以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、体液を吸収保持する吸収体4と、該吸収体4の肌対向面側に配され、着用者の肌と接触し得る液透過性の表面シート2と、該吸収体4の非肌対向面側に配された液難透過性の裏面シート3とを具備する。ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、且つ縦方向Xにおいて、着用時に着用者の外陰部などの排泄部に対向配置される排泄部対向部(排泄ポイント)を含む排泄部対向領域Bと、該排泄部対向領域Bよりも縦方向前側(着用者の腹側)に配される前方領域Aと、該排泄部対向領域Bよりも縦方向後側(着用者の背側)に配される後方領域Cとを有し、その3つに区分される。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
ナプキン1は、図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体5と、吸収性本体5における排泄部対向領域Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部5W,5Wとを有している。吸収性本体5は、ナプキン1の主体をなす部分であり、前記の表面シート2、裏面シート3及び吸収体4を具備し、縦方向Xにおいて前方領域A、排泄部対向領域B及び後方領域Cの3つに区分される。
本発明の吸収性物品における排泄部対向領域は、ナプキン1のように吸収性物品がウイング部を有する場合には、該吸収性物品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域である。ナプキン1を例にとれば、一対のウイング部5W,5Wそれぞれの縦方向Xの前方側の付け根を通って横方向Yに延びる仮想直線と、一対のウイング部5W,5Wそれぞれの後方側の付け根を通って横方向Yに延びる仮想直線とに挟まれた領域が、排泄部対向領域Bである。なお、ナプキン1においては、一対のウイング部5W,5Wは、ナプキン1を横方向Yに二分して縦方向Xに延びる縦中心線を基準として左右対称に形成されており、一方のウイング部5Wの前記前方側の付け根と他方のウイング部5Wのそれとは、縦方向Xにおいて同位置に存する。
また、ウイング部を有しない吸収性物品(例えば使い捨ておむつ)における排泄部対向領域は、該吸収性物品を縦方向Xに三等分した際に、中間に位置する領域に相当する。
図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート6と共にサイドフラップ部を形成している。前記サイドフラップ部は、ナプキン1における、吸収体4から横方向Yの外方に延出する部材からなる部分である。裏面シート3とサイドシート6とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていてもよい。表面シート2、裏面シート3としては、生理用ナプキン等の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート3としては、透湿性の樹脂フィルム等を用いることができる。
前記サイドフラップ部は、図1に示すように、排泄部対向領域Bにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部5W,5Wが延設されている。ウイング部5Wは、図1に示す如き平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有しており、その非肌対向面(ウイング部5Wを折り曲げない状態での非肌対向面)には、ウイング部5Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。なお、ウイング部5Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられるため、折り返される前のウイング部5Wの非肌対向面は、その使用時には着用者の肌側に向けられ、肌対向面となる。前記ウイング部粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。また、吸収性本体5の肌対向面すなわち表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート6,6が吸収性本体5の縦方向Xの略全長に亘って配されている。一対のサイドシート6,6は、それぞれ縦方向Xに延びる図示しない接合線にて、接着剤や熱エンボス等の公知の接合手段によって表面シート2や他の部材に接合されている。
吸収体4は、図1に示すように、ナプキン1(吸収性本体5)の縦方向Xの略全長にわたっており、前方領域Aから排泄部対向領域Bを介して後方領域Cにわたって延在している。吸収体4は、ナプキン1の如き吸収性物品に組み込まれることで、人の肌に間接に当てがわれて、すなわち裏面シート3などの部材を介して間接的に肌に当てがわれて使用されるもので、使用時に使用者すなわちナプキン1の着用者の肌から相対的に近い位置に配される肌対向面(表面シート2との対向面)と、使用者の肌から相対的に遠い位置に配される非肌対向面(裏面シート3との対向面)とを有し、更に、使用者の前後方向に対応する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有し、且つ前方領域A、排泄部対向領域B及び後方領域Cを縦方向Xに有する。吸収体4の前方領域Aは、吸収体4におけるナプキン1の前方領域Aに位置する部分であり、吸収体4の排泄部対向領域Bは、吸収体4におけるナプキン1の排泄部対向領域Bに位置する部分であり、吸収体4の後方領域Cは、吸収体4におけるナプキン1の後方領域Cに位置する部分である。
図3~図5には吸収体4が示されている。本実施形態における吸収体4は、液吸収性の吸収性コア40と、該吸収性コア40の外面を被覆する液透過性のコアラップシート41とを具備している。このように、本実施形態においては、吸収性コア40がコアラップシート41で包まれることで一体化されている。吸収性コア40は、吸収体4の主体をなすもので、図3に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状を有している。吸収性コア40は、その長手方向をナプキン1の縦方向Xに一致させてナプキン1に配置されている。吸収性コア40とコアラップシート41との間は、ホットメルト型接着剤等の接着剤により接合されていてもよい。
本実施形態においては、コアラップシート41は、吸収性コア40の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続したシートであり、図4に示すように、吸収性コア40の肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆している。なお、本発明においては、コアラップシートは、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の上方に巻き上げられて、吸収性コア40の肌対向面全域を被覆されていてもよい。また、コアラップシートはこのような1枚のシートでなくてもよく、例えば、吸収性コア40の肌対向面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、該肌側コアラップシートとは別体で、吸収性コア40の非肌対向面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとの2枚を含んで構成されていてもよい。
吸収性コア40は、実質的に吸収体4そのものとも言えるものであり、以下の吸収性コア40についての説明は、特に断らない限り、本発明に係る吸収体の説明として適宜適用される。本発明に係る吸収体には、コアラップシートを含まず吸収性コアのみで構成された形態が包含されるところ、斯かる形態の吸収体では、吸収体と吸収性コアとは同じ意味である。
吸収性コア40は、コア形成材料を主体として構成され、典型的には、コア形成材料のみから構成される。コア形成材料には少なくとも、吸水性繊維12Fと、繊維11Fを含む繊維塊11とが含まれる。本実施形態の吸収性コア40では、コア形成材料として更に、吸水性ポリマー13が含まれる。繊維塊11の構成繊維11Fは合成繊維である。
本明細書において「繊維塊」とは、複数の繊維がまとまって一体となった繊維集合体のことである。本発明で用いる繊維塊はその製造方法を問わず、例えば、一定の大きさを有する合成繊維シートをカッター等により切断して得られたシート片の如き、定形の繊維集合体でもよく、あるいは、特許文献2に記載の不織布片の如き、合成繊維を主体とする不織布を細片状に粉砕し、あるいはむしり取ったり引きちぎり取ったりして製造された不定形の繊維集合体でもよい。本発明では、吸収体(吸収性コア)は、i)繊維塊として定形の繊維集合体のみを含む形態でもよく、ii)繊維塊として不定形の繊維集合体のみを含む形態でもよく、あるいはiii)繊維塊として定形の繊維集合体と不定型の繊維集合体とが混ざった形態でもよいが、好ましくは前記i)の形態が用いられる。不定形の繊維集合体は、構成繊維がランダムに配向しているために、表面のあちこちから繊維が突出するなどして表面が荒れているため、該繊維集合体同士がそれらの全面に亘って絡み合い、その結果、各繊維集合体の動きの自由度が制限されて柔軟性が低下するおそれがある。本実施形態の繊維塊11は、後述するように定形の繊維集合体である。
繊維塊11は、前述したとおり、複数の繊維11Fが塊状に集積されて一体化された繊維集合体であり、その形態を保持した状態で吸収性コア40中に複数存在する。そして繊維塊11は、その繊維集合体の形態に起因して、主として、吸収性コア40の柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性の向上に寄与する。
吸水性繊維12Fは、吸収性コア40中に複数存在しており、それら複数の吸水性繊維12Fは互いに交絡し得るものの、繊維塊11の構成繊維11Fのように集積されておらず、個々独立に存在することが好ましい。吸水性繊維12Fは主として、吸収性コア40の液吸収性の向上に寄与し、また、吸収性コア40の保形性の向上にも寄与する。
吸水性繊維12Fとしては、この種の吸収性物品の吸収体の形成材料として従来使用されている吸水性繊維を用いることができる。吸水性の繊維としては、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。吸水性繊維12Fの主たる役割が吸収体4の液吸収性の向上である点に鑑みれば、吸水性繊維12Fとしては、セルロース系繊維が好ましい。
吸水性ポリマー13は、吸水性ポリマーの小片として吸収性コア40中に複数存在し、主として、吸収性コア40内の液吸収性の向上に寄与する。吸水性ポリマー13の小片の形状は特に制限されず、例えば、球状、塊状、俵状、繊維状、不定形状であり得る。吸水性ポリマー13の平均粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下である。吸水性ポリマー13としては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられ、具体的には、アクアリックCA、アクアリックCAW(ともに(株)日本触媒社製)等のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩が挙げられる。
吸収性コア40においては、複数の繊維塊11と吸水性繊維12Fとが混在しており、本実施形態では、両者が単に混在しているだけでなく、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが互いに交絡している。本実施形態の吸収性コア40においては、複数の繊維塊11が吸収性コア40中の構成繊維(繊維11F,12F)との絡み合いによって結合して1つの繊維塊連続体を形成している。また、複数の繊維塊11同士が交絡していると共に、繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡して結合していてもよい。更に通常は、複数の吸水性繊維12F同士も互いに交絡している。吸収性コア40に含有されている複数の繊維塊11の少なくとも一部は、他の繊維塊11あるいは吸水性繊維12Fと交絡している。吸収性コア40においては、それに含有されている複数の繊維塊11の全部が互いに交絡して1つの繊維塊連続体を形成している場合があり得るし、複数の繊維塊連続体が互いに非結合の状態で混在している場合があり得る。
