JP7175792B2 - 構造物、構造物の施工方法 - Google Patents

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本発明は、構造物およびその施工方法に関する。
下水汚泥の嫌気性発酵消化槽として、プレストレストコンクリートによる卵形の側壁の内部に撹拌機を設けた貯槽(以下、PC卵形消化槽という)があり、死水域ができにくく撹拌性が高い点などで優れている。側壁には周方向と経線方向の緊張材によりプレストレスが導入されており、これにより液圧等の内圧に抵抗し、PC卵形消化槽からの液漏れ等を好適に防ぐことができる。
従来の現場打ちコンクリートによるPC卵形消化槽の施工時には、コンクリートの打設、断熱材の取付、防食塗装の作業が必要であり、これらの作業ごとに卵形の曲面に沿った複雑な足場を必要としていた。また、PC卵形消化槽は特殊な形状の上に周方向と経線方向のプレストレスを導入する必要があり、施工が難しかった。
これに対し、特許文献1にはプレキャストセグメント(以下、セグメントということがある)からなるPC卵形消化槽が記載されており、このようなセグメントを用いることで施工が簡略化される。
特許第4309835号
ところで、PC卵形消化槽では、施工性等の観点から周方向の緊張材を側壁の外部に配置して外ケーブルとする場合がある。しかしながら、図14に示すようにPC卵形消化槽の側壁aの外面は鉛直方向に対して傾斜しているので、仮に周方向の緊張材bを直接側壁aの外面に沿って配置し、これを緊張すると、周方向の緊張材bが内側に締まるように変位しようとし(矢印c参照)、これに伴い、側壁aの傾斜面に沿った緊張材bの位置ずれ(矢印d参照)が生じる。
特許文献1ではセグメントの端部にリブを設け、このリブの貫通孔に外ケーブルを通しており上記のような位置ずれが生じることは無いが、セグメントが複雑な形状となり製作コストがかかる。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、外ケーブルの緊張時の位置ずれを簡易な構成で防止できる構造物等を提供することを目的とする。
前述した課題を解決するための第1の発明は、プレキャストセグメントにより構築され、平面において閉領域を形成する側壁を有する構造物であって、前記側壁の高さ方向の中央から前記側壁の頂端の蓋体までの範囲が、一体のプレキャストセグメントを前記側壁の周方向に並べて構成され、前記側壁には、周方向の緊張材の緊張により周方向のプレストレスが導入され、前記範囲に位置する前記緊張材の定着を行うための、一部の前記プレキャストセグメントであるピラスターが、高さ方向の全長に亘って、前記ピラスター以外の前記プレキャストセグメントよりも外側に増厚しており、前記ピラスター以外の前記プレキャストセグメントのプレキャストセグメント本体の外面に、周方向の緊張材を収容するための窪みが設けられ、前記窪みは、周方向の緊張材が緊張時に内側に変位しようとする方向と略直交する面を有することを特徴とする構造物である。
本発明では、側壁の外部に周方向の緊張材(外ケーブル)を配置し、その緊張により側壁に周方向のプレストレスを導入する場合において、周方向の緊張材が側壁のセグメント本体の外面に設けた窪みに収容される。当該窪みは、周方向の緊張材がその緊張時に内側に変位しようとする方向と略直交する面を有するので、周方向の緊張材の緊張時の位置ずれを防止できる。本発明はセグメント本体の外面に窪みを形成するだけの簡易な構成なので、セグメントの形状が複雑となることも無い。また緊張材を貫通孔に通して配置するような手間も掛からず、施工も簡単である。
プレキャストセグメント本体の外面は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面を有し、前記窪みは前記傾斜面に設けられることが望ましい。
仮に傾斜面に周方向の緊張材を直接配置して緊張すると、前記のように緊張材が傾斜面に沿って位置ずれする。本発明は、このような位置ずれを防止できる点で特に有効である。
前記窪みは前記外面から内側に向かって凹状に形成され、上面および下面を有することが望ましい。
これにより、窪みの上面や下面によっても周方向の緊張材の緊張時の位置ずれを防止でき、また上面や下面によって緊張材の配置時の位置決めができるので施工精度も向上する。
