JP7177341B2 - 無試薬式残留塩素測定装置及び無試薬式残留塩素測定方法 - Google Patents

無試薬式残留塩素測定装置及び無試薬式残留塩素測定方法 Download PDF

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Description

本発明は無試薬式残留塩素測定装置及び無試薬式残留塩素測定方法に関する。さらに詳しくは、電極を交換することなく、結合残留塩素による妨害を排して遊離残留塩素濃度を測定でき、さらには、電極を交換することなく、遊離残留塩素濃度に加えて、全残留塩素濃度と結合残留塩素濃度も測定可能な無試薬式残留塩素測定装置及び無試薬式残留塩素測定方法に関する。
残留塩素とは、塩素処理の結果水中に残留した消毒作用のある有効塩素のことで、次亜塩素酸などの遊離残留塩素と、クロラミンのような結合残留塩素に区分される。いずれも酸化による殺菌力を有している。
この内、遊離残留塩素は主として塩素剤が水と反応して生成する次亜塩素酸(HClO)と、これが解離した次亜塩素酸イオン(ClO)と、分子状塩素(Cl)の3種類の形態をとる。上水等の通常のpHにおいては、ほとんどの遊離残留塩素が次亜塩素酸又は次亜塩素酸イオンとして存在する。
一方、結合残留塩素は、水中のアンモニア、アミン類、アミノ酸類と遊離残留塩素が反応して生成するもので、モノクロラミン(NHCl)、ジクロラミン(NHCl)、トリクロラミン(NCl)の三種類の形態をとる。上水等の通常のpHにおいては、ほとんどの結合残留塩素が、モノクロラミン又はジクロラミンとして存在する。モノクロラミンとジクロラミンは、遊離残留塩素に比較すると圧倒的に弱いものの殺菌力を有している。
我が国の水道法施行規則では、充分な殺菌力を確保する観点で、給水栓における水が、遊離残留塩素であれば0.1mg/L以上、結合残留塩素であれば0.4mg/L以上の残留塩素を保持すべきことを定めている。このように、殺菌力の違いを考慮して、保持すべき残留塩素の濃度も遊離残留塩素の場合と結合残留塩素の場合とで異なる。したがって、浄水場等においては、全残留塩素濃度だけでなく、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度とを区別して把握することが必要である。
また、不連続点処理による効率的な遊離残留塩素濃度の管理において、結合残留塩素と遊離残留塩素を区別して把握することが必要である。
遊離残留塩素と結合残留塩素とを区別して測定することは、種々の方法で行われている。たとえば、o-トリジン比色法(OT法)では試薬添加から測定するまでの時間を変えることにより、ジエチル-p-フェニレンジアミン比色法(DPD法)では、添加する試薬を代えることにより、全残留塩素濃度(遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度の合計)と遊離残留塩素濃度を各々測定できる。
一方、連続測定や自動化に適した方法として、検知極と対極との間に電圧を印加した際に、両電極間に流れる酸化還元電流を測定するポーラログラフ法が知られている。
しかし、ポーラログラフ法では、遊離残留塩素と結合残留塩素の双方が還元されてしまうため、両者を区別して測定することが困難である。
特許文献1では、ポーラログラフ法の塩素濃度測定装置において得られる電流は、遊離残留塩素濃度に基づく電流と結合残留塩素に基づく電流の和であると見做し、二種以上の異なる電圧を印加した際の電流に基づく連立方程式を解くことにより、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度を区別して求める考え方が示されている。
そして、検知極として金電極、対極として銀/塩化銀電極を用い、二種以上の異なる電圧として100mVと-100mVを印加した際の電流を測定すると、それぞれの電流に含まれる結合残留塩素の影響分を相殺して遊離残留塩素濃度を求めることができるとされている。
しかし、特許文献1には、結合残留塩素の影響を排して遊離残留塩素濃度を求める条件が開示されているに過ぎず、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度の双方を、実用に耐える精度で測定可能な具体的な条件、すなわち、検知極と対極の種類、及び二種以上の異なる電圧の値等は示されていない。
また、特許文献2には、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度の双方を、実用に耐える精度で測定可能な具体的な条件として、金製の検知極と銀/塩化銀製の対極を用い、+100~-50mVの範囲から選択される第1の印加電圧と、-150~-250mVの範囲から選択される第2の印加電圧を用いることが開示されている。
しかし、この条件は、ハロゲン系酸化剤にスルファミン酸又はその塩が添加された水を試料液とする特殊な場合にのみ適用できる条件であった。
また、特許文献3には、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度の双方を、実用に耐える精度で測定可能な具体的な条件として、金製の検知極と白金製の対極を用い、-0.2~-0.4Vの範囲から選択される第1の印加電圧と、-0.4~-0.6Vの範囲から選択される第2の印加電圧と、-0.7~-1.0Vの範囲から選択される第3の印加電圧を用いることが開示されている。
しかし、特許文献3で開示されている測定装置は、試料液にハロゲンイオンを含む試薬を添加することが必要な有試薬式の測定装置であり、ランニングコストやメンテナンスの手間がかかる点で不利であった。
特開平11-148915号公報 特開2015-34741号公報 特開2001-349866号公報
本発明は、上記事情に鑑み、ハロゲンイオンを含む試薬を用いることなく、かつ、電極を交換することなく、結合残留塩素の妨害を排して遊離残留塩素濃度を、実用に耐える精度で測定可能な新たな無試薬式残留塩素測定装置及び無試薬式残留塩素測定方法を提供すること、さらには、ハロゲンイオンを含む試薬を用いることなく、かつ、電極を交換することなく、遊離残留塩素濃度に加えて、全残留塩素濃度と結合残留塩素濃度も実用に耐える精度で測定可能な無試薬式残留塩素測定装置及び無試薬式残留塩素測定方法を提供することを課題とする。