吸収性コア40においては、吸収性コア40の柔軟性などを高め得る繊維塊11が含有されていることに加え、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとの間も互いに交絡によって結合しているため、吸収性コア40は外力への即応性が一層優れ、柔軟性、クッション性、圧縮回復性に優れる。吸収性コア40は、ナプキン1の着用時に様々な方向から受ける外力(例えばナプキン1の着用者の体圧)に対してしなやかに変形し、ナプキン1を着用者の身体にフィット性よく密着させ得る。このような吸収性コア40の優れた変形-回復特性は、吸収性コア40が圧縮された場合のみならず、ねじれた場合でも同様に発現し得る。すなわち、ナプキン1に組み込まれた吸収性コア40は、ナプキン1の着用時において着用者の両大腿部間に挟まれた状態で配置されるため、着用者の歩行動作の際の両大腿部の動きによって、縦方向Xに延びる仮想的な回転軸周りにねじられる場合があるが、そのような場合でも、吸収性コア40は高い変形-回復特性を備えているため、両大腿部からのねじれを促すような外力に対して容易に変形・回復し、したがってヨレにくく、ナプキン1に着用者の身体に対する高いフィット性を付与し得る。
吸収性コア40では、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡しているところ、ここでいう、繊維塊11同士等の「交絡」には、下記形態A及びBが包含される。
形態A:繊維塊11同士等が、融着ではなく、繊維塊11の構成繊維11F同士の絡み合いによって結合している形態。
形態B:吸収性コア40の自然状態(外力が加わっていない状態)では、繊維塊11同士等は結合していないが、吸収性コア40に外力が加わった状態では、繊維塊11同士等が構成繊維11F同士の絡み合いによって結合し得る形態。ここでいう、「吸収性コア40に外力が加わった状態」とは、例えば、吸収性コア40が適用された吸収性物品(本実施形態ではナプキン1)の着用中において、吸収性コア40に変形力が加わった状態である。
このように、吸収性コア40においては、形態Aのように、繊維塊11は、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと、繊維同士の絡み合いすなわち「交絡」によって結合している他、形態Bのように、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと交絡し得る状態でも存在している。斯かる繊維の交絡による結合が、前述した吸収性コア40の作用効果を一層有効に発現するのに重要なポイントの1つとなっている。特に、吸収性コア40は、形態Aの「交絡」を有している方が保形性の点から好ましい。繊維の交絡による結合は、接着成分や融着が無く、繊維同士の絡み合いのみによってなされているため、繊維の融着による結合に比して、交絡している個々の要素(繊維塊11、吸水性繊維12F)の動きの自由度が高く、そのためその個々の要素は、それらからなる集合体としての一体性を維持し得る範囲で移動し得る。このように、吸収性コア40は、それに含有されている複数の繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとが比較的ゆるく結合していることで、外力を受けたときに変形が可能な、緩やかな保形性を有しており、保形性とクッション性及び圧縮回復性等とが高いレベルで両立されている。そして、斯かる高品質の吸収性コア40を具備するナプキン1は、着用者の身体にフィット性良く密着し、着用感に優れる。
吸収性コア40における繊維塊11を介した結合体の全てが「交絡」である必要はなく、吸収性コア40の一部に交絡以外の他の結合体、例えば接着剤による接合などが含まれていてもよい。
ただし、例えば公知の防漏溝等、吸収性物品の他の部材と一体となった結果として吸収性コア40に形成された「繊維塊11を介した融着」を吸収性コア40から排除した残りの部分、すなわち、未加工の吸収性コア40そのものでは、繊維塊11同士の結合、又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとの結合が「繊維の交絡」のみでなされていることが望ましい。
前述した吸収性コア40の作用効果をより一層確実に発現させる観点から、形態Aである「交絡によって結合している繊維塊11」と形態Bである「交絡し得る状態の繊維塊11」との合計数は、吸収性コア40中の繊維塊11の全数に対して、好ましくは半数以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
同様の観点から、形態Aの「交絡」を有する繊維塊11の数は、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fとの結合部を有する繊維塊11の全数の70%以上、特に80%以上あることが好ましい。
吸収性コア40は、繊維塊11をはじめとするコア形成材料の配置の点で特徴付けられる。吸収性コア40においては、図3~図5に示すように、繊維塊11は、吸収性コア40の全体に均一に分布しておらず、前方領域A及び後方領域Cに比べて排泄部対向領域Bに比較的多く存在し、また、排泄部対向領域Bでは、非肌対向面側B2に比べて肌対向面側B1に比較的多く存在する。
なお、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの肌対向面側B1は、吸収性コア40の排泄部対向領域Bを厚み方向に二等分した場合の肌対向面寄りの部位、非肌対向面側B2は、斯かる場合の非肌対向面寄りの部位である。吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cそれぞれの肌対向面側及び非肌対向面側についても同様である。
このような吸収性コア40における繊維塊11の偏在を、繊維塊11とともに吸収性コア40のコア形成材料として併用される吸水性繊維12Fとの合計含有質量と対比して、「繊維塊11及び吸水性繊維12Fの合計含有質量に対する繊維塊11の含有質量の比率」(以下、「繊維塊占有率」ともいう。)として規定すると、吸収性コア40の各部の繊維塊占有率は、前方領域A及び後方領域Cに比べて排泄部対向領域Bの方が大きく、且つ排泄部対向領域Bでは、非肌対向面側B2に比べて肌対向面側B1の方が大きいということになる。
繊維塊占有率は、吸収性コア40(吸収体4)の所定の測定対象部位について、該測定対象部位に存する繊維塊11及び吸水性繊維12Fそれぞれの含有量を質量で測定し、そうして測定された繊維塊11の含有質量を、吸水性繊維12F及び繊維塊11それぞれの含有質量の合計値で除して100分率で表したものである。すなわち、繊維塊占有率(質量%)={繊維塊11の含有質量/(吸水性繊維12Fの含有質量+繊維塊11の含有質量)}×100である。
吸収性コア40の排泄部対向領域Bは、通常、ナプキン1の着用時において着用者の両大腿部間に挟まれるため、着用者の歩行動作の際の両大腿部の動きによって、縦方向Xに延びる仮想的な回転軸周りにねじられやすく、前方領域Aや後方領域Cに比して、外力が強く作用しやすく、ヨレが生じやすい。このような、比較的ヨレが生じやすい吸収性コア40の排泄部対向領域Bに、クッション性、圧縮回復性、保形性などの向上に寄与し得る繊維塊11を、前方領域A及び後方領域Cよりも多く配置する、すなわち排泄部対向領域Bの繊維塊占有率を前方領域A及び後方領域Cのそれよりも高くすることで、ナプキン1の着用時に吸収体4がヨレる不都合が効果的に防止される。
また、繊維塊占有率が比較的低く吸水性繊維12Fを比較的多く含む、排泄部対向領域Bの非肌対向面側B2は、繊維塊占有率が比較的高い肌対向面側B1に比べて、経血等の体液を吸収した後の剛性の低下の度合いが大きく、吸液後に変形しやすい。しかし、本実施形態においては前述したとおり、吸収性コア40において複数の繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが互いに交絡しており、これに起因して、吸液後に変形し難い肌対向面側B1と吸液後に変形しやすい非肌対向面側B2とが、それらの境界及びその近傍において繊維塊11を介して交絡しているため、吸液後であっても非肌対向面側B2が変形し難く、これにより、ナプキン1の着用時における吸収体4のヨレがより一層確実に防止され得る。
また、本実施形態においては前述したとおり、吸収体4が、繊維塊11及び吸水性繊維12Fをはじめとするコア形成材料を含有する吸収性コア40と、該吸収性コア40の外面を被覆するコアラップシート41とを具備することで、該コア形成材料が一体化されているため、前述した繊維塊11の偏在による作用効果と相俟って、ナプキン1の着用時における吸収体4のヨレがより一層確実に防止され得る。
吸収体4における繊維塊占有率に関して前記の「排泄部対向領域B>前後領域A,C」という大小関係が成立することによる効果として、前記の「着用時のヨレ防止」の他に、「着用感の向上」がある。すなわち、繊維塊占有率に関して前記の大小関係が成立することにより、繊維塊占有率が相対的に高い吸収体4の排泄部対向領域Bは、比較的厚みが大きくクッション性に富むものとなるのに対し、繊維塊占有率が相対的に低い吸収体4の前後領域A,Cは、比較的厚みが薄く柔軟性に富むものとなる。そのため、ナプキン1の着用時においては、嵩高でクッション性に富むナプキン1の排泄部対向領域Bが、着用者の排泄部及びその周辺に密着するとともに、薄くて柔軟なナプキン1の前後領域A,Cが、ショーツ等の着衣になじみ、着用者の腹側及び背側(お尻側)の動きに追従するようになり、結果として、ナプキン1の全体が着用感に優れたものとなる。
また、前記の「排泄部対向領域B>前後領域A,C」という大小関係が成立することにより、吸収体4では、排泄部対向領域Bで受けた体液が縦方向Xへ拡散して吸収され易くなり、これにより体液の横漏れ抑制効果が期待できる。
また、吸収体4における繊維塊占有率に関して前記の「排泄部対向領域B>前後領域A,C」という大小関係が成立することに加えて更に、吸収体4の排泄部対向領域Bにおいて前記の「肌対向面側B1>非肌対向面側B2」という大小関係が成立することにより、着用者の排泄部及びその周辺に密着するナプキン1の排泄部対向領域Bにおいては、保形性やクッション性に優れる繊維塊11が着用者の肌近くに偏在する構成となるため、着用者は、排泄部対向領域Bを中心にナプキン1のクッション性の良さを実感することができ、ナプキン1の着用感の良さが際立つようになる。
前述した繊維塊11の偏在による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、吸収性コア40の各部の繊維塊占有率は以下のように設定することが好ましい。
吸収性コア40の排泄部対向領域Bの肌対向面側B1の繊維塊占有率は、吸収性コア40の他の部位(前方領域A、後方領域C、排泄部対向領域Bの非肌対向面側B2)のそれよりも高いことを前提として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%、すなわち該肌対向面側B1は繊維塊11を含有する代わりに吸水性繊維12Fを全く含有しなくてもよい。
吸収性コア40の排泄部対向領域Bの非肌対向面側B2の繊維塊占有率は、肌対向面側B1のそれよりも低いことを前提として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、0質量%、すなわち該肌対向面側B2は吸水性繊維12Fを含有する代わりに繊維塊11を全く含有しなくてもよい。
吸収性コア40の排泄部対向領域Bの肌対向面側B1の繊維塊占有率と非肌対向面側B2の繊維塊占有率との差は、前者から後者を差し引いた場合に、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%、すなわち肌対向面側B1に繊維塊11のみを含有し、非肌対向面側B2に繊維塊11を全く含有しなくてもよい。
吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cの繊維塊占有率は、典型的にはそれぞれ、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの非肌対向面側B2のそれと同様に設定される。
前述した繊維塊11の排泄部対向領域Bでの偏在による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、排泄部対向領域Bに、吸収性コア40が含有する全ての繊維塊11の90質量%以上、特に95質量%以上が存在することが好ましい。
吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいては、肌対向面側B1及び非肌対向面側B2それぞれにおいて、1)繊維塊占有率は厚み方向に変化せずに一定でもよく、あるいは、2)非肌対向面側B2から肌対向面側B1に向かうに従って繊維塊占有率が漸次増加してもよい。前記2)の形態では、吸収性コア40の厚み方向において、吸収性コア40の非肌対向面及びその近傍では、繊維塊11は存在しないか又は吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいて最低の繊維塊占有率で存在し、吸収性コア40の肌対向面及びその近傍では、繊維塊11は吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいて最高の繊維塊占有率で存在する。吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cについても、前記1)又は2)の形態があり得る。
