限定はないが、電圧変化によるノイズを排除するために昇順または降順で切り替えて行くことが好ましい。
第2の印加電圧V2は、-780~-820mVの範囲から選択され、-790~-810mVの範囲から選択されることが好ましく、-795~-805mVの範囲から選択されることがより好ましい。
第3の印加電圧V3は、-830~-870mVの範囲から選択され、-840~-860mVの範囲から選択されることが好ましく、-845~-855mVの範囲から選択されることがより好ましい。
印加電圧を切り替えた直後は、酸化還元電流の値が不安定になるので、第1~第3の酸化還元電流は、各々電流値が安定したのを確認してから、測定値として取得することが好ましい。
全残留塩素濃度Ntと遊離残留塩素濃度Nfと結合残留塩素濃度Ncの具体的な求め方については後述する。
温度補正とは、酸化還元電流測定の温度依存性を考慮して、基準温度(例えば25℃)における酸化還元電流に換算することを意味する。基準温度が25℃の場合、具体的には以下の式(4)により温度補正を行う。
I(V)25=I(V)t /(1+(α×(t-25)/100)) ・・・(4)
t:測定時の試料液温度(℃)
I(V)t :試料液温度t℃において得られた電圧Vにおける酸化還元電流値
I(V)25:基準温度25℃で温度補正された電圧Vにおける酸化還元電流値
α:1℃当りの電極出力変化量(%)
測定対象となる試料液Sに特に限定はなく、試料液Sが水道水である場合の他、臭素(臭素イオンまたは臭素酸)を含む海水である場合や、ボイラー冷却水等の海水を含む場合にも好適に適用できる。
測定にあたって、試料液Sには、ハロゲンイオンを含む試薬は添加しない。
Nf=A×I(V1)+B×I(V2)+C×I(V3)+D ・・・(1)
(ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。)
定数であるA、B、C、Dは、DPD法により遊離残留塩素濃度を確認した複数の試料液Sについて、第1の酸化還元電流I(V1)と、第2の酸化還元電流I(V2)と、第3の酸化還元電流I(V3)を測定し、得られた複数の測定データから、重回帰分析と単回帰分析により求めることができる。
複数の試料液Sには、遊離残留塩素と、結合残留塩素の各々が異なる試料液Sが含まれることが好ましい。
Nt=E×I(V3)+F・・・(2)
(ただし、式(2)において、E、Fは定数である。)
定数であるE、Fは、DPD法により遊離残留塩素濃度を確認した複数の試料液Sについて、第3の酸化還元電流I(V3)を測定した複数の測定データから、重回帰分析と単回帰分析により求めることができる。
複数の試料液Sには、遊離残留塩素と、結合残留塩素の各々が異なる試料液Sが含まれることが好ましい。
複数の測定データは、前記式(1)に基づき、試料液Sの遊離残留塩素濃度Nfを求める際に用いた測定データを使用することが好ましい。
Nc=Nt-Nf・・・(3)
なお、演算制御部21は、遊離残留塩素濃度Nfと全残留塩素濃度Ntのみを求めてもよい。また、遊離残留塩素濃度Nfのみを求めてもよい。
[装置構成]
本発明の第2実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置は、図1のセンサ部1が、図2に示すセンサ部2に変更された他は、第1実施形態と同じである。
偏心カップリング41の下方側には、略棒状の連結軸44が連結されている。回転軸38aと連結軸44とが作る角度は約3度に設定され、モーター38の駆動により、連結軸44のカップリングケース42に連結している部位が円運動を行うようになっている。
モーター38の駆動により、連結軸44のカップリングケース42に連結している部位が円運動すると、連結軸44は、フランジ部45bの位置する部位を支点とする歳差運動をする。その結果、連結軸44に固定された検知極支持体46の下端に設けられた検知極35も円運動するようになっている。
なお、図2において、リード線47のコネクター48近傍の配線については図示を省略する。また、対極33からコネクター48迄の配線と、モーター38からコネクター48迄の配線についても図示を省略する。
第1実施形態と同様、検知極35は金製であり、対極33は白金製である。
なお、試料液Sは軸受け45により、軸受け45より上方のケース31内への侵入が阻止されるようになっている。
第2実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置は、第1実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置と同様に遊離残留塩素濃度、全残留塩素濃度、及び結合残留塩素濃度を測定することができる。
[装置構成]
本発明の第3実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置について図3を用いて説明する。なお、図3において、図1と同様の構成部材には、図1と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の無試薬式残留塩素測定装置は、センサ部3と本体部20と送液部50から概略構成されている。
送液部50は、フローセル19に試料液Sを送る流入路51と、フローセル19から試料液Sを排出する排出路52と、流入路51に設けられたポンプ53を有している。