上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、金-白金電極を用いたポーラログラフ法で測定した場合、遊離残留塩素と結合残留塩素はポーラログラムの形状が異なることから、本発明は以下の構成を採用した。
[1]試料液に対してハロゲンイオンを含む試薬を添加しない無試薬式残留塩素測定装置であって、
試料液に浸漬される金製の検知極、及び白金製の対極と、
前記検知極と対極との間に、第1の印加電圧V、第2の印加電圧V、及び第3の印加電圧Vを順次与える加電圧機構と、
前記検知極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定する電流計と、
演算制御部とを具備し、
第1の印加電圧Vは、-730~-770mVの範囲から、第2の印加電圧Vは-780~-820mVの範囲から、第3の印加電圧Vは-830~-870mVの範囲から、各々選択され、
前記電流計は、前記加電圧機構が第1の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第1の酸化還元電流I(V)と、前記加電圧機構が第2の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第2の酸化還元電流I(V)と、前記加電圧機構が第3の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第3の酸化還元電流I(V)とを、各々測定し、
前記演算制御部は、下記式(1)に基づき、前記試料液の遊離残留塩素濃度Nfを求めることを特徴とする無試薬式残留塩素測定装置。
Nf=A×I(V)+B×I(V)+C×I(V)+D ・・・(1)
(ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。)
[2]前記演算制御部は、さらに、下記式(2)に基づき、前記試料液の全残留塩素濃度Ntを求める[1]に記載の無試薬式残留塩素測定装置。
Nt=E×I(V)+F・・・(2)
(ただし、式(2)において、E、Fは定数である。)
[3]前記演算制御部は、さらに、下記式(3)に基づき、前記試料液の結合残留塩素濃度Ncを求める[2]に記載の無試薬式残留塩素測定装置。
Nc=Nt-Nf・・・(3)
[4]試料液に対してハロゲンイオンを含む試薬を添加しない無試薬式残留塩素測定方法であって、
試料液に浸漬した金製の検知極と白金製の対極との間に、第1の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第1の酸化還元電流I(V)と、第2の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第2の酸化還元電流I(V)と、第3の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第3の酸化還元電流I(V)とを、各々測定し、
前記第1の印加電圧Vは、-730~-770mVの範囲から、第2の印加電圧V-780~-820mVの範囲から、第3の印加電圧V-830~-870mVの範囲から、各々選択し、
下記式(1)に基づき、前記試料液の遊離残留塩素濃度Nfを求めることを特徴とする無試薬式残留塩素測定方法。
Nf=A×I(V)+B×I(V)+C×I(V)+D ・・・(1)
(ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。)
[5]さらに、下記式(2)に基づき、前記試料液の全残留塩素濃度Ntを求める[4]に記載の無試薬式残留塩素測定方法。
Nt=E×I(V)+F・・・(2)
(ただし、式(2)において、E、Fは定数である。)
[6]さらに、下記式(3)に基づき、前記試料液の結合残留塩素濃度Ncを求める[5]に記載の無試薬式残留塩素測定方法。
Nc=Nt-Nf・・・(3)
本発明の無試薬式残留塩素測定装置及び無試薬式残留塩素測定方法によれば、ハロゲンイオンを含む試薬を用いることなく、かつ、電極を交換することなく、結合残留塩素の妨害を排して遊離残留塩素濃度を、実用に耐える精度で測定可能である。
さらには、ハロゲンイオンを含む試薬を用いることなく、かつ、電極を交換することなくで、遊離残留塩素濃度に加えて、全残留塩素濃度と結合残留塩素濃度も実用に耐える精度で測定可能である。
本発明の第1実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置の全体構成図である。 本発明の第2実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置におけるセンサ部の断面図である。 本発明の第3実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置の全体構成図である。 本発明の第4実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置におけるセンサ部の断面図である。 本発明の実験例1で得られたポーラログラムである。 本発明の実験例2で得られたポーラログラムである。 遊離残留塩素濃度について、本発明の実験例3で得られた演算値をDPD値と対比したグラフである。 本発明の実験例3で得られた遊離残留塩素濃度についてのDPD値を、酸化還元電流I(V)と対比したグラフである。 全残留塩素濃度について、本発明の実験例3で得られた検量線である。 遊離残留塩素濃度について、本発明の実験例4で得られた演算値をDPD値と対比したグラフである。 全残留塩素濃度について、本発明の実験例4で得られた演算値をDPD値と対比したグラフである。 結合残留塩素濃度について、本発明の実験例4で得られた演算値をDPD値と対比したグラフである。 本発明の実験例4で得られた遊離残留塩素濃度についてのDPD値を、酸化還元電流I(V)と対比したグラフである。 本発明の実験例4で得られた全残留塩素濃度についてのDPD値を、酸化還元電流I(V)と対比したグラフである。 本発明の実験例4で得られた結合残留塩素濃度についてのDPD値を、酸化還元電流I(V)と対比したグラフである。
<第1実施形態>
[装置構成]
本発明の第1実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置について図1を用いて説明する。本実施形態の無試薬式残留塩素測定装置は、センサ部1と本体部20とから概略構成されている。