前記1)の形態に特有の利点として、吸収体(吸収性コア)の肌対向面側と非肌対向面側とで、各々独立した機能に設計し易い点が挙げられる。また、前記2)の形態に特有の利点として、吸水性繊維と繊維塊との混合比率が吸収体の厚み方向で緩やかに変化するため、吸収体に外力が加わった場合でも繊維塊を介在する交絡状態が厚み方向に亘って維持され易く、使用中において吸収体のクッション性が良好に維持され易い点が挙げられる。
また、繊維塊占有率は、吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cそれぞれから排泄部対向領域Bに向かうに従って漸次増加してもよい。例えば、前方領域A及び後方領域Cそれぞれにおいては、縦方向Xの外方から内方に向かうに従って繊維塊占有率が漸次増加し、排泄部対向領域Bは前記1)又は2)の形態であってもよい。
本実施形態においては、吸収性コア40の排泄部対向領域Bは、図4(a)に示すように、繊維塊占有率が好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上の部位(以下、「繊維塊リッチ部位」ともいう。)11Pと、繊維塊占有率が好ましくは50質量%未満、より好ましくは10質量%以下の部位(以下、「吸水性繊維リッチ部位」ともいう。)12Pとを厚み方向に有し、より具体的には、肌対向面側B1の全体が繊維塊リッチ部位11P、非肌対向面側B2の全体が吸水性繊維リッチ部位12Pとなっている。したがって、図4(a)に示す吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいては、肌対向面側B1(繊維塊リッチ部位11P)と非肌対向面側B2(吸水性繊維リッチ部位12P)との境界で、繊維塊占有率が大きく変化している。
吸水性繊維リッチ部位12Pは、吸水性繊維占有率が好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上の部位である。ここでいう「吸水性繊維占有率」とは、繊維塊11及び吸水性繊維12Fの合計含有質量に対する吸水性繊維12Fの含有質量の比率であり、前述した繊維塊占有率の算出式の分子を「繊維塊11の含有質量」から「吸水性繊維の含有質量」に置き換えて算出される。
吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cは、それぞれ図4(b)及び図5に示すように、繊維塊11はほとんど含有されておらず、両領域A,Cの繊維塊占有率は0質量%か又はそれに近く、その全体が吸水性繊維リッチ部位12Pとなっている。
繊維塊リッチ部位11Pは、繊維塊11が主体をなし、典型的には、吸水性繊維12Fは実質的に含有されていない程度であることから、繊維塊11の特性が強く反映され、主として、吸収性コア40の柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性などの向上に寄与する。繊維塊リッチ部位11Pにおいては、その全体に繊維塊11が高密度且つ均一に分布していることが好ましい。一方、吸水性繊維リッチ部位12Pは、吸水性繊維12Fが主体をなし、典型的には、繊維塊11は実質的に含有されていない程度であることから、吸水性繊維12Fの特性が強く反映され、主として、吸収性コア40の液引き込み性の向上に寄与する。吸水性繊維リッチ部位12Pにおいては、その全体に吸水性繊維12Fが高密度且つ均一に分布していることが好ましい。
吸収性コア40の各部の繊維塊占有率に関して、前述したとおり、「排泄部対向領域B>前後領域A,C」という大小関係と、「排泄部対向領域Bの肌対向面側B1>非肌対向面側B2」という大小関係とが成立することを前提として、繊維塊リッチ部位11P及び吸水性繊維リッチ部位12Pの位置は特に制限されず、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの非肌対向面側B2(吸収性コア40の排泄部対向領域Bを厚み方向に二等分した場合の非肌対向面寄りの部位)の一部に繊維塊リッチ部位11Pが存在してもよく、肌対向面側B1(吸収性コア40の排泄部対向領域Bを厚み方向に二等分した場合の肌対向面寄りの部位)の一部に吸水性繊維リッチ部位12Pが存在してもよい。
繊維塊リッチ部位11Pは、吸収性コア40の肌対向面から該吸収性コア40の厚み方向内方に該吸収性コア40の厚みの20~80%にわたって存在することが好ましく、該厚みの30~70%にわたって存在することがより好ましい。
吸水性繊維リッチ部位12Pは、吸収性コア40の非肌対向面から該吸収性コア40の厚み方向内方に該吸収性コア40の厚みの20~80%にわたって存在することが好ましく、該厚みの30~70%にわたって存在することがより好ましい。
繊維塊リッチ部位11P、吸水性繊維リッチ部位12Pそれぞれの厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、そして、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。
吸収性コア40の各部の厚みは、以下の方法で測定される。なお、吸収性コア40(吸収体4)全体の厚み、ナプキン1の厚みなども以下の方法に準じて測定することができる。
<厚みの測定方法>
吸収性コア(吸収体)を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、該吸収性コアから測定対象部位(例えば、吸収性コアの肌対向面側又は非肌対向面側)を切り出して測定サンプルとする。そして、測定サンプルにおける5cN/cm2の荷重下での厚みを測定する。具体的には、厚みの測定に、例えば、厚み計PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いる。このとき、厚み計の先端部と測定サンプルとの間に、荷重が5cN/cm2となるように大きさを調整した平面視円形状又は正方形状のプレート(厚み5mm程度のアクリル板)を配置して、厚みを測定する。厚み測定は、測定サンプルにおける任意の10箇所を測定することで行い、それら10箇所の厚みの平均値を算出して、測定サンプルの厚みとする。
吸収性コア40の厚みは、排泄部対向領域Bの横方向Yの中央(吸収性コア40の排泄部対向領域Bを横方向Yに二等分して縦方向Xに延びる仮想直線と重なる位置)に比べて前方領域A及び後方領域Cの方が薄いことが好ましい。これにより、ナプキン1の着用時において吸収性コア40の前後領域A,Cがショーツ等の着衣になじんで追従しやすくなり、着用者の前身頃や臀部側の着用感がより一層向上し、ナプキン1の着用感の良さがより一層際立つようになる。また、吸収性コア40では、少なくとも排泄部対向領域Bの横方向Yの中央及びその近傍すなわち中央部(後述する隆起部15の形成位置)が、前後領域A,Cと比べて肉厚の構造となっている。そのため、前後領域A,Cよりも排泄部対向領域Bで繊維塊占有率が大きいことと相まって、ナプキン1の着用時において、吸収性コア40における排泄部対向領域Bの横方向Yの中央部と平面視で重複する部分が、着用者の排泄部に一層密着性よくフィットし得る。斯かる吸収性コア40の縦方向Xにおける厚み差は、前述したように、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの繊維塊占有率が前方領域A及び後方領域Cのそれよりも高められることで実現し得る。
なお、吸収性コア40は、典型的には、排泄部対向領域Bにおいて厚みが横方向Yの全長(全幅)にわたって均一の形態であるか、又は図2に示す如くに、横方向Yの中央部がその両側部よりも厚みが大きい肉厚の構造の形態であるところ、いずれの形態でも、前記の大小関係すなわち、「排泄部対向領域Bにおける吸収性コア40の横方向Yの中央(中央部)の厚み>前方領域Aにおける吸収性コア40の厚み、後方領域Cにおける吸収性コア40の厚み」の関係が成立する場合には、「排泄部対向領域Bにおける吸収性コア40の横方向Yの両側部の厚み>前方領域Aにおける吸収性コア40の厚み、後方領域Cにおける吸収性コア40の厚み」の関係も成立する。
吸収性コア40において、前方領域Aの厚みと排泄部対向領域Bの横方向Yの中央(又は領域Bにおいて厚みが最大の部分)の厚みとの比率は、前者<後者を前提として、前者/後者として、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、そして、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。後方領域Cの厚みと排泄部対向領域Bの横方向Yの中央(又は領域Bにおいて厚みが最大の部分)の厚みとの比率についても、前記と同様に設定することが好ましい。
吸収性コア40の排泄部対向領域Bの厚み(横方向Yにおいて厚みが異なる場合は最大厚み)は、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下である。
吸収性コア40の前方領域A及び後方領域Cの厚みは、それぞれ、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下である。
前述した繊維塊11の偏在による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、吸収性コア40の肌対向面における排泄部対向領域Bに位置する部分の面積は、吸収性コア40の肌対向面の面積の60%以下、特に50%以下、更には40%以下が好ましい。吸収性コア40の排泄部対向領域Bに位置する部分は、前方領域A及び後方領域Cに位置する部分よりも繊維塊占有率が高い部位であり、特にその肌対向面側B1は繊維塊占有率が高いことから、該領域B全体として、繊維塊11が有するクッション性が強く反映された「クッション部」とも言える部位である。特に本実施形態においては、肌対向面側B1が、繊維塊11が主体をなし吸水性繊維12Fをほとんど含有しない繊維塊リッチ部位11Pであるため、該部位11Pを具備する排泄部対向領域Bは、クッション部として有効に機能し得る。つまり、前記の「吸収性コア40の肌対向面の面積に対する、排泄部対向領域Bの肌対向面の面積の割合」は、「吸収性コア40(吸収体4)の肌対向面の面積に対する、クッション部(吸収性コア40において繊維塊11が該吸収性コア40の肌対向面側に偏在している部位)の肌対向面の面積の割合」(以下、「クッション部面積率」ともいう。)に言い換えることができる。クッション部面積率が60%以下、すなわち繊維塊11が肌対向面側B1に偏在している排泄部対向領域Bの面積率が60%以下であることにより、前方領域Aと後方領域Cにおいて体の前身頃やおしり側の着用感を高められるという効果が奏される。なお、クッション部面積率の下限は、排泄部対向領域Bのフィット性を確実に高め、着用感を向上させる観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは25%、更に好ましくは30%以上である。クッション部面積率は下記式により算出される。
クッション部面積率(%)=(クッション部の肌対向面の面積/吸収性コアの肌対向面の面積)×100
前述したとおり、吸収性コア40には吸水性ポリマー13が含有されるところ、吸収性コア40における吸水性ポリマー13の存在部位は特に制限されず、吸収性コア40の全体に均一に分布していてもよく、吸収性コア40の一部に偏在していてもよいが、少なくとも吸収性コア40の排泄部対向領域Bに存在していることが好ましい。また、吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいては、繊維塊11が比較的多く吸水性繊維12Fが比較的少ない肌対向面側B1よりも、繊維塊11が比較的少なく吸水性繊維12Fが比較的多い非肌対向面側B2に、吸水性ポリマー13が多く存在することが好ましい。すなわち、吸収性コア40は、吸水性ポリマー13を少なくとも排泄部対向領域Bに含有し、且つ吸収性コア40における吸水性ポリマー13の含有量は、肌対向面側B1よりも非肌対向面側B2の方が多いことが好ましい。
吸収性コア40の排泄部対向領域Bの肌対向面側B1には、繊維塊11のみならず、吸水性繊維12F及び/又は吸水性ポリマー13が含有されていてもよい。斯かる構成により、肌対向面側B1が体液を引き込みやすくなるとともに、肌対向面側B1に体液を効率的に固定することが可能となり、吸収性コア40の吸液性がより一層向上し得る。
