フレイルを治療する方法が本明細書に開示される。フレイルを治療するとは、フレイルを有することが知られているか、またはフレイルを有する疑いのある患者におけるフレイルの症状を遅延させ、改善させ、フレイルの程度を最小化させ、フレイルを反転させるために、フレイルの発症後に能動的に介入することを意味する。筋肉疲労、肺障害、代謝障害、男性生殖障害、または認知障害を軽減することとは、筋肉疲労、肺障害、代謝障害、男性生殖障害、または認知障害を有することが知られているか、または有する疑いがある患者における筋肉疲労、肺障害、代謝障害、男性生殖障害、または認知障害の症状を遅延、改善し、それらの程度を最小化し、またはそれらを反転させるために、筋肉疲労、肺障害、代謝障害、男性生殖障害、または認知障害の発症後に能動的に介入することを意味する。
フレイルは、加齢に伴う以下の障害または状態:(a)筋肉疲労;(b)肺障害;(c)代謝障害;(d)男性生殖障害;および(e)認知障害のうちの少なくとも2つ以上によって特徴付けられる。
「筋肉疲労」は、時々、サルコペニアと称され、筋肉量および機能の進行性喪失である。それは加齢のほぼ普遍的な特徴であり、多くの場合、骨量減少後に発生する。その細胞および分子レベルの基盤は知られていない。
「肺障害」は、気管支収縮が役割を果たす疾患および状態、例えば、ぜんそく、気管支炎、または慢性閉塞性肺疾患を含む。
「代謝障害」は、メタボリックシンドローム、耐糖能異常、1型糖尿病、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、および肥満を含む。
「男性生殖障害」は、男性不妊、精子数の低下、精子運動性障害、精子生存率低下、低いテストステロンレベル、性欲減衰、勃起障害、精巣の発育不足、および精巣の過剰なアポトーシスを含む。
「認知障害」は、学習する、記憶する、課題を解決する、情報を処理する、正確に推論する、または情報を思い出す能力の全てまたは部分的のいずれかの一時的または永久的喪失によって特徴付けられる状態を含み、この喪失は通常の加齢プロセスの結果として生じる。いくつかの実施形態において、認知障害は、脳における特定の神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、または筋萎縮性側索硬化症)または血管状態(例えば、脳卒中、虚血)のような加齢に関連する要因の結果である。認知障害が記憶喪失である場合、喪失は短期間または長期間の記憶において生じ得る。認知障害はまた、様々な形態の認知症も含む。
本明細書に開示されるフレイルを治療する方法のいくつかの実施形態において、その方法は、(a)筋肉疲労または(b)肺障害のうちの少なくとも1つを軽減しながら、同時に(c)代謝障害、(d)男性生殖障害、または(e)認知障害のうちの少なくとも1つを軽減することを含む。
本明細書に開示されるフレイルを治療する方法のいくつかの実施形態において、その方法は、少なくとも(a)筋肉疲労および(c)~(e)代謝障害、男性生殖障害、または認知障害のうちの少なくとも1つを軽減することを含む。本明細書に開示されるフレイルを軽減する方法のいくつかの実施形態において、その方法は、少なくとも(b)肺障害および(c)~(e)代謝障害、男性生殖障害、または認知障害のうちの少なくとも1つを軽減することを含む。
いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも(a)筋肉疲労および(c)代謝障害を軽減することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも(a)筋肉疲労および(d)男性生殖障害を軽減することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも(a)筋肉疲労および(e)認知障害を軽減することを含む。
いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも(b)肺障害および(c)代謝障害を軽減することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも(b)肺障害および(d)男性生殖障害を軽減することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも(b)肺障害および(e)認知障害を軽減することを含む。
いくつかの実施形態において、方法は、(a)筋肉疲労および(b)肺障害を軽減することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、(a)筋肉疲労および(b)肺障害ならびに(c)~(e)代謝障害、男性生殖障害、または認知障害のうちの少なくとも1つを軽減することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、(a)筋肉疲労および(b)肺障害ならびに(c)代謝障害を軽減することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、(a)筋肉疲労および(b)肺障害ならびに(d)男性生殖障害を軽減することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、(a)筋肉疲労および(b)肺障害ならびに(e)認知障害を軽減することを含む。
いくつかの実施形態において、方法は、(a)筋肉疲労、(b)肺障害、(c)代謝障害、(d)男性生殖障害、および(e)認知障害を軽減することを含む。
「患者」は、哺乳動物、好ましくはヒトであるが、イヌもしくはネコなどのペット、またはウマ、ウシ、ブタもしくはヒツジなどの家畜であってもよい。特定の実施形態において、患者は、少なくとも55、60、65、70、75、または80歳のヒトである。特定の実施形態において、患者は、55から80歳、60から75歳、または65から70歳のヒトである。特定の実施形態において、患者は、55から60歳、65から70歳、70から75歳、75から80歳、80から85歳、または85から90歳のヒトである。
フレイルの治療を必要とする患者は、フレイルを有することが知られているか、もしくは有する疑いがあるか、またはフレイルを発症するリスクのある患者を含む。治療を必要とするこのような患者は、例えば、低い低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンレベルを有することが知られている哺乳動物であってもよい。本発明の方法による治療を必要とする患者は、フレイルを治療するために血清低カルボキシル化/非カルボキシル化レベルを増加させる療法を必要とすることが知られている患者を含む。
本発明の方法によるフレイルの治療を必要とする患者は、フレイルを治療すること以外の目的で本明細書に記載される治療剤のみを投与される患者を含まない。したがって、例えば、本発明の方法によるフレイルの治療を必要とする患者は、骨量減少、またはメタボリックシンドローム、耐糖能異常、1型糖尿病、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、もしくは肥満などの代謝障害を軽減する目的のためにオステオカルシンのみで治療される患者を含まない。それは、耐糖能の増加、インスリン産生の増加、インスリン感受性の増加、膵臓β細胞増殖の増加、アディポネクチン血清レベルの増加、酸化リン脂質の減少、アテローム斑の退縮、炎症性タンパク質生合成の減少、血漿コレステロールの低下、血管平滑筋細胞(VSMC)増殖および数の低下、または動脈プラークの厚さの減少を引き起こす目的のためにオステオカルシンのみで治療される患者を含まない。
本発明の方法によるフレイルの治療を必要とする患者はまた、男性生殖障害または認知障害を軽減する目的のためにオステオカルシンのみで治療される患者を含まない。
本発明の方法によるフレイルの治療を必要とする患者はまた、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンではないオステオカルシン、例えば完全にカルボキシル化されたオステオカルシンで治療される患者を含まない。
本明細書におけるデータは、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が運動への適応に有利に働くことを示す。なぜならそれは、グルコースのトリカルボン酸サイクルへの取り込みおよび利用を増加させ、脂肪酸利用を促進するからである。筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達はまた、インターロイキン6である、生物活性オステオカルシンおよび筋原線維で利用される栄養素の生成に有利に働くマイオカインの運動誘発性上方制御の主要な決定因子である。さらに、循環オステオカルシンレベルは中年の前に急に減少し、老齢のマウスにおいて運動の間に増加しない。このことは、外因性オステオカルシンが、若いマウスにおいて運動能力を増加させ、15ヶ月齢のマウスに3ヶ月齢のマウスの運動能力を与える理由を説明する。したがって、運動の間に筋肉機能を増強するのに必要なオステオカルシン-インターロイキン-6軸が存在し、運動能力の加齢誘発性の減少を反転させるために利用され得る。
本明細書におけるデータは、筋原線維におけるシグナル伝達によって、オステオカルシンが運動への適応に有利に働くことを示す。なぜならそれは、トリカルボン酸(TCA)サイクルへのグルコース取り込みおよび利用ならびにFAの利用を促進するからである。筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達はまた、運動の間の循環レベルのインターロイキン-6(IL-6)である、グルコースおよびFA産生に有利に働くマイオカイン、ならびに生物活性オステオカルシンの産生に有利に働く骨芽細胞におけるシグナルの増加の大部分に関与する。対照的に、循環オステオカルシンレベルは、試験した全ての種において中年前に急に減少し、若いマウスにおけるより老齢のマウスにおける運動の間にある程度まで増加しない。オステオカルシンの機能および経時的なその循環レベルの進化と一致して、外因性オステオカルシンは、若いマウスの運動能力を増加させ、12~15ヶ月齢のマウスに3ヶ月齢の運動能力を与える。これらの結果は、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達とIL-6との間のクロストークの存在を明らかにし、これは、グルコースおよびFAを生成するIL-6の能力と一緒に、運動への適応を促進し、若いマウスの運動能力を増加させ、老齢のマウスの運動能力を正常化させるために利用され得る。
筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達は運動への適応に有利に働く
種々の生理学的状況において低カルボキシル化および生物学的に活性なオステオカルシンの循環レベルを測定することにより、長期間の有酸素ベースの運動(30cm/sにおけるトレッドミルでの40分の走行、本明細書以下、運動と称する)が、骨吸収の増加、オステオカルシン脱カルボキシル化に関与する骨再形成の装備のために、3ヶ月齢の野生型(WT)マウスにおいてオステオカルシンレベルを2倍増加させることが明らかになった(Ferronら、2010、Cell 142:292-308)。運動の間の骨吸収のこの増加についての分子的説明は、骨への筋肉シグナル伝達の一部として以下に提示される。循環オステオカルシンレベルはまた、運動の実施後、若い女性において増加した。これらの観察を鑑みて、オステオカルシンが運動への適応を調節するか否かを試験した。オスのオステオカルシン(Ocn)-/-マウスにおける身体的活動および低い循環テストステロンレベルに対するテストステロンの影響を考慮して(Ouryら、2011、Cell 144:796-809)、この問題はメスのマウスで対処した。
極度の疲労まで一定の速度にてトレッドミルで強制的に走らせた場合、3、6および9ヶ月齢のOcn-/-マウスは、WTの同腹の子より30%少ない時間および距離を走った(図25D)。このことは、骨から筋肉へのシグナル伝達の不在によって引き起こされた。なぜなら、運動能力の同じ減少がまた、骨芽細胞においておよび出生後にオステオカルシンのみを欠いているマウスにおいても観察されたからであった(図25E)。運動能力のこの減少は2ヶ月齢のOcn-/-マウスにおいて観察されず、この表現型が発生学的起源ではないことを示している。Gprc6a(Ouryら、2011、Cell 144:796-809)と呼ばれるオステオカルシン受容体、GPCRを欠いている3ヶ月齢のマウスは、Ocn-/-マウスのように運動能力の同じ減少を経験した(図25F)。
Ocn-/-およびGprc6a-/-マウスは、運動に関連した任意の表現型の解釈を困難にする代謝および/または行動異常を示す。これらの混乱させる要因を排除し、オステオカルシンが骨格筋におけるシグナル伝達によって運動への適応を促進するかどうかを決定するために、この組織におけるGprc6a発現および機能を研究した。qPCR調査により、Gprc6aが、大部分の組織およびさらに解糖筋肉(EDL)より長時間の労力を必要とする酸化筋肉(ヒラメ筋)より骨格筋において高度に発現されることが示され、同時にインサイチュハイブリダイゼーション解析により、Gprc6aが筋原線維において発現されることが実証された(図25G~I)。Gprc6a発現はWT筋肉よりOcn-/-において3倍高く、オステオカルシンは、Gprc6a-/-筋管においてcAMP産生を増加させなかったが、WTにおいては増加させた(図25J~K)。これらのデータは、Gprc6aが筋原線維においてオステオカルシンシグナルを媒介し得ることを示唆している。この仮説を試験するために、Gprc6aのfloxed対立遺伝子を有するマウスを、Mck-CreまたはHsa-Creデリータ(deleter)マウスと交配させた(Bruningら、1998、Molecular Cell 2:559-569)。Gprc6a発現は、Gprc6aMck-/-およびGprc6aHsa-/-マウスの骨格筋において50%以上減少し、耐糖能およびインスリン感受性はこれらの変異マウスにおいて正常であった。
3ヶ月齢で開始して、Gprc6aMck-/-およびGprc6aHsa-/-マウスは、Ocn-/-マウスにおいて示したものと同等の重症度の運動能力の減少を経験した(図25L-M)。このことは筋肉の固有特性の破壊に起因しなかった。なぜなら、興奮収縮連関および耐疲労性は、Gprc6aMck-/-および対照マウスから単離した筋肉において同様であったからである。運動能力の同じ減少が、筋原線維におけるオステオカルシンの1つの対立遺伝子およびGprc6aの1つの対立遺伝子を欠いている化合物変異マウス(Ocn+/-;Gprc6aMck+/-)において見られ、したがって、オステオカルシンが、筋原線維におけるGprc6aを介するシグナル伝達によって運動への適応に有利に働くことが実証された(図25N)。他方で、複数の証拠により、オステオカルシンが、心臓におけるシグナル伝達によって運動への適応に有利に働かず、Gprc6a発現が骨格筋より心臓において20倍低く、心機能がGprc6aMck-/-およびOcn-/-マウスにおいて正常であり、心筋細胞においてGprc6aのみの欠失はマウスの運動能力に直接的に影響を与えないことが示唆された(図25G)。
筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達は、運動の間、グルコース取り込みおよび利用を促進する
筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が運動への適応にどのように有利に働くかを決定するために、極度の疲労まで増加させた速度にてトレッドミルで走っているGprc6aMck-/-および対照マウスにおける間接的な熱量測定により栄養利用を測定した。このアッセイの条件において、最大酸素摂取量は、分析した全てのGprc6aMck-/-マウスにおいて約20%減少し、一方でそれらの呼吸商は対照マウスのものと同様であった(図26A~C)。筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が、運動の間の有酸素能力を促進することを示唆しているこれらの結果により、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が、ミトコンドリア数/呼吸ならびに/または栄養素の摂取および利用に影響を及ぼすかどうかを試験した。
筋肉におけるミトコンドリアの数は、既に不十分な運動能力を有している3ヶ月齢のOcn-/-マウス、およびWTの同腹の子において同じであった。ミトコンドリア発生および運動Pgc1αへの筋肉適応の転写決定因子(Da Cruzら、2012、Cell Metabol.15:778-786;Handschin and Spiegelman、2008、Nature 454:463-469;Ruasら、2012、Cell 151:1319-1331)ならびにその標的遺伝子の発現は、運動後のOcn-/-、Gprc6aMck-/-および対照マウスの筋肉において同様であった。ミトコンドリアタンパク質COXおよびSDHの活性はGprc6aMck-/-および対照筋肉において同じであり、グルコース、ピルビン酸塩、およびアミノ酸の存在下で培養したWTとGprc6a-/-筋原線維との間でミトコンドリア呼吸において差はなかった。それらのネガティブな性質を考慮して、これらの結果は慎重に解釈する必要がある。しかしながら、それらは、運動への適応に有利に働く筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達の能力が、ミトコンドリア数または呼吸に対する測定可能な効果に続いて起こらないことを示す。このことにより、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が、運動の間の栄養素摂取および利用に影響を与えるかどうかを調査した。
運動の開始時にエネルギーを生成するために筋肉により使用される主な栄養素はグルコースであり、オステオカルシンはWTにおいて3H-2-デオキシグルコース(3H-2DG)の摂取を増加させたが、Gprc6a-/-筋管においては増加させなかった(図26D~E)。他の分泌した分子の関与を排除するために、この実験は無血清条件において実施した。インビボでのこれらの結果と一致して、3H-2DGの摂取は、より強く求められる酸化筋肉において顕著に減少したが、運動後のGprc6aMck-/-マウスの解糖筋肉においては減少しなかった(図26F)。Gprc6aMck-/-マウスの筋肉におけるグルコース摂取のこの減少は、血糖値が、運動後、対照マウスよりGprc6aMck-/-およびGprc6aHsa-/-において2倍高くなった理由についての説明を与える(図26G~H)。注目すべきことに、運動後の血糖値のこのような増加は、筋肉においてインスリンシグナル伝達を欠いているマウスにおいて観察されず(Wojtaszewskiら、1999、J.Clin.Invest.104:1257-1264)、このことは、オステオカルシンおよびインスリンが筋原線維において異なる機能を与えることを示唆している。
オステオカルシンは、休息期または運動後にてグルコース輸送体Glut1およびGlut4の筋肉における発現に影響を及ぼさなかった。むしろ、それは、Gprc6aおよびGlut4の両方を発現するC2C12筋芽細胞の細胞膜へのGLUT4の転位を促進した。GLUT4の蓄積の同様の増加が、WTにおける運動後に観察されたが、Gprc6aMck-/-マウスにおいて観察されなかった(図26I)。GPCRによるシグナル伝達はPI3K活性化に有利に働くことができ、細胞膜へのGLUT4の転位に有利に働く事象である、Aktリン酸化を導く(Lopez-Ilasacaら、1997、Science 275:394-397)。この概念と一致して、Gprc6Mck-/-マウスの筋肉におけるAktリン酸化は、運動後、対照マウスの筋肉と比較して減少した。オステオカルシンは、WTマウスの培養した筋管または筋肉においてAktのリン酸化を誘導し、PI3K阻害剤は、筋芽細胞におけるGLUT4転位を誘導するオステオカルシンの能力を無効にした(図26I~J)。
筋原線維におけるグルコースは、運動の間にグルコースに分解されるグリコーゲンの形態で保存される。休息期と運動後の筋グリコーゲンレベルの差によって規定される、運動により誘発されるグリコーゲン分解は、対照マウスのものと比較してGprc6aMck-/-の筋肉において顕著に減少した(図26K)。グリコーゲンからグルコースを生成する能力のこの低下は、Gprc6aMck-/-マウスにおいて観察された減少した運動能力による可能性がある。運動の間、グルコースは、完全に酸化されるトリカルボン酸(TCA)サイクルに入るアセチル-CoAを生成するために筋原線維において分解される(酸化的リン酸化)。運動前後の筋肉において実施したメタボロミクス解析により、TCAサイクルの活性を増加させるのに必要とされるオキサロ酢酸の細胞レベルの信頼できる指標であるアルパラギン酸塩、ならびに運動の間に大部分を増加させる2つのTCAサイクル中間体であるフマル酸塩およびリンゴ酸塩の蓄積が示され(Gibalaら、1998、Am.J.Physiol.275:E235-242;Sahlinら、1990、Am.J.Physiol.259:C834-841)、運動後、対照マウスのものよりGprc6aMck-/-の筋肉において同じ程度まで上昇しなかった(図27A~C)。これらの観察と一致して、13Cで標識したTCA中間体および乳酸塩の蓄積は、運動の直前に13C-グルコースを注射したGprc6Mck-/-およびGprc6aHsa-/-マウスの筋肉において減少した(図27D~E)。TCAサイクルにおけるグルコースの利用が、筋原線維においてオステオカルシンシグナル伝達を欠いているマウスの筋肉において運動の間に減少することを示す、これらの結果は、筋原線維についての唯一の利用可能な基質がグルコースである場合、酸素消費速度(OCR)が、WT筋原線維よりGprc6a-/-において顕著に低下するという理由を説明する(図27F)。
筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達は、運動の間、FA利用に有利に働く
持久力運動の間、脂肪分解および脂肪酸(FA)摂取および骨格筋における酸化の進行性の増加が起こる(Hawleyら、2014;Kovesら、2005)。したがって、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達もまた、運動の間のFAの摂取および/または利用に影響を及ぼすかどうかを、FA代謝の信頼できる指標である、アシルカルニチンの筋肉および血漿レベルを測定することによって試験した(Overmyerら、2015)。
運動後、対照マウスの筋肉において観察された長鎖および中鎖アシルカルニチンの蓄積は、Gprc6aMck-/-マウスの筋肉において同じ程度まで起こらなかったことが発見された(図28A)。代わりに、Gprc6aMck-/-マウスの血漿内でアシルカルニチン蓄積の顕著な上昇が起こった(図28B)。さらに、運動後、対照マウスの筋肉において顕著に減少した遊離L-カルニチンのレベルは、Gprc6aMck-/-マウスにおいては減少しなかった。これらの結果は、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が、運動の間、効果的なFA利用に必要とされることを示唆している。これらの結果は、オステオカルシンが、WTの筋管において増加させたように、Gprc6a-/-筋管において14C-オレイン酸塩酸化を増加させることができないという理由、およびオレイン酸塩がこれらの筋原線維に対して唯一の利用可能な基質である場合、OCRがWT筋原線維よりGprc6a-/-において顕著に低下したという理由についての説明を与える(図28C)。
要するに、運動の前後でGprc6aMck-/-マウスにおいて実施した代謝解析は、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が、グルコースおよびFAの摂取および利用に有利に働くことを示した。したがって、オステオカルシンは、運動の間の最適な筋肉性能に必要であるATPを生成するのに必要なはずである。この仮説と一致して、ATPレベルは、運動後、対照のマウスよりGprc6aMck-/-マウスの筋肉において顕著に低下した(図28D)。
オステオカルシンによるFA摂取および利用の調節は、転写後機構を介して部分的に起こる。細胞エネルギーセンサーであるAMPKは、Thr172でのそのリン酸化後、CPT1Bの活性を増加させることによって、運動の間、FA利用に有利に働き(O’Neillら、2014、Diabetologia 57:1693-1702)、しかしながら、このリン酸化は、運動後、対照マウスのものよりGprc6aMck-/-の筋肉において著しく弱くなった。ホルモン感受性リパーゼ(HSL)である酵素は、それがSer563においてリン酸化されると、筋肉において遊離脂肪酸への筋肉細胞内トリグリセリドの加水分解に有利に働く(WattおよびSpriet、2010、Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.299:E162-168)。オステオカルシンが、WTマウスの筋肉においてser563にてHSLリン酸化を向上させている間、このリン酸化事象は、運動後、対照マウスのものよりGprc6aMck-/-の筋肉において弱くなった(図28E)。
オステオカルシンはまた、筋肉においてFA摂取および利用を有利に働かせるために転写機構も使用した。細胞への長鎖FAの摂取を容易にするCd36およびFatp1、ならびにミトコンドリア膜を横切るそれらの輸送体を促進するCpt1bの発現(Stahlら、2001、Trends Endocrinol.Metab.12:266-273)は、Gprc6a-/-筋管において減少し、オステオカルシンは、WT筋管においてFatp1およびCpt1bならびにより少ない程度でCd36の発現を増加させた(図28F~G)。このことは、Cd36、Fatp1およびCpt1b発現が、Gprc6aMck-/-またはOcn+/-の筋肉において増加せず、運動後、Gprc6aMck+/-マウスでは、対照マウスのものと同じ程度に増加し(図28H)、同じことが、Gprc6aMck-/-筋肉におけるFATP1およびCPT1B蓄積に当てはまるという理由を説明する。対照筋管よりCreb-/-におけるFatp1の発現を低くすると、運動後、対照マウスのものと比較してGprc6aMck-/-マウスの筋肉におけるCREBのリン酸化が減少し、Gprc6aMck+/-;CrebMck+/-マウスの運動能力が、Ocn-/-およびGprc6aMck-/-マウスの全てのものと同様であるという事実は、CREBが、筋原線維におけるFA摂取および利用のオステオカルシン調節の転写メディエーターであり得ることを示唆している(図28J~L)。
オステオカルシンとインターロイキン-6との間のクロストークは運動への適応を決定する
運動の間、筋肉におけるFA利用のオステオカルシン調節における転写事象の関与により、オステオカルシンによって調節される遺伝子を求めて、対照およびGprc6aMck-/-マウスの筋肉におけるトランスクリプトミック(transcriptomic)解析を行い、それは、運動の間の筋肉機能のその調節を調整する。この解析は、運動後、発現がGprc6aMck-/-筋肉において最も減少した遺伝子が、インターロイキン-6(IL-6)、運動の間に循環レベルが上昇し、エネルギー代謝に対して多重効果を与えるマイオカインをコードするものであることを明らかにした(Pedersen and Febbraio、2012、Nat.Rev.Endocrinol.8:457-465)。より低い程度ではあるが、同じことが、可溶性IL-6受容体についても当てはまった。この観察と一致して、筋原線維におけるIl6およびIl6ra発現、ならびに筋肉におけるIL-6含有量は、運動後、対照マウスの筋肉よりGprc6aMck-/-およびGprc6aHsa-/-において著しく低下し、オステオカルシンは、WTにおいてIl6の発現を増加させたが、Gprc6a-/-筋管においては増加させなかった(図29B~C)。さらに、通常、マウスにおける運動によって誘導される循環IL-6レベルの上昇は、Gprc6aMck-/-およびGprc6aHsa-/-マウスのそれぞれにおいて68%および82%減少した(図29C~D)。この後者の結果は、筋肉におけるIl6発現の主要な調節因子としてオステオカルシンを同定し、運動後に観察されたIL-6循環レベルの増加の大部分が筋肉由来のIL-6の増加に起因することを示す。
Gprc6aMck-/-マウスにおける循環IL-6レベルの上昇の大幅な減少は、これらの変異マウスに示される脂肪質量の増加を部分的に説明できる。注目すべきことに、運動に影響を与えることが知られている他のマイオカインは、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達の不在による影響を受けなかった。
これらの結果を鑑みて、およびIL-6が骨細胞においてシグナル伝達できるので(Liら、2008、Cytokine 43:165-173;Tamuraら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11924-11928)、IL-6が、骨芽細胞によるオステオカルシンの産生および/または骨吸収によるその活性化を調節するかどうかを試験した。IL-6での骨芽細胞の処理はオステオカルシンの発現を減少させることが観察され、それによって総(カルボキシル化および非カルボキシル化形態)オステオカルシンの循環レベルがIl6-/-マウスにおいて増加するという理由を説明できる。より重要なことに、IL-6は、骨芽細胞において、破骨細胞分化に有利に働くサイトカインであるRanklの発現を増加させ、Ranklについてのおとり(decoy)受容体および骨吸収の阻害剤であるオステオプロテゲリン(Opg)の発現を減少させた(KarsentyおよびWagner、2002、Developmental Cell 2:389-406;Palmqvistら、2002、J.Immunol.169:3353-3362)。この観測は、オステオカルシンの低カルボキシル化形態および活性形態の循環レベルがIl6-/-マウスにおいて減少するという事実と一致する(図29E)。筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達によるIl-6発現の調節およびIL-6による骨吸収もまた、骨吸収のバイオマーカーであるCTXの循環レベルが、Il6-/-およびGprc6aMck-/-マウスにおいて運動後に低くなるという理由を説明できる(図29G~H)。これらの実験は、運動の間の筋肉機能の増加に必要である、骨におけるオステオカルシン産生と筋肉におけるIL-6合成との間のフィードフォワード調節の存在を明らかにする。この調節ループは、肝臓の糖新生および脂肪分解に有利に働くIL-6の能力と相乗作用するはずである。なぜならIL-6のこれらの2つの他の機能は、運動の間、筋原線維に利用可能な栄養素のプールを増加させるからである。
循環オステオカルシンレベルは中年前に急に減少する
筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達の不在によって引き起こされる運動能力の減少は、運動能力に対する加齢による有害な影響と類似点を有する。オステオカルシン循環レベルの減少が、この有害な加齢の結果が原因であり得るかどうかを決定するために、全生涯を通じて複数の種における循環オステオカルシンレベルを測定した。
オステオカルシンの循環レベルは、血清PINPレベルおよびオステオカルシン発現によって測定すると、骨形成の著しい減少のために、2~9ヶ月齢のオスおよびメスのマウスにおいて70%減少したことが観測された(図30A~D)。注目すべきことに、循環オステオカルシンレベルのこの減少は、運動を実施するWTマウスの能力が減少するときに起こる。また、循環オステオカルシンレベルは、運動の間増加しないことも観測された。また、循環オステオカルシンレベルは、6および12ヶ月齢のマウスにおいて、3ヶ月齢のマウスと同様に運動の間に増加しないことも観測された。循環オステオカルシンレベルはまた、若年(2~3歳)と中年(13~15歳)との間のオスおよびメスのアカゲザルにおいても減少する(図30F)。さらに一層際立って、ヒトにおいて循環オステオカルシンレベルは、女性において30歳前、および男性において50歳時または前にそれらの最低点に到達する(図30G)。このように循環オステオカルシンレベルは、運動能力が減少し始めるときに分析した全ての種において中年前または付近でそれらの底に到達する。