前記側壁の外周は多角形状であり、前記窪みの前記面は平面において円弧状に形成されることが望ましい。
これにより、側壁の外周が多角形状であっても、別途の治具を要すること無く周方向の緊張材を円弧状に配置できる。
前記構造物は汚泥の消化槽であり、前記側壁の高さ方向の中間部は、頂端および底端に向けて曲線状に窄まることが望ましい。また、前記側壁の一部は地表面下にあり、前記窪みは、前記側壁の地表面上の部分で設けられることも望ましい。
これにより死水域ができにくく撹拌性が高い等の利点を有する略卵形の消化槽を形成できる。消化槽の側壁の一部が地表面下に位置する場合は、地表面上にある周方向の緊張材に外ケーブルを適用することとし、前記の窪みは側壁の地表面上の部分に形成するとよい。
第2の発明は、平面において閉領域を形成する側壁を有する構造物の施工方法であって、前記側壁をプレキャストセグメントにより構築する工程と、周方向の緊張材の緊張により前記側壁に周方向のプレストレスを導入する工程と、を有し、前記側壁の高さ方向の中央から前記側壁の頂端の蓋体までの範囲が、一体のプレキャストセグメントを前記側壁の周方向に並べて構成され、前記範囲に位置する前記緊張材の定着を行うための、一部の前記プレキャストセグメントであるピラスターが、高さ方向の全長に亘って、前記ピラスター以外の前記プレキャストセグメントよりも外側に増厚しており、前記ピラスター以外の前記プレキャストセグメントのプレキャストセグメント本体の外面に、周方向の緊張材を収容するための窪みが設けられ、前記窪みは、周方向の緊張材が緊張時に内側に変位しようとする方向と略直交する面を有することを特徴とする構造物の施工方法である。
第2の発明は第1の発明の構造物の施工方法である。
本発明により、外ケーブルの緊張時の位置ずれを簡易な構成で防止できる構造物等を提供することができる。
消化槽1を示す図。 側壁3を示す図。 セグメント31、32について示す図。 経線方向PC鋼材15、16の配置を示す図。 周方向PC鋼材17と窪み30を示す図。 周方向PC鋼材18と切欠部35を示す図。 鋼殻60とコンクリート66を示す図。 消化槽1の施工方法を示す図。 消化槽1の施工方法を示す図。 消化槽1の施工方法を示す図。 セグメント32の地組とセグメント31の設置について説明する図。 周方向に隣り合うセグメント32の間の間隙を示す図。 窪み30の例。 緊張材bの移動について説明する図。
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(1.消化槽1)
図1は本発明の実施形態に係る消化槽1を示す図であり、消化槽1の鉛直方向の断面を見たものである。また図2(a)は側壁3を示す斜視図であり、図2(b)は側壁3を上から見た図である。
消化槽1は下水処理場等に設けられる構造物であり、内部に下水を貯留する貯槽である。消化槽1では、下水の汚泥を嫌気性消化によって処理する。消化槽1の内部には汚泥の処理を効率的に行うために撹拌機(不図示)が設けられる。
消化槽1は全体として略卵形の形状を有するPC卵形消化槽であり、側壁3、台座コンクリート5、底部部材6、蓋体7、鋼製足場8等を備える。消化槽1は半地下式の貯槽であり、側壁3の下部3cの一部や台座コンクリート5などは地表面下に埋設される。
側壁3は、頂端と底端に向けて窄まるコンクリート製の略卵形の筒状部材である。より詳細には、側壁3の高さ方向の中間部3aが球面状に外側に膨らみ、中間部3aの上方と下方が円錐台状に頂端および底端に向けて窄まる。
鉛直面を見た場合、側壁3の中間部3aの内面は、側壁3の高さ方向の中央にある中心Cから所定の曲率半径Rと中心角αで円弧状に膨らんで頂端および底端に向けて曲線状に窄まり、中間部3aの上方および下方の内面はそれぞれ頂端と底端に向けて上記の円弧と滑らかに連続する直線状に窄まる。本実施形態では上記の中心角αを90°、中間部3aの上方および下方の内面の傾斜角βを水平方向に対し45°とし、側壁3の内面が側壁3の高さ方向の中央に関して上下対称となるが、これに限ることはない。
側壁3は、側壁3の平面における中心軸Oからの離間距離が最大となる位置、すなわち側壁3の高さ方向の中央で上下に分けられる。側壁3の上部3bと下部3cは、複数のプレキャストセグメント31、32を側壁3の周方向に並べて構成される。