吸収性コア40において、繊維塊11と吸水性繊維12Fとの含有質量比は、前述した繊維塊占有率の特定範囲を満たすことを前提として特に限定されず、繊維塊11の構成繊維(合成繊維)11F及び吸水性繊維12Fの種類等に応じて適宜調整すればよい。例えば、繊維塊11の構成繊維11Fが熱可塑性繊維(非吸水性の合成繊維)、吸水性繊維12Fがセルロース系の吸水性繊維である場合、本発明の所定の効果をより確実に奏させるようにする観点から、繊維塊11と吸水性繊維12Fとの含有質量比は、前者(繊維塊11)/後者(吸水性繊維12F)として、好ましくは20/80~80/20、より好ましくは40/60~60/40である。
吸収性コア40における繊維塊11の含有量は、乾燥状態の吸収性コア40の全質量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
吸収性コア40における吸水性繊維12Fの含有量は、乾燥状態の吸収性コア40の全質量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
吸収性コア40における吸水性ポリマー13の含有量は、乾燥状態の吸収性コア40の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
なお、ここでいう「乾燥状態の吸収性コア」とは、体液を吸収する前の吸収性コアを意味する。
吸収性コア40における繊維塊11の坪量は、好ましくは32g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、より好ましくは480g/m2以下である。
吸収性コア40における吸水性繊維12Fの坪量は、好ましくは32g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、より好ましくは480g/m2以下である。
吸収性コア40における吸水性ポリマー13の坪量は、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上、そして、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは100g/m2以下である。
吸収性コア40は図5に示すように、排泄部対向領域Bに、周辺部よりも着用者の肌側に向かって隆起した隆起部15を有している。本実施形態における隆起部15においては、繊維塊11及び吸水性繊維12Fをはじめとするコア形成材料が周辺部よりも多く、斯かる吸収性コア40の坪量差に起因して、隆起部15の厚みは周辺部に比して厚い。そして、吸収性コア40の排泄部対向領域Bに隆起部15が存在することで、これに対応するナプキン1の排泄部対向領域Bは、図2に示すように、肌対向面に着用者の肌側に向かって凸状をなす凸部を有している。このように、ナプキン1の排泄部対向領域Bの肌対向面に、吸収性コア40の隆起部15に対応した凸部が存在することで、該凸部が着用者の排泄部に密着するため、着用感及び吸液性が向上し得る。また、前記凸部が存在する吸収性コア40の排泄部対向領域Bにおいては、前述したとおり、繊維塊11が肌対向面側B1に偏在することで、排泄部対向領域Bを中心にナプキン1のクッション性の良さが高いレベルで確保されているので、該凸部による作用効果と相俟って、ナプキン1の着用感がより一層向上し得る。なお、隆起部15は、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの横方向Yの全長にわたって形成されていてもよい。また、隆起部15は、排泄部対向領域Bから前方領域A及び/又は後方領域Cに延出していてもよい。
本実施形態のナプキン1においては、図1及び図2に示すように吸収性本体5に、表面シート2及び吸収体4が該吸収体4の非肌対向面側(裏面シート3側)に一体的に凹陥した凹陥部7が、少なくとも排泄部対向領域Bに形成されている。ナプキン1(吸収性本体5)は、凹陥部7と、凹陥部7が形成されていない部分であり、凹陥部7に比べて密度が低い低密度部8とを有する。
凹陥部7は、ナプキン1(吸収性本体5)に対し、その肌対向面を形成する表面シート2側から圧搾加工を施すことによって形成されており、その形成方法から「圧搾部」と言うこともできる。凹陥部7は、その形成方法に起因して、表面シート2、コアラップシート41及び吸収性コア40が、該吸収性コア40の非肌対向面側(裏面シート3側)に向かって一体的に凹陥している。また凹陥部7は、このような形成方法に起因して、低密度部8に比して密度が高い。すなわち、吸収性本体5は、高密度部である凹陥部7と低密度部8とを有し、これにより面方向に密度差が生じている。
また、凹陥部7を形成するためにナプキン1(吸収性本体5)に施される前記圧搾加工は、通常、吸収体4に含まれる繊維塊11の構成繊維11Fとして好ましく用いられる熱可塑性繊維の溶融を伴う条件でなされ、具体的には、熱を伴うエンボス加工、超音波エンボス等の公知のエンボス加工が挙げられる。斯かる凹陥部7の形成方法に起因して、凹陥部7の底部71、すなわち空間部である凹陥部7と図1に示す如き平面視において重なる部分では、表面シート2、コアラップシート41及び吸収性コア40が熱融着されて一体化し得る。
本実施形態のナプキン1においては、図1に示すように、凹陥部7は、排泄部対向領域Bの横方向Yの両側部を通って縦方向Xに延在している。より具体的には、凹陥部7は平面視において線状をなし、縦方向Xに延びる左右一対の縦凹陥部7X,7Xと、横方向Yに延びる前後一対の横凹陥部7Y,7Yとを含んで構成され、一対の縦凹陥部7X,7Xが、排泄部対向領域Bの横方向Yの両側部を通って縦方向Xに延在している。これら複数の縦凹陥部7X及び横凹陥部7Y同士は、それらの長さ方向の端部にて連結しており、凹陥部7全体として1つの閉じた環状をなしている。一対の縦凹陥部7X,7Xは、それぞれ、排泄部対向領域Bの縦方向Xの全長にわたって延在し、更に前方領域A及び後方領域Cに延出しており、全体として連続線状をなしている。また、一対の横凹陥部7Y,7Yのうちの一方は前方領域Aに存在し、他方は後方領域Cに存在しており、いずれの横凹陥部7Yも平面視において、縦方向Xの外方に向かって凸のU字状ないし弧状の連続線状をなし、且つそのU字状ないし弧状の頂部がナプキン1の横方向Yの中央に位置している。排泄部対向領域Bの中央部、すなわち前記排泄部対向部(排泄ポイント)を含む部分は、平面視において閉じた環状をなす凹陥部7のその環の中に位置している。ナプキン1の肌対向面に形成された凹陥部7は、経血等の体液の面方向の移動を阻害する機能を有する。凹陥部7(7X,7Y)の幅(長手方向と直交する方向の長さ)は特に制限されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。
一方、低密度部8は、吸収性本体5における凹陥部7(及び後述する非肌面側窪み9)が形成されていない部分であり、図1に示すように、平面視において閉じた環状をなす凹陥部7のその環の中と、該環の外とに存在する。すなわちナプキン1においては、少なくとも吸収性本体5の周縁部と排泄部対向領域Bの中央部(前記排泄部対向部及びその近傍)とが、低密度部8である。
なお、低密度部8、特に、排泄部対向領域Bの横方向Yの両側部を通って縦方向Xに延在する一対の縦凹陥部7X,7Xに挟まれた領域(排泄部対向領域Bの横方向Yの中央部)に、エンボス加工等の圧搾加工によって形成された圧搾部が部分的に存在してもよい。その場合、低密度部8(具体的には例えば、一対の縦凹陥部7X,7Xに挟まれた領域)の全面積に占める、該低密度部8に存在する全ての圧搾部の面積の合計の割合は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。なお、本実施形態のナプキン1では、一対の縦凹陥部7X,7Xに挟まれた低密度部8には圧搾部は存在しない。
吸収体4は、繊維塊11を含有することで、これを含有しない通常の吸収体に比して、保形性、クッション性等の特性が向上しているところ、更に厚み方向に圧搾されて高密度化された凹陥部7を有することで、斯かる特性が一層向上しており、例えば、ナプキン1の着用者の両大腿部によって加えられる横方向Yへの強力な圧縮力の如き外力を受けても型崩れし難く、外力に対して即応性良く変形し、また、その外力が解除されれば速やかに復元し得る。
また、ナプキン1においては、相対的に密度の高い凹陥部7と相対的に密度の低い低密度部8とが面方向に併存していることに起因して、面方向に密度差が生じており、その密度差によって体液が面方向に拡散されやすくなされている。すなわちナプキン1は、着用者が排泄した体液を速やかに面方向に拡散することができ、そのため、吸収性コア40が本来的に有する吸収性能を有効に活用して、高い液防漏性を発現し得る。
特に、図1に示すナプキン1は、凹陥部7が排泄部対向領域Bのみならず、前方領域A及び後方領域Cにも存在しているため、ナプキン1全体の保形性や面方向の液拡散性等が高められている。
また低密度部8には、複数の繊維塊11がその本来の外形形状をほぼ維持した状態で存在していることに起因して、複数の繊維塊11同士間に形成された空間部が多数存在し、それらの多数の空間部が、低密度部8が有する優れたクッション性の発現に寄与しているとともに、体液の一時ストック部としても機能し得る。ナプキン1は、このような体液の一時ストック部として機能し得る低密度部8を、排泄された体液が集中しがちな部位である排泄部対向領域Bに有しているため、優れた液吸収性を有し、高い液防漏性を発現し得るとともに、その高い液引き込み性により、表面シート2の肌対向面での液残りを低減し、不快な濡れ感やべたつき感を抑制し得る。
また、前記排泄部対向部が存在する排泄部対向領域Bにクッション性等に優れる低密度部8が存在していることで、排泄部対向領域Bは、体液吸収前の乾燥状態はもとより、体液吸収後の湿潤状態であっても、低密度部8の作用によって柔軟でクッション性に富む。
特に、図1に示すナプキン1においては、排泄部対向領域Bの横方向Yの中央部に低密度部8が存在し、その中央の低密度部8を挟んで横方向Yの両側に凹陥部7(縦凹陥部7X)が存在しているため、体液の吸収部位として中心的な役割を果たす前記排泄部対向部及びその近傍は、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性等が十分に高められており、前述した作用効果がより一層確実に奏され得る。
前述した凹陥部7、低密度部8による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、吸収性コア40に含まれる繊維塊11の構成繊維(合成繊維)11Fとして熱可塑性繊維を用い、凹陥部7においては、該凹陥部7形成時の圧搾加工での該熱可塑性繊維の溶融を伴って、表面シート2、コアラップシート41及び吸収性コア40が熱融着されて一体化されていることが好ましい。
凹陥部7は、繊維塊11と平面視において重なり、且つ排泄部対向領域Bでは、図4(a)に示すように、繊維塊占有率が吸収性コア40の肌対向面側B1に比べて小さい領域である、非肌対向面側B2(吸水性繊維リッチ部位12P)にまで及んでいる。このように、排泄部対向領域Bの非肌対向面側B2に位置する凹陥部7の底部71に、クッション性、圧縮回復性、保形性などの向上に寄与し得る繊維塊11が存在することで、非肌対向面側B2のクッション性等が向上するので、吸収体4(吸収性コア40)における繊維塊占有率に関して前記の「排泄部対向領域B>前後領域A,C」という大小関係が成立していることと相俟って、着用時の吸収体4のヨレ防止効果がより一層優れたものとなり得る。また、斯かる構成により、前述の凹陥部7、低密度部8による作用効果(保形性の向上効果や面方向の液拡散性の向上効果等)の一層の向上も期待できる。
図4(a)を参照して、繊維塊11の坪量は、排泄部対向領域Bにおいて、「凹陥部7の形成部位又は該形成部位よりも横方向Yの外方」(以下、「横方向外方領域」ともいう。)に比べて、「該形成部位よりも横方向Yの内方」(以下、「横方向内方領域」ともいう。)の方が多いことが好ましい。斯かる構成により、排泄部対向領域Bにおける凹陥部7での吸液速度を確保しつつ、縦方向Xの前後への液拡散性を促進することが可能となり、横漏れが効果的に抑制され得る。前記横方向外方領域と前記横方向内方領域との繊維塊11の坪量の比率は、前記横方向外方領域<前記横方向内方領域を前提として、前記横方向外方領域/前記横方向内方領域として、好ましくは0以上、より好ましくは0.1以上、そして、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.9以下である。