オステオカルシンは若いおよび高齢のWTマウスの運動能力を増加できる
オステオカルシンによる運動の間の筋肉機能の調節、生活の間のその循環レベルの急なおよびより速い減少、ならびにそれらのレベルが、運動の間、若いマウスでは上昇するが、高齢のマウスにおいて上昇しないという事実は、外因性オステオカルシンが若いおよび高齢のWTマウスの運動能力を増加できるかどうかを調べる根拠となった。
最初に、運動直前の非カルボキシル化マウスオステオカルシン(オステオカルシン)(100ng/g体重)の単回の腹腔内注射が、3ヶ月齢のWTマウスの運動能力を改善するかどうかを試験した。この注射により、循環インスリンレベルに影響を与えずに循環オステオカルシンレベルが増加した。それはまた、極度の疲労前にトレッドミルでのそれらのマウスの走行の時間および距離を20%以上増加させた(図31A)。そのオステオカルシンはGprc6aMck-/-マウスにおいて筋肉機能を改善せず、オステオカルシンは、筋肉機能に有利に働くように筋原線維においてシグナル伝達する必要があることが実証された(図31B)。
オステオカルシンが高齢マウスおいて同じ能力を有するかどうかを決定するために、走行前の低い循環オステオカルシンレベルを有する12および15ヶ月齢のマウスに、それらの循環レベルを十分に上昇させるように500ng/g体重のオステオカルシンを注射した。オステオカルシンのこの急速な送達は、3ヶ月齢の未処置のマウスと同じ時間および距離を走行する能力を高齢マウスに与えた。このことは、解糖筋肉より最も高いレベルでGprc6aを発現する酸化筋肉において大きな程度まで発生する、Akt、AMPKおよびHSLのリン酸化、ならびにグルコース摂取の増加に起因した(図31C~F)。28日間のミニポンプによるオステオカルシンの長時間送達(90ng/時間)が、最も低い循環オステオカルシンレベルを有する9ヶ月齢のマウスにおいて筋肉機能を増加させるかどうかも試験した。この送達様式は循環オステオカルシンレベルを増加させたが、インスリンのレベルに影響を与えず、それはまた、これらのマウスが極度の疲労前にトレッドミルで走行する時間および距離の顕著な増加を生じた(図31G)。運動を実施するこの改善された能力は、脂肪酸輸送体Fatp1の筋肉における発現の増加およびAkt経路の活性化によって部分的に引き起こされた(図31H)。まとめると、これらの結果は、外因性オステオカルシンが3~15ヶ月齢のWTマウスの運動能力を改善できることを示す。
この研究により、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が、グルコースおよびFAの取り込みおよび利用に有利に働くので、筋肉機能および運動への適応を増強するのに必要であり、十分であることが明らかになる。運動の間の筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達はまた、Il6、栄養素および生物活性オステオカルシンの産生に有利に働くマイオカインの発現を増加させる。この研究は、運動への適応を決定する骨と筋肉との間のクロストーク周囲に集まる調節経路を明らかにする。
オステオカルシンによる運動の間の筋肉機能の調節
オステオカルシンが運動への適応を促進できるかどうか、およびどのように促進できるかを試験した。オステオカルシンまたはその受容体であるGprc6aが細胞特異的に不活性化した種々の変異マウス株の分析により、Gprc6aを介する筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が、運動の間の最適な筋肉機能、それにより運動能力を助長するために必要であることが示された。筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達の不在によって引き起こされる筋肉機能の減少は3ヶ月齢前には現れず、オステオカルシンの出産後および骨芽細胞特異的欠失によりに再生され、このオステオカルシンの機能は発生学的起源ではない筋肉に対する骨の影響を明らかにすることを示している。さらなる遺伝学的証拠により、このオステオカルシンの機能が心臓におけるそのシグナル伝達に続発することは除外した。したがって、オステオカルシンは運動の間の筋肉機能およびそれ故、筋原線維におけるGprc6aによりそのシグナル伝達を介する運動への適応の全身性の調節因子である。
筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達による栄養素利用の調節
この調査は、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が栄養素取り込みおよび利用のいくつかの態様を増強することを示した。最初に、細胞膜へのグルコース輸送体GLUT4の転位に有利に働くことによって、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達は、インスリン非依存性に筋原線維におけるグルコース取り込みを促進する。第2に、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達は、運動の間、骨格筋を収縮するための重要なグルコース源である、グリコーゲンの効果的な動員に必要とされる。第3に、オステオカルシンシグナル伝達は、TCAサイクルの活性およびそれにより筋収縮に必要なATPの生成を促進する。第4に、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達はFA輸送体の発現および蓄積を増加させ、Gprc6aMck-/-マウスの筋肉におけるアシルカルニチンの蓄積によって決定されるようにFA利用を増強する。運動後、Gprc6aMck-/-マウスの筋肉において観察されたTCAサイクル中間体の欠失、およびこれらの変異筋肉におけるFAの減少した利用は全て、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が、ミトコンドリアにおけるグルコースおよびFAの効率的な酸化ならびに筋肉機能を増加させることによる運動への適応に有利に働くのに必要とされるという見解を支持する。
オステオカルシンとインターロイキン-6との間のクロストークおよび運動への適応
筋原線維における発現がオステオカルシンによって調節され、運動の間に筋肉機能を増加させるオステオカルシンの能力を媒介または妨げ得る遺伝子を探すために調査を行った。この調査は、オステオカルシン標的遺伝子として最先の特徴付けられたマイオカインであるIL-6を特定した。運動の間の筋肉機能にとって重要なことに、IL-6はまた、白色脂肪組織における脂肪分解および肝臓でのグルコース新生、すなわち筋原線維の栄養素の生成に有利に働く(Faldtら、2004、Endocrinol.145:2680-2686)。筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達が、運動の間に生じる循環インターロイキン-6レベルの増加の3分の2以上に関与することを示すことによって、本明細書における結果は、長期間の探索後に、運動の間の筋肉におけるIl-6発現の調節因子としてオステオカルシンを特定する。
最終結果が活性オステオカルシンの産生を増加させることである、いくつかの機能を与える骨細胞におけるインターロイキン-6シグナルを発見した。インターロイキン-6はオステオカルシンの発現を阻害するが、それは、Ranklの発現を刺激することによって破骨細胞分化および骨吸収に有利に働く。この後者の機能は、Il6-/-マウスにおいて見られる生物活性オステオカルシンの循環レベルの減少についての説明を提供し、IL-6およびオステオカルシンが運動への適応に有利に働くように協働することを示唆している。一方で、肝臓におけるグルコース産生および脂肪分解を介するFAの生成に有利に働くことによって、IL-6は筋原線維についての栄養素の利用可能性に有利に働き、他方で、IL-6は生物活性オステオカルシンの産生を増強し、次いで筋原線維におけるこれらの栄養素の取り込みに有利に働く(PedersenおよびFebbraio、2012、2012、Nat.Rev.Endocrinol.8:457-465)。したがって、オステオカルシンとIL-6との間のクロストークは、運動への適応を可能にする多くの全体的な機構のうちの一部である。このことは、骨の代謝機能が、運動への適応に有利に働くように他の器官のものと協力して作用することを示す。
オステオカルシンは運動能力の加齢に関連する減少を反転できる
本明細書における結果は、オステオカルシンが、急速的に送達されるか、または長期的に送達されるかに関わらず、筋原線維におけるオステオカルシンシグナル伝達は、3ヶ月齢のWTマウスの運動能力を増加させ、15ヶ月齢のマウスに3ヶ月齢のマウスの運動能力を与えるのに十分であることを示す。これらの結果は、オステオカルシンシグナル伝達が、加齢に伴い生じる筋肉機能の減少を治療するために利用され得ることを示しているので、生物医学的観点から重要である。
オステオカルシン循環レベルは、運動後に増加し、加齢に伴い減少する。オステオカルシンまたはその受容体であるgprc6aを欠失しているマウスは、3ヶ月齢において、高齢のマウスにおいて見られる筋肉疲労の表現型を示すことが観察されている。この表現型は、トレッドミルで走行するマウスの能力によって判断されるように、減少した筋肉量および減少した筋肉性能を含む。同じ表現型は筋原線維においてgprc6aを欠失しているマウスのみにおいて観察される。これらのマウスは、全ての組織においてオステオカルシンを欠いているオステオカルシン-/-マウスにおいて見られる代謝の撹乱を全く有さない。
筋肉において、オステオカルシンは、グルコース取り込み、解糖、脂肪酸酸化、およびタンパク質合成に有利に働くことが示されている。
トレッドミルで走っている間の野生型マウスにおけるオステオカルシンの簡単な注射は、マウスが走る距離を20%増加させるようである。さらに、12~15ヶ月齢の野生型マウスにオステオカルシンを注射すると、若いマウスのように走る。
上記の観察は、患者への低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの投与は、筋肉疲労に対して有益な効果を与えるはずであることを示す。特に、患者への低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの投与は、加齢に伴う疲労の複合要素の一部である筋肉疲労に対して有益な効果を与えるはずである。
オステオカルシンまたはその受容体GPRC6Aの不在は、ぜんそくにおいて見られるように気管支収縮を引き起こすが、ぜんそくにおいて見られる局所炎症を引き起こさないことが見出された。オステオカルシン-/-マウスにおけるオステオカルシンの脳室内注入は、それらの気管支収縮を矯正せず、それはオステオカルシンの中心的機能の結果ではないことを示している。
気管支収縮を引き起こす神経伝達物質であるアセチルコリンのレベルは、オステオカルシン-/-およびGprc6a-/-マウスの肺において増加するが、脳においては増加しない。ぜんそく様状態がアレルゲンによって誘発されている野生型マウスにおける2週間の噴霧によるオステオカルシンの送達は、アレルゲンによって引き起こされる局所炎症に影響を与えずに、それらの気管支収縮を完全に救済した。
オステオカルシンに対する受容体であるGPRC6Aは、肺において高レベルで発現される。オステオカルシンおよびGPRC6Aノックアウトマウス(それぞれ、オステオカルシン-/-、gprc6a-/-)は、野生型マウスと比較して、増加した気道抵抗、多くの気管支収縮、および減少した気道内径を示した。対照的に、機能ノックアウトマウス(Esp-/-)のオステオカルシン増加は、増加した気道内径を示した。
メタコリンがマウスの肺に投与されると、肺気道は収縮する。オステオカルシン-/-マウスは、野生型マウスと比較して、メタコリンに対して誇張した反応(多くの収縮)を示した。野生型マウスは炎症増加剤で処置し、気管支収縮および炎症の症状を含むぜんそくを発生させた。これらのマウスにオステオカルシンを噴霧により投与すると、炎症症状は依然として観察されたが、気管支収縮は観察されなかった。これらのマウスの脳へ送達されるオステオカルシンは同様の効果を示さなかった。
(マウスを感作させるために)アルブミンの腹腔内注射を与え、その1週間後、アルブミンをマウスの肺へ噴霧により投与したマウスぜんそくモデルにおいて、アルブミンの噴霧と一緒にオステオカルシンを噴霧により与えると、別様で観察された気管支収縮が防がれた。
上記の観察は、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの患者への投与が、肺障害に対して有益な効果を与えるはずであることを示す。特に、患者への低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの投与は、加齢に伴うフレイル複合要素の一部である肺障害に対して有益な効果を与えるはずである。
骨における骨芽細胞によって分泌される低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、エネルギー代謝の種々の態様を調節する役割を担っている。例えば、それは、膵臓β細胞集団、インスリン分泌、インスリン感受性、耐糖能、および血清アディポネクチンを増加させ、体重増加および脂肪質量を減少させる。それはまた、アテローム性動脈硬化の病理学的効果を減少させる。低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン、ならびにその断片および変異体は、メタボリックシンドローム、1型および2型糖尿病、アテローム性動脈硬化、ならびに肥満を軽減するのに有用である。
オスの哺乳動物におけるオステオカルシンおよび生殖生物学は生化学的経路に関連しており、その生化学的経路によってオステオカルシンの増加した活性が、テストステロンの合成に関与する酵素の増加した活性を導く。次にこれにより、オスの生殖に対して有益な効果が導かれる。低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン、ならびにその断片および変異体は、オスの哺乳動物における生殖に関連する障害を軽減するのに有用である。このような障害としては、男性不妊、精子数の低下、精子運動性障害、精子生存率低下、低いテストステロンレベル、性欲減衰、勃起障害、精巣の発育不足および精巣の過剰なアポトーシスが挙げられる。
成体のオステオカルシン-/-マウス(オステオカルシン発現を完全に欠いているマウス)の脳への低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの直接投与は、マウスにおいて不安、鬱病、学習、および記憶の欠陥を減少させた。上記の観測を鑑みると、オステオカルシンが、不安、鬱病、学習、および記憶などの認知機能を調節するという結論が下され得る。したがって、本発明の特定の態様は、加齢に伴うフレイル複合要素の一部である認知障害を軽減するための、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン、ならびにその断片および変異体の治療的使用を対象とする。加齢は頻繁に中等度から重度の認識機能障害を伴うことは知られている。加齢はまた、骨量の損失を伴う。骨芽細胞は主要なオステオカルシン源であるので、本明細書に開示された見解は、フレイルを伴う認知障害を軽減するためのオステオカルシンの使用を支持する。特定の実施形態において、認知障害は、加齢の結果として生じる、増加した不安、増加した鬱病、減少した記憶、または減少した学習能力である。
特定の実施形態において、本発明の方法は、フレイルの治療を必要とする患者を特定する工程を含む。したがって、本発明は、
(a)フレイルの治療を必要とする患者を特定する工程と、
(b)治療有効量の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを患者に投与する工程と
を含み、フレイルが治療される、方法を提供する。
γ-カルボキシラーゼはオステオカルシンをカルボキシル化し、それによりカルボキシル化されたオステオカルシンを生成する。このことは、γ-カルボキシラーゼの活性を調節することによってオステオカルシンのカルボキシル化の程度を調節する機会を提供する。特に、このことは、オステオカルシンのカルボキシル化の程度を低下させる機会を提供し、それによりフレイルを治療するための低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを提供する。したがって、本発明の特定の態様は、哺乳動物におけるフレイルを治療するためにγ-カルボキシラーゼの活性を阻害する薬剤の治療的使用を対象とする。
OST-PTPは、脱リン酸化を介してγ-カルボキシラーゼを活性化する。上記に示したように、γ-カルボキシラーゼの活性化はオステオカルシンのカルボキシル化を導く。このことは、OST-PTP(これは後でγ-カルボキシラーゼの活性を調節する)の活性を調節することによってオステオカルシンのカルボキシル化の程度を間接的に調節する機会を提供する。したがって、本発明の特定の態様は、哺乳動物におけるフレイルを治療するためのOST-PTPの活性を阻害する薬剤の治療的使用を対象とする。
ヒトにおいて、PTP-1Bは、脱リン酸化を介してγ-カルボキシラーゼを活性化する。上記に示したように、γ-カルボキシラーゼの活性化はオステオカルシンのカルボキシル化を導く。このことは、ヒトにおけるPTP-1B(これは後でγ-カルボキシラーゼの活性を調節する)の活性を調節することによってオステオカルシンのカルボキシル化の程度を間接的に調節する機会を提供する。したがって、本発明の特定の態様は、ヒトにおけるフレイルを治療するためのPTP-1Bの活性を阻害する薬剤のヒトにおける治療的使用を対象とする。
本発明の他の態様は、患者における低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンのレベルの検出に基づいた診断方法を対象とし、そのレベルは哺乳動物におけるフレイルに関連する障害を伴う。
一態様において、患者におけるフレイルを診断する方法は、(i)患者から採取した生物試料中の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの患者レベルを決定する工程と、(ii)低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの患者レベルと、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの対照レベルとを比較する工程と、(iii)患者レベルが対照レベルより十分に低い場合、患者がフレイルを有するか、またはフレイルのリスクがあると診断する工程とを含む。次いでさらなる工程は、患者または患者の医療従事者に診断を知らせることであってもよい。
本発明の他の態様は、低カルボキシル化/非カルボキシル化対カルボキシル化オステオカルシンの減少した比の検出に基づいた診断法を対象とする。このような比は哺乳動物におけるフレイルを伴う可能性がある。一態様において、患者におけるフレイルに関連する障害を診断する方法は、(i)患者から採取した生物試料中の低カルボキシル化/非カルボキシル化対カルボキシル化オステオカルシンの患者の比を決定する工程と、(ii)低カルボキシル化/非カルボキシル化対カルボキシル化オステオカルシンの患者の比と、低カルボキシル化/非カルボキシル化対カルボキシル化オステオカルシンの対照の比とを比較する工程と、(iii)患者の比が対照の比より有意に低い場合、患者は、フレイルを有するか、またはフレイルのリスクがあると診断される工程とを含む。次いでさらなる工程は、患者または患者の医療従事者に診断を知らせることであってもよい。
本発明の方法における使用のための医薬組成物
本発明は、OST-PTPシグナル伝達経路を調節するため、またはPTP-1Bシグナル伝達経路を調節するための薬剤を含む、哺乳動物におけるフレイルを治療するのに使用するための医薬組成物であって、その経路はγ-カルボキシレートおよびオステオカルシンに関する、医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、薬剤は、OST-PTPホスホリラーゼ活性を阻害し、PTP-1Bホスホリラーゼ活性を阻害し、γ-カルボキシラーゼ活性を減少させ、および/または低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを増加させる。特定の実施形態において、薬剤はオステオカルシンを脱カルボキシル化する。薬剤は、小分子、ポリペプチド、抗体、および核酸からなる群から選択され得る。本発明の医薬組成物は、哺乳動物においてフレイルを治療するのに有効な量の薬剤を提供する。
特定の実施形態において、本発明の方法に使用するための医薬組成物は、血清低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン血清レベル増加させるように機能し得る。
本発明の特定の実施形態において、本発明の方法において投与され得る治療剤は、低カルボキシル化オステオカルシン、非カルボキシル化オステオカルシン、またはγ-カルボキシラーゼ、PTP-1BもしくはOST-PTPの発現もしくは活性を減少させる阻害剤(例えば、抗体、小分子、アンチセンス核酸またはsiRNA)を含む。医薬品はまた、オステオカルシンを脱カルボキシル化する薬剤を含んでもよい。
治療剤はフレイルを治療するのに十分な量で投与される。
特定の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを含む医薬組成物は別の治療剤と一緒に投与される。いくつかの実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンおよび他の治療剤は、同じ医薬組成物に存在する。他の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンおよび他の治療剤は別個の医薬組成物で投与される。
他の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは医薬組成物中に存在する唯一の活性医薬成分である。
治療剤の生物学的に活性な断片または変異体もまた、本発明の範囲内である。「生物学的に活性な」とは、γ-カルボキシラーゼおよびオステオカルシンに関与するOST-PTPシグナル伝達経路またはPTP-1Bシグナル伝達経路を調節できることを意味する。「生物学的に活性な」とは、また、OST-PTPの発現またはγ-カルボキシラーゼを脱リン酸化するその能力を減少させること、およびγ-カルボキシラーゼの発現またはオステオカルシンをカルボキシル化するその能力を減少させること、またはカルボキシル化されたオステオカルシンを脱カルボキシル化し、それにより増加したレベルの低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを生じることを意味する場合もある。
「生物学的に活性な」とはまた、PTP-1Bの発現もしくはγ-カルボキシラーゼを脱リン酸化するその能力を減少させること、およびγ-カルボキシラーゼの発現またはオステオカルシンをカルボキシル化するその能力を減少させること、またはカルボキシル化されたオステオカルシンを脱カルボキシル化し、それにより増加したレベルの低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを生じることを意味する。
「生物学的に活性な」とはまた、哺乳動物におけるフレイルを治療するための低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの能力を保持するオステオカルシンの断片または変異体を指す。
低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを含む医薬組成物
本発明の特定の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを含む医薬組成物は、哺乳動物におけるフレイルを治療するのに使用するために提供される。
「低カルボキシル化オステオカルシン」とは、49アミノ酸を有する成熟ヒトオステオカルシンのアミノ酸配列の位置Glu17、Glu21およびGlu24における、またはオステオカルシンの他の形態におけるGlu17、Glu21およびGlu24に対応する位置におけるGlu残基の1つ以上がカルボキシル化されていない、オステオカルシンを意味する。低カルボキシル化オステオカルシンは、「非カルボキシル化オステオカルシン」、すなわち、位置17、21および24におけるグルタミン酸残基の3つ全てが、カルボキシル化されていないオステオカルシンを含む。オステオカルシンの調製物は、調製物の成熟オステオカルシンにおける位置Glu17、Glu21、およびGlu24(一緒にまとめて)における全Glu残基(または他の形態における対応するGlu残基)の約10%超が、カルボキシル化されていない「低カルボキシル化オステオカルシン」とみなされる。低カルボキシル化オステオカルシンの特定の調製物において、調製物の成熟オステオカルシンにおける位置Glu17、Glu21、およびGlu24における全Glu残基(または他の形態における対応するGlu残基)の約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または約99%超は、カルボキシル化されていない。特定の実施形態において、調製物の成熟オステオカルシンにおける位置Glu17、Glu21およびGlu24におけるGlu残基の本質的に全て(または他の形態における対応するGlu残基)は、カルボキシル化されていない。
「低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン」は、本明細書において、まとめて低カルボキシル化および非カルボキシル化オステオカルシンを指すために使用される。「非カルボキシル化オステオカルシン」は、本明細書において、調製物の成熟オステオカルシンにおける位置Glu17、Glu21およびGlu24におけるGlu残基の全て(または他の形態における対応するGlu残基)がカルボキシル化されていない、オステオカルシンの調製物を指すために使用される。
ヒトオステオカルシンcDNA(配列番号1)は、5,800kDa(Poserら、1980、J.Biol.Chem.255:8685-8691)の予測分子量で配列番号2の少なくとも49アミノ酸(すなわち、位置52~100)によって表される成熟オステオカルシンタンパク質をコードする。配列番号2は、配列番号1によってコードされるヒトオステオカルシンのプレプロ配列(pre-pro-sequence)であり、成熟ヒトオステオカルシン(配列番号12)は配列番号2の処理された生成物である。本出願において、成熟ヒトオステオカルシンのアミノ酸位置を参照する。成熟ヒトオステオカルシンのアミノ酸位置は、以下のように配列番号2のアミノ酸位置に対応することは理解される:成熟ヒトオステオカルシンの位置1は配列番号2の位置52に対応し、成熟ヒトオステオカルシンの位置2は配列番号2の位置53に対応するなどである。特に、成熟ヒトオステオカルシンの位置17、21および24は、それぞれ配列番号2の位置68、72および75に対応する。
2つのアミノ酸配列における位置が対応する場合、それは、それらの間で最大の相同性を提供するように2つのアミノ酸配列が互いに並んでいるときの互いに並んでいる2つの位置を意味する。対応するこの同じ概念はまた、核酸にも当てはまる。
例えば、2つのアミノ酸配列AGLYSTVLMGRPSおよびGLVSTVLMGNにおいて、第1の配列の位置2~11はそれぞれ第2の配列の位置1~10に対応する。したがって、第1の配列の位置2は第2の配列の位置1に対応し、第1の配列の位置4は第2の配列の位置3に対応するなどである。たとえ2つの配列における位置が同じアミノ酸によって占められていないとしても、1つの配列における位置は別の配列における位置に対応し得ることは留意すべきである。
「オステオカルシン」は成熟タンパク質を含み、本明細書に記載される種々のドメイン、および変異体を含む、完全長オステオカルシン(配列番号2)または成熟タンパク質に由来する生物学的に活性な断片をさらに含む。
本発明の一実施形態において、本発明の方法における使用のための医薬組成物は、哺乳動物の非カルボキシル化オステオカルシンを含む。本発明の特定の実施形態において、本発明の方法における使用のための組成物は、配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトの非カルボキシル化オステオカルシン、またはその部分、および配列番号1の核酸によってコードされるヒトの非カルボキシル化オステオカルシン、またはその部分を含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法における使用のための組成物は、本明細書に記載されるヒトオステオカルシン断片の1つ以上を含んでもよい。
本発明の特定の実施形態において、本発明の方法における使用のための組成物は、配列番号12のアミノ酸配列を有するヒトの非カルボキシル化オステオカルシンを含む。
特定の実施形態において、本発明は、成熟ヒトオステオカルシンの位置17、21および24に対応する位置の1つ以上においてカルボキシル化グルタミン酸を含有しないヒトの低カルボキシル化オステオカルシンを含む医薬組成物を提供する。本発明の方法における使用のためのオステオカルシンの特定の形態は、位置17、21および24におけるグルタミン酸残基の少なくとも1つがカルボキシル化されていない、成熟ヒトオステオカルシンである。特定の実施形態において、位置17におけるグルタミン酸残基はカルボキシル化されていない。好ましくは、位置17、21および24におけるグルタミン酸残基の3つ全ては、カルボキシル化されていない。成熟ヒトオステオカルシンのアミノ酸配列は配列番号12に示される。
オステオカルシンの一次配列は、種の間で高度に保存され、それは、ヒトの身体において10個の最も豊富なタンパク質のうちの1つであり、その機能は進化の間ずっと保存されていることを示唆している。保存された特徴は、位置17、21、および24において3つのGla残基ならびにCys23とCys29との間にジスルフィド結合を含む。さらに、ほとんどの種は位置9においてヒドロキシプロリンを含有する。オステオカルシンのN末端は分子の他の部分と比較して最も高い配列変異を示す。ヒトおよびマウスオステオカルシンの高度の保存は、健康および疾患状態の両方においてヒトについての動物モデルとのマウスの関連性を明確に示し、本明細書に開示されたマウスモデルに由来する実験データに基づいてヒトにおけるフレイルを治療するためのオステオカルシンの治療的および診断的使用を確証する。
本発明はまた、オステオカルシンのポリペプチド断片の使用を含む。断片は、オステオカルシンの完全長の天然に存在するアミノ酸配列(例えば、配列番号2)に由来し得る。断片はまた、成熟オステオカルシン(例えば、配列番号12)に由来し得る。本発明はまた、本明細書に記載されるオステオカルシンの変異体の断片を包含する。断片は、生物学的に活性である任意の長さのアミノ酸配列を含んでもよい。
オステオカルシンの特定の断片は、成熟タンパク質のGlu17、Glu21およびGlu24を含有する断片を含む。他の特定の断片は、成熟タンパク質のC末端から最後の10アミノ酸を欠失している成熟タンパク質の断片である。他の特定の断片は、成熟タンパク質のN末端から最初の10アミノ酸を欠失している断片である。別の特定の断片は、C末端から最後の10アミノ酸およびN末端から最初の10アミノ酸の両方を欠失している成熟タンパク質の断片である。このような断片は配列番号2のアミノ酸62~90を含む。
本明細書に記載される本発明の医薬組成物についてのオステオカルシンの他の特定の断片は、以下のアミノ酸配列:
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~19
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置20~43
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置20~49
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~43
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~42
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~41