側壁3の下部3cのセグメント32は、さらに小セグメント321、322に分割される。上下の小セグメント321、322の分割位置は、前記の中心Cから延び水平方向に対し傾斜角β/2で下方に傾斜した線分Lと、側壁3との交点に対応する。
前記したように側壁3は筒状の部材であり、平面において閉領域を形成する。また側壁3の外周の形状は、セグメント31、32の製作容易性等を考慮し、多角形による疑似円周状(略円周状)となっている(図2(b)参照)。なお、側壁3の内周も、外周の多角形を縮小した多角形による疑似円周状(略円周状)となっている。
側壁3の上部3bのセグメント31は、図2(b)に示すように、側壁3の上部3bを、中心軸Oを通る放射状の鉛直面で周方向に等分割した形状を有する。一部のセグメント31(図2(b)のP参照)は他のセグメント31よりも外側に増厚しており、これが周方向PC鋼材17(図1参照)の端部を定着するピラスターとして用いられる。
図3(a)の左図はセグメント31(ピラスターP以外のセグメント31)を上記鉛直面に沿って見た図であり、右図は当該セグメント31の立面図である。セグメント31は左右の幅(側壁3の周方向の長さ)より上下の長さの大きい細長形状であり、本体の幅は上端に行くにつれ狭くなる。
側壁3の下部3cのセグメント32も、側壁3の下部3cを、中心軸Oを通る放射状の鉛直面で周方向に等分割した形状を有する。また一部のセグメント32(図2(a)のP参照)の上部は他のセグメント32の上部よりも外側に増厚しており、周方向PC鋼材17(図1参照)の端部を定着するピラスターとして用いられる。
図3(b)は、セグメント32(ピラスターP以外のセグメント32)を図3(a)と同様に示す図である。セグメント32も、左右の幅より上下の長さの大きい細長形状を有し、本体の幅は下端に行くにつれ狭くなる。
小セグメント321の上端には、外側に段状に拡幅する拡幅部321aが形成される。小セグメント322の上端にも、外側に段状に拡幅する拡幅部322aが形成される。小セグメント321の下面は小セグメント322の上面と同じ厚さを有し、両セグメント321、322の内面および外面は滑らかに連続する。
セグメント31および小セグメント321、322には、コンクリートを型枠に打設するなどして事前に製作されたプレキャストコンクリート部材が用いられる。小セグメント321、322については、1つの型枠の内部空間を鉄板等の仕切で2分割し、分割された各空間にコンクリートを打設するなどして一度に製作することが可能である。消化槽1を施工する際は、予めこれらのセグメントの内面に防食塗装を施し、またセグメントの外面には断熱材(不図示)を予め取付けておくこともできる。
セグメント31、32の内部には、経線方向PC鋼材15、16が配置される。経線方向PC鋼材15、16は側壁3の経線方向に配置される緊張材であり、例えばPC鋼棒が用いられる。図4は、経線方向PC鋼材15、16の配置を、上下に連続するセグメント31、32の立面において示したものである。
経線方向PC鋼材15は、セグメント31内に複数本通される。各経線方向PC鋼材15の下端は、セグメント32の上端の拡幅部321aを貫通し、当該拡幅部321aの下面で定着される。
一方、各経線方向PC鋼材15の上端の定着位置は異なっており、セグメント31の幅方向の中央部にある経線方向PC鋼材15の上端はセグメント31の上端で定着されるが、その両側の経線方向PC鋼材15の上端は、上記中央部から離れるにつれ低い位置でセグメント31内に定着される。これは、セグメント31の上端における経線方向PC鋼材15の過密配置を防ぐためである。
経線方向PC鋼材16は、セグメント32内に複数本通される。各経線方向PC鋼材16の上端はセグメント32の上端で定着される。一方、各経線方向PC鋼材16の下端の定着位置は異なっており、セグメント32の幅方向の中央部にある経線方向PC鋼材16の下端はセグメント32の下端から突出し、当該下端で定着されるが、その両側の経線方向PC鋼材16の下端は、上記中央部から離れるにつれ高い位置でセグメント32内に定着される。その目的は、上記と同様、セグメント32の下端における経線方向PC鋼材16の過密配置を防ぐことである。
側壁3には、さらに周方向PC鋼材17、18も設けられる。周方向PC鋼材17は外ケーブルとして側壁3の外部に設けられ、周方向PC鋼材18は内ケーブルとして側壁3の内部に設けられる。周方向PC鋼材17、18としては、PC鋼線などの緊張材を用いることができる。