なお、排泄部対向領域Bにおける前記横方向内方領域と前記横方向外方領域との境界である凹陥部7(縦凹陥部7X)は、縦方向Xに延在するものであるところ、ここでいう「延在」には、図1に示す如く、凹陥部7が縦方向Xに連続線状に延びている場合のみならず、例えば図6に示す如く、複数の凹陥部7が縦方向Xに間欠配置され、それら複数の凹陥部7が全体として縦方向Xに延在している場合が含まれる。後者の場合、縦方向Xにおいて最も近接する2個の凹陥部7の縦方向Xにおける離間距離は、30mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。
前述した、凹陥部7及び低密度部8に起因する作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、ナプキン1の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。
排泄部対向領域Bにおける、吸収体4(吸収性コア40)の縦方向Xに沿う側縁と凹陥部7(縦凹陥部7X)との横方向Yにおける離間距離W1(図1参照)は、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上、そして、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下である。なお、吸収体4の横方向Yの長さ(幅)が一定ではない場合には、離間距離W1は、吸収体4の幅が最も広い部分での測定値とする。
排泄部対向領域Bの低密度部8の横方向Yの長さすなわち幅W2(図1参照)は、好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上、そして、好ましくは70mm以下、より好ましくは65mm以下である。
吸収体4(吸収性コア40)の肌対向面の全面積に占める、凹陥部7の総面積の割合(凹陥部占有率)は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.1%以上、そして、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。
凹陥部7(7X,7Y)の深さ(表面シート2の肌対向面における凹陥していない部分を基準とした深さ)は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、そして、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。
本実施形態のナプキン1は、図2に示すように、平面視において凹陥部7と重なる位置に非肌面側窪み9を有している。凹陥部7と非肌面側窪み9とは接触しておらず、凹陥部7の底部71は、非肌面側窪み9の底部でもあり、凹陥部7と非肌面側窪み9とが対向する窪み対向部である。凹陥部7の底部71は、周辺部に比して厚み方向に圧縮されているとともに、吸収体4の肌面側及び非肌面側双方から厚み方向内側に位置している。
凹陥部7の底部71すなわち前記窪み対向部は、非肌面側窪み9によって更に圧縮されるので、繊維塊11や吸水性繊維12F等のコア形成材料の、該底部71を介しての横方向Yの移動が阻害される。つまり、コア形成材料が、前記窪み対向部を跨いで面方向に移動することが制限され、これによりコア形成材料の分布が安定するため、前述した繊維塊11や吸水性繊維12Fの偏在による作用効果がより一層安定的に奏されるようになる。非肌面側窪み9は、常法の圧搾加工によって形成することができる。凹陥部7と非肌面側窪み9とは、同時に形成してもよいし、別々に形成してもよい。
本発明の吸収性物品において、凹陥部のパターン(平面視形状及び配置)は、図1に示す凹陥部7(7X,7Y)の如き、平面視線状のものに限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、三角形、星形、ハート形等の点状(ドット状)でもよい。図6に示す吸収体4Aにおいては、平面視円形の凹陥部7が排泄部対向領域Bに散点状に形成され、より具体的には、複数(3個)の凹陥部7が縦方向Xに間欠配置されて、縦方向Xに延在する凹陥部列をなし、その凹陥部列が、横方向Yに間隔をあけて一対配置されている。吸収体4Aは、凹陥部のパターン以外は前述した吸収体4と同様に構成されており、吸収体4Aにおける特に説明しない構成については、吸収体4の説明が適宜適用される。
図7に示すナプキン1Aにおいては、排泄部対向領域Bの隆起部15が、着用者の肌側とは反対側に向かって隆起している。ナプキン1Aは、隆起部15の隆起方向以外は前述したナプキン1と同様に構成されており、ナプキン1Aにおける特に説明しない構成については、ナプキン1の説明が適宜適用される。ナプキン1Aによってもナプキン1と同様の効果が奏される。なお図7では、吸収体における、隆起部15を挟んで横方向Yの両側に位置する部分が、裏面シート3から浮いた状態となっているが、図7は説明容易の観点から模式的に記載したものであり、ナプキン1Aの実使用状態を示したものではない。
以下、繊維塊11について更に説明する。図8には、繊維塊11の典型的な外形形状が2つ示されている。図8(a)に示す繊維塊11Aは四角柱形状より具体的には直方体形状をなし、図8(b)に示す繊維塊11Bは円盤形状をなしている。繊維塊11A,11Bは、相対向する2つの基本面(base plane)111と、該2つの基本面111を連結する骨格面(body plane)112とを備えている点で共通する。基本面111及び骨格面112はいずれも、この種の繊維を主体とする物品における表面の凹凸度合いを評価する際に適用されるレベルで、実質的に凹凸が無いと認められる部分である。
図8(a)の直方体形状の繊維塊11Aは、6つの平坦面を有しているところ、その6面のうち、最大面積を有する相対向する2面がそれぞれ基本面111であり、残りの4面がそれぞれ骨格面112である。基本面111と骨格面112とは互いに交差、より具体的には直交している。
図8(b)の円盤形状の繊維塊11Bは、平面視円形状の相対向する2つの平坦面と、両平坦面を連結する湾曲した周面とを有しているところ、該2つの平坦面がそれぞれ基本面111であり、該周面が骨格面112である。
繊維塊11A,11Bは、骨格面112が平面視において四角形形状、より具体的には長方形形状をなしている点でも共通する。
吸収性コア40に含有される複数の繊維塊11は、それぞれ、図8に示す繊維塊11A,11Bのような、2つの対向する基本面111と両基本面111を連結する骨格面112とを備えた「定形の繊維集合体」である点で、前述した従来技術における不定形の繊維集合体と異なる。換言すれば、吸収性コア40中の任意の1個の繊維塊11を透視した場合(例えば電子顕微鏡で観察した場合)、その繊維塊11の透視形状はその観察角度によって異なり、1個の繊維塊11につき多数の透視形状が存在するところ、吸収性コア40中の複数の繊維塊11それぞれは、その多数の透視形状の1つとして、2つの対向する基本面111と両基本面111を連結する骨格面112とを備えた特定透視形状を有する。前述した従来技術における不定形の繊維集合体は、基本面111や骨格面112のような「面」、すなわち広がりのある部分を実質的に有しておらず、互いに外形形状が異なっていて「定形」ではない。
このように、吸収性コア40に含まれている複数の繊維塊11が、基本面111と骨格面112とで画成された「定形の繊維集合体」であると、不定形の繊維集合体である場合に比して、吸収性コア40における繊維塊11の均一分散性が向上するため、繊維塊11の如き繊維集合体を吸収性コア40に配合することで期待される効果(吸収体の柔軟性、クッション性、圧縮回復性などの向上効果)がより安定的に発現するようになる。また特に、図8(a)に示す如き直方体形状の繊維塊11の場合、その外面が2つの基本面111と4つの骨格面112との6つの面からなるため、他の繊維塊11あるいは吸水性繊維12Fとの接触機会を比較的多く持つことが可能となり、交絡性が高まって、保形性等の向上にも繋がり得る。
繊維塊11において、2つの基本面111の総面積は、骨格面112の総面積よりも大きいことが好ましい。すなわち、図8(a)の直方体形状の繊維塊11Aにおいては、2つの基本面111それぞれの面積の総和は、4つの骨格面112それぞれの面積の総和よりも大きく、また、図6(b)の円盤形状の繊維塊11Bにおいては、2つの基本面111それぞれの面積の総和は、円盤形状の繊維塊11Bの周面を形成する骨格面112の面積よりも大きい。繊維塊11A,11Bのいずれにおいても、基本面111は、繊維塊11A,11Bが有する複数の面のうちで面積が最大の面である。
このような、2つの基本面111と両基本面111に交差する骨格面112とで画成された「定形の繊維集合体」である繊維塊11は、従来技術とは異なる製造方法で製造されるものである。繊維塊11の好ましい製造方法は、図9に示すように、原料となる原料繊維シート10bsを、カッターなどの切断手段を用いて定形に切断する工程を有する。原料繊維シート10bsは、繊維塊11と同組成で且つ繊維塊11よりも寸法が大きいシートであり、好ましくは不織布である。不織布の種類については限定されないが、クッション性を発現させる観点から、エアスルー不織布であることがより好ましい。斯かる工程を経て製造された複数の繊維塊11は、その形状及び寸法が、従来技術によって製造された不定形の繊維集合体と比較して、より定形的に揃っている。図9は、図8(a)の直方体形状の繊維塊11Aの製造方法を説明した図であり、図9中の点線は切断線を示している。吸収性コア40には、このように繊維シートを定形に切断して得られた、形状及び寸法が均一な複数の繊維塊11が配合されている。
図8(a)の直方体形状の繊維塊11Aは、図9に示すように原料繊維シート10bsを、第1方向D1と該第1方向D1に交差(より具体的には直交)する第2方向D2とに所定の長さで切断することで製造される。両方向D1,D2は、それぞれ、シート10bsの面方向における所定の一方向であり、シート10bsは該面方向と直交する厚み方向Zに沿って切断される。このように、原料繊維シート10bsをいわゆる賽の目状に切断して得られる複数の直方体形状の繊維塊11Aにおいては通常、その切断面すなわちシート10bsの切断時においてカッターなどの切断手段と接触する面が、骨格面112であり、非切断面すなわち該切断手段と接触しない面が、基本面111である。基本面111は、シート10bsにおける表裏面(厚み方向Zと直交する面)であり、また前述したとおり、繊維塊11Aが有する複数の面のうちで面積が最大の面である。
なお、以上の繊維塊11Aについての説明は、図8(b)の円盤形状の繊維塊11Bにも基本的に当てはまる。繊維塊11Aとの実質的な違いは、原料繊維シート10bsの切断パターンのみであり、シート10bsを定形に切断して繊維塊11Bを得る際には、繊維塊11Bの平面視形状に合わせて、シート10bsを円形状に切断すればよい。
また、繊維塊11の外形形状は図8に示すものに限定されず、基本面111及び骨格面112はいずれも、図8(a)の各面111,112のように湾曲していない平坦面でもよく、あるいは図8(b)の骨格面112(円盤形状の繊維塊11Bの周面)のように湾曲面でもよい。また、基本面111と骨格面112とは互いに同形状同寸法であってもよく、具体的には例えば、繊維塊11Aの外形形状は立方体形状であってもよい。
繊維塊11のサイズは特に制限されず、吸収性コア40のクッション性、通液性などを考慮して適宜設定し得る。繊維塊11が有する複数の面のうちで面積が最大の面である、基本面111の面積は、繊維塊11のサイズの指標となり得る。繊維塊11の基本面111の面積は、好ましくは1mm2以上、より好ましくは5mm2以上、そして、好ましくは100mm2以下、より好ましくは50mm2以下である。
好ましい繊維塊11として、基本面111のアスペクト比が1又は1に近いもの、すなわち基本面111の平面視形状が正方形又はそれに準じる形状のものが挙げられる。斯かる繊維塊11を吸収性コア40に用いると、吸収性コア40が嵩高くなる傾向があり、クッション性等が向上し得る。
基本面111のアスペクト比は、基本面111の平面視形状が四角形の場合は、その四角形の基本面111を画成する互いに直交する2辺の長さの比率として求められる。その2辺の長さが同じであれば、平面視四角形形状の基本面111のアスペクト比は1となり、2辺の長さが互いに異なる場合、すなわち基本面111の平面視形状が図8(a)に示す如き長方形の場合は、短辺111aの長さL1に対する長辺111bの長さL2の比率(L2/L1)として求められる。また、図8(b)に示す繊維塊11Bのように、基本面111の平面視形状が四角形でない場合は、基本面111の中心(重心)を通って互いに直交する2本の軸の長さの比率として求められる。その2本の軸の長さが同じであれば、平面視非四角形形状の基本面111のアスペクト比は1となり、2本の軸の長さが互いに異なる場合、すなわち相対的に長さの短い短軸と相対的に長さの長い長軸とが存在する場合は、短軸の長さに対する長軸の長さ(図8(b)の符号L2で示す長さ)の比率(後者/前者)として求められる。