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~40
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~39
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~38
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~37
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~36
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~35
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~34
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~33
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~32
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~31
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~30
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置1~29
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置2~49
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置2~45
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置2~40
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置2~35
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置2~30
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置2~25
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置2~20
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置4~49
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置4~45
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置4~40
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置4~35
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置4~30
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置4~25
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置4~20
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~49
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~45
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~40
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~35
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~30
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~25
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~20
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置10~49
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置10~45
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置10~40
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置10~35
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置10~30
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置10~25
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置10~20
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置6~34
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置6~35
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置6~36
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置6~37
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置6~38
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~34
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~35
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~36
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~37
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~38
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~30
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~25
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~23
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~21
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~19
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置7~17
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~30
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~25
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~23
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~21
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~19
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置8~17
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置9~30
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置9~25
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置9~23
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置9~21
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置9~19
- 成熟ヒトオステオカルシンの位置9~17
を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなるポリペプチドを含む。
1つの特定の断片は、成熟ヒトオステオカルシンの位置1~36を含む断片である。別の特定の断片は、成熟ヒトオステオカルシンの位置20~49を含む断片である。他の断片は、成熟ヒトオステオカルシンのPro13からTyr76またはPro13からAsn26を含有するように設計されてもよい。さらに、成熟ヒトオステオカルシンの位置23および29においてシステイン残基を含有し、それらの2つのシステインの間にジスルフィド結合を形成できる断片が有用である。
断片は、別個(他のアミノ酸またはポリペプチドと融合していない)であってもよく、またはより大きなポリペプチド内にあってもよい。さらに、いくつかの断片が単一のより大きなポリペプチド内に含まれてもよい。一実施形態において、宿主における発現のために設計される断片は、オステオカルシン断片のアミノ末端と融合した異種プレポリペプチド(pre-polypeptide)およびプロポリペプチド(pro-polypeptide)領域ならびに/または断片のカルボキシ末端と融合したさらなる領域を有してもよい。
上記のオステオカルシンの変異体およびオステオカルシン断片もまた、本発明の組成物および方法における使用のために提供される。「変異体」とは、1つ以上のアミノ酸置換、付加、欠失および/または挿入などの、それらのアミノ酸配列において修飾を含有するが、依然として生物学的に活性であるオステオカルシンペプチドを指す。いくつかの場合、変異体の抗原特性および/または免疫特性は、変異体が由来する、対応するペプチドに対して実質的に変化していない。このような修飾は、例えば、Adelmanら、1983、DNA 2:183によって教示されているオリゴヌクレオチド指定部位特異的突然変異誘発などの標準的な突然変異誘発技術を使用して、または化学合成によって容易に導入されてもよい。変異体および断片は相互排他的な用語ではない。断片はまた、断片が依然として生物学的に活性であるように1つ以上のアミノ酸置換、付加、欠失および/または挿入を含有し得るペプチドを含む。
本発明の範囲内である1つの特定の種類の変異体は、成熟ヒトオステオカルシンの位置17、21および24に対応する位置の1つ以上が、グルタミン酸ではないアミノ酸によって占められている、変異体である。いくつかの実施形態において、グルタミン酸ではないアミノ酸はまた、アスパラギン酸ではない。このような変異体は低カルボキシル化オステオカルシンの型である。なぜなら、成熟ヒトオステオカルシンの位置17、21および24に対応する3つの位置のうちの少なくとも1つが、これらの位置のうちの少なくとも1つがグルタミン酸によって占められていないので、カルボキシル化されたグルタミン酸ではないからである。
特定の実施形態において、本発明は、アミノ酸配列:
YLYQWLGAPVPYPDPLX1PRRX2VCX3LNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号13)
(ここで、X1、X2およびX3の各々は独立して、アミノ酸またはアミノ酸類似体から選択され、但し、X1、X2およびX3が各々グルタミン酸である場合、X1はカルボキシル化されておらず、またはX2の50パーセント未満がカルボキシル化され、および/またはX3の50パーセント未満がカルボキシル化されている)
を含むオステオカルシン変異体を提供する。
特定の実施形態において、オステオカルシン変異体は、X1、X2およびX3以外の1~7位において配列番号13とは異なるアミノ酸配列を含む。
他の実施形態において、オステオカルシン変異体は、1つ以上のアミド骨格置換を含むアミノ酸配列を含む。
完全に機能的な変異体は、典型的に、重要ではない残基または重要ではない領域において唯一の保存された変化または変化を含有する。機能的変異体はまた、機能の変化、または重要な変化を生じない、類似のアミノ酸の置換を含有してもよい。あるいは、このような置換は、ある程度まで機能にプラスまたはマイナスの影響を与えてもよい。このような機能的なオステオカルシン変異体の活性は本明細書に記載されるもののようなアッセイを使用して決定され得る。
変異体は、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンについての有用および新規の特性を提供するように、天然に存在してもよいか、または組換え手段により作製されてもよいか、または化学合成されてもよい。例えば、変異オステオカルシンポリペプチドは、低減された免疫原性、増加した血中半減期、増加した生物学的利用能、および/または増加した有効性を有してもよい。特定の実施形態において、血中半減期は、成熟オステオカルシンの位置19、20、43および44における天然Arg残基の1つ以上を、別のアミノ酸またはアミノ酸類似体、例えば、β-ジメチル-アルギニンで置換することによって増加する。このような置換は、本明細書に記載されるオステオカルシンの天然アミノ酸配列における他の変化と組み合わされてもよい。
本発明の医薬組成物および方法における使用のために提供されるのは、上記のオステオカルシンの誘導体およびオステオカルシン断片でもある変異体である。誘導体化は、化学化合物を、誘導体と呼ばれる類似の化学構造の生成物に変換する化学において使用される技術である。一般に、化合物の特定の官能基が誘導体化反応に関与し、化合物を、異なる反応性、溶解性、沸点、融点、凝集状態、機能活性、または化学組成の誘導体に変換する。結果として得られる新たな化学特性は、誘導体化化合物の定量または分離のために使用されてもよく、または治療剤として誘導体化化合物を最適化するために使用されてもよい。誘導体化のための周知の技術が、上記のオステオカルシンおよびオステオカルシン断片に適用されてもよい。このように、上記のオステオカルシンの誘導体およびオステオカルシン断片は、それらが天然のアミノ酸と異なるようにいくつかの方法で化学的に修飾されているアミノ酸を含有する。
オステオカルシン模倣物も提供される。「模倣物」とは、天然または非天然に存在するオステオカルシンポリペプチドの実質的に同じ構造および機能的特性を有する合成化学化合物を指し、例えば、修飾された骨格、側鎖および/または塩基を有するポリペプチド様およびポリヌクレオチド様ポリマーを含む。ペプチド模倣物は、一般に、鋳型ペプチドと類似している特性を有する非ペプチド薬物として製薬業界において使用される。一般に、模倣物は、生物学的または薬理学的活性を有する実例のポリペプチドと構造的に類似している(すなわち同じ形状を有する)が、1つ以上のポリペプチド結合が置き換わっている。模倣物は、アミノ酸の合成、非天然類似体から完全に構成されてもよいか、または部分的に天然のペプチドアミノ酸および部分的に非天然のアミノ酸の類似体のキメラ分子である。模倣物はまた、アミノ酸保存的置換が模倣物の構造および/または活性を実質的に変化させない限り、任意の量の天然のアミノ酸保存的置換を組み込んでいてもよい。
当業者によるオステオカルシンに適合され得る例として、Choら、1993、Science 261:1303-1305は、種々の側鎖で置換されたキラルアミノカーボネートモノマーからなる「非天然バイオポリマー」、このようなポリマーのライブラリーの合成、およびモノクローナル抗体に対する結合親和性についてのスクリーニングを開示している。Simonら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.89:9367-9371は、様々な側鎖を有するN-置換グリシン(「ペプトイド」)からなるポリマーを開示している。Schumacherら、1996、Science 271:1854-1857は、D-アミノ酸で合成されたタンパク質に対してL-ペプチドのファージライブラリーをスクリーニングし、次いでD-アミノ酸を使用して選択されたL-ペプチドを合成することによって特定されるD-ペプチドリガンドを開示している。Brodyら、1999、Mol.Diagn.4:381-8は、数百から数千のアプタマーの生成およびスクリーニングを記載している。
本発明の範囲内の特定の種類のオステオカルシン変異体は、1つ以上の骨格アミドが、異なる化学構造によって置き換えられているか、または1つ以上のアミノ酸がアミノ酸類似体によって置き換えられているオステオカルシン模倣物である。特定の実施形態において、オステオカルシン模倣物は、非カルボキシル化ヒトオステオカルシンのレトロエナンチオマー(retroenantiomer)である。
オステオカルシンならびにその断片および変異体は、任意に化学合成または組換え法によって生成され、本明細書に記載される修飾されたオステオカルシン分子(すなわち、オステオカルシン断片または変異体)として生成されてもよい。オステオカルシンポリペプチドは、任意の従来の手段(Houghten、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5131-5135)によって生成されてもよい。同時に行われる複数のペプチド合成が、米国特許第4,631,211号に記載され、また、使用することができる。組換えにより生成される場合、オステオカルシンは、融合タンパク質、例えば、GST-オステオカルシン融合タンパク質として生成されてもよい。
本発明の方法において使用され得る低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン分子は、別の生物に由来するタンパク質を含む、ヒトオステオカルシンと実質的に相同性のタンパク質、すなわちヒトオステオカルシンのオルソログを含む。1つの特定のオルソログはマウスオステオカルシンである。マウスオステオカルシン遺伝子1 cDNAは配列番号3であり、マウスオステオカルシン遺伝子2 cDNAは配列番号4であり、マウスオステオカルシン遺伝子1および遺伝子2のアミノ酸配列は配列番号5である。
本明細書に使用される場合、2つのタンパク質は、それらのアミノ酸配列が少なくとも約70~75%相同である場合、実質的に相同である。典型的に、相同の程度は、少なくとも約80~85%、最も典型的には、少なくとも約90~95%、97%、98%または99%またはそれ以上である。2つのアミノ酸配列または核酸配列間の「相同性」は、本明細書に開示されるアルゴリズムを使用することによって決定され得る。これらのアルゴリズムはまた、2つのアミノ酸配列または核酸配列間の同一パーセントを決定するために使用され得る。
本発明の特定の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、配列番号2のヒトオステオカルシンまたは少なくとも8アミノ酸長である配列番号2の部分と少なくとも80%の相同性を共有するオステオカルシン分子である。別の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、配列番号2のヒトオステオカルシンまたは少なくとも8アミノ酸長である配列番号2の部分と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を共有するオステオカルシン分子である。相同配列は実質的に同一であるこれらの配列を含む。特定の実施形態において、相同性または同一性は成熟ヒトオステオカルシンの全長に対してである。
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の相同性パーセントまたは同一性パーセントを決定するために、配列は最適な比較目的のために並べられる(例えば、ギャップが最適な整列のために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の1つまたは両方に組み込まれてもよく、非相同配列は比較目的のために無視されてもよい)。好ましくは、比較目的のために並べられる参照配列の長さは、参照配列が比較される配列の長さの、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、または90%またはそれ以上である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占められる場合、分子はその位置において同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、2つの配列の最適な整列のために組み込まれる必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
本発明はまた、より低い程度の同一性を有するが、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンによって実施される同じ機能の1つ以上を実施するように十分な類似性を有するポリペプチドを包含する。保存されたアミノ酸置換を考慮することによって類似性が決定される。そのような置換は、ポリペプチドにおける所与のアミノ酸を同様の特性の別のアミノ酸により置換するものである。保存可能な置換は表現型の上ではサイレントである可能性がある。どのアミノ酸の変化が表現型の上ではサイレントである可能性があるかについての指針は、Bowieら、1990、Science 247:1306-1310において見出すことができる。
保存可能な置換の例は、疎水性アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIleの中で、1つを別のものに置き換えること;ヒドロキシル残基SerおよびThrを交換すること;酸性残基AspおよびGluを交換すること;アミド残基AsnおよびGlnの間の置換;塩基性残基Lys、HisおよびArgの交換;芳香族残基Phe、TrpおよびTyrの間の置き換え;極性残基GlnおよびAsnの交換;ならびに小さな残基Ala、Ser、Thr、Met、およびGlyの交換である。
2つのオステオカルシンポリペプチド間の配列の比較ならびに同一性パーセントおよび相同性の決定は、数学アルゴリズムを使用して成し遂げられ得る。例えば、Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.、ed.、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.、ed.、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part 1、Griffin、A.M.、およびGriffin,HG、eds.、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、van Heinje,G、Academic Press、1987;ならびにSequence Analysis Primer、Gribskov,M.およびDevereux,J.、eds.、M Stockton Press、New York、1991を参照のこと。このような数学アルゴリズムの非限定的な例は、Karlinら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877に記載されている。
2つのオステオカルシンアミノ酸配列間の同一性または相同性パーセントは、Needlemanら、1970、J.Mol.Biol.48:444-453アルゴリズムを使用して決定され得る。
本発明によれば、実質的に相同性のオステオカルシンはまた、高度にストリンジェントな条件下(例えば、65℃での0.5MのNaHPO4、7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMのEDTA中でのフィルタ結合DNAとのハイブリダイゼーション、および68℃での0.1×SSC/0.1%のSDS中での洗浄(Ausubelら、eds.、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.I、Green Publishing Associates,Inc.、ならびにJohn Wiley & sons,Inc.、New York、p.2.10.3)および機能的に等価の遺伝子産物のコード);または中程度のストリンジェントな条件などの低いストリンジェントな条件下(例えば、42℃での0.2×SSC/0.1%のSDS中での洗浄(Ausubelら、1989前出)、なおさらに生物学的に活性な低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンをコードする)でヒトオステオカルシン核酸配列とハイブリダイズできる核酸配列によってコードされるポリペプチドであってもよい。
本発明による実質的に相同性のオステオカルシンはまた、ストリンジェントな条件下(例えば、65℃での0.5MのNaHPO4、7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMのEDTA中でのフィルタ結合DNAとのハイブリダイゼーション、および68℃での0.1×SSC/0.1%のSDS中での洗浄(Ausubel F.M.ら、eds.、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.I、Green Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley & sons,Inc.、New York、p.2.10.3)および機能的に等価の遺伝子産物のコード)または中程度のストリンジェントな条件などの低いストリンジェントな条件下(例えば、42℃での0.2×SSC/0.1%のSDS中での洗浄(Ausubelら、1989前出)、なおさらに生物学的に活性な低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンをコードする)でヒトオステオカルシン核酸配列と少なくとも70~75%、典型的には少なくとも約80~85%、最も典型的には少なくとも約90~95%、97%、98%または99%の同一性を有する配列とハイブリダイズできる核酸配列によってコードされるポリペプチドであってもよい。
ヒトオステオカルシンの生物学的に活性な断片または変異体は、天然のヒトオステオカルシンとは異なる数のアミノ酸を含有してもよいことが理解される。したがって、成熟ヒトオステオカルシンの位置17、21および24に対応するアミノ酸残基の位置番号は、断片または変異体において異なっていてもよい。当業者は、この断片または変異体のアミノ酸配列と、成熟ヒトオステオカルシンのアミノ酸配列との比較からこのような対応する位置を容易に認識するであろう。
完全長オステオカルシン、成熟オステオカルシン、またはオステオカルシン断片もしくは変異体が、関連しないタンパク質またはポリペプチドと融合する、融合タンパク質に対応するペプチドもまた、本発明の範囲内であり、本明細書に開示されるオステオカルシンヌクレオチドおよびアミノ酸配列に基づいて設計され得る。このような融合タンパク質は、マーカー機能を与える酵素、蛍光タンパク質、または発光タンパク質との融合を含む。本発明の特定の実施形態において、融合タンパク質は、身体における特定の標的細胞または位置に対してオステオカルシンをターゲティングできるポリペプチドとの融合を含む。例えば、オステオカルシンポリペプチド配列は、前記リガンドに対する受容体を発現する細胞に対して融合タンパク質をターゲティングできるリガンド分子と融合されてもよい。特定の実施形態において、オステオカルシンポリペプチド配列は、哺乳動物の脳内の特定のニューロンに対して融合タンパク質をターゲティングできるリガンドと融合されてもよい。
オステオカルシンはまた、薬物スクリーニングのため、または組換えタンパク質を作製するのに使用するためのキメラタンパク質の一部として作製されてもよい。それらのキメラタンパク質は、オステオカルシンと実質的に相同性ではないアミノ酸配列を有する異種ペプチドに結合したオステオカルシンペプチド配列を含む。異種ペプチドは、オステオカルシンのN末端またはC末端に融合されてもよいか、または内部に位置されてもよい。一実施形態において、融合タンパク質はオステオカルシン機能に影響を与えない。例えば、融合タンパク質は、オステオカルシン配列がGST配列のN末端またはC末端に融合されるGST融合タンパク質であってもよい。他の種類の融合タンパク質としては、限定されないが、酵素融合タンパク質、例えばβ-ガラクトシダーゼ融合物、酵母ツーハイブリッドGAL-4融合物、ポリ-His融合物およびIg融合物が挙げられる。このような融合タンパク質、特にポリ-His融合物は組換えオステオカルシンの精製を容易にすることができる。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)において、タンパク質の発現および/または分泌は、異種シグナル配列を使用することによって増加され得る。したがって、融合タンパク質は、そのN末端において異種シグナル配列を含有してもよい。
当業者は、オステオカルシンと共に使用するための周知の技術を適応する方法を理解する。例えば、欧州特許第0464533号は、免疫グロブリン定常領域(Fc領域)の様々な部分を含む融合タンパク質を開示している。Fc領域は療法および診断に有用であるので、結果として例えば、改善された薬物動態特性(例えば、欧州特許第0232262号を参照のこと)を生じる。創薬において、例えば、ヒトタンパク質は、アンタゴニストを特定するためのハイスループットスクリーニングアッセイの目的のためにFc領域と融合されている(Bennettら、1995、J.Mol.Recog.8:52-58およびJohansonら、1995、J.Biol.Chem.270:9459-9471)。したがって、本発明の種々の実施形態はまた、オステオカルシンポリペプチドおよび種々のサブクラスの免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE、IgB)の重鎖または軽鎖の定常領域の種々の部分を含有する可溶性融合タンパク質を利用する。特定の免疫グロブリンは、融合がヒンジ領域において起こる、ヒトIgG、特にIgG1の重鎖の定常部分である。いくつかの使用のために、融合タンパク質をその意図する目的のために使用した後にFc領域を除去することが望まれる。特定の実施形態において、Fc部分は、さらに組み込まれ、例えば、第Xa因子で切断されてもよい、切断配列によって簡単な方法で除去されてもよい。
キメラまたは融合タンパク質は標準的な組換えDNA技術によって産生され得る。例えば、異なるタンパク質配列をコードするDNA断片は、従来技術に従ってインフレームで一緒にライゲーションされ得る。別の実施形態において、融合遺伝子は自動DNA合成器を含む従来技術によって合成されてもよい。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、キメラ遺伝子配列を生成するように、後でアニールされ、再増幅され得る、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的オーバーハングを生じるアンカープライマーを使用して実施されてもよい(Ausubelら、1992、Current Protocols in Molecular Biologyを参照のこと)。さらに、融合部分(例えば、GSTタンパク質)を既にコードしている多くの発現ベクターが市販されている。オステオカルシンをコードする核酸は、融合部分がインフレームでオステオカルシンと連結するように、このような発現ベクター内にクローニングされ得る。
1つ以上の機能部位が、異なるアイソフォームに由来するか、または別の種由来の別のオステオカルシン分子に由来する、キメラオステオカルシンタンパク質が産生され得る。部位はまた、哺乳動物ゲノムにおいて発生するが、まだ発見または特徴付けられていないオステオカルシン関連タンパク質に由来してもよい。
ポリペプチドは、多くの場合、一般に20種の天然に存在するアミノ酸と称されている20アミノ酸以外のアミノ酸を含有する。さらに、末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸は、プロセシングおよび他の翻訳後修飾などの自然プロセスによって、または当該分野において周知の化学修飾技術によって修飾されてもよい。