センサ部1は、試料液Sが導入される測定セル11、下部が試料液Sに浸漬される検知極支持体12、検知極支持体12の先端面に取り付けられた検知極13、下部が試料液Sに浸漬された対極支持体14、対極支持体14の下端側外周面に取り付けられた対極15、検知極13を円運動状に振動させるためのモーター16、検知極支持体12を保持する軸受け17、試料液S中に投入された検知極13洗浄用の多数のビーズ18を有している。なお、測定セル11には、検知極13と対極15との間を仕切るメッシュ状の仕切り板11aが設けられており、ビーズ18が、対極15側に流出しないようになっている。
本体部20は、演算制御部21、加電圧機構22、電流計23、表示装置24を有している。検知極13と演算制御部21との間は配線L1で、対極15と演算制御部21との間は配線L2で、モーター16と演算制御部21との間は配線L3で各々接続されている。電流計23は配線L1の途中に、加電圧機構22は配線L2の途中に、各々設けられている。
検知極13は金製である。また、対極15は白金製である。
ポーラログラフ法に用いられる検知極と対極の組み合わせとしては、種々の組み合わせが考えられるところ、本願発明者は、一対の検知極と対極だけで、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度の双方の値を実用に耐える精度で求めることを目的に、種々の検知極と対極の組み合わせで印加電圧を変化させて検討した。その結果、後述の実施例に示すように、金製の検知極と白金製の対極と、特定の異なる3つの電圧を組み合わせた場合に、遊離残留塩素濃度と結合残留塩素濃度の双方の値を実用に耐える精度で求められることを見いだした。
検知極支持体12は傾斜状態に配置されており、その長さ方向中間部所定箇所が軸受け17によって保持され、軸受け17による保持箇所を支点として歳差運動できるようになっている。また、検知極支持体12の基端部12aとモーター16の回転軸16aは偏心して係合している。そのため、モーター16の回転軸16aを回転させることにより基端部12aが円運動すると共に、検知極支持体12の先端部に取り付けられた検知極13も振動(円運動)するようになっている。また、配線L1は、検知極支持体12内を通って軸受け17による保持箇所近傍から、検知極13を円運動させても、ねじれたりせずに引き出せるようになっている。
ビーズ18は、検知極13の近傍に非固定状態で多数配置されている。ビーズ18は、振動(円運動)する検知極13に接触して、検知極13を研磨するようになっている。ビーズ18の材質としては、セラミックまたはガラスが好ましい。
検知極13および対極15は、汚れ成分の組成に応じた薬液を用いて洗浄することかできる。例えば、シュウ酸、塩酸、過酸化水素水などを使用した薬液洗浄を行うことができる。また、オゾン洗浄を行ってもよい。また、薬液洗浄等に代えて、若しくは薬液洗浄等と共に、ブラシ洗浄等の物理洗浄を施してもよい。
また、検知極13の清浄を保つため、ビーズ18による機械的研磨に加えて、電解研磨を行うことが好ましい。電解研磨は、検知極と対極との間に測定時とは逆向きに電流が流れるようになっていればよく、適宜周知の方法を採用することができる。
本実施形態の無試薬式残留塩素測定装置は、対極15や検知極13の洗浄を行うための自動洗浄機構を備えていてもよい。その場合、定期的な洗浄を自動的に行うことができる。
加電圧機構22は、検知極13と対極15との間に第1の印加電圧V、第2の印加電圧V、及び第3の印加電圧Vを順次与えるようになっている。
電圧を印加する時間は、試料液の特性と応答速度に応じて適宜設定すればよい。一つの値の電圧を印加する時間は、10~120秒であることが好ましい。
なお、第1の印加電圧V、第2の印加電圧V、及び第3の印加電圧Vを与える順番に特に限定はないが、電圧変化によるノイズを排除するために昇順または降順で切り替えて行くことが好ましい。
第1の印加電圧Vは、-730~-770mVの範囲から選択され、-740~-760mVの範囲から選択されることが好ましく、-745~-755mVの範囲から選択されることがより好ましい。
第2の印加電圧Vは、-780~-820mVの範囲から選択され、-790~-810mVの範囲から選択されることが好ましく、-795~-805mVの範囲から選択されることがより好ましい。
第3の印加電圧Vは、-830~-870mVの範囲から選択され、-840~-860mVの範囲から選択されることが好ましく、-845~-855mVの範囲から選択されることがより好ましい。
電流計23は、検知極13と対極15との間に、加電圧機構22が第1の印加電圧Vを与えた際に検知極13と対極15との間に流れる第1の酸化還元電流I(V)と、加電圧機構22が第2の印加電圧Vを与えた際に検知極13と対極15との間に流れる第2の酸化還元電流I(V)と、加電圧機構22が第3の印加電圧Vを与えた際に検知極13と対極15との間に流れる第3の酸化還元電流I(V)とを、各々測定するようになっている。
印加電圧を切り替えた直後は、酸化還元電流の値が不安定になるので、第1~第3の酸化還元電流は、各々電流値が安定したのを確認してから、測定値として取得することが好ましい。
演算制御部21は、本発明の無試薬式残留塩素測定方法に従い、第1の酸化還元電流I(V)と、第2の酸化還元電流I(V)と、第3の酸化還元電流I(V)に基づき、遊離残留塩素濃度Nfを求めるようになっている。また、第3の酸化還元電流I(V)に基づき、全残留塩素濃度Ntを求めるようになっている。また、全残留塩素濃度Ntと遊離残留塩素濃度Nfとの差から、結合残留塩素濃度Ncを求めるようになっている。
全残留塩素濃度Ntと遊離残留塩素濃度Nfと結合残留塩素濃度Ncの具体的な求め方については後述する。
演算制御部21が求めた全残留塩素濃度Ntと遊離残留塩素濃度Nfと結合残留塩素濃度Ncは、信号D1として表示装置24に与えられ、表示装置24にこれらの濃度が表示されるようになっている。また、これらの濃度は、信号D2として、外部の記録計、データロガー、メモリ、プリンター、コンピュータ等に伝達されるようになっている。なお、信号D2は、デジタル信号でもアナログ信号でもよい。また、有線で伝達されてもよいし、無線で伝達されてもよい。