繊維塊11(11A,11B)の各部の寸法等は、例えば、以下のように設定することができる。繊維塊11の各部の寸法は、繊維塊11の電子顕微鏡写真などに基づいて測定することができる。
基本面111が図8(a)に示す如き平面視長方形形状の場合、その短辺111aの長さL1は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは5mm以下である。
平面視長方形形状の基本面111の長辺111bの長さL2は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上、そして、好ましくは30mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
なお、基本面111が図8に示すように、繊維塊11が有する複数の面のうちで最大面積を有する面である場合、長辺111bの長さL2は、繊維塊11の最大差し渡し長さ(長軸の長さ)に一致し、該最大差し渡し長さは、円盤形状の繊維塊11Bにおける平面視円形状の基本面111の直径に一致する。
繊維塊11の厚みT、すなわち2つの対向する基本面111間の長さTは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下である。
前述したように、繊維塊11(11A,11B)が有する2種類の面(基本面111、骨格面112)は、繊維塊11を製造する際のカッターなどの切断手段による原料繊維シート10bsの切断によって形成される切断面(骨格面112)と、シート10bsが本来的に有する面であって該切断手段とは接触しない非切断面(基本面111)とに分類される。そして、この切断面か否かの違いに起因して、切断面である骨格面112は、非切断面である基本面111に比して、繊維端部の単位面積当たりの数が多いという特徴を有する。ここでいう「繊維端部」とは、繊維塊11の構成繊維11Fの長さ方向端部を意味する。通常、非切断面である基本面111にも繊維端部は存在するが、骨格面112は、原料繊維シート10bsの切断によって形成された切断面であることに起因して、その切断によって形成された構成繊維11Fの切断端部からなる繊維端部が、骨格面112の全体に多数存在しており、つまり、繊維端部の単位面積当たりの数が基本面111のそれよりも多くなっている。
繊維塊11の各面(基本面111、骨格面112)に存在する繊維端部は、該繊維塊11が、吸収性コア40に含まれる他の繊維塊11や吸水性繊維12Fとの間に交絡を形成するのに有用である。また一般に、繊維端部の単位面積当たりの数が多いほど交絡性が向上し得るので、吸収性コア40の保形性などの諸特性の向上に繋がり得る。そして前述したように、繊維塊11の各面における繊維端部の単位面積当たりの数は均一ではなく、斯かる繊維端部の単位面積当たりの数に関しては「骨格面112>基本面111」なる大小関係が成立することから、繊維塊11を介した他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)との交絡性は該繊維塊11の面によって異なり、骨格面112は基本面111に比して交絡性が高い。すなわち、骨格面112を介しての他の繊維との交絡による結合の方が、基本面111を介してのそれよりも結合力が強く、1個の繊維塊11において、基本面111と骨格面112とで他の繊維との結合力に差が生じ得る。一般に、斯かる結合力が強いほど、その結合されている繊維の動きの自由度が制限され、吸収性コア40全体として強度(保形性)が向上する反面、柔らかさが低下する傾向がある。
このように、吸収性コア40においてはそれに含まれている複数の繊維塊11それぞれが、その周辺の他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)に対して、2種類の結合力を持って交絡しており、これにより吸収性コア40は、適度な柔らかさと強度(保形性)とを兼ね備えたものとなる。そして、このような優れた特性を有する吸収性コア40を、吸収性物品の吸収体として常法に従って用いた場合には、該吸収性物品の着用者に快適な着用感を提供することができると共に、着用時における着用者の体圧等の外力によって吸収性コア40が破壊される不都合が効果的に防止される。
特に、図8に示す繊維塊11(11A,11B)は、前述したように、2つの基本面111の総面積が骨格面112の総面積よりも大きい。このため、繊維端部の単位面積当たりの数が相対的に少なく、それ故に他の繊維との交絡性が相対的に低い基本面111の方が、これとは反対の性質を有する骨格面112よりも、総面積が大きいことを意味する。したがって、図8に示す繊維塊11(11A,11B)は、表面全体に繊維端部が均一に存在する繊維塊に比して、周辺の他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)との交絡が抑制されやすく、また、周辺の他の繊維と交絡するとしても、比較的弱い結合力でもって交絡しやすく、それ故、大きな固まりになり難く、吸収性コア40に優れた柔軟性を付与し得る。
繊維塊11の構成繊維11Fである合成繊維は、親水化剤を含有することが好ましい。本発明で言う「親水化剤」とは、繊維に付与した場合にその繊維の親水度を向上させる剤であり、より具体的には、下記方法で測定される水との接触角を低減させる剤である。
<接触角の測定方法>
測定対象(吸収性コア)から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA-Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC-25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維とのなす角を算出し、接触角とする。測定対象物から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維の水との接触角と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。
なお、測定対象の吸収体(吸収性コア)が吸収性物品等の他の物品の構成部材として用いられており、該吸収体を取り出して評価測定する場合において、該吸収体が、接着剤、融着などによって他の構成部材に固定されている場合には、その固定部分を、繊維の接触角に影響を与えない範囲で、コールドスプレーの冷風を吹き付ける等の方法で接着力を除去してから取り出す。この手順は、本願明細書中の全ての測定において共通である。
繊維塊11の構成繊維11Fたる合成繊維が親水化剤を含有しているということは、繊維塊11が親水化処理されていることを意味する。吸収性コア40に含有されている繊維塊11が親水化処理されていることによる効果の1つとして、吸収性コア40が液を吸収保持して湿潤状態となっている場合における物理的特性の向上が挙げられる。本発明者の知見によれば、繊維塊の構成繊維(合成繊維)の親水化の度合いを高める(水との接触角を低減させる)と、それを含有する吸収性コアの湿潤状態での圧縮仕事量(w-WC)が増加する傾向がある。このw-WCの値の増加は、湿潤状態における吸収性コアのクッション性の向上に繋がるため、繊維塊の構成繊維(合成繊維)に親水化剤を含有させることは、吸収性コアの湿潤状態のクッション性の向上に効果があると言える。
また、ナプキン1の肌対向面おいては前述したとおり、表面シート2及び吸収体4が該吸収体4の非肌対向面側(裏面シート3側)に一体的に凹陥した凹陥部70が、平面視において連続した環状をなして形成されており、それに起因して、体液の移動性(面方向における液拡散性、厚み方向における液透過性)が潜在的に高められているところ、更に繊維塊11が親水化処理されていると、これらの体液の移動に関わる優れた特性がより一層向上し得る。例えば吸収性コア40が、その肌対向面における排泄部対向領域Bの中央部に位置する排泄部対向部にてナプキン1の着用者の体液を最初に受けた場合、その体液は、親水化処理された繊維塊11の構成繊維11Fすなわち親水化剤を含有する合繊繊維と、これに交絡する吸水性繊維12Fとによって、該排泄部対向部から吸収性コア40の内部に速やかに引き込まれ、更には吸収性コア40内を面方向に速やかに拡散しつつ、非肌対向面側(裏面シート3側)に向かって厚み方向に速やかに透過し得る。
また、繊維塊11は前述したとおり、基本面111と骨格面112とで画成された本体部110を有しているところ、これらの面111,112には通常、構成繊維11Fの繊維間空隙が多数存在する。このような、表面に繊維間空隙を多数有する繊維塊11が親水化処理されていると、繊維塊11(本体部110)の外部に存する体液を、該繊維間空隙の毛管作用によって繊維塊11の内部に引き込むことが可能となり、結果として吸収性コア40の吸液性が向上し得る。
このような、繊維塊11の構成繊維11Fたる合成繊維が親水化剤を含有していることに起因する前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、親水化剤を含有する繊維11Fは親水性繊維であることが好ましく、繊維11F(合成繊維)の水との接触角は、好ましくは75度以下、より好ましくは70度以下、更に好ましくは60度以下、更により好ましくは50度以下である。繊維11Fの水との接触角は、これに含有させる親水化剤の種類や含有量などを適宜調整することで調整可能である。
繊維が親水性であるか疎水性であるかは、前記方法で測定される水との接触角に基づいて判断することができ、これが90度未満であれば親水性、90度以上であれば疎水性である。前記方法で測定される水との接触角が小さいほど親水性が高く(疎水性が低く)、該接触角が大きいほど親水性が低い(疎水性が高い)。
繊維塊11の構成繊維11F、すなわち親水化剤を含有する合成繊維は、原料繊維に親水化剤を含有させることによって製造され、そうして製造された繊維11Fの水との接触角は、該原料繊維のそれよりも低減されている。繊維11Fにおける親水化剤の含有形態は特に制限されず、典型的には、繊維11Fの表層部が親水化剤である形態、すなわち原料繊維の表面に親水化剤が薄膜上に付着した形態であるが、これに代えて例えば、原料繊維の内部に親水化剤が練り込まれた形態でもよく、あるいは原料繊維の内部に親水化剤が練り込まれ、更に該原料繊維の表面に親水化剤が付着した形態でもよい。
本発明で用いられる親水化剤は、衛生品用途に使用される一般的な親水化剤であれば特に限定されない。親水化剤としては例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤含むものが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤からなる群から選択される1種以上を含む親水化剤が、親水化の程度を制御し易いことから好ましい。親水化剤の、繊維塊11を構成する合成繊維に対する付与量は、該親水化剤に含まれる界面活性剤量として、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
前記アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩が挙げられ、特に親水基としてスルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤が好ましい。
前記カチオン性界面活性剤の例としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド等が挙げられ、これらの化合物は、炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。前記ハライド化合物におけるハロゲンとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
前記両性界面活性剤の例としては、アルキル(炭素数1~30)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1~30)アミドアルキル(炭素数1~4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1~30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1~30)ベタイン、スルフォベタイン型両性界面活性剤等のベタイン型両性界面活性剤や、アラニン型[アルキル(炭素数1~30)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1~30)イミノジプロピオン酸型等]両性界面活性剤、アルキルベタイン等のグリシン型[アルキル(炭素数1~30)アミノ酢酸型等]両性界面活性剤などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキル(炭素数1~30)タウリン型などのアミノスルホン酸型両性界面活性剤が挙げられる。