したがって、本発明の方法に有用なオステオカルシンポリペプチドはまた、遺伝コードによってコードされたものではない置換された天然に存在しないアミノ酸残基を含有する誘導体を包含し、ここで置換基が含まれるか、成熟ポリペプチドが、ポリペプチド(例えば、ポリエチレングリコール)の半減期を増加させるための化合物などの別の化合物と融合されるか、あるいは追加のアミノ酸が、リーダーもしくは分泌配列またはオステオカルシンポリペプチドもしくはプロ-タンパク質配列を精製するための配列などのオステオカルシンポリペプチドと融合される。
低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、その安定性、半減期、摂取または有効性を増加させるために医薬品化学における公知の方法に従って修飾されてもよい。公知の修飾としては、限定されないが、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイレーション(selenoylation)、硫酸化、アルギニン化などのトランスファーRNAにより媒介されるアミノ酸のタンパク質への付加、およびユビキチン化が挙げられる。
本発明の特定の実施形態において、血中半減期を増加させるための手段として、残基Arg43においてタンパク質分解に対する感受性を低減させるために、修飾がオステオカルシンに対してなされてもよい。このような修飾は、例えば、レトロエナンチオアイソマー、D-アミノ酸、または他のアミノ酸類似体の使用を含む。
N末端アミノ基のアシル化は、ヒドロオロト酸などの親水性化合物を使用して、またはメチルイソシアネートもしくはイソプロピルイソシアネートなどの適切なイソシアネートとの反応によって成し遂げられて、N末端において尿素部分を生じ得る。オステオカルシン誘導体の作用期間を増加させる他の薬剤もまた、N末端に連結されてもよい。
還元的アミノ化は、アンモニアがアルデヒドまたはケトンで濃縮されて、後でアミンに還元されるイミンを形成するプロセスである。還元的アミノ化は、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンおよびその断片または変異体をポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートするための有用な方法である。低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンならびにその断片および変異体へのPEGの共有結合は、増加した水溶性、変化した生物学的利用能、薬物動態、免疫原性、および生物活性を有するコンジュゲートを生じ得る。例えば、Bentleyら、1998、J.Pharm.Sci.87:1446-1449を参照のこと。
グリコシル化、脂質結合、硫酸化、ヒドロキシル化およびADP-リボシル化などの、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンならびにその断片および変異体に適用され得るいくつかの特に一般的な修飾は、Proteins-Structure and Molecular Properties、第2版、T.E.Creighton、W.H.Freeman and Company、New York(1993)などの最も基本的なテキストに記載されている。Wold,F.、Posttranslational Covalent Modification of Proteins、B.C.Johnson、Ed.、Academic Press、New York1-12(1983);Seifterら、1990、Meth.Enzymol.182:626-646およびRattanら、1992、Ann.New York Acad.Sci.663:48-62などの、多くの詳細なレビューがこの研究に利用可能である。
また周知のように、ポリペプチドは、必ずしも完全に線形ではない。例えば、ポリペプチドはユビキチン化の結果として分枝していてもよく、それらは、一般に、天然プロセシング事象および天然に発生しないヒトによる操作によってもたらされた事象を含む翻訳後事象の結果として、分枝しているか、または分枝していない環状であってもよい。環状、分枝および分枝環状ポリペプチドは、非翻訳天然プロセスによって、および合成法によって合成されてもよい。このような非線形ポリペプチドを調製するための周知技術は、非線形オステオカルシンポリペプチドを生成するように当業者によって適合され得る。
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含む、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンならびにその断片および変異体におけるいずれの場所で発生してもよい。共有結合修飾による、ポリペプチドにおけるアミノ基もしくはカルボキシル基、またはその両方の遮断は、天然に存在するおよび合成ポリペプチドにおいて一般的であり、本発明に使用される低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその断片および変異体に適用され得る。例えば、ほとんどいつもタンパク質分解処理の前に大腸菌(E.coli)において作製されるポリペプチドのアミノ末端残基は、N-ホルミルメチオニンである。このように、アミノ末端残基にN-ホルミルメチオニンを有する低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンならびにその断片および変異体の使用は本発明の範囲内である。
本発明の範囲内である種々のタンパク質修飾の簡単な説明を以下の表に記載する:
本発明はまた、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどを用いて、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体のカルボン酸官能基をエステル化することによって生成され得る、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体のプロドラッグの使用を包含する。エステルではない低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体のプロドラッグの使用もまた、意図される。例えば、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体の薬学的に許容可能な炭酸塩、チオ炭酸塩、N-アシル誘導体、N-アシルオキシアルキル誘導体、第三級アミンの第四級誘導体、N-マンニッヒ塩基、シッフ塩基、アミノ酸コンジュゲート、リン酸エステル、金属塩およびスルホン酸エステルもまた、意図される。いくつかの実施形態において、プロドラッグは、生物加水分解性部分(例えば、生物加水分解性アミド、生物加水分解性カルバミン酸塩、生物加水分解性炭酸塩、生物加水分解性エステル、生物加水分解性リン酸塩、または生物加水分解性ウレイド類似体)を含有する。本明細書に開示される低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体のプロドラッグを調製するためのガイドラインは、Design of Prodrugs、Bundgaard,A.Ed.、Elsevier、1985;Design and Application of Prodrugs,A Textbook of Drug Design and Development、Krosgaard-LarsenおよびH.Bundgaard、Ed.、1991、Chapter 5、pages 113-191;ならびにBundgaard,H.、Advanced Drug Delivery Review、1992、8、pages 1-38などの文献に見出すことができる。
本発明の方法を実施するために、例えば、オステオカルシンをコードするcDNA配列を組換えにより発現することによって、オステオカルシンを組換えにより発現することが望まれ得る。ヒトオステオカルシンのcDNA配列および推定アミノ酸配列は、配列番号1および配列番号2に表される。オステオカルシンヌクレオチド配列は当業者に公知の様々な異なる方法を使用して単離できる。例えば、オステオカルシンを発現することが知られている組織からRNAを使用して構築されたcDNAライブラリーは、標識されたオステオカルシンプローブを使用してスクリーニングすることができる。あるいは、ゲノムライブラリーは、オステオカルシンをコードする核酸分子を誘導するようにスクリーニングすることができる。さらに、オステオカルシン核酸配列は、既知のオステオカルシンヌクレオチド配列に基づいて設計される2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施することによって誘導することができる。反応についての鋳型は、オステオカルシンを発現することが知られている細胞株または組織から調製されるmRNAの逆転写によって得られるcDNAであってもよい。
オステオカルシンポリペプチドおよびペプチドは化学的に合成できる(例えば、Creighton、1983、Proteins:Structures and Molecular Principles、W.H.Freeman & Co.、N.Y.を参照のこと)が、オステオカルシンおよび完全オステオカルシン自体に由来する大きなポリペプチドは、有益には、核酸を発現するための当該分野において周知の技術を使用して組換えDNA技術によって生成できる。このような方法は、オステオカルシンヌクレオチド配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用できる。これらの方法は、例えば、インビトロでの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボでの遺伝子組換えを含む。例えば、Ausubelら、1989、前出に記載される技術を参照のこと。
様々な宿主発現ベクター系が、オステオカルシンヌクレオチド配列を発現するために利用され得る。特定の実施形態において、オステオカルシンペプチドまたはポリペプチドが分泌され、培養培地から回収できる。
オステオカルシンタンパク質の正確な修飾、プロセシングおよび細胞内局在化が発生することを確実にするために適切な発現系が選択され得る。この目的で、細菌宿主細胞がオステオカルシンの発現に有用であり、それ自体の細胞はオステオカルシンをカルボキシル化することはできない。
単離されたオステオカルシンは、それを天然に発現する細胞、例えば骨芽細胞から精製できるか、またはオステオカルシンを天然に発現するが、オステオカルシンを過剰生産するように組換えにより修飾されている細胞から精製できるか、またはオステオカルシンを天然に発現しないが、オステオカルシンを発現するように組換えにより修飾されている細胞から精製できる。特定の実施形態において、組換え細胞は内因性オステオカルシン遺伝子の発現を活性化するように操作されている。例えば、国際特許公開公報WO99/15650およびWO00/49162は、遺伝子発現のランダム活性化(random activation of gene expression:RAGE)と呼ばれる内因性遺伝子を発現する方法を記載しており、それは、内因性オステオカルシンの発現を活性化または増加させるために使用され得る。RAGE方法は、下流の内因性遺伝子の発現を活性化させるための調節配列の非相同性組換えに関与する。あるいは、国際特許公開公報WO94/12650、WO95/31560、およびWO96/29411、ならびに米国特許第5,733,761号および米国特許第6,270,985号は、ターゲティング配列、調節配列、エクソン、およびスプライスドナー部位を含むDNA構築物の相同組換えに関与する内因性遺伝子の発現を増加させる方法を記載している。相同組換えにより、下流の内因性遺伝子が発現される。上述の特許に記載される内因性遺伝子を発現する方法は、本明細書において参照により明確に組み込まれる。
治療剤が低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体である本発明の方法の特定の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体は、約0.5μg/kg/日~約100mg/kg/日、約1μg/kg/日~約90mg/kg/日、約5μg/kg/日~約85mg/kg/日、約10μg/kg/日~約80mg/kg/日、約20μg/kg/日~約75mg/kg/日、約50μg/kg/日~約70mg/kg/日、約150μg/kg/日~約65mg/kg/日、約250μg/kg/日~約50mg/kg/日、約500μg/kg/日~約50mg/kg/日、約1mg/kg/日~約50mg/kg/日、約5mg/kg/日~約40mg/kg/日、約10mg/kg/日~約35mg/kg/日、約15mg/kg/日~約30mg/kg/日、約5mg/kg/日~約16mg/kg/日、または約5mg/kg/日~約15mg/kg/日の投薬範囲で患者に投与される。
治療剤が低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体である本発明の方法の特定の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体は、約0.5μg/kg/日~約100μg/kg/日、約1μg/kg/日~約80μg/kg/日、約3μg/kg/日~約50μg/kg/日、または約3μg/kg/日~約30μg/kg/日の投薬範囲で患者に投与される。
治療剤が低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体である本発明の方法の特定の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンまたはその誘導体もしくは変異体は、約0.5ng/kg/日~約100ng/kg/日、約1ng/kg/日~約80ng/kg/日、約3ng/kg/日~約50ng/kg/日、または約3ng/kg/日~約30ng/kg/日の投薬範囲で患者に投与される。
γ-カルボキシラーゼ、PTP-1B、および/またはOST-PTPの阻害剤を含む組成物
本発明の特定の実施形態において、本発明の方法に有用な医薬組成物は、γ-カルボキシラーゼ、PTP-1B、またはOST-PTPの発現または活性を低下させる阻害剤を含む。好ましくは、γ-カルボキシラーゼ、PTP-1B、またはOST-PTPの生物活性は阻害される。阻害剤は、抗体(モノクローナルもしくはポリクローナル)もしくは抗体の断片、小分子、ポリペプチドもしくはタンパク質、または核酸(例えば、アンチセンスDNAもしくはRNA、siRNA)であってもよい。
特定の実施形態において、阻害剤は、配列番号11のアミノ酸配列を有するOST-PTPの活性を低下させる。他の実施形態において、阻害剤は、以前に記載されているように、配列番号11のアミノ酸配列と実質的に相同または実質的に同一であるアミノ酸配列を有するOST-PTPの活性を低下させる。
特定の実施形態において、阻害剤は、配列番号17のアミノ酸配列を有するヒトPTP-1Bの活性を低下させる。他の実施形態において、阻害剤は、以前に記載されているように、配列番号17のアミノ酸配列と実質的に相同または実質的に同一であるアミノ酸配列を有するPTP-1Bの活性を低下させる。
特定の実施形態において、阻害剤は、配列番号7のアミノ酸配列を有するヒトγ-カルボキシラーゼの活性を低下させる。他の実施形態において、阻害剤は、配列番号7と実質的に相同または同一であるアミノ酸配列を有するγ-カルボキシラーゼの活性を低下させる。
OST-PTP、PTP-1B、およびγ-カルボキシラーゼの小分子阻害剤
特定の実施形態において、薬剤は小分子である。「小分子」とは、100より大きく、約2,500ダルトン未満、好ましくは500ダルトン未満の分子量の有機化合物を意味する。このような小分子は、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼの生物活性を阻害する。
小分子阻害剤は、ビタミンKの阻害剤として作用する薬剤を含んでもよい。哺乳動物におけるフレイルを治療するために、ワルファリンならびにクマディンおよび他の誘導体を含む、他のビタミンK阻害剤が、γ-カルボキシラーゼの阻害から利益を受ける患者に投与されてもよい。本発明の特定の実施形態において、小分子ワルファリンはγ-カルボキシラーゼの活性を阻害するために使用されてもよい。ワルファリン誘導体は、アセノクマロール、フェンプロクモンおよびフェニンジオンによって例示される。ワルファリンおよび他のクマディン誘導体はオステオカルシンのビタミンK依存性γ-カルボキシル化を遮断するので、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンのレベルを増加させる。
他の阻害剤は、γ-カルボキシラーゼのチオール特異的阻害剤を含む。γ-カルボキシラーゼのCysおよびHis残基はγ-カルボキシラーゼのカルボキシラーゼ機構に関与し、酵素が、チオール特異的阻害剤、例えばN-エチルマレイミド(NEM)および水銀剤、例えばp-ヒドロキシ水銀安息香酸(pHMB)によって阻害されることが観察される。これらの阻害剤のさらなる非限定的な例としては、5,5-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸(NTCB)、ヨードアセトアミド(IA)、N-フェニルマレイミド(PheM)、N-(1-ピレニル)マレイミド(PyrM)、ナフタレン-1,5-ジマレイミド(NDM)、N,N’-(1,2-フェニレン)ジマレイミド(oPDM)、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド(pPDM)、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド(mPDM)、1,1-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド(BM)、4-(N-マレイミド)フェニルトリメチルアンモニウム(MPTM)、N,N’-ビス(3-マレイミドプロピオニル)-2-ヒドロキシ-1,3-プロパンジアミン(BMP)、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、ジエチルピロカルボネート、p-クロロ水銀安息香酸およびチオスルフィン酸が挙げられる。これらの阻害剤はまた、例えば、BSAまたはアミノデキストランなどとのコンジュゲートまたは誘導体として提供されてもよい。
OST-PTP、PTP-1B、およびγ-カルボキシラーゼの抗体阻害剤
本発明はまた、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼポリペプチドのエピトープに結合でき、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼの活性を阻害できる、1つの抗体または複数の抗体、ならびにその生物学的に活性な断片または変異体を含む組成物を提供する。
その活性を減少させるOST-PTPに対する抗体が治療的に使用されてもよい。特定の実施形態において、OST-PTPに対する抗体はOST-PTPの細胞外ドメインに結合する。
特定の実施形態において、OST-PTPに対する抗体は、配列番号11のマウスOST-PTPまたは配列番号11と実質的に相同または同一であるアミノ酸配列を有するOST-PTPにおけるエピトープに結合する。他の実施形態において、OST-PTPに対する抗体は、配列番号11と少なくとも70%相同または同一であるアミノ酸配列を有するOST-PTPにおけるエピトープに結合する。
ヒトOST-PTPは、当該分野において公知の方法によりマウスOST-PTP(配列番号10)またはラットOST-PTP(配列番号14)のヒトオルソログを単離することによって得られ得る。例えば、ヒト骨芽細胞からcDNAライブラリーを調製し、そのライブラリー由来のcDNAクローンをマウスプローブとハイブリダイズすることによってヒトOST-PTP cDNAを同定することができる。マウスプローブはマウスOST-PTP(配列番号10)の一部に基づき得る。あるいは、マウス配列に基づいたプライマーを使用してPCRを使用して、ヒトOST-PTP遺伝子を得ることができる。
その活性を減少させるヒトPTP-1Bに対する抗体が本発明の方法において治療的に使用され得る。特定の実施形態において、ヒトPTP-1Bに対する抗体はヒトPTP-1Bの細胞外ドメインに結合する。
特定の実施形態において、ヒトPTP-1Bに対する抗体は、配列番号17のヒトPTP-1Bにおけるエピトープまたは配列番号17と実質的に相同もしくは同一であるアミノ酸配列を有するOST-PTPに結合する。他の実施形態において、ヒトPTP-1Bに対する抗体は、配列番号17と少なくとも70%相同または同一であるアミノ酸配列を有するヒトPTP-1Bにおけるエピトープに結合する。
γ-カルボキシラーゼは細胞内タンパク質であるので、それに対する抗体または抗体の断片が、好ましくは、抗体、断片または変異体を、γ-カルボキシラーゼを発現する標的細胞、例えば、骨芽細胞の内部へ送達する技術と組み合わせる場合、治療的に使用される。オステオカルシンに対する抗体または抗体断片もしくは変異体は、同様に、抗体または断片を標的細胞の内部へ送達する技術と共に使用されてもよく、また、診断および薬物スクリーニングアッセイにおいて使用されてもよい。
特定の実施形態において、本発明は、マウスOST-PTPの位置1316またはヒトOST-PTPの対応する位置においてアミノ酸を含む、OST-PTPにおけるエピトープを認識する抗体、抗体の断片または変異体を提供する。特定の実施形態において、これらの抗体、抗体の断片または変異体は、γ-カルボキシラーゼを活性化するOST-PTPの能力を遮断または阻害する。特定の実施形態において、これらの抗体または断片の使用は、γ-カルボキシラーゼを活性化するその能力の50%、60%、70%、80%、90%、95%、または実質的に全てを喪失しているOST-PTPを生じる。
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原上の抗原決定基を指す。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面グループからなり、典型的に、特異的な三次元構造特性ならびに特異的な電荷特性を有する。エピトープは、通常、少なくとも5個の連続したアミノ酸を有するが、いくつかのエピトープは、それらを含有するタンパク質のフォールディングによって一緒にもたらされる不連続なアミノ酸によって形成される。
「抗体(antibody)」および「複数の抗体(antibodies)」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖Fv抗体断片、Fab断片、およびF(ab’)2断片を含む。ポリクローナル抗体は特定の抗原に対して特異的である抗体分子の異種集団であり、一方でモノクローナル抗体は、抗原内に含まれる特定のエピトープに対する抗体の同種集団である。モノクローナル抗体は本発明において特に有用である。
目的のポリペプチド(例えば、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼ)に対して特異的結合親和性を有する抗体断片は公知の技術によって生成され得る。そのような抗体断片としては、限定されないが、抗体分子のペプシン消化によって産生され得るF(ab’)2断片、およびF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成され得るFab断片が挙げられる。あるいは、Fab発現ライブラリーが構築され得る。例えば、Huseら、1989、Science 246:1275-1281を参照のこと。一本鎖Fv抗体断片は、アミノ酸架橋(例えば、15~18アミノ酸)を介してFv領域の重鎖および軽鎖断片を連結することによって形成され、一本鎖ポリペプチドを生じる。一本鎖Fv抗体断片は、米国特許第4,946,778号に開示されているものなどの標準的な技術によって産生され得る。
一旦産生されると、抗体またはその断片は、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)または放射免疫測定(RIA)を含む、標準的な免疫学的検定法によって標的ポリペプチドの認識について試験され得る。Molecular Biology eds. Ausubelら、Green Publishing Associates and John Wiley & Sons(1992)におけるShort Protocolsを参照のこと。
本明細書において使用される免疫学的検定、免疫組織化学、RIA、IRMAは、オステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、γ-カルボキシラーゼ、ビタミンK、またはそれらの断片もしくは変異体に特異的に結合する抗体を含む、種々の抗体の生成に基づく。特に試料中のオステオカルシンの量を定量するために抗体および抗体を使用する方法もまた、米国特許第5,681,707号に記載されている。米国特許第5,681,707号は、オステオカルシンのN末端20アミノ酸、またはC末端14アミノ酸に結合する抗体を開示している。抗OST-PTP抗体は市販されている。
一実施形態において、その活性を減少させるOST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼに対する抗体は、フレイルを有する患者の治療に有用である。
OST-PTP、PTP-1B、およびγ-カルボキシラーゼの核酸阻害剤
本発明の他の実施形態は、発現ならびにそれによりオステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、および/またはγ-カルボキシラーゼの生物活性を低下させるか、または阻害するアンチセンス核酸または低分子干渉RNA(siRNA)の使用を対象とする。オステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、および/またはγ-カルボキシラーゼをコードするcDNA配列は本明細書に記載されている。これらの配列に基づいて、発現を停止または低下させるためにオステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、および/またはγ-カルボキシラーゼをコードするそれぞれの遺伝子またはmRNAと十分にハイブリダイズするアンチセンスDNAまたはRNAは、当該分野において公知の方法を使用して、容易に設計され、操作され得る。
本発明の特定の実施形態において、本発明の方法において使用するためのアンチセンスまたはsiRNA分子は、配列番号6のヒトγ-カルボキシラーゼ核酸配列に対して、ストリンジェントな条件下で結合するものを含む。本発明のさらに別の実施形態において、アンチセンスまたはsiRNA分子は、配列番号10のOST-PTP核酸配列、または配列番号10と実質的に相同である配列に対して、ストリンジェントな条件下で結合するものである。
本発明の特定の実施形態において、本発明の方法に使用するためのアンチセンスまたはsiRNA分子は、配列番号16のヒトPTP-1B核酸配列、または配列番号16と実質的に相同である配列に対して、ストリンジェントな条件下で結合するものを含む。
アンチセンスRNAおよびアンチセンスDNAは、様々な疾患を治療するために哺乳動物において治療的に使用される。例えば、Agrawal & Zhao、1998、Curr.Opin.Chemical Biol.2:519-528;Agrawal & Zhao、1997、CIBA Found.Symp.209:60-78;およびZhaoら、1998、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.8:451-458を参照のこと。それらの全内容は、本明細書に完全に記載されているかのように本明細書に参照により組み込まれる。アンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチド(アンチセンスDNA)、オリゴリボヌクレオチド(アンチセンスRNA)、および他の高分子アンチセンス化合物(例えば、天然に存在する核酸塩基、糖および共有ヌクレオシド間結合ならびに同様に機能する天然に存在しない部分から構成されるオリゴヌクレオチド化合物)は、遺伝子またはその転写産物との塩基対であってもよい。Andersonら、1996、Antimicrobiol.Agents Chemother.40:2004-2011および米国特許第6,828,151号は、アンチセンス核酸およびそれらの製剤を作製し、使用する方法を記載しており、それらの全内容は、完全に本明細書に記載されているかのように本明細書に参照により組み込まれる。前述の文献の開示は本発明の方法に使用するために当業者により適合され得る。
アンチセンス核酸を作製する方法は当該分野において周知である。哺乳動物におけるフレイルを治療するために、細胞または組織を1つ以上のアンチセンス化合物または組成物と接触させることによって、細胞または組織におけるOST-PTP、PTP1B、ならびにγ-カルボキシラーゼ遺伝子およびmRNAの発現を調節する方法が本発明によってさらに提供される。本明細書に使用される場合、「標的核酸」という用語は、オステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼおよびDNAから転写されたRNA(pre-mRNAおよびmRNAを含む)をコードするDNAを包含する。その標的核酸との核酸オリゴマー化合物の特異的ハイブリダイゼーションは標的核酸の正常な機能を干渉する。標的核酸と特異的にハイブリダイズする化合物による標的核酸のこの機能の調節は、一般に、「アンチセンス」と称される。干渉されるDNAの機能は複製および転写を含む。干渉されるRNAの機能は、例えば、タンパク質翻訳の部位へのRNAの転位、RNAからのタンパク質の翻訳、およびRNAに関与し得るか、またはRNAによって促進され得る触媒活性などの全ての生体機能を含む。このような標的核酸機能を干渉する全体的な効果は、DNAまたはRNAによってコードされるタンパク質の発現の調節である。本発明の文脈において、「調節」とは、オステオカルシン、OST-PTPおよび/またはγ-カルボキシラーゼについての遺伝子またはmRNAの発現の低下または阻害を意味する。DNAは好ましいアンチセンス核酸である。
ターゲティングプロセスは、所望の阻害効果が達成されるように生じるアンチセンス相互作用についてのオステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、および/またはγ-カルボキシラーゼをコードする標的DNAまたはRNA内の1つの部位または複数の部位の決定を含む。本発明の文脈内で、特定の遺伝子内部位は、オステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼ、好ましくはヒトオステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼについてのmRNAのオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始または終止コドンを包含する領域である。当該分野において公知であるように、翻訳開始コドンは、典型的に、5’-AUG(転写されたmRNA分子において;対応するDNA分子においては5’-ATG)であるので、翻訳開始コドンはまた、「AUGコドン」、「開始コドン」または「AUG開始コドン」と称される。少数の遺伝子は、インビボで機能することが示されているRNA配列5’-GUG、5’-UUGまたは5’-CUG、ならびに5’-AUA、5’-ACGおよび5’-CUGを有する翻訳開始コドンを有する。したがって、「翻訳開始コドン」および「開始コドン」という用語は、各場合において開始アミノ酸が典型的に真核生物におけるメチオニンであったとしても、多くのコドン配列を包含し得る。真核性遺伝子が2つ以上の代替の開始コドンを有し得ることも当該分野において公知であり、それらの任意の1つが、好ましくは、特定の細胞種類もしくは組織において、または特定のセットの条件下で翻訳開始のために利用され得る。本発明の文脈において、「開始コドン」および「翻訳開始コドン」とは、遺伝子から転写されたmRNA分子の翻訳を開始するためにインビボで使用される1つのコドンまたは複数のコドンを指す。慣例の実験により、アンチセンスまたはsiRNAの最適配列が決定される。