ポンプ53と演算制御部21との間は配線L4で各々接続されている。ポンプ53は、演算制御部21からの指示により動作するようになっている。
第3実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置は、フローセル19内に試料液Sを流動させる他は、第1実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置と同様に遊離残留塩素濃度、全残留塩素濃度、及び結合残留塩素濃度を測定することができる。
[装置構成]
本発明の第4実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置は、図3のセンサ部3が、図4に示すセンサ部4に変更された他は、第3実施形態と同じである。
フローセル60には、支持基体32が挿入されている。フローセル60の上端側内壁と支持基体32外周の間は、Oリング61を介して液密に固着されている。
フローセル60の先端部の中央には試料液流入用の試料液流入口60aが設けられるとともに、Oリング61近傍の側壁には試料液流出用の試料液流出口60bが設けられている。試料液流入口60aには流入路51が、試料液流出口60bには排出路52が接続される。
上記各実施形態では、検知極に接する試料液を検知極表面に対して積極的に流動させる方法によりポーラログラフ法に必要な拡散層の厚みの再現性を得る方法を採用したが、検知極に接する狭い範囲の試料液の流動を抑制する方法により、拡散層の厚みの再現性を得る方法を採用してもよい。当該方法を採用した装置としては、例えば、特開2015-34740号に記載された酸化還元電流測定装置が挙げられる。
[試験装置]
以下の実験例では、試験装置として、東亜ディーケーケー株式会社製高感度残留塩素計CLH-1610型(第4実施形態の残留塩素測定装置に白金製温度補償センサを追加したもの)を用いた。
ただし、加電圧機構は、電圧を-100mV~-1000mVの範囲で任意に設定でき、かつ連続的に変化させられるように改造した。
また、検知極としては直径2mmの金電極を用い、線速度で約100cm/sが得られる程度の回転を与えた。対極は白金電極とした。
各実験例で求めたDPD値(DPD法による測定値)は、水道法施行規則第十七条第二項の規定に従い、以下の試薬を用い、以下の方法により求めた。
関東化学(株)製DPD指示薬(cat.No10466)。N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン(硫酸塩)の1.0gと無水硫酸ナトリウムの24gを混合した試薬。
(b)りん酸緩衝液
関東化学(株)製りん酸緩衝液DPD法用(cat.No33050)。0.2mol/Lりん酸二水素カリウム溶液の100mL、及び0.2mol/L水酸化ナトリウム溶液の35.4mLを混合した後、これに、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸(1水塩)の0.13gを溶解させた溶液。
りん酸緩衝液2.5mlを、容量50mLの共栓付き比色管に採り、これにDPD試薬0.5gを加える。次に、試料液を加えて50mLとし、混和後、呈色を残留塩素標準比色列と側面から比色して、試料液中の遊離残留塩素濃度を求める。
上記(c)で発色させた溶液にヨウ化カリウム約0.5gを加えて溶かし、約2分間静置後の呈色を残留塩素標準比色列と側面から比色して、試料液中の全残留塩素濃度を求める。
(e)結合残留塩素濃度の測定
全残留塩素濃度と遊離残留塩素濃度との差から、試料液中の結合残留塩素濃度を算定する。
有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を脱塩素水で希釈して、希釈後の濃度が、約0.5mg/L、約1mg/L、約1.5mg/L、約2.0mg/Lとなる遊離塩素試料液を調製した。
脱塩素水は、水道水を活性炭で処理して、塩素を除去した水(以下の実験例についても同じ)を用いた。
なお、図5において、Fの後に記載した数値はDPD法による遊離残留塩素濃度であり、Cの後に記載した数値は、DPD法による結合残留塩素濃度である。例えば、「F0.48C0.03」は、希釈後の濃度が約0.5mg/Lとなるように調製した試料液であるが、DPD法による遊離残留塩素濃度が0.48mg/Lであり、DPD法による結合残留塩素濃度が0.03mg/Lであったことを示す。
有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約1mg/L、約2.0mg/L、約3.0mg/Lとなるように脱塩素水で希釈したもの1Lに対してアンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.5mLを添加して、結合塩素試料液を調製した。塩化アンモニウム溶液の添加量は、試料液中のアンモニア性窒素の濃度が約0.5mg/Lとなる量である。
なお、図6において、Fの後に記載した数値とCの後に記載した数値の意味は図5におけるものと同じである。
そこで、図5と図6のポーラログラムに明確な差が生じる-700mVから-900mVの電流値に基づき重回帰分析と単回帰分析によって、遊離残留塩素の検量線を作成することとした。
検量線作成のため、以下の試料液を調製した。
No.1:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約1mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。