前記ノニオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(好ましくはn=2~10)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル(いずれも好ましくは脂肪酸の炭素数8~60)、前記多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物(好ましくは付加モル数2~60モル)、ポリオキシアルキレン(付加モル数2~60)アルキル(炭素数8~22)アミド、ポリオキシアルキレン(付加モル数2~60)アルキル(炭素数8~22)エーテル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
繊維塊11の構成繊維11Fの原料繊維、すなわち親水化剤を含有していない合成繊維としては、衛生品用途に使用される各種の合成繊維を特に制限なく用いることができるが、好ましくは熱可塑性繊維である。繊維11Fとして熱可塑性繊維が好ましい理由は、繊維塊11に、複数の熱可塑性繊維11Fが互いに熱融着した3次元構造を付与して、吸収性コア40が乾燥状態及び湿潤状態のいずれの状態でも、保形性、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、ヨレにくさなどにおいて優れた効果を発現し得るようにするためである。複数の熱融着部が3次元的に分散した繊維塊11を得るためには、その原料繊維シート10bs(図9参照)が同様に構成されていればよく、また、そのような複数の熱融着部が3次元的に分散した原料繊維シート10bsは、前述したように、熱可塑性繊維を主体とするウエブや不織布に、熱風処理などの熱処理を施すことによって製造することができる。
また、繊維塊11を構成する構成繊維11Fは、前述したように、水との接触角が好ましくは75度以下であるような親水性であるが、吸水性繊維12Fよりも吸水性が低い性質を有すること(弱吸水性)が好ましく、特に非吸水性すなわち水分(尿や経血などの体液)を吸収し難い性質を有することが好ましい。これは、繊維塊11と併用される吸水性繊維12Fが文字どおりの吸水性を有することと著しい対照をなす。繊維11Fが弱親水性繊維、好ましくは吸水性に乏しい非吸水性繊維であることで、吸収性コア40が乾燥状態である場合のみならず、体液を吸収して湿潤状態にある場合でも、前述した繊維塊11の存在に起因する作用効果(保形性、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、ヨレにくさなどの向上効果)が安定的に奏されるようになる。繊維塊11における構成繊維11Fとしての合成繊維の含有量は、繊維塊11の全質量に対して、好ましくは90質量%以上であり、100質量%すなわち繊維塊11が合成繊維のみから形成されていることが最も好ましい。特に、構成繊維11Fとしての合成繊維が非吸水性のものである場合に、前述した繊維塊11の存在に起因する作用効果が一層安定的に奏される。
本明細書において、「吸水性」という用語は、例えば、パルプは吸水性と言ったように、当業者にとって容易に理解できるものである。同様に、熱可塑性繊維は弱吸水性(特に、非吸水性)であることも、容易に理解され得る。一方で、繊維の吸水性の程度は下記方法により測定される水分率の値によって、相対的な吸水性の違いが比較できるとともに、より好ましい範囲も規定できる。斯かる水分率の値が大きいほど、繊維の吸水性が強い。吸水性繊維としては、斯かる水分率が6%以上であることが好ましく、10%以上がより好ましい。一方で、合成繊維は、斯かる水分率が6%未満であることが好ましく、4%未満であることがより好ましい。なお、水分率が6%未満の場合、当該繊維は非吸水性繊維と判定できる。
<水分率の測定方法>
水分率は、JIS P8203の水分率試験方法を準用して算出した。すなわち、繊維試料を温度40℃、相対湿度80%RHの試験室に24時間静置後、その室内にて絶乾処理前の繊維試料の重量W(g)を測定した。その後、温度105±2℃の電気乾燥機(例えば、株式会社いすゞ製作所製)内にて1時間静置し、繊維試料の絶乾処理を行った。絶乾処理後、温度20±2℃、相対温度65±2%の標準状態の試験室にて、旭化成(株)製サランラップ(登録商標)で繊維試料を包括した状態で、Siシリカゲル(例えば、豊田化工(株))をガラスデシゲータ内(例えば、(株)テックジャム製)に入れて、繊維試料が温度20±2℃になるまで静置する。その後、繊維試料の恒量W’(g)を秤量して、次式により繊維試料の水分率を求める。水分率(%)=(W-W’/W’)×100
繊維塊11の構成繊維11Fの素材として好適な非吸水性の合成樹脂(熱可塑性樹脂)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、繊維11Fは、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
繊維11Fにおける親水化剤の含有量は、原料繊維や親水化剤の種類、希望する親水化の度合いなどに応じて適宜調整すればよく特に制限されないが、例えば、原料繊維として前記熱可塑性樹脂を素材とするものを用い、且つ親水化剤として衛生品用途に使用される一般的なものを用い、且つ繊維11Fの水との接触角を75度以下とする場合には、繊維11Fの全質量に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、そして、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。親水化剤の含有量が少なすぎると、繊維塊11の親水化の度合いが低くなって前述した作用効果が十分に奏されないおそれがあり、逆に多すぎると、繊維塊11の製造現場における原料繊維シートの搬送時のライン汚染が生じるおそれがある。
繊維塊11の構成繊維11F(合成繊維11F)の水との接触角は、吸水性繊維12Fの水との接触角以上であることが好ましい。すなわち、合成繊維11Fの親水度は、吸水性繊維12Fの親水度と同等か、又は吸水性繊維12Fの親水度よりも低いことが好ましい。斯かる親水度の大小関係の成立により、繊維塊11から吸水性繊維12F、あるいはこれとは逆方向への体液の移動がより一層スムーズになされるようになり、吸収性コア40の吸液性の一層の向上が期待できる。このように水との接触角に関して、「繊維11F≧吸水性繊維12F」なる大小関係を実現するには、繊維11Fの親水化剤による親水化の度合いを適宜調整すればよい。吸水性繊維12Fの水との接触角は、繊維11Fのそれ以下であることを前提として、好ましくは60度以下、より好ましくは40度以下である。
また、繊維塊11の構成繊維11F(合成繊維)の水との接触角は、表面シート2の水との接触角に比して小さいことが好ましい。すなわち、繊維11Fの親水度は、表面シート2の親水度よりも高いことが好ましい。斯かる親水度の大小関係の成立により、ナプキン1においては、表面シート2が吸収した液が、吸収性コア40に素早く取り込まれ、また、前述した吸収性コア40内部での面方向への液拡散効果により、特にナプキン1の排泄部対向領域Bの中央部に位置する前記排泄部対向部において、表面シート2及び吸収性コア40の液保持量が低減され、延いては、液吸収後でも該排泄部対向部及びその近傍のクッション性に優れるという効果が奏される。このように水との接触角に関して、「表面シート2>繊維11F(繊維塊11)≧吸水性繊維12F」なる大小関係を実現するには、繊維11Fの親水化剤による親水化の度合いを調整する他、必要に応じ、表面シート2に繊維11Fと同様の親水化処理を施して適宜調整すればよい。
以下、本発明に係る吸収体の製造方法について、前述した吸収体4の製造方法に基づき図面を参照しながら説明する。図10には、吸収体4の製造装置80の概略構成が示されている。製造装置80は、外周面81fに集積用凹部810が形成された回転ドラム81と、外周面81fに吸収体4の原材料を搬送する流路820を内部に有するダクト82とを備え、回転ドラム81をそのドラム周方向81Yに沿って回転軸周りに回転させつつ、回転ドラム81の内部側からの吸引によって流路820に生じた空気流(バキュームエア)に乗って搬送された原材料を、集積用凹部810に積繊させるようになされている。ダクト82には、吸収体4の原材料(繊維材料)の供給機構として、第1供給機構83及び第2供給機構84がそれぞれ接続されている。また、回転ドラム81の下方には、集積用凹部810から離型された原材料の積繊物である吸収性コア40を受け取って次工程に搬送するバキュームコンベア85が配されている。また、回転ドラム81を挟んでダクト82と反対側には、集積用凹部810内の積繊物を押さえ付けるための押さえベルト86が、回転ドラム81の外周面81fに沿って配されている。押さえベルト86は、無端状且つ通気性又は非通気性のベルトであり、ローラ861及びローラ862に架け渡されて、回転ドラム81の回転と共に連れ回るようになされている。
回転ドラム81は、金属製の剛体からなる円筒状のドラム本体811と、ドラム本体811の外周部に重ねて配され、回転ドラム81の外周面81fを形成する外周部材812とを含んで構成されている。外周部材812は、モータ等の原動機からの動力を受けて、水平な回転軸を回転中心としてドラム周方向81Yに沿って方向R1に回転するが、外周部材812よりも内側に配されたドラム本体811は、固定されていて回転しない。ドラム本体811のドラム幅方向CDの両端は、それぞれ、図示しない側壁及びフェルト等のシール材によって気密に封鎖されている。
外周部材812は、集積用凹部810の底部すなわち原材料の積繊面を形成する通気性の多孔性プレート813と、回転ドラム81の外周面81fにおける該積繊面以外の部分を形成する難通気性又は非通気性のパターン形成プレート814とを含んで構成されている。製造装置80においては、パターン形成プレート814は、ドラム周方向81Yの全長にわたって連続して延びる円環状をなし、回転ドラム81の回転軸方向の両端部に一対設けられており、その一対のパターン形成プレート814,814間に、多孔性プレート813が配されている。
多孔性プレート813は、装置内部側(回転ドラム81の内方)からの吸引によって生じた空気流を装置外部側(回転ドラム81の外方)に伝え、該空気流に乗って運ばれてくる原材料を透過させずに保持し、空気のみを透過させる通気性のプレートである。多孔性プレート813には、これを厚み方向に貫通する吸引孔が、該多孔性プレート813全体に多数形成されており、集積用凹部810が回転ドラム81内における負圧に維持された空間上を通過している間、該吸引孔が空気流の透過孔として機能する。多孔性プレート813としては、例えば、金属又は樹脂製のメッシュプレート、あるいは金属又は樹脂製の板にエッチング、パンチングで多数の細孔を形成したもの等を用いることができる。また、パターン形成プレート814としては、例えば、ステンレスあるいはアルミ等の金属又は樹脂製の板等を用いることができる。
図10に示すように、ドラム本体811の内部は、ドラム周方向81Yに複数の空間81A,81B,81Cに仕切られている。また、ドラム本体811には、その内部を減圧する減圧機構(図示せず)が接続されている。この減圧機構は、ドラム本体811を構成する側壁(図示せず)に接続された排気管(図示せず)と該排気管に接続された排気ファン(図示せず)とを含んで構成されている。ドラム本体811内の複数の空間81A,81B,81Cは相互に独立しており、前記減圧機構により、これら複数の空間の負圧(吸引力)をそれぞれ独立に調整することが可能である。
回転ドラム81は、ドラム周方向81Yの所定の範囲、具体的には、外周部がダクト82で覆われている空間81Aが、内部側からの吸引によって原材料の積繊が可能な積繊ゾーンとなされている。空間81Aを負圧に維持した状態で、外周部材812を回転軸周りに回転させると、外周部材812に形成された集積用凹部810が空間81A上を通過している間、集積用凹部810の底部(多孔性プレート813)に空間81A内の負圧が作用し、該底部に形成された多数の吸引孔を通じた空気の吸引が行われる。この吸引孔を通じた吸引により、ダクト82内の流路820を搬送されてきた原材料が、集積用凹部810へと導かれてその底部上に積繊する。一方、通常、回転ドラム81の空間81Bは、空間81Aよりも弱い負圧又は圧力ゼロ(大気圧)に設定され、また、空間81Cは、集積用凹部810内の積繊物の転写位置及びその前後を含む領域であるので、圧力ゼロ又は陽圧に設定される。
バキュームコンベア85は、駆動ローラ851及び従動ローラ852に架け渡された無端状の通気性ベルト853と、該通気性ベルト853を挟んで回転ドラム81の空間81Cが存する部分と対向する位置に配されたバキュームボックス854とを含んで構成されている。通気性ベルト853上にはコアラップシート41が導入され、集積用凹部810から離型された積繊物たる吸収性コア40がコアラップシート41に受け渡されるようになされている。