遺伝子の翻訳終止コドン(または「終止コドン」)は、3つの配列、すなわち、5’-UAA、5’-UAGおよび5’-UGA(対応するDNA配列は、それぞれ、5’-TAA、5’TAGおよび5’-TGAである)のうちの1つを有し得ることも当該分野において公知である。
「開始コドン領域」および「翻訳開始コドン領域」という用語は、翻訳開始コドンからいずれかの方向(すなわち、5’または3’)において約25~約50の連続するヌクレオチドを包含するこのようなmRNAまたは遺伝子の部分を指す。同様に、「終止コドン領域」および「翻訳終止コドン領域」という用語は、翻訳終止コドンからいずれかの方向(すなわち、5’または3’)において約25~約50の連続するヌクレオチドを包含するこのようなmRNAまたは遺伝子の部分を指す。
当該分野において公知である、オープンリーディングフレーム(ORF)または「コード領域」とは、翻訳開始コドンと翻訳終止コドンとの間の領域を指し、また、効果的に標的化され得る領域でもある。他の標的領域は、翻訳開始コドンから5’方向におけるmRNAの部分を指し、したがって遺伝子上のmRNAまたは対応するヌクレオチドの5’キャップ部位と翻訳開始コドンとの間のヌクレオチドを含むことが当該分野において知られている、5’非翻訳領域(5’UTR)、および翻訳終止コドンから3’方向におけるmRNAの部分を指し、したがって遺伝子上のmRNAまたは対応するヌクレオチドの翻訳終止コドンと3’末端との間にヌクレオチドを含むことが当該分野において知られている、3’非翻訳領域(3’UTR)を含む。
変異体が翻訳を開始または停止する代替のシグナルの使用により産生され得ること、ならびにpre-mRNAおよびmRNAが1つより多い開始コドンまたは終止コドンを有し得ることも当該分野において公知である。代替の開始コドンを使用するpre-mRNAまたはmRNAに由来する変異体は、そのpre-mRNAまたはmRNAの「代替の開始変異体」として知られている。代替の停止コドンを使用するこれらの転写産物は、そのpre-mRNAまたはmRNAの「代替の停止変異体」として知られている。1つの特定の種類の代替の停止変異体は、複数の転写産物が、転写機構によって「ポリA停止シグナル」の1つの代替の選択から生じ、それによって特有のポリA部位を終了する転写産物を生じる「ポリA変異体」である。
1つ以上の標的部位が同定されると、標的と実質的に相補的である、すなわち、遺伝子発現および転写またはmRNA翻訳を阻害する所望の効果を得るように、十分にハイブリダイズし、十分に特異性を有する核酸が選択される。
本発明の文脈において、「ハイブリダイゼーション」とは、相補的ヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基間の、ワトソン-クリック、フーグスティーンまたは逆フーグスティーン水素結合であってもよい、水素結合を意味する。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成により対をなす相補的核酸塩基である。本明細書に使用される「相補的」とは、2つのヌクレオチド間で正確に対をなす能力を指す。例えば、核酸の特定の位置におけるヌクレオチドが、DNAまたはRNA分子の同じ位置においてヌクレオチドと水素結合できる場合、核酸およびDNAまたはRNAはその位置において互いに相補的であるとみなされる。核酸およびDNAまたはRNAは、各分子における対応する位置の十分な数が、互いと水素結合し得るヌクレオチドによって占められる場合、互いに相補的である。したがって、「特異的にハイブリダイズ可能」および「相補的」は、安定および特異的な結合が核酸とDNAまたはRNA標的との間で生じるように、相補性または正確な対合の十分な程度を示すために使用される用語である。アンチセンス化合物の配列は、特異的にハイブリダイズ可能なその標的核酸の配列と100%相補的である必要はないことは当該分野において理解される。標的DNAまたはRNA分子に対する化合物の結合が、機能の喪失を生じるように標的DNAまたはRNAの正常な機能を妨げる場合、および特異的結合が望まれる条件下、すなわち、インビボアッセイまたは治療的処置の場合、生理学的条件下、およびインビトロアッセイの場合、アッセイが実施される条件下で非標的配列に対するアンチセンス化合物の非特異的結合を回避するように十分な程度の相補性が存在する場合、アンチセンス化合物は特異的にハイブリダイズ可能である。
アンチセンス核酸は動物およびヒトにおける疾患状態の治療における治療用部分として利用されている。リボザイムを含むアンチセンス核酸薬物は多数の臨床試験においてヒトに対して安全および効果的に投与されている。このように、核酸は、例えば、オステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、および/またはγ-カルボキシラーゼの発現を調節するために、細胞、組織および動物、特にヒトの治療のための治療レジメンにおいて有用であるように構成され得る有用な治療用部分であり得ることが確立されている。
本発明の文脈において核酸は「オリゴヌクレオチド」を含み、これは、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの模倣物のオリゴマーまたはポリマーを指す。この用語は、天然に存在する核酸塩基、糖および共有ヌクレオシド間(骨格)結合から構成されるオリゴヌクレオチドならびに同様に機能する天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。このような修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、多くの場合、例えば、ヌクレアーゼの存在下で向上した細胞摂取、核酸標的に対する向上した親和性および増加した安定性などの望ましい特定のために天然型より好ましい。
アンチセンス核酸がアンチセンス化合物の好ましい形態であるが、本発明は、限定されないが、オリゴヌクレオチド模倣物を含む、他のオリゴマーアンチセンス化合物を包含する。本発明によるアンチセンス化合物は、好ましくは、約8~約50核酸塩基(すなわち、約8~約50の連結したヌクレオシド)を含む。特に好ましいアンチセンス化合物は、約12~約30核酸塩基を含むアンチセンス核酸である。アンチセンス化合物は、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)核酸(オリゴザイム)、および標的核酸とハイブリダイズし、その発現を調節する他の短い触媒RNAまたは触媒核酸を含む。
本発明に従って使用されるアンチセンス化合物は、固相合成の周知の技術によって簡便および慣例的に作製され得る。このような合成のための機器は、例えば、Applied Biosystems(Foster City、Calif.)を含む、いくつかの供給業者によって販売されている。当該分野において公知であるこのような合成のための任意の他の手段が、さらにまたは代替として利用されてもよい。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などの核酸を調製するために同様の技術を使用することは周知である。
本発明のアンチセンス化合物は、診断、治療および予防のため、ならびに研究用試薬およびキットとして利用され得る。治療に関して、フレイルを有する疑いのある動物、好ましくはヒトが、本発明によるアンチセンス化合物を投与することによって治療される。本発明の方法に有用な化合物は、有効量のアンチセンス化合物を適切な薬学的に許容可能な希釈剤または担体に加えることによって医薬組成物に製剤化され得る。本発明のアンチセンス化合物および方法はまた、フレイルの進行を遅らせるのにも有用である。
本発明はまた、哺乳動物におけるフレイルを治療するためのsiRNAの使用を包含する。米国特許出願公開第2004/0023390号(その全内容は、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる)は、二本鎖RNA(dsRNA)が、RNA干渉(RNAi)として知られているプロセスによって多くの生物において配列特異的転写後遺伝子サイレンシングを誘導できることを教示している。しかしながら、哺乳動物細胞において、30塩基対またはそれ以上であるdsRNAは、タンパク質合成の停止およびさらにアポトーシスによる細胞死を誘発する配列非特異的反応を誘導できる。最近の研究により、RNA断片がRNAiの配列特異的メディエーターであることが示されている(Elbashirら、2001、Nature 411:494-498)。これらの低分子干渉RNA(siRNA)による遺伝子発現の干渉は、現在、C.エレガンス(C.elegans)、ショウジョウバエ、植物において、ならびにマウス胚幹細胞、卵母細胞および初期胚において遺伝子をサイレンシングするための天然に存在するストラテジーとして認識されている(Baulcombe、1996、Plant Mol Biol.32:79-88;Timmons & Fire、1998、Nature 395:854;WiannyおよびZernicka-Goetz、2000、Nat Cell Biol.2:70-75;Svobodaら、2000、Development 127:4147-4156)。
哺乳動物細胞培養において、遺伝子発現のsiRNAにより媒介される減少は、細胞を合成RNA核酸でトランスフェクトすることによって達成されている(Elbashirら、2001、Nature 411:494-498)。米国特許出願公開第2004/0023390号(その全内容は、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる)は、目的の遺伝子に対して標的化された低分子干渉RNA分子(siRNA)をコードする核酸配列に作動可能に連結されたpol IIプロモーターを含有する発現カセットを含有するウイルスベクターを使用した例示的な方法を提供する。
本明細書に使用される場合、RNAiはRNA干渉のプロセスである。典型的なmRNAはタンパク質の約5,000コピーを産生する。RNAiは、好ましくは、オステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼをコードするmRNAによって作製されたタンパク質コピーを干渉するか、またはその数を顕著に減少させるプロセスである。例えば、二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)分子は、干渉される標的mRNAのタンパク質コードヌクレオチド配列と相補的になり、一致するように操作される。本発明の特定の実施形態において、細胞内送達後、siRNA分子は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と会合し、塩基対合相互作用により標的mRNA(オステオカルシン、γ-カルボキシラーゼ、PTP-1BまたはOST-PTPをコードするmRNAなど)に結合し、それを分解する。RISCは、標的化mRNAのさらなるコピーを分解できるままである。低分子ヘアピンRNAおよびより長いRNA分子などのRNAの他の形態が本発明の方法において使用されてもよい。より長い分子は、例えば、アポトーシスを引き起こし、インターフェロン反応を誘導することによって細胞死を引き起こす。細胞死は哺乳動物におけるRNAiを達成するのに主要なハードルであった。なぜなら、30ヌクレオチドより長いdsRNAは、RNA転写産物の非特異的分解および宿主細胞の全体的な停止を生じる防御機構を活性化したからである。約20~約29ヌクレオチドを使用して、哺乳動物細胞における遺伝子特異的抑制を媒介するsiRNAはこの障害を克服するように見える。これらのsiRNAは、遺伝子抑制を引き起こすのに十分に長いが、インターフェロン反応を誘導する長さではない。本発明の特定の実施形態において、抑制するための標的は、オステオカルシンmRNA、OST-PTP mRNA、PTP-1B mRNA、またはγ-カルボキシラーゼmRNAである。本発明の方法に有用なsiRNA分子は、配列番号16のヒトPTP-1B配列、配列番号6のヒトγ-カルボキシラーゼ配列、または配列番号10のマウスOST-PTP配列に対してストリンジェントな条件下で結合するこれらの配列を含む。本発明の方法に有用なsiRNA分子はまた、配列番号16、配列番号6または配列番号10に対して、80%、85%、90%、または95%相同である核酸に対してストリンジェントな条件下で結合するこれらの配列を含む。
医薬組成物の製剤化および投与
本発明は、対象に投与するために医薬組成物に製剤化される、本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、抗体、小分子および他の治療剤の使用を包含する。治療剤(「活性化合物」とも称される)が、対象、例えばヒトへの投与に適した医薬組成物に組み込まれ得る。このような組成物は、典型的に、ポリペプチド、核酸、抗体、小分子および薬学的に許容可能な担体を含む。好ましくは、このような組成物は、ヒトへ投与される場合、非発熱性である。
本発明の医薬組成物は、γ-カルボキシラーゼおよびオステオカルシンに関与するOST-PTPシグナル伝達経路またはPTP-1Bシグナル伝達経路を調節するのに十分な量で投与される。
本明細書に使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、医薬投与に適合した、任意および全ての溶媒、結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬学的に活性な物質についてのこのような媒体および薬剤の使用は当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合する限り、このような媒体が本発明の医薬組成物に使用されてもよい。補足的な活性化合物または治療剤もまた、組成物に組み込まれてもよい。本発明の医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、鼻腔内、皮下、経口、吸入、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与が挙げられる。
「投与する」という用語は、その広範な意味において使用され、本発明の組成物を対象へ導入する任意の方法を含む。これは、対象へ外因的に導入されているポリヌクレオチドの転写または翻訳によるようにインビボでポリペプチドまたはポリヌクレオチドを産生することを含む。このように、外因性組成物から対象において産生されるポリペプチドまたは核酸は、「投与する」という用語に含まれる。
非経口、皮内、または皮下への適用のために使用される液剤または懸濁剤は以下の成分を含んでもよい:注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性を調整するための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整され得る。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与バイアル内に封入され得る。
注射用の使用に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(治療剤が水溶性である場合)または分散物および滅菌注射用溶液または分散物の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与に関して、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、クレモフォールEL(登録商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合、組成物は滅菌しなければならず、容易な注射可能性が存在する程度まで流体的でなければならない。製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒体であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合、必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによってもたらされ得る。
滅菌注射用溶液は、上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に、適切な溶媒中に必要な量で活性化合物(例えば、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンタンパク質または抗OST-PTP抗体)を組み込み、必要な場合、続いて濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散物は、活性化合物を、基礎分散媒体および上記に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル内に組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分の粉末に加えて、以前に濾過滅菌したその溶液からの任意のさらなる所望の成分を生じる真空乾燥および凍結乾燥である。
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入されてもよいか、または錠剤に圧縮されてもよい。治療される特定の状態に応じて、哺乳動物におけるフレイルを治療するための本発明の医薬組成物は、全身的または局所的に製剤化され、投与され得る。製剤化および投与のための技術は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(第20版、Gennaro(ed.)およびGennaro、Lippincott、Williams & Wilkins、2000)に見出すことができる。経口投与に関して、薬剤は、胃で存続するように腸溶性形態で含有され得るか、または公知の方法によってGI管の特定の領域で放出されるようにさらにコーティングもしくは混合されてもよい。経口治療的投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用されてもよい。経口組成物はまた、マウスウォッシュとしての使用のための液体担体を使用して調製されてもよく、液体担体中の化合物は経口により適用され、排出され(swished)、吐かれるか、または飲み込まれてもよい。薬学的に適合性の結合剤、および/または補助物質は、組成物の一部として含まれてもよい。錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分、または同様の性質の化合物のいずれかを含有してもよい:微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、PRIMOGEL(登録商標)、またはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSTEROTES(登録商標)などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;あるいはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味剤などの矯味矯臭剤。
吸入による投与に関して、化合物は、適切な推進剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含有する、加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達されてもよい。
全身投与はまた、経粘膜的または経皮的手段によってでもよい。経粘膜的または経皮的投与に関して、浸透される障壁に適した浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は一般に当該分野において公知であり、例えば、経粘膜投与に関して、洗浄剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜的投与は鼻腔用スプレーまたは座薬の使用により達成され得る。経皮投与に関して、活性化合物は、一般に当該分野において公知である軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化される。
適切な場合、化合物はまた、直腸送達のための座剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの従来の座剤基剤)または停留かん腸の形態で調製され得る。
一実施形態において、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出製剤などの、身体からの急速な排せつに対して化合物を保護する担体で調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーが使用されてもよい。このような製剤を調製する方法は当業者に明らかである。材料はまた、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals,Incから商業的に得ることができる。リポソーム懸濁液(例えば、モノクローナル抗体と共に特定の細胞に対して標的化されるリポソームを含む)もまた、薬学的に許容可能な担体として使用されてもよい。それらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように当業者に公知の方法に従って調製され得る。
投与の容易性および投薬量の均一性のために単位投薬形態で経口または非経口組成物を製剤化することが特に有益である。本明細書に使用される「単位投薬形態」とは、治療される対象のために単一の投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位投薬形態についての仕様は、活性化合物の特有の性質および達成される特定の治療効果、ならびに個体を治療するためのこのような活性化合物を配合する分野における固有の制約により決定され、それらに直接依存する。
以前に示されたように、薬剤は、ポンプによって連続して、または長時間にわたって日中の間に高頻度で投与されてもよい。特定の実施形態において、薬剤は、約0.3~100ng/時間、好ましくは約1~75ng/時間、より好ましくは約5~50ng/時間、さらにより好ましくは約10~30ng/時間の割合で投与されてもよい。薬剤は、約0.1~100μg/時間、好ましくは約1~75μg/時間、より好ましくは約5~50μg/時間、さらにより好ましくは約10~30μg/時間の割合で投与されてもよい。治療のために使用される抗体、タンパク質、またはポリペプチドの有効な投薬量は、特定の治療の過程にわたって増加または減少されてもよいこともまた、理解される。投薬量の変化は、生物試料、好ましくは血液または血清中の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンのレベルをモニタリングすることの結果であり、それらから明らかになる。
本発明の実施形態において、薬剤は、所望の用量の薬剤を所望の期間注入するために、浸透圧ポンプを使用して皮下に長期間の自動化薬物送達によって送達され得る。インスリンポンプは、広範に利用可能であり、長期間にわたってインスリンを自動的に送達するために糖尿病患者によって使用される。このようなインスリンポンプは、本発明の方法における使用のための薬剤を送達するように適合され得る。薬剤の送達速度は、個体の要求(例えば、基本速度およびボーラス用量)の変化に適合するように広範囲で容易に調節され得る。新たなポンプは周期的な投薬様式を許容する。すなわち、液体は、連続したフロー様式ではなく、別の用量の少しの固定体積で周期的に送達される。装置についての全体の液体送達速度は、投与期間を制御し、調節することによって制御され、調節される。ポンプは、「Analyte Monitoring Device and Methods of Use」という発明の名称の米国特許第6,560,471号に記載されているシステムのように、連続モニタリング装置および遠隔装置に接続されてもよい。このような構成において、連続血液モニタリング装置を制御するハンドヘルド遠隔装置は、血液モニタリング装置および本発明の方法における使用のために治療剤を送達する流体送達装置の両方と無線で通信でき、それらを制御できる。
本発明のいくつかの実施形態において、慣例の実験が使用されて、血清低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンレベルに対する治療剤の効果をモニタリングすることによって各患者についての適切な投薬量の値を決定することができる。薬剤は1日に1回または複数回投与されてもよい。血清低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンレベルは、治療前および間にモニターされて、血清低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンレベルを向上させるため、または血清低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンレベルを正常にし、長期間にわたって正常なレベルを維持するために投与するための適切な量の治療剤を決定することができる。特定の実施形態において、患者は、その血清低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンレベルが、治療剤による治療を施す前に正常なレベルより著しく低い(約25%未満)かどうかを決定するために試験される。投与頻度は、1日当たり単回用量から1日当たり複数回用量まで変化させてもよい。特定の投与経路としては、経口、静脈内および腹腔内が挙げられるが、同様に投与の他の形態が選択されてもよい。
タンパク質もしくはポリペプチド、小分子、抗体、または核酸の「治療有効量」は、所望の治療効果を達成する量である。例えば、治療剤が哺乳動物におけるフレイルを治療するために投与される場合、治療有効量は、筋肉疲労または肺障害に関連する1つ以上の症状を軽減し、同時に、代謝障害、男性生殖障害、または認知障害に関連する1つ以上の症状を軽減する量である。
本発明に使用するためのタンパク質またはポリペプチド、小分子または核酸の治療有効量は典型的に変化し、典型的に対象において約1ナノグラム/ミリリットル~約10マイクログラム/ミリリットルの血清治療剤レベルを達成するのに十分な量、または対象において約1ナノグラム/ミリリットルから約7マイクログラム/ミリリットルの血清治療剤レベルを達成するのに十分な量であり得る。他の特定の血清治療剤レベルは、約0.1ナノグラム/ミリリットル~約3マイクログラム/ミリリットル、約0.5ナノグラム/ミリリットル~約1マイクログラム/ミリリットル、約1ナノグラム/ミリリットル~約750ナノグラム/ミリリットル、約5ナノグラム/ミリリットル~約500ナノグラム/ミリリットル、および約5ナノグラム/ミリリットル~約100ナノグラム/ミリリットルを含む。
本発明の方法において患者に投与される本明細書に開示される治療剤の量は、慣例の方法により当業者によって決定することができ、約1mg/kg/日~約1,000mg/kg/日、約5mg/kg/日~約750mg/kg/日、約10mg/kg/日~約500mg/kg/日、約25mg/kg/日~約250mg/kg/日、約50mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲または他の適切な量であり得る。
本発明の方法において患者に投与される本明細書に開示される治療剤の量はまた、約1μg/kg/日~約1,000μg/kg/日、約5μg/kg/日~約750μg/kg/日、約10μg/kg/日~約500μg/kg/日、約25μg/kg/日~約250μg/kg/日、または約50μg/kg/日~約100μg/kg/日の範囲であり得る。
本発明の方法において患者に投与される本明細書に開示される治療剤の量はまた、約1ng/kg/日~約1,000ng/kg/日、約5ng/kg/日~約750ng/kg/日、約10ng/kg/日~約500ng/kg/日、約25ng/kg/日~約250ng/kg/日、または約50ng/kg/日~約100ng/kg/日の範囲であり得る。
当業者は、限定されないが、状態の重症度、以前の治療、対象の全体的な健康および/または年齢、ならびに存在する他の障害または疾患を含む特定の要因が、対象を効果的に治療するために必要とされる投薬量に影響を与え得ることを理解するであろう。
治療有効量のタンパク質、ポリペプチド、ヌクレオチドまたは抗体による対象の治療は、単一の治療を含んでもよく、または好ましくは一連の治療を含んでもよい。
特定の実施形態において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンによる対象の治療は、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを、患者の血中の全オステオカルシンの約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%にする。
小分子剤の適切な用量は、当業者である医師、獣医、または研究者の知識の範囲内の多くの要因に依存することは理解される。小分子の用量は、例えば、治療される対象または試料の属性、大きさおよび状態に応じて変化し、さらに、組成物が投与される経路、および医師が小分子に望む効果に応じて変化する。さらに、小分子の適切な用量は、調節される発現または活性に対する小分子の効力に依存することは理解される。これらの小分子の1つ以上が、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼの発現または活性を調節するために哺乳動物(例えば、ヒト)に投与される場合、比較的少ない用量が最初に処方され、適切な反応が得られるまで、その後用量を増加させてもよい。加えて、任意の特定の対象についての特定の用量レベルは、利用される特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、全体的な健康、および食事、投与時間、投与経路、排せつ速度、他の薬物が患者に投与されているか否か、ならびに調節される発現または活性の程度を含む様々な要因に依存することは理解される。
治療に関して、適切な対象は、フレイルを有する疑いがあるか、フレイルを有すると診断されているか、またはフレイルを発症するリスクがある哺乳動物であってもよい。
本発明の方法に有用な医薬組成物の適切な投与経路は、経口、腸内、非経口、経粘膜的、経皮的、筋肉内、皮下、経皮、直腸、髄内、髄腔内、静脈内、脳室内、心房内、大動脈内、動脈内、または腹腔内投与を含んでもよい。本発明の方法に有用な医薬組成物は、限定されないが、カテーテル、バルーン、埋め込み可能な装置、生分解性インプラント、プロテーゼ、移植片、縫合糸、パッチ、シャント、またはステントなどの医療機器によって対象に投与され得る。1つの特定の実施形態において、治療剤(例えば、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン)は、標的領域への局所投与のためにステント上にコーティングされてもよい。この状況において、例えば、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの持続放出製剤が利用されてもよい。
本発明の化合物はまた、摂取、分布および/または吸収を補助するために、他の分子、分子構造または化合物の混合物、例えば、リポソーム、受容体標的化分子、経口、直腸、局所または他の製剤と混合、カプセル化、複合体化、またはそうでなければ会合されてもよい。製剤を補助するこのような摂取、分布および/または吸収の処理を教示し、本発明を実施するのに有用な技術について当業者により参考にされ得る代表的な米国特許出願としては、限定されないが、米国特許第5,108,921号;同第5,354,844号;同第5,416,016号;同第5,459,127号;同第5,521,291号;同第5,543,158号;同第5,547,932号;同第5,583,020号;同第5,591,721号;同第4,426,330号;同第4,534,899号;同第5,013,556号;同第5,108,921号;同第5,213,804号;同第5,227,170号;同第5,264,221号;同第5,356,633号;同第5,395,619号;同第5,416,016号;同第5,417,978号;同第5,462,854号;同第5,469,854号;同第5,512,295号;同第5,527,528号;同第5,534,259号;同第5,543,152号;同第5,556,948号;同第5,580,575号;および同第5,595,756号が挙げられ、それらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