また、演算制御部21は、電流計23からの電流値を、外部コンピュータに信号D2として出力してもよい。その場合、当該外部コンピュータにおいて、本発明の無試薬式残留塩素測定方法に従い、第1の酸化還元電流I(V)と、第2の酸化還元電流I(V)と、第3の酸化還元電流I(V)に基づき、遊離残留塩素濃度Nfを求めるようにしてもよい。また、当該外部コンピュータにおいて、第3の酸化還元電流I(V)に基づき、全残留塩素濃度Ntを求めるようにしてもよい。また、当該外部コンピュータにおいて、全残留塩素濃度Ntと遊離残留塩素濃度Nfとの差から、結合残留塩素濃度Ncを求めるようにしてもよい。
また、演算制御部21は、電流計23からの各電流値を、信号D1として表示装置24に出力してもよい。その場合、操作者が本発明の無試薬式残留塩素測定方法に従い、表示装置24らか読み取った各電流値に基づき、遊離残留塩素濃度Nf等を求めることができる。
演算に用いる酸化還元電流については、温度補正することが好ましい。そのため、本発明の無試薬式残留塩素測定装置は、温度センサを備えることが好ましい。試料液温度が充分に一定に保たれている場合や、要求される測定精度が低い場合は、温度補正は省略してもよい。
温度補正とは、酸化還元電流測定の温度依存性を考慮して、基準温度(例えば25℃)における酸化還元電流に換算することを意味する。基準温度が25℃の場合、具体的には以下の式(4)により温度補正を行う。
I(V)25=I(V)t /(1+(α×(t-25)/100)) ・・・(4)
t:測定時の試料液温度(℃)
I(V)t :試料液温度t℃において得られた電圧Vにおける酸化還元電流値
I(V)25:基準温度25℃で温度補正された電圧Vにおける酸化還元電流値
α:1℃当りの電極出力変化量(%)
[無試薬式残留塩素測定方法]
測定対象となる試料液Sに特に限定はなく、試料液Sが水道水である場合の他、臭素(臭素イオンまたは臭素酸)を含む海水である場合や、ボイラー冷却水等の海水を含む場合にも好適に適用できる。
測定にあたって、試料液Sには、ハロゲンイオンを含む試薬は添加しない。
演算制御部21は、下記式(1)に基づき試料液Sの遊離残留塩素濃度Nfを求める。
Nf=A×I(V)+B×I(V)+C×I(V)+D ・・・(1)
(ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。)
定数であるA、B、C、Dは、DPD法により遊離残留塩素濃度を確認した複数の試料液Sについて、第1の酸化還元電流I(V)と、第2の酸化還元電流I(V)と、第3の酸化還元電流I(V)を測定し、得られた複数の測定データから、重回帰分析と単回帰分析により求めることができる。
複数の試料液Sには、遊離残留塩素と、結合残留塩素の各々が異なる試料液Sが含まれることが好ましい。
演算制御部21は、また、下記式(2)に基づき試料液Sの全残留塩素濃度Ntを求める。
Nt=E×I(V)+F・・・(2)
(ただし、式(2)において、E、Fは定数である。)
定数であるE、Fは、DPD法により遊離残留塩素濃度を確認した複数の試料液Sについて、第3の酸化還元電流I(V)を測定した複数の測定データから、重回帰分析と単回帰分析により求めることができる。
複数の試料液Sには、遊離残留塩素と、結合残留塩素の各々が異なる試料液Sが含まれることが好ましい。
複数の測定データは、前記式(1)に基づき、試料液Sの遊離残留塩素濃度Nfを求める際に用いた測定データを使用することが好ましい。
演算制御部21は、また、下記式(3)に基づき試料液Sの結合残留塩素濃度Ncを求める。
Nc=Nt-Nf・・・(3)
なお、演算制御部21は、遊離残留塩素濃度Nfと全残留塩素濃度Ntのみを求めてもよい。また、遊離残留塩素濃度Nfのみを求めてもよい。
<第2実施形態>
[装置構成]
本発明の第2実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置は、図1のセンサ部1が、図2に示すセンサ部2に変更された他は、第1実施形態と同じである。
図2はセンサ部2の断面図である。図2に示すセンサ部2は、略円筒状のケース31が設けられ、このケース31の一方の開口部には、中心部に軸方向に沿った貫通孔32aが穿設されている支持基体32が固着されている。この支持基体32の軸方向略中央部には、上下一対の円形の窓32b、32bが、一方の周面から対向する周面に貫通するように、軸方向と直交して穿設されている。また、その先端近くには凹部32cが周方向に形成され、かつ、その凹部32cの全面にわたって対極33が巻き付けられている。
また、この対極33の下方には、支持基体32の先端を覆うようにしてメッシュからなるキャップ34が螺合している。また、キャップ34内には後述する検知極35を研磨・洗浄するためのビーズ36が多数収納されている。そして、窓32bを内側から覆う位置に内網37が設けられ、ビーズ36の流出を防ぐようになっている。
ケース31の内部にはモーター38が取付けられており、モーター38の回転軸38aには、偏心カップリング41の上方側に固定されている。偏心カップリング41は、カップリングケース42に保持されており、カップリングケース42は、複数本の支柱43で支持基体32の上方に保持されている。
偏心カップリング41の下方側には、略棒状の連結軸44が連結されている。回転軸38aと連結軸44とが作る角度は約3度に設定され、モーター38の駆動により、連結軸44のカップリングケース42に連結している部位が円運動を行うようになっている。
連結軸44の軸方向中央よりやや下側は、軸受け45に挿入されている。軸受け45は、連結軸44方向に円筒状の筒部45aと、この筒部45aの下端側周囲において半径方向に広がったフランジ部45bとからなり、ゴム材で形成されている。筒部45aは連結軸44に高い圧力をもって水密な状態で密着している。また、軸受け45は、その外周面が支持基体32の内周面に水密に接している。
連結軸44の軸受け45よりも下端側は、略円筒状の検知極支持体46の上端側に挿入されている。これにより、検知極支持体46が連結軸44の下端側に連結固定され、支持基体32の貫通孔32a内に垂下されている。検知極支持体46の下端には、検知極35が設けられている。
モーター38の駆動により、連結軸44のカップリングケース42に連結している部位が円運動すると、連結軸44は、フランジ部45bの位置する部位を支点とする歳差運動をする。その結果、連結軸44に固定された検知極支持体46の下端に設けられた検知極35も円運動するようになっている。
検知極35のリード線47は、最終的にはコネクター48を経由して本体部20の演算制御部21に連結されている。また、対極33は、コネクター48を経由して本体部20の演算制御部21に連結されている。モーター38も、コネクター48を経由して本体部20の演算制御部21に連結されている。