ダクト82は、図10に示すように、第1供給機構83から回転ドラム81にわたって連続的に延びており、原材料の供給方向の上流側の開口部と下流側(回転ドラム81側)の開口部とを有し、これら両開口部間に原材料の流路820が存している。ダクト82の天板には、流路820に粒子状の吸水性ポリマー13(図2参照)を供給するポリマー散布管821が配されており、吸収性コア40に吸水性ポリマー13を含有させる場合はこのポリマー散布管821を使用する。
吸収体4は繊維材料として繊維塊11及び吸水性繊維12Fの2種類を含有しているので、製造装置80はこれに対応して繊維材料の供給機構として、吸水性繊維12Fをダクト82内に供給する第1供給機構83(吸水性繊維製造装置)と、繊維塊11をダクト82内に供給する第2供給機構84(繊維塊製造装置)と備えている。
第1供給機構83は、ダクト82における回転ドラム81側とは反対側の開口部に配されている。第1供給機構83は、この種のパルプ繊維等の積繊装置における繊維材料の供給機構と同様に構成されており、複数の吸水性繊維12Fが集積した帯状の原料繊維シート10asを解繊する解繊機831を備えている。
図11には、第2供給機構84が拡大して模式的に示されている。第2供給機構84は、図8(a)に示す繊維塊11Aの如き直方体形状の繊維塊11を製造供給するものであって、繊維塊11の構成繊維11Fからなる帯状の原料繊維シート10bsを、図9に示すように、互いに交差する2方向(第1方向D1及び第2方向D2)に所定の長さで切断する切断工程を実施する装置であり、被切断物(原料繊維シート10bs)を第1方向D1に切断する第1のカッターローラ841と、被切断物を第2方向D2に切断する第2のカッターローラ842と、両ローラ841,842間に配された1個の受けローラ843とを備えている。これら3つのローラ841,842,843は、それらの回転軸を平行に揃えつつ外周面を対向させて互いに反対方向に回転するようになっている。カッターローラ841,842の外周面にはカッター刃844,845が配されているのに対し、受けローラ843の外周面は、カッター刃が配されておらず平滑である。受けローラ843の外周面近傍には、その回転方向の上流側から順に、ガイドローラ846、第1のカッターローラ841、ガイドローラ847、第2のカッターローラ842が配されている。
原料繊維シート10bsの切断方向の1つである「第1方向D1」は、第2供給機構84における原料繊維シート10bsの搬送方向MDに沿っており、具体的には第1方向D1と搬送方向MDとのなす角度は45度未満である。図示の形態においては、第1方向D1と搬送方向MDとは一致しており、両方向D1,MDのなす角度はゼロである。
また、原料繊維シート10bsの切断方向の他の1つである「第2方向D2」は、第1方向D1に交差する方向であり、図示の形態においては、第1方向D1(搬送方向MD)と第2方向D2とは直交し、両方向D1,D2のなす角度は90度である。
また、図10中の符号CDで示す方向は、搬送方向MDと直交する方向であるとともに、回転ドラム81及び製造装置80が具備する各種ローラの回転軸と平行な方向であり、図示の形態では、長尺帯状の積繊物たる吸収性コア40及び長尺帯状の原料繊維シート10as,10bsそれぞれの幅方向(長手方向と直交する方向)と一致している。
図10及び図11に示すように、第1のカッターローラ841の外周面には、その周方向(第1方向D1)に延びるカッター刃844が、該ローラ841の回転軸方向すなわちCD方向(第2方向D2)に所定の間隔を置いて複数配されている。
また、第2のカッターローラ842の外周面には、その回転軸方向すなわちCD方向(第2方向D2)に延びるカッター刃845が、該ローラ842の周方向(第1方向D1)に所定の間隔を置いて複数配されている。
以上の構成の製造装置80を用いた吸収体4の製造方法は、基本的には、同様の構成の積繊装置を用いた公知の吸収体の製造方法と同じである。すなわち図10に示すように、回転ドラム81をそのドラム周方向81Yに沿って回転軸周りに方向R1に回転させつつ、第1供給機構83にて原料繊維シート10asの解繊によって得られた吸水性繊維12Fを、回転ドラム81の内部側からの吸引によってダクト82の流路820に生じた空気流(バキュームエア)に載せて回転ドラム81に搬送し、空間81Aの存在領域にて、第2供給機構84から供給された繊維塊11とともに集積用凹部810に積繊させて積繊物を得る。この積繊物は吸収性コア40である。集積用凹部810内の吸収性コア40は、外周部材812の回転に伴って空間81Aの存在領域(回転ドラム81の外周面81fにおけるダクト82で被覆された部分)を通過し、空間81Bの存在領域に導入されたところで押さえベルト86によって押さえ付けられつつ、バキュームコンベア85の近傍まで搬送された後、集積用凹部810から離型され、バキュームコンベア85に導入されているコアラップシート41上に転写され、コアラップシート41で被覆される。こうして、長尺帯状の吸収体4が製造され、この後所定の単位長さに切断されることで、ナプキン1用の吸収体4とされる。
吸収体4の製造方法は、前記の基本工程に加えて更に、第2供給機構84による繊維塊11の製造及び供給工程を備える点で特徴付けられる。すなわち吸収体4の製造方法の主たる特徴の1つとして、図10及び図11に示すように、複数の繊維11Fが集積した帯状の原料繊維シート10bsを、該原料繊維シート10bsの長手方向に沿う第1方向D1に切断して複数の帯状の細幅シート片10btを得、次いで、該複数の細幅シート片10btをそれぞれ第1方向D1に交差(図示の形態では「直交」)する第2方向D2(CD方向)に切断して繊維塊11を形成する切断工程と、形成された繊維塊11と別途用意した吸水性繊維12Fとを混合する混合工程とを備える点が挙げられる。
第2供給機構84においては、帯状の原料繊維シート10bsを、先ず、第1のカッターローラ841と受けローラ843との間にて、該シート10bsの搬送方向MDに沿う方向である第1方向D1に切断して、同方向D1に延びる細幅シート片10btを複数製造し、次いで、受けローラ843と第2のカッターローラ842との間にて、それら複数の帯状の細幅シート片10btを、それらの搬送方向(長手方向)と直交するCD方向である第2方向D2に切断する(切断工程)。このように、帯状の原料繊維シート10bsを第1方向D1及びこれに直交する第2方向D2に順次切断することで、原料繊維シート10bsは図9に示す如く賽の目状に切断され、複数の繊維塊11となる。こうして製造された複数の繊維塊11の本体部110の外形形状は、図8(a)に示す如き直方体形状である。
原料繊維シート10bsの切断によって製造された複数の繊維塊11は、吸引ノズル848によってダクト82内の流路820に供給され、第1供給機構83から回転ドラム81に向かって流路820を飛散している吸水性繊維12Fと混合され、吸水性繊維12Fとともに集積用凹部810に積繊される(混合工程)。吸引ノズル848はその長さ方向の両端が開口しており、そのうちの一方の開口848aが、第2のカッターローラ842と受けローラ843との最近接点の近傍に位置し、他方の図示しない開口にてダクト82内の流路820と連通している。第2のカッターローラ842と受けローラ843との間にて製造された複数の繊維塊11は、開口848aを通じて吸引ノズル848内に取り込まれ、ダクト82内に供給される。製造装置80においては、吸引ノズル848とダクト82との接続位置は、図10に示すように、回転ドラム81と第1供給機構83との間であり、且つポリマー散布管821よりも回転ドラム81寄りの位置である。
前述したとおり、吸収体4においては繊維塊占有率について、「排泄部対向領域B>前後領域A,C」という大小関係が成立するとともに、排泄部対向領域Bにおいては「肌対向面側B1>非肌対向面側B2」という大小関係が成立する。斯かる大小関係が成立した吸収体4を製造することは、回転ドラム81の集積用凹部810へのコア形成材料(繊維塊11、吸水性繊維12F、吸水性ポリマー13)の積繊を適切に制御することで可能である。典型的には、集積用凹部810における吸収性コア40の前後領域A,Cに対応する部位(以下、「前後領域対応部」ともいう。)には、吸水性繊維12Fを主体とするコア形成材料を積繊させ、集積用凹部810における吸収性コア40の排泄部対向領域Bに対応する部位(以下、「排泄部対向領域対応部」ともいう。)には、繊維塊11を主体とするコア形成材料を積繊させる。そして、前記排泄部対向領域対応部については更に、コア形成材料の積繊を2回に分けて実施し、そのうちの1回は、繊維塊11を主体とするコア形成材料を用い、他の1回は、吸水性繊維12Fを主体とするコア形成材料を用いる。この2回にわたる積繊は、1回目の積繊終了後速やかに2回目の積繊が実施され、どちらを先に実施してもよい。このように、集積用凹部810においてコア形成材料の分布を意図的に不均一にすることは、公知の積繊技術を利用して行うことが可能である。
前記「吸水性繊維12Fを主体とするコア形成材料」は、該コア形成材料の積繊物の繊維塊占有率が、前述した、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの非肌対向面側B2の繊維塊占有率の好ましい範囲となるようにすることが好ましく、具体的には、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、0質量%でもよい。
前記「繊維塊11を主体とするコア形成材料」は、該コア形成材料の積繊物の繊維塊占有率が、前述した、吸収性コア40の排泄部対向領域Bの肌対向面側B1の繊維塊占有率の好ましい範囲となるようにすることが好ましく、具体的には、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。
前述した吸収体4の製造方法は、1台の積繊装置(製造装置80)を用い、繊維塊11の集積用凹部への供給タイミングと吸水性繊維12Fのそれとを異ならせる方法であるが、これ以外の他の方法で吸収体4を製造することも可能である。具体的には例えば、2台の積繊装置を用い、一方の積繊装置で製造した積繊体と、他方の積繊装置で製造した積繊体とを重ねて一体化する方法が挙げられる。
前記の「2台の積繊装置を用いる吸収体4の製造方法」では、まず、コア形成材料として吸水性繊維12Fと、必要に応じて吸水性ポリマー13とを用い、該コア形成材料を第1の積繊装置の集積用凹部に集積して吸水性繊維積繊体を製造する。前記吸水性繊維積繊体は、吸収性コア40の吸水性繊維リッチ部位12Pに相当し得る。またこれとは別に、コア形成材料として繊維塊11を用い、該コア形成材料を第2の積繊装置の集積用凹部に集積して繊維塊積繊体を製造する。前記繊維塊積繊体は、吸収性コア40の繊維塊リッチ部位11Pに相当し得る。次いで、前記吸水性繊維積繊体と前記繊維塊積繊体とを重ねて積層体を得、該積層体を厚み方向に加圧することで一体化する。これとは別の一体化方法として、公知のバキュームコンベアの如き吸引手段を用い、該吸引手段の吸引面上に前記吸水性繊維積繊体を置き、該吸引面の吸引力が作用している状態で、該吸水性繊維積繊体上に前記繊維塊積繊体を重ねて一体化する。いずれの一体化方法であっても、吸水性繊維積繊体と繊維塊積繊体との界面では吸水性繊維と繊維塊とに交絡が生じる。こうして、排泄部対向領域Bの吸収体4(図5参照)の如き、繊維塊11(吸水性繊維12F)が厚み方向で偏在している吸収体を得る。
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では吸収体4は、排泄部対向領域Bの少なくとも横方向Yの中央部が他の領域A,Cよりも厚みが大きい肉厚の構造を有するものであったが、排泄部対向領域Bと前後領域A,Cとで吸収体4の厚みが同じであってもよい。この場合は、例えば、均一厚みの吸収性コア40を作製し、その均一厚みの吸収性コア40の排泄部対向領域Bの少なくとも一部の形成材料を排除したのち、排除した厚み分の繊維塊11を補充する等の方法によって、全体の厚みが均一な吸収体4を作製することができる。
また、図1に示すナプキン1では、凹陥部7を構成する縦凹陥部7Xと横凹陥部7Yとがそれらの長さ方向の端部にて連結し、凹陥部7全体として閉じた環状を形成していたが、凹陥部7を構成する各凹陥部同士は連結していなくてもよく、縦凹陥部7Xと横凹陥部7Yとが隙間をあけて近接配置されていてもよい。凹陥部7と平面視で重なる非肌面側窪み9についても同様である。
本発明の吸収性物品は、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含し、前述した生理用ナプキンの他、生理用ショーツ、止着テープを有するいわゆる展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、失禁パッド等が包含される。