低カルボキシル化オステオカルシンが血液脳関門を横切る間、オステオカルシンの特定の誘導体、変異体、または改変形態は、横切らなくてもよい。血液脳関門を横切らないオステオカルシンの形態を利用する本発明の実施形態において、血液脳関門を横切って物質を輸送するために当該分野において公知の方法を利用できる。例えば、米国特許出願公開第2013/0034590号または米国特許出願公開第2013/0034572号に開示されている方法が使用されてもよい。ヒトインスリンまたはトランスフェリン受容体は、モノクローナル抗体-改変されたオステオカルシン複合体でこれらの受容体をターゲティングすることによって利用され得る(Pardridge、2007、Pharm.Res.24:1733-1744;Beduneauら、2008、J.Control.Release 126:44-49)。改変されたオステオカルシンを含有する界面活性剤でコーティングされたポリ(ブチルシアノアクリレート)ナノ粒子が使用されてもよい(Kreuterら、2003、Pharm.Res.20:409-416)。あるいは、改変されたオステオカルシンを含有するペグ化ナノ粒子にコンジュゲートしたカチオン性アルブミンなどのカチオン性担体が、改変されたオステオカルシンを脳へ送達するために使用されてもよい(Luら、2006、Cancer Res.66:11878-11887)。
本発明のさらに別の態様において、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、薬学的に許容可能な担体と共に医薬組成物として投与される。低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンについての例示的な医薬組成物は、溶液としての注射または注射可能な自己凝固もしくは自己ゲル化鉱物ポリマーハイブリッドとしての注射を含む。低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、リン酸カルシウムの細孔性結晶生体模倣生物活性組成物を使用して投与され得る。米国特許第5,830,682号、同第6,514,514号および同第6,511,958号ならびに米国特許出願公開第2006/0063699号、同第2006/0052327号、同第2003/199615号、同第2003/0158302号、同第2004/0157864号、同第2006/0292670号、同第2007/0099831号および同第2006/0257492号を参照のこと。それらの全ては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
治療方法
本発明は、哺乳動物におけるフレイルを治療するためにOST-PTPシグナル伝達経路またはPTP-1Bシグナル伝達経路を調節することにより、哺乳動物における低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンのレベルを調節する方法を提供する。特に、この方法は、OST-PTPホスホリラーゼ活性を阻害し、PTP-1Bホスホリラーゼ活性を阻害し、γ-カルボキシラーゼ活性を低減させ、および/または低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを増加させるために使用する。本発明によれば、この方法は、フレイルを治療するのに有効な薬剤の量を提供する。薬剤は、小分子、抗体および核酸からなる群から選択され得る。
特定の実施形態において、この方法は、フレイルの治療を必要とする患者を識別する工程、次いで本明細書に開示された方法を患者に適用する工程を含む。
本発明の一実施形態において、治療方法は、治療前の患者の濃度と比較して、患者の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの血中濃度を上昇させるのに十分な治療有効量の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを、それを必要とする患者に投与することを含む。低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは血液/脳関門を横切ることができるので、これは、脳の標的領域内に治療有効濃度の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを導くことができる。好ましくは患者はヒトである。別の実施形態において、治療方法は、治療前の患者の割合と比較して、患者の血液中の全オステオカルシンに対する低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの割合を上昇させるのに十分な治療有効量の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを、それを必要とする患者に投与することを含む。
本発明の別の態様において、フレイルが治療されるような治療有効量で低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるフレイルを治療する方法が提供される。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
本発明の一実施形態において、フレイルが治療されるように、骨芽細胞におけるOST-PTP発現もしくは活性を低下させるか、または骨芽細胞におけるPTP-1B発現もしくは活性を低下させる治療有効量の薬剤を、このような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるフレイルを治療する方法が提供される。好ましくは、患者はヒトである。
本発明は、フレイルが治療されるように骨芽細胞におけるγ-カルボキシラーゼ発現または活性を低下させる治療有効量の薬剤を、このような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるフレイルを治療する方法(i)であって、骨芽細胞におけるγ-カルボキシラーゼ発現または活性を低下させる治療有効量の薬剤を、このような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、方法を対象とする。好ましくは、哺乳動物はヒトである。本発明の一実施形態において、薬剤は、cDNA、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、および低分子干渉RNAからなる群から選択される単離された核酸であり、この核酸は、遺伝子またはmRNAとの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするγ-カルボキシラーゼをコードする遺伝子またはmRNAと十分に相補的であり、そのハイブリダイゼーションは骨芽細胞におけるγ-カルボキシラーゼの発現を阻止または低下させる。本発明の別の実施形態において、核酸は、骨芽細胞による摂取を容易にするためにリン酸基または他のターゲティングリガンドにコンジュゲートされる。
本明細書に記載される方法において、疾患または障害を「治療すること」または「軽減すること」は、疾患もしくは障害またはその症状を改善するだけでなく、疾患もしくは障害の進行を遅延させること、または疾患もしくは障害の有害効果を改善することも包含すると理解される。
本発明はまた、哺乳動物におけるフレイルを治療するための遺伝子治療の使用も包含する。これは、オステオカルシンまたはその生物学的に活性な断片もしくは変異体をコードする遺伝子をベクター内に組み込み、フレイルに罹患しているか、またはフレイルを発症するリスクが高い哺乳動物由来の細胞を、当該分野において公知の種々の方法に従って、ベクターでトランスフェクトまたは感染させることによって達成され得る。細胞はエキソビボまたはインビボでの方法によってトランスフェクトまたは感染されてもよい。
当該分野において公知の遺伝子治療の方法は本発明の方法における使用に適合され得る。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子治療のための最も有望なベクターの1つであり、本発明の方法において使用され得る。遺伝子導入および遺伝子治療の従来の方法は、例えば、Gene Therapy:Principles and Applications、ed.T.Blackenstein、Springer Verlag、1999;Gene Therapy Protocols(Methods in Molecular Medicine)、ed.P.D.Robbins、Humana Press、1997;およびRetro-vectors for Human Gene Therapy、ed.C.P.Hodgson、Springer Verlag、1996に記載されている。AAVはヒト遺伝子治療についての魅力的なベクター系である。なぜなら、それはヒトに対して非病原性であり、それは組み込みの高い発生頻度を有し、それは非細胞分裂細胞に感染することができ、したがってそれを、組織培養物および完全動物の両方において哺乳動物細胞内への遺伝子の送達に有用にする。例えば、Muzyczka、1992、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、158:97-129を参照のこと。最近の研究により、AAVが遺伝子送達のための有用なベクターである可能性があることが実証された。LaFaceら、1998、Virology、162:483-486;Zhouら、1993、Exp.Hematol.(NY)、21:928-933;Flotteら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10613-10617;およびWalshら、1994、Blood 84:1492-1500。組換えAAVベクターは、マーカー遺伝子(Kaplittら、1994、Nature Genetics、8:148-154;Lebkowskiら、1988、Mol.Cell.Biol.8:3988-3996;Samulskiら、1989、J.Virol.、63:3822-3828;Shelling & Smith、1994、Gene Therapy 1:165-169;Yoderら、1994、Blood、82:suppl.1:347 A;Zhouら、1994、J.Exp.Med.、179:1867-1875;Hermonat & Muzyczka、1984、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、81:6466-6470;Tratschinら、1984、Mol.Cell.Biol、4:2072-2081;McLaughlinら、1988、J.Virol.、62:1963-1973)およびヒト疾患に関与する遺伝子(Flotteら、1992、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.7:349-356;Luoら、1994、Blood、82:suppl.1、303A;Ohiら、1990、Gene、89:279-282;Walshら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7257-7261;Weiら、1994、Gene Therapy、1:261-268)のインビトロおよびインビボ形質導入のために首尾良く使用されている。
特定の他の実施形態において、目的の遺伝子(例えば、オステオカルシン)は、レトロウイルスベクターを使用して標的細胞に転移され得る。レトロウイルスとは、レトロウイルス科に属するウイルスを指し、腫瘍ウイルス、泡沫状ウイルス(Russell & Miller、1996、J.Virol.70:217-222;Wuら、1999、J.Virol.73:4498-4501)、およびレンチウイルス(例えば、HIV-1(Naldiniら、1996、Science 272:263-267;Poeschlaら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11395-11399;Srinivasakumarら、1997、J.Virol.71:5841-5848;Zuffereyら、1997、Nat.Biotechnol.15:871-875;Kimら、1998、J.Virol.72:811-816)、および猫免疫不全ウイルス(Johnstonら、1999、J.Virol.73:4991-5000;Johnston & Power、1999、Virol.73:2491-2498;Poeschlaら、1998、Nat.Med.4:354-357)を含む。これらの刊行物の開示は本発明の方法における使用に適合され得る。多種多様な疾患を治療するためのレトロウイルスベクターを利用する多くの遺伝子治療法は当該分野において周知であり、本発明の方法における使用に適合され得る(例えば、米国特許第4,405,712号および同第4,650,764号;Friedmann、1989、Science、244:1275-1281;Mulligan、1993、Science、260:926-932;Crystal、1995、Science 270:404-410、ならびに米国特許第6,899,871号(それらの各々は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。多数のこれらの方法は、現在、ヒト臨床試験に適用されている(Morgan、1993、BioPharm、6:32-35;The Development of Human Gene Therapy、Theodore Friedmann、Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1999.ISBN 0-87969-528-5もまた、参照のこと(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
本明細書に記載される治療方法の有効性は、この方法が、治療される疾患または障害の症状のいずれかを改善するかどうかを決定することによってモニターされ得る。あるいは、血清低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの濃度(絶対的な意味で、または低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン/全オステオカルシンの割合としてのいずれか)をモニターすることができ、その濃度は治療に応答して増加するはずである。
診断
本発明は、減少した濃度の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンに基づいて哺乳動物におけるフレイルを診断するための方法および組成物を提供する。本発明の特定の実施形態において、フレイルを有するか、またはフレイルを発症するリスクのある患者を診断するための方法であって、(i)患者から採取した生体試料中の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの患者の濃度と、障害を有さない対象から採取した生体試料中の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの対照の濃度を決定する工程と、(ii)患者の濃度と対照の濃度を比較する工程と、(iii)患者の濃度が対照の濃度未満である場合、フレイルを有するか、またはフレイルを発症するリスクがあると患者を診断する工程とを含む、方法が提供される。
「生体試料」は、固体および液体試料を含む。本発明の生体試料は、組織、器官、細胞、タンパク質あるいは細胞、血液または血液、血清、腹水もしくは脳液(例えば、脳脊髄液)などの生体液の膜抽出物を含み得る。好ましくは、生体試料は血液または脳脊髄液である。
本発明の別の実施形態において、フレイルを有するか、またはフレイルを発症するリスクがある患者を診断するための方法であって、(i)患者から採取した生体試料中の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの患者の濃度を決定する工程と、(ii)患者の濃度を基準濃度と比較する工程であって、患者の濃度が基準濃度より低い場合、フレイルを有するか、またはフレイルを発症するリスクがあると患者を診断する、工程とを含む、方法が提供される。この方法がヒトで実施される場合、基準濃度は、障害を発症するリスクのないヒトについて正常な範囲であると以前に決定されている低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの濃度であり得る。特定の実施形態において、生体試料は、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、細胞試料、または組織試料である。
ヒトにおける低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの「基準濃度」は、0.1ng/ml~10ng/ml、好ましくは0.2ng/ml~7.5ng/ml、より好ましくは0.5ng/ml~5ng/ml、さらにより好ましくは1ng/ml~5ng/mlの値の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを含み得る。ヒトにおける低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの基準濃度はまた、約0.1ng/ml、約0.5ng/ml、約1ng/ml、約2ng/ml、約3ng/ml、約4ng/ml、約5ng/ml、約6ng/ml、約7ng/ml、または約10ng/mlの低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンを含み得る。
本発明の別の実施形態において、フレイルを有するか、またはフレイルを発症するリスクのある患者を診断するための方法であって、(i)患者から採取した生体試料中の全オステオカルシンに対する低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの割合を決定する工程と、(ii)その割合と基準の割合とを比較する工程であって、患者の割合が基準の割合より低い場合、フレイルを有するか、またはフレイルを発症するリスクがあると患者を診断する、工程とを含む、方法が提供される。特定の実施形態において、基準の割合は、5%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、または30%~35%である。特定の実施形態において、基準の割合は、約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、または35%である。好ましくは、患者はヒトである。特定の実施形態において、生体試料は、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、細胞試料、または組織試料である。
タンパク質発現、例えば、オステオカルシン発現のレベルを検出するためのアッセイは当業者に周知である。このようなアッセイは、例えば、抗体ベースの免疫学的検定を含む。本明細書に開示される抗体を使用する方法は、特に、オステオカルシン、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼを差次的に発現するフレイルを有する哺乳動物由来の細胞、組織および他の生体試料に適用可能である。この方法は、目的のタンパク質およびその断片または変異体に選択的に結合する抗体を使用する。
生体試料中のオステオカルシンの量は、ラジオイムノアッセイ、免疫放射定量測定法、および/または酵素免疫測定法などのアッセイによって決定され得る。「ラジオイムノアッセイ」は、抗原の標識された(例えば、放射活性物質で標識された)形態を使用して抗原の濃度を検出し、測定するための技術である。抗原についての放射性標識の例としては、3H、14C、および125Iが挙げられる。生体試料中の抗原(例えば、オステオカルシン)の濃度は、抗原に対する抗体との結合のために(例えば、放射性活性物質で、蛍光で)標識された抗原と競合する試料中の抗原を有することによって測定され得る。標識された抗原と標識されていない抗原との間の競合的結合を確実にするために、標識された抗原は、抗体の結合部位を飽和するのに十分な濃度で存在する。試料中の抗原の濃度が高くなると、抗体に結合する標的された抗原の濃度は低くなる。
ラジオイムノアッセイにおいて、抗体に結合した標識された抗原の濃度を決定するために、抗原-抗体複合体は遊離抗原から分離されなければならない。遊離抗原から抗原-抗体複合体を分離するための1つの方法は、抗アイソタイプ抗血清により抗原-抗体複合体を沈殿させることによる。遊離抗原から抗原-抗体複合体を分離するための別の方法は、ホルマリンで殺傷した黄色ブドウ球菌(S.aureus)により抗原-抗体複合体を沈殿させることによる。遊離抗原から抗原-抗体複合体を分離するためのさらに別の方法は、抗体が、セファロース(登録商標)ビーズ、ポリスチレンウェル、ポリ塩化ビニルウェル、またはマイクロタイターウェルに(例えば共有)結合する、「固相ラジオイムノアッセイ」を実施することによる。抗体に結合した標識された抗原の濃度を、抗原の既知の濃度を有する試料に基づいた標準曲線と比較することによって、生体試料中の抗原の濃度が決定され得る。
「免疫放射定量測定法」(IRMA)は、抗体試薬が放射活性物質で標識された免疫学的検定である。IRMAは、タンパク質、例えば、ウサギ血清アルブミン(RSA)とのコンジュゲーションなどの技術による多価抗原コンジュゲートの産生を必要とする。多価抗原コンジュゲートは、1つの分子当たり少なくとも2つの抗原残基を有さなければならず、抗原残基は、抗原への少なくとも2つの抗体による結合を可能にするように十分に間隔をあけていなければならない。例えば、IRMAにおいて、多価抗原コンジュゲートはプラスチック球などの固体表面に結合され得る。非標識「試料」抗原および放射活性物質で標識された抗原に対する抗体が、多価抗原コンジュゲートでコーティングされた球を含有する試験管に加えられる。試料中の抗原は抗原抗体結合部位について多価抗原コンジュゲートと競合する。適切なインキュベーション期間後、未結合の反応物を洗浄により除去し、固相上の放射活性物質の量を測定する。結合した放射性抗体の量は試料中の抗原の濃度に反比例する。
最も一般的な酵素免疫測定法は、「酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)」である。「酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)」は、標識された(例えば、酵素結合した)抗体の形態を使用して抗原の濃度を検出し、測定するための技術である。「サンドイッチELISA」において、抗体(例えば、オステオカルシンに対する)は固相(例えば、マイクロタイタープレート)に結合し、抗原(例えば、オステオカルシン)を含有する生体試料に曝露される。次いで固相を洗浄して未結合の抗原を除去する。標識された(例えば、酵素結合した)抗体は、次いで、(存在する場合)抗体-抗原-抗体サンドイッチを形成する結合抗原に結合する。抗体に結合され得る酵素の例としては、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、ウレアーゼ、およびβ-ガラクトシダーゼが挙げられる。酵素が結合した抗体は基質と反応して、アッセイされ得る有色の反応生成物を生成する。
「競合的ELISA」において、抗体は抗原(例えば、オステオカルシン)を含有する試料とインキュベートされる。次いで抗原-抗体混合物は、抗原でコーティングされた固相(例えば、マイクロタイタープレート)と接触される。試料中に存在する抗原が多いほど、固相に結合するのに利用可能である遊離抗体は少ない。標識された(例えば、酵素結合された)二次抗体は、次いで、固相に加えられて、固相に結合した一次抗体の量を測定する。
「免疫組織化学アッセイ」において、組織切片が、アッセイされるタンパク質に特異的である抗体に組織を曝露することによって特異的タンパク質について試験される。次いで抗体は、タンパク質の存在および量を決定するための複数の方法のいずれかによって視覚化される。抗体を視覚化するために使用される方法の例は、例えば、抗体に結合した酵素(例えば、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはβ-ガラクトシダーゼ)、または化学的手法(例えば、DAB/基質クロマゲン(chromagen))によるものである。
タンパク質発現のレベルを検出することに加えて、本発明の診断アッセイは、RNA発現のレベルを検出するように設計された方法を利用できる。RNA発現のレベルは、例えば、ノーザンブロット、RT-PCRまたはインサイチュハイブリダイゼーションの使用を含む、当業者に周知の方法を使用して決定され得る。
オステオカルシンのカルボキシル化は、ヒドロキシアパタイトに対する、より大きな親和性を与える。全てのオステオカルシンは、免疫学的検定によって測定され得、続いて、ヒドロキシアパタイトとインキュベートされ、遠心分離される。ヒドロキシアパタイトに吸着されないオステオカルシンを含有する上清は、次いで、同様の免疫学的検定を使用して測定される。この手順の結果は、絶対濃度として、またはカルボキシル化オステオカルシンに対する低カルボキシル化オステオカルシンの割合として表され得る。
別の手順は、オステオカルシンのGlu/Gla残基の全てまたはいくつかのカルボキシル化状態を区別するモノクローナル抗体を使用する。例えば、GluOC4-5(TaKaRaカタログ番号M171)は、位置21および24においてグルタミン酸残基(脱カルボキシル化された)を有するヒトオステオカルシンと反応し、Gla型のオステオカルシンとは反応しない。
オステオカルシン測定法の概説については、Leeら、2000、Ann.Clin.Biochem.37:432-446を参照のこと。
薬物スクリーニングおよびアッセイ
薬物スクリーニングの細胞ベースおよび非細胞ベースの方法は、OST-PTP、PTP-1B、もしくはγ-カルボキシラーゼの活性もしくは発現を低下させ、ならびに/または低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの活性もしくは発現のレベルを増加させる候補薬剤を同定するために提供される。そのような薬剤は哺乳動物におけるフレイルの治療における使用が見出されている。
非細胞ベースのスクリーニング法は、OST-PTP、PTP-1B、γ-カルボキシラーゼまたはオステオカルシンに結合し、それによってこれらのタンパク質の活性を調節する化合物を同定するために提供される。
そのような非細胞ベースの方法は、OST-PTPに結合する薬剤について同定またはアッセイする方法であって、(i)OST-PTPまたはその断片もしくは変異体を含む混合物を提供する工程、(ii)混合物を候補薬剤と接触させる工程、(iii)候補薬剤がOST-PTPに結合するかどうかを決定する工程、ここで、薬剤がOST-PTPまたはその断片もしくは変異体に結合する場合、(iv)薬剤が、γ-カルボキシラーゼを脱リン酸化するOST-PTPの能力を低下させるかどうかを決定する工程、および(v)哺乳動物におけるフレイルを治療する必要のある患者に薬剤を投与する工程を含む、方法を含む。特定の実施形態において、混合物は、OST-PTPまたはその断片もしくは変異体を含む膜断片を含む。
スクリーニング法は、OST-PTPのホスファターゼ1ドメインに結合する薬剤について同定またはアッセイするために提供され、その方法は、(i)OST-PTPまたはその断片もしくは変異体のホスファターゼ1ドメインを含む混合物を提供する工程、(ii)混合物を薬剤と接触させる工程、(iii)薬剤がOST-PTPのホスファターゼ1ドメインに結合するかどうかを決定する工程、ここで薬剤がOST-PTPまたはその断片もしくは変異体のホスファターゼ1ドメインに結合する場合、(iv)薬剤がOST-PTPのホスファターゼ1ドメインを阻害するかどうかを決定する工程、および薬剤がOST-PTPのホスファターゼ1ドメインを阻害する場合、(v)哺乳動物におけるフレイルの治療を必要とする患者に薬剤を投与する工程を含む。
スクリーニング法は、PTP-1Bに結合する薬剤について同定またはアッセイするために提供され、その方法は、(i)PTP-1Bまたはその断片もしくは変異体を含む混合物を提供する工程、(ii)混合物を候補薬剤と接触させる工程、(iii)候補薬剤がPTP-1Bに結合するかどうかを決定する工程、ここで薬剤がPTP-1Bまたはその断片もしくは変異体に結合する場合、(iv)薬剤が、γ-カルボキシラーゼを脱リン酸化するPTP-1Bの能力を低下させるかどうかを決定する工程、および(v)哺乳動物におけるフレイルの治療を必要とする患者に薬剤を投与する工程を含む。特定の実施形態において、混合物は、PTP-1Bまたはその断片もしくは変異体を含む膜断片を含む。
スクリーニング法は、γ-カルボキシラーゼに結合する薬剤について同定またはアッセイするために提供され、その方法は、(i)γ-カルボキシラーゼまたはその断片もしくは変異体を含む混合物を提供する工程、(ii)混合物を薬剤と接触させる工程、(iii)薬剤がγ-カルボキシラーゼに結合するかどうかを決定する工程、ここで薬剤がγ-カルボキシラーゼまたはその断片もしくは変異体に結合する場合、(iv)フレイルの治療を必要とする哺乳動物に薬剤を投与する工程を含む。その方法は、薬剤がγ-カルボキシラーゼ活性を低下させるかどうかを決定する工程をさらに含んでもよい。
上記のアッセイにおける標的分子への薬剤の結合は、競合的結合アッセイの使用により決定され得る。競合相手は標的分子に結合することが知られている結合部分である。特定の状況下で、結合部分が薬剤と置き換わっているか、または薬剤が結合部分と置き換わっている、薬剤と結合部分との間のような競合的結合が存在していてもよい。
薬剤または競合相手のいずれかは標識化され得る。薬剤または競合相手のいずれかは最初に、結合を可能にするのに十分な時間、タンパク質に加えられる。インキュベーションは、最適な結合を容易にする任意の温度、典型的に4℃~40℃で実施され得る。インキュベーション時間もまた、最適な結合のために選択されてもよいが、高速ハイスループットスクリーニングを容易にするように最適化されてもよい。典型的に、0.1~1時間が十分である。過剰な薬剤および競合相手は一般に除去されるか、または洗い落とされる。
このようなアッセイを使用して、競合相手が最初に加えられてもよく、続いて薬剤が加えられてもよい。競合相手の置換は、薬剤が標的分子に結合するので、標的分子に結合でき、標的分子の活性を調節する可能性がある指標である。この実施形態において、構成要素のいずれかは標識化されてもよい。このように、例えば、競合相手が標識化される場合、洗浄溶液中の標識の存在は、薬剤による置換を示す。
別の例において、薬剤が最初に加えられ、インキュベーションおよび洗浄に続いて競合相手が加えられる。競合相手による結合の不在は、薬剤が競合相手より高い親和性で標的分子に結合していることを示し得る。このように、薬剤が標識される場合、競合相手結合の欠如に加えて標的分子上の標識の存在は、薬剤が標的分子に結合できることを示し得る。
この方法は、標的分子の活性を調節できる薬剤を同定するために異なるスクリーニングを含んでもよい。このような例において、この方法は、第1の試料中の標的分子および競合相手を混合することを含む。第2の試料は、薬剤、標的分子、および競合相手を含む。薬剤の添加は、標的分子の活性の調節を可能にする条件下で実施される。競合相手の結合は両方の試料について決定され、2つの試料間の結合における変化または差は、標的分子に結合でき、その活性を調節する可能性のある薬剤の存在を示す。すなわち、競合相手の結合が第1の試料と比べて第2の試料中で異なる場合、薬剤は標的分子に結合できる。
陽性対照および陰性対照はアッセイにおいて使用され得る。好ましくは、全ての対照および試験試料は、十分に有意な結果を得るために少なくとも3連で実施される。全ての試料のインキュベーションは標的分子への薬剤の結合についての十分な時間である。インキュベーション後、全ての試料を洗浄して、特異的に結合していない物質を除去し、結合した、一般に標識化した薬剤の量を決定した。例えば、放射性標識が利用される場合、試料はシンチレーションカウンタで計数されて、結合した薬剤の量を決定できる。