なお、図2において、リード線47のコネクター48近傍の配線については図示を省略する。また、対極33からコネクター48迄の配線と、モーター38からコネクター48迄の配線についても図示を省略する。
第1実施形態と同様、検知極35は金製であり、対極33は白金製である。
本実施形態のセンサ部2の下端を試料液Sに浸すと、試料液Sがキャップ34と窓32bから流入流出する。これにより、試料液Sは検知極35と接触すると共に、支持基体32に巻き付けられている対極33にも接触する。すなわち、検知極35と対極33が試料液Sに浸漬された状態となる。
なお、試料液Sは軸受け45により、軸受け45より上方のケース31内への侵入が阻止されるようになっている。
第2実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置は、第1実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置と同様に遊離残留塩素濃度、全残留塩素濃度、及び結合残留塩素濃度を測定することができる。
<第3実施形態>
[装置構成]
本発明の第3実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置について図3を用いて説明する。なお、図3において、図1と同様の構成部材には、図1と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の無試薬式残留塩素測定装置は、センサ部3と本体部20と送液部50から概略構成されている。
センサ部3は、第1実施形態の測定セル11が、フローセル19に変更された他は、第1実施形態のセンサ部1と同様である。フローセル19には、検知極13と対極15との間を仕切るメッシュ状の仕切り板19aが設けられており、ビーズ18が、対極15側に流出しないようになっている。
送液部50は、フローセル19に試料液Sを送る流入路51と、フローセル19から試料液Sを排出する排出路52と、流入路51に設けられたポンプ53を有している。
ポンプ53と演算制御部21との間は配線L4で各々接続されている。ポンプ53は、演算制御部21からの指示により動作するようになっている。
第3実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置は、フローセル19内に試料液Sを流動させる他は、第1実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置と同様に遊離残留塩素濃度、全残留塩素濃度、及び結合残留塩素濃度を測定することができる。
<第4実施形態>
[装置構成]
本発明の第4実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置は、図3のセンサ部3が、図4に示すセンサ部4に変更された他は、第3実施形態と同じである。
図4はセンサ部4の断面図である。センサ部4は、第2実施形態のセンサ部2に、フローセル60が追加された構成となっている。図4において、図2と同一の構成部材については、図2と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
フローセル60には、支持基体32が挿入されている。フローセル60の上端側内壁と支持基体32外周の間は、Oリング61を介して液密に固着されている。
フローセル60の先端部の中央には試料液流入用の試料液流入口60aが設けられるとともに、Oリング61近傍の側壁には試料液流出用の試料液流出口60bが設けられている。試料液流入口60aには流入路51が、試料液流出口60bには排出路52が接続される。
本実施形態のセンサ部4のフローセル60の試料液流入口60aから試料液Sを流すと、試料液Sの一部がキャップ34内に侵入して窓32bを介して試料液流出口60bから流出する。これにより、試料液Sは検知極35と接触する。また、試料液Sの一部は試料液流入口60aから流入した後、支持基体32の外側を通過して試料液流出口60bから流出する。これにより、試料液Sは支持基体32に巻き付けられている対極33に接触する。すなわち、フローセル60の試料液流入口60aから試料液Sを流すことにより、検知極35と対極33が試料液Sに浸漬した状態となる。
第4実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置は、第3実施形態に係る無試薬式残留塩素測定装置と同様に遊離残留塩素濃度、全残留塩素濃度、及び結合残留塩素濃度を測定することができる。
<その他の実施形態>
上記各実施形態では、検知極に接する試料液を検知極表面に対して積極的に流動させる方法によりポーラログラフ法に必要な拡散層の厚みの再現性を得る方法を採用したが、検知極に接する狭い範囲の試料液の流動を抑制する方法により、拡散層の厚みの再現性を得る方法を採用してもよい。当該方法を採用した装置としては、例えば、特開2015-34740号に記載された酸化還元電流測定装置が挙げられる。
以下、本発明の効果を明らかにするための実験例を示す。
[試験装置]
以下の実験例では、試験装置として、東亜ディーケーケー株式会社製高感度残留塩素計CLH-1610型(第4実施形態の残留塩素測定装置に白金製温度補償センサを追加したもの)を用いた。
ただし、加電圧機構は、電圧を-100mV~-1000mVの範囲で任意に設定でき、かつ連続的に変化させられるように改造した。
また、検知極としては直径2mmの金電極を用い、線速度で約100cm/sが得られる程度の回転を与えた。対極は白金電極とした。
[DPD値]
各実験例で求めたDPD値(DPD法による測定値)は、水道法施行規則第十七条第二項の規定に従い、以下の試薬を用い、以下の方法により求めた。
(a)DPD試薬
関東化学(株)製DPD指示薬(cat.No10466)。N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン(硫酸塩)の1.0gと無水硫酸ナトリウムの24gを混合した試薬。
(b)りん酸緩衝液
関東化学(株)製りん酸緩衝液DPD法用(cat.No33050)。0.2mol/Lりん酸二水素カリウム溶液の100mL、及び0.2mol/L水酸化ナトリウム溶液の35.4mLを混合した後、これに、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸(1水塩)の0.13gを溶解させた溶液。