図5(a)は側壁3の上部3bに設けられる周方向PC鋼材17を示す図であり、側壁3の上部3bについて水平方向の断面を見たものである。
本実施形態では周方向PC鋼材17が側壁3の外周に沿って円弧状に配置される。周方向PC鋼材17の端部は、ピラスターPのセグメント31を一方の側面から貫通し、当該セグメント31の他方の側面にある定着部40で定着される。ピラスターPのセグメント31の上記一方の側面にも、上記周方向PC鋼材17の他の端部あるいは他の周方向PC鋼材17の端部を定着するための定着部40が設けられており、ピラスターPのセグメント31内では周方向PC鋼材17が交差して配置される。
ピラスターP以外のセグメント31には、周方向PC鋼材17を収容するための溝状の窪み30がセグメント31の幅方向に沿って設けられる。
図5(b)は当該窪み30の高さにおけるセグメント31の平面を示す図である。セグメント31本体の平面は略台形状であり、その外面は基本的に直線状となるが、溝状の窪み30によって周方向PC鋼材17を円弧状に配置するための円弧面(後述する端面301)がセグメント31本体の外面に形成される。本実施形態ではセグメント31の幅方向の両側で2つの窪み30が形成されるが、1つの窪み30がセグメント31の全幅に亘って連続するように形成されてもよい。
図5(c)は図5(a)の線A-Aによる鉛直方向の断面を示したものである。窪み30は、セグメント31の外面から内側に向かって凹状に形成され、端面301、上面302および下面303を有する。端面301は窪み30の最内側の略鉛直面であり、平面においては円弧状に形成され、前記の円弧面を構成する(図5(b)参照)。上面302と下面303はそれぞれ窪み30の上下に配置される略水平面である。
周方向PC鋼材17を緊張させてプレストレスを導入すると、周方向PC鋼材17は内側に締まるように矢印Bに示す略水平方向へと変位しようとする。セグメント31本体の外面は鉛直方向に対して傾斜し、上方に行くにつれ内側へと向かう傾斜面となっているが、前記の端面301は略鉛直面であり、上記矢印Bに示す方向と直交する。
図5(a)~(c)は側壁3の上部3bに設けられる周方向PC鋼材17の例であるが、側壁3の下部3cの地表面上の範囲においても同様に周方向PC鋼材17が外ケーブルとして設けられ、セグメント32には上記と同様の溝状の窪み30が形成される。図5(d)はこの窪み30を図5(c)と同様に示す図であり、前記と同様、端面301、上面302および下面303を有する。ただし、上面302の長さ(側壁3の径方向の長さ)は下面303より大きく、この点では上面302の長さが下面303より小さい図5(c)の窪み30とは異なっている。なお、前記の図2、3ではこれらの窪み30の図示を省略している。
図6は、地表面下において側壁3の下部3cに設けられる周方向PC鋼材18を示す図である。周方向PC鋼材18は、側壁3の内部のシース管(不図示)に通され、その端部がセグメント32の一方の側面の定着部50で定着される。さらに、当該セグメント32の他方の側面にも定着部50が設けられ、上記周方向PC鋼材18の他の端部または他の周方向PC鋼材18の端部が定着される。当該セグメント32内では周方向PC鋼材18が交差して配置される。
当該セグメント32の両隣のセグメント32では、上記定着部50側の端部に切欠部35がそれぞれ形成され、周方向PC鋼材18の緊張作業を行うための空間が確保される。切欠部35は、緊張作業の後コンクリート等の充填材36で充填され、内面が平滑化される。
なお、上記の周方向PC鋼材18は地表面下において内ケーブルとして配置されるものであるが、例外的に、地表面上にあるセグメント32の上端の拡幅部321aにおいても、経線方向PC鋼材15との兼ね合いの点から干渉回避等を目的として同様の内ケーブルが配置される(図1参照)。
台座コンクリート5は、側壁3の下部3cの周囲に設けられ、側壁3の下部3cを収容するすり鉢状の凹部を有するように形成される。
底部部材6は、側壁3の下部3cのセグメント32の下方に配置されるすり鉢状の部材である。底部部材6は、鋼殻にコンクリートを充填して形成され、側壁3の内部空間の底面を構成する。底部部材6の内面は、側壁3の底端の内面の傾斜と同じ傾斜を有し、当該内面と滑らかに連続する。