No.2:No.1の試料液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.2mLを添加した。
No.3:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.5mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。
No.4:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.3mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。
No.5:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.3mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。
No.6:No.3の試料液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.7:No.4の試料液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.8:No.5の試料液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.9:脱塩素水を試料液とした。
第1の印加電圧V1は、-750mV、第2の印加電圧V2は-800mV、第3の印加電圧V3は-850mVとした。
また、各試料液についてDPD法により、遊離残留塩素濃度Nf、全残留塩素濃度Nt、結合残留塩素濃度Ncを求めた。
試料No.2-1と試料No.2-2の測定結果から、調製(塩化アンモニウム溶液添加)して60分経過すれば、塩素とアンモニア性窒素との反応は安定し、ポーラログラムの測定に影響がないことが確認できたのでNo.6~No.8の試料液については、試料No.2-2と同様に、調製(塩化アンモニウム溶液添加)して60分間静置した後に測定した。
A=3.816[mg/L]/[μA]
B=-1.613[mg/L]/[μA]
C=-1.546[mg/L]/[μA]
D=0.1742[mg/L]
すなわち、遊離残留塩素濃度Nf[mg/L]を求める下記式(1a)の検量線が得られた。
Nf=3.816×I(V1)+(-1.613)×I(V2)
+(-1.546)×I(V3)+0.1742 ・・・(1a)
表2及び図7に示すように、両者には高い精度で一致した。
E=0.7465[mg/L]/[μA]
F=0.0187[mg/L]
すなわち、全残留塩素濃度Nt[mg/L]を求める下記式(2a)の検量線が得られた。
Nt=0.7465×I(V3)+0.0187・・・(2a)
図9に示すように、結合残留塩素を含むか否かにかかわらず、全残留塩素濃度Ntは、印加電圧-850mVで得られる酸化還元電流と、高い相関関係が得られることが確認できた。
実験例3で得られた検量線の有用性を確認するため、以下の試料液を調製した。
No.11:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.4mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。この希釈液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lである塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.12:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.8mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。この希釈液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lである塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.13:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約1.2mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。この希釈液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lである塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.14:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約1.6mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。この希釈液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lである塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.21:海水を試料液とした。