(c)遊離残留塩素濃度の測定
りん酸緩衝液2.5mlを、容量50mLの共栓付き比色管に採り、これにDPD試薬0.5gを加える。次に、試料液を加えて50mLとし、混和後、呈色を残留塩素標準比色列と側面から比色して、試料液中の遊離残留塩素濃度を求める。
(d)全残留塩素濃度の測定
上記(c)で発色させた溶液にヨウ化カリウム約0.5gを加えて溶かし、約2分間静置後の呈色を残留塩素標準比色列と側面から比色して、試料液中の全残留塩素濃度を求める。
(e)結合残留塩素濃度の測定
全残留塩素濃度と遊離残留塩素濃度との差から、試料液中の結合残留塩素濃度を算定する。
[実験例1]
有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を脱塩素水で希釈して、希釈後の濃度が、約0.5mg/L、約1mg/L、約1.5mg/L、約2.0mg/Lとなる遊離塩素試料液を調製した。
脱塩素水は、水道水を活性炭で処理して、塩素を除去した水(以下の実験例についても同じ)を用いた。
上記各試料液について、試験装置を用いて、印加電圧と酸化還元電流との関係を示すポーラログラムを調べた。印加電圧は、掃引速度50mV/分で、-100mVから-1000mVまで連続的に変化させた。結果を図5に示す。
なお、図5において、Fの後に記載した数値はDPD法による遊離残留塩素濃度であり、Cの後に記載した数値は、DPD法による結合残留塩素濃度である。例えば、「F0.48C0.03」は、希釈後の濃度が約0.5mg/Lとなるように調製した試料液であるが、DPD法による遊離残留塩素濃度が0.48mg/Lであり、DPD法による結合残留塩素濃度が0.03mg/Lであったことを示す。
図5に示すように、約-600mV~-900mVの範囲で、プラトー領域(印加電圧が若干変化しても、電流がほとんど変化しない領域)が得られた。プラトー領域は、遊離残留塩素濃度が高いほど高電圧側にシフトする傾向がみられた。
[実験例2]
有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約1mg/L、約2.0mg/L、約3.0mg/Lとなるように脱塩素水で希釈したもの1Lに対してアンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.5mLを添加して、結合塩素試料液を調製した。塩化アンモニウム溶液の添加量は、試料液中のアンモニア性窒素の濃度が約0.5mg/Lとなる量である。
上記各試料液について、調製後60分間静置し、塩素とアンモニア性窒素が反応するのを待ってから、試験装置を用いて、印加電圧と酸化還元電流との関係を示すポーラログラムを調べた。印加電圧は、掃引速度50mV/分で、-100mVから-1000mVまで連続的に変化させた。結果を図6に示す。
なお、図6において、Fの後に記載した数値とCの後に記載した数値の意味は図5におけるものと同じである。
図6に示すように、プラトー領域は存在せず、従来のように、プラトー領域の電流値に基づき検量線を作成することはできない。
そこで、図5と図6のポーラログラムに明確な差が生じる-700mVから-900mVの電流値に基づき重回帰分析と単回帰分析によって、遊離残留塩素の検量線を作成することとした。
[実験例3]
検量線作成のため、以下の試料液を調製した。
No.1:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約1mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。
No.2:No.1の試料液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.2mLを添加した。
No.3:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.5mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。
No.4:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.3mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。
No.5:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.3mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。
No.6:No.3の試料液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.7:No.4の試料液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.8:No.5の試料液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lの塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.9:脱塩素水を試料液とした。
各試料液について、試験装置を用いて、第1の酸化還元電流I(V)と、第2の酸化還元電流I(V)と、第3の酸化還元電流I(V)を測定した。
第1の印加電圧Vは、-750mV、第2の印加電圧Vは-800mV、第3の印加電圧Vは-850mVとした。
また、各試料液についてDPD法により、遊離残留塩素濃度Nf、全残留塩素濃度Nt、結合残留塩素濃度Ncを求めた。
結果を表1に示す。表1において、試料No.2-1は、No.2の試料液を調製(塩化アンモニウム溶液添加)した直後に測定した結果である。また、試料No.2-2は、No.2の試料液を調製(塩化アンモニウム溶液添加)して60分間静置した後に測定した結果である。
試料No.2-1と試料No.2-2の測定結果から、調製(塩化アンモニウム溶液添加)して60分経過すれば、塩素とアンモニア性窒素との反応は安定し、ポーラログラムの測定に影響がないことが確認できたのでNo.6~No.8の試料液については、試料No.2-2と同様に、調製(塩化アンモニウム溶液添加)して60分間静置した後に測定した。
Figure 0007177341000001
表1の結果に基づき、重回帰分析と単回帰分析を行い、遊離残留塩素濃度Nfを求める前記式(1)の定数を求めたところ、以下の値が得られた。