図7(a)は鋼殻60を示す図であり、図7(b)は鋼殻60にコンクリート66を充填した状態を示す鉛直方向の断面図である。鋼殻60は、底板61と仕切板62、63、64、65を有するすり鉢状の函形部材である。
底板61は水平面に対し傾斜して設けられる板材であり、複数の底板61が鋼殻60の周方向に沿ってすり鉢状に並べられる。
仕切板62は各底板61の下端に設けられる板材であり、当該下端から上方に延びるように配置される。鋼殻60では、複数の仕切板62が鋼殻60の周方向に沿って筒状に並べられる。
仕切板63、64は、それぞれ底板61の上下方向の中間部と上端に設けられる板材であり、鋼殻60の周方向に沿って底板61と直交するように配置される。鋼殻60では、複数の仕切板63、64が鋼殻60の周方向に沿って環状に並べられ、仕切板64には経線方向PC鋼材16の下端を通すための孔641が設けられる。
仕切板65は、鋼殻60の上下方向に沿って底板61と直交するように配置される板材である。鋼殻60では、複数の仕切板65が、仕切板62、63、64と交差するように放射状に設けられる。
図7(b)に示すように、コンクリート66は、鋼殻60に対し所定の被りが確保されるように充填される。コンクリート66の充填時は、仕切板64の孔641(図7(a)参照)の近傍で箱抜き部661を形成して経線方向PC鋼材16の本緊張に係る作業を行うための空間を確保し、経線方向PC鋼材16の本緊張の後、箱抜き部661をコンクリート等の充填材662で充填する。
蓋体7は側壁3の頂端の開口に設けられる。蓋体7には図示しない撹拌機が取付けられる。鋼製足場8は、蓋体7の周囲に設けられる作業用の足場である。
(2.消化槽1の施工方法)
次に、図8~図10等を参照して消化槽1の施工方法について説明する。消化槽1を施工する際は、まず図8(a)に示すように基礎杭9の打設と地盤2の掘削を行う。そして、地盤2の掘削部の底面に均しコンクリート13を打設する。
その後、図8(b)に示すように掘削部の底面の中央部に鋼殻60を配置し、鋼殻60の周囲にセグメント32を据え付けて側壁3の下部3cを組み立てる。セグメント32は、拡幅部322aの下面を支持材14で支持して配置する。当該下面の高さは、セグメント32の重心位置に対応し、消化槽1の施工時に地震等に対する安定性が向上する。消化槽1の完成後においても、当該下面が台座コンクリート5により支持されることで高い安定性が得られる。
本実施形態では、上下の小セグメント321、322を現場で地組し一体化してセグメント32とした後、その据え付けを行う。図11(a)に示すように、小セグメント322には予め経線方向のPC鋼材160が仕込まれており、その上端からPC鋼材160が突出している。
小セグメント321、322の地組時は、小セグメント321を小セグメント322の上面に接続する。この時、上記したPC鋼材160の突出部分は、小セグメント321のシース管(不図示)内に通すPC鋼材160と継手161を用いて接続される。これらのPC鋼材160が前記の経線方向PC鋼材16を構成し、その仮緊張と定着により上下の小セグメント321、322に経線方向のプレストレスを導入して連結する。小セグメント321、322の間では接着材(不図示)による接着も行われる。
セグメント32の据え付け時は、セグメント32(小セグメント322)の下端から突出する経線方向PC鋼材16(図4参照)の下端を、鋼殻60の仕切板64の孔641に通し、デッドアンカー等で仕切板64に接続する。セグメント32の据え付け後、図8(c)に示すように鋼殻60上にコンクリート66を打設して底部部材6を形成する。鋼殻60は、セグメント32の据え付け時の位置決めを行うとともに、底部部材6の補強材としても機能する。なお、この時点では前記の箱抜き部661を充填せずに残しておく。
また、図12(a)に概略図として示すように、側壁3の周方向に隣り合うセグメント32間の隙間では目地材33が内外に設けられ、その間にグラウト34(硬化材)が充填される。目地材33としては、例えば耐硫酸性を有する樹脂等が用いられる。また、セグメント32のシース管の位置では、シース管内にグラウト34が流入しないよう、図12(b)に示すように、上記隙間に露出するシース管320の開口を、気体等により膨張させた袋体70により予め塞いでおく。袋体70は、グラウト34の硬化後に収縮させて撤去する。