No.22:No.21の試料液1Lに対して、有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、No.21の試料液で希釈された後の濃度が0.5mg/Lとなるように添加した。
第1の印加電圧V1は、-750mV、第2の印加電圧V2は-800mV、第3の印加電圧V3は-850mVとした。
また、各試料液についてDPD法により、遊離残留塩素濃度Nf、全残留塩素濃度Nt、結合残留塩素濃度Ncを求めた。
試料No.22-1~試料No.22-4のデータが各々異なるのは、海水をベースとするNo.22の試料は、調製後、海水中の成分と塩素とが徐々に反応するためである。
図10~12において、「NH4-Nベース」として示したデータは、試料No.11~試料No.14のデータである。また、「海水ベース」として示したデータは、試料No.21、試料No.22-1~試料No.22-4のデータである。
また、「海水ベース」として示したデータも、絶対値のずれは見られたものの、演算値とDPD値との関係は高い相関関係を示した。
海水を含む試料液については、相関関係は確保できているので、試料No.22-1~試料No.22-4のように、海水を含む試料液に基づいて、定数A~Fを求めることにより、絶対値のずれについて改善することが可能である。
14…対極支持体、15、33…対極、16、38…モーター、17、45…軸受け、
18、36…ビーズ、19、60…フローセル、20…本体部、
21…演算制御部、22…加電圧機構、23…電流計、24…表示装置、
50…送液部、53…ポンプ、S…試料液
Claims (6)
- 試料液に対してハロゲンイオンを含む試薬を添加しない無試薬式残留塩素測定装置であって、
試料液に浸漬される金製の検知極、及び白金製の対極と、
前記検知極と対極との間に、第1の印加電圧V1、第2の印加電圧V2、及び第3の印加電圧V3を順次与える加電圧機構と、
前記検知極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定する電流計と、
演算制御部とを具備し、
第1の印加電圧V1は、-730~-770mVの範囲から、第2の印加電圧V2は-780~-820mVの範囲から、第3の印加電圧V3は-830~-870mVの範囲から、各々選択され、
前記電流計は、前記加電圧機構が第1の印加電圧V1を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第1の酸化還元電流I(V1)と、前記加電圧機構が第2の印加電圧V2を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第2の酸化還元電流I(V2)と、前記加電圧機構が第3の印加電圧V3を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第3の酸化還元電流I(V3)とを、各々測定し、
前記演算制御部は、下記式(1)に基づき、前記試料液の遊離残留塩素濃度Nfを求めることを特徴とする無試薬式残留塩素測定装置。
Nf=A×I(V1)+B×I(V2)+C×I(V3)+D ・・・(1)
(ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。) - 前記演算制御部は、さらに、下記式(2)に基づき、前記試料液の全残留塩素濃度Ntを求める請求項1に記載の無試薬式残留塩素測定装置。
Nt=E×I(V3)+F・・・(2)
(ただし、式(2)において、E、Fは定数である。) - 前記演算制御部は、さらに、下記式(3)に基づき、前記試料液の結合残留塩素濃度Ncを求める請求項2に記載の無試薬式残留塩素測定装置。
Nc=Nt-Nf・・・(3) - 試料液に対してハロゲンイオンを含む試薬を添加しない無試薬式残留塩素測定方法であって、
試料液に浸漬した金製の検知極と白金製の対極との間に、第1の印加電圧V1を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第1の酸化還元電流I(V1)と、第2の印加電圧V2を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第2の酸化還元電流I(V2)と、第3の印加電圧V3を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第3の酸化還元電流I(V3)とを、各々測定し、
前記第1の印加電圧V1は、-730~-770mVの範囲から、第2の印加電圧V2は-780~-820mVの範囲から、第3の印加電圧V3は-830~-870mVの範囲から、各々選択し、
下記式(1)に基づき、前記試料液の遊離残留塩素濃度Nfを求めることを特徴とする無試薬式残留塩素測定方法。
Nf=A×I(V1)+B×I(V2)+C×I(V3)+D ・・・(1)
(ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。) - さらに、下記式(2)に基づき、前記試料液の全残留塩素濃度Ntを求める請求項4に記載の無試薬式残留塩素測定方法。
Nt=E×I(V3)+F・・・(2)
(ただし、式(2)において、E、Fは定数である。) - さらに、下記式(3)に基づき、前記試料液の結合残留塩素濃度Ncを求める請求項5に記載の無試薬式残留塩素測定方法。
Nc=Nt-Nf・・・(3)
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