A=3.816[mg/L]/[μA]
B=-1.613[mg/L]/[μA]
C=-1.546[mg/L]/[μA]
D=0.1742[mg/L]
すなわち、遊離残留塩素濃度Nf[mg/L]を求める下記式(1a)の検量線が得られた。
Nf=3.816×I(V)+(-1.613)×I(V
+(-1.546)×I(V)+0.1742 ・・・(1a)
得られた式(1a)に基づき演算して求めた各試料液の遊離残留塩素濃度Nf(演算値 Nf)を、DPD法により求めた遊離残留塩素濃度Nf(DPD Nf)と共に、表2に示す。また、演算して求めた各試料液の遊離残留塩素濃度NfをDPD法により求めた遊離残留塩素濃度Nfと対比したグラフを図7に示す。
表2及び図7に示すように、両者には高い精度で一致した。
Figure 0007177341000002
なお、図8は、DPD法により求めた遊離残留塩素濃度Nf(DPD Nf)を酸化還元電流I(V)と対比したグラフである。図5に示すように、結合残留塩素をほとんど含まない試料液であれば、印加電圧-750mV付近で良好なプラトー領域が得られるが、印加電圧-750mVで得られる酸化還元電流だけで遊離残留塩素濃度を求めようとすると、結合残留塩素による誤差が大きく、充分な精度が得られないことが確認できた。
表1の結果に基づき、全残留塩素濃度Nt度を求める前記式(2)の定数を求めたところ、図9に示すように、以下の値が得られた。
E=0.7465[mg/L]/[μA]
F=0.0187[mg/L]
すなわち、全残留塩素濃度Nt[mg/L]を求める下記式(2a)の検量線が得られた。
Nt=0.7465×I(V)+0.0187・・・(2a)
図9に示すように、結合残留塩素を含むか否かにかかわらず、全残留塩素濃度Ntは、印加電圧-850mVで得られる酸化還元電流と、高い相関関係が得られることが確認できた。
[実験例4]
実験例3で得られた検量線の有用性を確認するため、以下の試料液を調製した。
No.11:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.4mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。この希釈液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lである塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.12:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約0.8mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。この希釈液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lである塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.13:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約1.2mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。この希釈液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lである塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.14:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、希釈後の濃度が、約1.6mg/Lとなるように脱塩素水で希釈した。この希釈液1Lに対して、アンモニア性窒素の濃度が1000mg/Lである塩化アンモニウム溶液の0.1mLを添加した。
No.21:海水を試料液とした。
No.22:No.21の試料液1Lに対して、有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、No.21の試料液で希釈された後の濃度が0.5mg/Lとなるように添加した。
各試料液について、試験装置を用いて、第1の酸化還元電流I(V)と、第2の酸化還元電流I(V)と、第3の酸化還元電流I(V)を測定した。
第1の印加電圧Vは、-750mV、第2の印加電圧Vは-800mV、第3の印加電圧Vは-850mVとした。
また、各試料液についてDPD法により、遊離残留塩素濃度Nf、全残留塩素濃度Nt、結合残留塩素濃度Ncを求めた。
また、第1の酸化還元電流I(V)と、第2の酸化還元電流I(V)と、第3の酸化還元電流I(V)に基づき、実験例3で求めた式(1a)の検量線、式(2a)の検量線、及び式(3)に基づき、演算により、遊離残留塩素濃度Nf、全残留塩素濃度Nt、結合残留塩素濃度Ncを求めた。
結果を表3に示す。表3において、試料No.11~試料No.14は、試料液を調製(次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加)して60分間静置した後に測定した結果である。試料No.22-1は、No.22の試料液を調製(次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加)した直後に測定した結果である。また、試料No.22-2は、No.22の試料液を調製(次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加)して30分間静置した後に測定した結果である。また、試料No.22-3は、No.22の試料液を調製(次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加)して60分間静置した後に測定した結果である。また、試料No.22-4は、No.22の試料液を調製(次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加)して120分間静置した後に測定した結果である。
試料No.22-1~試料No.22-4のデータが各々異なるのは、海水をベースとするNo.22の試料は、調製後、海水中の成分と塩素とが徐々に反応するためである。
Figure 0007177341000003