次に、各セグメント32の経線方向PC鋼材16の本緊張を行い、側壁3の下部3cに経線方向のプレストレスを導入する。上記の箱抜き部661は、経線方向PC鋼材16の本緊張後充填する。
また、図9(a)に示すように周方向PC鋼材17、18をそれぞれ前記したように配置し、その緊張により側壁3の下部3cに周方向のプレストレスを導入する。セグメント32の切欠部35(図6参照)は、周方向PC鋼材18の緊張作業の終了後、コンクリート等の充填材36で充填する。
その後、図9(a)に示すように均しコンクリート13上にコンクリートを打設し、台座コンクリート5を構築する。セグメント32の外面にはジベル等の連結材(不図示)が取付けられ、これにより側壁3の下部3cと台座コンクリート5が一体化(剛結)される。連結材はセグメント32の据え付け後に取付けても良いし、事前にセグメント32に取付けておいても良い。台座コンクリート5の打設は型枠を設置しての逆打ち作業となるので、密実性を高めるためコンクリートに膨張剤等を含有させておくことが望ましい。
また必要に応じて、側壁3の内部の底部部材6上にステージ(不図示)を設け、その上で高所作業車を稼働させ、側壁3の下部3cの内面で塗装や目地処理等の作業を行う。
そして、図9(b)に示すように側壁3の下部3cの周囲の掘削部を埋戻土21で埋戻し、底部部材6の上に高所作業用のセンタータワー22を設置する。上記のステージや高所作業車は事前に撤去しておく。
次に、図10(a)に示すように側壁3の下部3cのセグメント32上に側壁3の上部3bのセグメント31を据え付けて側壁3の上部3bを組み立てる。図11(b)に示すように、セグメント31には予め経線方向のPC鋼材150がアンボンド鋼材として仕込まれており、セグメント31の下面近傍では、PC鋼材150の下端に継手151が設けられる。このセグメント31をセグメント32上に配置した後、セグメント32の拡幅部321aの貫通孔(不図示)に通した経線方向のPC鋼材150を上記継手151に接続する。これらのPC鋼材150が本実施形態の経線方向PC鋼材15を構成する。また図12(a)の例と同様、隣り合うセグメント31間の隙間には目地材33とグラウト34が設けられる。
側壁3の上部3bの組み立てが完了したら、図10(b)に示すように周方向PC鋼材17を配置し、経線方向PC鋼材15と周方向PC鋼材17の緊張により側壁3の上部3bに周方向と経線方向のプレストレスを導入する。
必要に応じて、側壁3の上部3bの内面で内部塗装や目地処理等の作業を行い、センタータワー22を撤去して図1に示すように側壁3の頂端に蓋体7と鋼製足場8を取り付けるとともに、残りの必要な部材を取り付けることで消化槽1が完成する。
このように、本実施形態では、消化槽1の側壁3をプレキャストセグメント31、32により構成することで、側壁3の施工時に、現場打ちコンクリートによる従来の消化槽の施工において必要であった足場を最小限に減らすことが可能となり、セグメント31、32の据え付け前に、工場または地上にて断熱材の取付や防食塗装を行うことが可能になる。そのため側壁3の施工が容易になり工期の短縮、コストの削減に寄与する。また経験の少ない作業者でも簡単に施工でき、品質の確保も容易になる。
さらに、本実施形態では、側壁3の外部に周方向PC鋼材17(外ケーブル)を配置し、これにより側壁3に周方向のプレストレスを導入するが、周方向PC鋼材17は側壁3のセグメント31、32本体の外面に設けた窪み30に収容される。当該窪み30は、周方向PC鋼材17がその緊張時に内側に変位しようとする方向B(図5(c)、(d)参照)と直交する端面301を有するので、周方向PC鋼材17の緊張時の位置ずれを防止できる。なお、周方向PC鋼材17を外ケーブルとすることは、施工性の他、プレストレス導入時の側壁3の圧縮断面を増加させることが出来る点でも優れている。
本実施形態は、セグメント31、32本体の外面に窪み30を形成するだけの簡易な構成なので、セグメント31、32の形状が複雑となることも無い。また周方向PC鋼材17を貫通孔に通して配置するような手間も掛からず、施工も簡単である。
また、セグメント31、32は鉛直方向に対し傾斜する傾斜面を有するが、本実施形態ではこの傾斜面に上記の窪み30が設けられることで、傾斜面に周方向PC鋼材17を直接配置して緊張した場合に周方向PC鋼材17が傾斜面に沿って位置ずれするのを防止できる点で特に有効である。