様々な他の試薬がスクリーニングアッセイに含まれてもよい。それらは、最適なタンパク質間結合を容易にし、および/または非特異的もしくはバックグラウンド相互作用を減少させるために使用され得る、塩、中性タンパク質、例えば、アルブミン、洗浄剤などのような試薬を含む。また、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などの別様でアッセイの効率を改善する試薬が使用されてもよい。構成要素の混合物は必要な結合を与える任意の順序で加えられてもよい。
このように、一例において、この方法は、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼを含む試料および薬剤を混合する工程、ならびにOST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼ酵素活性に対する効果を評価する工程を含む。酵素活性、具体的にはOST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼ酵素活性とは、酵素に関連する生物活性の1つ以上を意味する。OST-PTPおよびPTP-1Bに関して、活性は、好ましくはγカルボキシラーゼの脱リン酸化であり、γ-カルボキシラーゼに関して、それはオステオカルシンのカルボキシル化である。スクリーニングアッセイは、OST-PTP、PTP-1B、もしくはγカルボキシラーゼの活性を低下させ、および/または低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンのレベルを増加させる薬剤を見出すために設計される。
具体的には、スクリーニング法は、OST-PTPの活性を低下させる薬剤を同定するために提供され、その方法は、(a)OST-PTPまたはその断片もしくは変異体を含む対照混合物、およびOST-PTPまたはその断片もしくは変異体を含む試験混合物を提供する工程、(b)試験混合物を薬剤と接触させる工程、(c)試験混合物および対照混合物中のOST-PTPの活性のレベルを決定する工程、(d)試験混合物中のOST-PTP活性のレベルが対照混合物中のOST-PTP活性のレベルより低い場合、その薬剤をOST-PTP活性を低下させる薬剤として同定する工程、ならびに(e)フレイルの治療を必要とする哺乳動物に、同定された薬剤を投与する工程を含む。
スクリーニング法は、PTB-1Bの活性を低下させる薬剤を同定するために提供され、その方法は、(a)PTP-1Bまたはその断片もしくは変異体を含む対照混合物、およびPTP-1Bまたはその断片もしくは変異体を含む試験混合物を提供する工程、(b)試験混合物を薬剤と接触させる工程、(c)試験混合物および対照混合物中のPTP-1Bの活性のレベルを決定する工程、(d)試験混合物中のPTP-1B活性のレベルが対照混合物中のPTP-1B活性のレベルより低い場合、その薬剤をPTP-1B活性を低下させる薬剤として同定する工程、ならびに(e)フレイルの治療を必要とする哺乳動物に、同定した薬剤を投与する工程を含む。
スクリーニング法は、γ-カルボキシラーゼ活性を低下させる薬剤を同定するために提供され、その方法は、(a)γ-カルボキシラーゼまたはその断片もしくは変異体を含む対照混合物、およびγ-カルボキシラーゼまたはその断片もしくは変異体を含む試験混合物を提供する工程、(b)試験混合物を薬剤と接触させる工程、(c)試験混合物および対照混合物中のγ-カルボキシラーゼの活性のレベルを決定する工程、(d)試験混合物中のγ-カルボキシラーゼ活性のレベルが対照混合物中のγ-カルボキシラーゼのレベルより低い場合、その薬剤を、γ-カルボキシラーゼ活性を低下させる薬剤と同定する工程、ならびに(e)フレイルの治療を必要とする哺乳動物に、同定した薬剤を投与する工程を含む。
本発明はまた、オステオカルシンを脱カルボキシル化する薬剤を同定するためのスクリーニング法を提供し、その方法は、(a)カルボキシル化オステオカルシンを含む対照混合物、およびカルボキシル化オステオカルシンを含む試験混合物を提供する工程、(b)試験混合物に薬剤を添加する工程、(c)試験混合物および対照混合物中のカルボキシル化オステオカルシンのレベルを決定する工程、(d)試験混合物中のカルボキシル化オステオカルシンが対照混合物中のカルボキシル化オステオカルシンのレベルより低い場合、その薬剤を、オステオカルシンを脱カルボキシル化する薬剤と同定する工程、ならびに(e)フレイルの治療を必要とする哺乳動物に、同定された薬剤を投与する工程を含む。
オステオカルシン遺伝子発現を低下させる薬剤を同定するための細胞ベースの方法が提供され、その方法は、(a)細胞中のオステオカルシンの第1の発現レベルを決定する工程、(b)試験薬剤と接触させた後、オステオカルシンの第2の発現レベルを決定する工程、および(c)第1の発現レベルと第2の発現レベルとを比較する工程であって、第1の発現レベルが第2の発現レベルより低い場合、その薬剤を、オステオカルシン遺伝子発現を増加させる薬剤と同定する、工程、ならびに(e)フレイルの治療を必要とする哺乳動物に、同定された薬剤を投与する工程を含む。オステオカルシン遺伝子発現のレベルは、生成したオステオカルシンmRNAの量または生成したオステオカルシンタンパク質の量を測定することによって決定され得る。特定の実施形態において、細胞は骨芽細胞である。
γカルボキシラーゼは、γ-カルボキシグルタミン酸残基を形成するためにオステオカルシン内の特定のグルタミン酸残基の翻訳後修飾を触媒する。本明細書に記載されるアッセイの一実施形態において、γカルボキシラーゼ活性またはデカルボキシラーゼ活性のレベルは、オステオカルシンカルボキシル化のレベルを測定することによって決定される。
本明細書に記載されるスクリーニングまたはアッセイ法に使用される細胞は、OST-PTP、OST-PTPのホスファターゼ1ドメイン、PTP-1B、γ-カルボキシラーゼ、またはオステオカルシンを天然に発現する細胞、およびOST-PTP、OST-PTPのホスファターゼ1ドメイン、PTP-1Bγ-カルボキシラーゼ、またはオステオカルシンを発現(または過剰発現)するように遺伝子操作された細胞を含む。このような細胞は、OST-PTP、OST-PTPのホスファターゼ1ドメイン、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼを過剰発現する形質転換された骨芽細胞を含む。
哺乳動物におけるフレイルを治療するのに有用な薬剤を同定する方法であって、フレイルを有する哺乳動物を提供する工程、(b)哺乳動物から採取された投与前の生体試料中の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの量を決定する工程、(c)哺乳動物に薬剤を投与する工程、(d)哺乳動物から採取した投与後の生体試料中の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの量を決定する工程、および(e)投与後の生体試料中の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの量が、投与前の生体試料中の低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの量より高い場合、その薬剤を、哺乳動物におけるフレイルを治療するのに有用であると同定する工程を含む、方法が提供される。
本明細書に使用される場合、「薬剤」という用語は、任意の分子、例えば、タンパク質、オリゴペプチド、小有機分子、多糖、ポリヌクレオチド、脂質などまたはそれらの混合物を含む。薬剤のいくつかは治療的に使用され得る。薬剤は、OST-PTP、PTP-1B、γ-カルボキシラーゼ、オステオカルシン、またはそれらの断片であってもよい。
一般に、本明細書に記載されるアッセイにおいて、複数のアッセイ混合物は、種々の濃度に対して異なる反応を得るために異なる薬剤濃度で並行して実施される。典型的に、これらの濃度の1つは、陰性対照として役立ち、すなわち、ゼロ濃度であるか、または検出レベル未満である。
スクリーニングに使用するための薬剤は、多数の化学的クラスを包含するが、典型的に、それは有機分子、好ましくは100ダルトン超かつ約2,500ダルトン未満、好ましくは約500ダルトン未満の分子量を有する小有機化合物である。薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的に、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくはこれらの官能化学基の少なくとも2つを含む。薬剤は、多くの場合、上記の官能基の1つ以上で置換された環式炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含む。薬剤はまた、ペプチド、単糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造的類似体または組み合わせを含む生体分子の中にも見出される。特に好ましい生体分子はペプチドである。
十分に確認された薬理学的活性を有する高純度の小有機リガンドおよびペプチドのライブラリーは、本明細書におけるアッセイに使用するために多くの供給源から利用可能である。一例は、1,866種の薬物様化合物(小さい、中間の疎水性)を含有するNCIの多様なセットである。別のものは、多くの伸長された柔軟な化合物を含む既知の生物活性(467種の化合物)についてのInstitute of Chemistry and Cell Biology(ICCB;Harvard Medical Schoolによって維持されている)のセットである。ICCBライブラリーのいくつかの他の例は、Chem Bridge DiverSet E(16,320種の化合物);Bionet 1(4,800種の化合物);CEREP(4,800種の化合物);Maybridge 1(8,800種の化合物);Maybridge 2(704種の化合物);Maybridge HitFinder(14,379種の化合物);Peakdale 1(2,816種の化合物);Peakdale 2(352種の化合物);ChemDiv Combilab and International(28,864種の化合物);Mixed Commercial Plate 1(352種の化合物);Mixed Commercial Plate 2(320種の化合物);Mixed Commercial Plate 3(251種の化合物);Mixed Commercial Plate 4(331種の化合物);ChemBridge Microformat(50,000種の化合物);Commercial Diversity Setl(5,056種の化合物)である。他のNCI Collectionsは、Structural Diversity Set、バージョン2(1,900種の化合物);Mechanistic Diversity Set(879種の化合物);Open Collection 1(90,000種の化合物);Open Collection 2(10,240種の化合物);Known Bioactives Collections:NINDS Custom Collection(1,040種の化合物);ICCB Bioactives 1(489種の化合物);SpecPlus Collection(960種の化合物);ICCB Discretes Collectionsである。以下のICCB化合物は、ICCB、Harvardおよび他の共同研究機関における化学者から個々に収集した:ICCB1(190種の化合物);ICCB2(352種の化合物);ICCB3(352種の化合物);ICCB4(352種の化合物)。天然産物抽出物:NCI Marine Extracts(352種のウェル);有機画分-NCI Plant and Fungal Extracts(1,408種のウェル);Philippines Plant Extracts 1(200種のウェル);ICCB-ICG Diversity Oriented Synthesis(DOS)Collections;DDS1(DOS Diversity Set)(9600種のウェル)。化合物ライブラリーはまた、ActiMol、Albany Molecular、Bachem、Sigma-Aldrich、TimTecおよびその他などの商業的供給業者から入手可能である。
スクリーニングにおいて同定された公知および新規の薬剤は、構造的類似体を生成するためにアシル化、アルキル化、エステル化、またはアミド化(amidification)などの直接またはランダム化学修飾にさらに供されてもよい。
化合物をスクリーニング、設計、または修飾する場合、考慮される他の要因としては、薬剤分野において認識され、分子を概ね薬物様にする特性および構造的特徴に関連するリピンスキーのルールオブファイブ(Lipinski rule-of-five)(5個以下の水素結合供与体(OHおよびNH基);10個以下の水素結合受容体(特にNおよびO);500g/mol以下の分子量;5未満の分配係数log P)、およびヴェバー基準(Veber criteria)が挙げられる。
薬剤はタンパク質であってもよい。本文脈において、「タンパク質」とは、少なくとも2つの共有結合しているアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドを含む。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸およびペプチド結合、または合成ペプチド模倣構造から作製され得る。したがって、本明細書に使用される「アミノ酸」または「ペプチド残基」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸の両方を意味する。例えば、ホモ-フェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは、本発明の目的のためのアミノ酸とみなされる。「アミノ酸」はまた、プロリンおよびヒドロキシプロリンなどのイミノ酸残基を含む。側鎖は、(R)または(S)立体配置のいずれかであってもよい。好ましい実施形態において、アミノ酸は(S)またはL-立体配置である。天然に存在しない側鎖が使用される場合、例えば、インビボでの分解を防ぐか、または遅らせるために非アミノ酸置換基が使用されてもよい。
薬剤は、天然に存在するタンパク質または天然に存在するタンパク質の断片もしくは変異体であってもよい。したがって、例えば、タンパク質を含有する細胞抽出物、またはタンパク質性細胞抽出物のランダムもしくは指向性消化物が使用されてもよい。このように、原核生物および真核生物タンパク質のライブラリーは、種々のタンパク質の1つに対するスクリーニングのために作製されてもよい。細菌、真菌、ウイルス、および哺乳動物タンパク質のライブラリーが使用されてもよく、哺乳動物タンパク質が好ましく、ヒトタンパク質が特に好ましい。
薬剤は、約5~約30アミノ酸のペプチドであってもよく、約5~約20アミノ酸が好ましく、約7~約15が特に好ましい。ペプチドは、上記に概説されているように天然に存在するタンパク質、ランダムペプチド、または「バイアスされた(biased)」ランダムペプチドの消化物であってもよい。本明細書における「ランダム」または文法的な同義語は、各々の核酸およびペプチドが、それぞれランダムなヌクレオチドおよびアミノ酸から本質的になることを意味する。一般にこれらのランダムペプチド(または以下に説明されている核酸)は化学的に合成されるので、それらは、任意のヌクレオチドまたはアミノ酸を任意の位置に組み込んでいてもよい。合成プロセスが、配列の長さにわたる可能な組み合わせの全てまたは大部分の形成を可能にするように、ランダム化されたタンパク質または核酸を生成するために設計されてもよく、それによりランダム化された薬剤である生物活性タンパク質性薬剤のライブラリーを形成する。
ライブラリーは、任意の位置に配列選択性または一定性を有さずに完全にランダム化されてもよい。あるいは、ライブラリーはバイアスされてもよい。すなわち、配列内のいくつかの位置は、一定に保持されるか、または制限された数の可能性から選択される。例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基は、例えば、SH3ドメインについてプロリン、リン酸化部位についてセリン、トレオニン、チロシンまたはヒスチジンなどを架橋するために、システインの生成に対して、またはプリンなどに対して、疎水性アミノ酸、親水性残基、立体的にバイアスされた(小さいまたは大きい)残基の定義されたクラス内でランダム化される。
薬剤は、遺伝子発現またはmRNA翻訳をそれぞれ遮断するために、目的のタンパク質をコードする遺伝子、またはそのmRNAに結合する単離された核酸、好ましくはアンチセンス、siRNA、またはcDNAであってもよい。本明細書における「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または文法的な同義語は、一緒に共有結合された少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。このような核酸は一般にリン酸ジエステル結合を含有するが、いくつかの場合、以下に概説されているように、例えば、ホスホラミド(Beaucageら、1993、Tetrahedron 49:1925およびその文献における参考文献;Letsinger、1970、J.Org.Chem.35:3800;Sprinzlら、1977、Eur.J.Biochem.81:579;Letsingerら、1986、Nucl.Acids Res.14:3487;Sawaiら、1984、Chem.Lett. 805;Letsingerら、1988、J.Am.Chem.Soc.110:4470;ならびにPauwelsら、1986、Chemica Scripta 26:141);ホスホロチオエート(Magら、1991、Nucleic Acids Res.19:1437;および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briuら、1989、J.Am.Chem.Soc.111:2321);O-メチルホスホロアミダイト結合(O-methylphophoroamidite linkage)(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、Oxford University Pressを参照のこと)、ならびにペプチド核酸骨格および結合(Egholm、1992、J.Am.Chem.Soc.114:1895;Meierら、1992、Chem.Int.Ed.Engl.31:1008;Nielsen、1993、Nature、365:566;Carlssonら、1996、Nature 380:207を参照のこと)を含む代替の骨格を有し得る核酸類似体が含まれ、これらの文献の全ては参照により組み込まれ、本明細書に記載される方法における使用のための核酸剤を設計する際の指針のために当業者により参考され得る。
他の類似の核酸としては、陽性骨格(positive backbone)(Denpcyら、1995、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:6097);非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号;同第5,637,684号;同第5,602,240号;同第5,216,141号;および同第4,469,863号;Kiedrowshiら、1991、Angew.Chem.Intl.Ed.English 30:423;Letsingerら、1988、J.Am.Chem.Soc.110:4470;Letsingerら、1994、Nucleoside & Nucleoside 13:1597;Chapters 2および3、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Ed.Y.S.SanghuiおよびP.Dan Cook;Mesmaekerら、1994、Bioorganic & Medicinal Chem.Lett.4:395;Jeffsら、1994、J.Biomolecular NMR 34:17);ならびに米国特許第5,235,033号および同第5,034,506、ならびにChapters 6および7、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in antisense Research」、Ed.Y.S.SanghuiおよびP.Dan Cookに記載されているものを含む非リボース骨格が挙げられる。1つ以上の炭素環式糖を含有する核酸もまた、本明細書に記載される薬剤として使用され得る核酸の定義の範囲内である。いくつかの核酸類似体は、Rawls、C & E News Jun.2、1997 page35に記載されている。これらの参考文献の全ては参照により本明細書に明確に組み込まれる。リボース-リン酸骨格のこれらの修飾は、標識などの追加の部分の付加を容易にするため、または生理的環境におけるこのような分子の安定性および半減期を増加させるために行われてもよい。さらに、天然に存在する酸および類似体の混合物が作製されてもよい。あるいは、異なる核酸類似体の混合物、ならびに天然に存在する核酸および類似体の混合物が作製されてもよい。核酸は、一本鎖もしくは二本鎖であってもよいか、または二本鎖もしくは一本鎖配列の両方の部分を含有してもよい。核酸は、DNA、ゲノムおよびcDNAの両方、RNAまたはハイブリッドであってもよく、核酸は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの任意の組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む、塩基の任意の組み合わせを含有する。
一般的にタンパク質について上記のように、核酸剤は、天然に存在する核酸、ランダム核酸、または「バイアスされた」ランダム核酸であってもよい。例えば、原核生物または真核生物ゲノムの消化物が、タンパク質について上記に概説したように使用されてもよい。
薬剤はコンビナトリアル化学ライブラリーから得ることができ、それらの多種多様なものが文献において利用可能である。本明細書において、「コンビナトリアル化学ライブラリー」とは、定義されたまたはランダムな方式で、一般に化学合成によって生成された多様な化学化合物の収集を意味する。数百万の化学化合物がコンビナトリアル混合によって合成され得る。
OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼなどの種々のタンパク質の1つに対する薬剤の結合の測定は多くの手段で行うことができる。好ましい実施形態において、薬剤は標識され、結合は直接測定される。例えば、これは、種々のタンパク質のうちの1つの全部または一部を固体支持体に結合させ、標識化薬剤(例えば、放射性または蛍光標識を含む薬剤)を加え、過剰な試薬を洗い落とし、標識が固体支持体に存在するかどうかを決定することによって行うことができる。利用され得る種々の遮断および洗浄工程は当該分野において公知である。
本明細書において、「標識化」とは、薬剤が、検出可能なシグナルを提供する標識、例えば放射性同位体(3H、14C、32P、33P、35S、または125Iなど)、蛍光または化学発光化合物(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、またはルシフェリンなど)、酵素(アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼなど)、抗体、磁性粒子などの粒子、または特異的結合分子などで直接的または間接的に標識されることを意味する。特異的結合分子は、ビオチンおよびストレプトアビジン、ジゴキシンおよび抗ジゴキシンなどの対を含む。特異的結合メンバーに関して、相補的なメンバーは、通常、上記で概説したように、公知の手順に従って、検出を提供する分子で標識される。標識は検出可能なシグナルを直接的または間接的に提供できる。化合物の1つのみが標識され得る。あるいは、1つより多くの成分が異なる標識で標識されてもよい。
ノックインおよびノックアウトマウスを含むトランスジェニックマウス、および本明細書に開示される核酸(例えば、Esp、PTP-1B、オステオカルシン、γ-カルボキシラーゼについてのcDNA)を過剰発現または過小発現するそれら由来の単離細胞(特に骨芽細胞)は、当該分野において公知の慣例の方法を使用して作製できる。特定の場合、核酸は、核酸遺伝子またはmRNAを過剰発現する生物を生じるプロモーターおよび調節エレメント(内因性または異種)の制御下でそれらに作動可能に連結される宿主生物のゲノム内へ挿入される。増幅される遺伝子を保有するトランスフェクトベクターに含まれる外因性/異種プロモーターの一例は、α1(I)コラーゲンである。多くのこのようなプロモーターは当該分野において公知である。
ヒト骨芽細胞は、オステオカルシン(またはその断片もしくは変異体)を過剰発現するトランスフェクトされたヒト骨芽細胞を生じる既知のプロモーターおよび調節エレメントに作動可能に連結されたヒトEsp、ヒトPTP-1B、またはヒトオステオカルシン(またはそれらの断片もしくは変異体)についてのcDNAを保有するベクターでトランスフェクトされ得る。
オステオカルシン(またはその断片もしくは変異体)、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼを過剰発現するトランスジェニックマウスおよびマウス細胞、ならびにトランスフェクトされたヒト細胞が本明細書に開示される。オステオカルシン、Esp、およびγ-カルボキシラーゼについての1つまたは両方の対立遺伝子の欠失を有する二重変異体マウス、ならびに二重変異体の種々の組み合わせもまた、本明細書に開示される。
標的動物または細胞のゲノム内へ挿入するためのタンパク質をコードするcDNAまたはmRNAを保有するベクターもまた、本明細書に開示される。このようなベクターは、任意選択に、cDNAまたはmRNAに作動可能に連結されるプロモーターおよび調節エレメントを含む。「作動可能に連結される」とは、プロモーターおよび調節エレメントの制御下でcDNAまたはmRNAの発現を可能にするようにcDNAまたはmRNAに連結されるプロモーターおよび調節エレメントを意味する。
OST-PTP、PTP-1B、および/またはγ-カルボキシラーゼの発現を低下させ、それによって哺乳動物におけるフレイルを治療するのに使用するためのアンチセンスおよび低分子干渉RNAは、OST-PTP、PTP-1B、またはγ-カルボキシラーゼをそれぞれコードする遺伝子および/またはmRNAと特異的にハイブリダイズするように作製され得る。マウス(OST-PTP、Ptprv)cDNAについての配列は配列番号10に示される。(OST-PTP、Ptprv)タンパク質についてのアミノ酸配列は配列番号11に示される。このcDNA、またはこのcDNAに基づいたアンチセンスおよび低分子干渉RNAは、OST-PTPについてのmRNAとハイブリダイズし、それによってその翻訳を干渉する。OST-PTP発現の低下は、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンのレベルを増加させ、それによって哺乳動物における認知に関連する障害に対して治療的効果を与える。ヒトPTP-1B cDNAについての配列は配列番号16に示される。ヒトPTP-1Bタンパク質についてのアミノ酸配列は配列番号17に示される。このcDNA、またはこのcDNAに基づいたアンチセンスおよび低分子干渉RNAは、ヒトPTP-1BについてのmRNAとハイブリダイズし、それによってその翻訳を干渉する。ヒトPTP-1B発現の低下は、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンのレベルを増加させ、それによって哺乳動物におけるフレイルに対して治療的効果を与える。マウスγ-カルボキシラーゼについてのcDNAは配列番号8によって特定され、そのアミノ酸配列は配列番号9である。このcDNA、またはこのcDNAに基づいたアンチセンスおよび低分子干渉RNAは、γ-カルボキシラーゼについてのmRNAとハイブリダイズし、それによってその翻訳を妨げ、これは好ましい実施形態である。ヒトγ-カルボキシラーゼについてのcDNAは配列番号6によって特定され、アミノ酸配列は配列番号7である。ヒトγ-カルボキシラーゼcDNAは、ヒトにおけるフレイルを治療するためにγ-カルボキシラーゼ発現を低下させるために治療的に使用され得る。
本発明は以下の実施例によって本明細書において例示され、それらは限定とみなされるべきではない。本出願全体を通して引用される全ての参考文献、係属中の特許出願および公開された特許の内容は参照により明確に本明細書に組み込まれる。当業者は、本発明が多くの異なる形態で実現され得、本明細書に記載される実施形態に限定されるとみなされるべきではないことを理解する。むしろ、これらの実施形態は、本開示が当業者に本発明を完全に伝えるように提供される。本発明の多くの修飾および他の実施形態は、上述の詳細な説明に提示される教示の利点を有する本発明に関する当業者が想起できる。特定の用語が利用されるが、それらは、他に示されない限り、当該分野におけるように使用される。
実施例1 オステオカルシン欠損マウス
「オステオカルシン欠損マウス」または「オステオカルシン-/-」マウスとは、両方のオステオカルシン対立遺伝子が欠失しているマウスの系統を指す。オステオカルシン-/-マウスの生成は以前に報告されている(Ducyら、1996、Nature 382:448-452)。成熟タンパク質をコードするオステオカルシン遺伝子1(OG1)のエクソン4、および全オステオカルシン遺伝子2(OG2)配列は欠失しているが、オステオカルシン関連遺伝子(ORG)は所定の位置に残ったままであった。正確なターゲティングの結果、全成熟オステオカルシンタンパク質コード配列のpGKNeo選択カセットによる置換が生じた。
オステオカルシン-/-マウスは、WTマウスより高い血糖および低いインスリン血清濃度を有した。GSIS、GTTおよびITTによって分析されるインスリン分泌および感受性ならびに耐糖能は、エネルギーが消費されたので、オステオカルシン-/-マウスにおいて全て減少した。したがって、インスリン作用に関与する遺伝子の発現は骨格筋および肝臓において減少したが、Pepck発現は増加した。膵島の大きさおよび数、β細胞の質量、膵臓インスリン含有量およびインスリン免疫反応性は、全てオステオカルシン-/-マウスにおいて顕著に減少した。Ki67免疫染色によって測定したβ細胞増殖は、P5の子(pups)および3ヶ月齢でオステオカルシン-/-膵臓において2倍減少した。β細胞増殖、インスリン分泌および感受性のこの顕著な減少に伴って、脂肪体の質量、脂肪細胞の数(WT、93.2+/-10.7×103の脂肪細胞/脂肪体(n=5);オステオカルシン-/-、125.6+/-10.6×103の脂肪細胞/脂肪体(n=3))および血清トリグリセリド濃度は増加した。アディポネクチン発現および血清濃度は、特に増加した脂肪体の質量を考慮すると、WTマウスよりオステオカルシン-/-において顕著に減少したが、他のアディポカインの発現は影響を受けなかった。アディポネクチン作用の分子標的の発現はオステオカルシン-/-マウスにおいて減少した。しかしながら、オステオカルシン+/-マウスはWTの同腹の子と区別ができなかった。マウスアディポネクチンについてのcDNA配列は配列番号8であり、それはまた、アミノ酸配列番号9によっても特定される。ヒトアディポネクチンについてのcDNA配列は配列番号6であり、それはまた、アミノ酸配列番号7によっても特定される。
実施例2 GTG誘導性肥満
GTG誘導性肥満について、オスおよびメスの4週齢の野生型(WT)およびオステオカルシン-/-マウス(n=10/群)に0.5mg/kgのGTGを注射した。
実施例3 代謝研究
耐糖能試験(GTT)に関して、一晩絶食させた後、グルコース(2g/kg体重(BW))を腹腔内(IP)注射し、示した時間において血糖ストリップおよびAccu-Check血糖測定器(Roche)を使用して血糖をモニターした。
実施例4 組換えオステオカルシン
組換えオステオカルシンは、細菌により産生され、標準的な手順に従ってグルタチオンビーズで精製される。次いでオステオカルシンはトロンビン消化を使用してGSTサブユニットから切断される。トロンビン汚染はアフィニティーカラムを使用して除去した。生成物の純度はSDS-PAGEによって定性的に評価した。
実施例5 非カルボキシル化オステオカルシンの投与は血糖を減少させる