また、各試料液の演算により求めた遊離残留塩素濃度Nf(演算値 Nf)を、DPD法により求めた遊離残留塩素濃度Nf(DPD Nf)と対比したグラフを図10に、演算により求めた全残留塩素濃度Nt(演算値 Nt)を、DPD法により求めた全残留塩素濃度Nt(DPD Nt)と対比したグラフを図11に、演算により求めた結合残留塩素濃度Nc(演算値 Nc)を、DPD法により求めた結合残留塩素濃度Nc(DPD Nc)と対比したグラフを図12に、各々示す。
図10~12において、「NH-Nベース」として示したデータは、試料No.11~試料No.14のデータである。また、「海水ベース」として示したデータは、試料No.21、試料No.22-1~試料No.22-4のデータである。
表3及び図10~12に示すように、「NH-Nベース」として示した試料液は、様々な濃度で結合残留塩素を含むにもかかわらず、遊離残留塩素濃度Nf、全残留塩素濃度Nt、結合残留塩素濃度Ncの総てにおいて、演算値はDPD値と高い精度で一致していた。
また、「海水ベース」として示したデータも、絶対値のずれは見られたものの、演算値とDPD値との関係は高い相関関係を示した。
海水を含む試料液については、相関関係は確保できているので、試料No.22-1~試料No.22-4のように、海水を含む試料液に基づいて、定数A~Fを求めることにより、絶対値のずれについて改善することが可能である。
なお、図13は、DPD法により求めた遊離残留塩素濃度Nf(DPD Nf)を酸化還元電流I(V)と対比したグラフである。また、図14は、DPD法により求めた全残留塩素濃度Nt(DPD Nt)を酸化還元電流I(V)と対比したグラフであり、図15は、DPD法により求めた結合残留塩素濃度Nc(DPD Nc)を酸化還元電流I(V)と対比したグラフである。
図13~15に示すように、「海水ベース」として示した試料液(試料No.21、試料No.22-1~試料No.22-4)のデータは、ある程度の相関関係が得られたが、「NH-Nベース」として示した試料液(試料No.11~試料No.14)のデータは、相関関係が得られず、印加電圧-750mVで得られる酸化還元電流だけで遊離残留塩素濃度を求めようとすると、結合残留塩素による誤差が大きく、充分な精度が得られないことが確認できた。
1~4…センサ部、11…測定セル、12…検知極支持体、13、35…検知極、
14…対極支持体、15、33…対極、16、38…モーター、17、45…軸受け、
18、36…ビーズ、19、60…フローセル、20…本体部、
21…演算制御部、22…加電圧機構、23…電流計、24…表示装置、
50…送液部、53…ポンプ、S…試料液

Claims (6)

  1. 試料液に対してハロゲンイオンを含む試薬を添加しない無試薬式残留塩素測定装置であって、
    試料液に浸漬される金製の検知極、及び白金製の対極と、
    前記検知極と対極との間に、第1の印加電圧V、第2の印加電圧V、及び第3の印加電圧Vを順次与える加電圧機構と、
    前記検知極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定する電流計と、
    演算制御部とを具備し、
    第1の印加電圧Vは、-730~-770mVの範囲から、第2の印加電圧Vは-780~-820mVの範囲から、第3の印加電圧Vは-830~-870mVの範囲から、各々選択され、
    前記電流計は、前記加電圧機構が第1の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第1の酸化還元電流I(V)と、前記加電圧機構が第2の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第2の酸化還元電流I(V)と、前記加電圧機構が第3の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第3の酸化還元電流I(V)とを、各々測定し、
    前記演算制御部は、下記式(1)に基づき、前記試料液の遊離残留塩素濃度Nfを求めることを特徴とする無試薬式残留塩素測定装置。
    Nf=A×I(V)+B×I(V)+C×I(V)+D ・・・(1)
    (ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。)
  2. 前記演算制御部は、さらに、下記式(2)に基づき、前記試料液の全残留塩素濃度Ntを求める請求項1に記載の無試薬式残留塩素測定装置。
    Nt=E×I(V)+F・・・(2)
    (ただし、式(2)において、E、Fは定数である。)
  3. 前記演算制御部は、さらに、下記式(3)に基づき、前記試料液の結合残留塩素濃度Ncを求める請求項2に記載の無試薬式残留塩素測定装置。
    Nc=Nt-Nf・・・(3)
  4. 試料液に対してハロゲンイオンを含む試薬を添加しない無試薬式残留塩素測定方法であって、
    試料液に浸漬した金製の検知極と白金製の対極との間に、第1の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第1の酸化還元電流I(V)と、第2の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第2の酸化還元電流I(V)と、第3の印加電圧Vを与えた際に前記検知極と対極との間に流れる第3の酸化還元電流I(V)とを、各々測定し、
    前記第1の印加電圧Vは、-730~-770mVの範囲から、第2の印加電圧V-780~-820mVの範囲から、第3の印加電圧V-830~-870mVの範囲から、各々選択し、
    下記式(1)に基づき、前記試料液の遊離残留塩素濃度Nfを求めることを特徴とする無試薬式残留塩素測定方法。
    Nf=A×I(V)+B×I(V)+C×I(V)+D ・・・(1)
    (ただし、式(1)において、A、B、C、Dは定数である。)
  5. さらに、下記式(2)に基づき、前記試料液の全残留塩素濃度Ntを求める請求項4に記載の無試薬式残留塩素測定方法。
    Nt=E×I(V)+F・・・(2)
    (ただし、式(2)において、E、Fは定数である。)
  6. さらに、下記式(3)に基づき、前記試料液の結合残留塩素濃度Ncを求める請求項5に記載の無試薬式残留塩素測定方法。
    Nc=Nt-Nf・・・(3)
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