また、窪み30は、上面302と下面303を有する凹状に形成されるので、上面302や下面303によっても周方向PC鋼材17の緊張時の位置ずれを防止でき、また上面302や下面303によって周方向PC鋼材17の配置時の位置決めができるので施工精度も向上する。
また本実施形態では、側壁3の外周が多角形状でありセグメント31、32の製作容易性に優れ、且つ窪み30の端面301は平面において円弧状に形成されるので、側壁3の外周が多角形状であっても、別途の治具を要すること無く周方向PC鋼材17を円弧状に配置できる。
また本実施形態の消化槽1は、側壁3の中間部3aが頂端および底端に向けて曲線状に窄まる略卵形であり、死水域ができにくく撹拌性が高い、スカム等の除去が容易であるなどの利点を有する。また本実施形態では消化槽1の側壁3の一部が地表面下に位置しているため、地表面上にある周方向PC鋼材17に外ケーブルを適用することとし、前記の窪み30は側壁3の地表面上の部分に形成している。
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば消化槽1では側壁3の全体が地表面上に位置するような場合もあり、このようなケースでは側壁3の高さ方向の全体で外ケーブルを適用することも可能である。
また窪み30の形状も前記したものに限らず、例えば図13(a)に示すように上面302の無いものであってもよく、あるいは下面303の無いものであってもよい。さらに、側壁3の外面は傾斜面に限らず、図13(b)に示すように鉛直方向に形成されていてもよい。
加えて、図13(c)の左図に示すように、端面301が周方向PC鋼材17の外周に沿った円弧状であってもよい。図13(c)の右図は、周方向PC鋼材17が緊張時に内側に移動しようとする方向Bと端面301との交点Dを拡大したものであるが、この場合も、当該方向Bとほぼ直交する面が、当該方向Bと端面301との交点D付近において形成される。本発明において「略直交する面を有する」とは、このような円弧状の端面301も含む、という意味である。
また、セグメント31、32の形状は、周方向PC鋼材17、18の最小曲げ半径、PC鋼材の必要被り、セグメントの必要強度、運搬性、施工性等を勘案して定められ、前記に限定されることはない。例えばこれらのセグメント31、32を同形状とすることで、1種類の型枠を用いてセグメント31、32を製造でき、セグメント31、32の製造に要する型枠コストを低減できる。
また、本実施形態では周方向に隣り合うセグメント間の隙間で樹脂等による目地材33とグラウト34を設け、グラウト34の硬化後に周方向のプレストレスを導入しているが、目地材33として水膨張性の止水ゴムを設け、周方向のプレストレスの導入により隣り合うセグメント間の隙間を狭めて止水ゴムを押し潰した後、グラウト34を充填するような手順とすることも可能である。
また本実施形態ではPC鋼材150、160を継手151、161によって接続することで経線方向PC鋼材15、16を構成しているが、1本のPC鋼材により経線方向PC鋼材15、16を構成してもよい。例えば1本のPC鋼材により経線方向PC鋼材15を構成する場合、セグメント31の据え付け時にはセグメント31の下端から突出する経線方向PC鋼材15の突出部分をセグメント32の拡幅部321aの貫通孔に通して配置することが可能である。また1本のPC鋼材により経線方向PC鋼材16を構成する場合、小セグメント321、322の地組時に、小セグメント322の上端から突出する経線方向PC鋼材16の突出部分を小セグメント321のシース管(不図示)内に通し、その仮緊張と定着により上下の小セグメント321、322を連結することが可能である。
また、本実施形態ではPC卵形消化槽の例を説明したが、側壁3の形状は卵形に限らず、例えば球形であってもよい。また本実施形態は消化槽1に限らず各種の貯槽に適用可能であり、平面において閉領域を形成する側壁3を有していれば貯槽以外の構造物にも適用可能である。
さらに、本実施形態では側壁3の下部3cと台座コンクリート5との間をジベル等で連結して剛結状態としたが、側壁3の下部3cを台座コンクリート5に対し非剛結状態としてもよい。非剛結状態とは、側壁3の下部3cと台座コンクリート5との間でせん断力およびモーメントを実質的に伝達しない状態をいうものとし、「実質的に」とは、摩擦やコンクリートの付着を介した微小な力の伝達を除いて、という意味である。