血糖に対する低カルボキシル化オステオカルシンの効果をモニターするインビボでの実験を行った。野生型マウスに3つの異なる量のマウス組換え低カルボキシル化オステオカルシンまたはプラセボ(PBS)を28日にわたって皮下に注入した(0.3、1および3ng/時間)。プラセボを注入した対照動物と比較して、低カルボキシル化オステオカルシンの3つ全ての用量は28日にわたってインビボで血糖を減少させた(図1)。
実施例6 非カルボキシル化オステオカルシンの投与は耐糖能を増加させる
別のインビボ実験において、耐糖能に対する非カルボキシル化オステオカルシンの効果を調査した。野生型マウスにグルコースの単回注射を与える前に0.3または3ng/時間の用量の組換え非カルボキシル化オステオカルシンまたはPBSを14日にわたって皮下に注射した。その後、示した時間において血糖を測定した。その結果は、両方の用量の非カルボキシル化オステオカルシンが、グルコース注射の後、120分の時点で対照レベルより耐糖能を増加させることを示す(図2)。
実施例7 非カルボキシル化オステオカルシンの投与はインスリン感受性を増加させる
インスリン感受性に対する非カルボキシル化オステオカルシンの効果もまた、調べた。野生型マウスにインスリンの単回注射を与える前に18日にわたって0.3または3ng/時間の用量の組換えオステオカルシンまたはPBSを皮下に注入した。その後、注射の0~120分後に示した時間において血糖を測定した。その結果は、インスリン感受性が、両方の用量の非カルボキシル化オステオカルシンによって増加することを示す(図3)。
実施例8 非カルボキシル化オステオカルシンの投与は脂肪質量を増加させる
別のインビボ実験において、体重および脂肪体質量に対する非カルボキシル化オステオカルシンの効果をモニターした(図4)。野生型マウスにPBSまたは非カルボキシル化オステオカルシンを0.3、1または3ng/時間にて28日にわたって皮下に注射した。その結果は、体重が、最も効果的である最も高い用量での非カルボキシル化オステオカルシンによってわずかに減少したことを示す(図4)。28日後に測定した生殖腺脂肪体質量は、3ng/時間の非カルボキシル化オステオカルシン処置によって約18%減少した。その他の投薬量は、その期間において脂肪体質量を顕著に減少させなかった。
実施例9 非カルボキシル化オステオカルシンの投与はGTG誘導性肥満を減少させる
GTG誘導性肥満に対する非カルボキシル化オステオカルシンの効果を調査した(図5)。野生型マウスに、過食症および肥満を誘導するために金チオグルコース(GTG)またはビヒクルを注射した。2週間後、それらに、28日にわたって1ng/時間の組換え非カルボキシル化オステオカルシンまたはPBSを注入する浸透圧ポンプを皮下に移植した。体重増加は、調べた最初の時点の7日で、両方の用量の非カルボキシル化オステオカルシンで顕著に減少し、28日の期間全体にわたって対照より低いままであった。28日目に、体重は非カルボキシル化オステオカルシン処置で約15%減少した。
実施例10 オスのオステオカルシン欠損マウスは生殖能力を減少させる
野生型(WT)の同腹の子と交配されたオステオカルシンの両方の対立遺伝子が破壊され、非機能的であるオスのマウス(オステオカルシン-/-マウス)は、正常に機能しない生殖能力を示す。オステオカルシン変異体がC57B1/6Jであるか、または129sv/ev遺伝的背景であるかに関わらず、非常に少ない子を3ヶ月の過程にわたって得た。さらに、その子は、WTのオスのマウスとWTのメスのマウスを交配したときに得た子より著しく小さい大きさであった。8匹のオステオカルシン-/-オスマウスを、各々6~12週齢の2匹のWTメスマウスと一緒に置いたとき、17匹のみの子を得、同腹の子一匹当たりの産子数は4.25であった。対照的に、8匹のWTオスマウスを、各々同じ期間、2匹のWTマウスと一緒に置いたとき、63匹の子を得、産子数もまた、著しく多かった(同腹の子一匹当たり7.93匹の子)(図6)。さらに、6ヶ月齢後、WTマウスの場合と異なって、オスのオステオカルシン-/-マウスは全体的に不妊症であったことが観察された。この複製表現型は、オステオカルシン+/-マウス(単一の破壊されたオステオカルシンの対立遺伝子を有するマウス)において観察されなかった。
実施例11 オステオカルシンの不在下での異常精子形成
オスのオステオカルシン欠損マウスにおいて異なる年齢で精巣重量を測定した。6週齢ほどの早さで、オスのオステオカルシン-/-マウスはそれらのWTの同腹の子より顕著に小さい精巣を有し、この表現型は経時的に漸進的に悪化した(図7A)。オステオカルシン-/-およびWTの同腹の子のオスのマウスの精液中の精子数もまた、測定した。精子数は、6週齢にてオステオカルシン-/-マウスで既に37%減少しており、この減少は6ヶ月齢にてWTマウスの精子数の60%減少に達したことが見出された(図7B)。
実施例12 Gprc6a-/-マウス
Gprc6a-/-マウスは、Ouryら、2011、Cell 144:796-809におけるように生成した。
実施例13 妊娠マウスへのオステオカルシン送達
妊娠マウスへのオステオカルシン送達のために、送達までに栓が毎日存在するとすぐにIP注射(240ng/日)を実施した(E0.5~E18.5)。成体のオステオカルシン-/-またはob/obマウスにおけるオステオカルシンまたはレプチン注入のために、オステオカルシン(300ng/時間)、レプチン(300ng/時間)、またはビヒクルを送達するポンプ(Alzetマイクロ浸透圧ポンプ、モデル1002)を、3ヶ月齢のマウスの背部において皮下に外科的に取り付けた。オステオカルシン-/-マウスにおける認知機能の出生後救出のために、オステオカルシン(10ng/時間)またはビヒクルを、以前に記載されている(Ducyら、2000、Cell 100:197-207)ように脳室下帯内(intrasubventricularly)(icv)に送達した。血清および組織中のレプチンおよびオステオカルシン含有量をELISAによって決定した。
実施例14 組織構造
Leica MZ8解剖光学顕微鏡下で氷冷PBS 1×中で全ての解剖を実施した。脳幹を小脳から単離し、視床下部を採取時に中脳から除去した。単離した脳の全ての部分を液体窒素中で急速凍結し、使用するまで-80℃に維持した。
実施例15 免疫蛍光、クレシルバイオレット染色、およびアポトーシス
完全な成体および胎児の脳の免疫蛍光を、4%PFAで固定し、クリオマトリクス(cryomatrix)(Tissue-Tek)に埋め込み、-80℃で保存した組織の20μmの冠状クリオスタットスライスで実施した。切片を室温にて乾燥させ、4%PFAで固定した後、0.1%Triton洗浄剤を透過させた。ロバ血清による室温での遮断後、切片を、4℃にて一晩、抗Neun抗体(Millipore)とインキュベートした。スライドをフルオロゲル(Fluorogel)(Electron Microscopy Science)でマウントした。
脳形態を視覚化するためのクレシルバイオレット染色を、酢酸クレシルバイオレット(1g/L)中の1:1のクロロホルム:エタノールで脱脂した20μmの低温切開片を一晩インキュベートすることによって実施した。エタノールおよびキシレンを使用して染色を識別し、組織構造についてのDPX封入剤(Sigma)を使用してマウントした。
WTおよびオステオカルシン-/-脳におけるアポトーシスを評価するために、製造業者のプロトコルに従ってAPOPTAG(登録商標)Fluorescein Direct In Situ Apoptosis Detection Kit(Millipore)を使用して20μmのクリオスタット切片を処理した。Leica DM 4000Bを使用して画像を得、Image Jを使用して細胞数および染色の強度を定量した。
実施例16 生理学的測定
歩行活動(xamb)および全体活動(xtot)を含む身体活動を、以前に記載されている(Ferronら、2012、Bone 50:568-575)ようにOxymaxシステムに接続した赤外線ビームを使用して測定した。
実施例17 尾懸垂試験(TST)
尾懸垂試験を以前に記載されている(Mayorgaら、2001、J.Pharmacology Exper.Therapeutics 298:1101-1107;Steruら、1985、Psychopharmacology 85:367-370)ように実施した。マウスを保有施設から試験室まで短い距離移動させ、少なくとも1時間平静な状態でそこに置いておいた。粘着テープ(尾の先端からの距離は2cmであった)を使用してマウスを個々に尾で懸垂させた(床からの距離は35cmであった)。典型的に、マウスは、一時的に不動性の時間を増加させながら、たびたびいくつかの逃避に向けた挙動を示した。記録したパラメーターは動かないで過ごした秒数である。高度に訓練された観測者によって、マウスの遺伝子型を盲目にして、5分間にわたってマウスをスコア付けした。
実施例18 オープンフィールドパラダイム試験(OFT)
オープンフィールド試験(Davidら、2009、Neuron 62:479-493)を使用してマウスの不安および自発運動を測定した。各動物を43×43cmのオープンフィールドチャンバに置き、30分間試験した。ビデオトラッキングによって各試験時間の全体にわたってマウスをモニターし、Matlabソフトウェアを使用して分析した。マウスをオープンフィールド領域の中心に個々に置き、自由に探索させた。全体の運動活動を移動した合計距離として定量した。後ろ足で立った回数ならびにオープンフィールドチャンバの周辺に対して中心で過ごした時間および距離(%)を測定することによって不安を定量した。
実施例19 高架式十字迷路試験(EPMT)
各マウスに5分間装置を探索させた。オープンアームに進入した数を測定することによって全体の活動を評価した(Davidら、2009、Neuron 62:479-493)。オープンアームで過ごした時間を比較することによって不安を評価した。
実施例20 マウス強制水泳試験(FST)
Davidら、2009、Neuron 62:479-493に記載されている方法に従って強制水泳試験を実施した。簡潔に述べると、マウスを、10cmの水位を含み、23~25℃に維持したガラス円筒(高さ:25cm、直径:10cm)内に個々に落とした。合計6分間、動物を試験した。不動時間の合計を記録した。マウスが頭を水の上に維持するのに必要な動きを除いて逃避するように試みなかったとき、マウスは不動であるとみなした。マウスの遺伝子型を盲目にして観測者によってマウスをスコア付けした。
実施例21 明暗試験
静かな暗い部屋で試験を実施した。マウスのホームケージからの少しの寝床を含むケージ内にマウスを個々に収容し、試験前に少なくとも1時間部屋に慣れさせた。未処置のマウスを暗区画の試験チャンバ内に個々に入れた。試験は5分間であり、明区画で過ごした時間および明区画に進入した回数を、マウスの遺伝子型を盲目にして高度に訓練された観測者によって記録した。
実施例22 モリス水迷路試験
マウスに適合した訓練プロトコル(D’Hoogeら、2005、J.Soc.Neurosci.25:6539-6549)を使用してモリス水迷路(MWM)設定(Morris、1981、Nature 297:681-683)により空間記憶を評価した。迷路は150cmの直径を有し、無毒性の白色ペイントで不透明にした水(23℃)を含んだ。プールは、コンピューター、タブレットおよび壁に貼られた幾何学的図形を有するポスターを含む、遠くに視覚的刺激を有する明るく照らされた部屋に置いた。反復試行(10日で4回の試行/日)にわたって空間学習を評価した。
試行の間、小さなプラットフォーム(直径10cm)を固定した位置で水面の下に隠した。マウスを迷路の境界で水に入れ、プラットフォームに到達させ、その後、それらをホームケージに戻した。2分以内にプラットフォームに到達しなかったマウスをプラットフォームの方向へ徐々に誘導し、それらのケージへ戻す前に10秒間そこに置いておいた。このような1日4回の訓練試行(試行間の間隔:5分)を10連続日で与えた。プールにおける出発点は、各位置が使用されるように4つの固定位置(0°、90°、180°および270°)の間で変化させた。プラットフォームを見つけるまでの潜在時間の減少は既に2回目の取得日に存在し、1回目の取得日も報告する。
実施例23 オステオカルシンはいくつかの種類の挙動に影響を及ぼす
オステオカルシン-/-マウスは、オステオカルシン-/-、オステオカルシン+/-、Esp-/-、およびGprc6a-/-マウスを挙動試験のバッテリーに供することによって実証されるように広範な認識機能障害を示す。これらの実験における対照として、WTの同腹の子およびTph2+/-マウスは、使用したオステオカルシン-/-マウスにおいて観察されたマウスと同様にセロトニンおよびドーパミン含有量の減少を示した。
不安様挙動は3つのコンフリクトに基づいた試験によって分析した。最初の明/暗移行試験(DLT)は、明るく照らされた領域に対する齧歯動物の生来の嫌悪および光を避けるためのそれらの自発的な探索挙動に基づく(Crawleyら、1985、Neuroscience and Biobehavorial Reviews 9:37-44;Davidら、2009、Neuron 62:479-493)。試験機器は、暗く、安全な区画および照射された嫌悪区画からなる。マウスを各々6分間試験し、3つのパラメーターを記録した:(i)明るい区画へ進入するまでの潜在時間、(ii)明るい区画で過ごした時間、および(iii)区画間の移行の数。オステオカルシン-/-マウスにおいて、明るい区画に進入するまでの潜在時間は増加し、明るい区画で過ごした時間は減少し、この2つは不安に関連する挙動の指標である。また、区画間の移行の回数は減少し、これは不安に関連する挙動の別の指標および運動-探索活動の指標である(図11A~B)。逆に、反対のことがEsp-/-マウスに当てはまる。オープンスペースに対する齧歯動物の嫌悪を利用する高架式十字迷路(EPM)試験(Liraら、2003、Biological Psychiatry 54:960-971;Holmesら、2000、Physiology and Behavior 71:509-516)も使用した。EPMは2つのオープンアームおよび2つの囲われたアームからなり、各々、床から高さ60cmのオープンルーフを有する。明るい環境の照射条件下で試験は行う。動物を1つの閉じたアームに対向する中心領域に置き、5分間EPMを探索させる。アームに進入した合計回数およびオープンアームで過ごした時間は全体の活動の尺度となる。オープンアームで過ごした時間およびオープンアームに進入した時間の割合の減少は不安の増加を示す。このことは、オステオカルシン-/-マウスにおいて正確に見られるが、Esp-/-マウスは、WTの同腹の子より不安様挙動が少なく、探索動員が多くなることが示された(図11C~D)。最後に、本発明者らは、新規の環境が不安および探索を引き起こすオープンフィールドパラダイム試験(OFT)を使用した(Davidら、2009、Neuron 62:479-493;Sahayら、2011、Nature 472:466-470)。動物をオープンフィールドボックスの中心に置き、30分にわたって通常の明条件下でビデオトラッキングする。オステオカルシン-/-マウスは、WTの同腹の子と比較して動いた距離、中心で過ごした時間、および垂直活動の劇的な減少を示し、これらの全ての特徴は不安増加の指標である(図11E~F)。
不安はしばしば鬱病を伴う。これは尾懸垂試験(TST)によって評価し、その試験において、動物を短時間、それらの尾によって懸垂されるという回避できないストレスに供し、それらの動物は不動の姿勢を取ることによってこれに対応する(Cryanら、2005、Neurosci.Behavorial Rev.20:571-625;Crowleyら、2006;Neuropsychopharmacology 29:571-576;Davidら、2009、Neuron 62:479-493)。この試験において、マウスが不動の時間が多くなるほど、それらはより鬱になる。このことは、オステオカルシン-/-マウスにおいて観察された(図11G~H)。強制水泳試験(FST)において、マウスを2回の試行に供し、その間にそれらを、逃避することができない水を満たしたガラス円筒内で強制的に水泳させる。1回目の試行は15分間継続する。24時間後、2回目の試行を6分間継続して実施する。時間が経つと、マウスは逃避する試みを止め、受動的に浮かび、これは鬱様状態の指標である。他の挙動試験と一致して、オステオカルシン-/-マウスはWTマウスより45%多い時間浮遊して過ごした(図11I~J)。
記憶および空間学習挙動を評価するために、オステオカルシン-/-およびオステオカルシン+/-マウスをモリス水迷路(MWMT)試験に供した。この試験は、距離手がかりを学習し、水から逃避するために水面下のプラットフォームに移動するためにオープン水泳領域の周辺付近に進むマウスの能力に依存する。空間学習を反復した試行(12日間の4回の試行/日)にわたって評価する。オステオカルシン+/-およびオステオカルシン-/-マウスはそれぞれ、学習の遅延および完全に学習できないことを示した(図11K~L)。
脳内の神経伝達物質含有量および遺伝子発現について示されるように、Gprc6a-/-マウスは、全てのこれらの試験においてWTの同腹の子と区別できなかった。まとめると、これらの試験は、オステオカルシンが不安および鬱病を軽減し、探索、挙動、記憶および学習を向上させることを示す。
実施例24 オステオカルシンの投与は認知障害を回復させる
ニューロンにおいてシグナル伝達するオステオカルシンのこの能力の薬理学的関連性を、WTおよびオステオカルシン-/-マウスにおいて脳室内(intracerebro-ventricular)(ICV)注入(10ng/時間)を介して非カルボキシル化オステオカルシンを送達することによって確立した。カニューレの位置を、これらのポンプを介してメチレンブルーを投与することによって検証した。色素で標識した全ての脳室は、オステオカルシンが脳全体にわたって拡散している可能性があることを示す。さらに、注入したオステオカルシン-/-マウスの血液中のオステオカルシンの測定により、全身循環内の中枢に送達されたホルモンの漏出がないことが示された。非カルボキシル化オステオカルシンによるこの一週間の処置はオステオカルシン-/-マウスにおいて示した不安および鬱病の特徴を矯正した(図12A~E)。まとめると、本明細書に記載される結果は、オステオカルシンが脳内に直接作用することによってマウスにおける不安および鬱病を軽減することを示す。
実施例25 母性オステオカルシンは成体子孫における空間記憶および学習に有益である
胎児脳発達に対する母性由来のオステオカルシンの影響により、オステオカルシンが子孫の高齢期において認知機能に何らかの影響を及ぼすかどうかの問題を提起した。この問題に対処するために、オステオカルシン-/-またはオステオカルシン+/-母親由来の3ヶ月齢のオステオカルシン-/-マウスを挙動試験に供した。それらの母親の遺伝子型に関わらず、不安および鬱病様表現型はオステオカルシン-/-マウスにおいて同様に重度であったが、学習および記憶の欠陥は、オステオカルシン+/-母親由来よりオステオカルシン-/-母親由来のオステオカルシン-/-マウスにおいて顕著に重度であった(図13A~F)。この結果は、母性オステオカルシンが成体子孫における空間学習および記憶の獲得のために必要であることを示した。
成体子孫における空間学習および記憶を獲得するための母性オステオカルシンの重要性をさらに評価するために、E0.5からE18.5の妊娠オステオカルシン-/-母親を、1日に1回、オステオカルシン(240ng/日)の注射により処置した。オステオカルシンは送達後にこれらのメスまたはそれらの子供に決して注射しなかった。この妊娠のみの処置はオステオカルシン-/-マウスの不安または鬱病の表現型に対して有益な効果を示さなかったが、学習および記憶のそれらの欠陥の3分の2以上を救出し、このことは、この表現型が大部分、発生学的起源であることを示す(図13A~G)。この観察と一致して、組織学的切片のクレシルバイオレット染色は、妊娠したオステオカルシン-/-母親の注射後、E18.5オステオカルシン-/-胚の脳における脳室拡張の救出を示した(図13H)。同様に、アポトーシス細胞の数は減少し、NeuN陽性細胞の数は、注射しなかったオステオカルシン-/-母親に由来するオステオカルシン-/-胚と比較して増加した(図13I~J)。この染色はまた、オステオカルシン-/-母親に由来する成体オステオカルシン-/-における海馬のCA3およびCA4領域の厚さの欠陥の救出を示した(図13H)。最後に、ウェスタンブロット分析は、注射しなかったオステオカルシン-/-母親由来のものと比較して、注射したオステオカルシン-/-母親に由来するオステオカルシン-/-E18.5胚の海馬におけるカスパーゼ-3切断タンパク質レベルの減少を示した(図13K)。
実施例26 脳へのオステオカルシンの直接送達は用量依存的に野生型(WT)成体マウスにおける認知機能を改善する
オステオカルシンが成体マウスにおいて認知機能を改善するのに十分であるかどうかを決定するために、WTの2ヶ月齢マウスにICVポンプを移植し、1ヶ月間にわたってビヒクル(PBS)、または3、10もしくは30ng/時間の組換え非カルボキシル化完全長マウスオステオカルシンを送達した。注入の1ヶ月後、動物を挙動試験に供した。暗明移行(D/LT)試験および高架式十字迷路(EPMT)試験におけるそれらの能力に基づいて、3または10ng/時間の組換え非カルボキシル化完全長マウスオステオカルシンを受けている動物は不安様挙動の減少を示した。この改善はそれぞれ、D/LTおよびEMP試験における明区画およびオープンアームの探索の増加によって証明される(図14A~B)。
実施例27 高齢の野生型(WT)マウスの脳へのオステオカルシンの直接送達は海馬機能を改善する
組換え非カルボキシル化完全長マウスオステオカルシン(10ng/時間)を送達するICVポンプを16ヶ月齢のWTマウスに移植した。1ヶ月の注入期間の後、マウスを新規物体認識試験の改変型に供して、記憶および海馬機能をアッセイした。簡潔に述べると、マウスは、2つの物体を含む新規領域に、露出間で3分の休息間隔を取って、5回の5分間露出を行った。露出1~4の間、マウスはこれらの2つの物体に慣れ、等しい量の探索を生じた。5回目の露出において、物体の1つを新規物体と置き換えた。PBSまたは組換え非カルボキシル化完全長マウスオステオカルシンを受けている高齢のマウスの両者は、新規物体と固定物体を区別できた。しかしながら、図15は、オステオカルシン処置を受けているマウスは、ビヒクル単独で処置したマウスより新規物体を探索する時間は短く、このことは、海馬コンテキストエンコードおよび/または獲得効果の改善された効果を示す(Dennyら、2012、Hippocampus 22:1188-1201)。
実施例28 オステオカルシン欠損は筋肉疲労を導く
図16~24は、オステオカルシンシグナル伝達の不在が筋肉質量および機能に対して有害な結果をもたらすことを示す。オステオカルシンの両方のコピーを欠いている若いオステオカルシン-/-マウスは、老齢マウスにおける筋肉疲労の表現型を連想させる。これらのマウスは野生型マウスより体重に対する筋肉質量の低い割合を有し(図16A)、野生型マウスほど遠く(図16B)、または長く(図16C)走ることができない。
実施例29 動物およびヒトの研究
アカゲザル(Macaca mulatta)を、NIH Animal Center、Poolesville、MDにて、12時間の明/12時間の暗サイクル、室温78±2度、湿度60±20%で標準的な非ヒト霊長類ケージに個々に収容した。Ocn-/-マウスは129-Sv遺伝的背景で維持した。Gprc6aMck-/-、Gprc6aMyh6-/-、Ocn+/-;Gprc6aMck+/-およびGprc6aMck+/-;CrebMck+/-マウスは129-Sv/C57/BL6混合型遺伝的背景で維持した。対照の同腹の子を全ての実験において使用した。マウス遺伝子型はPCRによって決定した。オステオカルシンコンディショナルアレルおよびGprc6aコンディショナルアレルの生成は以前に記載されている(Ouryら、2013、Cell 155:228-241;Ouryら、2011、Cell 144:796-809)。
運動研究のために、トレッドミル(Harvard装置)で走行する試験の前に全てのマウスを3日間(10分/日)訓練した。試験の日に、マウスを5分間トレッドミルに慣れさせ、続いて17cm/sの一定の速度で10分間走らせ、次いで30cm/sまで徐々に速度を増加させた。次に、1分の間にマウスが電気格子から落ちる回数(>15)によって規定される極度の疲労までマウスを走らせた。握力計測器(Columbus機器)を使用して筋力の測定を実施した。互いに1分の間隔を空けて5回の単回測定の平均として値を表わす。実施した全ての生化学および代謝分析に関して、休息期または40分の走行(30cm/s)の最後に血液/組織を採取し、処理した。
ヒトの健常ボランティアを使用して、生存期間にわたってオステオカルシンをアッセイした(Elecsys、Roche Diagnosis)。
実施例30 エネルギー代謝研究
耐糖能およびインスリン耐性試験を以前に記載されるように実施した(Leeら、2007、Cell 130:456-469)。インビボでのグルコース摂取に関して、2-デオキシ-d-[3H]グルコース(3H-2-DG、Perkin Elmer)(10μCi)のボーラスを耐久走行の前に投与した。筋肉内の3H-2-DGおよび3H-2-DG-6-P含有量を、液体シンチレーションカウンタによって決定し、筋肉質量に
正規化した。筋管におけるグルコース摂取および脂肪酸酸化アッセイを以前に記載されるように実施した(Sebastianら、2007、Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.292:E667-686)。GLUT4タンパク質(Santa Cruz、Sc-1606)の細胞外ドメインに対する抗体を使用してフローサイトメトリーによってGLUT4転位を決定した。単離した筋原線維における酸素消費速度(OCR)の測定を、XF24 Seahorse分析器(登録商標)(Seahorse Biosciences)を使用して実施した。ミトコンドリア機能を分析するために、筋原線維を連続して3つの化合物(オリゴマイシン10μg/ml、FCCP200μm、ロテノン0.2μM)で処理し、それらの各々の投与後、OCRを記録した。
Einstein Stable Isotope and Metabolomics Core Facility(Bronx、NY)においてメタボリックプロファイリングを行った。凍結して固定した骨格筋からの代謝産物を抽出し、2工程手順で誘導体化し、GC-TOFMS分析を実施した(Qiuら、2014、J.Am.Assn.Cancer Res.20:2136-2146)。LC/MS/MS(Waters Xevo TQ)分析を、Serasingheら、2015、Molecular Cell 57:521-536に従って解糖およびTCAサイクル代謝産物の定量のために使用した。Biocrates AbsoluteIDQp180キット(Wang-Sattlerら、2012、Molecular Systems Biology 8:615)を使用して、血漿および筋肉の両方についてLC/MS/MS(Waters Xevo TQ)によってアミノ酸、生体アミン、アシルカルニチンおよびリン脂質を定量した。イソフルランによる浅麻酔下でVisualsonics Vevo Model 2100を使用して心エコー検査を実施した。
ADPおよびATP分析を、それぞれSigma(MAK033)およびAbcam(ab83355)製の市販のキットを使用して製造業者の指示書に従って実施した。
実施例31 生化学および分子生物学
血清オステオカルシン、PINP、CTX、およびインスリン値を、ELISAアッセイを使用して測定した。血糖値を、Accu-Checkグルコメーターを使用して測定した。尿中3-MHを以前に記載されるように測定した(Aranibarら、2011、Anal.Biochem.410:84-91)。cAMP蓄積の決定を、市販のキット(R&D)を使用して実施した。遺伝子発現のために、1μgの全RNAをcDNAに逆転写した。qPCR分析を、SYBERグリーンマスターミックス(green master mix)(Applied Biosciences)およびCFX-ConnectリアルタイムPCR(Bio-Rad)を使用して実施した。各遺伝子の相対発現レベルをHprtまたはGapdhの発現に正規化した。インサイチュハイブリダイゼーションのために、筋肉を液体N2で冷却したメチルブタン中で凍結させた。クリオスタットを使用して試料を10μmに切片化した。以前に記載されるようにDIG標識化リボプローブを用いてインサイチュハイブリダイゼーションを実施した(Ouryら、2011、Cell 144:796-809)。
実施例32 筋肉組織形態計測
ミトコンドリア組織形態計測、筋肉酵素組織化学およびヘマトキシリン/エオシン染色を標準的なプロトコルに従って実施した。
実施例33 筋芽細胞および筋原線維の培養
7日齢マウス由来の骨格筋筋芽細胞の培養を記載されるように実施した(Gharaibehら、2008、Nature Protocols 3:1501-1509)。筋芽細胞は、5%ウマ血清を含有する培地中で3~4日間で筋管に分化した。筋線維を短趾屈筋から単離した。5%CO2インキュベーター中で37℃にて2時間、DMEM2%コラゲナーゼを用いて筋肉を切断した。筋線維を、広口径ピペットを使用して組織から分け、約50%コンフルエンスでマトリゲルコーティングプレートにプレーティングした。一晩のインキュベーション後、単離した筋原線維を使用した。
収縮測定を、速収縮筋肉長趾伸筋(EDL)および遅筋ヒラメ筋で実施した。両方の筋肉を後肢から切断し、冷却したKrebs溶液(95%O2~5%CO2で泡立てた119 NaCl、4.7 KCl、2.5 CaCl2、1.2 KH2PO4、1.2 MgSO4、20 NaHCO3(pH7.4):mM単位)中に入れた。ナイロン縫合糸を使用して筋肉の腱を力変換器(400A、Aurora Scientific)および調節可能なフックに縛った。連続して泡立てた(O295/CO25%)(28℃にて)Krebs溶液を含有する刺激チャンバ内に筋肉を浸漬した。2つの白金電極(Aurora Scientific 1200A-in vitro System)間の電場を使用して筋肉を収縮させるように刺激した。
筋長(Lo)を最初に最大力を生じるように調整した。力-収縮頻度関係を、漸増の刺激頻度(閾値を超えた電流で350ms間、10~120Hzにて0.5msパルス)を使用して収縮を誘発することによって決定した。刺激間で、筋肉を約1分間休息させた。筋肉の疲労性を、10分にわたって1Hzにて反復性刺激(30Hz、30msの持続時間)に対する力の損失を測定することによって評価した。収縮特性の測定が完了した後、筋肉をLoにて測定し、乾燥させて緩衝液を除去し、秤量した。筋肉断面積を、筋肉質量をその長さおよび組織密度(1.056g/cm3)で割ることによって決定した。次いで力発生を筋肉断面積に正規化して、特定の力を決定した。
実施例34 統計
全てのデータは平均±標準誤差として提示する。2つの群間の比較のために不対両側スチューデントのt検定および2つより多い群を含む実験のためにANOVA検定を使用して統計的解析を実施した。全ての実験について、*はP≦0.05を示し、#はP≦0.005を示す。
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列
配列番号1
ヒトオステオカルシンcDNA
配列番号2
ヒトオステオカルシンアミノ酸配列
配列番号3
マウスオステオカルシン遺伝子1cDNA
配列番号4
マウスオステオカルシン遺伝子2cDNA
配列番号5
マウスオステオカルシン遺伝子1および2アミノ酸配列
配列番号6
ヒトγ-カルボキシラーゼcDNA
配列番号7
ヒトγ-カルボキシラーゼアミノ酸配列
配列番号8
マウスγ-カルボキシラーゼcDNA
配列番号9
マウスγ-カルボキシラーゼアミノ酸配列
配列番号10
マウスEsp(OST-PTP、Ptprv)cDNA
配列番号11
マウスEsp(OST-PTP、Ptprv)アミノ酸配列
配列番号12
成熟ヒトオステオカルシンアミノ酸配列
配列番号13
ヒトオステオカルシン変異体アミノ酸配列
配列番号14
ラットEsp(OST-PTP、Ptprv)cDNA
配列番号15
ラットEsp(OST-PTP、Ptprv)アミノ酸配列
配列番号16
ヒトPTP-1B cDNA
GenBank HUMPTPBXアクセッション番号M31724
配列番号17
ヒトPTP-1Bアミノ酸配列
GenBank HUMPTPBXアクセッション番号M31724