また、本実施形態では側壁3の下部3cのセグメント32を上下の小セグメント321、322に分割しており、大サイズの消化槽1でセグメント32が大きくなり運搬面、設置面の問題がある場合などに有効となる。しかしながら、そのような問題が無ければセグメント32を最初から一体として製作してもよい。一方で、側壁3の上部3bのセグメント31をセグメント32と同様、上下の小セグメントに分割することも可能である。
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1:消化槽
2:地盤
3:側壁
5:台座コンクリート
6:底部部材
7:蓋体
8:鋼製足場
9:基礎杭
13:均しコンクリート
15、16:経線方向PC鋼材
17、18:周方向PC鋼材
30:窪み
31、32:プレキャストセグメント
33:目地材
34:グラウト
35:切欠部
36、662:充填材
40、50:定着部
60:鋼殻
66:コンクリート
70:袋体
301:端面
302:上面
303:下面
321、322:小セグメント
321a、322a:拡幅部
641:孔
661:箱抜き部

Claims (7)

  1. プレキャストセグメントにより構築され、平面において閉領域を形成する側壁を有する構造物であって、
    前記側壁の高さ方向の中央から前記側壁の頂端の蓋体までの範囲が、一体のプレキャストセグメントを前記側壁の周方向に並べて構成され、
    前記側壁には、周方向の緊張材の緊張により周方向のプレストレスが導入され、
    前記範囲に位置する前記緊張材の定着を行うための、一部の前記プレキャストセグメントであるピラスターが、高さ方向の全長に亘って、前記ピラスター以外の前記プレキャストセグメントよりも外側に増厚しており、
    前記ピラスター以外の前記プレキャストセグメントのプレキャストセグメント本体の外面に、周方向の緊張材を収容するための窪みが設けられ、
    前記窪みは、周方向の緊張材が緊張時に内側に変位しようとする方向と略直交する面を有することを特徴とする構造物。
  2. プレキャストセグメント本体の外面は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面を有し、前記窪みは前記傾斜面に設けられることを特徴とする請求項1記載の構造物。
  3. 前記窪みは前記外面から内側に向かって凹状に形成され、上面および下面を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の構造物。
  4. 前記側壁の外周は多角形状であり、前記窪みの前記面は平面において円弧状に形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の構造物。
  5. 前記構造物は汚泥の消化槽であり、前記側壁の高さ方向の中間部は、頂端および底端に向けて曲線状に窄まることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の構造物。
  6. 前記側壁の一部は地表面下にあり、前記窪みは、前記側壁の地表面上の部分で設けられることを特徴とする請求項5に記載の構造物。
  7. 平面において閉領域を形成する側壁を有する構造物の施工方法であって、
    前記側壁をプレキャストセグメントにより構築する工程と、
    周方向の緊張材の緊張により前記側壁に周方向のプレストレスを導入する工程と、
    を有し、
    前記側壁の高さ方向の中央から前記側壁の頂端の蓋体までの範囲が、一体のプレキャストセグメントを前記側壁の周方向に並べて構成され、
    前記範囲に位置する前記緊張材の定着を行うための、一部の前記プレキャストセグメントであるピラスターが、高さ方向の全長に亘って、前記ピラスター以外の前記プレキャストセグメントよりも外側に増厚しており、
    前記ピラスター以外の前記プレキャストセグメントのプレキャストセグメント本体の外面に、周方向の緊張材を収容するための窪みが設けられ、
    前記窪みは、周方向の緊張材が緊張時に内側に変位しようとする方向と略直交する面を有することを特徴とする構造物の施工方法。
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